説明

ピロロ(1,2−b)ピリダジン化合物、ならびにCRF−1受容体拮抗薬としてのその使用

本発明は、式Iの置換ピロロ[1,2−b]ピリダジン化合物、その立体異性体、薬学的に許容できるその塩、そのプロドラッグ、または薬学的に許容できるそのプロドラッグの塩に関する。化合物は、ヒトCRF受容体を含むCRF受容体と相互に作用する。本発明はまた、本発明の化合物を使用して、CNS障害やCNS疾患、特に不安などの不安関連障害や大うつ病などの気分障害などの、CRF受容体に対する拮抗作用を及ぼすことによってその治療に影響を与え、またはそれを助長することのできる障害または状態を治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、CRF受容体に結合する化合物、特にCRF受容体拮抗薬としての置換ピロロ[1,2−b]ピリダジン誘導体に関するものであり、さらにCRFまたはCRF受容体に関連した障害の治療法としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コルチコトロピン放出因子(CRF)は、プロオピオメラノコルチン(POMC)由来ペプチドの脳下垂体前葉からの分泌の主たる生理的調節因子である、41アミノ酸のペプチドである[J.Rivierら、Proc.Natl.Acad.Sci(USA)第80巻:4851ページ(1983年);W.Valeら、Science第213巻:1394ページ(1981年)]。下垂体でのその内分泌の役割に加え、CRFは、CNS中の視床下部外に広く分布しており、その中で、脳での神経伝達物質または神経調節物質としての役割と矛盾のない、行動および生理に関する広い範囲の自律神経性作用に寄与していることが知られている[W.Valeら、Rec.Prog.Horm.Res.第39巻:245ページ(1983年);G.F.Koob、Persp.Behav.Med.第2巻:39ページ(1985年);E.B.De Souzaら、J.Neurosci.第5巻:3189ページ(1985年)]。CRFは、中枢神経系のCRFニューロンの機能不全に関係しているので、うつ病、不安関連障害、および摂食障害を含む精神医学的障害または神経疾患において、ならびにアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、進行性核上麻痺、および筋萎縮性側索硬化症の病因および病態生理において、生理的、心理学的、および免疫学的なストレッサーに対する免疫系応答の統合で重要な役割を担っているという証拠がある[J.E.Blalock、Physiological Reviews第69巻:1ページ(1989年);J.E.Morley、Life Sci.第41巻:527ページ(1987年);E.B.De Souze、Hosp.Practice第23巻:59ページ(1988年)]。
【0003】
CRFが気分障害において役割を担うという証拠がある。情動障害としても知られている気分障害は、当業界で十分に認知されており、大うつ病、単一性エピソードうつ病、反復性うつ病、児童虐待によって誘発されるうつ病、および産後うつ病を含むうつ病;気分変調;双極性障害;および循環気質が含まれる。情動障害または大うつ病に罹患している個人では、脳脊髄液(CSF)中のCRF濃度が有意に増大していることが示されている[C.B.Nemeroffら、Science第226巻:1342ページ(1984年);C.M.Bankiら、Am.J.Psychiatry第144巻:873ページ(1987年);R.D.Franceら、Biol.Psychiatry第28巻:86ページ(1988年);M.Aratoら、Biol.Psychiatry第25巻:355ページ(1989年)]。さらに、自殺被害者の前頭皮質中のCRF受容体の密度は、CRFの分泌過多と一致して有意に減少している[C.B.Memeroffら、Arch.Gen.Psychiatry第45巻:577ページ(1988年)]。さらに、うつ状態の患者では、CRF(静脈内投与)に対する鈍いアドレノコルチコトロピン(ACTH)応答が観察されている[P.W.Goldら、Am.J.Psychiatry第141巻:619ページ(1984年);F.Holsboerら、Psychoneuroendocrinology第9巻:147ページ(1984年);P.W.Goldら、New Engl.J.Med.第314巻:1129ページ(1986年)]。ラットおよび非ヒト霊長類での前臨床試験は、ヒトのうつ病で見られる症状に、CRFの分泌過多が関与しているのではないかという仮説をさらに支持するものとなった[R.M.Sapolsky、Arch.Gen.Psychiatry第46巻:1047ページ(1989年)]。三環系抗うつ剤は、CRFレベルを変更し、したがって脳内の受容体数をモジュレートするという予備的な証拠もある[Grigoriadisら、Neuropsychopharmacology第2巻:53ページ(1989年)]。
【0004】
CRFは、不安関連障害の病因とも関連付けられている。不安障害は、恐怖障害、不安状態、外傷後ストレス障害、全般性不安障害、社会不安障害、うつ病共存型不安、パニック障害、強迫性障害、および非定型不安障害を含む、当業界で認知されている一群の疾患である[The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、第16版(1992年)]。感情のストレスはしばしば、不安障害を促進する要因となり、このような障害は、一般に、対ストレス応答を弱める医薬に応答する。CRFのレベルが過剰であると、動物モデルにおける不安発生作用が生じることがわかっている[例えば、Brittonら、1982年;BerridgeおよびDunnら、1986年および1987年]。ベンゾジアゼピン/非ベンゾジアゼピン抗不安薬とCRFの相互作用が、様々な行動不安モデルで立証されている[D.R.Brittonら、Life Sci.第31巻:363ページ(1982年);C.W.BerridgeおよびA.J.Dunn、Regul.Peptides第16巻:83ページ(1986年)]。様々な行動パラダイムで推定上のCRF受容体拮抗薬α−へリックスヒツジCRF(9−41)を使用する研究では、この拮抗薬が、ベンゾジアゼピンと同様の性質の「抗不安薬様」効果を生じることが実証されている[C.W.BerridgeおよびA.J.Dunn、Horm.Behav.第21巻:393(1987年)、Brain Research Reviews第15巻:71ページ(1990年);G.F.KoobおよびK.T.Britton、「Corticotropin−Releasing Factor:Basic and Clinical Studies of a Neuropeptide」、E.B.De SouzaおよびC.B.Nemeroff編、CRC Press 221ページ(1990年)]。神経化学、内分泌、および受容体結合の各研究はすべて、CRFとベンゾジアゼピン系抗不安薬との間に相互作用があることを示しており、これらの障害におけるCRFの関与を支持する更なる証拠となっている。クロロジアゼポキシドは、ラットでのコンフリクト試験[K.T.Brittonら、Psychopharmacology第86巻:170ページ(1985年);K.T.Brittonら、Psychopharmacology第94巻:306ページ(1988年)]および聴覚刺激試験[N.R.Swerdlowら、Psychopharmacology第88巻:147ページ(1986年)]の両方で、CRFの「不安発生」作用を弱めている。オペラントコンフリクト試験では単独での行動活性がなかったベンゾジアゼピン受容体拮抗薬Ro15−1788は、CRFの作用を用量依存的に逆転させ、一方ベンゾジアゼピン逆作動薬FG7142は、CRFの作用を増強した[K.T.Brittonら、Psychopharmacology第94巻:396ページ(1988年)]。
【0005】
CRF拮抗薬のX症候群の治療への使用も、米国特許出願第09/696,822号および欧州特許出願第003094414号に記載されている。CRF拮抗薬を使用するうっ血性心不全の治療方法は、米国特許第6,043,260号に記載されている。
【0006】
CRF拮抗薬が、関節炎および炎症性疾患[E.L.Websterら、J.Rheumatol第29巻:1252ページ(2002年);E.P.Murphyら、Arthritis Rheum第44巻:782ページ(2001年)];ストレスに関係した胃腸障害[K.E.Gabryら、Molecular Psychiatry第7巻:474ページ(2002年)];および皮膚障害[C.C.Zouboulisら、Proc.Natl.Acad.Sci.第99巻:7148ページ(2002年)]の治療に有用であることも示唆されている。
【0007】
最近では、動物モデルにおいて、慢性接触性皮膚炎のストレス性の悪化が、選択的CRF拮抗薬によってブロックされることが開示され、CRFが、慢性接触性皮膚炎のストレス性悪化に関与し、CRF拮抗薬が、この障害の治療に有用であるかもしれないことが示唆された[K.Kanekoら、Exp Dermatol、第12巻:47ページ(2003年)]。
【0008】
EP1085021は、sPLA2阻害剤としてのピロロ[1,2−b]ピリダジン化合物を開示している。WO98/08847は、他の様々な化合物をCRF拮抗薬として開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、新規なピロロ[1,2−b]ピリダジン化合物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、新規なCRF受容体拮抗薬を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、不安障害、うつ病、およびストレス関連障害などの、CRFまたはCRF受容体に関連した障害または状態の治療法としての新規な化合物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、不安関連障害、気分障害、およびストレス関連障害などの、CRFまたはCRF受容体に関連した障害または状態の治療方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、不安関連障害、気分障害、およびストレス関連障害などの、CRFまたはCRF受容体に関連した障害または状態の治療に有用な医薬組成物を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、本出願の明細書中の本発明についての記述から理解され、または明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、次式Iの化合物、
【0016】
【化1】

