説明

ピロロ(1,2−b)ピリダジン化合物およびCFR−1受容体アンタゴニストとしてのその使用

新規CRF受容体アンタゴニストおよび、不安およびうつ病などの、CRFの分泌過剰を発現している疾患またはCRFもしくはCRF受容体が関与する疾患を含む種々の疾患の治療としてのその使用が開示されている。本発明のCRF受容体アンタゴニストは、立体異性体またはその立体異性体の混合物、薬学的に許容されるプロドラッグ、もしくは薬学的に許容される塩を含む、式(I):


(式中、RはHまたはMeである)の構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、一般的に、CRF受容体に結合する化合物に関し、特に、CRF受容体アンタゴニストとしての置換ピロロ[1,2−b]ピリダジン誘導体およびCRFまたはCRF受容体が関与する疾患の治療としてのその使用に関する。
発明の背景
副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)は、下垂体前葉からの、プロオピオメラノコルチン(POMC)から生成されるペプチドの分泌の主要な生理的調節因子である、41個のアミノ酸からなるペプチドである[J. Rivier etal., Proc. Natl. Acad. Sci (USA) 80: 4851 (1983); W. Vale etal., Science 213: 1394 (1981)]。下垂体での内分泌の役割に加えて、CRFは、CNS中の視床下部外に広い分布を有し、そこにおいて、脳における神経伝達物質またはニューロモジュレーターと一致する、広いスペクトルの自立性の行動および生理効果を引き起こすことが知られている[W. Vale etal., Rec. Prog. Horm. Res. 39: 245 (1983); G. F. Koob, Persp.Behav. Med. 2: 39(1985) ; E. B. De Souza etal., J.Neurosci. 5: 3189(1985)]。免疫系における、生理学的、心理学的、および免疫学的ストレッサーへの応答の統合において、うつ病、不安関連障害および摂食障害を含む精神疾患および神経疾患において、そしてアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、進行性核上性麻痺および筋萎縮性側索硬化症の病因および病態生理学において、中枢神経系におけるCRFニューロンの機能障害にこれらが関連しているため、CRFがこれらの反応を統合する上で、重要な役割を果たしている証拠がある[J. E.Blalock、Physiological Reviews 69:1(1989) ; J. E. Morley, Life Sci.4.1 :527 (1987) ; E. B. De Souze, Hosp. Practice 23: 59 (1988)]。
【0002】
CRFは、気分障害(情動障害としても知られる)の病因に関与しているといわれてきた。情動障害、または大うつ病の患者において、脳脊髄液(CSF)におけるCRF濃度が顕著に減少していることが示された[C. B. Nemeroff etal., Science 226: 1342(1984) ; C. M. Banki etal., Am. J. Psychiatry 144: 873 (1987); R. D. France etal., Biol. Psychiatry 28: 86(1988) ; M. Arato et al., Biol. Psychiatry 25: 355 (1989) ]。さらに、CRF受容体密度は、自殺患者の前頭皮質において顕著に減少しており、これはCRFの分泌過剰と一致している[C. B. Memeroff etal., Arch. Gen. Psychiatry 45 : 577 (1988)]。また、鬱患者において、CRF(静脈内投与)に対する副腎皮質ホルモン(ACTH)反応の鈍磨が観察されている[P. W. Gold etal., Am. J. Psychiatry 141: 619 (1984); F. Holsboer et al., Psychoneuroendocrinology 9: 147 (1984); P. W. Gold et al., New Engl. J. Med. 314: 1129 (1986)]。ラットおよびヒト以外の霊長類における前臨床研究は、CRFの分泌過剰がヒトうつ病において観察される症状に関与しているという仮説をさらに支持している[R. M. Sapolsky, Arch. Gen. Psychiatry 46 : 1047(1989)]。三環性抗うつ薬が脳内におけるCRFレベルを変え、それにより受容体数をモジュレートすることができるという予備的証拠もある[Grigoriadis etal., Neuropsychopharmacology2 : 53 (1989)]。
【0003】
CRFはまた、不安関連障害の病因にも関与すると言われてきた。不安障害は、強迫性障害、不安状態、外傷後ストレス障害および非定型性不安障害を含む、当業界に知られた、一群の疾患である[The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 16 th edition (1992)]。情動ストレスは、不安障害の誘発因子となることが多く、かかる障害には、一般的に、ストレス反応を緩和する医薬が効果を示す。CRFの過剰レベルは、動物モデルにおいて、不安惹起作用を示すことが知られている[例えば、Britton et al., 1982; Berridge and Dunn, 1986 and 1987 を参照のこと]。ベンゾジアゼピン/非ベンゾジアゼピン系抗不安薬とCRFとの相互作用が、種々の行動不安モデルにおいて示されている[D. R. Britton etal., Life Sci. 31: 363 (1982) ; C. W. Berridge and A. J. Dunn, Regul. Peptides 16: 83 (1986) ]。種々の行動パラダイムにおいて、推定上のCRF受容体アンタゴニストであるα−らせんヒツジCRF(9−41)を用いる研究により、該アンタゴニストが、ベンゾジアゼピン系薬剤と質的に類似する”抗不安薬様”作用をもたらすことが示されている[C.W. Berridge and A. J. Dunn, Horm. Behav. 21 : 393(1987), Brain Research Reviews 15: 71(1990) ; G. F. Koob and K. T. Britton, In : Cofficotropin-Releasing Factor : Basic and Clinical Studies of a Neuropeptide, E. B. De Souza and C. B.Nemeroff eds., CRC Press p. 221(1990)]。神経化学研究、内分泌研究および受容体結合研究は、すべてCRFとベンゾジアゼピン抗不安薬との相互作用を示しており、これらの障害におけるCRFの関与に関する証拠をさらに提供している。クロロジアゼポキシドは、ラットにおける葛藤試験[K. T. Britton et al., Psychopharmacology 86 :170 (1985) ; K. T. Britton etal., Psychopharmacology 94 : 306(1988)] および驚愕反応聴力検査[N. R. Swerdlow etal.、Psychopharmacology 88: 147(1986)]の両方において、CRFの”抗不安”効果を軽減する。ベンゾジアゼピン受容体アンタゴニストであるRo15−1788(単独では、オペラント葛藤試験において行動活性を有さない)は、CRFの作用を用量依存的に無効にするが、一方で、ベンゾジアゼピン逆アゴニストであるFG7142は、CRFの作用を高める[K. T. Britton etal., Psychopharmacology 94: 396(1988)]。シンドロームXの治療のためのCRFアンタゴニストの使用もまた、米国特許出願第09/696,822号(2000年10月26日出願)およびヨーロッパ特許出願第003094414号(2000年10月26日出願)に記載されている。鬱血性心不全の治療のためのCRFアンタゴニストの使用方法は、米国特許出願第09/248,073号(1999年2月10日出願)(現在、米国特許第6,043,260号(2000年3月28日))に記載されている。
