説明

ピロール化合物およびその使用

本発明はピロール含有化合物およびその使用方法を提供する。本発明のピロール化合物を含むキットおよび薬学的組成物もまた提供する。本明細書で開示した化合物および組成物は好ましくは、神経変性疾患、心血管疾患、増殖性疾患、および視力障害の治療において使用される。特に、脳卒中の治療のための方法および組成物を本明細書で開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年5月16日に出願された米国特許仮出願第60/471,425号、2003年6月20日に出願された米国特許仮出願第60/480,289号、2003年7月16日に出願された米国特許仮出願第60/488,178号、2003年7月16日に出願された米国特許仮出願第60/488,172号、2003年6月20日に出願された米国特許仮出願第60/480,475号、2003年10月30に出願された米国特許仮出願第60/516,610号、2003年10月30日に出願された米国特許仮出願第60/516,651号、および2003年10月30日に出願された米国特許仮出願第60/516,616号の恩典を主張する。これらはすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ホスホジエステラーゼ6デルタ(PDE6D)は最初、酵素PDE6の調節(非触媒性)サブユニットとして同定された。PDE6は光受容体細胞においてのみ発現され、網膜光情報伝達において重要な役割を果たす(Stryer、L.(1991)J.Biol.Chem.266:10711-14;(Florio、S.K. et al.(1996)J.Biol.Chem.271:24036-47)。PDE6ホロ酵素は膜結合形態および溶解形態の両方として存在する。膜結合形態のみが光情報伝達において活性であり、一方、溶解形態のみがPDE6Dサブユニットを含む。PDE6Dは細胞内局在性を調節し、したがってPDE6の活性を調節し、膜からのPDE6の放出はPDE6Dにより媒介される。PDE6Dは、おそらく、膜からPDE6ホロ酵素を除去することにより、桿体外節での光誘発cGMP加水分解を減少させることが観察されている(Cook et al.、J.Biol.Chem 276(7):5248-5255(2001))。PDE6Dは、PDE6AおよびPDE6BサブユニットのC末端付近のプレニル化ペプチド配列に特異的に結合することによりPDE6を可溶化する。PDE6Dは科学文献において、いくつかの異なる表記で示されており、例えば、PDEデルタ、PDEδ、PDE6デルタ、PDE6δ、PDE6D、およびPDEDである。
【0003】
PDE6Dは、コレステロール生合成経路の産物であるイソプレノイド中間体による翻訳後修飾により、重要な細胞シグナル伝達タンパク質のホストと特異的に相互作用する。1つのそのような修飾はプレニル化と呼ばれ、翻訳後のタンパク質、特に大きなクラスのGTP結合タンパク質へのリン脂質の付加が含まれる。プレニル基は適切な細胞内局在化および輸送にとって重要である。GTP結合タンパク質のプレニル化に対するイソプレノイド中間体の有効性は、様々な心血管性、炎症性、癌性および神経性疾患と関連する。有効なプレニル基の量の減少は、内皮機能の改善、酸化的ストレスの減少、炎症の減少および神経保護効果の増加と関連する。
【0004】
いくつかの疾患におけるPDE6の可能な役割のために、PDE6調節物質(modulator)を開発する必要がある。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
1つの局面では、本発明はピロール化合物およびそれらの使用を提供する。本明細書で記述した化合物は、様々な疾患、特に、PDE6、キノンレダクターゼ2(QR2)(NQO2としても公知)、および/またはカルビンジン-2(CLB2)の調節が望ましい疾患の治療において有益である。
【0006】
本発明の化合物および組成物は、PDE6、QR2、またはCLB2により引き起こされる、または悪化する疾患の治療および/または予防薬として有益である。そのような疾患の例としては、下記で詳細に記述されるように、心血管疾患、例えば動脈硬化、高血圧、不整脈(例えば、虚血性不整脈、心筋梗塞による不整脈、気絶心筋、心筋機能障害、不整脈等)、狭心症、心臓肥大、心筋梗塞、心不全(例えば、鬱血性心不全、急性心不全、心臓肥大等);腎疾患、例えば、糖尿病、糖尿病性腎症、虚血性急性腎不全、急性腎不全等;脳血管疾患、例えば虚血性脳卒中、脳出血等;および脳虚血性疾患、例えば、脳梗塞と関連する障害、脳出血後に引き起こされる障害、例えば続発症、脳浮腫、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0007】
別の局面では、本発明は神経変性状態および疾患を治療および/または予防するための組成物および方法を提供する。本発明の一定の化合物は神経保護効果を示す。ピロール化合物は単独で、または別の薬剤と組み合わせて送達させることができ、神経変性状態および疾患、例えば虚血性脳卒中により生じる状態を治療および/または予防するために使用することができる。本発明の化合物により治療することができる神経変性疾患としては、虚血性脳卒中、基底核またはパーキンソン病、てんかんまたは脳もしくは脊髄虚血、または外傷;アルツハイマー病、糖尿病性末梢神経障害、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、ハンチントン病、心不全(例えば、鬱血性心不全、急性心不全、心臓肥大等)または腎臓疾患が挙げられるが、それらに限定されない。しかし、好ましくは、虚血性脳卒中、外傷性脳損傷、またはパーキンソン病およびそれらの組み合わせである。
【0008】
本発明のピロール化合物および他の化合物は、それ自体または薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物で投与することができる。ピロール化合物および薬学的組成物は経口投与することができる。他の適した投与経路としては静脈内、筋内、皮下、経皮、口腔、または吸入、または坐薬形態が挙げられる。
【0009】
本発明のこれらのおよび他の局面は、下記の詳細な説明を参照すれば明らかになるであろう。さらに、様々な参考文献を本明細書で記述する。その中では、より詳細に一定の手順または組成物が記述されており、それらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0010】
発明の開示
本発明者らは、アトルバスタチンとPDE6、QR2、およびCLB2との間の新規相互作用を確認した。好ましくはPDE6、QR2、またはCLB2と相互作用するピロール化合物について本明細書で記述する。いくつかの態様では、ピロール化合物はHMG CoAレダクターゼと最低限の相互作用を示す。
【0011】
定義
特に記載がなければ、明細書および請求の範囲を含む本出願において使用する下記用語は、下記の定義を有する。明細書および添付の請求の範囲において使用されるように、単数形形態「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈で特に明確に記述されていなければ、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。標準化学用語の定義は、Carey and Sundberg(1992)”Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.”Vols. A and B、Plenum Press, New Yorkを含む参考文献において見いだすことができる。本発明の実施では、特に記載がなければ、当技術分野の技術内の、質量分析、NMR、HPLC、タンパク質化学、生物化学、組換えDNA技術および薬理学の従来の方法を使用する。
【0012】
「有効量」または「薬学的有効量」という用語は、所望の生物学的、治療、および/または予防結果を提供する非毒性であるが、十分な量の薬剤を示す。その結果、疾患の徴候、症状、または原因の減少および/または緩和、または任意の他の望ましい生体系の変化が生じる。例えば、治療的使用に対する「有効量」は、疾患の臨床的に有意な減少を提供するのに必要な、本明細書で開示したイミダゾール骨格を有する化合物または本明細書内の化合物を含む組成物の量である。各々の場合のいずれにおいても適当な有効量は、ルーチン的な実験を使用して当業者により決定することができる。
【0013】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語により、生物学的または非生物学的に望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こさず、または組成物中に含まれる成分のいずれとも有害な相互作用をすることなく、個人に投与することができる。
【0014】
化合物の「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容され、親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。そのような塩として、例えば、以下のものが挙げられる:
(1)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等と形成される;または有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4'-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等と形成される、酸付加塩;
(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、またはアルミニウムイオンにより置換され、または有機塩基により配位されると、形成される塩。許容される有機塩基としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミン等が挙げられる。許容される無機塩基としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。薬学的に許容される塩という言及は、その溶媒付加形態または結晶形態、特に溶媒和物または多形体が含まれることを理解すべきである。溶媒和物は、溶媒を化学量論量、または非化学量論量含み、しばしば、結晶化過程で形成される。水和物は溶媒が水である場合に形成され、アルコラートは溶媒がアルコールである場合に形成される。多形体は化合物の同じ元素組成の異なる結晶充填配列を含む。多形体は通常異なるX線回折パターン、赤外スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形状、光学および電気特性、安定性ならびに溶解性を有する。様々な因子、例えば再結晶化溶媒、結晶化速度、および貯蔵温度により、単一の結晶形態が支配的に形成される。
【0015】
本明細書で使用されるように、「生物試料」という用語は、細胞、組織、器官、または多細胞生物の任意のもの含むように広く規定される。生物試料は、例えば、インビトロの細胞または組織培養物に由来させることができる。また、生物試料は、生体または単細胞生物の集団に由来させることができる。
【0016】
本明細書で使用されるように、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0017】
本明細書で使用されるように「アルキル」という用語は、置換または非置換直鎖、分枝、または環状炭化水素鎖フラグメントまたはラジカルを示し、好ましくは約1〜約20炭素原子、より好ましくは約1〜約10炭素原子を含む(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、シクロブチル、アダマンチル、ノルアダマンチル等)。10またはそれ以下の炭素原子を有する直鎖、分枝、または環状炭化水素鎖もまた、本明細書で「低級アルキル」と呼ばれる。炭化水素鎖はさらに、1つまたは複数の不飽和度、すなわち、1つまたは複数の二重もしくは三重結合を有してもよい(例えば、ビニル、プロパルギル、アリル、2-ブテン-1-イル、2-シクロペンテン-1-イル、1,3-シクロヘキサンジエン-1-イル、3-シクロヘキセン-1-イル等)。このように二重結合を含むアルキル基はまた、本明細書では「アルキレン」と呼ばれる。
【0018】
本明細書で使用されるように「アリール」という用語は、20またはそれ以下の炭素原子を有する環状芳香族炭化水素鎖を示し、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニルおよびアントラセニルである。アリール基の1つまたは複数の炭素原子は、例えば、アルキル;アリール;複素環;ホルミル;ハロゲン;ニトロ;シアノ;ヒドロキシル、アルコキシルまたはアリールオキシル;チオまたはメルカプト、アルキル-またはアリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキル-、ジアリール-、またはアリールアルキルアミノ;アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、ジアリールアミノカルボニルまたはアリールアルキルアミノカルボニル;カルボキシル、またはアルキル-もしくはアリールオキシカルボニル;カルボキシアルデヒド、またはアリール-もしくはアルキルカルボニル;イミニル、またはアリール-もしくはアルキルイミニル;スルホ;アルキル-またはアリールスルホニル;ヒドロキシイミニル、またはアリール-またはアルコキシイミニル;ウレイド;またはチオウレイドにより置換されてもよい。さらに、アリール基の2またはそれ以上のアルキルまたはヘテロアルキル置換基は結合されて、縮合アリール-アルキルまたはアリール-ヘテロアルキル環構造(例えば、テトラヒドロナフチル)を形成してもよい。複素環基を含む置換基(例えば複素環オキシ、ヘテロアリールオキシ、およびヘテロアラルキルチオ)は上記用語に対する類推により規定される。
【0019】
本明細書で使用されるように、「脂肪族」という用語はアルカン、オレフィン(アルケンまたはアルキルジエン)、およびアルキンを含む。
【0020】
脂環は、置換または非置換シクロパラフィン(飽和)、シクロオレフィン(2またはそれ以上の二重結合を有し不飽和)、および少なくとも1つの三重結合を有するシクロアセチレン(シクリン(cyclyne))を含む。非制限的例としては、シクロプロパン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、およびシクロオクタテトラエン(cycloctatetraene)が挙げられる。
【0021】
芳香族は、1つまたは複数の環の置換または非置換不飽和環状炭化水素を示し、典型的にはフェニル、ナフタリル、フェナントレニル、およびアントラセニル等(それらに限定されない)のアリール構造が挙げられる。非制限的な芳香族例としては、6員(典型的にはベンゼン)および5員(典型的には、フラン、チオフェン、ピロールおよびインドール)環が挙げられる。
【0022】
複素環は環状構造内の少なくとも1つの非炭素原子の存在を示す。非制限的例は、窒素、酸素、硫黄原子の存在を含み、以下を含むがこれらに限定されない複素環が生じる:フェニル、ナフチル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チエニル、フリル、テトラヒドロフリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズピラゾリル、ベンゾチオフラニル、シノリニル、プテリジニル、フタラジニル、ナフチピリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、プリニルおよびインダゾリル;ここで、そのようなフェニル、ナフチルまたは複素環は下記からなる群より選択される1〜5の官能基により置換されてもよい:C1〜6分枝または非分枝アルキル、フェニル、ナフチル、上記群から選択される複素環、任意で部分的にまたは完全にハロゲン化されるC1〜6分枝または非分枝アルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンタニル、シクロヘキサニル、シクロヘプタニル、ビシクロペンタニル、ビシクロヘキサニル、ビシクロヘプタニル、フェニルC1〜5アルキル、ナフチルC1〜5アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1〜3アルコキシ(任意で、部分的にまたは完全にハロゲン化されてもよい)、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ヘテロアリールオキシ(ヘテロ環部分は以上で記述した群から選択される)、ニトロ、アミノ、モノ-またはジ-(C1〜3)アルキルアミノ、フェニルアミノ、ナフチルアミノ、ヘテロシクリルアミノ(ヘテロシクリル部分は以上で記述した群から選択される)、NH2C(O)、モノ-またはジ-(C1〜3)アルキルアミノカルボニル、C1〜5アルキル-C(O)-C1〜4アルキル、アミノ-C1〜5アルキル、モノ-またはジ-(C1〜3)アルキルアミノC1〜5アルキル、アミノ-S(O)2、またはジ-(C1〜3)アルキルアミノ-S(O)2;または下記からなる群より選択される縮合アリール:ベンゾシクロブタニル、インダニル、インデニル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ベンゾシクロヘプタニルおよびベンゾシクロヘプテニル、または下記から群より選択される縮合複素環部分:シクロペンテノピリジン、シクロヘキサノピリジン、シクロペンタノピリミジン、シクロヘキサノピリミジン、シクロペンタノピラジン、シクロヘキサノピラジン、シクロペンタノピリダジン、シクロヘキサノピリダジン、シクロペンタノキノリン、シクロヘキサノキノリン、シクロペンタノイソキノリン、シクロヘキサノイソキノリン、シクロペンタノインドール、シクロヘキサノインドール、シクロペンタノベンズイミダゾール、シクロヘキサノベンズイミダゾール、シクロペンタノベンゾキサゾール、シクロヘキサノベンゾキサゾール、シクロペンタノイミダゾール、シクロヘキサノイミダゾール、シクロペンタノチオフェンおよびシクロヘキサノチオフェン、ここで、縮合アリールまたは縮合複素環は下記からなる群より独立して選択される0〜3の官能基により置換される:フェニル、ナフチルおよび下記からなる群より選択される複素環部分:ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チエニル、フリル、イソキサゾリル、およびイソチアゾリル、C1〜6分枝または非分枝アルキル(任意で、部分的または完全にハロゲン化さてもよい)、ハロ、シアノ、C1〜3アルキルオキシ(任意で、部分的または完全にハロゲン化されてもよい)、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ヘテロシクリルオキシ(複素環部分は以上で記述した群から選択される)、ニトロ、アミノ、モノ-またはジ-(C1〜3)アルキルアミノ、フェニルアミノ、ナフチルアミノ、ヘテロシクリルアミノ(複素環部分は以上で記述した群から選択される)、NH2C(O)、モノ-またはジ-(C1〜3)アルキルアミノカルボニル、C1〜4アルキル-OC(O)、C1〜5アルキル-C(O)-C1〜4分枝または非分枝アルキル、アミノ-C1〜5アルキル、またはモノ-もしくはジ-(C1〜3)アルキルアミノ-C1〜5アルキル;またはc)下記からなる群より選択されるシクロアルキル:シクロペンタニル、シクロヘキサニル、シクロヘプタニル、ビシクロペンタニル、ビシクロヘキサニル、およびビシクロヘプタニル、ここで、シクロアルキルは任意で部分的にまたは完全にハロゲン化されてもよく、任意で1〜3個のC1〜3アルキル基により置換されてもよい;またはアゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリノ、ピペラジニル、ヘキサヒドロアゼピニルまたはオクタヒドロアゾシニル。
【0023】
上記脂肪族、カルボキシアルキル、カルボアルコキシアルキル、アルコキシ、脂環、アリール、芳香族、および複素環部分はすべて、もちろん、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、アルキル、およびアルコキシから独立して選択される1〜3の置換基により置換されてもよい。
【0024】
スルホニルは硫黄原子の存在を示し、硫黄原子は任意で他の部分、例えば、脂肪族基、芳香族基、アリール基、脂環式基、または複素環基に結合される。アリールまたはアルキルスルホニル部分は化学式-SO2R'を有し、アルコキシ部分は化学式-O-R'を有し、ここで、R'は上記で規定したようなアルキルであり、またはアリールであり、ここで、アリールは任意で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、低級アルキル(1〜6C)および低級アルコキシ(1〜6C)から独立して選択される1〜3の置換基により置換されてもよいフェニルである。
【0025】
ピロール化合物
本発明はピロール化合物および薬剤としての使用方法に関する。本発明のピロール化合物および他の化合物を、様々な疾患を治療するために使用してもよい。好ましくは、本明細書で記述した化合物をPDE6関連、QR2-関連、およびCLB2関連状態の治療に使用する。
【0026】
当業者であれば、本明細書で記述したピロール化合物が互変異性、立体配座異性、幾何異性、および/または光学異性の現象を示すことがあることを認識するであろう。本発明は、本明細書で記述したピロール化合物の互変異性体、立体配座異性体、光学異性体、および/または幾何異性体すべて、ならびにこれらの様々な異なる形態の混合物を含むことを理解すべきである。例えば、本発明の化合物は複数のキラル原子を有し、本発明の可能な立体異性体およびラセミ混合物を全て含むものとする。したがって、本明細書で記述した化合物は、鏡像異性的に純粋な形態で、または鏡像異性体混合物、例えばラセミ混合物として投与してもよい。
【0027】
多くの場合において、ピロール化合物は代謝されて活性なピロール化合物が生成されることも認識されるであろう。活性代謝産物の使用もまた、本発明の範囲内にある。
【0028】
1つの態様では、本発明は下記化学式Iにより表される化合物またはそのジステレオマー、鏡像異性体、もしくは薬学的に許容される塩を提供する:

式中、
Rは任意の適した置換基であるが、下記を除く:

式中、R'、X、Y、およびMは任意の適した置換基であり、ここで、R1は置換されてもよい芳香族または複素環である。R2およびR3は独立して、-CONR5R6であり、ここで、R5およびR6は独立して、水素;置換されてもよいアルキル、芳香族、または複素環である。R4は置換されてもよいアルキルまたは-OR''であり、ここで、R''は置換されてもよいアルキルまたはアリールである。R1、R2、またはR3は芳香族または複素環部分である場合、任意で、直鎖または分枝炭素鎖により分子の残りに結合されてもよい。
【0029】
Rは水素、直鎖または分枝、飽和または不飽和脂肪族、例えば、アルキル、カルボキシアルキル、カルボアルコキシアルキル、またはアルコキシ;脂環;単環式または多乾式芳香族置換脂肪族;脂肪族置換単環または多環式芳香族;単環または多環式芳香族複素環、単環または多環式複素環脂肪族;アミン;またはスルホニル;またはシアノ;または天然のまたは天然ではないアミノ酸とすることができる。Rはまた、アルコール、アセタール、チオアセタール、エーテル、チオエーテル、アセタール、チオアセタール、エポキシド、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、チオール、イミノ、リン酸、尿素、チオ尿素、スルホンアミド、またはハロゲンとすることができる。いくつかの好ましい態様では、Rはポリエチレングリコール鎖である。1つの態様では、RはHではない。RがHである一定の態様では、ピロール化合物は、単離された安定な、好ましくは非帯電部分である。
【0030】
特に、RはOH、C1〜10、C2〜C9、C3〜C8、C4〜C7、C5〜C6アルキル、アルケン、またはアルキルジエンとすることができる。好ましくは、Rは低級アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、t-ブチルおよびn-ペンチル;低級アルキルカルボン酸、例えば、ホルミル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシ-n-ブチル、カルボキシ-sec-ブチル、カルボキシ-n-ヘキシル;-(CH2)nOHもしくは-(CH2)nCOO-または-(CH2)nCOO(CH2)nCH3により表されるそれらのエステルであり、ここでnの各事象は独立してある整数、好ましくは1〜6であり、各CH2位はOH、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードにより置換されてもよい。Rの非制限的例としては、-CH2CH2COOCH3、-CH2CH2COOCH2CH3、-CH2CH(CH3)COOCH2CH3、-CH2CH2CH2COOCH2CH2CH3、-CH2CH(CH3)2COOCH2CH3が挙げられる。
【0031】
好ましくは、R1は1-ナフチル;2-ナフチル;シクロヘキシル;ノルボルネニル;2-、3-、または4-ピリジニル;フェニルまたはベンジル;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ、1〜4の炭素原子のアルキル、1〜4の炭素原子のアルコキシ、複素環部分、または2〜8の炭素原子のアルカノイルオキシにより置換されたフェニルまたはベンジルである。R5またはR6は好ましくは独立して水素;1〜6のアルキル;2-、3-、または4-ピリジル;フェニルまたはベンジル;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ、ピリジン、または3〜8の炭素原子のカルボアルコキシにより置換されたフェニルまたはベンジルである。R4は好ましくは本明細書で記述したような1〜6の炭素原子のアルキル;イソプロピル、イソブチル、イソペンチルおよびそれらのsec-、ノーマル、tert-、またはneo-形態、例えばn-ブチル、およびt-ブチル;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル;F;Br;Cl;I;トリフルオロメチル、または-OR'(式中、R'はC1〜C10のアルキルまたはアリールである)である。
【0032】
さらにより好ましくは、R1はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ、またはヒドロキシルにより置換されたフェニルである。最も好ましい置換は、任意で、フェニル基を分子の残りに結合させる結合に対しパラ位のフッ素である。別の好ましい態様では、R2はフェニルまたは-C(O)NR5R6であり、式中、R5およびR6はフェニルである。さらに別の好ましい態様では、R3はフェニルまたは-C(O)NR5R6であり、式中、R5およびR6はフェニルである。別の態様では、R4は-CH(CH3)2または-トリフルオロメチル;-ジフルオロメチル;-フルオロメチル;-トリフルオロメトキシ;-ジフルオロメトキシ;-フルオロメトキシである。
【0033】
いくつかの態様では、下記化学式Iaにより表されるピロール化合物またはそのジアステレオマー、鏡像異性体、または薬学的に許容される塩が提供される:

式中、Xはハロゲン、置換されてもよいアルキル、脂環、アリール、または複素環であり、Rは上記で記述した通りである。好ましくはXはフッ素、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、またはフルオロメトキシである。
【0034】
別の態様では、下記化学式Ibで表されるピロール化合物が提供される:

式中、Rは上記で規定した通りである。
【0035】
いくつかの態様では、化学式Iのピロール化合物は下記化学式Ic等の第四級アミン塩である:

式中R''''は任意の適した置換基である。
【0036】
好ましいR基としては下記のものが挙げられる:


【0037】
好ましいR基において上記で示したキラル炭素は、全ての可能な立体異性体、およびそれらのラセミ混合物を含む。
【0038】
いくつかの態様では、化学式Iの化合物中のR基は、(CR7R8)m(CR9R10CR11OH)n-CR12R13R14であり、式中、R7、R8、R9、R10、およびR11は、H、OH、またはアルキル、好ましくは低級アルキルからなる群より独立して選択され;R12、R13、およびR14は独立して選択され、H、OH、またはPO3H2であり;mは整数、好ましくは0〜4であり、かつnは整数、好ましくは0〜5である。本発明は、それらの任意の互変異性体形態で、またはそれらの混合物として、またはジアステレオマーの混合物としてこれらの化合物を含むこと、および個々のジアステレオマーの形態でこれらの化合物を含むこと、ならびに本発明は鏡像異性体の混合物として、および個々の鏡像異性体の形態でこの化合物を含むことを理解すべきである。化学式Ibの例示的な化合物を下記、および図33に示す。

【0039】
本発明の1つの局面は、本明細書で記述したピロール化合物の使用法である。この方法は治療的および予防的使用ならびに一定のアッセイ法での使用を含む。最も好ましくは、これらの方法は図33A〜33Hに示した化合物を用いて実施される。
【0040】
本発明はまた下記化学式のピロール化合物またはそれらのジアステレオマー、鏡像異性体、もしくは薬学的に許容される塩を提供する:

式中、Rは化学式Iについて上記で規定した通りであり、R1またはR0のうちの1つ

であり、
もう1つは、置換されてもよいアルキル、好ましくはC1〜6アルキル(不斉炭素を含まない)、シクロアルキル、好ましくはC3〜6またはフェニルである。任意の置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ、アルコキシ、ヒドロキシル、またはフェニル-(CH2)m-である。R4は水素、C1〜3アルキル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、C1〜3アルコキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、トリフルオメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、フェノキシ、またはベンジルオキシである。R5は水素、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ、アルコキシ、フェノキシ、またはベンジルオキシである。R5aは水素、C1〜2アルキル、C1〜2アルコキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ、またはアルコキシであり、mは1、2、または3であり、ただし、R4が水素である場合R5およびR5aの両方が水素でなければならず、R5が水素である場合R5aは水素でなければならず、R4およびR5のせいぜい1つがトリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシであり、R4およびR5のせいぜい1つがフェノキシであり、R4およびR5のせいぜい1つがベンジルオキシであるということを条件とする。また、R0はイソプロピル、プレニル、アリル、イソブチル、イソペンチル、およびそれらのsec-、ノーマル、tert-、またはneo-形態、例えば、n-ブチルおよびt-ブチル;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル;F;Br;Cl;I;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;フルオロメチル;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;フルオロメトキシまたは-OR'(ここで、R'はC1〜C10のアルキルまたはアリールである)およびR1は上記で記述した通りである。R2は水素、C1〜3アルキル、プレニル、アリル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、C3〜6シクロアルキル、C1〜3アルコキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ、フルオロ、クロロ、フェノキシ、またはベンジルオキシである。R3は水素、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ、フルオロ、クロロ、フェノキシまたはベンジルオキシであり、ただし、R2が水素である場合R3が水素でなければならず、R2およびR3のせいぜい1つがトリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシであり、R2およびR3のせいぜい1つがフェノキシであり、R2およびR3のせいぜい1つがベンジルオキシであるということを条件とする。
【0041】
上記化学式IIのR0、R1、R2、R3、およびR4位は米国特許第5,354,772号2段39行〜9段32行の化学式、および米国特許第4,739,073号2段21行〜8段37行の化学式のR0、R1、R2、R3、およびR4位に対し規定した通りとしてもよい。それらのR基を規定する定義はその特許でさらに詳細に記述されている。その特許では、様々な官能基を化学式IIに導入するための反応も提供されている。
【0042】
好ましくは、化学式IIのR0は-CH(CH3)2であり、R1、R2、およびR3は化学式において規定した通りである。または、R1はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、フルオロメトキシ、またはヒドロキシルで置換されてもよいフェニルであり、一方、R0、R2、およびR3は化学式IIにおいて規定した通りであり;置換は好ましくはフッ素であり、好ましくはフェニル基の分子の残りへの結合に対しパラ位である。または、R2は水素であり、R0、R1、およびR3は化学式IV'に対し規定した通りであり;または、R3は水素であり、R0、R1、およびR2は化学式IIで規定した通りである。
【0043】
1つの態様では、下記化学式IIにより表されるピロール化合物は化学式IIaの化合物またはそのジアステレオマー、鏡像異性体、もしくは薬学的に許容される塩である:

(式中、Rは化学式Iに対し上記で規定した通りである)。
【0044】
本発明はまた、上記ピロール化合物および他の化合物のプロドラッグを提供する。この場合、プロドラッグはインビボで代謝され、上記で記述した誘導体が生成する。実際、上記誘導体のいくつかの別の誘導体または活性化合物に対するプロドラッグであってもよい。本発明はさらに、本明細書で開示した化合物の、特に分子中のキラル炭素原子により得られる光学異性体を提供する。本発明の別の態様では、一準備工程、組み合わせ、または相互交換により得られる鏡像異性体および/またはジアステレオマーの混合物が提供される。
【0045】
合成方法
本発明の化合物は本明細書で記述されるようにピロール化合物および他の化合物を含む。本発明の化合物、および異なる置換基を有する他の関連化合物は、例えば、March、ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4th Ed.、(Wiley 1992);Carey and Sundberg、ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 3rd Ed.、Vols. A and B(Plenum 1992)、およびGreen and Wuts、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 2nd Ed.(Wiley 1991)において記述されているように、当業者に公知の技術および材料を用いて合成することができる。本明細書で開示されているようにピロール化合物の調製のための一般方法は、当技術分野において公知の反応により導き出してもよい。例えば、Clive et al.、J. Am. Chem. 122:3018-3028(1990)およびBeck et al.、J. Med. Chem. 33:52-60(1990)を参照のこと。以下の、および添付のページの方法の論考において、本明細書で提供される化学式で見いだされる様々な部分の導入に対し、反応は適当な試薬および条件を使用することにより改良してもよく、これは当業者に認識されるであろう。
【0046】
アトルバスタチンを合成する方法は当技術分野において公知である。Atorvastatin、AN HMG-CoA Reductase Inhibitor and Effective lipid-regulating agent. Part III Syntheses of [2H5]、[13C8]、および[13C7、15N] Atorvastatin and their application in metabolic and pharmacokinetic studies' J. Labelled Cpd. Radiopharm. 42、135-145(1999);Atorvastatin、AN HMG-CoA Reductase Inhibitor and Efficient Lipid-Regulating Agent Part I. Synthesis of ring-labeled [14C] atorvastatin. J. Labelled Cpd. Radiopharm. 42、121-127(1999);およびAtorvastatin、AN HMG-CoA Reductase Inhibitor and Efficient Lipid-Regulating Agent Part II. Synthesis of Side-Chain-Labeled [14C] atorvastatin. J. Labeled Cpd. Radiopharm. 42、129-133(1999)を参照のこと。これらの方法を適応させ、本明細書で記述した化合物を合成することができる。J. Labeled Cpd. Radiopharm. 42、135-145(1999)から適応させた、適した合成スキームを図28に示す。別の適した合成スキームを図29に示す。
【0047】
ピロール化合物の活性
本発明はまた、本明細書で記述した疾患または望ましくない状態の治療における、本明細書で開示したピロール化合物または別の化合物の活性レベルを決定するための方法を提供する。そのような方法は、ピロール化合物を被験者に投与する段階と、続いて、誘導体を投与されていない被験者または異なる量もしくは濃度の誘導体を投与された被験者と比較した誘導体の活性レベルを決定する段階を含む。一定の状態の範囲に対する活性レベルを決定するために、様々な量もしくは濃度の誘導体を用い、これらの方法を繰り返し実施してもよい。本方法を使用して、活性レベルが検出できないことを決定してもよい。
【0048】
ピロール化合物の活性レベルを決定する例示的な方法は、
a)本明細書で開示したピロール化合物または他の化合物を被験者に投与する段階;
b)誘導体を投与されていない、または異なる量の誘導体が投与された、もしくは異なる投与プロトコル(例えば、投与回数または投与した誘導体の量(それらに限定されない))で誘導体が投与された被験者(または被験者群)と比較して、本明細書で開示した疾患または望ましくない状態に対する有効性レベルを決定する段階
を含む。
【0049】
相対的な活性レベルを決定するために開示した化合物間で比較を行ってもよい。被験者は動物、好ましくはヒトであり、1つまたは複数の化合物の臨床試験または前臨床試験の一部となるものとしてもよい。活性レベルの決定は、本明細書で開示した疾患および望ましくない状態に対する熟練した実践者に周知な様々な方法で実施することができる。
【0050】
生物学的活性
本発明によれば、化学式IおよびIIの化合物は、虚血性細胞死、例えば心筋梗塞、脳卒中、緑内障、および他の神経変性疾患に関連する状態を予防および治療するために有益である。アポトーシス性細胞死に関係する様々な神経変性状態としては、アルツハイマー病、ALSおよび運動ニューロン変性症、パーキンソン病、末梢神経障害、ダウン症候群、年齢関連性黄斑変性症(ARMD)、外傷性脳損傷、脊髄損傷、ハンチントン病、脊髄性筋萎縮症、およびHIV脳症が挙げられるが、それらに限定されない。上記で詳細に記述した化合物を、神経を保護する、および神経変性疾患を治療するための方法および組成物において使用することができる。
【0051】
哺乳類、好ましくはヒト、ネコ、家畜類またはイヌにおける関節炎(例えば、骨関節炎、変形性関節炎、脊椎関節炎、痛風性関節炎、全身性エリテマトーデス、若年性関節炎、および関節リウマチ)、風邪、月経困難、月経けいれん、炎症性大腸炎、クローン病、気腫、急性呼吸窮迫症、喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、臓器移植毒性、悪液質、アレルギー反応、アレルギー性接触過敏症、癌(例えば、結腸癌、乳癌、肺癌、および前立腺癌を含む充実性腫瘍;白血病およびリンパ腫を含む造血器悪性腫瘍;ホジキン病;再生不良性貧血、皮膚癌、および家族性腺腫様ポリープ)、組織潰瘍、消化性潰瘍、胃炎、限局性腸炎、潰瘍性大腸炎、憩室炎、再発消化管病変、消化管出血、凝固、貧血、滑膜炎、痛風、強直性脊椎炎、再狭窄、歯周病、表皮水疱症、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症(例えば、アテローム斑崩壊)、大動脈瘤(例えば異常大動脈瘤および脳大動脈瘤)、結節性動脈周囲炎、鬱血性心不全、心筋梗塞、脳卒中、脳虚血、頭部外傷、脊髄損傷、神経痛、神経変性疾患(急性および慢性)、自己免疫疾患、ハンチントン病、パーキンソン病、片頭痛、うつ病、末梢神経障害、疼痛(例えば、腰痛および頸痛、頭痛、ならびに歯痛)、歯肉炎、脳アミロイド・アンギオパチー、向知性または認知亢進、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、眼血管形成、角膜損傷、黄斑変性症、結膜炎、異常創傷治癒、筋肉または関節のねんざまたは筋違い、腱炎、皮膚疾患(例えば、乾癬、湿疹、強皮症、および皮膚炎)、重症筋無力症、多発性筋炎、筋炎、滑液包炎、熱傷、糖尿病(I型およびII型糖尿病、糖尿病性網膜症、ニューロパシー、ならびにネフロパシーを含む)、腫瘍浸潤、腫瘍増殖、腫瘍転移、角膜瘢痕化、強膜炎、免疫不全症(例えば、ヒトにおけるAIDSおよびネコにおけるFLV、FIV)、敗血症、早産、低プロトロンピン血症、血友病、甲状腺炎、サルコイドーシス、ベーチェット症候群、過敏性、腎臓病、リケッチア感染症(例えばライム病、エールリヒア症)、原虫感染症(例えば、マラリア、ジアルジア、コクシジウム)、繁殖障害、および敗血性ショック、関節炎、発熱、風邪、疼痛、ならびに癌からなる群より選択される状態を予防および/または治療するための薬学的組成物において、化学式IおよびIIの化合物を使用することができる。薬学的組成物は、そのような予防および/または治療に有効な一定量の化学式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を、任意で薬学的に許容される担体と共に含む。
【0052】
標的
A. PDE6デルタ(PDE6D)
一定の態様では、本明細書で記述した化合物はPDE6、好ましくはPDE6Dを標的とする。PDE6型ファミリーメンバーは網膜光情報伝達に関連する(Stryer、L、et al.、J. Biol. Chem. 266:10711-14(1991))。光情報伝達では、光受容体細胞は光を吸収し、PDE6によるcGMP加水分解に至る生物化学反応の細胞内カスケードの活性化を介して神経シグナルを誘発する。cGMPが減少すると、光受容体細胞における膜結合cGMP依存性カチオンチャネルが閉じ、神経シグナルが生成する。PDE6非活性化、グアニルシクラーゼ活性化、およびcGMPレベルの修復により細胞の暗状態が回復する。
【0053】
PDE6は、2の触媒サブユニット(αおよびβ)ならびに2の阻害(γ)サブユニットからなる四量体タンパク質である。PDE6複合体からのγサブユニットの放出は、酵素を活性化するトランスデューシンにより媒介される。γサブユニットの再結合は、酵素を不活性化するリカバリンにより媒介される。PDE6が網膜細胞中の桿体外節の円板膜と主に結合し、酵素の可溶性形態は第4(δ)サブユニットを含む(Florio、S.K. et al.(1996) J. Biol. Chem. 271:24036-47)。
【0054】
PDE6ホロ酵素は、膜結合形態および可溶形態の両方として存在し、膜結合形態のみが光情報伝達において活性である。重要なことは、可溶形態のみがPDE6Dサブユニットを含むということである。PDE6Dは細胞内局在化を調節し、このためPFE6の活性、および膜からのPDE6の放出がPDE6Dにより媒介される。実際、おそらく、膜からPDE6ホロ酵素を除去することにより、PFE6Dは桿体外節において光誘発cGMP加水分解を減少させることが観察されている(Cook et al.、J. Biol. Chem 276(7):5248-5255(2001))。PDE6Dは、PDE6AおよびPDE6BサブユニットのC末端付近のプレニル化ペプチド配列に特異的に結合することによりPDE6を可溶化する。1つの態様では、本発明は、cGMP加水分解へのPDE6関与の調節により、視力障害疾患、特に光情報伝達カスケードと関連する疾患の治療を提供する。
【0055】
PDE6δ(PDE6D)は、膜結合PDE6と関連して見いだされるが、膜結合PDE6を可溶化することが観察されている17kDaのサブユニットである。桿体膜からのPDE6の放出は、PDE6のC末端部分へのデルタサブユニットの結合を介すると考えられ、膜結合シグナル伝達によるPDE6活性化の可能性を減少させると考えられる。デルタサブユニットはまた、別の酵素調節レベルを提供すると仮定される。
【0056】
ヒトPDEδ遺伝子産物(PDE6D)は、触媒PDEαおよびβサブユニットに対するシャペロンとして認識されている。プレニル化PDEαおよびβサブユニットは、おそらく視覚カスケードの調節メカニズムとして、PDE6Dにより結合されること、膜から可溶化されることが見いだされている。網膜色素変性症(RP)は、暗順応障害および視力の著しい低下により特徴づけられる遺伝性網膜ジストロフィーである。RP遺伝子は、網膜色素変性症GTPアーゼレギュレータ(RPGR)タンパク質として同定されており、このタンパク質は、プレニル化がなくてもPDE6ファミリーのメンバーに対し結合親和力を有することが観察されている(Linari M. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:1315-1320(1999))。PDE6Dは温度感受性様式で、網膜色素変性症GTPアーゼレギュレータ(RPGR)と相互作用する。相互作用は、RPGRのRCC1-ドメインにおける突然変異により廃止される。1つの態様では、本発明はPDE6のRPGRおよび光情報伝達カスケードに関与する他の分子との相互作用の調節により、RPの治療を提供する。
【0057】
PDE6Dは多くの細胞型で発現され、細胞内局在化およびプレニル化タンパク質、例えば、H-Ras、Rheb、Rho6、Rac、Rap、およびPDE6の輸送を調節する際に一般的な役割を有する(Hanzal-Bayer et al.、EMBO J. 21(9):2095-2106(2002)およびLinari et al. Proc. Natl. Acad. Sci.、USA 96(4):1315-1320)。これらのプレニル化タンパク質の膜局在化の調節におけるPDE6Dの役割は依然明確ではないが、PDE6Dが内膜(小胞体およびゴルジ)からのタンパク質を輸送構造に送達し、最終的な膜コンパートメントへ確実に正確に送達されることが提案されている。
【0058】
PDE6DはGTPアーゼと相互作用する。GTPアーゼは細胞膜で分子スイッチとして重要な役割を果たすタンパク質の大きなスーパーファミリーであり、GTPが結合すると活性化され、GDPが結合すると不活性化される。これらのGTPアーゼの大部分は、細胞膜の細胞内側へ付着するための共有結合により結合されたプレニル基を有する。膜付着型とフリーのサイトゾル型との間の往復により機能する。デルタサブユニットは、小Rab13 GTPアーゼのイソプレニル化領域に結合し、原形質膜から移動させることができる(Marzesco et al.、J. Biol. Chem. 273(35):22340-22345(1998))。さらに、PDE6DはRasおよびRap GTPアーゼの両方のC末端領域と相互作用し、原形質膜との結合を調節することができる。Ras結合では、PDE6DはC末端のプレニル化領域を必要とする(Nancy et al.、J. Biol. Chem. 277(17):15076-15084(2002))。
【0059】
PDE6Dはまた、H-Ras、Rheb、Rho6、およびGα(i1)と相互作用することが観察されており、プレニル化タンパク質、例えば、PDE6のサブユニットおよび小GTP結合タンパク質に対する輸送因子として示唆されている(Hanzal-Bayer et al.、EMBO J. 21(9):2095-2106(2002))。PDE6およびPDE5上で作用するcGMP PDE-特異阻害薬としては、ザプリナスト、デスメチルシルデノフィル、ビノポセチン、ミルリノン、アムンリノン、ピモベンダン、シロスタミド、エノキシモン、ペロキシモン、ベスナリノン、ロリプラン、R020-1724、およびジピリダモールが挙げられる。本発明の化合物は、プレニル化タンパク質および/またはGTP結合タンパク質の誤細胞内輸送に起因する医学的障害または疾患を治療するために投与することができる。
【0060】
プレニル基(例えば、ファルネシルおよびゲラニル-ゲラニル)およびコレステロールに対する生合成経路はオーバーラップし、どちらもHMG-CoAレダクターゼ活性を必要とする。PDE6Dはまた、プレニル化経路の重要な成分と考えることができる。というのは、PDE6Dはプレニル化タンパク質の輸送および局在化を調節するからである。プレニル化タンパク質は、シグナル伝達(例えば、Ras)において重要な役割を果たし、神経毒性におけるプレニル化タンパク質の役割を示唆する証拠が存在する(Liao J. K. J. Clinical Investigation、110:285-288(2002))。このように、PDE6Dに結合し、その活性を調節する化合物は、直接、プレニル化タンパク質の局在化および機能を撹乱し、状態および疾患の予防および治療において有益であるはずである。
【0061】
PDE6Dは桿体外節における光誘導cGMP加水分解を減少させることが観察されている(Cook et al.、J. Biol. Chem 276(7):5248-5255(2001))。デルタサブユニットは、光受容体に特異的な、2つのG-タンパク質結合ロドプシンキナーゼ、GRK1およびGRK7のプレニル化C末端領域と直接相互作用する(Zhang et al.、J. Biol. Chem. 279(1):407-413(2004))。ロドプシンキナーゼは膜光受容体をリン酸化し、光情報伝達を調節する。1つの態様では、本発明は、ロドプシンキナーゼおよび光情報伝達シグナル伝達カスケードに関与する他の分子とのPDE6D相互作用を調節することにより、視力障害を治療する方法を提供する。
【0062】
PDE6Dはまた、翻訳後のプレニル化のない他のタンパク質と相互作用することがわかっている。例えば、PDE6Dは網膜色素変性症GTPアーゼレギュレータ(RPGR)タンパク質の非プレニル化領域と相互作用する(Linari et al.、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA 96(4):1315-1320(1999))。さらに、デルタサブユニットはArlタンパク質またはARF(ADP-リボシル化因子)様タンパク質として公知のGTPアーゼサブファミリーの2つのメンバーと相互作用することができる。PDE6Dは、いずれの翻訳後修飾とは関係なく、Arl2およびArl3タンパク質と相互作用する(Hanzal-Bayer et al.、EMBO J. 21(9):2095-2106(2002)およびLinari et al.、FEBS Letter 458:55-59(1999))。それらの構造-機能研究に基づき、Hanzal-Bayerらは、デルタサブユニットが膜結合プレニル化タンパク質、例えばGTP結合分子に対する輸送因子であり、Arl2/3はプレニル化タンパク質の放出および/または取り込みにおけるデルタサブユニットのメディエータとして機能すると推測した。1つの態様では、本発明は、Arl2/3分子活性を調節することにより、PDE6関連および/またはGTP結合タンパク質関連疾患を治療する方法を提供する。本明細書で「PDE6」という用語を使用し、その活性および/または調節に言及する場合、PDE6との相互作用のない、PDE6Dの活性および/または調節も含むものとする。
【0063】
B. キノンレダクターゼ2(QR2)
本明細書で記述した化合物は一定の態様では、QR2を標的とする。NAD(P)H:(キニン-受容体)オキシドレダクターゼ(NQO2)としても公知のキノンレダクターゼ2(QR2)は、FAD-依存性フラビン酵素として同定され(Liao et al.(1962) J. Biol. Chem. 237:2981-2987)、NQO1(NAD(P)H:(キニン-受容体)オキシドレダクターゼのジオキシン-誘導サイトゾル型、従来DTジアフォラーゼとして公知)に関連し、EC 1.6.99.2(Zhao et al.(1997) Proc. Natl. Acad. Sci、USA 94:1669-1674)、ピューロマイシンアミノヌクレオシド結合タンパク質(Kodama et al.(1997)Nephrol. Dial. Transplant. 12:1453-1460)、およびメラトニン結合部位MT3(Nosjean et al.(2000) J. Biol. Chem. 275(40):31311-31317)により確認されている。フラビン酵素として、かつNQO1と関連して、QR2は様々な化合物、例えば、キニン、キニンイミン、酸化-還元染料の2電子還元を触媒することができる。Jaiswal et al.(1994、J. Biol. Chem.269(20):14502-14508)は、QR2は抗腫瘍化合物CB10-200の4-ニトロ還元を触媒するが、2,6-ジクロロフェノリドフェノールまたはメナジオンに作用しない(これらはNQO1により代謝される)ことを記述している。QR2はサイトゾルであると考えられ、ヒト心臓、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、および膵臓組織で発現されるが、胎盤では発現されないことが確認された。これはNQO1と対照的であり、NQO1は全ての組織中で発現される。
【0064】
QR2は、NADH、NADPH、またはNMNH(還元ニコチンアミドモノヌクレオチドまたはNMN)ではなく、N-リボシル-およびN-アルキルジヒドロニコチンアミドによりキニンを還元し、ジクマロールまたはシバクロンブルーにより弱く阻害される。QR2はホモ二量体であり、ベンゾ[α]ピレンにより強く阻害される。Zhaoらは1997年、QR2がキノンおよびニトロ基含有細胞毒性薬の還元的生体内活性化においてある役割を果たすかもしれないことを指摘している。Gravesら(2002、Mol. Pharmacol. 62(6):1364-1372)はヒトQR2がキノリン結合タンパク質であることを確認した。
【0065】
本発明の化合物はQR2と相互作用しないが、特に、心臓、脳、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、および膵臓組織において、キノンおよびニトロ基含有細胞毒性薬の生体内活性化等のQR2活性に影響を与えることができる。QR2活性を阻害する化合物を使用すると、特に上記組織において、毒性および/または細胞毒性薬に対し保護効果を与えることができる。
【0066】
C.カルビンジン-2(CLB2)
カルレチニン(カルビンジン-2、CR、CLB2、およびCALB2としても公知)はカルビンジンD-28Kおよびカルモジュリンに関連するEF-handファミリーのカルシウム結合タンパク質である。カルレチニンは卵巣性索間質腫瘍およびそれらと共に見いだされている新生物の有益なマーカーとして観察されている。(Histopathology 38(5):403-8(2001)の要約を参照のこと)。アルツハイマー病およびパーキンソン病のラットモデルを含むいくつかの神経変性疾患では、カルレチニンの存在がニューロンの生存に相関している。
【0067】
カルビンジンはCa2+結合タンパク質であり、主に虚血疾患に対する脳のもろい部位に分布している。カルビンジンは、細胞毒性細胞内Ca2+濃度の上昇に対し緩衝効果を有することが報告されている。[Lacopino et al.、Neurodegeneration、3:1(1994);Mattson et al.、Neuron、6:41(1991)]。したがって、カルビンジンの活性の調節は、虚血性障害に対し神経保護効果を提供すると予測される。すなわち、カルビンジンの活性の調節は、脳梗塞の続発症、脳内出血の続発症、脳動脈硬化の続発症、老人性痴呆症、頭部外傷の続発症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、卵巣性索間質腫瘍、新生物等の症状の緩和または治療に対する効果的な治療薬および改善薬となると予測される。
【0068】
ピロール化合物の臨床用途
本発明のピロール化合物および他の化合物は、様々な疾患および望ましくない状態を治療するのに使用してもよい。いくつかの態様では、本明細書で記述した化合物をPDE6関連、QR2関連、およびCLB2関連状態の治療に使用する。本発明のピロール化合物は、PDE6、QR2、またはCLB2を調節することによってのみ作用するものではない。このため、これらの化合物は、PDE6、QR2、またはCLB2以外の細胞構成要素が関与する疾患を治療するために使用することができる。本明細書で記述した化合物を用いて治療することができる疾患としては、脳アクシデント(または脳血管アクシデント、例えば脳卒中)、炎症(例えば、自己免疫疾患による炎症)、多発性硬化症、血管増殖(血管形成)、骨形成/骨成長、免疫系刺激、急性冠不全症候群(心筋梗塞、非Q波心筋梗塞、および不安定狭心症を含む)、および心血管疾患が挙げられるが、それらに限定されない。1つの局面では、本発明の化合物を使用して、脳卒中または心血管疾患の可能性を減少させ、脳および/もしくは心筋梗塞または他の外傷後の損傷を減少させることができる。別の局面では、化合物を使用し、被験者において、脳卒中または心血管疾患により引き起こされる損傷の重篤度を減少させてもよい。化合物により得られる非制限的な利益としては、脳梗塞および/または心筋梗塞の減少が挙げられる。
【0069】
本明細書で使用されるように、「PDE6関連状態」、「QR2関連状態」、または「CLB2関連状態」という用語は、それぞれ、PDE6、QR2、またはCLB2分子の活性および/または産生を直接または間接的に調節することが望ましい状態を示す。この調節には、PDE6、QR2、またはCLB2の上流または下流シグナル伝達カスケードにおける1つまたは複数の分子の調節が含まれる。例えば、PDE6関連状態には、PDE6Dサブユニット、1つまたは複数のプレニル化PDE6サブユニット、例えば、PDE6D、プレニル化PDE6αもしくはPDE6βまたは光情報伝達(PDE6αおよびPDE6βに対する応答およびそれらの発現を含む)に関連する細胞シグナル伝達経路の他の化学メッセンジャーの産生過剰または望ましくない産生が関与するかもしれない。一定の態様では、酵素HMG CoAレダクターゼは、PDE6関連状態、QR2関連状態、またはCLB2関連状態において最低限の役割を果たす。
【0070】
いくつかの態様では、本発明の方法はPDE6調節化合物を使用する。本明細書で使用されるように「PDE6調節化合物」という用語およびその文法的活用形は、例えば、PDE6に結合することにより、好ましくはPDE6Dに結合することにより、好ましくはPDE6を調節する化合物を示す。例えば、PDE6調節化合物は、1つまたは複数のプレニル化PDE6サブユニット、例えば、PDE6D、プレニル化PDE6αもしくはPDE6β、または光情報伝達(PDE6αおよびPDE6βに対する応答およびそれらの発現を含む)に関連する細胞シグナル伝達経路の他の化学メッセンジャーを調節してもよい。いくつかの態様では、「好ましい調節」という用語およびその文法的活用形は、PDE6の特異的な調節を示す。別の態様では、その用語は、HMG CoAレダクターゼによる最低限の調節によるPDE6の好ましい調節を示す。「最低限の調節」という用語は本質的には調節がないことを示すが、調節が完全にないことは必要なく;好ましくは、本質的には観察可能なまたは測定可能な活性がないことを示す。治療シナリオでは、「最低限の調節」は調節されていない活性により引き起こされる状態において治療および/または予防的効果を得るには十分ではない調節を示す。
【0071】
PDE6、QR2、またはCLB2分子の活性の調節には、これらの分子の活性を減少、増加、または安定化することが含まれる。PDE6、QR2、またはCLB2の活性の減少は、分子の「阻害」とも呼ばれる。「阻害する」という用語およびその文法的活用形、例えば、「阻害の」は、PDE6、QR2、またはCLB2の活性の完全な減少を必要とするものではない。そのような減少は好ましくは、阻害効果のない、例えば、本発明の化合物等の阻害剤がない場合の分子活性の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、およびより好ましくは少なくとも95%の減少である。最も好ましくは、その用語は活性の観察可能なまたは測定可能な減少を示す。治療シナリオでは、好ましくは、阻害は、治療すべき状態において治療的および/または予防的利益が生成するのに十分である。「阻害しない」という句およびその文法的活用形は、活性に対し完全な効果の欠如を必要としない。例えば、本発明の化合物等の阻害剤が存在した場合のPDE6、QR2、またはCLB2の活性の減少の少なくとも約20%未満、約10%未満、好ましくは約5%未満である状態を示す。
【0072】
本発明のPDE6調節剤を哺乳類被験者に投与し、PDE6Dのプレニル化GTPアーゼへの結合を調節し、これによりGTPアーゼ依存性シグナル伝達経路を調節することにより疾患を治療することができる。GTPアーゼ依存性経路の破壊は、様々な医学的状態、例えば、血管過形成、トロンビン誘導細胞死、膀胱癌の発症および進行、慢性炎症疾患、心血管疾患における内皮機能不全、心臓肥大、脳の虚血領域への脳血流の変化、アルツハイマー病患者におけるアミロイド-β原線維のファゴサイトーシス、免疫不全、ならびに大動脈血管平滑筋細胞におけるフリーラジカル産生の増大の一因となる。
【0073】
PDE6関連状態、QR2関連状態、またはCLB2関連状態はまた、神経変性疾患を含むことがあり、例えば、虚血性脳卒中、大脳基底核またはパーキンソン病、てんかんまたは脳もしくは脊髄虚血または外傷;アルツハイマー病、痴呆、糖尿病性末梢神経障害、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、ハンチントン病、心不全(例えば、鬱血性心不全、急性心不全、心臓肥大等)、または腎臓疾患が挙げられる。
【0074】
PDE6関連状態、QR2関連状態、またはCLB2関連状態は視覚障害疾患を含むことができ、例えば、黄斑変性症、弱視、眼瞼炎、Bietti結晶ジストロフィー(Crystalline Dystrophy)、角膜疾患、糖尿病性眼疾患、緑内障、ヒストプラズマ症、および網膜色素変性症が挙げられる。PDE6関連状態、QR2関連状態、またはCLB2関連状態は心血管関連状態を含むことができ、例えば、アテローム性動脈硬化、心筋梗塞、鬱血性心不全、虚血再かん流傷害、および他の血管炎症状態が挙げられる。PDE6関連状態、QR2関連状態、またはCLB2関連状態はまた、癌、例えば白血病、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、ならびに膀胱癌、乳癌、結腸癌、子宮内膜癌、頭部および頸部癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌および直腸癌を含む増殖性疾患を含むことができる。
【0075】
PDE6関連状態、QR2関連状態、またはCLB2関連状態はまた、原因に関係なく、脳卒中により誘導された脳への血流障害から発症する神経学的欠損を含む。可能性のある原因としては、血栓症、出血、および塞栓症が挙げられるがそれらに限定されない。血栓、塞栓、および全身低血圧症は脳虚血エピソードの最も一般的な原因の一つである。他の傷害は、高血圧、高血圧脳血管疾患、動脈瘤の破裂、血管腫、血液疾患、心不全、心停止、心原性ショック、敗血症ショック、頭部外傷、脊髄損傷、てんかん、腫瘍からの出血、または他の血液減少により引き起こされうる。
【0076】
1つの態様では、PDE6調節剤は、細胞の増殖における役割において、小GTP結合タンパク質Rhoの活性を調節する。Rhoタンパク質は、非腫瘍膀胱よりも腫瘍膀胱内に多く存在し、卵巣癌では上方制御されることが報告されている(Kamai T、et al.、Clin. Cancer Res. Jul;9(7):2632-41(2003)およびHoriuchi A.、et al.、Lab Invest. 2003 Jun;83(6):861-70(2003))。
【0077】
Rho GTP結合活性の阻害は、脳の虚血領域への脳血流を増大させる神経保護効果を有することがわかっている(Laufs U、et al.、J. Clin. Invest. 106(1):15-24(2000))。調査により、rho依存性アクチン細胞骨格張線維形成が存在しない、または減少すると、eNOSが上方制御され、脳虚血の重篤度が減少することが証明された。本発明の1つの態様は、本発明の化合物によるRho調節による、虚血性脳卒中の治療を提供する。
【0078】
研究者により、細胞内酸化が必要な心臓肥大が、Rhoファミリーの小G蛋白質の翻訳後調節のスタチン誘導阻害により減少しうることが報告されている(Takemoto M、et al.、J. Clin. Invest. 108(10):1429-37(2001))。Takemoto Mらは、Rhoイソプロニル化の阻害により細胞内抗酸化剤効果が発生し、心臓肥大が阻止されることを観察した。本発明の1つの態様は本発明の化合物によるRhoの調節による心臓肥大の治療を提供する。
【0079】
別の態様では、PDE6調節剤は、アルツハイマー病に関与する小GTP結合タンパク質Racの活性を調節する。Racは、細胞外老人性プラーク由来のアミロイド-β原線維のファゴサイトーシスに関与することが観察された(Kitamura Y、et al、J. Pharmacol. Sci. 92(2):115-23 2003))。
【0080】
治療方法
本発明の1つの局面は、本発明のピロール化合物をそれ自体で、薬学組成物として、および本明細書で記述した化合物を備えるキットとして使用し、PDE6関連状態、QR2関連状態、またはCLB2関連状態を治療する方法に関する。
【0081】
本発明の別の局面は、アトルバスタチンを使用してPDE6関連状態を治療する方法に関する。治療されるPDE6D関連状態は、PDE6D分子の活性および/または産生の直接または間接的な調節が望ましい状態を含む。この調節は、PDE6Dの上流または下流シグナル伝達カスケードにおける1つまたは複数の分子の調節を含む。例えば、PDE6D関連状態はPDE6Dサブユニットの産生過剰または望ましくない産生を含むことがある。アトルバスタチンを使用する場合、治療される状態は、最低限のHMG CoAレダクターゼの役割を有することが好ましい。好ましくは、アトルバスタチンの投与により、好ましくはPDE6を調節することにより、有益な効果が得られる。アトルバスタチンの性質により、HMG CoAレダクターゼ活性に対する効果が期待されるであろう。しかし、いくつかの態様では、治療される状態で有益な効果が得られるのはこの活性ではない。ある態様では、治療される状態において、またはアトルバスタチンを使用する方法において、アトルバスタチンの効果は、フェネシルピロリン酸、ゲラニルゲラニルピロリン酸、および/またはメバロネートの添加により無効にならない。一定の態様では、アトルバスタチンを使用して、NQ2および/またはCLB2関連状態を治療する。
【0082】
本発明は、被験者を治療するための方法、薬学的組成物、およびキットを提供する。本明細書で使用されるように、「被験者」という用語は哺乳類および非哺乳類を含む。哺乳類の例としては、哺乳類クラスの任意のメンバー:ヒト、チンパンジーのようなヒト以外の霊長類、および他の類人猿およびサル種;家畜(farm animal)、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ;家畜(domestic animal)、例えばウサギ、イヌ、およびネコ;齧歯類を含む実験動物、例えば、ラット、マウス、およびモルモット等が挙げられるが、それらに限定されない。非哺乳類の例としては、トリ、サカナ等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0083】
本明細書で使用されるように、「治療する」という用語は、治療効果および/または予防効果を達成することを含む。治療効果は、治療される基礎疾患の根絶または緩和を意味する。例えば、癌患者では、治療効果は基礎をなす癌の根絶または緩和を含む。また、治療効果は、基礎疾患に関連する1つまたは複数の生理学的症状の根絶または緩和により達成され、そのため、患者が依然として基礎疾患に苦しむという事実にもかかわらず、患者において改善が観察される。例えば、PDE6D調節剤は、アルツハイマー病が根絶される場合だけでなく、痴呆のようにアルツハイマー病に伴う他の疾患または不快症状について患者で改善が観られる場合に、治療的利益を提供する。同様に、本発明の阻害薬は、PDE6関連状態、QR2関連状態、またはCLB2関連状態に関連する他の症状、例えば、炎症状態、自己免疫状態、癌状態、視覚障害、および/または神経変性状態、例えば、赤み、発疹、腫れ、そう痒、刺激、乾燥、落屑、剥離、疼痛、体温上昇、正常機能の損失等を緩和する際に治療効果を提供することができる。
【0084】
予防効果としては、PDE6関連状態、QR2関連状態、またはCLB2関連状態を発症するリスクのある患者、またはそのような状態の1つまたは複数の生理学的症状を報告している患者に、その状態の診断がなされているかどうかに関係なく、本発明の化合物を投与してもよい。
【0085】
当業者であれば、化合物、例えばピロール化合物を状態または疾患の発生前、発生中、または発生後に投与することができること、およびピロール化合物を含む組成物の投与のタイミングは変化させることができることを認識するであろう。このように、例えば、ピロール化合物は予防薬として使用することができ、障害の発生を阻止するために、状態および疾患の傾向のある被験者に連続して投与することができる。ピロール化合物は、症状の発症中または発症後できるだけ早くに被験者に投与することができる。化合物の投与は、症状の発症の最初の48時間以内に、好ましくは症状の発症の最初の48時間以内に、より好ましくは症状の発症の最初の6時間以内に、最も好ましくは症状の発症の3時間以内に開始することができる。最初の投与は、実際的な任意の経路、例えば、静脈注射、巨丸剤注入、5分〜5時間にわたる注入、ピル、カプセル、経皮パッチ、口腔送達等、またはそれらの組み合わせを介して実施することができる。ピロール化合物は好ましくは状態または疾患、例えば脳卒中の発症が検出または疑われた後に実行可能な限りできるだけ早く投与され、かつ疾患の治療に必要な長さの時間の間、例えば、約1ヶ月〜約3ヶ月投与される。当業者であれば、治療の長さは各被験者に対し変えることができることを認識できるので、公知の基準を用いてその長さを決定することができる。例えば、脳卒中では、典型的には、ピロール化合物は少なくとも2週間、好ましくは約1ヶ月〜約1年、より好ましくは約1ヶ月〜約3ヶ月投与される。ピロール化合物の長期投与を使用すると、CVA後、または神経変性疾患における回復が促進される。
【0086】
CVA、例えば脳卒中の場合、本発明の1つの態様では、本発明のピロール化合物を最初の脳卒中後に使用すると、例えば脳梗塞由来の、その後の脳卒中の結果起こる障害の頻度および/または重篤度を減少させることができる。このように、本発明は、脳卒中から生じる障害(後脳卒中外傷)を減少させるための方法を提供する。このように、本発明は後心筋外傷の頻度および/またはそれに由来する障害を減少させる。
【0087】
本発明の別の局面では、PDE6D、QR2、および/またはCLB2標的に結合する本発明の化合物を使用して、インビボでPDE6、QR2、および/またはCLB2により媒介される状態を治療または予防する。いくつかの態様では、化合物はPDE6D、QR2、および/またはCLB2の機能および/または活性に影響し、そのため、PDE6D、QR2、および/またはCLB2の機能および/または活性の変化を必要とする哺乳類被験者、好ましくはヒトに投与することができる。このように、本発明は、不十分な、または望ましくない、あるいは過剰のPDE6D、QR2、および/またはCLB2の活性(PDE6Dのその結合パートナーへの結合または他のタンパク質、特にプレニル化タンパク質との会合を含む)により媒介される疾患または望ましくない状態の治療を提供する。本発明の化合物は、PDE6Dにより媒介される細胞シグナル伝達カスケードの調節に有益な化合物を含むことが期待される。
【0088】
いくつかの態様では、本発明により、細胞内発現の変更に基づいて標的の活性を調節する方法が提供される。これらの方法は、標的の発現の増大が必要な細胞内の標的の発現を増大させる段階、および標的の発現の減少が必要な細胞内で標的の発現を減少させる段階を含む。発現を増大させる非制限的方法は、組換え発現ベクターおよび、本発明の標的をコードする内因性配列の発現を増大させる薬剤の使用を含む。発現を減少させる非制限的方法はRNA干渉、アンチセンスおよびリボザイム媒介手段の使用、ならびに本発明の標的をコードする内因性配列の発現を減少させる薬剤の使用を含む。
【0089】
さらに別の態様では、本発明は疾患または望ましくない状態の治療における標的結合化合物による刺激または阻害レベルを決定するための方法を提供する。そのような方法は、標的結合化合物を被験者に投与する段階、続いて、該化合物を投与されていない被験者または異なる量もしくは濃度の化合物を投与された被験者と比較して、化合物により媒介された刺激または阻害のレベルを決定する段階を含む。刺激または阻害のレベルは、疾患または望ましくない状態の治療における化合物の有効性により決定してもよい。また、阻害レベルは、任意で別の被験者に対する比較無しで、被験者における化合物の標的により媒介される表現型の阻害により決定してもよい。これらの方法は、様々な量または濃度の化合物を使用して繰り返し実施し、ある範囲の状態に対する刺激または阻害のレベルを決定してもよい。この方法を使用して、刺激または阻害のレベルが検出されないことを決定してもよい。
【0090】
標的結合化合物の刺激または阻害のレベルを決定する例示的な方法は、
標的結合(刺激剤または阻害剤)化合物を被験者に投与する段階;
化合物が投与されていないか、または異なる量の化合物が投与、もしくは異なる投与プロトコル(例えば投与頻度または投与した化合物の量、しかしこれらに限定されない)で化合物が投与された被験者(または被験者群)と比較して、本明細書で開示した疾患または望ましくない状態に対する刺激もしくは阻害活性または有効性のレベルを決定する段階
を含んでもよい。
【0091】
比較を異なる標的化合物間で実施し、その相対活性レベルを決定してもよい。被験者は哺乳類、好ましくはヒトであり、1つまたは複数の標的結合化合物の臨床または前臨床試験に参加しているものであってもよい。刺激または阻害活性レベルの決定はまた、臨床試験の外で、またはその後に実施し、標的結合化合物による阻害レベルを確認してもよく、疾患または望ましくない状態に対し、熟練者に公知の様々な方法で実施することができる。
【0092】
本発明の化合物、例えばPDE6D、QR2、および/またはCLB2調節化合物は、被験者が化合物による治療により効果が得られる疾患または望ましくない状態にかかっていると決定され次第、被験者に投与してもよい。決定は、被験者における疾患または状態の診断の一部として医療関係者により実施されてもよい。好ましい態様は、PDE6D、QR2、および/またはCLB2の結合化合物を使用し、HMG-CoAレダクターゼ活性の最低限阻害を提供する方法を含む。例示的な効果としては、脳卒中を含む脳障害(脳血管障害またはCVA);炎症(例えば自己免疫疾患由来);多発性硬化症;および心血管疾患の治療、例えば心筋梗塞後外傷の軽減が挙げられるが、それらに限定されない。PDE6D、QR2、および/またはCLB2調節化合物を、特にCVAの場合、例えば、1つまたは複数回の脳卒中を患った患者または医療従事者によりCVA、例えば脳卒中の危険があると診断された被験者において、そのような状態の予防に使用してもよい。
【0093】
「脳卒中」という用語は広く、原因に関係なく、脳への血流障害に関連する神経学的欠損の発症を示す。可能性のある原因としては、血栓症、出血、および塞栓症が挙げられるが、それらに限定されない。血栓、塞栓、および全身低血圧症は脳虚血エピソードの最も一般的な原因の一つである。他の傷害は、高血圧、高血圧脳血管疾患、動脈瘤の破裂、血管腫、血液疾患、心不全、心停止、心原性ショック、敗血症ショック、頭部外傷、脊髄損傷、てんかん、腫瘍からの出血、または他の血液減少により引き起こされうる。
【0094】
CVA、例えば脳卒中の場合、かつ本発明の1つの態様において、本発明の化合物を最初の脳卒中後に使用し、頻度および/または重篤度、またはその後の脳卒中の結果起こる例えば脳梗塞由来の障害を減少させることができる。このように、本発明は、PDE6D、QR2、および/またはCLB2に結合する化合物を使用して、脳卒中の結果起こる障害(脳卒中後外傷)を減少させるための方法を提供する。
【0095】
心血管疾患の場合、かつ本発明の1つの態様において、本発明の化合物を最初の心発作後に使用し、頻度および/または重篤度、またはその後の心発作の結果起こる例えば心筋梗塞(一般に、心発作と呼ばれる)由来の障害を減少させることができる。このように、本発明は、心筋梗塞後外傷の頻度および/またはそれ由来の障害を減少させる方法を提供する。本発明の化合物を使用して、炎症および多発性硬化症等の状態を治療してもよい。
【0096】
本発明の化合物により影響を受けるPDE6D活性の他の非制限的例としては、触媒PDEαおよび/またはβサブユニットへのPDE6Dの結合;およびプレニル化タンパク質へのPDE6Dの結合が挙げられる。このように、本発明はホスホジエステラーゼ6により媒介されるシグナル伝達カスケード(および、PDE6Dが一構成要素である他のシグナル伝達カスケード)、例えば、動物の視覚系における桿体外節膜のカスケード(しかしこれに限定されない)を調節するための方法を提供する。
【0097】
さらに、PDE6D結合化合物は、網膜細胞を超えて様々な細胞型におけるホスホジエステラーゼ媒介活性の調節に関与することが期待される。本発明の非限定的態様は、下記により阻害されるもの等のホスホジエステラーゼ媒介活性を阻害するPDE6D結合化合物の使用を含む:ザプリナスト、デメチルシルデノフィル、ビノポセチン、ミルリノン、アムンリノン、ピモベンダン、シロスタミド、エノキシモン、ペロキシモン、ベスナリノン、ロリプラン、R020-1724、およびジピリダモール。PDE6D阻害化合物はこれらの薬剤と組み合わせて使用してもよい。そのため、本発明の方法を使用して、PDE6D阻害化合物および/または別の阻害剤を投与することにより、異常な、または望ましくないホスホジエステラーゼ、特にPDE6活性により特徴づけられる障害をもつ被験者を治療してもよい。1つの態様では、異常な、または望ましくないPDE6D活性により特徴づけられる障害は、不十分なレベルの膜結合PDE6により特徴づけられる障害である。
【0098】
本発明はまた、タンパク質のrasスーパーファミリーおよびrabファミリーのメンバー(H-Ras、Rheb、Rho6、およびRab13を含む)への結合に影響するPDE6D結合化合物の使用を提供する。本発明の化合物を使用して、Gα(il)ならびにArf様(Arl)タンパク質Arl2およびArl3へのPDE6結合に影響させることもできる。Arf(ADPリボシル化因子)サブファミリーメンバーは、細胞内輸送における小胞形成のレギュレータである。Rab13は小胞輸送に関与し、上皮細胞内での密着結合と関連することが確認されている。このように、本発明のPDE6D調節化合物を使用して、PDE6Dと関連するタンパク質、例えば、H-Ras、Rheb、Rho6、Rab13、Gα(il)、Arl2、およびArl3により媒介される疾患および望ましくない状態を治療してもよい。非制限的な例としては、癌、全前脳症3型、および無仙椎が挙げられる。
【0099】
本発明の化合物に影響されるQR2活性の非制限的な例としては、QR2のキノリンへの結合ならびにキノンおよびニトロ基含有細胞毒性剤の生体内活性化が挙げられる。このように、本発明はQR2により媒介される化合物の生体内活性化の調節のための方法を提供する。
【0100】
本発明の方法は、PDE6D、QR2、および/またはCLB2の結合化合物を単独で、または1つまたは複数の、治療される疾患に適した他の分子もしくは他の薬剤と組み合わせて投与する段階を含んでもよい。被験者は好ましくはヒトであり、長期にわたる反復投与は本発明の範囲内である。
【0101】
そのような併用法を使用して、上記で詳細に記述したような、PDE6D関連、QR2関連、またはCLB2関連状態を治療することができる。この方法は、本発明の化合物を他の治療薬を組み合わせて投与する段階を含んでもよい。本発明の組成物と同時投与することができる治療薬の選択は、一部、治療される状態に依存する。例えば、動脈硬化、または他の心血管状態を治療するために、本発明のいくつかの態様のピロール化合物を、抗凝血剤、コレステロール降下剤、血管拡張剤、利尿剤、および/またはアンギオテンシン変換酵素阻害剤等と組み合わせて使用することができる。アルツハイマー病関連状態の治療に関しては、本発明のピロール化合物を、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬またはグルタミン酸受容体拮抗薬等と組み合わせて使用することができる。
【0102】
上記は一般に、治療目的の、PDE6D、QR2、またはCLB2の発現または活性を標的とする方法に関する。従って、例示的な態様では、本発明の方法は、細胞と関連する1つまたは複数のPDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質活性を刺激または阻害するPDE6D、QR2、またはCLB2の結合化合物と細胞を接触させる段階を含む。これらの方法はインビトロで(例えば、細胞を薬剤と共に培養することにより)、またはインビボで(例えば、薬剤を被験者に投与することにより)実施することができる。方法はまた、被験者から入手し、インビトロで処置し、その後、被験者に戻した細胞の場合のように、エクスビボで実施することもできる。
【0103】
疾患および望ましくない状態を治療するための標的としてのPDE6D、QR2、またはCLB2の同定により、それらの治療への多くの治療アプローチが可能となる。したがって、本発明により、PDE6D、QR2、およびCLB2の機能および活性を刺激または阻害する治療アプローチが提供される。これらの治療アプローチは一般に、2つのクラスに分類される。1つのクラスは、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質とその結合パートナーまたは他のタンパク質との結合または会合に影響する様々な方法を含む。別のクラスは、PDE6D、QR2、またはCLB2遺伝子の転写またはPDE6D、QR2、またはCLB2 mRNAの翻訳に影響する様々な方法を含む。
【0104】
本発明の1つの好ましい態様では、PDE6D、QR2、またはCLB2に結合すると同定された小分子を使用して、PDE6D、QR2、またはCLB2の機能または活性を刺激または阻害してもよい。また、抗体を用いる治療戦略において、PDE6D、QR2、およびCLB2を標的としてもよい。多くの抗体戦略が、細胞内分子を標的とする当技術分野で公知であり、これらには一本鎖抗体の細胞内発現が含まれる。抗体がPDE6D、QR2、またはCLB2に結合し、機能、例えば結合パートナーとの相互作用を阻害するように抗体を患者に導入することができる。また、抗体はPDE6D、QR2、またはCLB2により媒介されるリガンド結合またはシグナル伝達経路に影響する。
【0105】
本発明はまた、PDE6D、QR2、またはCLB2コード配列の転写を阻害するための様々な方法および組成物を含む。同様に、本発明はまた、PDE6D、QR2、またはCLB2 mRNAのタンパク質への翻訳を阻害するための方法および組成物を提供する。
【0106】
1つのアプローチでは、PDE6D、QR2、またはCLB2コード配列の転写を阻害する方法は、配列をアンチセンスポリヌクレオチドと接触させる段階を含む。別のアプローチでは、PDE6D、QR2、またはCLB2 mRNA翻訳を阻害する方法は、mRNAをアンチセンスポリヌクレオチドと接触させる段階、または当技術分野で公知の転写後遺伝子サイレンシング(PTGS、例えばRNA干渉)を誘発する段階を含む。別のアプローチでは、PDE6D、QR2、またはCLB2特異的リボザイムを使用して、PDE6D、QR2、またはCLB2 mRNAメッセージを切断し、これにより、翻訳を阻害する。そのようなアンチセンスおよびリボザイムに基づく方法はまた、PDE6D、QR2、またはCLB2コード配列の調節領域、例えばプロモータおよび/またはエンハンサーエレメントに向けることができる。同様に、PDE6D、QR2、またはCLB2遺伝子転写因子を阻害することができるタンパク質および/または小分子(5kDa未満)を使用して、PDE6D、QR2、またはCLB2 mRNA転写を阻害する。
【0107】
遺伝子移入および遺伝子治療技術を使用して、治療的ポリヌクレオチド分子(すなわち、アンチセンス、リボザイム、細胞内抗体をコードするポリヌクレオチド、および他の阻害分子)を、PDE6D、QR2、またはCLB2を発現する細胞に送達させることができる。多くの遺伝子療法アプローチが当技術分野で公知である。PDE6D、QR2、またはCLB2アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、siRNA、PDE6D、QR2、またはCLB2転写を阻害することができる因子等をコードする組換えベクターを、そのような遺伝子療法アプローチを使用して標的細胞に送達させることができる。
【0108】
インビボでは、PDE6D、QR2、またはCLB2治療組成物の効果は、適した動物モデルで評価することができる。PDE6D、QR2、またはCLB2の機能または活性の阻害を評価するインビボアッセイ法はまた、治療組成物を評価する際にも有益である。
【0109】
PDE6D、QR2、またはCLB2発現または少なくとも1つのPDE6D、QR2、またはCLB2の活性に影響する薬剤の被験者への投与によって被験者においてPDE6D、QR2、またはCLB2の発現または活性と関連する疾患または望ましくない状態を阻止する予防法に、本発明の阻害剤を使用してもよい。異常なPDE6D、QR2、またはCLB2の発現または活性により引き起こされる、またはそれに起因する疾患のリスクのある患者は、当技術分野において公知の任意の適当な診断的アッセイ法によって確認することができる。予防薬の投与は、異常なPDE6D、QR2のまたはCLB2レベルを特徴とする症状の発現前に実施することができ、そのため、疾患または状態が予防され、または進行を遅らせることができる。
【0110】
本明細書で使用されるように、有効量の化合物または薬剤は意図した目的を達成するのに十分な量を示す。有効量の決定は、所望の効果の達成に基づき、当業者の能力内である。有効量は様々な因子、例えば、被験者のサイズおよび/または被験者が患う疾患または望ましくない状態の進行度(それらに限定されない)に依存する。有効量はまた、化合物または薬剤が被験者に単回投与で、または長期にわたり周期的に投与されるかどうかに依存する。
【0111】
製剤、投与経路、および有効用量
本発明の化合物、例えば、PDE6D、QR2、およびCLB2調節化合物は好ましくは、当技術分野で一般に公知の技術を用いて被験者に投与するための薬学的組成物に製剤化する等、薬剤を調製するために使用される。そのような薬学的組成物をまとめたものは、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PAにおいて見いだすことができる。本発明の化合物は単独でまたは混合物の成分として使用することができる。化合物の好ましい形態は、全身投与に対するもの、および局所または経皮投与に対するものである。持続放出および/または遅延放出用に設計された製剤もまた、本発明の範囲内にある。
【0112】
そのような薬学的組成物を使用して、上記で詳細に記述したような、疾患、例えばPDE6関連、QR2関連、およびCLB2関連状態を治療することができる。必要または望ましければ、調節物質または阻害剤を他の治療薬と組み合わせて投与してもよい。本発明の組成物と同時に投与することができる治療薬の選択は、部分的には、治療される状態に依存する。例えば、動脈硬化、または他の心血管疾患を治療するために、本発明のいくつかの態様のピロール化合物を抗凝血剤、コレステロール降下剤、血管拡張剤、利尿剤、および/またはアンギオテンシン変換酵素阻害剤等と組み合わせて使用することができる。アルツハイマー病関連状態の治療に関しては、本発明のピロール化合物をアセチルコリンエステラーゼ阻害剤またはグルタミン酸受容体拮抗薬等と組み合わせて使用することができる。
【0113】
調節物質は、それ自体で、または、活性化合物が1つまたは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤との混合物中に存在する薬学的組成物の形態で投与してもよい。本発明に従い使用するための薬学的組成物は、従来の様式で、活性化合物を処理して薬学的に使用することができる調製物にするのを促進する、賦形剤および佐剤を含む1つまたは複数の生理的に許容される担体を使用して製剤化してもよい。適した製剤は、選択した投与経路に依存する。本発明で有益な調節物質は、経口、口腔、局所、直腸、経皮、経粘膜、皮下、静脈内、および筋内適用、ならびに吸入を含む多くの投与経路または投与方法を使用して患者に送達させることができる。
【0114】
本発明のピロール化合物を含む組成物の調製法は、誘導体を1つまたは複数の不活性な、薬学的に許容される担体と共に製剤化し、固体または液体を形成させる段階を含む。固体組成物としては、粉末、錠剤、分散顆粒、カプセル、カシェ剤、および坐薬が挙げられるが、それらに限定されない。液体組成物としては、ピロール化合物が溶解された溶液、ピロール化合物を含むエマルジョン、または本明細書で開示したピロール化合物を含むリポソーム、ミセル、またはナノ粒子を含む溶液が挙げられる。
【0115】
本発明の化合物また、食品、例えば、クリームチーズ、バター、サラダドレッシング、またはアイスクリーム中に組み入れてもよく、一定の患者集団では、可溶化、投与、および/または服薬遵守が促進される。
【0116】
本発明のピロール化合物は(例えば、放射性同位体を用いて)同位体標識してもよく、または発色団もしくは蛍光部分の使用、生物発光ラベル、または化学発光ラベルを含むがこれらに限定されない他の手段により標識してもよい。組成物は従来の形態、液体溶液もしくは懸濁液、使用前に液体中に溶解もしくは懸濁させるのに適した固体形態として、またはエマルジョンとして存在してもよい。適した賦形剤または担体は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、アルコール、アロエゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンAおよびE油、鉱物油、プロピレングリコール、プロピオン酸PPG-2ミリスチル等である。当然、これらの組成物はまた、少量の非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等を含んでもよい。
【0117】
経口投与では、化合物は、活性化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることにより容易に製剤化することができる。そのような担体により、本発明の化合物は、治療を受ける患者が経口摂取できるように、錠剤として、例えば、チュアブル錠、ピル、糖衣錠、カプセル、ロゼンジ、ハードキャンディ、液体、ゲル、シロップ、スラリー、粉末、懸濁液、エリキシル、ウエハース等として、製剤化することができる。そのような製剤は、薬学的に許容される担体を含み、これらの担体には固体希釈剤またはフィラー、滅菌水溶性媒質および様々な非毒性有機溶媒が含まれる。適した賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などのフィラー;香味要素、セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。望ましければ、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加してもよい。化合物はまた、持続放出調製物として製剤化してもよい。
【0118】
糖衣錠コアには適当なコーティングを提供することができる。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用してもよく、任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適した有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。識別のために、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴づけるために、染料または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0119】
経口で使用することができる薬学的調製物としては、ゼラチンで形成された押し込み型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールにより形成されたソフトな密封カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、混合物中に活性成分を、乳糖などのフィラー、デンプン等の結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、および任意で安定化剤と共に含むことができる。ソフトカプセル中では、活性化合物は適した液体、例えば脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコール中に溶解または懸濁させてもよい。さらに、安定化剤を添加してもよい。経口投与用の製剤は全て、投与に適した投与量であるべきである。
【0120】
水性懸濁液は本発明の化合物を、薬学的に許容される賦形剤、例えば懸濁化剤(例えば、メチルセルロース)、湿潤剤(例えば、レシチン、リゾレシチン、および/または長鎖脂肪アルコール)、ならびに着色剤、保存剤、香味剤等と共に含んでもよい。
【0121】
注入用に、本発明の化合物は水溶液、好ましくは生理的に適合可能な緩衝液、例えばHank溶液、Ringer液、または生理食塩水緩衝液中で製剤化してもよい。そのような組成物はまた、1つまたは複数の賦形剤、例えば、保存剤、可溶化剤、フィラー、潤滑剤、安定化剤、アルブミン等を含んでもよい。製剤化法は当技術分野で公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、latest edition、Mack Pubulishing Co.、Easton P.に開示されている。これらの化合物はまた、経粘膜投与、口腔投与用に、吸入による投与用に、非経口投与用に、経皮投与用に、および直腸投与用に製剤化してもよい。
【0122】
前述した製剤以外に、化合物はまた、デポー製剤として製剤化してもよい。そのような長期作用製剤は、移植または経皮送達(例えば、皮下または筋内)、筋肉注射または経皮パッチの使用により、投与してもよい。このように、例えば、化合物は適したポリマー材料または親水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂と共に、またはやや溶けにくい誘導体、例えば、やや溶けにくい塩として製剤化してもよい。
【0123】
いくつかの態様では、本発明の化合物を含む薬学的組成物は炎症の特別な部位またはその付近に局所投与または注入されると局所的な抗炎症効果をもたらす。例えば、アレルギー性の目の炎症状態および/または自己免疫状態は、1つまたは複数の本発明の化合物を含む眼科用の溶液、懸濁液、軟膏、または挿入物により効果的に治療することができる。耳のアレルギー性の炎症および/または自己免疫状態は、1つまたは複数の本発明の化合物を含む耳用の溶液、懸濁液、軟膏、または挿入物により効果的に治療することができる。皮膚および皮膚構造のアレルギー性の炎症および/または自己免疫状態は、油脂性炭化水素ベース、無水吸収ベース、油中水吸収ベース、水中油水除去可能ベース、および/または水溶性ベース中に1つまたは複数の本発明の化合物を含む皮膚用軟膏により効果的に治療することができる。アレルギー性の胃腸の炎症および/または自己免疫状態は、1つまたは複数の本発明の化合物を含む、経口または直腸送達される溶液、懸濁液、軟膏、浣腸、および/または坐薬により効果的に治療することができる。呼吸器の、アレルギー性の炎症および/または自己免疫状態は、1つまたは複数の本発明の化合物を含むエアロゾル溶液、懸濁液、または乾燥粉末により効果的に治療することができる。
【0124】
例えば、炎症および/または自己免疫状態を治療するために、本発明の化合物を含むクリームを患部、例えば、乾癬における赤色斑もしくは乾燥鱗屑を示す部位、または皮膚炎における炎症および乾燥領域に局所適用してもよい。別の例として、炎症性大腸炎を治療するために、本明細書で開示した化合物の坐薬製剤を使用することができる。そのような態様では、活性成分は、PDE6、QR2、またはCLB2、例えばPDE6Dを調節することにより、全身的ではなく、適用部位で、またはその付近で局所的に効果を発揮する。
【0125】
例えば、局所的および/または局部的な効果を得るために、例えば、粘稠液、ゲル、ゼリー、クリーム、ローション、軟膏、坐薬、フォーム、またはエアロゾルスプレーの直接的な局所適用を使用して局所投与してもよい。そのような製剤のための薬学的に適した媒剤としては、例えば、低級脂肪族アルコール、ポリグリコール(例えば、グリセロールまたはポリエチレングリコール)、脂肪酸のエステル、油、脂肪、シリコーン等が挙げられる。そのような調製物はまた、保存薬(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エステル)および/または抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸およびトコフェロール)を含んでもよい。Dermatological Formulations:Percutaneous absorption、Barry(Ed.)、Marcel Dekker Incl、1983も参照のこと。
【0126】
いくつかの好ましい態様では、本発明の化合物は、懸濁液形態よりもむしろ溶解形態で送達され、これにより、作用部位へのより迅速で定量的な吸収が得られる。一般に、ゼリー、クリーム、ローション、坐薬、および軟膏等の製剤は、ある領域を本発明の化合物により長く曝露させることができ、溶液形態、例えばスプレーの製剤は、より即効性の短期曝露を提供する。
【0127】
製剤はまた、本発明の阻害化合物が皮膚の透過障壁を横切って浸透するのを増加させるかまたはその送達を支援する適した固体またはゲル相の担体または賦形剤を含んでもよい。これらの浸透増強化合物の多くは局所製剤の技術分野で公知である。そのような担体および賦形剤の例としては、湿潤剤(例えば、尿素)、グリコール(例えば、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール)、アルコール(例えば、エタノール)、脂肪酸(例えば、オレイン酸)、界面活性剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピルおよびラウリル硫酸ナトリウム)、ピロリドン、グリセロールモノラウレート、スルホキシド、テルペン(例えば、メントール)、アミン、アミド、アルカン、アルカノール、ORGELASE、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、他のポリマーおよび水が挙げられる。いくつかの態様では、薬学的組成物は1つまたは複数の浸透増強剤、例えば、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、テトラデシルメチルスルホキシド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリドン、ラウロカプラム、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフルフリルアルコール、L-α-アミノ酸、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、脂肪酸、脂肪アルコール、クロフィブリン酸アミド、ヘキサメチレンラウルアミド、タンパク質分解酵素、α-ビサボロール、d-リモネン、尿素、N,N-ジエチル-m-トルアミド等が挙げられる。
【0128】
いくつかの態様では、薬学的組成物は1つまたは複数の抗菌保存剤、例えば第四アンモニウム化合物、有機水銀剤、p-ヒドロキシベンゾエート、芳香族アルコール、クロロブタノール等を含む。
【0129】
本発明において使用するのに適した薬学的組成物としては、活性成分が有効量、すなわち、PDE6関連、QR2関連、またはCLB2関連状態のうちの少なくとも1つにおいて治療的および/または予防的効果を達成するのに有効な量で存在する組成物が挙げられる。特別な用途に対して効果的な実際の量は、治療される状態、被験者の状態、製剤、および投与経路、ならびに当業者に公知の他の因子に依存する。PDE6、QR2、またはCLB2の調節物質の有効量の決定は、本明細書の開示を考慮すると、当業者の能力の範囲内であり、ルーチン的な最適化技術を用いて決定されると考えられる。
【0130】
治療的な使用では、本発明の化合物は被験者に、約0.05mg/kg〜約10.0mg/kg体重/日の用量レベルで投与される。約70kgのヒト被験者では、約40mg〜約600mg/日の用量を非制限的例として使用してもよい。好ましい用量として約1mg/kg、約2.5mg/kg、約5mg/kg、および約7.5mg/kgが挙げられる。本明細書で開示した以外のより低いまたはより高い用量を必要に応じて使用してもよい。しかしながら、そのような用量は多くの変数により変更してもよく、これらの変数には使用した化合物の活性、治療すべき状態、投与方法、個々の被験者の必要量、治療される状態の重篤度、施術者の判定が挙げられるがそれらに限定されない。前述の範囲は示唆的なものにすぎず、個々の治療計画に関して変数の数は膨大であり、これらの推奨値からのかなりの可動域は珍しいことではない。
【0131】
ヒトにおいて使用するための有効量は動物モデルから決定することができる。例えば、ヒトに対する用量を、動物において効果的であることがわかっている循環、肝臓、局所、および/または胃腸の濃度が達成されるように製剤化することができる。
【0132】
本発明の阻害剤に関しては、有効量は一般に、医学または薬学分野の様々な規制機関または諮問機関(例えば、FDA、AMA)のいずれかにより、または製造者もしくは供給者により推奨または承認された用量範囲、投与方法、製剤等を意味する。
【0133】
いくつかの態様では、本発明の化合物の投与は断続的であり、例えば、2日毎、3日毎、5日毎に1回、週に1回、または1ヶ月に1回もしくは2回の投与等としてもよい。いくつかの態様では、量、形態、および/または異なる形態の量は、異なる投与時点で変動させてもよい。
【0134】
アッセイ法、スクリーニング、および同定
本発明は、アトルバスタチン作用の追加の細胞標的の同定および検証に基づく。追加の細胞標的は、PDE6D、QR2、またはCLB2である。これらの標的の検証に基づき、本発明は、アトルバスタチン標的に結合する(好ましくは、選択的に他の細胞因子への結合を超える)追加の化合物の同定に対するアッセイ法を提供する。本発明は、アトルバスタチン標的分子に結合する追加の分子に対するアッセイ法に向けた組成物および方法、ならびに疾患および望ましくない状態を治療するために同定された分子の使用を提供する。
【0135】
別の態様では、本発明は、被験者に投与すると望ましくない効果および状態を引き起こす可能性がある分子を同定するために、アトルバスタチン標的分子に結合する追加の分子に対するアッセイ法を対象とする組成物および方法を提供する。本方法を適用して、薬物化合物または活性作用薬の可能な悪影響を確認してもよい。標的により媒介されるアトルバスタチン作用の非制限的例としては、全体として被験者に、ならびに消化器系、呼吸器系、神経系、筋骨格系、皮膚および付属器、泌尿生殖器、心血管、ならびに血液およびリンパ系を含む特定の被験者体内の系に影響する望ましくない効果が挙げられるがそれらに限定されない。効果はまた感覚に影響し、代謝および栄養疾患となることがある。そのような望ましくない効果または状態の非制限的例としては、胸痛、顔面浮腫、発熱、項強直、倦怠感、光過敏症反応、全身性浮腫、吐き気、胃腸炎、異常肝臓試験により確認された異常肝機能、大腸炎、嘔吐、胃炎、口渇、直腸出血、食道炎、おくび、舌炎、口潰瘍、拒食症、食欲増加、口内炎、胆管痛、口唇炎、十二指腸潰瘍、嚥下障害、腸炎、メレナ、歯ぐき出血、胃潰瘍、テネマス(tenemus)、潰瘍性口内炎、肝炎、膵炎、胆汁うっ滞性黄疸、気管支炎、鼻炎、肺炎、呼吸困難、喘息、鼻出血、不眠、めまい、知覚障害、眠気、健忘、異常な夢、性欲減退、情緒障害、協調不能、末梢神経障害、斜頸、顔面麻痺、運動過剰症、鬱病、感覚鈍麻、筋緊張亢進、関節炎、足のけいれん、滑液包炎、腱滑膜炎、筋無力症、腱拘縮、筋炎、掻痒、接触皮膚炎、脱毛症(抜け毛)、乾燥肌、発汗、にきび、じんましん、湿疹、脂漏症、皮膚潰瘍、尿路感染症、頻尿、膀胱炎、血尿、インポテンス、排尿困難、腎臓結石、夜尿症、副睾丸炎、乳腺線維嚢胞、膣口出血、タンパク尿、胸部肥大、不正子宮出血、腎炎、尿失禁、尿閉、尿意促迫、射精異常、子宮出血、動悸、血管拡張、失神、片頭痛、体位性低血圧、静脈炎、不整脈、狭心症、高血圧、斑状出血、貧血、リンパ節症、血小板減少症、点状出血、弱視、耳鳴り、ドライアイ、屈折障害、眼出血、難聴、緑内障、嗅覚錯誤、味覚喪失、味覚倒錯、末梢浮腫、高血糖、クレアチン・ホスホキナーゼ増加、痛風、体重増加、および低血糖が挙げられるがこれらに限定されない。
【0136】
A.類似体、同族体、およびポリペプチド
本明細書で使用されるように、「PDE6D」、「QR2」、および「CLB2」という用語は、それぞれ、PDE6D、QR2、およびCLB2の類似体を含み、それらは、他の動物またはヒトから得ることができ、公知のPDE6D、QR2、およびCLB2配列に対し、アミノ酸配列またはコードヌクレオチド配列にずれが存在する。「類似体」という用語は、PDE6D、QR2、またはCLB2と構造的に類似するか、またはそれらと同じ機能または活性を有する分子を示す。非制限的例として、PDE6Dタンパク質の類似体は、特異的にPDE6Dに結合する抗体またはT細胞により特異的に結合される。他の動物および他のヒト由来の天然の類似体、ならびにそれらのアレル(遺伝子多型から得られるものを含む)を本発明の実施に使用してもよい。遺伝子操作により得られた合成類似体、例えば、保存的アミノ酸置換または遺伝暗号の縮重を用いることに基づくものもまた使用してもよい。
【0137】
「同族体」という用語は、例えば、対応する位置で同じまたは類似する化学残基の配列を有することにより、もう1つの分子に対し相同性を示す分子を示す。PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質の同族体を本発明の実施、特に本明細書で開示した一定の方法において使用してもよい。
【0138】
本明細書で使用されるように、「ポリヌクレオチド」という用語は、長さが少なくとも10塩基または塩基対のヌクレオチドのポリマー形態、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれか、またはどちらかの型のヌクレオチドの修飾形態を意味し、DNAおよび/またはRNAの一本鎖および二本鎖形態を含むものとする。当技術分野では、この用語はしばしば「オリゴヌクレオチド」と同義的に使用される。ポリヌクレオチドは、本明細書で開示したヌクレオチド配列を含むことができ、この場合、チミジン(T)はウラシル(U)とすることもでき;この定義はDNAとRNAの化学構造の差に関連し、特に、RNAの4つの主な塩基の1つがチミジン(T)ではなくウラシル(U)であるという所見に関連する。
【0139】
本明細書で使用されるように、PDE6D、QR2、およびCLB2遺伝子およびタンパク質は、公知のPDE6D、QR2、およびCLB2遺伝子およびタンパク質、ならびに構造的および/または機能的に類似するそれらの類似体を含む。PDE6D、QR2、およびCLB2類似体は一般に、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上のアミノ酸相同性を共有する(BLAST基準を用いる)。PDE6D、QR2、およびCLB2ヌクレオチド類似体は好ましくは、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の核酸相同性を共有する(BLAST基準を用いる)。
【0140】
本発明のPDE6D、QR2、およびCLB2タンパク質としては、本明細書で特異的に同定したもの、ならびに、本明細書で概説した、または当技術分野で容易に使用できる方法に従い、過度の実験をせずに単離/生成および特徴付け可能なアレル変異体、保存的置換変異体、類似体、および同族体が挙げられる。異なるPDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質またはそれらのフラグメントの一部を結合させた融合タンパク質、ならびにPDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質および異種ポリペプチドの融合タンパク質もまた、本発明に含まれ、本発明の実施に使用してもよい。
【0141】
一般に、ヒトPDE6D、QR2、またはCLB2の天然アレル変異体は、高度の構造同一性および相同性を共有する(例えば、90%またはそれ以上の相同性)。典型的には、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質のアレル変異体は、保存的アミノ酸置換を含む。保存的アミノ酸置換はしばしばタンパク質で行われ、タンパク質の構造または機能のいずれも変化しない。本発明のタンパク質は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15の保存的置換を含むことができる。そのような変更は、イソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(l)の任意のものをこれらの疎水性アミノ酸の他の任意のものの代わりに;アスパラギン酸(D)をグルタミン酸(E)の代わりに(またはその逆);グルタミン(Q)をアスパラギン(N)の代わりに(またはその逆);およびセリン(S)をトレオニン(T)の代わりに(およびその逆)を代用することを含む。他の置換もまた、特別なアミノ酸の環境およびそのタンパク質の三次元構造における役割により、保存的と考えることができる。例えば、グリシン(G)およびアラニン(A)はしばしば代替可能であり、アラニン(A)およびバリン(V)も同様である。メチオニン(M)は比較的疎水性であり、しばしばロイシンおよびイソロイシンと、時としてバリンと代替可能である。リシン(K)およびアルギニン(R)はしばしば、アミノ酸残基の重要な特徴がその電荷であり、かつこれらの2つのアミノ酸残基の異なるpKが重要ではない位置で代替可能である。さらに別の変更は、特別な環境では「保存的」と考えることができる(例えば、「Biochemistry」 2nd ED. Lubert Stryer ed(Stanford University);Henikoff et al.、PNAS 1992 Vol 89 10915-10919;Lie et al.、J Biol Chem 1995 May 19;270(20):11882-6を参照のこと)。
【0142】
PDE6D、QR2、およびCLB2類似体は、当技術分野で公知の方法、例えば、部位特異的突然変異誘発法、アラニンスキャニング、およびPCR突然変異誘発法を用いて作製することができる。部位特異的突然変異誘発法(Carter et al.、Nucl. Acids. Res.、13:4331(1986);Zoller et al.、Nucl. Acids. Res.、10:6487(1987))、カセット突然変異誘発法(Wells et al.、Gene、34:315(1985))、制限選択突然変異誘発法(Wells et al.、Philos. Trans. R. Soc. London SerA、317:415(1986))または他の公知の技術をクローン化DNAに対し実施し、変異DNAを作成することができる。
【0143】
本明細書で規定されるように、PDE6D、QR2、またはCLB2類似体は、当技術分野で周知なように、それぞれ、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質と「交差反応」する少なくとも1つのエピトープを有するという特徴的な属性を有する。「交差反応」という用語は、PDE6D、QR2、またはCLB2類似体に特異的に結合する抗体またはT細胞がさらに、公知のPDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質に特異的に結合することを意味する。ポリペプチドがPDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質に特異的に結合する抗体またはT細胞により認識できるエピトープを含まなくなれば、もはやポリペプチドは類似体ではなくなる。当業者は、タンパク質を認識する抗体が様々なサイズのエピトープに結合すること、約4または5のアミノ酸のオーダーのグループは、連続であろうとなかろうと、最小エピトープ中のアミノ酸の典型的な数と考えられることを理解するであろう。例えば、Nair et al.、 J. Immunol 2000 165(12):6949-6955, Hebbes et al.、Mol Immunol(1989)26(9):865-73;Schwartz et al.、J Immunol(1985)135(4):2598-608を参照のこと。
【0144】
PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドは標準ペプチド合成技術を使用して、または当技術分野において周知の化学開裂法を用いて生成させてもよい。また、組換え法を使用して、PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドをコードする核酸分子を生成させることができる。1つの態様では、核酸分子は、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質またはそれらの類似体の規定されたフラグメントを生成させる手段を提供する。ポリペプチドは共有結合修飾を含んでもよく、さらに、本発明の実施において使用してもよい。そのような修飾の非制限的な例は、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号、または同第4,179,337号において記述されているように、PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドのアミノ酸残基を、PDE6D、QR2、またはCLB2の選択した側鎖またはN末端もしくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させる段階;本発明のタンパク質の天然のグリコシル化パターンを変更する段階;および、PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドを様々な非タンパク性ポリマーの1つ、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンに結合させる段階を含む。
【0145】
本発明のPDE6D、QR2、およびCLB2タンパク質はまた、修飾して、別のポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合させたPDE6D、QR2、またはCLB2を含むキメラ分子を形成させることができる。そのようなキメラ分子は、化学的にまたは組換えにより合成することができ、本発明の実施において使用することができる。キメラ分子は、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質とポリヒスチジンエピトープタグ(ニッケルが選択的に結合することができるエピトープを提供する)、サイトカイン、または成長因子との融合物を含む。別の態様では、キメラ分子は、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質と免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特別の領域との融合物を含む。免疫グロブリン融合の生成には、例えば、米国特許第5,428,130号を参照のこと。また、融合物はシグナル伝達部分、例えば、蛍光タンパク質または発色団(緑色発光タンパク質を含むがこれに限定されない)を有することができる。
【0146】
PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドはまた、ファージ粒子の表面で発現するためにファージコートタンパク質を有する融合物として発現されてもよい。このアプローチは同時係属中の、2002年4月2日に出願された米国特許出願第10/115,442号、および2003年4月2日出願された同出願第10/406,797号(または、2003年4月2日に出願されたPCT国際出願PCT/US03/10247)において記述されている。これらはどちらも、完全に記述されているかのように、参照により本明細書に組み入れられる。発現されたタンパク質をPDE6D、QR2、および/またはCLB2に結合する化合物、例えば、アトルバスタチンと共に、PDE6D、QR2、および/またはCLB2に結合する他の化合物に対するスクリーニングにおいて使用するためにこれらの出願で記述されているような固定形態で、使用してもよい。
【0147】
B.使用および方法
本発明の別の局面において、PDE6D、QR2、および/またはCLB2に結合する追加の化合物の同定のための方法を提供する。このように、この方法は、PDE6D、QR2、および/またはCLB2標的のアイデンティティおよび標的への結合事象の結果を検出する能力に依存するスクリーニングアッセイ法と考えてもよい。結合事象の検出は直接または間接的に実施してもよく、標的に結合することができる化合物が同定される。化合物は任意の化学的作用物質であってもよく、例えば、分子量が約5000ダルトン未満、好ましくは約1000ダルトン未満の小分子が挙げられる。本発明の好ましい化合物は約1μM〜10nMの範囲未満のKdで標的と結合し、かつ/または標的に対し選択的である。好ましくは、アッセイ法を定量的条件下で実施して化合物の標的への結合の親和性、または相対親和性を決定してもよい。
【0148】
本発明の1つの態様では、アッセイ法は、試験化合物と接触させられその後標的と化合物との間の結合が検出されるファージ粒子の表面上での標的の発現に基づく。好ましい形態では、接触は標的に結合する別の化合物、例えばアトルバスタチンの存在下で実施してもよく、このように、接触は試験化合物が標的への結合に対してアトルバスタチンと競合する能力に基づいてもよい。好ましい態様では、PDE6D、QR2、またはCLB2に結合する追加の化合物は、同時係属中の、2002年4月2日に出願された米国特許出願第10/115,442号、および2003年4月2日に出願された同第10/406,797号に開示されているスクリーニング法を使用することにより同定される。これらの出願はどちらも、参照により、完全に記述されているかのように組み入れられる。
【0149】
このように、可能性のある薬物化合物または他の活性作用物質をスクリーニングし、その化合物または作用物質により被験者において望ましくない効果が引き起こされる可能性があることを確認するためのPDE6D、QR2、および/またはCLB2ポリペプチドの使用が、本発明により提供される。このように、同定された化合物は、被験者、例えばヒトに使用するという考えから除外することができる。
【0150】
本発明の試験化合物は、あるクラスの化合物の1メンバーであるかもしれず、そのためそのクラスのメンバー全てについて標的への結合を試験してもよい。あるクラスの化合物のアッセイは、クラスの別のメンバーと対照的に標的に結合するそのクラスの1つまたは複数のメンバーの選択的結合の確認を可能とする。これらは、クラスの、標的に対してより選択である結合メンバー、または、クラスの、標的に対し非選択的である非結合メンバーを同定するために使用してもよい。非制限的例として、アトルバスタチン以外のスタチン化合物を本発明の実施に使用して標的に結合するかどうかを確認し、アトルバスタチン結合と同じ作用を媒介することができるかどうか、または結合せずこのためHMG-CoAレダクターゼの標的化に特異的であるにすぎないのかどうかどうかを決定してもよい。
【0151】
別の態様では、本発明は、PDE6D、QR2、および/またはCLB2(標的)ポリペプチドまたはそのフラグメント、一部、もしくは類似体の機能および/または活性を増加させる(刺激する)または減少させる(阻害する)追加の化合物の同定法またはスクリーニング法を提供する。本方法はインビトロまたはインビボで実施してもよい。標的に結合し標的の活性を阻害する化合物を同定するための1つの方法は、標的ポリペプチドまたはそのフラグメント、一部、もしくは類似体を含む指標組成物を提供する段階、指標組成物を試験化合物(可能性のあるPDE6D、QR2、またはCLB2の活性化剤または阻害剤)と接触させる段階、および指標組成物中のPDE6D、QR2、またはCLB2の活性に対する試験化合物の効果を決定し、標的の活性または機能を刺激または阻害する化合物を同定する段階を含む。好ましくは、本明細書で開示した望ましくない効果および状態を生じさせる刺激剤および阻害剤を同定する、ならびに/または本明細書で開示した疾患および望ましくない状態を治療および/もしくは阻害する場合に使用するためにこの方法を使用する。
【0152】
別の局面では、PDE6D、QR2、および/またはCLB2の発現、機能、および/または活性に影響する化合物または作用物質を、被験者において使用した際に望ましくない効果が生じるものとして同定してもよい。そのような化合物または作用物質は、PDE6D、QR2、および/またはCLB2の発現、またはそれらの機能および/もしくは活性を増加もしくは減少させることにより作用することができる。
【0153】
本発明の別の局面では、異常なPDE6D、QR2、および/またはCLB2の活性により媒介される望ましくない状態を引き起こす化合物を同定し、したがって使用しないようにすることができる。アトルバスタチンおよび他の化合物により影響されるPDE6D、QR2の活性の非制限的な例としては、PDE6Dの触媒PDEαおよび/またはβサブユニットへの結合;およびPDE6Dのプレニル化タンパク質への結合が挙げられる。このように、本発明は、PDE6Dにより媒介される細胞シグナル伝達カスケードを調節する化合物を同定してこれらの化合物を避けるための方法を提供する。1つの態様では、膜結合PDE6Dまたはプレニル化タンパク質のレベルおよび/または活性を調節する化合物を同定しこれらの化合物を避けることができる。
【0154】
本発明の標的ポリペプチド、ならびにそれらのフラグメント、同族体、および類似体は、多くの異なる特異的な用途を有する。特に、それらを使用して、PDE6D、QR2、またはCLB2に結合する追加の化合物(PDE6D、QR2、またはCLB2の機能または活性を刺激または阻害する化合物を含む)を同定してもよい。1つの好ましい態様において、PDE6D、QR2、またはCLB2はファージ粒子状での発現では融合タンパク質として発現され、その後、溶液または固定形態のいずれかの化合物のライブラリに対しスクリーニングされる。
【0155】
本発明はまた、下記の方法の1つまたは複数における、本明細書で記述した、ポリヌクレオチド/核酸分子、タンパク質、タンパク質類似体、およびPDE6D、QR2、またはCLB2の結合化合物の使用を提供する:a)PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドの発現;b)スクリーニングアッセイ法;c) PDE6D、QR2、またはCLB2に対する化合物の効果の決定法;およびd)治療法(例えば、治療および予防)。本発明のポリヌクレオチドは、下記でさらに記述するように、例えば、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質を発現させる(例えば、宿主細胞における組換え発現ベクターを介して)、PDE6D、QR2、もしくはCLB2 mRNA(例えば、生物試料において)、またはPDE6D、QR2、もしくはCLB2遺伝子の遺伝子変化を検出する、およびPDE6D、QR2、またはCLB2の活性の発現を阻害するために使用することができる。PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質を使用して、PDE6D、QR2、もしくはCLB2の産生またはPDE6D、QR2、またはCLB2の活性の望ましくないレベルにより特徴づけられる疾患または望ましくない状態を治療することができる。
【0156】
本発明は、PDE6D、QR2、またはCLB2に結合し、および/またはそれらの活性を調節する薬剤または化合物をスクリーニングする方法(これらの薬剤または化合物は、PDE6D、QR2、またはCLB2の機能または活性の増加または減少が必要な疾患を治療するために使用することができる)、またはPDE6D、QR2、またはCLB2の活性を調節する効果に対し薬剤または化合物をスクリーニングする方法(これらの薬剤または化合物は、これらの薬剤または化合物で治療した被験者において望ましくない状態を引き起こすため回避される)を含む。方法は、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質に結合し、任意でそれらに対し刺激または阻害効果を有し、または、PDE6D、QR2、またはCLB2の発現に対し刺激もしくは阻害効果を有し、および/または望ましくない効果を提供する化合物、すなわち、候補または試験化合物もしくは薬剤(例えば、以下が挙げられるが、それらに限定されない:ペプチド;ペプチド模倣薬;5000ダルトン未満、4500ダルトン未満、4000ダルトン未満、3500ダルトン未満、3000ダルトン未満、2500ダルトン未満、2000ダルトン未満、1500ダルトン未満、1000ダルトン未満、または500ダルトン未満の小分子;または他の薬剤)を同定および/またはスクリーニングするための方法を含む。約500μM未満、約100μM未満、約50μM未満、約10μM未満、約5μM未満、約1μM未満、約0.5μM未満、または約0.1μM未満のKdで結合する化合物の同定および/またはスクリーニングが好ましい。
【0157】
別の態様では、アッセイ法は、PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドまたはそれらの生物学的に活性な部分と同族リガンドとの結合の増加または減少を検出してもよい。このように、本発明はポリペプチドまたは表面にポリペプチドを発現するファージ粒子と試験化合物とを接触させることにより、化合物がPDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドに結合することを確認し、ポリペプチドが試験化合物に結合するかどうかを決定するための方法を提供する。試験化合物のポリペプチドへの結合は、試験化合物とポリペプチドとの間の相互作用の直接検出;試験化合物とポリペプチドとの間の相互作用の間接的な検出による結合の検出;競合結合アッセイ法を用いた結合の検出;およびポリペプチド活性に対するアッセイ法を使用する結合の検出により検出してもよい。
【0158】
別の態様では、PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドの活性を刺激または阻害する化合物を同定するための方法は、PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドを試験化合物と接触させ、試験化合物がポリペプチドの活性を刺激または阻害する程度を決定することにより提供される。方法はインビトロまたはインビボで、例えば動物由来の細胞(細胞系を含む)または動物中の細胞において実施してもよい。
【0159】
結合アッセイ法の他の非制限的例としては、ビアコア(biacore)型結合アッセイ法、DiscoveRx型結合アッセイ法;蛍光および蛍光偏光;FRET(蛍光エネルギー移動);蛍光増感/消光;タンパク質安定性(結合はタンパク質を安定化する、タンパク質をアンフォールディングするのに必要な融解温度、または変性剤濃度により測定されるアンフォールディング熱力学に影響を与える)に対する効果;タンパク質または小分子の一般的な遊走、回転特性;化学修飾による干渉(例えば、化学的に標識可能な活性部位に反応性基が存在する場合、小分子が活性部位で結合すると遮断されうる);NMRに基づく測定;結晶学的方法;他の間接的な細胞に基づく方法(または人工細胞、ミセルなどに基づく方法);および3-ハイブリッド型法が挙げられる。
【0160】
本発明の1つの態様では、PDE6D、QR2、もしくはCLB2タンパク質またはそれらの生物学的に活性な部分を試験化合物と接触させ、試験化合物がタンパク質またはそれらの生物学的に活性な部位に結合する能力を決定する無細胞アッセイ法を提供する。好ましくは、化合物は本明細書で記述したような小分子である。好ましい態様では、アッセイ法はPDE6D、QR2、もしくはCLB2タンパク質またはそれらの生物学的に活性な部分をPDE6D、QR2、またはCLB2に結合する公知の化合物と接触させてアッセイ混合物を形成させる段階、アッセイ混合物を試験化合物と接触させる段階、および試験化合物のPDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質と相互作用する能力を決定する段階を含み、ここで、公知の化合物と比較した、試験化合物がPDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質と相互作用する能力を決定する段階は、試験化合物の、PDE6D、QR2、もしくはCLB2またはそれらの生物学的に活性な部分に選択的に結合する能力を決定する段階を含む。
【0161】
本発明の試験化合物は、以下を含む、当技術分野で公知であるコンビナトリアルライブラリ法中の多くのアプローチのうちの任意のものを使用して得ることができる:生物学的ライブラリ;空間的にアドレス可能な平行固体相または溶液相ライブラリ;解析を必要とする合成ライブラリ法;「1ビード 1化合物」ライブラリ法;およびアフィニティクロマトグラフィー選択を用いた合成ライブラリ法。生物学的ライブラリアプローチはペプチドライブラリに限定されるが、他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマー、または小分子ライブラリの化合物に適用することができる(Lam、K.S.(1997)Anticancer Drug Des. 12:145)。この方法はまた、PDE6D、QR2、またはCLB2への化合物の結合、PDE6D、QR2、またはCLB2の機能または活性に関する化合物の効果を確認するために使用してもよい。
【0162】
分子ライブラリの合成のための方法例は、当技術分野において、例えば、下記で見いだすことができる:DeWitt et al.(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909;Erb et al.(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422;Zuckermann et al.(1994) J. Med. Chem. 37:2678;Cho et al.(1993) Science 261:1303;Carrel et al.(1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059;Carrel et al.(1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 32:2061;およびGallop et al. (1994) J. Med. Chem. 37:1233。
【0163】
化合物ライブラリは溶液(例えば、Houghten(1992) Biotechniques 13:412-421)、またはビーズ(Lam (1991) Nature 354:82-84)、チップ(Fodor (1993) Nature 364:555-556)、細菌(Ladner USP 5,223,409)、胞子(Ladner USP '409)、プラスミド(Cull et al.(1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:1865-1869)、またはファージ(Scott and Smith(1990) Science 249:386-390);(Devlin (1990) Science 249:404-406);(Cwirla et al.(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382);(Felici (1991) J. Mol. Biol. 222:301-310);(Ladner 上記)で与えられてもよい。
【0164】
ペプチドライブラリをスクリーニングして、PDE6D、QR2、またはCLB2のタンパク質配列と相互作用する分子を同定することができる。あるいは、本明細書で記述したような関心対象の小分子に対し粒子をスクリーニングする。逆に、PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドをバクテリオファージ粒子上で発現させ、溶液または固定形態のペプチドまたは小分子に対しスクリーニングしてもよい。したがって、PDE6D、QR2、またはCLB2に結合し、かつ阻害するペプチドおよび小分子が、そのペプチドおよび小分子の構造についての先験的情報がなくても同定される。
【0165】
別の態様では、アッセイ法は、PDE6D、QR2、またはCLB2の結合リガンド分子を発現する細胞を試験化合物と接触させる段階、およびPDE6D、QR2、またはCLB2のリガンドへの結合に影響する試験化合物の能力を決定する段階を含む、細胞に基づいたアッセイ法である。PDE6D、QR2、またはCLB2のリガンドへの結合を増加または減少させる試験化合物の能力を決定する段階は、例えば、リガンドと相互作用するPDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質の能力を決定することにより、例えば、PDE6D、QR2、またはCLB2とそれらのリガンドとの間の直接結合を決定することにより、例えば、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質を放射性同位体、蛍光、または酵素標識と結合させ、これによりタンパク質のリガンド分子への結合を複合体中の標識タンパク質を検出することによって決定することにより、達成することができる。
【0166】
あるいは、PDE6D、QR2、またはCLB2を発現する細胞系を使用して、免疫沈降技術を用い、PDE6D、QR2、またはCLB2により媒介されるタンパク質-タンパク質相互作用を確認する(例えば、Hamilton BJ, et al. Biochem. Biophs. Res. Commun. 1999、261:64651を参照のこと)。PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質はまた、2-ハイブリッドアッセイ法または3-ハイブリッドアッセイ法において「ベイト(bait)タンパク質」として使用し(例えば、米国特許第5,283,317号;Zervos et al.(1993) Cell 72:223-232;Madura et al. (1993) J. Biol. Chem. 268:12046-12054;Bartel et al.(1993) Biotechniques 14:920-924;Iwabuchi et al. (1993) Oncogene 8:1693-1696;およびBrent WO94/10300を参照のこと)、PDE6D、QR2、またはCLB2に結合し、またはそれらと相互作用する他のタンパク質または因子を同定することができる。同定したタンパク質または因子をリガンド分子として使用してもよく、リガンド分子は本明細書で記述したようにPDE6D、QR2、またはCLB2に結合する。本発明はまた、結合メンバーのいずれも標識せずに、PDE6D、QR2、またはCLB2およびリガンド分子の結合に影響する化合物の能力を決定する方法を提供する。例えば、PDE6D、QR2、もしくはCLB2、またはリガンドのいずれも標識せずに、マイクロフィジオメータを使用してリガンドとの相互作用を検出することができる。McConnell、H. M. et al.(1992) Science 257:1906-1912。
【0167】
別の態様では、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質の、リガンド分子に結合する、またはリガンド分子と相互作用する能力の決定は、リガンドの活性を検出することにより達成することができる。非限定的例として、PDE6Dポリペプチドに結合した、または結合していないPDE6の活性はPDE6D結合に対する検出可能なシグナルとすることができる。
【0168】
本発明の上記アッセイ法の複数の態様において、PDE6D、QR2、またはCLB2のいずれかまたはそのリガンド分子を固定してタンパク質の1つまたは両方の結合形態の非結合形態からの分離を容易にし、アッセイ法の自動化を可能とすることが望ましい。試験化合物のPDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質への結合、または候補化合物の存在下および不存在下における、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質のリガンド分子との相互作用は、結合メンバーおよび他の反応物を含むのに適した任意の容器内で達成することができる。そのような容器の例としては、マイクロタイタプレート、試験管、およびマイクロ遠心分離管が挙げられる。1つの態様において、タンパク質のうちの1つまたは両方をマトリクスに結合させるのを可能とするドメインを添加した融合タンパク質を提供することができる。例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/キナーゼ融合タンパク質またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical、St. Louis、MO)またはグルタチオン誘導ミクロタイタプレート上に吸着させることができ、その後、それぞれ試験化合物および非吸着リガンドまたはPDE6D、QR2、もしくはCLB2タンパク質のいずれかと結合させ、混合物を複合体形成につながる条件下(例えば、塩およびpHに関する生理学的条件)でインキュベートする。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタプレートウエルを洗浄して全ての非結合成分を除去し、ビーズの場合マトリクスを固定し、複合体を、例えば上記で記述したように、直接または間接的に決定する。また、複合体をマトリクスから解離させ、PDE6D、QR2、またはCLB2の結合または活性レベルを標準技術を用いて決定することができる。
【0169】
本発明のスクリーニングアッセイ法では、マトリクス上にタンパク質を固定するための他の技術もまた使用することができる。例えば、PDE6D、QR2、もしくはCLB2タンパク質またはそのリガンド分子のいずれかを、ビオチンおよびストレプタビジンの結合を用いて固定することができる。ビオチニル化されたPDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質または標的分子を、当技術分野で周知の技術(例えば、ビオチニル化キット、Pierce Chemicals Rockford、IL)を用いてビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)から調製し、ストレプタビジン-コート96ウエルプレート(Pierce Chemical)のウエルに固定することができる。また、PDE6D、QR2、もしくはCLB2タンパク質またはリガンド分子と反応するが、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質のそのリガンドへの結合を妨害しない抗体をプレートのウエルに誘導体化し、結合していない標的またはPDE6D、QR2、もしくはCLB2タンパク質を、抗体結合によりウエル内にトラップさせることができる。そのような複合体を検出するための方法は、GST固定複合体に対して上記で記述したもの以外に、PDE6D、QR2、もしくはCLB2タンパク質またはリガンドと反応する抗体を使用した複合体の免疫検出、ならびにPDE6D、QR2、もしくはCLB2タンパク質またはリガンドと関連する酵素活性の検出を利用する酵素結合アッセイ法が挙げられる。
【0170】
別の態様では、PDE6D、QR2、またはCLB2発現のエフェクターが、細胞を候補化合物と接触させて細胞中のPDE6D、QR2、またはCLB2 mRNAまたはタンパク質の発現を決定する方法において同定される。候補化合物の存在下でのPDE6D、QR2、またはCLB2 mRNAまたはタンパク質の発現レベルを、候補化合物の不存在下でのPDE6D、QR2、またはCLB2 mRNAまたはタンパク質の発現レベルと比較する。この比較に基づき、候補化合物をPDE6D、QR2、またはCLB2発現の刺激剤または阻害剤であると同定する。例えば、PDE6D、QR2、またはCLB2 mRNAまたはタンパク質の発現が、候補化合物の存在下での方が不存在下よりも少ないと(例えば、統計学的に有意に少ない)、候補化合物はPDE6D、QR2、またはCLB2 mRNAまたはタンパク質発現の阻害剤であると同定される。逆に、PDE6D、QR2、またはCLB2 mRNAまたはタンパク質の発現が、候補化合物の存在下での方が不存在下よりも多いと(例えば、統計学的に有意に多い)、候補化合物はPDE6D、QR2、またはCLB2 mRNAまたはタンパク質発現の刺激剤であると同定される。細胞におけるPDE6D、QR2、またはCLB2 mRNAまたはタンパク質発現レベルは当技術分野で公知の適当な方法により決定することができる。
【0171】
本発明はさらに、上記スクリーニングアッセイ法で同定された新規化合物および薬剤に関する。したがって、適当な動物モデルにおける、本明細書で記述したように同定した薬剤の使用も本発明の範囲内である。例えば、本明細書で記述したように同定したPDE6D、QR2、またはCLB2の結合化合物を動物モデルで使用して、そのような化合物による治療の有効性、毒性、または副作用を決定することができる。あるいは、本明細書で記述したように同定した薬剤を動物モデルで使用し、そのような薬剤の作用機序に関する追加の情報を提供することができる。さらに、本発明は上記スクリーニングアッセイ法により同定した新規薬剤を、本明細書で記述した治療のめために使用することに関する。
【0172】
スクリーニングアッセイ法に関しては、本発明は、例えば、臨床試験または試験後の使用において、PDE6D、QR2、またはCLB2タンパク質の発現または活性レベルに対する薬剤(例えば、薬物または化合物)の影響をモニタリングすることを提供する。例えば、スクリーニングアッセイ法で、PDE6D、QR2、またはCLB2の遺伝子発現、タンパク質レベルを減少させるか、またはPDE6D、QR2、またはCLB2を下方制御すると決定された薬剤の効果のレベルは、望ましくないPDE6D、QR2、またはCLB2の遺伝子発現、タンパク質レベル、または下方制御活性を示す被験者の臨床試験においてモニタリングすることができる。そのような前臨床の、または臨床試験もしくは試験後の使用において、PDE6D、QR2、またはCLB2遺伝子、および好ましくは、疾患に関与する他の遺伝子の発現または活性を、特別な細胞の表現型の「読み取り(read out)」またはマーカーとして使用することができる。遺伝子発現のレベル(すなわち、遺伝子の発現パターン)はノーザンブロット分析;DNAチップまたはマイクロアレイあるいはビーズ媒介アレイの使用(Illumina、Inc.のアレイのようなアレイ);RT-PCR;または当技術分野において公知の他の技術により定量することができる。また、産生したタンパク質量を測定することにより、本明細書で記述した方法のうちの1つにより、またはPDE6D、QR2、またはCLB2の活性レベルを測定することにより発現を決定することができる。このように、遺伝子発現パターンは、細胞の薬剤に対する生理学的応答を示すマーカーとして機能することができる。したがって、この応答状態は、薬剤を用いた個人の治療前および治療中の様々な点、または個人に薬剤を投与した後に決定してもよい。
【0173】
好ましい態様では、本発明は、(i)薬剤投与前の被験者から投与前試料を得る段階;(ii)投与前試料中のPDE6D、QR2、もしくはCLB2タンパク質、mRNA、またはゲノムDNAの発現レベルを検出する段階;(iii)被験者から1つまたは複数の投与後試料を得る段階;(iv)投与後試料において、PDE6D、QR2、もしくはCLB2タンパク質、mRNA、またはゲノムDNAの発現または活性レベルを検出する段階;(v)投与前試料のPDE6D、QR2、もしくはCLB2タンパク質、mRNA、またはゲノムDNAの発現または活性レベルを、投与後試料のPDE6D、QR2、もしくはCLB2タンパク質、mRNA、またはゲノムDNAと比較する段階;および任意で、(vi)それに応じて、被験者への薬剤の投与を変更する段階を含む、PDE6D、QR2、またはCLB2に結合する化合物の投与による被験者の治療の有効性をモニタリングするための方法を提供する。例えば、PDE6D、QR2、またはCLB2の阻害を検出したものより高いレベルまで増加させる、すなわち、化合物の有効性を増加させるためには、阻害化合物の投与を増大させることが望ましいかもしれない。あるいは、PDE6D、QR2、またはCLB2の阻害を検出したものより低いレベルまで減少させる、すなわち、化合物の有効性を減少させるためには、阻害化合物の投与を減少させることが望ましいかもしれない。そのような態様に従い、観察可能な表現型応答が存在しない場合でも、PDE6D、QR2、またはCLB2発現または活性を薬剤の有効性の指標として使用してもよい。
【0174】
特に記載がなければ、本明細書で使用した全ての専門用語、表記、および他の科学用語または術語は、本発明が関連する技術分野の当業者に通常理解される意味を有するものとする。本明細書で記述し言及した技術および手順は、当業者により通常の方法、例えば、Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd. edition(1989) Cold Spring Habor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N,Y.において記述されている、広く使用される分子クローニング的方法を用いて一般的に使用される。
【0175】
キット/製造物品
本明細書で記述した治療用途において使用するために、キットおよび製造物品もまた本発明の範囲内である。そのようなキットは、1つまたは複数の容器、例えばバイアル、管など(各々の容器は本発明の方法で使用される別個の要素の1つを含む)を収容するように区切られたキャリヤ(carrier)、パッケージ、または容器を備えることができる。適した容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は様々な材料、例えばガラスまたはプラスチックから形成することができる。
【0176】
例えば、容器は1つまたは複数の本発明のピロール化合物を、任意で、本明細書で開示したように組成物として、または他の薬剤と組み合わせて含むことができる。容器は任意で、滅菌アクセスポートを有する(例えば、容器は静脈注射用溶液バッグ、または皮下注射用注射針により貫通可能な栓を有するバイアルとすることができる)。そのようなキットは任意で、識別説明もしくはラベルまたは本発明の方法における使用に関する取扱説明書と共にピロール化合物を備える。
【0177】
本発明のキットは典型的には、1つまたは複数の追加の容器を備えてもよく、各々が、本発明のピロール化合物の使用に対し商業的および使用者の見地から望ましい1つまたは複数の様々な材料(例えば試薬(任意で濃縮形態)、および/または装置)を有する。そのような材料の非制限的な例としては、緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ;内容物および/または使用上の注意を列挙したキャリヤ、パッケージ、容器、バイアルおよび/または管ラベル、ならびに使用上の注意を有する添付文書が挙げられるが、それらに限定されない。1組の取扱説明書もまた、典型的に含められる。
【0178】
ラベルは容器上に、または容器に付随させることができる。ラベルを形成する文字、数、または他の文字が容器自体に付着、成形、またはエッチングされる場合、ラベルは容器上に存在することができ;容器も保持するレセプタクルまたはキャリヤ内に、例えば、添付文書として存在する場合、ラベルを容器に付随させることができる。ラベルを使用して、内容物を特別な治療用途に使用すべきであることを示すことができる。ラベルはまた、例えば本明細書で記述した方法における、内容物の使用のための指示を示すことができる。
【0179】
「キット」および「製造物品」という用語は同義語として使用してもよい。
【0180】
本発明の方法は、チアゾール含有、フラン含有、イミダゾール含有、オキサゾール含有、およびチオフェン含有化合物などの他の化合物を用いて実施してもよい。そのような化合物の適した例は、同時係属中の特許出願-(i)2004年5月17日に出願された「Heterocyclic compounds and uses thereof」と題する代理人整理番号30583-713.20の米国特許出願、および2004年5月17日に出願された「Heterocyclic compounds and uses thereof」と題する代理人整理番号30583-714.20の米国特許出願において記述されている。また、本明細書で記述した方法において有益な他の化合物は同時継続中の、2004年5月17日に出願された「Compound and uses thereof」と題する米国特許出願、代理人整理番号30583-710.201号において記述されている。
【0181】
以上、一般的に本発明について記述してきたが、本発明は下記実施例を参照するとより容易に理解されるであろう。下記実施例は説明のために提供したものであり、特定されていなければ、本発明を制限するものではない。
【0182】
実施例
実施例1
高親和性でPDE6Dに結合する新規分子の同定
同時係属中の米国特許出願、2002年4月2日に出願された第10/115,442号および2003年4月2日に出願された第10/406,797号(または2003年4月2日出願されたPCT国際出願PCT/US03/10247号)において記述されているように、標準のファージに基づく競合結合アッセイ法において、PDE6D結合活性に対し、44の分子をスクリーニングした。全ての化合物は2μM濃度で、2組で(2組のバー)スクリーニングした。可溶性競合物質(試験化合物)の存在または不存在下で、固定アトルバスタチンに結合したPDE6D提示ファージ分画をy軸上に示す。固定アトルバスタチンに結合した分画を著しく減少させる競合物質は候補リード(lead)分子である。このスクリーニングから得られる候補リード化合物の非制限的例としては、分子アトルバスタチン、781430、780104、780520、780676、および780858が挙げられる。
【0183】
実施例2
ピロール化合物の合成
本明細書で記述したピロール化合物のジケトン前駆体、4-フルオロ-α-(2-メチル-1-オキソプロピル)-γ-オキソ-N-フェニル-β-フェニルベンゼン-ブタンアミドを購入し、その後、酢酸アンモニウムと縮合させ、781430を合成した。M-4としても知られるジケトン前駆体、Cu(OAc)2(5eq)を、酢酸アンモニウム(5〜10eq)と混合し、100℃で24時間還流させた。水酸化アンモニウムを添加して銅をキレート化し、EtOAcで抽出した。最終精製はHPLCによった。