その立体異性体、薬学的に許容できるその塩、そのプロドラッグ、または薬学的に許容できるそのプロドラッグの塩を提供するが、上式で、
Xは、NR、OR、CR、C(O)R、S(O)、NRC(O)R、またはNRS(O)から選択され、XがNR、NRC(O)R、またはNRS(O)であるとき、RおよびRは、一緒になってRで置換されていてもよい単環式または二環式の環を形成していてもよく、
mは、0、1、または2であり、
Arは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールから選択され、
、R、R、およびRは、ハロゲン、−NO、−CN、−R、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−OC(O)NR、−OC(S)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)OR、または−CRArからそれぞれ独立に選択され、
、R、およびRは、R、置換アルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロアリール、置換アリール、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールシクロアルキル、置換ヘテロアリールシクロアルキル、アリールヘテロシクロアルキル、置換アリールヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールヘテロシクロアルキル、または置換ヘテロアリールヘテロシクロアルキルからそれぞれ独立に選択され、
はそれぞれ、ハロゲン、−NO、−CN、−R、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−OC(O)NR、−OC(S)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)R、−OC(S)R、または−OC(O)ORからそれぞれ独立に選択され、
はそれぞれ、H、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルから選択され、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルは、R、−OR、−S(O)、−NR、オキソ(=O)、チオン(=S)のうちの1〜5個で置換されていてもよく、
はそれぞれ、H、ハロゲン、−NO、−NH、−OH、−SH、−CN、−C(O)NH、−C(S)NH、−C(O)−NHアルキル、−C(S)−NHアルキル、−C(O)Nアルキルアルキル、−C(S)Nアルキルアルキル、−Oアルキル、NHアルキル、Nアルキルアルキル、−S(O)アルキル、SONH、SONHアルキル、SONアルキルアルキル、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルから選択され、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、およびヘテロシクロアルキルは、アルキルまたはハロゲンで置換されていてもよい。
【0017】
別の態様では、本発明は、式Iの化合物、その立体異性体、薬学的に許容できるその塩、そのプロドラッグ、または薬学的に許容できるそのプロドラッグの塩を含む医薬組成物を提供する。この組成物は、錠剤、丸剤、粉末、ロゼンジ、サッシェ、カシェ剤、エリキシル、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エアロゾル、および軟膏などの、適切な任意な形態にして調製することができる。
【0018】
本発明の化合物は、CRF受容体拮抗薬である。したがって、別の態様では、本発明は、温血動物においてCRF受容体に対する拮抗作用を及ぼす方法であって、前記動物に、CRF受容体に対する拮抗作用を示す有効量で本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、CRF受容体のリガンドを求めてのスクリーニング方法であって、a)CRF受容体、検出可能な標識で標識した式Iの化合物、およびリガンド候補を用いる競合結合アッセイを実施するステップと、b)前記リガンド候補が前記の標識された化合物を置換できる能力の判定を行うステップとを含む方法を提供する。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、組織中でのCRF受容体の検出方法であって、a)化合物を組織に結合できるようにする条件下で、検出可能な標識で標識した式Iの化合物を組織と接触させるステップと、b)組織に結合した標識化合物を検出するステップとを含む方法を提供する。
【0021】
さらに別の態様では、本発明は、CRFのCRF受容体への結合の、in vitroでの阻害方法であって、本発明の化合物を、IMR32細胞などの、CRF受容体を発現させる細胞を含む溶液と接触させるステップを含み、化合物が、CRFのCRF受容体への結合を阻害するのに十分な濃度で溶液中に存在する方法を提供する。
【0022】
本発明の化合物は、温血動物、特に哺乳動物、より詳細にはヒトにおける、CRFもしくはCRF受容体に関連した様々な障害、またはCRF受容体に対する拮抗作用を及ぼすことによってその治療に影響を与え、もしくはそれを助長することのできる障害の治療に有用である。そのような障害の例としては、(不安状態、全般性不安障害、社会不安障害、うつ病共存型不安、パニック障害、強迫性障害、恐怖障害、外傷後ストレス障害、および非定型不安障害などの)不安関連障害;(大うつ病、単一性エピソードうつ病、反復性うつ病、児童虐待によって誘発されるうつ病、および産後うつ病を含むうつ病;気分変調;双極性障害;および循環気質などの)感情の障害としても知られている気分障害;外傷後ストレス障害;核上麻痺;免疫抑制状態;薬物またはアルコールの禁断症状;薬物乱用障害(例えば、ニコチン、コカイン、エタノール、アヘン剤、または他の薬物);(リウマチ様関節炎や骨関節炎などの)炎症性障害;不妊症を含む受精能の問題;痛み;喘息;乾癬およびアレルギー;恐怖症;ストレス性の睡眠障害;(筋線維痛症などの)痛みの知覚;気分変調;双極性障害;循環気質;疲労症候群;ストレス性の頭痛;癌;ヒト免疫機能不全ウイルス(HIV)感染;(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの)神経変性疾患;(潰瘍、過敏性腸症候群、クローン病、直腸痙攣、下痢、および精神病理学的な混乱もしくはストレスに随伴する腸骨および結腸の術後過敏症などの)胃腸疾患;(神経性の食欲不振症および過食症や、他の摂食障害などの)摂食障害;出血ストレス;ストレス性の精神病エピソード;甲状腺機能が正常な病的症候群;不適切な抗利尿ホルモンの症候群(ADH);肥満;頭部外傷;脊髄外傷;虚血性神経損傷(例えば、大脳海馬虚血などの脳虚血);神経刺激毒性ニューロン損傷;てんかん;(高血圧、頻脈、うっ血性心疾患などの)心血管および心臓に関連した障害;卒中;ストレス性の免疫機能不全(例えば、ストレス性の熱、ブタのストレス症候群、ウシの船積熱、ウマの発作性線維攣縮、およびニワトリの分娩によって誘発される機能不全、ヒツジの毛刈りのストレス(sheering stress
in sheep)、またはイヌのヒト−動物の関係に関するストレス)を含む免疫機能不全;筋肉の痙攣;尿失禁;アルツハイマー病型の老年痴呆;多発梗塞性痴呆;筋萎縮性側索硬化症;化学物質への依存症および嗜癖(例えば、アルコール、コカイン、ヘロイン、ベンゾジアゼピン、または他の薬物への依存性);骨粗鬆症;心理社会的小人症、低血糖症、および(ざ瘡、乾癬、慢性接触性皮膚炎、ストレスによって悪化する皮膚障害などの)皮膚障害が挙げられる。本発明の化合物は、禁煙の助長および毛髪の成長の促進、または脱毛の治療にも有用である。
【0023】
したがって、さらに別の態様では、本発明は、温血動物における、CRF受容体に対する拮抗作用を及ぼすことによってその治療に影響を与え、またはそれを助長することのできる障害の治療方法であって、その必要のある患者に、有効量の式Iの化合物を投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、CRFの分泌過多の現れである障害の治療方法を提供する。本発明の化合物によって治療することのできる障害の例としては、全般性不安障害;社会不安障害;不安;強迫性障害;うつ病共存型不安;パニック障害;大うつ病、単一性エピソードうつ病、反復性うつ病、児童虐待によって誘発されるうつ病、分娩後のうつ病を含むうつ病などの気分障害、および脱毛、接触性皮膚炎が挙げられる。温血動物は、哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、上述の式Iの化合物を提供する。好ましい式Iの化合物としては、次式IIの化合物が挙げられる。
【0025】
【化2】

【0026】
好ましい式IIの化合物としては、次式IIIの化合物
【0027】
【化3】

が挙げられ、式IIIにおいて、Rは、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールシクロアルキル、置換ヘテロアリールシクロアルキル、アリールヘテロシクロアルキル、置換アリールヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールヘテロシクロアルキル、置換ヘテロアリールヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、または置換ヘテロシクロアルキルから選択される。
【0028】
好ましい式IIIの化合物としては、以下の式IVおよびVIの化合物が挙げられる。
【0029】
【化4】

【0030】
好ましい式IVの化合物としては、次式Vの化合物が挙げられる。
【0031】
【化5】

【0032】
好ましい式VIの化合物としては、次式VIIの化合物
【0033】
【化6】

が挙げられ、式VIIにおいて、
Wは、O、NR、またはS(O)であり、
mは、0、1、または2であり、
はそれぞれ、−R、−S(O)、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−C(O)OR、または−C(S)ORからそれぞれ独立に選択される。
【0034】
好ましい式IIの化合物としてさらに、次式VIIIの化合物
【0035】
【化7】

が挙げられ、式VIIIにおいて、qは、0、1、2、3、または4である。
【0036】
好ましい式VIIIの化合物として、次式IXの化合物
【0037】
【化8】

および次式Xの化合物
【0038】
【化9】

が挙げられ、式Xにおいて、−−−は、単結合または二重結合である。
【0039】
以下は、本発明の特定の化合物の例であり、各化合物は、化学名と化学名の直後に載せた構造式の両方によって確認される。
【0040】
(3R,4S)−3−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
【0041】
【化10】

【0042】
(3R,4S)−3−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}−4−エトキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
【0043】
【化11】

【0044】
7−(2,4−ジクロロフェニル)−N−[(3R,4S)−4−エトキシピロリジン−3−イル]−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−アミン
【0045】
【化12】

【0046】
(3R,4S)−3−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}−4−エトキシピロリジン−1−カルボン酸メチル
【0047】
【化13】

【0048】
(1R,2S)−1−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}インダン−2−オール
【0049】
【化14】

【0050】
(1R,2S)−1−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−2−イル酢酸
【0051】
【化15】

【0052】
7−(2,4−ジクロロフェニル)−4−[(2S,4R)−4−メトキシ−2−(メトキシメチル)ピロリジン−1−イル]−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン
【0053】
【化16】

【0054】
8−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン
【0055】
1−(7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル)ピペリジン−4−オン
【0056】
【化17】

【0057】
1−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−カルボニトリル
【0058】
【化18】

【0059】
1−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−カルボキサミド
【0060】
【化19】

【0061】
本発明の化合物は、一般に、以下に示すスキーム1で例示する合成経路を使用して調製することができる。出発材料は、市販されており、あるいは、当業界で知られている手順によって調製してもよい。
【0062】
【化20】

【0063】
アリールブロモ化合物1を、n−ブチルリチウムやt−ブチルリチウムなどの強塩基で処理し、ラクトン2と反応させて、ケトン3にすることができる。アルコール3のアルデヒド4への酸化は、Swern酸化などの方法によって実施することができる。生成したジカルボニル化合物4を、N−アミノフタルイミドと反応させると、置換ピロール化合物5を得ることができる。5をヒドラジンで処理すると、1−アミノピロール化合物6が得られ、これを、分子ふるいを備えたDean−Stark装置を装備した反応容器の中で、p−トルエンスルホン酸などの触媒量の酸の存在下、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフランなどの溶媒中、β−ケトエステルまたはtrans−3−エトキシクロトン酸エチルと反応させると、二環式化合物7を得ることができる。化合物7中のヒドロキシル基は、ジクロロメタンまたはDMFなどの溶媒中で、トリエチルアミンや水素化ナトリウムなどの塩基の存在下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物またはN−フェニルトリフルオロメタンスルホンイミドと反応させて、トリフラート基に変換することができ、あるいは、還流ブロモベンゼン中で三臭化リンと反応させてブロモ基に変換することができる。生成したトリフラートまたはブロモ化合物8を、(例えば、Pd(OAc)、Pd(dba)などの)パラジウムを触媒とする、アミンとのアミノ化反応(Ahman,J.およびBuchwald,S.L.、Tetrahydron Lett.1997年、第38巻、6363ページ、Wolfe,J.P.およびBuchwald,S.L.、J.Org.Chem.2000年、第65巻、1144ページを参照のこと)にかけて、式Iの化合物を生成することができる。
【0064】
式VIIのある種の化合物は、以下に示すスキーム2で例示する経路を使用して調製することができる。
【0065】
【化21】

【0066】
がアルキル基であるとき、アルキル基は、それだけに限らないがTHF、DMF、メチルスルホキシドなどの不活性溶媒中で、それだけに限らないがアルカリ金属水素化物またはアルカリ金属アルコキシドなどの塩基を使用して導入することができる。アルキルハロゲン化物、適切には臭化物、ヨウ化物、トシラート、またはメシラートを使用して、−78℃〜100℃の範囲の温度でアルキル化を実施すると、9から10のような化合物を得ることができる。Rがカルボキシル基であるとき、カルボキシル基は、それだけに限らないがCHCl、THF、またはDMFなどの不活性溶媒中で、それだけに限らないがトリエチルアミンなどの塩基の存在下、カルボン酸無水物もしくは塩化物の試薬を使用して導入して、10のような化合物を得ることができる。それだけに限らないがPdCl/EtN/EtSiH/CHClやPd−C/1,4−シクロヘキサジエン/EtOHの各条件などの、遷移金属を触媒とする還元方法を使用してCBz基を除去すると、化合物11を得ることができる。CHCl中EtNの存在下、クロロギ酸アルキルを使用して、異なるカルバマート基を導入すると、化合物12を生成することができる。
【0067】
式Vのある種の化合物は、以下に示すスキーム3に例示する合成経路を使用して調製することができる。
【0068】
【化22】

【0069】
がアルキル基であるとき、アルキル基は、それだけに限らないがTHF、DMF、またはメチルスルホキシドなどの不活性溶媒中で、それだけに限らないがアルカリ金属水素化物やアルカリ金属アルコキシドなどの塩基を使用して導入することができる。アルキルハロゲン化物、適切には臭化物、ヨウ化物、トシラート、またはメシラートを使用して、−78℃〜100℃の範囲の温度でアルキル化を実施すると、13から14のような化合物が得られる。Rがカルボキシル基であるとき、カルボキシル基は、それだけに限らないがCHCl、THF、またはDMFなどの溶媒中で、それだけに限らないがトリエチルアミンなどの塩基の存在下、カルボン酸無水物もしくは塩化物の試薬を使用して導入して、13から14のような化合物を得ることができる。
【0070】
式Xのある種の化合物は、以下に示すスキーム4で例示する合成経路を使用して調製することができる。
【0071】
【化23】