【0004】
CRFアンタゴニストは、関節炎および炎症障害[Webster EL, et al., J Rheumatol 29 (6): 1252 (2002); Murphy EP, et al., Arthritis Rheum 44 (4): 782 (2001) ]; ストレス関連消化管障害[Gabry, K. E. et al., Molecular Psychiatry 7 (5): 474 (2002)];および皮膚障害[Zouboulis, C. C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 99: 7184 (2002)]の治療に有用であることが示唆されている。
【0005】
最近、動物モデルにおいて、慢性接触皮膚炎のストレスによる増悪が選択的CRFRアンタゴニストにより遮断されることが開示されたが、これはCRFRが慢性接触皮膚炎のストレスによる増悪に関与し、CRFRアンタゴニストがこの障害の治療に有用な可能性があることを示唆している[Kaneko K, Kawana S, Arai K, Shibasaki T. Exp Dermatol 12(1) : 47 (2003)]。
【0006】
EP1085021は、ピロロ[1,2−b]ピリダジン化合物をsPLA2阻害剤として開示している。以下の公開公報は、それぞれCRFアンタゴニスト化合物を開示しているが、本明細書に記載の特定の化合物を開示しているものはない:WO98/08847(国際公開日:1998年3月5日);WO02/072101(国際公開日:2002年9月19日19);WO02/072202(国際公開日2002年9月19日)。本発明は、WO98/08847からの選択発明である。
【0007】
本発明の1つの目的は、CRF受容体アンタゴニストである、新規ピロロ[1,2−b]ピリダジン誘導体を提供することである。
本発明の他の目的は、不安障害、うつ病、およびストレス関連障害などの、CRFまたはCRF受容体が関与する疾患または症状などの治療として新規化合物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、不安障害、うつ病、およびストレス関連障害などの、CRFまたはCRF受容体が関与する疾患または症状の治療方法を提供することである。
本発明の他の目的は、不安障害、うつ病、およびストレス関連障害などの、CRFまたはCRF受容体が関与する疾患または症状の治療方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、不安障害、うつ病、およびストレス関連障害の、CRFまたはCRF受容体が関与する疾患または症状の治療に有用な医薬組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、本出願の明細書中の発明の詳細な説明から明らかであろう。
発明の概要
驚いたことに、我々は、式(I)の化合物が、3nM未満のKi値を有する強力なCRF受容体アンタゴニストであることを見出した。
【0011】
1つの側面において、本発明は、CRF受容体の強力なアンタゴニストである、式(I)の化合物、またはその立体異性体、薬学的に許容される塩、もしくはプロドラッグを提供する。
【0012】
他の側面において、本発明は、温血動物における、CRF分泌過剰の症状を示す障害の治療、あるいはCRF受容体と拮抗することにより疾患に効果があるかあるいは疾患を緩和することができる治療に有用な、式(I)の化合物、またはその立体異性体、薬学的に許容される塩、もしくはプロドラッグを提供する。かかる疾患の例は、不安状態、全般的不安障害、強迫性障害、社会不安障害、うつ病性障害を伴う不安障害、パニック障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害、および非定型性不安障害などの不安関連障害;大うつ病、単一エピソードうつ病、反復性うつ病、小児虐待によるうつ病、および産後うつ病を含むうつ病;気分変調性障害;双極性障害;および気分循環症などの気分障害;進行性核上性麻痺;免疫抑制;リウマチ様関節炎および変形性関節症などの炎症性疾患;不妊症を含む生殖障害;疼痛;喘息;アレルギー;ストレスによる睡眠障害;線維筋痛症などの痛みの知覚;疲労症候群;ストレスによる頭痛;癌;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症;アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性疾患;潰瘍、過敏性腸症候群、クローン病、けいれん性結腸、下痢、および術後イレウスおよび精神病理学的障害またはストレスに関連する過敏性大腸などの消化管疾患;食欲不振および神経性大食症などの摂食障害;出血性ストレス;ストレスによる挿間性精神障害;偽甲状腺機能低下症候群;抗利尿ホルモン不適切分泌ホルモン(ADH);肥満;頭部外傷;脊髄外傷;脳海馬虚血などの虚血性神経細胞障害;興奮毒性による神経損傷;てんかん;高血圧、頻脈、鬱血性心不全、および脳卒中などの心血管および心臓関連障害;ストレスによる発熱、ブタストレス症候群、ウシ輸送熱、ウマ発作性細動、およびニワトリの閉じ込め、羊のシェアリングストレスまたはイヌのヒト−動物交流関連ストレスによる機能障害などの、ストレスによる免疫機能障害を含む免疫機能障害;筋肉けいれん;尿失禁;アルツハイマー型老年期痴呆;多発脳梗塞性痴呆;筋萎縮性側索硬化症;アルコール、コカイン、ヘロイン、ベンゾジアゼピン系薬剤、または他の薬物への依存などの薬物依存症および常用;骨粗しょう症;精神性・社会性小人症、低血糖症、ならびにアクネ、乾癬、慢性接触皮膚炎、およびストレスにより増悪する皮膚障害などの皮膚障害などを含む。本発明の化合物は、禁煙および毛髪成長の促進、または脱毛の治療にも有用である。
【0013】
さらに他の側面において、本発明は、上記の疾患の治療のための、式(I)の化合物、ならびにその立体異性体,薬学的に許容される塩、およびプロドラッグの使用を提供する。
【0014】
さらに他の側面において、本発明は、上記の疾患の治療に有用な、式(I)の化合物、ならびにその立体異性体,薬学的に許容される塩およびプロドラッグを含んでなる組成物を提供する。
【0015】
さらに他の側面において、本発明は、本化合物の1以上が、直接あるいは間接に検出可能シグナルを提供できる標識に結合していていることができる、結合アッセイにおける本発明の化合物に使用を提供する。種々の標識には、放射性同位体、蛍光剤、化学発光剤、特異的結合分子、粒子(例えば磁気粒子)などが含まれる。
【0016】
さらに他の側面において、本発明は、細胞および組織における受容体の位置決めのためのプローブおよび試験化合物の受容体結合特性の測定における使用のための標準品および試薬としての、本発明の化合物(特に本発明の標識化合物)の使用に関する。
【0017】
標識化した本発明の化合物は、組織切片のオートラジオグラフィーなどのインビトロ研究、またはPETもしくはSPECTスキャンなどのインビボ法に使用できる。特に、本発明の化合物は、医薬候補化合物のCRF受容体に結合する能力の測定における、標準品および試薬として有用である。
発明の詳細な説明
第1の側面において本発明は、式(I)の化合物
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、RはHまたはMeである)またはその立体異性体、その立体異性体の混合物、薬学的に許容されるそのプロドラッグ、もしくは薬学的に許容されるその塩を提供する。
本明細書に記載の化合物は、1以上の不斉中心または不斉面を有することができ、本化合物のすべてのキラル体(エナンチオマーおよびジアステレオマー)ならびにラセミ体は、本発明に含まれる。本発明の化合物は、ラセミ体または、例えば分割剤の存在下での結晶化またはキラルHPLCカラムなどを用いる慣用法によるラセミ体の分割による、光学的に純粋な形で単離され、あるいは、エナンチオマー過剰物質の製造を可能にする不斉合成経路により製造される。本発明は、式(I)で表される化合物のすべての可能な互変異性体を含む。
【0020】
本発明の化合物は、一般的に、下記のスキーム1に例示される合成経路を用いて製造できる。出発物質は市販されているか、あるいは当業者に公知の方法により製造できる。