【0184】
化合物番号782236は、図30に示したスキームを用いて合成した。溶媒を濃縮し、HPLC上で化合物を精製することにより(約100mg原料の繰り返し操作/精製操作)、精製を実施した。分画を精製、回収した後、有益な分画をHPLCにより、分離が非常に厳重になるようより良好なグラジエントを使用して再び精製した。その後溶媒を除去した。最終精製にはMeOHおよび水からの再結晶化が含まれ、純粋な結晶化合物782236が得られた。他の適した別の合成スキームを図31および32に示す。
【0185】
実施例3
PDE6D、CLB2、およびHMG-CoAレダクターゼに対するピロール化合物の親和性
ヒトPDE6DおよびCLB2を提示するT7ファージを、2001年3月15日に公開されたWO 01/18234、ならびに2002年4月2日に出願された「Phage Display Afiinity Filter and Forward Screen」と題する米国特許出願第10/115,442号および2002年8月7日に出願された「Uncoupling DNA Insert Propagation and Protein Display」と題する同第10/214,654号の手順に従い、獲得した。簡単に説明すると、アトルバスタチンがビオチニル化リンカー部分に化学的に結合した場合(アトルバスタチンのストレプトアビジン-コート磁性ビーズへの付着が可能となる)に、T7ファージディスプレイに基づくアフィニティクロマトグラフィーを使用した。アトルバスタチン-コート磁性ビーズを、アフィニティマトリクスとして使用し、アトルバスタチン結合タンパク質に対しヒトプロテオームをプローブした。ヒトプロテオームを広くカバーするT7ファージディスプレイをアトルバスタチンアフィニティマトリクスと混合し、非結合クローンを洗浄により除去した。アフィニティマトリクスを可溶アトルバスタチンとインキュベートすることにより、アトルバスタチン結合クローンを溶離した。ファージ溶離液をその後、大腸菌の増殖により増幅させ、アフィニティ濃縮手順を繰り返した。4回のアフィニティ濃縮後、主要なアトルバスタチン結合クローンが出現し、DNA配列決定によりヒトPDE6DおよびCLB2と同定した。アトルバスタチンのPDE6DおよびCLB2への結合はさらに、競合結合アッセイ法により確認した。この場合、可用性アトルバスタチン(非固定、非リンカー部分)とタンパク質との間の相互作用に対するKdを決定すると、PDE6DおよびCLB2に対しそれぞれ、65nMおよび500nMであった。
【0186】
ピロール化合物と新規標的との間の相互作用に対する、解離定数Kdを、同時係属中の特許出願、2002年4月2日に出願された米国特許出願第10/115,442号、「Phage Display Affinity Filer and Forward Screen」、および2003年6月20日に出願された同第60/480,587号、「Protein Family Profiling Tool and Methods」の手順に従い得た。Kd値を測定するために、上記で詳細に記述したように、ヒトPDE6DおよびCLB2を提示するT7ファージをアトルバスタチン-コートアフィニティマトリクスと共に、様々な濃度の本発明の可溶性(非固定)ピロール化合物の存在下でインキュベートした。
【0187】
PDE6Dおよび/またはCLB2に結合する可溶性ピロール化合物は、PDE6Dおよび/またはCLB2ファージのアフィニティマトリクスへの結合を阻害し;このため、有効な競合物質が存在する方が、有効な競合物質が存在しない場合に比べ、ファージ溶離液中に回収されるファージ数が少なくなる。可溶性ピロール化合物(競合物質)分子とPDE6DまたはCLB2との間の相互作用に対するKdは、可溶性競合物質のない対照試料と比較して溶離液中に回収されるファージ数の50%の減少を引き起こす可溶性競合物質分子の濃度と等しい。
【0188】
ピロール化合物に対するデータを下記表1で提供する。表1は、PDE6DおよびCLB2に対する各列挙化合物のnM Kdを示す。さらに、化合物781430、781066、780780、780754、779974、781456、782236、782756、783250、および780520について、酵素活性に基づくHMG-CoAレダクターゼアッセイ法において試験した。4μMまでの濃度では、試験化合物は全てHMG-CoAレダクターゼ活性を阻害しなかった。アトルバスタチンに対するKdは、PDE6Dでは65nMであった。空欄は、検出可能な相互作用が存在しなかったこと、「nd」表示はKdが決定されなかったことを示す。
(表1)