【0072】
ケタール化合物15は、塩酸などの無機酸または臭化ジメチルホウ素などの有機のルイス酸を使用して、対応するケトン16に変換することができる。17のシアノ基は、エタノールおよび酢酸中のシアン化カリウムを用いて導入することができる。硫酸などの強酸による酸加水分解にかけると、カルボキシルアミド18が生成する。
【0073】
本発明で提供する化合物は、1個または複数の不斉中心または不斉面を有することがあり、すべてのキラル(鏡像異性およびジアステレオ異性)およびラセミ形態の化合物が本発明に含まれることを理解されたい。オレフィンおよびC=N二重結合などの多くの立体異性体も、本化合物群中に存在していてよく、そのような安定なすべての異性体を本発明に入れて考える。本発明の化合物は、ラセミの形で単離し、または例えば、分解剤存在下での結晶化や、例えばキラルHPLCカラムを使用するクロマトグラフィーなどの従来の方法によってラセミ形態を分割して光学的に純粋な形で単離し、あるいは鏡像異性体を豊富に含む材料の調製を可能にする不斉合成経路によって合成する。本発明は、式Iによって表される化合物の、考えられるすべての互変異性体を含む。本発明は、式Iの化合物の薬学的に許容できる塩も含む。薬学的に許容できる塩の例は、アミンなどの塩基性残基の無機酸および有機酸などの無機酸および有機酸、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、バルバル酸(barbaric acid)、およびp−トルエンスルホン酸などから調製された塩、ならびにカルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩もしくは有機塩、例えば、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、アンモニア、トリメチルアンモニア、トリエチルアンモニア、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、n−ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、および水酸化テトラメチルアンモニウムなどの塩基から誘導されたアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩などである。
【0074】
本発明の化合物の薬学的に許容できる塩は、従来の化学的方法によって調製することができる。一般に、そのような塩は、例えば、遊離の酸または塩基の形のこれら化合物と、化学量論量の相応する塩基または酸との反応を、水もしくは有機溶媒または2者の混合物中で反応させて調製することができるが、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒質が好ましい。適切な塩のリストが、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第17版、Mack Publishing Company、米ペンシルヴェニア州イーストン、1985年、1418ページに載っており、その公表物を参照により本明細書に援用する。
【0075】
別の態様では、本発明は、式Iの化合物のプロドラッグを提供する。プロドラッグは、化学的安定性の向上、患者の忍容性および服薬遵守の向上、生物学的利用能の向上、作用期間の持続、(脳浸透度の向上を含む)臓器選択性の向上、製剤の改良(例えば、水への溶解性の増大)、および/または副作用(例えば、毒性)の低減という課題のもとに調製する。例えば、T.HiguchiおよびV.Stella、「Prodrugs as Novel Delivery Systems」、A.C.S.Symposium Series第14巻;「Bioreversible Carriers in Drug Design」、Edward B.Roche編、American Pharmaceutical AssociationおよびPergamon Press(1987年)を参照されたい。プロドラッグには、ヒドロキシ、アミン、またはスルフヒドリルの各基が、存在するならば、対象に投与されたときにそこから切断されて、それぞれ、遊離のヒドロキシル基、アミノ基、またはスルフヒドリル基になる任意の基に結合している、式Iの化合物由来の化合物が含まれるがこれに限らない。選択例としては、生物加水分解性アミド、生物加水分解性エステル、アルコールおよびアミン官能基の生物加水分解性カルバマート、カルボナート、アセタート、ホルマート、およびベンゾアート誘導体が挙げられるがこれに限らない。
【0076】
プロドラッグは、式Iの化合物から、当業界で知られている方法を使用して容易に調製することができる。例えば、Notari,R.E.、「Theory and Practice of Prodrug Kinetics」、Methods in Enzymology、第112巻:309〜323ページ(1985年);Bodor,N.、「Novel Approaches in Prodrug Design」、Drugs of the Future、第6巻(3):165〜182ページ(1981年);Bundgaard,H.、「Design of Prodrugs:Bioreversible−Derivatives for Various Functional Groups and Chemical Entities」、出典:Design of Prodrugs(H.Bundgaard編)、Elsevier、米ニューヨーク(1985年);「Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Chemistry」、第5版第1巻、172〜178ページ、949〜982ページ(1995年)を参照されたい。例えば、式Iの化合物は、ヒドロキシ基またはカルボキシ基の1個または複数をエステルに変換することによって、プロドラッグに変えることができる。
【0077】
本発明は、1個または複数の原子が、原子質量または原子番号が自然界で通常見られる原子質量および原子番号と異なっている原子で置き換えられていることを除き、式Iで挙げたものと同一である同位体標識化合物も含む。本発明の化合物に組み込むことのできる同位体の例としては、H、11C、14C、18F、123I、125Iなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、ヨウ素、および塩素の同位体が挙げられる。前述の同位体および/または他の原子の他の同位体を含む式Iの化合物は、本発明の範囲内である。本発明の同位体標識化合物、例えば、Hや14Cなどの放射性同位体が組み込まれている化合物は、薬物および/または基質の組織分布アッセイで有用となる。トリチウム、すなわちH、および炭素14、すなわち14Cの各同位体は、特にPET(ポジトロン放射形断層撮影法)で有用となり、125I同位体は、特にSPECT(単一光子放射形コンピュータ断層撮影法)で有用となり、脳イメージングではすべてが有用である。さらに、重水素、すなわちHなどのより重い同位体で置換すると、代謝安定性がより高いために生じるある種の治療利益、例えば、in vivo半減期の延長または必要投与量の縮小を得ることができ、したがって、状況によっては好ましいであろう。本発明の式Iの同位体標識化合物は、一般に、同位体標識されていない試薬の代わりに同位体標識された試薬を使用することによる合成手順を実施して調製することができる。
【0078】
式Iの化合物は、CRF受容体の拮抗薬であり、CRFのCRF受容体への特異的結合を阻害し、CRF受容体に関連した活性に対する拮抗作用を示すことができる。CRF受容体拮抗薬としての化合物の有効性は、様々な検定法によって決定することができる。式Iの化合物のCRF拮抗薬としての活性は、(それだけに限らないが)DeSouzaら(J.Neuroscience第7巻:88ページ、1987年)およびBattagliaら(Synapse第1巻:572ページ、1987年)が開示している検定法を含む、一般に受け入れられているこの目的のための1種または複数の検定法によって評価することができる。CRF受容体の親和性は、化合物の、放射標識したCRF(例えば、[125I]チロシン−CFR)のその受容体(例えば、ラット大脳皮質膜から調製した受容体)への結合を阻害する能力を測定する結合試験によって決定することができる。DeSouzaら(前掲書、1987年)が記載している放射リガンド結合アッセイは、CRF受容体に対する化合物の親和性を決定するための検定法となる。このような活性は、通常は、受容体から放射標識リガンドの50%を外すのに必要な化合物濃度であるIC50から算出され、「Ki」値として報告される。IC50およびKi値は、非線形曲線フィッティングプログラムGraphPad Prism(GraphPad Software、米カリフォルニア州サンディエゴ)を用いるものなどの、当業界で知られている標準の方法を使用して算出する。化合物は、CRF受容体の阻害について、Kiが約10マイクロモル濃度(μM)未満であれば活性があるとみなされる。Ki値として示される式Iの化合物の結合親和性は、一般に、約0.5ナノモル濃度〜約10マイクロモル濃度の範囲を取る。好ましい式Iの化合物は、1マイクロモル濃度以下のKi値を示し、より好ましい式Iの化合物は、100ナノモル濃度未満のKi値を示し、さらにより好ましい式Iの化合物は、10ナノモル濃度未満のKi値を示す。
【0079】
化合物のCRF受容体拮抗剤活性は、CRF受容体の結合の阻害に加え、化合物が、CRFに関連した活性に対する拮抗作用を示す能力によって立証することができる。例えば、CRFは、アデニル酸シクラーゼ活性を含む様々な生化学的過程を刺激することがわかっている。したがって、化合物のCRF拮抗薬としての評価は、CRFによって刺激されるアデニル酸シクラーゼ活性に対する拮抗作用を示すその能力によって、例えばcAMPレベルを測定して行うことができる。Battagliaら(前掲書、1987年)が記載している、CRFによって刺激されるアデニル酸シクラーゼ活性の検定法は、CRF活性に対して拮抗作用を示す化合物の能力を決定する検定法となる。あるいは、Applied Biosystems(米マサチューセッツ州Bedford)のcAMP競合ELISAシステムを、与えられたプロトコルに従って利用して、96/384ウェルフォーマット中でアデニル酸シクラーゼ活性またはcAMP産生を評価することもできる。簡潔に述べると、阻害剤の存在下または非存在下でCRFによって刺激した細胞由来のサンプルを含む96もしくは386ウェルプレートに、一定量の希釈したcAMP−アルカリホスファターゼコンジュゲート(cAMP−AP)を加える。この混合物に抗cAMP抗体を加え、1時間インキュベートする。連続的な洗浄ステップの後、化学発光基質/エンハンサー溶液を加えると、Packard TopCountなどのマイクロプレートシンチレーション計数器を使用して検出することのできる光シグナルを発する。細胞によって産生されたcAMPは、cAMP−APコンジュゲートを抗体から外し、検出可能なシグナルを減少させる。CRFによって刺激されるアデニル酸シクラーゼ活性の検定法の例は、以下の実施例Cで示す。
【0080】
したがって、別の態様では、本発明は、温血動物においてCRF受容体に対する拮抗作用を及ぼす方法であって、前記動物に、CRF受容体に対する拮抗作用を示す有効量で本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。温血動物は、哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。
【0081】
別の態様では、本発明は、温血動物において、CRFの分泌過多の現れである障害、またはCRF受容体に対する拮抗作用を及ぼすことによってその障害の治療に影響を与え、もしくはそれを助長することのできる障害を治療する方法であって、その動物への治療有効量の本発明の化合物の投与を含む方法を提供する。温血動物は、哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。
【0082】
別の態様では、本発明は、CRF受容体のリガンドのスクリーニング方法であって、a)CRF受容体、検出可能な標識で標識した式Iの化合物、およびリガンド候補を用いる競合結合アッセイを実施するステップと、b)前記リガンド候補が前記標識された化合物を置換できる能力の判定を行うステップとを含む方法を提供する。競合結合アッセイの手順は、当業界でよく知られており、実施例Aで例示する。
【0083】
別の態様では、本発明は、組織中でのCRF受容体の検出方法であって、a)化合物が組織に結合できるようにする条件下で、検出可能な標識で標識した式Iの化合物を組織と接触させるステップと、b)組織に結合した標識化合物を検出するステップとを含む方法を提供する。組織中で受容体を検出するためのアッセイ手順は、当業界でよく知られている。
【0084】
別の態様では、本発明は、CRFのCRF受容体への結合の阻害方法であって、本発明の化合物を、CRF受容体を発現させる細胞を含む溶液と接触させるステップを含み、化合物が、CRFのCRF受容体への結合を阻害するのに十分な濃度で溶液中に存在する方法を提供する。CRF受容体を発現させ、このin vitroアッセイで使用することのできる細胞系の例は、当業界で知られているIMR32細胞である。
【0085】
式Iの化合物、またはその立体異性体、薬学的に許容できる塩、もしくはプロドラッグは、温血動物における、CRFの分泌過多の現れであり、またはCRF受容体に対する拮抗作用を及ぼすことによってその治療に影響を与え、もしくはそれを助長することのできる障害の治療に有用である。そのような障害の例は、本明細書の上記に記載している。これらは、禁煙または毛髪成長の促進にも有用である。
【0086】
すなわち、さらに別の態様では、本発明は、本明細書の上記に記載の障害の治療方法であって、温血動物への治療有効量の本発明の化合物の投与を含む方法を提供する。温血動物は、哺乳動物、特にヒトであることが好ましい。
【0087】
本発明の方法によって治療することのできる詳細な障害は、好ましくは、全般性不安障害、社会不安障害、うつ病共存型不安、強迫性障害、パニック障害、不安状態、恐怖障害、うつ病共存型不安、強迫性障害、外傷後ストレス障害、非定型不安障害などの不安関連障害;大うつ病、単一性エピソードうつ病、反復性うつ病、児童虐待によって誘発されるうつ病、および産後うつ病を含むうつ病、双極性障害、外傷後ストレス障害、気分変調、循環気質などの気分障害;薬物乱用障害(例えば、ニコチン、コカイン、エタノール、アヘン剤、または他の薬物);リウマチ様関節炎や骨関節炎などの炎症性障害;過敏性腸症候群、潰瘍、クローン病、直腸痙攣、下痢、精神病理学的な混乱もしくはストレスに随伴する腸骨および結腸の術後過敏症などの胃腸疾患;およびざ瘡、乾癬、慢性接触性皮膚炎などの皮膚障害を含む。
【0088】
本発明の方法によって治療することのできる詳細な障害は、不安関連障害、気分障害、炎症障害、および慢性接触性皮膚炎を含むことがより好ましい。
【0089】
本発明の方法によって治療することのできる詳細な障害は、不安関連障害、特に全般性不安、および気分障害、特に大うつ病を含むことがさらにより好ましい。
【0090】
温血動物において上述の疾患または障害を治療するための本発明の化合物の治療有効量は、当業者に知られている様々な手段で、例えば、特定の状態に罹患した動物に種々の量の特定の薬剤を投与し、次いでその動物に対する効果を判定して決定することができる。通常、本発明の化合物の治療有効量は、活性成分が0.002〜200mg/体重kgとなる投与量で毎日経口投与してよい。普通は、0.01〜10mg/kgの用量を、1日1〜4回分に分け、または徐放製剤にすることが、所望の薬理学的効果を得るのに有効となる。しかし、どんな患者向けの特定の用量レベルも、使用する特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与期間、投与経路、排泄率、薬物の組合せ、および特定の疾患の重症度を含む様々な要因に応じて変わることは理解されよう。投与頻度も、使用する化合物および治療する特定の疾患に応じて変わり得る。しかし、ほとんどのCNS疾患の治療では、1日4回以下の投与計画が好ましい。ストレスおよびうつ病の治療では、1日1または2回の投与計画が特に好ましい。
【0091】
本発明の化合物は、経口、局所、皮膚、非経口、もしくは直腸投与などの、活性薬剤と哺乳動物体内のその薬剤の活性部位とを接触させる手段によって、または適切な剤形を使用する吸入もしくはスプレーによって投与して、上記障害を治療することができる。用語「非経口」には、本明細書では、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内の注射もしくは注入技術が含まれる。化合物は、単独で投与できるが、一般に、薬学的に許容できる担体、希釈剤、または賦形剤と共に投与することになる。
【0092】
したがって、さらに別の態様では、本発明は、式Iの化合物、その立体異性体、薬学的に許容できるその塩、そのプロドラッグ、または薬学的に許容できるそのプロドラッグの塩を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物はしたがって、薬学的に許容できる担体、希釈剤、または医薬添加剤をさらに含む。「薬学的に許容できる担体、希釈剤、または医薬添加剤」とは、生物学的に活性のある薬剤の哺乳動物、例えばヒトへの送達について、当業界で一般に受け入れられている媒質である。そのような担体は、一般に、当業者が決定し考慮に入れる視野の範囲内として申し分ないいくつかの要素に従って配合される。その要素には、限定するものではないが、製剤する活性薬剤の種類および性質、薬剤含有組成物を投与する対象、企図する組成物の投与経路、および目標となる治療適応症が含まれる。薬学的に許容できる担体および医薬添加剤には、水性および非水性の液体媒質、ならびに様々な固体および半固体剤形が含まれる。このような担体は、活性薬剤に加えて、幾種かの異なる成分および添加剤を含むことができ、そのような追加の成分は、当業者によく知られている様々な理由、例えば活性薬剤の安定化のために製剤中に含められる。薬学的に許容できる適切な担体、およびその選択に関与する要素についての記述は、容易に入手できる様々な情報源、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第17版、Mack Publishing Company、米ペンシルヴェニア州イーストン、1985年に載っており、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0093】
経口での使用を目的とした組成物は、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性もしくは油性の懸濁液、分散性の粉末もしくは顆粒、乳濁液、硬もしくは軟カプセル、シロップ、またはエリキシルの形でよく、当業界で知られている方法に従って調製することができる。このような組成物は、薬学的に洗練され、口に合う製剤にするために、甘味剤、着香剤、着色剤、および保存剤からなる群から選択された1種または複数の薬剤を含有していてよい。
【0094】
錠剤は、錠剤の製造に適する、薬学的に許容できる非毒性の医薬添加剤との混合物になった活性成分を含有する。これらの医薬添加剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えば、コーンスターチやアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、アカシア;および滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルクでよい。錠剤は、コーティングされていなくてもよいし、または既知の技術によってコーティングして、消化管での崩壊および吸収を遅らせてもよく、モノステアリン酸グリセリルやジステアリン酸グリセリルなどの遅延材料を使用することができる。
【0095】
経口用途向けの製剤は、活性成分が、不活性な固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリンと混合される硬ゼラチンカプセル、または活性成分が、水もしくは油性媒質、例えば、ラッカセイ油、流動パラフィン、オリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセルとして存在してもよい。
【0096】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適する医薬添加剤との混合物になった活性材料を含有する。そのような医薬添加剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴムであり、分散剤または湿潤剤は、自然に存在するホスファチド、例えばレシチン、またはアルキレンオキサイドと脂肪酸の縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキサイドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなどの、エチレンオキサイドと脂肪酸およびヘキシタール由来部分エステルとの縮合生成物、またはエチレンオキサイドと脂肪酸および無水ヘキシトール由来部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンでよい。水性懸濁液は、1種または複数の保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルもしくはn−プロピル、1種または複数の着色剤、スクロースやサッカリンなどの1種または複数の甘味剤を含有していてもよい。
【0097】
油性懸濁液は、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ダイズ油、ゴマ油、ココナッツ油;または流動パラフィンなどの鉱油中に活性成分を懸濁させて調製することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、硬パラフィン、またはセチルアルコールを含有していてもよい。上述のものなどの甘味剤、および着香剤を加えて、口に合う経口製剤にしてもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を加えて保存することができる。
【0098】
水を加えて水性懸濁液を調製するのに適する分散性の粉末および顆粒では、活性成分は、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁化剤、および1種または複数の保存剤との混合物にして提供される。適切な分散剤もしくは湿潤剤、および懸濁化剤は、上ですでに述べたものがよい例である。追加の医薬添加剤、例えば、甘味剤、着香剤、着色剤が存在してもよい。
【0099】
本発明の医薬組成物は、水中油乳濁液の形にしてもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油やラッカセイ油、または鉱油、例えば流動パラフィン、またはこれらの混合物でよい。適切な乳化剤は、自然に存在するゴム、例えばアカシアゴムやトラガカントゴム、自然に存在するホスファチド、例えばダイズレシチン、および脂肪酸および無水ヘキシトール由来のエステルもしくは部分エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン、および前記部分エステルとエチレンオキサイドの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンでよい。乳濁液は、甘味剤および着香剤を含有していてもよい。
【0100】
シロップおよびエリキシルには、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはスクロースを配合することができる。この種の製剤は、粘滑剤、保存剤、および着香剤、および着色剤を含有していてもよい。
【0101】
本発明の化合物の直腸投与用の坐剤は、化合物を、常温では固体であるが直腸温度で液体となり、したがって直腸で融解して薬物を放出する、適切な非刺激性の医薬添加剤と混合して調製することができる。そのような材料の例は、カカオ脂およびポリエチレングリコールである。
【0102】
医薬組成物は、注射用の無菌水性懸濁液または油性懸濁液の形にしてもよい。この懸濁液は、上述の適切な分散剤もしくは湿潤剤、および懸濁化剤を使用して、既知の技術に従って製剤することができる。注射用の無菌溶液または懸濁液は、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中のもの、例えば、1,3−ブタンジオール溶液として製剤することができる。使用してよい許容できる賦形剤および溶媒には、水、リンガー液、および等張性の塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌のキャリアオイルを溶媒または懸濁媒質として使用することも好都合である。この目的では、合成のモノもしくはジグリセリドを含むどのブランドのキャリアオイルを使用してもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も、注射剤の調製に使用する余地がある。
【0103】
投与に適する剤形は、一般に、1単位あたり約1mg〜約100mgの活性成分を含有する。これらの医薬組成物中には、活性成分が、通常は組成物の総重量の約0.5〜95重量%の量で存在することになる。本発明の化合物を投与するための剤形の例としては、次のものが挙げられる。(1)カプセル。標準の2部分からなる硬ゼラチンカプセルに、それぞれ100mgの粉末活性成分、150mgのラクトース、50mgのセルロース、および6mgのステアリン酸マグネシウムを充填して、多数の単位カプセルを調製する。(2)軟ゼラチンカプセル。活性成分を、ダイズ油、綿実油、オリーブ油などの消化できる油に混ぜた混合物を調製し、容積型によってゼラチンに注入して、100mgの活性成分を含有する軟ゼラチンカプセルにする。カプセルを洗浄し乾燥させる。(3)錠剤。剤形単位が、100mgの活性成分、0.2mgのコロイド二酸化ケイ素、5mgのステアリン酸マグネシウム、275mgの微結晶セルロース、11mgのデンプン、および98.8mgのラクトースを有するように、従来の手順によって多数の錠剤を調製する。適切なコーティングを施して、嗜好性を増し、または吸着の遅延を延長してもよい。
【0104】
さらに別の態様では、本発明は、a)包装材料、b)前記包装材料内に含まれた、本発明の化合物を含む医薬、およびc)前記の医薬が上述の障害の治療に使用できることを示すラベルまたは包装挿入物を含む製造物品を提供する。
【0105】
定義および規約
別段の記載がない限り、本出願では以下の定義を使用する。
【0106】
用語「ハロゲン」とは、−F、−Cl、−Br、または−Iから選択される基を意味する。
【0107】
用語「アルキル」とは、1〜10個の炭素原子を有し、1個または複数の二重結合または三重結合を含んでいてもよい、直鎖状および分枝鎖状の炭化水素部分を意味する。
【0108】
用語「「置換アルキル」とは、ハロゲン、オキソ(=O)、チオン(=S)、−NO、−CN、−R、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−OC(O)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)OR、OC(O)R、OC(S)R、NRC(S)OR、およびOC(S)NRからそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基を有するアルキル部分を意味する。
【0109】
用語「ハロアルキル」とは、1〜(2v+1)個の独立に選択されたハロゲン置換基[vは、その部分中の炭素原子数である]を有するアルキル部分を意味する。
【0110】
用語「シクロアルキル」とは、3〜10個の炭素原子を有する単環式の非芳香族炭化水素部分、または5〜11個の炭素原子を有する二環式の非芳香族炭化水素部分を意味する。シクロアルキルは、1〜2個の二重結合を含んでいてもよい。
【0111】
用語「置換シクロアルキル」とは、ハロゲン、オキソ(=O)、チオン(=S)、−NO、−CN、−R、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−OC(O)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)OR、OC(O)R、OC(S)R、NRC(S)OR、およびOC(S)NRからそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基を有するシクロアルキル部分を意味する。
【0112】
用語「アリール」とは、フェニルまたはナフチルを意味する。
【0113】
用語「置換アリール」とは、ハロゲン、−NO、−CN、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−OC(O)NR、−OC(S)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)R、OC(S)R、OC(O)OR、OC(O)R、OC(S)R、NRC(S)OR、およびOC(S)NRからそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基で置換されているアリール基を意味する。
【0114】
用語「ヘテロアリール」とは、炭素と、それぞれが非ペルオキシドO、S、およびNからなる群から選択された1〜4個のヘテロ原子とからなる、5または6個の環上原子を、原子価の必要条件を満たすのに相応しい結合と共に含み、その結合は、環上炭素、またはNが存在する場合では環上Nを介していてよい、単環式芳香族環の基を意味する。用語「ヘテロアリール」は、炭素と、それぞれが非ペルオキシドO、S、およびNから選択された1〜6個のヘテロ原子とからなる7個〜10個の環上原子を、原子価の必要条件を満たすのに相応しい結合を備えて有し、その結合は、環上炭素またはNが存在する場合では環上Nを介していてよい、縮合型二環式芳香族複素環の基も含む。ヘテロアリールの例としては、チエニル、ベンゾチエニル、ピリジル、チアゾリル、キノリル、ピラジニル、ピリミジル、イミダゾリル、フラニル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリル、ベンズオキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、ピロリル、イソキノリニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プリニル、オキサジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、およびフロピリジニルが挙げられる。
【0115】
用語「置換ヘテロアリール」とは、ハロゲン、−NO、−CN、−R、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−OC(O)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)OR、OC(O)R、OC(S)R、NRC(S)OR、およびOC(S)NRからそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基を有するヘテロアリール基を意味する。
【0116】
用語「ヘテロシクロアルキル」とは、別段の指定がない限り、少なくとも1個の環上炭素原子が、酸素、窒素、−NH−、または−S(O)[mは、0、1、または2である]から選択されたヘテロ原子で置換されており、炭素原子または窒素原子の箇所に環結合が存在してよい、3〜8員の単環式非芳香族環または6〜12員の二環式非芳香族環を意味する。ヘテロシクロアルキルは、1個〜3個の二重結合を含んでいてもよい。ヘテロシクロアルキルの例としては、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[2.2.1]−アザビシクロ環、[2.2.2]−アザビシクロ環、[3.3.1]−アザビシクロ環、キヌクリジニル、アゼエチジニル、アゼチジノニル、オキシインドリル、ジヒドロイミダゾリル、およびプロリジノニルが挙げられる。
【0117】
用語「置換ヘテロシクロアルキル」とは、ハロゲン、オキソ(=O)、チオン(=S)、−NO、−CN、−R、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−OC(O)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)OR、OC(O)R、OC(S)R、NRC(S)OR、およびOC(S)NRからそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基を有するヘテロシクロアルキル基を意味する。
【0118】
用語「アリールシクロアルキル」とは、7〜14個の炭素原子からなり、一方の環はアリールであり、他方の環はシクロアルキル環で、そのアリール環に縮合しており、どちらの環が結合点として働いてもよい、二環式の環を意味する。アリールシクロアルキルは、アリール環に縮合している環の部分が、完全にまたは部分的に飽和していてよい。用語「置換アリールシクロアルキル」とは、ハロゲン、オキソ(=O)、チオン(=S)、−NO、−CN、−R、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−OC(O)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)OR、OC(O)R、OC(S)R、NRC(S)OR、およびOC(S)NRからそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基を有するアリールシクロアルキル基を意味する。
【0119】
用語「ヘテロアリールシクロアルキル」とは、8〜14個の原子を含み、一方の環はヘテロアリールであり、他方の環はシクロアルキル環でそのヘテロアリール環に縮合しており、どちらの環が結合点として働いていてもよい、二環式の環系を意味する。ヘテロアリールシクロアルキルは、ヘテロアリール環に縮合している環の部分が、完全にまたは部分的に飽和していてよい。
【0120】
用語「置換ヘテロアリールシクロアルキル」とは、ハロゲン、オキソ(=O)、チオン(=S)、−NO、−CN、−R、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−OC(O)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)OR、OC(O)R、OC(S)R、NRC(S)OR、およびOC(S)NRからそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基を有するヘテロアリールシクロアルキル基を意味する。
【0121】
用語「アリールヘテロシクロアルキル」とは、7〜14個の原子を含み、一方の環はアリールであり、他方の環はヘテロシクロアルキルであり、どちらの環が結合点として働いていてもよい、二環式の環系を意味する。
【0122】
用語「置換アリールヘテロシクロアルキル」とは、ハロゲン、オキソ(=O)、チオン(=S)、−NO、−CN、−R、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−OC(O)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)OR、OC(O)R、OC(S)R、NRC(S)OR、およびOC(S)NRからそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基を有するアリールヘテロシクロアルキル基を意味する。
【0123】
用語「ヘテロアリールヘテロシクロアルキル」とは、7〜14個の原子を含み、一方の環はヘテロアリールであり、他方の環はヘテロシクロアルキルであり、どちらの環が結合点として働いていてもよい、二環式の環系を意味する。
【0124】
用語「置換ヘテロアリールヘテロシクロアルキル」とは、ハロゲン、オキソ(=O)、チオン(=S)、−NO、−CN、−R、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−OC(O)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)OR、OC(O)R、OC(S)R、NRC(S)OR、およびOC(S)NRからそれぞれ独立に選択された1〜5個の置換基を有するヘテロアリールヘテロシクロアルキル基を意味する。
【0125】
用語「薬学的に許容できる」とは、別段の記述がない限り、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を生じることのない、妥当な利益/リスク比に見合った、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適する化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0126】
用語「薬学的に許容できる塩」とは、生物学的な有効性および本発明の化合物の性質を保持し、生物学的にまたは別の方面で望ましい塩を指す。
【0127】
用語「立体異性体」とは、同じ原子によって結合された同じ原子でできているが、互換性のない異なる三次元構造を有する化合物を指す。この三次元構造は、立体配置と呼ばれる。本明細書では、用語「鏡像異性体」とは、その分子が互いに重ね合わせられない鏡像である、2種の立体異性体を指す。用語「キラル中心」とは、4個の異なる基が結合している炭素原子を指す。本明細書では、用語「ジアステレオ異性体」とは、鏡像異性体でない立体異性体を指す。さらに、1個のキラル中心のみで異なる立体配置を有する2種のジアステレオ異性体を、本発明では「エピマー」と呼ぶ。用語「ラセマート」または「ラセミ混合物」とは、鏡像異性体の同等部の混合物を指す。
【0128】
用語「プロドラッグ」とは、in vivoで変換されて、式Iの化合物をもたらす化合物を意味する。変換は、血中での加水分解によってなど、様々な機序によって行うことができる。
【0129】
用語「治療有効量」、「有効量」、「治療量」、または「有効用量」とは、所望の薬理学的効果または治療効果を引き出し、したがって疾患が有効に予防または治療されるようになるのに十分な量を意味する。
【0130】
用語「発明化合物」、「本発明の化合物」、「本発明の化合物群」、または「式Iによる化合物」等は、式Iの化合物、またはその立体異性体、薬学的に許容できるその塩、もしくはそのプロドラッグ、または式Iの化合物のプロドラッグの薬学的に許容できる塩を指す。
【0131】
用語「治療」、「治療する」、「治療すること」等は、障害の進行を緩慢にし、または逆転させること、ならびに障害を治癒させることを含む意味である。これらの用語は、障害または状態が実際には解消していないとしても、また障害または状態の進行それ自体が緩慢化または逆転していないとしても、障害または状態の1種または複数の症状を緩和し、改善し、軽減し、消失させ、または低減することも含む。用語「治療」および同様の用語は、予防的(防止的)かつ一時的な治療も含む。疾患の予防は、疾患の症状の発症を延期し、または遅らせる形を取る。
【実施例】
【0132】
これ以上詳述しなくとも、当業者ならば、これまでの記載事項を使用して、本発明をその最も完全な程度まで実施することができると考える。以下の実施例は、本発明を例示するために示し、本発明の範囲または精神を実施例中に記載された特定の手順に限定しないものと解釈される。数字で表した調製例および実施例は、本発明の化合物の調製を例示するために示しており、実施例A〜Dは、本発明の化合物の生物学的性質の決定に使用することのできる生物学的アッセイを例示するために示している。当業者ならば、実施例中に記載された手順の適切なバリエーションが即座に思い当たるであろう。
【0133】
調製例1:4−(2,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−4−オキソブタナール
機械式攪拌子および内部温度コントローラーを装備した2L容三口丸底フラスコに、2,4−ジクロロブロモベンゼン(65.5g、290.7ミリモル)を1.1LのTHEに溶かした溶液を窒素下で加える。MeOH/液体窒素浴を用いて溶液を−95℃に冷却する。この溶液に、t−BuLi(400mL、ペンタン中1.6M、639.5ミリモル)をシリンジポンプでゆっくりと加えた後、α−メチル−γ−ブチロラクトン(43.5g、434.8ミリモル)のTHE(100mL)溶液を加える。内部温度は、<−80℃に制御する。<−80℃で1時間攪拌した後、反応混合物をNHClの飽和溶液で失活させ、室温に温める。水(2L)およびEtOAc(1L)を加え、分離する。水層をEtOAc(2×2L)で抽出する。有機溶液を合わせて乾燥させ(MgSO)、濾過する。濾液を真空中で濃縮乾燥して、80.9gの1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−メチルブタン−1−オンを淡黄色の油として得た。残渣は、Swern酸化に使用する。機械式攪拌子および内部温度コントローラーを装備した2L容三口丸底フラスコに、DMSO(104.1mL、1465.7ミリモル)およびCHCl(1.1L)を加える。MeOH/液体窒素浴を用いて溶液を−80℃に冷却する。この溶液に、塩化オキサリル(63.9mL、732.9ミリモル)をシリンジポンプでゆっくりと加える。混合物を−80℃で15分間攪拌した後、上で得た粗製1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−メチルブタン−1−オンのCHCl(150mL)溶液をシリンジポンプでゆっくりと加える。<−70℃で1時間攪拌した後、混合物にEtN(456mL、3271.7ミリモル)を加える。5分後に冷却浴を取り外し、混合物を室温で1.5時間攪拌する。混合物をヘキサン(6L)で希釈し、水(6L)で洗浄する。水層をヘキサン(6L)で抽出する。有機層を合わせて真空中で濃縮乾燥し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1/6 EtOAc/ヘプタン)にかけて、淡黄色の油36g(2ステップで50%)を標題化合物として得る。H NMR(400MHz,CDCl)δ9.86(s,1H)、7.61(d,J=8.3Hz,1H)、7.49(d,J=2.0Hz,1H)、7.37(dd,J=2.0,8.3Hz,1H)、3.81〜3.76(m,1H)、3.18(dd,J=8.2,18.6Hz,1H)、2.65(dd,J=5.0,18.6Hz,1H)、1.21(d,J=7.3Hz,3H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ206.1、202.4、139.5、139.2、134.4、132.7、132.4、129.6、48.8、42.0、18.6;IR(液)2974、2936、1996、1910、1708、1585、1457、1374、1228、1191、1106、1064、978、828、810cm−1;MS(Cl)m/z 247(M)、245(M)。
【0134】
調製例2:2−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−1H−ピロール−1−イル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
4−(2,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−4−オキソブタナール(36g、147.6ミリモル)、N−アミノフタルイミド(29.4g、90%、163 ミリモル)、およびHCl(16.2mL、5N)のジオキサン(400mL)中混合物を100℃で1時間加熱する。室温に冷却した後、混合物を濾過して固体不純物を除去する。濾液を真空中で濃縮し、残渣をEtOAcで粉砕し、濾過して生成物を収集する。この過程をもう一度繰返して、無色の固体45g(80%)を標題化合物として得る。融点237〜239℃(CHCl/ヘプタン)。融点237〜239℃(CHCl/ヘプタン);H NMR(400MHz,CDCl)δ7.94〜7.92(m,1H)、7.90〜7.88(m,1H)、7.85〜7.81(m,2H)、7.44(d,J=2.1Hz,1H)、7.26(d,J=8.3Hz,1H)、7.16(dd,J=2.1,8.3Hz,1H)、6.81(d,J=3.1Hz,1H)、6.34(d,J=3.1Hz,1H)、2.06(s,3H);IR(拡散反射率)2327、1976、1907、1791、1748、1441、1275、1213、1113、1105、1077、881、826、715、706cm−1;MS(EI)m/z 370(M);HRMS(EI)C1912Clの計算値370.0276、実測値370.0269;元素分析:C1912Clの計算値:C,61.48;H,3.26;N,7.55。実測値:C,61.40;H,3.29;N,7.52。
【0135】
調製例3:2−(2,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−1H−ピロール−1−アミン
2−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−1H−ピロール−1−イル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(3.71g、10.0ミリモル)のEtOH(60.0mL)中懸濁液に、ヒドラジン一水和物(1.21mL、1.25g、25.0ミリモル)を室温で加える。反応混合物を2時間加熱還流する。室温に冷却した後、混合物を濾過する。濾液を真空中で濃縮乾燥し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1/4 EtOAc/ヘプタン)にかけて、淡黄色の油2.36g(98%)を標題化合物として得る。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.57(d,J=2.1Hz,1H)、7.37(dd,J=2.1,8.2Hz,1H)、7.30(d,J=8.2Hz,1H)、6.82(d,J=2.8Hz,1H)、6.01(d,J=2.8Hz,1H)、2.00(s,3H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ136.5、135.0、134.6、130.0、129.9、127.6、127.3、122.8、117.0、106.9、12.3;IR(液)2422、2350、2327、2286、2211、1563、1547、1484、1102、1001、868、826、806、724、708cm−1;MS(EI)m/z 243(M+H)、241(M+H);HRMS(FAB)C1110Cl+Hの計算値241.0299、実測値241.0291。
【0136】
調製例4:7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−オール
2−(2,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−1H−ピロール−1−アミン(2.34g、9.69ミリモル)、trans−3−エトキシクロトン酸エチル(1.58g、10.0ミリモル)、およびp−トルエンスルホン酸(0.095g、0.50ミリモル)のCHCl(100mL)中混合物を、分子ふるいを装入したDean−Stark管を用い、24時間還流させる。室温に冷却した後、混合物を真空中で濃縮乾燥し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1/4 EtOAc/ヘプタン)にかけて、淡黄色の固体1.88g(63%)を標題化合物として得る。融点234〜237℃。融点234〜237℃;H NMR(400MHz,DMSO−d)δ7.76(d,J=2.1Hz,1H)、7.52(dd,J=2.1,8.3Hz,1H)、7.44(d,J=8.3Hz,1H)、6.49(s,1H)、5.94(s,1H)、2.20(s,3H)、2.10(s,3H);13C NMR(100MHz,DMSO−d)δ153.0、149.0、134.2、135.2、132.0、128.2、127.6、125.7、121.2、119.0、118.8、96.0、92.5、20.0、10.5;IR(拡散反射率)3075、3008、2997、2989、2353、2327、2216、2190、2105、1555、1367、1314、1185、828、814cm−1;MS(EI)m/z 308(M)、306(M);HRMS(FAB)C1512ClO+Hの計算値307.0405、実測値307.0414;元素分析:C1512ClOの計算値:C,58.65;H,3.94;N,9.12。実測値:C,58.68;H,3.91;N,8.96。
【0137】
調製例5:4−ブロモ−7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン
7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−オール(34.2g、111.5ミリモル)および三臭化リン(50mL、142.5g、526.4ミリモル)のブロモベンゼン(500mL)溶液を1時間還流させる。室温に冷却した後、混合物をCHClで希釈する。NaHCOの飽和溶液を0℃で加えて中和し、混合物を直ちに分離する。水層をCHCl(2回)で抽出する。CHCl溶液を合わせてMgSOで乾燥させ、濾過する。濾液を真空中で濃縮乾燥する。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1/10 EtOAc/ヘプタン)にかけて、淡黄色の固体38.8g(93%)を標題化合物として得る。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.48(d,J=1.5Hz,1H)、7.29(m,2H)、6.64(s,1H)、6.49(s,1H)、2.28(s,3H)、2.15(s,3H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ148.9、136.8、135.2、134.3、130.1、129.3、127.1、125.6、125.1、124.2、123.2、114.8、102.3、22.0、12.8;MS(EI)m/z 369(M)、371(M)、373(M);HRMS(FAB)C1511BrCl+Hの計算値368.9561、実測値368.9572。
【0138】
(実施例1)
(3R,4S)−3−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
【0139】
【化24】