【0021】
【化2】

【0022】
4−ブロモ−3−メチルアニソール(1)を、n−ブチルリチウムまたはt−ブチルリチウムなどの強塩基で処理し、α−メチル−γ−ブチロラクトン(2)と反応させることより、ケトン3を得ることができる。アルコール3の酸化によるアルデヒド4の合成は、Swern酸化を含むがこれに限定されない方法により実施できる。生成するジカルボニル化合物4をN−アミノフタルイミドと反応させることにより、置換ピロール化合物5を得ることができる。したがって、5をヒドラジンで処理することにより、1−アミノピロール化合物6を得、モレキュラーシーブを入れたディーンスターク装置を備えた反応容器中で、p−トルエンスルホン酸などの触媒量の酸の存在下、クロロホルム、トルエンまたはテトラヒドロフランなどを含むがこれに限定されない溶媒中でβ−ケトエステルまたはトランス−3−エトキシクロトン酸エチルとこれを反応させて、二環式化合物7を得ることができる。化合物7のヒドロキシル基は、還流しているブロモベンゼン中で、三臭化リンと反応させることにより、ブロモ基に変換できる。得られるブロモ化合物8に、1−エチルプロピルアミンまたは2−ブチルアミンと、パラジウム触媒(例えばPd(OAc)、Pd(dba)など)を用いるアミノ化反応(Wolfe, J. P. and Buchwald, S. L. J. Org. Chem. 2000, 65, 1144)を行うことにより式(I)の化合物を得ることができる。
【0023】
本発明はまた、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩を含む。本発明の薬学的に許容される塩は、適切な無機酸または有機酸から製造できる。薬学的に許容される塩であれば、塩の性質は限定されない。式Iの化合物の薬学的に許容される適切な塩は、無機酸または有機酸から製造できる。かかる無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸およびリン酸がある。かかる有機酸の例は、脂肪族系、脂環式系、芳香族系、アラリファティック系、複素環系、カルボン酸系およびスルホン酸系の有機酸を含み、かかる例には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メチルスルホン酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エムボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エチルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルゲン酸、ガラクツロン酸がある。適切な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Merck Publishing Company, Easton, PA, 1985, p. 1418 において見出される(その開示を本願に引用して援用する)。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法を用いて製造できる。一般的に、かかる塩は、水もしくは有機溶媒またはその2つの混合物中で、適切な酸の化学量論量と、本化合物の遊離塩基形とを反応させることにより製造できるが、一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水溶媒中での反応が好ましい。
【0024】
他の側面において、本発明は、式(I)の化合物のプロドラッグを提供する。プロドラッグは、化学的安定性の改善、患者認容性およびコンプライアンスの改善、生物学的利用率の改善、作用の持続時間の長期化、臓器選択性の改善、製剤の改善(例えば、水溶性の増加)、および/または副作用(例えば、毒性)の軽減を目的として製造される。例えば、T. Higuchi and V. Stella, ”Prodrugs as Novel Delivery Systems”, Vol. 14 of the A. C. S. Symposium Series; Bioreversible Carriers in Drug Design, ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, (1987) を参照されたい。本発明のプロドラッグは、当該技術分野で公知の方法を用いて、式(I)の化合物から容易に製造できる。例えば、Notari, R. E., ”Theory and Practice of Prodrug Kinetics, ”Methods in Enzymology, 112: 309-323 (1985) ; Bodor, N., ”Novel Approaches in Prodrug Design, ”Drugs of the Future, 6 (3): 165-182 (1981); and Bundgaard, H., ”Design of Prodrug: Bioreversible-Derivatives for Various Functional Groups and Chemical Entities, ”in Design of Prodrugs (H. Bundgaard, ed.), Elsevier, N. Y. (1985); Burger's Medicinal Chemistry and Drug Chemistry, Fifth Ed., Vol. 1, pp. 172-178, 949-982 (1995) を参照のこと。例えば、式(I)の化合物のプロドラッグは、通常の操作またはインビボのいずれかで、修飾が分解されて親化合物が得られるように、化合物のアミン基を修飾することにより製造できる。このように製造されるプロドラッグ形の例は、生加水分解性アミド、ならびに生加水分解性カルバメートおよびチオカルバメートを含む。
【0025】
他の側面において、本発明は、通常自然界に見出される原子質量または質量数から異なる原子質量または質量数を有する原子により1以上の原子が置換されていること以外は、式(I)の化合物と同一である、同位体標識化合物を提供する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例は、H、11C、および14Cなどの、水素、炭素、窒素、酸素、および塩素の同位体を含む。前述の同位体および/または他の原子の他の同位体を含む式(I)の化合物は、本発明の範囲内である。Hおよび14Cなどの放射性同位体が組み込まれた本発明の同位体標識化合物は、薬剤および/または基質の組織分布アッセイに有用である。トリチウム(すなわちH)および炭素−14(すなわち14C)同位体は、PET(陽電子放出断層撮影法)に特に有用である。さらに、重水素(すなわちH)などの重い同位体に置換することにより、より大きな代謝的安定性に由来する特定の治療効果(例えば、インビボ半減期の増加または投与必要量の減少など)が得られる可能性があり、したがって、状況によっては好ましい場合がある。本発明の式(I)の同位体標識化合物は、一般的に、非同位体標識化合物のかわりに、同位体標識化合物を用いる合成法を実施することにより製造できる。
【0026】
式(I)の化合物は、CRF受容体に対するCRFの特異的結合を阻害する能力を有する、CRF受容体のアンタゴニストであり、アンタゴニスト活性はCRFと関連している。CRF受容体アンタゴニストとしての化合物の有効性は、種々のアッセイ法で測定できる。式(I)の化合物のCRFアンタゴニストとしての活性は、DeSouzaら(J. Neuroscience 7:88, 1987)および Battagliaら(Synapse 1:572, 1987)に開示されているアッセイ(これらに限定されない)を含む、一般に認められている、この目的のための1以上のアッセイにより評価できる。CRF受容体親和性は、放射性標識CRF(例えば、[125I]チロシン−CFR)が、その受容体(例えば、ラット大脳皮質膜から調整した受容体)に結合することを阻害する化合物の能力を測定する結合研究により測定できる。DeSouza ら (上記1987)により記載された放射性リガンド結合アッセイは、CRF受容体に対する化合物の親和性を測定するためのアッセイを提供している。かかる活性は、一般的に、受容体から放射性標識リガンドの50%を置換するために必要な化合物の濃度としてのIC50から算出され、以下の式から算出される”Ki”値として記録される:
【0027】
【数1】

【0028】
(式中、L=放射性リガンドであり、K=受容体に対する放射性リガンドの親和性である(Cheng and Prusoff Biochem. Pharmacol. 22:3099, 1973))。受容体結合アッセイの例は、以下の実施例Aにおいて提供する。
【0029】
CRF受容体結合阻害に加えて、化合物のCRF受容体アンタゴニスト活性は、CRFが関与する活性に拮抗作用を示す化合物の能力により立証できる。例えば、CRFは、アデニル酸シクラーゼ活性を含む、種々の生物化学的プロセスを活性化させることが知られている。したがって、化合物は、例えばcAMPレベルを測定するなど、CRF応答性アデニル酸シクラーゼ活性に拮抗するその能力により、CRFアンタゴニストとして評価できる。Battagliaら(上記1987)によって記載されている、CRF応答性アデニル酸シクラーゼ活性アッセイは、CRF活性と拮抗する化合物の能力を測定するためのアッセイを提供している。したがって、CRF受容体アンタゴニスト活性は、最初の結合アッセイ(DeSouzaにより記載されているものなど(上記、1987))と、それに続くcAMPスクリーニングプロトコール(Battaglia(上記、1987)により記載されているものなど)を一般的に含むアッセイ技術により測定できる。、CRF応答性アデニル酸シクラーゼ活性アッセイの例を、以下の実施例Cで提供する。
【0030】
したがって、他の側面において、本発明は、CRF受容体に拮抗するために有効な量で、本発明の化合物を温血動物に投与することを含んでなる、温血動物における、CRF受容体に拮抗する方法を提供する。温血動物は、好ましくは哺乳動物であり、さらに好ましくはヒトである。
【0031】
他の側面において、本発明は、CRF受容体のリガンドのためのスクリーニング方法であって、a)CRF受容体、検出可能な標識で標識された式(I)の化合物、および候補リガンドを用いる競合結合アッセイを実施し、b)該候補リガンドが該標識化合物と置換する能力を測定することを含んでなる該方法を提供する。
【0032】
他の側面において、本発明は、a)化合物が組織と結合することが可能な条件下で、検出可能な標識で標識された式(I)の化合物を組織と接触させ、b)組織と結合した標識化合物を検出することを含んでなる、組織におけるCRF受容体の検出方法を提供する。組織における受容体を検出するためのアッセイ手順は、当業界に公知である。
【0033】
他の側面において、本発明は、本発明の化合物をCRF受容体を発現している細胞と接触させることを含んでなる、CRF受容体に対するCRFの結合の阻害方法であって、該化合物が、CRF受容体に対するCRFの結合を阻害するために十分な濃度で溶液中に存在する該方法を提供する。CRF受容体を発現している細胞株の例であって、本インビトロアッセイに使用できるものは、当該技術分野で公知のIMR32細胞である。
【0034】
式(I)の化合物、またはその立体異性体、薬学的に許容される塩、もしくはプロドラッグは、温血動物におけるCRFの分泌過剰を発現している疾患の治療、またはCRF受容体に拮抗することにより疾患が影響を受ける、あるいは緩和される治療に有用である。かかる疾患の例は、上述されている。
【0035】
したがって、さらに他の側面において、本発明は、本発明の化合物の治療的有効量を、温血動物に投与することを含んでなる、上記疾患の治療方法を提供する。温血動物は、好ましくは哺乳動物であり、とりわけヒトである。
【0036】
本発明の方法により治療できる具体的な疾患は、好ましくは、不安状態、全般的不安障害、強迫性障害、社会不安障害、うつ病性障害を伴う不安障害、パニック障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害、および非定型性不安障害などの不安関連障害;気分変調性障害、双極性障害、気分循環症、ならびに大うつ病、単一エピソードうつ病、反復性うつ病、小児虐待によるうつ病、および産後うつ病を含むうつ病などの気分障害;アルコール、コカイン、ヘロイン、ベンゾジアゼピン系薬剤、または他の薬剤に対する依存などの薬物依存症および常用;リウマチ様関節炎および変形性関節症などの炎症性疾患;潰瘍、過敏性腸症候群、クローン病、けいれん性結腸、下痢、ならびに術後イレウスおよび精神病理学的障害またはストレスに関連する過敏性大腸などの消化管疾患;ならびにアクネ、乾癬、慢性接触皮膚炎、およびストレスにより増悪する皮膚疾患などの皮膚疾患を含む。
【0037】
本発明の方法により治療できる具体的な疾患は、さらに好ましくは、不安状態、全般的不安障害、強迫性障害、社会不安障害、うつ病性障害を伴う不安障害、パニック障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害、および非定型性不安障害などの不安関連障害ならびに気分変調性障害、双極性障害、気分循環症、ならびに大うつ病、単一エピソードうつ病、反復性うつ病、小児虐待によるうつ病、および産後うつ病を含むうつ病などの気分障害を含む。
【0038】
本発明の方法により治療できる具体的な疾患は、よりさらに好ましくは、全般的不安障害および大うつ病を含む。
温血動物における、前述の疾病または疾患の治療のための本発明の化合物の治療的有効量は、当業者に公知の種々の方法により決定できるが、例えば、特定の疾患を患っている動物に特定の薬剤の種々の量を投与し、ついで動物に対する効果を測定することにより決定できる。一般的に、本発明の化合物の治療的有効量は、0.002〜200mg/体重(kg)の活性成分の投与量で、毎日経口投与できる。通常、1日に1〜4回の分割量または徐放性製剤で0.01〜10mg/kgの投与が、所望の薬理効果を得るために有効である。しかしながら、いずれかの特定の患者に対する特定の投与レベルは、用いる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、ならびに排泄速度、薬剤組み合わせおよび特定の疾患の重篤度を含む種々の因子によって決まる。投与頻度はまた、用いられる化合物および治療される特定の疾患によって変えることができる。しかしながら、大部分のCNS疾患の治療のためには、1日4回以下の用法が好ましい。ストレスおよびうつ病の治療のためには、1日に1回または2回の用法が特に好ましい。
【0039】
本発明の化合物は、適切な製剤を用いる、経口、局所、経皮、非経口もしくは直腸投与、または吸入もしくはスプレーなどの、哺乳動物の体内の薬剤の作用部位で活性成分と接触をもたらす手段で上記疾患を治療するために投与できる。”非経口”という用語は、本明細書においては、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射もしくは輸液技術を含む。本化合物は、単独でも投与できるが、一般的に、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と共に投与される。
【0040】
したがって、他の側面において、本発明は、式(I)の化合物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩、もしくはそのプロドラッグ、またはそのプロドラッグの薬学的に許容される塩を含んでなる医薬組成物を提供する。したがって、1つの実施態様において、医薬組成物はさらに、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む。”薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤”は、ヒトを含む温血動物への生物学的活性成分の送達のために当業界に一般に認められている媒体である。かかる担体は、一般的に、当業者に公知の、決定し説明するための多くの要素にしたがって製剤化される。これらの要素は:製剤化される活性成分のタイプと性質;薬剤を含有する組成物が投与される被験者;組成物の対象とする投与経路;ターゲットを絞った治療適応を含むがこれらに限定されない。薬学的に許容される適切な担体およびその選択に関与する要素に関する記載は、容易に入手できる種々の情報源、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985 などの容易に入手できる種々の情報源において見出すことができる。
【0041】