【0189】
実施例4
錠剤の調製
化合物782236(10.0g)を乳糖(85.5g)、ヒドロキシプロピルセルロースHPC-SL(2.0g)、ヒドロキシプロピルセルロースL-HPC、LH-22(2.0g)、および精製水(9.0g)と混合し、得られた混合物を顆粒化、乾燥、および選別し、このようにして得られた顆粒をステアリン酸マグネシウム(0.5g)と混合し、錠剤形成すると、1錠剤当たり式782236の化合物を10mg含む錠剤が得られる。
【0190】
実施例5
被験者への投与
実施例4で調製した錠剤を被験者に時間0で投与する。24時間毎に1錠剤を、1週間投与する。第3の錠剤を投与した後、被験者を神経変性事象に曝露させる。処置した被験者の示した神経疾患の症状は、処置しない被験者に比べ、重篤度が軽い。
【0191】
実施例6
ウサギ網状赤血球ライセート産生ヒトPDE6Dとの結合アッセイ法
ヒトPDE6Dの全長コード配列を、ウサギ網状赤血球(RRL)における結合転写-翻訳(TNT)のためにpTNT発現ベクターにクローン化した。PDE6Dコード配列を、抗体検出のためにHA11エピトープタグとインフレームで融合させた。RRLで産生したPDE6D::HA11融合タンパク質を最初にSDS-PAGE電気泳動により分析し、その後、HA11抗体を用いウエスタンブロッティングを実施し、産生物の正確なサイズを確認した。その後、PDE6D::HA11融合タンパク質を、競合物質として10μMの非固定アトルバスタチンベイトの存在下または不存在下、固定アトルバスタチンベイトとの結合アッセイ法において使用した(2つ組)。この手順により本発明者らは結合反応の他の要素に対して生じる事象とは対照的に、ベイトに対し特異的に生じる結合事象を認識することができる。実際、結合事象が非固定ベイトの不存在下(試料-)で観察されるが、非固定ベイトがインキュベーション中に存在する(試料+)と消滅し、これにより、結合事象はベイト特異的であることが示される。対照的に、結合事象が溶液中に非固定ベイトが存在してもしなくても観察されると、これにより、結合事象はベイト特異的でない(すなわち、バックグラウンド)であることが示される。この手順はまた、他の競合分子と共に使用することができ、新規相互作用が確認できる。結合実験からの溶離液をドットブロット装置にロードし、その後、HA11抗体を用いて検出することによりデータを得た。この実験結果から、PDE6Dは図2に示したようにアトルバスタチンに結合することが明らかになった。
【0192】
実施例7
ラット脳PDE6Dとの結合アッセイ法
ラット脳試料を液体窒素中でホモジナイズし、非イオン性界面活性剤、還元剤、およびプロテアーゼ阻害剤混合物を含む中性pHの緩衝液中で、タンパク質を抽出した。遠心分離により細胞片を除去した後、タンパク質抽出物を迅速にアリコートし、液体窒素中で凍結させ、必要となるまで保存した。ラット脳タンパク質抽出物および固定アトルバスタチンベイトを用いて、競合物質(この点についてのより詳細な情報については実施例6を参照のこと)として1μMまたは10μMの非固定アトルバスタチンベイト、他のスタチン、およびいくつかのピロール化合物の存在下または不存在下で結合実験を実施した。実験は少なくとも3つ組で実施し、試料は溶離後プールした。プールした溶離液をSDS-PAGEゲルにロードし、続いて、PDE6D特異的抗体を用いたウエスタンブロットにかけることによりデータを得た。これらの実験結果から、図3および4に示されるように、ラット脳PDE6Dがアトルバスタチンに結合することが証明される。
【0193】
実施例8
大腸菌発現ヒトPDE6Dを用いた結合アッセイ法
ヒトPDE6Dに対する全長コード配列を、大腸菌発現のためにpRSETベクターにクローニングした。PDE6Dコード配列を、精製目的で、Hisタグとインフレームで融合させた。大腸菌で産生したPDE6D融合タンパク質を最初にSDS-PAGE電気泳動により分析し、その後、PDE6D特異的抗体を用いウエスタンブロッティングを実施し、産生物の正確なサイズを確認した。その後、大腸菌合成PDE6Dを、競合物質(この点についてのより詳細な情報については実施例6を参照のこと)として10μMの非固定アトルバスタチンベイト、シンバスタチン、および2つのピロール化合物の存在下または不存在下の、固定アトルバスタチンを用いた結合アッセイ法において試験した。実験は2つ組で実施した。結合実験から得られた溶離液をドットブロット装置にロードし、その後、PDE6D特異的抗体を用いた検出によりデータを得た。これらの実験結果から、図5に示されるように、大腸菌発現ヒトPDE6Dがアトルバスタチンに結合することが証明される。
【0194】
実施例9
ラット肝臓または脳NQO2およびアトルバスタチンベイトを用いた結合アッセイ法
ラット肝臓または脳試料を液体窒素中でホモジナイズし、非イオン性界面活性剤、還元剤、およびプロテアーゼ阻害剤混合物を含む中性pHの緩衝液中で、タンパク質を抽出した。遠心分離により細胞片を除去した後、タンパク質抽出物を迅速にアリコートし、液体窒素中で凍結させ、必要となるまで保存した。ラット肝臓または脳タンパク質抽出物および固定アトルバスタチン(A)ベイトまたはセリバスタチン(C)ベイトを用いて、10μMの非固定アトルバスタチンベイトまたは10μMの非固定セリバスタチンベイトの存在下、または不存在下で結合実験を実施した。実験は少なくとも3つ組で実施し、試料は溶離後プールした。プールした溶離液をSDS-PAGEゲルにロードし、続いて、銀染色を実施することにより、データを得た。NQO2は、最初、ゲルから切り取られたタンパク質バンドのトリプシン消化物およびその後の質量分析により同定された。同定はさらに、NQO2特異的抗体を用いて免疫学的検出により支持された。これらの実験結果を、添付の銀染色である図6A、およびNQO2特異的抗体を用いたウエスタンブロットである図6Bに示す。他のスタチン(すなわち、シンバスタチン、ロスバスタチン(rosuvastatin)、プラバスタチン、およびフルバスタチン)もまた、10μMの濃度でNQO2への結合に対する競合物質として試験したが、セリバスタチンのように負の結果が得られた。
【0195】
ラット肝臓NQO2とアトルバスタチンベイトとの間の相互作用の見かけのKdを、結合曲線アッセイ法を実施することにより半定量的に評価した。この場合、結合反応中、非固定アトルバスタチンベイトが減少した(10μMから0.1μMまで)。プールした溶離液をSDS-PAGEゲルにロードし、その後銀染色することによりデータを得た。ゲル画像の濃度測定走査に基づき、見かけのKdは約500nMであると推定した。この実験結果を図7に示す。
【0196】
NQO2タンパク質の結晶構造から、このタンパク質が3つの別個の結合ポケットを含むことが示される。第1のポケットは電子供与体NRH(および強力な阻害剤ケルセチン)に結合し、第2のポケットは基質メナジオン(ビタミンK3)に結合し、第3のポケットはFAD補助因子に結合する。どのポケットにアトルバスタチンが結合するかを確認するために、本発明者らは、ラット脳タンパク質抽出物、アトルバスタチンベイト、および下記を含む幾つかの競合物質を用いて結合実験を実施した:10μMの非固定アトルバスタチン(対照)、100μMのメナジオン、10μMのケルセチン、および100μMのFAD。プールした溶離液をSDS-PAGEゲル上にロードし、その後銀染色することにより、データを得た。この実験結果を添付の図8に示す。データから、アトルバスタチンがケルセチンのように、電子供与体NRHポケットに結合すること、おそらくNQO2の機能を阻害することが示される。
【0197】
化合物のいずれかが、NQO2への結合においてアトルバスタチンと競合することができるか試験するために、本発明者らは、ラット脳タンパク質抽出物、アトルバスタチンベイトおよび濃度10μMのいくつかの化合物を用いて結合実験を実施した。プールした溶離液をSDS-PAGEゲル上にロードし、その後銀染色することによりデータを得た。この実験結果を添付の図9に示す。
【0198】
実施例10
齧歯類MCAOモデルにおける化合物の有効性の調査
化合物の2つの用量、1mg/kgまたは10mgについて、Chen et al.に従い、右中大脳動脈(MCA)の永久閉塞+1時間のタンデム頸動脈閉塞により生じさせた局所性脳虚血の標準化ラットモデルにおいて試験した。盲式ランダム検査において、782236、781430、およびアトルバスタチンを皮下に(S.C.)ボーラス注入として、MCA2閉塞(MCAo)2時間前および閉塞後1時間(頸動脈再灌流時)およびMCAo後24時間に注入した。対照動物には、試験化合物用の媒質を注入した。生存は48時間維持された。皮質梗塞サイズを有効性評価のための終点として使用した。
【0199】
群Lo A 1mg/kg(71.32±36.98mm3)およびHi B 10mg/kg(65.99±25.01mm3、p>0.05、スチューデントt検定)では、対照(154.92±9.21mm3)とは梗塞体積に統計学的に有意な差があった。これらの値は、それぞれ、対照よりも梗塞体積が53%および57%減少したことを示す。
【0200】
方法
動物の準備および中大脳動脈閉塞
体重300〜400gの雄の成体Sprague-Dawleyラット(Charles River)を調査に使用した。動物は全て、調査を実施する前に少なくとも5日間順応させた。動物を標準動物設備に収容し、市販の齧歯類用の食餌を自由に与えた。動物は全て、ケタミン(25mg/mL)、キシラジン(1.3mg/mL)、およびアセプロマジン(0.33mg/mL)を含む「カクテル」の筋内注射(4mL/kg)により麻酔した。両方の頸動脈を十分気をつけて分離し、迷走神経刺激を最小に抑えた。右近位MCA幹を側頭下頭蓋骨切除術により顔面神経を切断せずに露出させた。その後、下大脳静脈の1mm上方でマイクロ-双極性凝固法により動脈を閉塞させた。MCA閉塞後直ちに、総頸動脈を両方1時間、外科的動脈流マイクロ-クリップ(ROBOZ INC)を用いて閉塞させた。動物を温度調節した回復室に1時間入れ、その後、総頸動脈からクリップを除去した。手術中、温度制御装置に接続した電気毛布を使用して体温を37±0.5℃に維持した。
【0201】
実験群
総数50の動物を8つの実験群に分け、下記に従い線引きした:
A群=化合物782236、低A=1mg/kg、高A=10mg/kg
B群=化合物781430、低Bおよび高B
C群=化合物アトルバスタチン、低Cおよび高C
D群=化合物媒質1mg/kg体重
【0202】
表2は群および投与経路を示す。
(表2)