4−ブロモ−7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン(0.37g、1.00.ミリモル)、(3R,4S)−3−アミノ−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル(0.35g、1.50ミリモル)、5−(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチル−9H−キサンテン−4−イル](ジフェニル)ホスフィン(0.062g、0.10ミリモル)、CsCO(0.46g、1.40ミリモル)、およびPd(dba)(0.046g、0.05ミリモル)のジオキサン(10.0mL)中混合物を17時間還流させる。室温に冷却した後、混合物をEtOAcで希釈し、celiteパッドで濾過する。濾液を真空中で濃縮乾燥し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1/2 EtOAc/ヘプタン)にかけて、ベージュ色の固体0.46g(88%)を標題化合物として得る。融点105〜110℃。融点105〜110℃;H NMR(400MHz,CDCl)δ7.58(s,1H)、7.42〜7.38(m,7H)、6.37(2s,1H)、5.62(br,1H)、5.20(m,2H)、4.98(br,1H)、4.54(br,1H)、4.23〜4.02(m,2H)、3.80〜3.65(m,2H)、3.50〜3.35(m,1H)、2.33(s,3H)、2.22(s,3H);IR(拡散反射率)2414、1950、1683、1566、1488、1451、1427、1358、1331、1211、1129、1101、813、767、698cm−1;MS m/z 525(M+H)、527(M+H);HRMS(EI)C2726Cl+Hの計算値525.1460、実測値525.1484;元素分析:C2726Clの計算値:C,61.72;H,4.99;N,10.66。実測値:C,61.17;H,5.27;N,10.01。
【0140】
(実施例2)
(3R,4S)−3−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}−4−エトキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
【0141】
【化25】