経口投与を対象とした組成物は、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性サスペンジョン、分散性粉剤もしくは顆粒剤、エマルジョン、硬もしくは軟カプセル、またはシロップもしくはエリキシル剤、の形であることができ、当業界に公知の方法にしたがって製造できる。かかる組成物は、薬学的に洗練された味の良い製剤を提供するために、甘味剤、風味剤、着色剤および保存剤からなるグループから選択される1以上の薬剤を含むことができる。
【0042】
錠剤は、錠剤の製造に適した薬学的に許容される賦形剤と混合した活性成分を含む。これらの賦形剤は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;コーンスターチ、またはアルギン酸などの顆粒化および崩壊剤;デンプン、ゼラチンまたはアカシアゴムなどの結合剤およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの滑沢剤であることができる。錠剤はコーティングされていなくてもよく、あるいは錠剤は、消化管における崩壊および吸収を遅らせるために、コーティングされていてもよく、そして、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの遅延物質が使用できる。
【0043】
経口投与のための製剤は、活性成分が不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリン)と混合された硬ゼラチンカプセルとして、または、活性成分が、水もしくはオイル媒体(例えば、落花生油、流動パラフィンもしくはオリーブ油)と混合された軟ゼラチンカプセルとして、提供されうる。
【0044】
水性サスペンジョンは、水性サスペンジョンの製造に適した賦形剤と混合した活性物質を含む。かかる賦形剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントガムおよびアカシアゴムなどの縣濁化剤であり;分散剤または湿潤剤は、天然に存在するホスファチド(例えばレシチン)、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなど)から誘導される部分エステルとの縮合物、またはエチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール無水物(例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)から誘導される部分エステルとの縮合物であることができる。水性サスペンジョンはまた、1以上の防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn−プロピル)1以上の着色剤、1以上の甘味剤、(ショ糖またはサッカリンなど)を含むことができる。
【0045】
油性サスペンジョンは、植物油(例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油)または鉱油(流動パラフィンなど)に活性成分を縣濁化することにより、製剤化することができる。油性サスペンジョンは、蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールなどの増粘剤を含むことができる。甘味剤(例えば上記のものなど)及び風味剤を、味の良い経口製剤を提供するために添加することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加により保存することができる。
【0046】
水の添加による水性サスペンジョンの製造に適した分散性粉剤および顆粒剤により、分散剤もしくは湿潤剤、縣濁化剤および1以上の防腐剤と混合した活性成分が提供される。適切な分散剤もしくは湿潤剤および縣濁化剤は、既に上述したものにより例示される。さらなる賦形剤(例えば甘味剤、風味剤および着色剤)もまた添加することができる。
【0047】
シロップおよびエリキシル剤は、甘味剤(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはショ糖)と共に製剤化できる。かかる製剤はまた、粘滑剤、防腐剤ならびに風味剤および着色剤を含むこともできる。
【0048】
本発明の化合物の直腸投与のための座剤は、本化合物と非刺激性の適切な賦形剤とを混合することにより製造でき、かかる座剤は、常温では固体ではあるが直腸温では液体であって、したがって直腸で溶解して薬剤を放出する。かかる物質の例は、カカオバターおよびポリエチレングリコールである。
【0049】
医薬組成物は、滅菌水性または油性注射サスペンジョンの形であることができる。このサスペンジョンは、上述した適切な分散剤もしくは湿潤剤および縣濁化剤を用い、当業界に公知の技術により製剤化できる。滅菌注射溶液またはサスペンジョンは、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中に製剤化できる(例えば1,3−ブタンジオール中の溶液として)。使用可能な、許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液および生理食塩液がある。さらに、通常、滅菌不揮発性油が溶媒または縣濁化剤として使用される。この目的のためには、合成モノまたはジグリセリドを含むいずれのブランドの不揮発性油も使用できる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の製造に使用可能である。
【0050】
投与に適する製剤は、一般的に、単位あたり約1mg〜約100mgの活性成分を含む。これらの医薬組成物において、活性成分は、通常、組成物の全重量に基づいて約0.5〜95重量%含有される。本発明の化合物の投与のための製剤の例は、以下を含む:(1)カプセル:多くの単位カプセルは、標準的なツーピース硬ゼラチンカプセルのそれぞれに100mgの粉末活性成分、150mgのラクトース、50mgのセルロース、および6mgのステアリン酸マグネシウムを詰めることにより製造される;(2)軟ゼラチンカプセル:大豆油、綿実油、またはオリーブ油などの消化できる油と活性成分の混合物を調整し、容積式ポンプを用いてゼラチンに注入して100mgの活性成分を含有する軟ゼラチンカプセルを作製する。カプセルを洗浄し乾燥した;(3)錠剤:単位用量が100mgの活性成分、0.2mgのコロイド状二酸化珪素、5mgのステアリン酸マグネシウム、275mgの微結晶セルロース、11mgのデンプン、および98.8mgラクトースであるように、慣用法を用いて多くの錠剤を製造する。味を良くするために、または遅延吸収を強化するために適切なコーティングを施すことができる。
【0051】
他の側面において、本発明は:a)包装材料;b)前記包装材料中に含有する本発明の化合物を含んでなる医薬剤;およびc)前記医薬剤が下記の疾患の治療のために使用できることを表すラベルまたは添付文書を含んでなる製品を提供する。
定義
特記しない限り、本出願において、以下の定義が用いられる。
【0052】
”薬学的に許容される”という用語は、正常な医学的判断の範囲内で、妥当な便益/リスク比に相応な、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の障害もしくは合併症を伴わない、ヒトを含む動物の組織との接触における使用に適した化合物、物質、組成物、および/または製剤を言う。
【0053】
”立体異性体”という用語は、同一結合により結合された同一原子により構成されるが、重ね合わせることができない、異なる3次元構造を有する化合物を言う。3次元構造を、立体配置と呼ぶ。本明細書においては、”エナンチオマー”という用語は、互いに重ね合わせることができない鏡像分子である、2つの立体異性体を言う。”キラル中心”という用語は、4つの異なる基が結合している炭素原子を言う。本明細書においては、”ジアステレオマー”という用語は、エナンチオマーではない立体異性体を言う。さらに、本明細書においては、1つのキラル中心のみにおいて異なる立体配置を有する2つのジアステレオマーを”エピマー”と呼ぶ。”ラセミ体”または”ラセミ混合物”という用語は、等量のエナンチオマーの混合物を言う。
【0054】