【0203】
化合物投与および貯蔵
盲式ランダム検査では、全ての動物に、化合物または媒質をS.C.を介して、ボーラス注入としてMCAoの2時間前、1時間後、および24時間後に注入した。
【0204】
体温
全ての動物の体温を手術中モニタリングし、正常値(36.8〜37.5℃)付近で維持した。体温はMCAo時に記録した。
【0205】
体重
動物の体重を手術時に測定し、記録した。
【0206】
梗塞測定
MCAoの48時間後に、CO2を吸入させて動物を安楽死させた。脳を除去し、氷生理食塩水中で10分間冷却した。脳を金属齧歯類脳スライサ内に入れた。各ラット脳を冠状に7つに切断し、ここで個々の切片は2mmの厚さであった。脳切片を2% TTC溶液中に30分間、37℃で浸漬させた。脳梗塞面積を、ウインドウズ用のコンピュータインタフェース画像システムImage-Pro(登録商標)Plus、Version4.4(Media Cybernetics、MD)を用いて7つの切片に対し決定した。梗塞面積をその後、切片の間で合計し、スライス厚をかけると、総梗塞体積が得られた。
【0207】
統計学
全てのデータは平均±SEMで表している。梗塞体積はスチューデントt検定を用いて分析した。0.05以下のp値は、統計学的に有意の差と考えた。全ての統計学的解析をソフトウエアパッケージJMPバージョン4.0(SAS Institute Inc.、Cary、NC)を用いて実施した。
【0208】
結果
死亡率
高A(782236、用量10mg/kg)群に関連する高い死亡率のため、この群に対するデータ点は使用できない。3匹の動物が高Aを受け、第2の注入後24時間以内に死亡した。対照群中の1匹の動物がMCAo後最初の24時間以内に死亡した。全ての他の動物は48時間の試験で生存した。
【0209】
梗塞体積
梗塞は、中大脳動脈の遠位分枝により供給される皮質に限定され、線条体は関係しないことが見いだされた。Lo B群(781430、用量1mg/kg)、Lo C群(アトルバスタチン、用量1mg/kg)、およびHi C群(アトルバスタチン、用量10mg/kg)の梗塞体積は対照と有意の違いはなかった。Lo A群(782236、用量1mg/kg)およびHi B群(781430、用量10mg/kg)では、それぞれ、対照と比較すると、53%および57%の梗塞体積の減少があった。結果を表3に示す。
(表3)