(3R,4S)−3−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ)−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル(0.32g、0.61ミリモル)のDMF(6.0mL)溶液に、0℃でNaH(0.03g、鉱油中60%、0.74ミリモル)を加える。混合物を0℃で30分間攪拌した後、ヨウ化エチル(0.06mL、0.12g、0.74ミリモル)を加える。混合物を室温で16時間攪拌し、水を加える。EtOAc(3回)で抽出した後、EtOAc溶液を合わせて乾燥させ(MgSO)、濾過する。濾液を真空中で濃縮乾燥し、残渣を分取TLC(シリカゲル、1/8 EtOAc/ヘプタン)にかけて、淡褐色の油0.25g(74%)を標題化合物として得る。[α]=27°(クロロホルム、c0.65)。[α]=−27°(クロロホルム,c 0.65);H NMR(400MHz,CDCl)δ7.56(br,1H)、7.41〜7.33(m,11H)、6.31(br,1H)、5.55(br,1H)、5.23〜5.12(m,3H)、4.18〜4.11(m,3H)、4.07〜3.90(m,1H)、3.80〜3.65(m,3H)、3.61〜3.34(m,2H)、2.31(s,3H)、2.21(s,3H)、1.34〜1.26(m,3H);IR(拡散反射率)2415、2319、1952、1709、1567、1487、1448、1420、1358、1346、1331、1126、1099、813、767cm−1;MS(EI)m/z 554(M)、552(M);HRMS(EI)C2930Cl+Hの計算値553.1773、実測値553.1792。
【0142】
(実施例3)
7−(2,4−ジクロロフェニル)−N−[(3R,4S)−4−エトキシピロリジン−3−イル]−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−アミン
【0143】
【化26】