”プロドラッグ”という用語は、式(I)の化合物以外の化合物であって、インビボで変換されて式(I)の化合物を生成する化合物を言う。変換は、血中での加水分解などの、種々のメカニズムによってなされうる。プロドラッグの使用についての詳細な説明は、T. Higuchi and W. Stella, ”Prodrugss as Novel Delivery Systems,”Vol. 14 of the A.C. S. Symposium Series, and in Bioreversible Carriers in Drug Design, ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987. で提供されている。
【0055】
”治療的有効量、””有効量、””治療量、”または”有効投与量”という用語は、所望される薬理学的効果または治療効果を発揮し、それにより疾患または症状の効果的な予防または治療をもたらすために十分な量を言う。
【0056】
”発明の化合物、””本発明の化合物、””本発明化合物、”または”式(I)による化合物”などの用語は、簡潔のために、式(I)の化合物、またはその立体異性体、その薬学的に許容される塩、もしくはそのプロドラッグ、または式(I)の化合物のプロドラッグの薬学的に許容される塩を言う。
【0057】
”治療、””治療する、””治療すること、”などという用語は、疾患の治癒と共に、疾患の緩和または回復の両方を含むことを意味する。これらの用語はまた、疾患または障害が実際に治癒されていない場合であっても、あるいは疾患または症状の進行がそれ自体緩和または回復されていない場合であっても、疾患または障害の1以上の症状の緩和、改善、軽減、治癒、または減退を含む。”治療”という用語および類似の用語はまた、防止治療(例えば予防治療)および緩和治療を含む。
(実施例)
さらに詳細は無くとも、以下の説明を用いることにより、当業者は本発明を最大限に実施できると考えられる。本発明をさらに詳細に説明するために、以下の実施例を提供する。これらは例示を目的としたものであって、決して本発明を限定するものではない。実施例1および2に、式(I)の化合物の製造の例を示す。実施例A〜Dに、本発明の化合物の生物学的性質を測定するために使用することができる種々の生物学的アッセイ法の例を示す。
実施例1
7−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−2,6−ジメチル−N−[(1S)−1−メチルプロピル]ピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−アミン
【0058】
【化3】

【0059】
ステップ1:4−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−3−メチル−4−オキソブタナールの製造
内部温度制御装置を備えた、200mlの3頚丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、4−ブロモ−3−メチルアニソール(2.77g,16.3mmol)のTHF(40mL)溶液を加えた。溶液をドライアイス/アセトン浴で−68℃に冷却した。この溶液に、t−BuLi(21.0mL,1.70M溶液ペンタン,35.8mmol)をゆっくり加え、ついでα−メチル−γ−ブチロラクトン(2.30mL,24.4mmol)のTHF(10.0mL)溶液を加えた。内部温度を−55℃未満に制御した。−55℃未満で1時間撹拌後、反応混合物をNHCl溶液でクエンチし、室温に暖めた。水およびEtOAcを加え、分離した。水層をEtOAc(2x)で抽出した。合わせた有機溶液を乾燥(MgSO)し、濾過した。濾液を減圧下でで濃縮し、溶媒を除去し、3.85gの1−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシ−2−メチルブタン−1−オンを淡黄色オイルで得、これを他のバッチの物質と合わせてカラムクロマトグラフィーにかけ、1.26g(18%)の透明オイルを得た。この物質をSwern酸化に用いた。内部温度制御装置を備えた100mLの3−頚丸底フラスコに、DMSO(1.75mL,24.6mmol)およびCHCl(20mL)を加えた。溶液をMeOH/液体窒素浴を用いて−80℃に冷却した。この溶液に、シリンジポンプを介して塩化オキサリル(1.10mL,12.3mmol)をゆっくり加えた。混合物を−80℃で15分間撹拌し、ついで上記の1−(2−メチル−4−メトキシフェニル)−4−ヒドロキシ−2−メチルブタン−1−オン(1.23g)のCHCl(3.0mL)溶液を、シリンジポンプを介してゆっくり加えた。−70℃未満で1時間撹拌した後、混合物にEtN(7.70mL,55.0mmol)を加えた。5分後、冷却浴を除き、混合物を室温で1.5時間撹拌した。混合物をヘキサン(120mL)で希釈し、水で洗浄した。水層をヘキサンで抽出した。合わせた有機溶液を、減圧下で溶媒がなくなるまで濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,1/6 EtOAc/ヘプタン)にかけ、0.326g(27%)の淡黄色オイルを表題化合物として得た。H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.87 (s, 1H), 7.82(d, J = 8 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 3 Hz, 1H), 6.81 (s, 1H), 3.94-3.86 (m, 4H), 3.20-3. 13 (m, 1H), 2.62-2. 56 (m, 1H), 2.51 (s, 3H), 1.21 (d, J = 7 Hz, 3H); MS m/z 221.1 (M++H).
ステップ2:2−[2−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−3−メチル−IH−ピロール−1−イル]−IH−イソインドール−1,3(2H)−ジオンの製造
HCl(5N,0.15mL)およびジオキサン(10.0mL)中の4−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−3−メチル−4−オキソブタナール(0.31g,1.40mmol)およびN−アミノフタルイミド(0.28g,1.55mmol)の混合物を2時間還流した。室温に冷却後、残渣を減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,1/9 EtOAc/ヘプタン)にかけ、0.42g(86%)の黄白色固体を表題化合物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.91-7.89 (m, 1H), 7.81-7. 73 (m, 3H), 7.09 (d, J =8 Hz, 1 H), 6.74-6. 72 (m, 2H), 6. 58 (dd, J = 3.8 Hz, 1H), 6. 29 (s, 1H), 3. 73 (s, 3H), 2. 23 (s, 3H), 1. 97 (s, 3H); MS m/z 347.1(M++H).
ステップ3:2−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−3−メチル−1H−ピロール−1−アミンの製造
2−[2−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−3−メチル−1H−ピロール−1−イル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(0.40g,1.15mmol)のEtOH縣濁液に、室温で、ヒドラジン一水和物(0.14mL,2.89mmol)を加えた。反応混合物を還流条件下で1時間加熱した。室温に冷却後、混合物を濾過した。濾液を減圧下で溶媒がなくなるまで濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1/4 EtOAc/ヘプタン)にかけて0.233g(93%)の透明オイルを表題化合物として得た。H NMR (400 MHz, CDC13) δ 7.17 (d, J = 8 Hz, 1H), 6.89 (s, 1H), 6.84-6. 79 (m, 2H), 6.00 (s, 1H), 3.87 (s, 3H), 2.16 (s, 3H), 1.93 (s, 3H); MS m/z 217. 1 (M++H).