データは平均±SEMである。
【0210】
図10では、MCAoにし、その後48時間回復させた処置動物における梗塞体積の結果を示す。対照と比較し、A Lo群は梗塞体積の53%の減少、B Hi群は57%の減少を示した。これらの差は統計学的に有意であった(p>0.05、スチューデントt検定)。データは平均±SEMである。
【0211】
体重
調査開始時には、全ての群間で体重の差はなかった。表4を参照のこと。
(表4)

データは平均±SEMである。
【0212】
MCA閉塞にし、その後、24時間回復させた動物の体重を示す。体重はMCAo前に得た。データは平均±SEMである。
【0213】
結論
Lo A群およびHi B群における梗塞体積は、それぞれ、対照と比較すると、53%および57%、減少した。Hi A群では60%の死亡率であった。
【0214】
実施例11
齧歯類MCAOモデルにおける化合物の有効性の調査
化合物について、Chen et alに従い、右中大脳動脈(MCA)の永久閉塞+1時間のタンデム頸動脈閉塞により生じた局所脳虚血の標準化ラットモデルに対し試験した。下記表5で説明した実験設計に従い、全ての被験物質の皮下投与を用い、総数96の動物にMCAoを起こした。予め決めた1つの用量の3つの化合物を媒質と比較し、MCAoに対し3つの異なる投与時間計画を割り当てた。この調査では、A=782236、B=781430、C=アトルバスタチン、およびD=媒質(1mg/kg)とした。全ての処置群の投与の時間スケジュールは下記のように分けた。
2時間前、3時間後、および25時間後
1時間後、3時間後、および25時間後
3時間後、6時間後、および25時間後
【0215】
18匹の動物の第2群を使用し、上記で示した(a、b、およびc)処置スケジュールを用い、静脈内(I.V.)投与により化合物A(782236)の試験を実施した。化合物Aによる処置期間当たりn=5動物および尾静脈を介した対照群当たり3動物の群。
【0216】
対照動物に試験化合物のための媒質を注入した。生存は48時間維持された。梗塞サイズを有効性評価のためのエンドポイントとして使用した。
【0217】
この調査の結果から、このラットモデルでは中大脳動脈閉塞後3時間までに送達させると、これらの化合物を使用した梗塞サイズの減少における有効性により実証される時間相関が確立された。
【0218】
方法
動物の準備および中大脳動脈閉塞
体重300〜400gの雄の成体Sprague-Dawleyラット(Charles River)を調査に使用した。動物は全て、調査を実施する前に少なくとも5日間順応させた。動物を標準動物設備に収容し、市販の齧歯類用の食餌を自由に与えた。動物は全て、ケタミン(25mg/mL)、キシラジン(1.3mg/mL)、およびアセプロマジン(0.33mg/mL)を含む「カクテル」の筋内注射(4mL/kg)により麻酔した。両方の頸動脈を十分気をつけて分離し、迷走神経刺激を最小に抑えた。右近位MCA幹を側頭下頭蓋骨切除術により顔面神経を切断せずに露出させた。その後、下大脳静脈の1mm上方でマイクロ-双極性凝固法により動脈を閉塞させた。MCA閉塞後直ちに、総頸動脈を両方1時間、外科的動脈流マイクロ-クリップ(ROBOZ INC)を用いて閉塞させた。動物を温度調節した回復室に1時間入れ、その後、総頸動脈からクリップを除去した。手術中、温度制御装置に接続した電気毛布を使用して体温を37±0.5℃に維持した。
【0219】
実験群および化合物投与
下記表5で説明した実験設計に従い、全ての被験物質の皮下投与を用い、総数96の動物にMCAoを起こした。予め決めた1つの用量の3つの化合物を媒質と比較し、MCAoに対し3つの異なる投与時間スケジュールを割り当てた。この調査では、A=782236、B=781430、C=アトルバスタチン、およびD=媒質とした。全ての処置群の投与時間スケジュールは下記のように分けた。
2時間前、3時間後、および25時間後
1時間後、3時間後、および25時間後
3時間後、6時間後、および25時間後
【0220】
18匹の動物の第2群を使用し、上記で示した(a、b、およびc)処置スケジュールを用い、静脈内(I.V.)投与により化合物A(782236)の試験を実施した。化合物Aによる処置期間当たりn=5動物および尾静脈を介した対照群当たり3動物の群。
(表5)