(3R,4S)−3−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}−4−エトキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル(0.197g、0.357ミリモル)およびトリエチルアミン(0.055mL、0.04g、0.396ミリモル)のCHCl中混合物に、0℃で塩化パラジウム(0.028g、0.158ミリモル)およびトリエチルシラン(0.085mL、0.062g、0.535ミリモル)を加える。得られた混合物を室温で20時間攪拌した後、塩化パラジウム(0.02g、0.113ミリモル)およびトリエチルシラン(0.05mL、0.036g、0.313ミリモル)を加え、72時間攪拌し続ける。トリフルオロ酢酸(0.30mL)を加え、混合物をNaOHの15%溶液で塩基性にする。水性混合物をCHCl(3回)での抽出にかけ、有機溶液を合わせて乾燥させ(MgSO)、濾過する。濾液を真空中で濃縮乾燥し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1/99 MeOH/CHCl)にかけて、淡黄色の油0.053g(36%)を標題化合物として得る。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.55(d,J=2.3Hz,1H)、7.41〜7.33(m,2H)、6.31(s,1H)、5.54(br,1H)、5.32(br,1H)、4.14(br,2H)、3.73〜3.15(m,6H)、2.30(s,3H)、2.20(s,3H)、1.34〜1.29(m,3H);IR(拡散反射率)2970、2924、2876、2440、1703、1614、1566、1486、1453、1392、1374、1331、1101、1068、813cm−1;MS(EI)m/z 421(M)、419(M);HRMS(EI)C2124OCl+Hの計算値419.1405、実測値419.1397。
【0144】
(実施例4)
(3R,4S)−3−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}−4−エトキシピロリジン−1−カルボン酸メチル
【0145】
【化27】