ステップ4:7−(4−メトキシ2−メチルフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−オールの製造
2−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−3−メチル−1H−ピロール−1−アミン(0.23g,1.06mmol)、trans−3−エトキシクロトン酸エチル(0.17g,1.06mmol)およびp−トルエンスルホン酸(0.01g,0.053mmol)のCHCl(7.0mL)中の混合物を、モレキュラーシーブを添加したディーンスターク管を用いて、24時間還流した。室温に冷却後、混合物を減圧下で溶媒がなくなるまで濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,1/4 EtOAc/ヘプタン)にかけて、0.194g(65%)のベージュ色のフォームを所望の生成物として得た。mp 234-237℃ ; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) 8 7.22 (d, J = 8 Hz, 1H), 6.89-6. 87 (m, 1H), 6.84-6. 79 (m, 1H), 6.54 (br s, 1H), 5.94 (br s, 1H), 3.85 (s, 3H), 2.34 (s, 3H), 2.18 (s, 3H), 2.08 (s, H); MS m/z 283.2 (M++H).
ステップ5:4−ブロモ−7−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジンの製造
7−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−オール(0.16g,0.567mmol)および三臭化リン(0.27mL,2.83mmol)のブロモベンゼン(3.0mL)溶液を5時間還流した。室温に冷却後、混合物をCHClで希釈した。飽和NaHCO溶液を加えて中和し、ただちに分離した。水層をCHCl(2X)で抽出した。合わせたCHCl溶液をMgS0で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で溶媒がなくなるまで濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1/20EtOAc/ヘキサン)にかけ、0.14g(64%)の淡黄色オイルを表題化合物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7. 12 (d, J = 8 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 3 Hz, 1H)、6.76 (dd, J = 3,8 Hz, 1H), 6.59 (s, 1H), 6.49 (s, 1H), 3.79 (s, 3H), 2.28 (s, 3H), 2.12 (s, 3H), 1.98 (s, 3H); MS m/z 347.1 (M++H).
ステップ6:7−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−2,6−ジメチル−N−[(1S)−1−メチルプロピル]ピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−アミンの製造
4−ブロモ−7−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン(0.137g,0.397mmol)、(S)−(+)−sec−ブチルアミン(0.08mL,0.794mmol)、キサントフォス(xantphos)(0.025g,0.04mmol)、CsCO(0.18g,0.55mmol)およびPd(dba)(0.018g,0.02mmol)のジオキサン(4.0mL)中の混合物を、17時間還流した。(S)−(+)−sec−ブチルアミン(0.08mL,0.794mmol)、キサントフォス(0.025g,0.04mmol)およびPd(dba)(0.018g,0.02mmol)をさらに加え、反応混合物をさらに4時間還流した。室温に冷却後、混合物をセライトのパッドを通過させて濾過した。濾液を減圧下で溶媒がなくなるまで濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,1/10EtOAc/ヘプタン)にかけ、0.024g(18%)の淡黄色オイルとして表題化合物を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.23 (d, J = 11 Hz, 1 H), 6.89 (d, J = 4 Hz, 1H)、6.83 (dd, J = 4, 11Hz, 1H), 6.29 (br s, 1H), 5.54 (s, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.64-3. 56 (m, 1H), 2.32 (s, 3H), 2.16 (s, 3H), 2.11 (s, 3H), 1.77-1.57 (m, 2H), 1.32-1. 28 (m, 3H)、1.06-0. 99 (m, 3H); MS m/z 338.4 (M++H).
実施例A
生物活性の評価のためのインビトロCRF受容体結合アッセイ
以下は、CRF受容体に対する試験化合物の生物活性の評価のための標準的なインビトロ結合アッセイの説明である。本アッセイは、DeSouza(DeSouza,1987)により記載されている改変プロトコールに基づいている。本結合アッセイは、通常、ラット由来の脳膜を用いる。結合アッセイのための脳膜を調整するために、ラット前頭皮質は、10mlの氷冷組織緩衝液中でホモジナイズする(50mM HEPES緩衝液(pH7.0)、10mM MgCl、2mM EGTA、1μg/mLのアプロチニン、1μg/mLのロイペプチンおよび1μg/mLのペプスタチンを含有する)。ホモジネートを48,000xgで10分間遠心分離し、得られるペレットを10mlの組織緩衝液中で再ホモジナイズする。48,000xgで10分間さらに遠心分離し、ついでペレットを300μg/mLのタンパク質濃度に再縣濁する。
【0060】
300μLの最終容量で、96ウェルプレートを用いて結合アッセイを行う。125I−羊−CRF(最終濃度150pM)を含む150μLのアッセイ緩衝液および種々の濃度の阻害剤に、150μLの膜縣濁液を加えることにより、アッセイを開始する。アッセイ緩衝液は、膜標品のために前述したものと同じであり、0.1%の卵白アルブミンおよび0.15mMのバシトラシンを加える。室温で2時間後、Packardセルハーベスターを用い、Packard GF/Cユニフィルタープレート(0.3%ポリエチレンイミンであらかじめ浸す)を通過させて濾過し、放射性リガンド結合を終了させる。0.01%TritonX−100を含むpH7.0の氷冷したリン酸緩衝液化生理食塩水でフィルターを3回洗浄する。Packardトップカウントで、フィルターの放射能を算定する。
【0061】
あるいはまた、IMR−32ヒト神経芽細胞腫細胞(ATCC; Hogg et al., 1996)などの、CRF受容体を天然に発現している組織および細胞は、前述の結合アッセイと類似の結合アッセイで使用できる。
【0062】
CRFの阻害に関して約10μM未満のKi値を有する場合、化合物は活性であると判断される。式(I)の化合物は、3nM未満のKi値を有する。
実施例B
生物活性の評価のためのエクスビボCRF受容体結合アッセイ
以下は、CRF受容体に対する試験化合物の生物活性を評価するための、典型的なエクスビボCRF受容体結合アッセイの説明である。
【0063】
絶食させた雄のHarlen−bredスプラーグ・ドーリー・ラット(170〜210g)に、12:30および2:00PMの間に胃洗浄により試験化合物またはビヒクルを経口投与した。化合物は、ビヒクル(通常、10%大豆油;5%ポリソルベート80;dHO中)中に調整した。薬剤投与の2時間後に、ラットを断頭により殺し、前頭皮質を素早く解剖し、ドライアイス上に置き、ついでアッセイに使用するまで−80℃で冷凍し;動脈血をヘパリン処理済みチューブに回収し、血漿を遠心分離(2500rpmで20分間)し、−20℃で冷凍した。
【0064】