7−(2,4−ジクロロフェニル)−N−[(3R,4S)−4−エトキシピロリジン−3−イル]−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−アミン(0.050g、0.118ミリモル)およびEtN(0.050mL、0.036g、0.354ミリモル)のCHCl(2.0mL)溶液に、クロロギ酸メチル(0.014mL、0.017g、0.177ミリモル)を加える。混合物を室温で16時間攪拌した後、NaHCOの溶液(10.0mL)を加える。混合物をCHCl(3回)での抽出にかけ、CHCl溶液を合わせて乾燥させ(MgSO)、濾過する。濾液を真空中で濃縮乾燥し、残渣を分取TLC(シリカゲル、1/1 EtOAc/ヘプタン)にかけて、淡黄色の油0.031g(54%)を標題化合物として得る。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.56(d,J=2.3Hz,1H)、7.41〜7.33(m,2H)、6.31(s,1H)、5.55(br,1H)、5.18(br,1H)、4.18〜4.11(m,2H)、4.03〜3.87(m,1H)、3.73(s,3H)、3.70〜3.25(m,5H)、2.31(s,3H)、2.20(s,3H)、1.34〜1.26(m,3H);IR(拡散反射率)2244、1705、1566、1487、1452、1392、1347、1331、1194、1131、1104、1086、1065、813、770cm−1;MS(EI)m/z 479(M)、477(M);HRMS(EI)C2326Cl+Hの計算値477.1460、実測値477.1462。
【0146】
(実施例5)
(1R,2S)−1−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ)インダン−2−オール
【0147】
【化28】

実施例1の手順に従い、重大でないバリエーションを実施して、標題化合物を57%の収率で緑色がかった固体として調製する。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.60〜7.46(m,1H)、7.46〜7.32(m,6H)、6.39(s,1H)、5.90(s,1H)、5.18〜5.11(m,2H)、4.82(br,1H)、3.31(dd,J=16.7,4.8Hz,1H)、3.11(d,J=16.7Hz,1H)、2.37(s,3H)、2.23(s,3H);MS m/z 440(M)、438(M)。
【0148】
(実施例6)
酢酸(1R,2S)−1−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−2−イル
【0149】
【化29】

(1R,2S)−1−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}インダン−2−オール(0.146g、0.332ミリモル)およびピリジン(0.054mL、0.053g、0.665ミリモル)のCHCl(3.0mL)溶液に、塩化アセチル(0.028ml、0.031g、0.399ミリモル)を加える。混合物を室温で16時間攪拌し、真空中で濃縮乾燥する。残渣を分取TLC(シリカゲル、1/6 EtOAc/ヘプタン)にかけて、淡黄色の泡0.101g(63%)を標題化合物として得る。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.59(2s,1H)、7.47〜7.45(m,2H)、7.40〜7.35(m,4H)、6.32(2s,1H)、5.88(s,1H)、5.82〜5.77(m,1H)、5.38〜5.35(m,1H)、4.92〜4.88(m,1H)、4.20〜4.10(m,1H)、3.36(dd,J=17.1,5.3Hz,1H)、3.18(d,J=17.1Hz,1H)、2.37(s,3H)、2.24(s,3H)、2.03(2s,3H);IR(拡散反射率)2316、1906、1742、1563、1486、1431、1372、1330、1238、1212、1039、1001、821、814、751cm−1;MS m/z 482(M)、480(M);HRMS(EI)C2623Cl+Hの計算値480.1245、実測値480.1232。
【0150】
(実施例7)
7−(2,4−ジクロロフェニル)−4−[(2S,4R)−4−メトキシ−2−(メトキシメチル)ピロリジン−1−イル]−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン
【0151】
【化30】

実施例1の手順に従い、重大でないバリエーションを実施して、標題化合物を25%の収率で淡褐色の油として調製する。[α]D=−31°(クロロホルム、c0.59)。[α]D=−31°(クロロホルム,c 0.59);H NMR(400MHz,CDCl)δ7.56(br,1H)、7.43〜7.32(m,2H)、6.53(2s,1H)、5.49(s,1H)、4.44〜4.42(m,1H)、4.41〜4.17(m,1H)、4.01〜3.91(m,1H)、3.67〜3.64(m,1H)、3.51〜3.46(m,1H)、3.38(s,3H)、3.37(m,3H)、2.35〜2.27(m,5H)、2.19(s,3H);IR(拡散反射率)2924、2894、2411、2244、2072、1549、1486、1449、1430、1374、1114、1099、1003、819、769cm−1;MS m/z 437(M+H)、435(M+H);HRMS(EI)C2225Cl+Hの計算値434.1402、実測値434.1389。
【0152】
(実施例8)
8−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン
【0153】
【化31】

実施例1の手順に従い、重大でないバリエーションを実施して、標題化合物を74%の収率で黄色の固体として調製する。融点193.2〜196.4℃。融点193.2〜196.4℃;H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ7.75(d,J=2.1Hz,1H)、7.50(dd,J=8.2Hz,2.1Hz,1H)、7.44(d,J=8.2Hz,1H)、6.48(s,1H)、5.96(s,1H)、3.94(s,4H)、3.48(m,4H)、2.20(s,3H)、2.10(s,3H)、1.80(m,4H);13C NMR(100MHz,DMSO−d6)δ149.4、147.1、135.6、134.6、133.3、129.7、128.9、127.0、122.1、120.1、119.7、106.3、99.7、95.6、63.7、46.9、34.4、21.4、11.8;IR(拡散反射率)2954、2399、2378、2351、2295、2276、1551、1478、1361、1306、1145、1090、826、813、777cm−1;HRMS(FAB)C2223Cl+Hの計算値432.1246、実測値432.1244。元素分析:C2223Clの計算値:C,61.12;H,5.36;N,9.72。実測値:C,59.94;H,5.37;N,9.39。
【0154】
(実施例9)
1−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]ピペリジン−4−オン
【0155】
【化32】

8−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン(0.52g、1.21ミリモル)の−78℃のCHCl(12.0mL)溶液を、Me2BBr(0.45mL、4.60ミリモル)で処理する。冷浴を定位置に添えて反応液を攪拌し、ゆっくりと室温に温まるようにする。反応液をNaHCOの飽和溶液中に注ぐ。反応液をCHClで抽出する。有機層を1.0MのKHSOで洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空中で濃縮して褐色の油を得、これを20〜30%の酢酸エチル/ヘプタンと共にシリカゲルカラムに通して、黄褐色の固体0.18mg(38%)を標題化合物として得る。融点169.7〜171.3℃。融点169.7〜171.3℃;H NMR(400MHz,DMSO−d)δ7.76(d,J=2.1Hz,1H)、7.51(dd,J=8.3Hz,2.1Hz,1H)、7.45(d,J=8.3Hz,1H)、6.58(s,1H)、5.97(s,1H)、3.82(t,J=6.1Hz,4H)、2.58(t,J=6.1Hz,4H)、2.21(s,3H)、2.11(s,3H);13C NMR(100MHz,DMSO−d)δ207.4、149.4、146.3、135.6、134.6、133.3、129.8、128.9、127.0、122.3、119.7、119.6、100.2、94.6、46.8、40.2、21.4、11.8;IR(拡散反射率)2351、2319、1903、1722、1555、1487、1382、1352、1321、1303、1220、822、806、770、763cm−1;HRMS(FAB)C2019OCl+Hの計算値388.0983、実測値388.0990;元素分析:C2019OClの計算値:C,61.87;H,4.93;N,10.82。実測値:C,61.69;H,5.02;N,10.66。
【0156】
(実施例10)
1−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−カルボニトリル
【0157】
【化33】

1−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]ピペリジン−4−オン(0.11g、0.29ミリモル)のエタノール(7.0mL)溶液をKCN(0.21mg、3.21ミリモル)で処理する。混合物を0℃に冷却し、HOAc(0.15mL)で15分間かけて処理する。反応液を室温で2時間攪拌し、次いで酢酸エチルと飽和NaHCOとに分配する。有機層をMgSOで乾燥させ、真空中で濃縮する。残渣をピリジン(5.0mL)に溶解させ、0℃に冷却し、POCl(0.5mL)で処理する。反応液を室温で50分間攪拌し、次いで70分間かけて60℃に加熱する。反応液を室温に冷却し、氷水中にゆっくりと注ぐ。混合物を酢酸エチルでの抽出に3回かけ、MgSOで乾燥させ、真空中で濃縮して褐色の油を得、これを20〜30%の酢酸エチル/ヘプタンと共にシリカゲルカラムに通して、オフホワイト色の泡0.054g(47%)を標題化合物として得る。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.54(d,J=1.3Hz,1H)、7.37〜7.32(m,2H)、6.73〜6.72(m,1H)、6.35(s,1H)、5.74(s,1H)、4.07〜4.05(m,2H)、3.76〜3.63(m,2H)、2.62(m,2H)、2.31(s,3H)、2.19(s,3H);HRMS(FAB)C2118Cl+Hの計算値397.0987、実測値397.0994。
【0158】
(実施例11)
1−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−カルボキサミド
【0159】
【化34】

1−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−カルボニトリル(0.05g、0.13ミリモル)の0℃のCHCl(2.0mL)溶液をHSO(0.5mL)で処理する。反応液を室温で16時間攪拌し、次いで飽和NaHCOで処理する。混合物を酢酸エチルで3回抽出し、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空中で濃縮して褐色の固体を得、これを5%のメタノール/塩化メチレンと共にシリカゲルカラムに通して、オフホワイト色の固体0.019g(37%)を標題化合物として得る。融点>212℃(dec.)。融点>212℃(分解);H NMR(400MHz,CDCl)δ7.58(d,J=1.9Hz,1H)、7.40(d,J=8.2Hz,1H)、7.38(dd,J=8.2Hz,1.9Hz,1H)、6.78(m,1H)、6.44(s,1H)、5.79(s,1H)、5.60(br,2H)、4.12〜4.11(m,2H)、3.81〜3.68(m,2H)、2.70(m,2H)、2.34(s,3H)、2.23(s,3H);HRMS(FAB)C2120OCl+Hの計算値415.1092、実測値415.1112。
【0160】
(実施例A)
生物学的活性評価のためのin vitroでのCRF受容体結合アッセイ
以下では、試験化合物のCRF受容体に対する生物学的活性を評価するための標準のin vitroでの結合アッセイを記載する。これは、De Souza(De Souza、1987年)が記載した変法プロトコルに基づくものである。
【0161】
この結合アッセイには、一般にラット由来の脳膜を使用する。結合アッセイ用の脳膜を調製するために、ラットの前頭皮質を、10mLの氷冷組織緩衝液(10mMのMgCl、2mMのEGTA、1μg/mLのアプロチニン、1μg/mLのロイペプチン、および1μg/mLのペプスタチンを含有する50mMのHEPES緩衝液pH7.0)中でホモジナイズする。ホモジネートを48,000×gで10分間、遠心分離にかけ、得られたペレットを10mLの組織緩衝液中で再度ホモジナイズする。48,000×gで10分間の追加の遠心分離の後、ペレットを再懸濁して、300μg/mLのタンパク質濃縮物とする。
【0162】
結合アッセイは、96ウェルプレート中で、最終濃度300μLで実施する。125I−ヒツジ−CRF(最終濃度150pM)および種々の濃度の阻害剤を含有する150μLのアッセイ緩衝液に150μLの膜懸濁液を加えて、結合アッセイを開始する。アッセイ緩衝液は、上で膜の調製について述べたものに0.1%のオボアルブミンおよび0.15mMのバシトラシンを加えたものと同じである。2時間後に、Packard製細胞ハーベスターを使用する、Packard製GF/Cユニフィルタープレート(0.3%のポリエチレンイミンを予浸したもの)で室温で濾過することによって、放射性リガンドの結合を終わらせる。フィルターを、0.01%のTritonX−100を含有する氷冷リン酸緩衝生理食塩水pH7.0で3回洗浄する。Packard TopCountでフィルターの放射能を評価する。
【0163】
あるいは、IMR−32ヒト神経芽細胞腫細胞(ATCC;Hoggら、1996年)などの、CRF受容体を自然に発現させる組織および細胞を、上述のものと同様の結合アッセイに使用することができる。
【0164】
化合物は、CRFの阻害についてのKi値が約10μM未満であれば活性があるとみなす。過剰な(10μM)αヘリックスCRFの存在下では、非特異的な結合が測定される。
【0165】
(実施例B)
生物学的活性評価のためのex vivoでのCRF受容体結合アッセイ
以下では、試験化合物のCRF受容体に対する生物学的活性を評価するための、典型的なex vivoでのCRF受容体結合アッセイを記載する。
【0166】
絶食させた雄性Harlen系Sprague−Dawleyラット(170〜210g)に、12:30から2:00PMの間に胃洗浄を行ってから、試験化合物または賦形剤を経口投与した。化合物は、賦形剤(通常は、dH2O中に10%のダイズ油、5%のポリソルベート80)中に製剤した。薬物投与2時間後、ラットを断頭によって屠殺し、前頭皮質をすばやく切除し、ドライアイス上に置き、次いでアッセイ実施まで−80℃で凍結させ、ヘパリン処理した管に躯幹血を集め、遠心分離(2500RPM、20分間)によって血漿を分離し、−20℃で凍結させた。
【0167】
結合アッセイの当日、組織サンプルを秤量し、50mMの氷冷Hepes緩衝液(10mMのMgCl、2mMのEGTA、1μg/mLのアプロチニン、1μg/mLのロイペプチン半硫酸塩、1μg/mLのペプスタチンA、0.15mMのバシトラシン、および0.1%のオボアルブミンを含有、23℃でpH=7.0)中で解凍し、次いで5の設定で30秒間ホモジナイズした(Kinematica製Polytron)。アッセイ緩衝液(上述のとおり)またはDMP−904(10uM)の存在下で、ホモジネートを[125I]CRF(0.15nM、NEN)と共にインキュベートした(2時間、23℃、暗所中)。濾過(Packard FilterMate、GF/Cフィルタープレート)してアッセイを終わらせ、プレートをPackard TopCount LSCでのカウントにかけ、DPMデータから算出した総フェムトモル数および非特異的フェムトモル数を、賦形剤対照に対する%で示す(特異的結合フェムトモル数)。スチューデントのt検定を使用して、統計学的有意性があるかどうか判定した。
【0168】
(実施例C)
CRFによって刺激されるアデニル酸シクラーゼ活性の阻害
CRFによって刺激されるアデニル酸シクラーゼ活性の阻害は、以前に記載されているとおりに実施することができる[G.Battagliaら、Synapse第1巻:572ページ(1987年)]。簡潔に述べると、アッセイは、100mMのトリスHCl(37℃でpH7.4)、10mMのMgCl、0.4mMのEGTA、0.1%のBSA、1mMのイソブチルメチルキサンチン(IBMX)、250単位/mLのホスホクレアチンキナーゼ、5mMのリン酸クレアチン、100mMのグアノシン5’−三リン酸、100nMのo−CRF、すなわちアンタゴニストペプチド(様々な濃度)、および原湿重量0.8mgの組織(約40〜60mgのタンパク質)を含有する200mL緩衝液中で、37℃で10分間実施する。反応は、1mMのATP/[32P]ATP(約2〜4mCi/管)を加えて開始し、100mLの、50mMのトリスHCl、45mMのATP、および2%のドデシル硫酸ナトリウムを加えて終わらせる。cAMPの回復をモニターするため、分離する前に各管に1mLの[H]cAMP(約40,000dpm)を加える。[32P]ATPからの[32P]cAMPの分離は、Dowexカラムおよびアルミナカラムに通す連続的な溶離によって行う。
【0169】
あるいは、アデニル酸シクラーゼ活性は、NEN Life SciencesのAdenylyl Cyclase Activation FlashPlate Assayを与えられたプロトコルに従って利用して、96ウェルフォーマット中で評価することもできる。簡潔に述べると、抗cAMP抗体で予めコートされている96ウェルプレートに、一定量の放射標識cAMPを加える。細胞または組織を加え、阻害剤の存在下または不在下で刺激する。細胞によって産生された未標識のcAMPは、放射標識されたcAMPを抗体から外す。結合された放射標識cAMPは、Packard TopCountなどのマイクロプレートシンチレーション計数器を使用して検出することのできる光シグナルを発する。未標識cAMPの量が増加していると、設定されたインキュベーション時間(2〜24時間)の間に検出可能なシグナルが減少することになる。
【0170】
(実施例D)
in vivoでの生物学的アッセイ
本発明の化合物のin vivo活性は、当業界で利用でき、受け入れられている生物学的検定法のいずれか1つを使用して評価することができる。これらの試験の例としては、聴覚刺激アッセイ、階段登上試験、および長期投与アッセイが挙げられる。これらおよび本発明の化合物を試験するのに有用な他のモデルについては、C.W.BerridgeおよびA.J.Dunn、Brain Research Reviews第15巻:71ページ(1990年)に概略が述べられている。化合物は、げっ歯類または小哺乳動物のどんな種で試験してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式Iの化合物、
【化1】

その立体異性体、薬学的に許容できるその塩、そのプロドラッグ、または薬学的に許容できるそのプロドラッグの塩
[式中、
Xは、NR、OR、CR、C(O)R、S(O)、NRC(O)R、またはNRS(O)から選択され、XがNR、NRC(O)R、またはNRS(O)であるとき、RおよびRは、一緒になって単環式または二環式の環を形成していてもよく、
mは、0、1、または2であり、
Arは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールから選択され、
、R、R、およびRは、ハロゲン、−NO、−CN、−R、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−OC(O)NR、−OC(S)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)OR、または−CRArからそれぞれ独立に選択され、
、R、およびRは、R、置換アルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロアリール、置換アリール、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールシクロアルキル、置換ヘテロアリールシクロアルキル、アリールヘテロシクロアルキル、置換アリールヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールヘテロシクロアルキル、または置換ヘテロアリールヘテロシクロアルキルからそれぞれ独立に選択され、
はそれぞれ、ハロゲン、−NO、−CN、−R、−OR、−S(O)、−NR、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−NRS(O)、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−OC(O)NR、−OC(S)NR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、−C(O)OR、−C(S)OR、−OC(O)R、−OC(S)R、または−OC(O)ORからそれぞれ独立に選択され、
はそれぞれ、H、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルから選択され、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルは、R、−OR、−S(O)、−NR、オキソ(=O)、チオン(=S)のうちの1〜5個で置換されていてもよく、
はそれぞれ、H、ハロゲン、−NO、−NH、−OH、−SH、−CN、−C(O)NH、−C(S)NH、−C(O)−NHアルキル、−C(S)−NHアルキル、−C(O)Nアルキルアルキル、−C(S)Nアルキルアルキル、−Oアルキル、NHアルキル、Nアルキルアルキル、−S(O)アルキル、SONH、SONHアルキル、SONアルキルアルキル、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルから選択され、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、およびヘテロシクロアルキルは、アルキルまたはハロゲンで置換されていてもよい]。
【請求項2】
次式IIの化合物
【化2】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
次式IIIの化合物
【化3】

[式IIIにおいて、Rは、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールシクロアルキル、置換アリールシクロアルキル、ヘテロアリールシクロアルキル、置換ヘテロアリールシクロアルキル、アリールヘテロシクロアルキル、置換アリールヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールヘテロシクロアルキル、置換ヘテロアリールヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、または置換ヘテロシクロアルキルから選択される]である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
次式IVの化合物
【化4】

である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
次式Vの化合物
【化5】

である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
次式VIの化合物
【化6】

である、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
次式VIIの化合物
【化7】

[式VIIにおいて、
Wは、O、NR、またはS(O)であり、
mは、0、1、または2であり、
はそれぞれ、−R、−S(O)、−C(O)NR、−C(S)NR、−S(O)NR、−C(O)OR、または−C(S)ORからそれぞれ独立に選択される]である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
次式VIIIの化合物
【化8】

[式VIIIにおいて、qは、0、1、2、3、または4である]である、請求項2に記載の化合物。
【請求項9】
次式IXの化合物
【化9】

である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
次式Xの化合物
【化10】

[式Xにおいて、−−−は、単結合または二重結合である]である、請求項2に記載の化合物。
【請求項11】
ベンジル(3R,4S)−3−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}−4−ヒドロキシピロリジン−1−カルボキシレート
ベンジル(3R,4S)−3−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル)アミノ}−4−エトキシピロリジン−1−カルボキシレート
7−(2,4−ジクロロフェニル)−N−[(3R,4S)−4−エトキシピロリジン−3−イル]−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−アミン
メチル(3R,4S)−3−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}−4−エトキシピロリジン−1−カルボキシレート
(1R,2S)−1−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}インダン−2−オール
(1R,2S)−1−{[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]アミノ}−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−2−イルアセテート
7−(2,4−ジクロロフェニル)−4−[(2S,4R)−4−メトキシ−2−(メトキシメチル)ピロリジン−1−イル]−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン
8−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカン
1−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]ピペリジン−4−オン
1−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−カルボニトリル
1−[7−(2,4−ジクロロフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−イル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−カルボキサミド
からなる群から選択された、請求項1に記載の化合物、ならびに前記化合物のいずれかの薬学的に許容できる塩。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物の哺乳動物用の医薬としての使用であって、前記医薬は、CRFに拮抗することによってその治療に影響を与え、もしくはそれを助長することのできる障害を治療するためのものであり、前記障害は、不安関連障害;気分障害;外傷後ストレス障害;核上麻痺;免疫抑制状態;薬物またはアルコールの禁断症状;炎症性障害;痛み;喘息;乾癬およびアレルギー;恐怖症;ストレス性の睡眠障害;筋線維痛症;気分変調;双極性障害;循環気質;疲労症候群;ストレス性の頭痛;癌;ヒト免疫機能不全ウイルス感染;神経変性疾患;胃腸疾患;摂食障害;出血ストレス;ストレス性精神病エピソード;甲状腺機能が正常な病的症候群;不適切な抗下痢ホルモンの症状;肥満;不妊症;頭部外傷;脊髄外傷;虚血性神経損傷;神経刺激毒性ニューロン損傷;てんかん;心血管および心臓に関連した障害;免疫機能不全;筋肉の痙攣;尿失禁;アルツハイマー型の老年痴呆;多発梗塞性痴呆;筋萎縮性側索硬化症;化学物質への依存症および嗜癖;心理社会的小人症;低血糖症;皮膚障害;および脱毛から選択される障害である使用。
【請求項14】
ヒトにおいて毛髪の成長を促進する方法であって、その必要のあるヒトに、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物を有効量投与することを含む方法。
【請求項15】
ヒトにおいて禁煙を助長する方法であって、その必要のあるヒトに、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物を有効量投与することを含む方法。

【公表番号】特表2006−525309(P2006−525309A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506606(P2006−506606)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001483
【国際公開番号】WO2004/099213
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】