結合アッセイの日に、組織サンプルの重量を測り、氷冷した50mM Hepes緩衝液(10mM MgC1、2mM EGTA、1μg/mLアプロチニン、1μg/mLロイペプチンヘミ硫酸塩、および1μg/mLペプスタチンA、0.15mMバシトラシン、ならびに0.1%卵アルブミンを含む;23℃でpH=7.0)中で、解凍させ、ついでセッティング5(Kinematics製のポリトロン)で30分間ホモジナイズした。ホモジネートは、アッセイ緩衝液(前述の)またはDMP−904(10μM)の存在下、[125I]CRF(0.15nM,NEN)でインキュベート(2時間,23℃,暗所で)した。アッセイを濾過 (Packard FilterMate,GF/Cフィルタープレート)により終結させ;プレートをPackardトップカウントLSCで計数し;DPMから合計および非特異的fモルを算出する。データをビヒクル対照(特定の結合したfモル)の%として表現する。統計的有意性をスチューデントt−検定を用いて決定した。
実施例C
CRF応答性アデニル酸シクラーゼ活性の阻害
CRF応答性アデニル酸シクラーゼ活性の阻害は、前記[G. Battaglia et al., Synapse 1: 572 (1987) ]のように実施できる。簡潔に言えば、100mMトリス−HCl(37℃でpH7.4)、10mM MgCl、0.4mM EGTA、0.1%BSA、1mMイソブチルメチルキサンチン(IBMX)、250ユニット/mLのホスホクレアチンキナーゼ、5mMクレアチンリン酸、100mMグアノシン5'−三リン酸、100nM o−CRF、アンタゴニストペプチド(種々の濃度)および0.8mgの原湿重量の組織(おおよそ40〜60mgのタンパク質)を含む200mlの緩衝液中、37℃で10分間、アッセイを実施する。1mM ATP/[32P]ATP(おおよそ2〜4mCi/チューブ)を加えて反応を開始し、100mLの50mMトリス−HCl、45mMATPおよび2%ドデシル硫酸ナトリウムを加えて反応を停止する。cAMPの回収をモニターするために、分離の前に、1mLの[H]cAMP(おおよそ40,000dpm)を各チューブに加える。[32P]ATPからの[32P]cAMPの分離は、およびアルミナカラムによる連続溶出により行われる。
【0065】
あるいはまた、アデニル酸シクラーゼ活性は、NEN LifeSciencesからのアデニリルシクラーゼ活性化フラッシュプレートアッセイを用い、提供されているプロトコルにしたがって、96−ウェルフォーマットで評価できる。簡潔に言えば、抗サイクリックAMP抗体でプレコートした96−ウェルプレートに、所定量の放射性標識cAMPを加える。細胞または組織を加え、阻害剤の存在下または非存在下で刺激する。細胞により生産される非標識cAMPは、抗体からの放射性標識cAMPと置換する。結合している放射性標識cAMPは、Packardトップカウントなどのマイクロプレートシンチレーションカウンターなどを用いて検出できる光のシグナルを発生させる。標識化cAMP量を増やすことにより、所定のインキュベーション時間(2〜24時間)で検出可能シグナルの減少がもたらされる。
実施例D
インビボでの生物学的アッセイ法
本発明の化合物のインビボ活性は、当業界で利用でき、一般に認められている生物学的アッセイ法のいずれか1つを用いて評価できる。これらの試験の例には、驚愕反応聴力検査、階段昇降試験、および長期投与アッセイを含む。これらおよび他の、本発明の化合物の試験に有用なモデルは、C. W. Berridge and A. J. Dunn Brain Research Reviews 15: 71 (1990). に概説されている。化合物は、げっし類または小哺乳動物のいずれの種においても試験することができる。
【0066】
本発明は、特定の好ましい実施態様に関して記載し例示したが、他の実施態様は、当業者に明らかである。したがって、本発明は、記載し例示した特定の実施態様には限定されず、本発明の精神から離れていない修正または変更は可能であり、本発明の全範囲は添付の特許請求の範囲に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】

(式中、RはHまたはMeである)またはその立体異性体、またはその立体異性体の混合物、薬学的に許容されるそのプロドラッグ、もしくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
7−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−N−(1−エチルプロピル)−2,6−ジメチルピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
7−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−2,6−ジメチル−N−[(1S)−1−メチルプロピル]ピロロ[1,2−b]ピリダジン−4−アミンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの化合物を含み、所望により薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つの化合物の治療的有効量を温血動物に投与することを含んでなる、温血動物におけるCRFの分泌過剰を発現している疾患の治療方法。
【請求項6】
哺乳動物における疾患の治療方法であって、請求項1〜3のいずれか1つの化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、CRFと拮抗することにより該疾患の治療がもたらされる、あるいは促進される該治療方法。
【請求項7】
CRF受容体のリガンドのためのスクリーニング方法であって、a)CRF受容体、検出可能な標識で標識された請求項1〜3のいずれか1つの化合物、および候補リガンドを用いる競合結合アッセイを実施し、b)該候補リガンドが該標識化合物と置換する能力を測定することを含んでなる該方法。
【請求項8】
a)化合物が組織と結合することが可能な条件下で、検出可能な標識で標識された請求項1〜3のいずれか1つの化合物を組織と接触させ、b)組織と結合している標識化合物を検出することを含んでなる、組織におけるCRF受容体の検出方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1つの化合物を、CRF受容体を発現している細胞と接触させることを含んでなる、CRF受容体に対するCRFの結合の阻害方法であって、該化合物が、CRF受容体に対するCRFの結合を阻害するために十分な濃度で溶液中に存在する該方法。
【請求項10】
細胞がIMR32細胞である、請求項9の方法。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の化合物の有効量を、疾患の治療を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における疾患の治療方法であって、不安関連障害;気分障害;進行性核上性麻痺;免疫抑制;リウマチ様関節炎;変形性関節症;不妊症;疼痛;喘息;アレルギー;ストレスによる睡眠障害;線維筋痛症;疲労症候群;ストレスによる頭痛;癌;ヒト免疫不全ウイルス感染症;アルツハイマー病;パーキンソン病;ハンチントン病;消化管潰瘍;過敏性腸症候群;クローン病;けいれん性結腸;下痢;術後イレウスおよび精神病理学的障害またはストレスに関連する過敏性大腸;食欲不振;神経性大食症;出血性ストレス;ストレスによる挿間性精神障害;偽甲状腺機能低下症候群;抗利尿ホルモン不適切分泌ホルモン;肥満;頭部外傷;脊髄外傷;脳海馬虚血;興奮毒性による神経損傷;てんかん;高血圧;頻脈;鬱血性心不全;脳卒中;ストレスによる免疫不全;筋肉けいれん;尿失禁;アルツハイマー型老年期痴呆;多発脳梗塞性痴呆;筋萎縮性側索硬化症;薬物依存症および常用;骨粗しょう症;精神性・社会性小人症;低血糖症;アクネ;乾癬;慢性接触皮膚炎、および脱毛から疾患が選択される該方法。
【請求項12】
疾患が不安関連障害および気分障害から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
疾患が、不安関連障害は全般的不安障害であり、気分障害は大うつ病である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の化合物の有効量を、毛髪成長を必要とするヒトに投与することを含んでなる、ヒトにおける毛髪成長の促進方法。
【請求項15】
請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の化合物の有効量を、禁煙を必要とするヒトに投与することを含んでなる、ヒトにおける禁煙の促進方法。

【公表番号】特表2006−522097(P2006−522097A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506429(P2006−506429)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001006
【国際公開番号】WO2004/087708
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】