【0221】
体温
全ての動物の体温を手術中モニタリングし、正常値(36.8〜37.5℃)付近で維持した。体温はMCAo時に記録した。
【0222】
体重
動物の体重を手術時に測定し、記録した。図11を参照のこと。全ての群の間で体重の統計学的な差はなかった。
【0223】
梗塞測定
MCAoの48時間後に、CO2を吸入させて動物を安楽死させた。脳を除去し、氷生理食塩水中で10分間冷却した。脳を金属齧歯類脳スライサ内に入れた。各ラット脳を冠状に7つに切断し、ここで個々の切片は2mmの厚さであった。脳切片を2% TTC溶液中に30分間、37℃で浸漬させた。脳梗塞面積を、ウインドウズ用のコンピュータインタフェース画像システムImage-Pro(登録商標)Plus、Version4.4(Media Cybernetics、MD)を用いて7つの切片に対し決定した。梗塞面積をその後切片間で合計し、スライス厚をかけると、総梗塞体積が得られた。
【0224】
統計学
データは全て平均±SEMで表す。セクションAでは、梗塞体積をスチューデントt検定を用いて解析した。0.05以下のp値は統計学的に有意の差と考えた。全ての統計学的解析をソフトウエアパッケージJMPバージョン4.0(SAS Institute Inc.、Cary、NC)を用いて実施した。
【0225】
結果
死亡率
対照群中の1匹の動物がMCAo後最初の24時間以内に死亡した。全ての他の動物は48時間の試験で生き延びた。
【0226】
梗塞体積
梗塞は、中大脳動脈の遠位分枝により供給される皮質に限定され、線条体は関係しないことが見いだされた。媒質処置対照と化合物を比較する、全ての群の梗塞体積の結果を下記に示す。各化合物に対する処置パラダイムは下記の通りである。
2時間前、3時間後、および25時間後
1時間後、3時間後、および25時間後
3時間後、6時間後、および25時間後
【0227】
化合物A782236IV:図12は、782236の静脈内投与の結果を示す。群b(122.8±17.9mm3)およびc(73.8±18.1mm3)で観察された梗塞体積は、対照(媒質)処置動物(202.5±18.1mm3)とは統計学的に異なり、a動物群(186.8±9.2mm3)は対照とは統計学的な差を示さなかった。
【0228】
化合物A782236:図13は、a群(138.6±35.13mm3)において観察された梗塞体積は対照(媒質)処置動物(220.39±14.48mm3)とは統計学的に異なるが、b群(171.04±33.04mm3)およびc群(155.53±29.66mm3)動物で観察された梗塞体積は対照とは統計学的な差を示さないことを示す。
【0229】
化合物B781430:図14は、a群(78.89±28.46mm3)、b群(96.51±31.62mm3)、およびc群(121.39±22.53mm3)において観察された梗塞体積は対照(媒質)処置動物(189.16±18.47mm3)とは統計学的に異なることを示す。
【0230】
化合物Cアトルバスタチン:図15は、a群(80.35±30.41mm3)において観察された梗塞体積は対照(媒質)処置動物(174.36±16.670mm3)とは統計学的に異なるが、b群(121.52±22.58mm3)およびc群(127.16±25.77mm3)動物で観察された梗塞体積は対照とは統計学的な差を示さないことを示す。
【0231】
図16に示されるように、調査の開始時では、全ての群間で体温の差はなかった。データは平均±SEMである。
【0232】
実施例12
齧歯類MCAO(Tamura)モデルにおける化合物の有効性の調査
MCAoのTamuraモデルを使用して、運動技能能力として明示される神経学的欠損の緩和におけるピロール化合物の効果を決定した。対照(媒質)動物の体積と比較した化合物処置動物の挙動評価および梗塞体積を使用して、7日間にわたる化合物有効性を評価した。
【0233】
方法
動物準備
体重300〜350gの80匹の成体Sprague-Dawleyラット(Taconic Farms)を調査に使用した。動物を標準動物設備に収容し、市販の齧歯類用の食餌を自由に与えた。正確なランダム化および外科的処置による死亡率を考慮し、余分の動物を注文した。ラットは研究室に到着した時、約10週齢であった。
【0234】
動物は全て収容し、順化目的で手術前7日間行動評価のために対処した。訓練期間の終わりに、ランダム化し異なる群に割り当てた。動物に尾部マーキングにより独特な識別番号を与えた。尾部番号およびケージカードにより動物を確認する。
【0235】
外科的準備
中大脳動脈閉塞(MCAo)、Tamuraモデル。Tamuraらの方法の改良を用いて、近位右中大脳動脈の永久的閉塞により、局所性脳梗塞を引き起こした。雄Sprague-Dawleyラット(300〜350g)を2%イソフロウラン(isoflourane)を含む50%空気/50%O2で麻酔し、1〜1.5%イソフロウランを用いて維持した。目と鼓膜管との間の中程で形成した切開により、側頭筋を二分し、反射させた。頬骨弓を除去せず、かつ顔面神経を切断せずに、側頭下頭蓋骨切除術により近位MCAを露出させた。その後、嗅索の直近位から下大脳静脈まで、マイクロ双極性凝固法により動脈を閉塞させ、切断した。処置全体を通して、体温を38℃±1に維持した。MCA閉塞後様々な時間で、動物を麻酔し、組織学的分析のための脳を除去した。
【0236】
脳血流測定
血流モニタリングを40匹の動物の1つの群で実施し、MCAoに関する一定の時間での3つの実験化合物(782236、781430、およびアトルバスタチン)の脳血流に対する効果を決定した。Perimed Laser Dopplerシステム500を使用して、MCAoの前、MCAoの60分後、ならびにMCAoの1日および5日後での血流の変化の割合を決定した。
【0237】
動物をイソフロウランで簡単に麻酔し、準備刺激された流量プローブを、MCAoの同側の下記定位座標付近に作成した骨孔を通して挿入した:プレグマまで-1.0mmおよび正中線まで側方+6mm。プローブの先端を1mm挿入し、シアノアクリレートグルーを用いて定位置に固定した。5分にわたり記録した。筋肉弁と皮膚をランニング(running)4-0シルクで縫合し、動物をケージに戻した。3つの試験化合物で処置した群の結果を媒質処置ラットと比較した。
【0238】
行動分析
2つの行動試験、肢置き(limb placing)試験および身体スイング試験を実施した。この試験は手術直後、MCAoの1、3、7日後に実施した。
【0239】
肢置き
肢置き試験は前肢試験と後肢試験の両方に分割された。前肢置き試験では、試験官はラットを卓上付近で保持し、ラットの、ひげ、視覚、触覚、または固有受容性刺激に応答して前肢を卓上に置くことができる能力について評点を記録した。同様に、後肢置き試験では、試験管は、ラットの、触覚および固有受容性刺激に応答して後肢を卓上に置くことができる能力について評価した。各モードの感覚入力に対し別個のサブスコアが得られ、これを加算すると総スコアが得られた(前肢置き試験では:0=正常、10=最大損傷;後肢置き試験では:0=正常、6=最大損傷)。典型的には、脳卒中後最初の1ヶ月中に、肢置き行動が徐々に着実に回復した。
【0240】
表6は化合物782236(A)、781430(B)、およびアトルバスタチン(C)がMCAoの3時間後に投与された、前肢置き試験の測定スコアを示す。結果は、ピロール化合物およびアトルバスタチンによる処置後の改善を示す。
(表6)

【0241】
図17は表6の結果をグラフ形態で示したものである。
【0242】
表7は、化合物782236(A)、781430(B)、およびアトルバスタチン(C)がMCAoの6時間後に投与された、前肢置き試験の測定スコアを示す。結果は、ピロール化合物およびアトルバスタチンによる処置後の改善を示す。
(表7)

【0243】
図18は表7の結果をグラフ形態で示したものである。
【0244】
表8は、化合物782236(A)、781430(B)、およびアトルバスタチン(C)がMCAoの3時間後に投与された、後肢置き試験の測定スコアを示す。結果は、ピロール化合物およびアトルバスタチンによる処置後の改善された効果を示す。
(表8)

【0245】
図19は表8の結果をグラフ形態で示したものである。
【0246】
表9は、化合物782236(A)、781430(B)、およびアトルバスタチン(C)がMCAoの6時間後に投与された、後肢置き試験の測定スコアを示す。結果は、ピロール化合物およびアトルバスタチンによる処置後の改善効果を示す。
(表9)

【0247】
図20は表9の結果をグラフ形態で示したものである。
【0248】
身体スイング試験
尾の基部から約1インチのところで動物を保持した。その後、テーブル表面から1インチ上まで上昇させた。動物を垂直軸内に、左側または右側のどちらに対しても10°以内と規定して保持した。動物が垂直軸からどちらかの側に頭部を動かすと1スイングとして記録した。次のスイングを試みる前に、動物は垂直位置に戻り、次のスイングをカウントしなければならない。総30スイングをカウントした。正常な動物は典型的には両側に等しい数のスイングを有する。局所性脳卒中後、動物は対側性にスイングする傾向がある。脳卒中後最初の1か月中に身体スイングは徐々に自然治癒した。
【0249】
表10は、化合物782236(A)、781430(B)、およびアトルバスタチン(C)がMCAoの3時間後に投与された、身体スイング試験の測定スコアを示す。結果は、ピロール化合物およびアトルバスタチンによる処置後の改善を示す。
(表10)

【0250】
図21は表10の結果をグラフ形態で示したものである。
【0251】
表11は、化合物782236(A)、781430(B)、およびアトルバスタチン(C)がMCAoの6時間後に投与された、身体スイング試験の測定スコアを示す。結果は、ピロール化合物およびアトルバスタチンによる処置後の改善を示す。
(表11)

【0252】
図22は表11の結果をグラフ形態で示したものである。
【0253】
形態計測分析 - 脳灌流
局所虚血を誘発して7日後、ラットをケタミンおよびキシラジンカクテルを用いて深く麻酔した。その後、梗塞体積測定のために(H&E染色)、通常の生理食塩水(ヘパリン2単位/mlを含む)、続いて4% パラホルムアルデヒドで経心的に灌流させた。脳を除去し、10%ホルマリン中で保存し、切片化し、ヘモトキシリンおよびエオシンで染色した。
【0254】
梗塞体積測定
Image Pro-Plusイメージングシステムを用いて、各切片の後方側の脳に対し総数7の画像をデジタル解析により解析した。直接の総梗塞体積を、下記式を用いて左半球に対し計算した。デジタル化および計算は盲式条件下で実施した。

【0255】
総梗塞体積を各動物に対し計算し、その後群平均をエリア体積(mm3)として決定した。組織収縮および可能性のある浮腫を説明するために、梗塞体積の間接的な方法を、下記式を用いて計算した。
総対側半球体積 - 総梗塞半球体積(mm3)
【0256】
表12は、化合物782236(A)、781430(B)、およびアトルバスタチン(C)をMCAoの3時間後に投与した場合の補正梗塞体積を示す。結果は、ピロール化合物およびアトルバスタチンによる処置後の改善を示す。
(表12)

【0257】
図23は表12の結果をグラフ形態で示したものである。
【0258】
表13は、化合物782236(A)、781430(B)、およびアトルバスタチン(C)をMCAoの3時間後に投与した場合の梗塞体積(%)を示す。結果は、ピロール化合物およびアトルバスタチンによる処置後の改善を示す。
(表13)

【0259】
図24は表13の結果をグラフ形態で示したものである。
【0260】
表14は、化合物782236(A)、781430(B)、およびアトルバスタチン(C)をMCAoの6時間後に投与した場合の補正梗塞体積を示す。結果は、ピロール化合物およびアトルバスタチンによる処置後の改善を示す。
(表14)

【0261】
図25は表14の結果をグラフ形態で示したものである。
【0262】
表15は、化合物782236(A)、781430(B)、およびアトルバスタチン(C)をMCAoの6時間後に投与した場合の梗塞体積(%)を示す。
(表15)

【0263】
図26は表15の結果をグラフ形態で示したものである。
【0264】
体温および体重
全ての動物の体温を手術中モニタリングし、正常値(37〜38℃)付近で維持した。動物の体重を手術前および調査終了時安楽死直前に測定し、記録した。
【0265】
臨床的観察
行動評価に加え、回旋、傾眠、呼吸喘鳴または放出、脱毛、および早期死亡を含むがそれらに限定されない異常行動について、毎日動物を観察した。異常は全て記録した。同様に、正常な行動も正常と書き留めた。
【0266】
統計解析
行動スコアおよび体重を、分散の2方向反復測定解析(ANOVA;処置X時間)により解析した。梗塞体積を1方向ANOVAにより解析した。0.05以下のp値は、統計学的に有意の差と考えた。
【0267】
実験計画
実験群および化合物投与
表16で示した実験計画に従い、全ての被験物質の皮下投与を用い、総数80匹の動物にMCAoを引き起こした。予め決められた用量の3つの化合物782236、781430、およびアトルバスタチンを、媒質と比較し、MCAoの時間に対し2つの異なる投与時間スケジュールに割り当てた。全ての処置群(10動物/群)の投与に対する時間スケジュールは下記のように分割した。
a.3時間後、6時間後、および25時間後、ならびに2〜7日後1日2回
a.6時間後、9時間後、および25時間後、ならびに2〜7日後1日2回
【0268】
動物は全て、盲式ランダム検査として、化合物/媒質を用いて処置した。用量および投与経路は下記表16で示す。40の動物を第1の調査群で使用した(a群)。MCAoに対し0、1、および5日目に、前に述べたプロトコルに従って脳血流測定を実施した。
(表16)

【0269】
実験計画に対する概要
動物:80匹の雄のSprauge Dawleyラット、300〜350g(手術7日前に230〜250gで到着);
群、投与スケジュール:
10*AB30087 I.V. 3時間後、6時間後、24時間後および2〜7日後1日2回
10*AB30000 I.V. 3時間後、6時間後、24時間後および2〜7日後1日2回
10*AB0089 I.V. 3時間後、6時間後、24時間後および2〜7日後1日2回
10*媒質(1ml/kg) I.V. 3時間後、6時間後、24時間後および2〜7日後1日2回
10*AB30087 I.V. 6時間後、9時間後、24時間後および2〜7日後1日2回
10*AB30000 I.V. 6時間後、9時間後、24時間後および2〜7日後1日2回
10*AB0089 I.V. 6時間後、9時間後、24時間後および2〜7日後1日2回
10*媒質(1ml/kg) I.V. 6時間後、9時間後、24時間後および2〜7日後1日2回

スケジュール:
0日目 MCAo Tamura モデル/血流モニタリング
行動評価
1日目 行動評価/脳血流モニタリング
3日目 行動評価
5日目 脳血流モニタリング
7日目 行動評価
H&E染色のための脳灌流準備
【0270】
実施例12
神経保護アッセイ法
4×105のラット皮質細胞をポリ-D-リシンでコートした24-ウエルプレートで、2mMグルタミン、100単位/mlペニシリン-ストレプトマイシン、およびB27サプリメントを補充したNeurobasal培地中、37℃、5% CO2中で培養した。12〜14日の培養後、細胞を10μM化合物または媒質中で1.5時間、標準培地で(DMSO媒質の最終濃度は1%であった)プレインキュベートした。NMDAを含むPBSを各ウエルに添加し、10分間最終濃度300μMとした。その後、細胞を3度標準培地中で洗浄し、培地+10μM化合物を細胞上に戻した。37℃、5% CO2中で24時間後、100μlの培地を、Cytotoxicity Detectionキット(LDH)(Roche)による乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)検出に使用した。試験試料を媒質対照における総LDH放出に対し正規化した。
【0271】
図27は、放出されたLDHの割合が相対的な神経細胞死を示すという結果を表す。値を、神経細胞死100%の媒質対照に対して正規化し、化合物の存在下での平均LDH放出割合を示す。LDH放出の減少は神経細胞死の減少を示す。化合物IDはチャートの真下に示してあり、標的に対する各化合物のKdは丸括弧内に示してある。斜線により示される3つの化合物は、標的と相互作用せず、負の対照(negative control)である。
1=780520 7=782756
2=780858 8=781456
3=781430 9=780390
4=780702 10=780832
5=780936 11=780962
6=779974
【0272】
本発明について特定の態様に関して記述してきたが、さらなる改変が可能であることは理解されるであろう。この出願は一般に、本発明の原理に従う本発明の任意の変形、使用、または適合を含むことが意図され、かつ本発明が関係する技術分野範囲内の公知のまたは慣例的な実施の範囲内にあり、前述した本質的な特徴に適用されるように、本発明の開示からのそのような逸脱を含む。
【0273】
本明細書で引用した全ての参考文献、例えば特許、特許出願、および出版物は、前に具体的に組み入れられたかどうかに関係なく、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0274】
本発明について十分記述したが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、過度の実験をせずに、様々な範囲の等価なパラメータ、濃度および条件内で同様のことを実施できることは認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0275】
【図1】固定アトルバスタチンの存在下、PDE6Dを提示したファージに結合した新規分子のスクリーン結果を示す。y軸は、2μMの様々な化合物の存在下、固定アトルバスタチンに結合したファージの分画量に関係する。DMSOを対照として使用した。
【図2】アトルバスタチンとPDE6D融合タンパク質との間の結合実験結果を示す。
【図3】アトルバスタチンとラット脳由来のPDE6Dとの間の結合実験結果を示す。
【図4】アトルバスタチンとラット脳由来のPDE6Dとの間の結合実験結果を示す。
【図5】アトルバスタチンと大腸菌発現ヒトPDE6Dとの間の結合実験結果を示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、アトルバスタチンまたはセリバスタチンとラット肝臓または脳由来のNQO2との間の結合実験結果を示す。
【図7】アトルバスタチンとラット肝臓タンパク質抽出物由来のNQO2との間の結合曲線アッセイ法結果を示す。
【図8】ラット脳タンパク質抽出物、固定アトルバスタチン、および様々な結合競合物の間の結合競合アッセイ法の結果を示す。
【図9】ラット脳タンパク質抽出物、固定アトルバスタチン、および本明細書で記述された様々な化合物の間の結合競合アッセイ法の結果を示す。
【図10】中大脳動脈(MCA)閉塞、その後の48時間の回復を受けた動物における梗塞体積の結果を示す。
【図11】ラットフィラメントMCA閉塞の調査における手術時の動物の体重を示す。
【図12】ラットMCA閉塞の調査における782236の静脈内投与の結果を示す。
【図13】ラットMCA閉塞の調査における782236の皮下投与の結果を示す。
【図14】ラットMCA閉塞の調査における779974の皮下投与の結果を示す。
【図15】ラットMCA閉塞の調査におけるアトルバスタチンの皮下投与の結果を示す。
【図16】ラットフィラメントMCA閉塞の調査におけるMCA閉塞時に測定した動物体温を示す。
【図17】本発明の化合物がMCAoの3時間後に投与された場合の、前肢置き試験の測定スコアを示す。
【図18】本発明の化合物がMCAoの6時間後に投与された場合の、前肢置き試験の測定スコアを示す。
【図19】本発明の化合物がMCAoの3時間後に投与された場合の、後肢置き試験の測定スコアを示す。
【図20】本発明の化合物がMCAoの6時間後に投与された場合の、後肢置き試験の測定スコアを示す。
【図21】本発明の化合物がMCAoの3時間後に投与された場合の、身体スイング試験の測定スコアを示す。
【図22】本発明の化合物がMCAoの6時間後に投与された場合の、身体スイング試験の測定スコアを示す。
【図23】本発明の化合物がMCAoの3時間後に投与された場合の、補正梗塞体積測定値を示す。
【図24】本発明の化合物がMCAoの3時間後に投与された場合の、梗塞体積測定値(%)を示す。
【図25】本発明の化合物がMCAoの6時間後に投与された場合の、補正梗塞体積測定値を示す。
【図26】本発明の化合物がMCAoの3時間後に投与された場合の、梗塞体積測定値(%)を示す。
【図27】相対的な神経細胞死を示す、放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の割合における本明細書で記述した化合物の効果を示す実験結果を示す。
【図28】ピロール化合物の合成のためのスキーム1を示す。
【図29】ピロール化合物の合成のためのスキーム2を示す。
【図30】ピロール化合物番号782236の合成のためのスキーム3を示す。
【図31】ピロール化合物番号782236の合成のためのスキーム4を示す。
【図32】ピロール化合物番号782236の合成のためのスキーム5を示す。
【図33】図33A〜33Hは、本発明のピロール化合物の化学構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療の必要な被験者に、有効量のPDE6調節化合物を投与する段階を含む疾患の治療法。
【請求項2】
PDE6調節化合物が特異的にPDE6Dに結合する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
PDE6調節化合物がHMG-CoAレダクターゼを最低限に調節する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dを調節する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dを阻害する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6DのGTPアーゼへの結合を調節する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6DのGTPアーゼへの結合を阻害する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
GTPアーゼが、ras、rab、rho、rapおよびrhebから選択される少なくとも1つのタンパク質である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6DのPDE6サブユニットへの結合を調節する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6DのPDE6サブユニットへの結合を阻害する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dの、PDE6-αおよびPDE6-βサブユニットから選択される少なくとも1つのPDE6サブユニットへの結合を調節する、請求項9記載の方法。
【請求項13】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dの、PDE6サブユニットのプレニル化領域への結合を調節する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dの、PDE6サブユニットのプレニル化領域への結合を阻害する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dの、少なくとも1つのサブユニットのプレニル化領域への結合を調節する、請求項11記載の方法。
【請求項16】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dの、少なくとも1つのサブユニットのプレニル化領域への結合を阻害する、請求項11記載の方法。
【請求項17】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dの、GTPアーゼのプレニル化領域への結合を調節する、請求項6記載の方法。
【請求項18】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dの、GTPアーゼのプレニル化領域への結合を阻害する、請求項7記載の方法。
【請求項19】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dの、タンパク質のプレニル化領域への結合を調節する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dの、タンパク質のプレニル化領域への結合を阻害する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
GTPアーゼが、ras、rab、rho、rapおよびrhebの少なくとも1つである、請求項17記載の方法。
【請求項22】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dの、タンパク質のプレニル化領域への結合を調節する、請求項1記載の方法。
【請求項23】
PDE6調節化合物が好ましくはPDE6Dの、タンパク質のプレニル化領域への結合を阻害する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
疾患がPDE6関連状態である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
疾患が、PDE6またはそのサブユニットのいずれかを調節することにより有益な効果が得られる状態である、請求項1記載の方法。
【請求項26】
疾患が、異常なまたは望ましくないホスホジエステラーゼ活性に関する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
疾患が脳卒中である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
PDE6調節化合物が、脳卒中を阻止するために被験者に予防的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項30】
PDE6調節化合物が、下記化学式Iaのピロール化合物またはそのジアステレオマー、鏡像異性体、もしくは薬学的に許容される塩である、請求項1記載の方法:

(式中、
Xはハロゲンまたは置換されてもよいアルキル、脂環、アリールまたは複素環であり;かつ
Rは任意の適した置換基であり、下記以外のものである:

(式中、R'、M、X、およびYは任意の適した置換基である)
)。
【請求項31】
ピロール化合物が下記化学式の化合物またはそのジアステレオマー、鏡像異性体、もしくは薬学的に許容される塩である、請求項30記載の方法:


【請求項32】
ピロール化合物が下記化学式の化合物またはそのジアステレオマー、鏡像異性体、もしくは薬学的に許容される塩である、請求項30記載の方法:


【請求項33】
治療の必要な被験者に、有効量のQR2調節化合物を投与する段階を含む、疾患の治療法。
【請求項34】
QR2調節化合物がQR2に特異的に結合する、請求項33記載の方法。
【請求項35】
QR2調節化合物が好ましくはQR2を調節する、請求項33記載の方法。
【請求項36】
QR2調節化合物が好ましくはQR2を阻害する、請求項3記載の方法。
【請求項37】
疾患がQR-2関連状態である、請求項33記載の方法。
【請求項38】
疾患が、QR2またはQR2ホモ二量体を調節することにより有益な効果が得られる状態である、請求項33記載の方法。
【請求項39】
疾患が異常なまたは望ましくないキノンレダクターゼ活性に関連する、請求項33記載の方法。
【請求項40】
QR2調節化合物が被験者に、毒性または細胞毒性予防のために投与される、請求項33記載の方法。
【請求項41】
治療の必要な被験者に、有効量のCLB2調節化合物を投与する段階を含む疾患の治療法。
【請求項42】
CLB2調節化合物がCLB2に特異的に結合する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
CLB2調節化合物が好ましくはCLB2を調節する、請求項41記載の方法。
【請求項44】
CLB2調節化合物が好ましくはCLB2を阻害する、請求項41記載の方法。
【請求項45】
疾患がCLB2関連状態である、請求項41記載の方法。
【請求項46】
疾患が、CLB2を調節することにより有益な効果が得られる任意の状態である、請求項41記載の方法。
【請求項47】
疾患が異常なまたは望ましくないカルシウム結合活性に関係する、請求項41記載の方法。
【請求項48】
疾患が、癌、視力障害疾患、酸化的ストレス疾患、炎症、および多発性硬化症から選択される少なくとも1つの状態である、請求項1、33、または41記載の方法。
【請求項49】
疾患が、脳血管障害、神経変性疾患、および心血管疾患から選択される少なくとも1つの状態である、請求項1、33、または41記載の方法。
【請求項50】
脳血管障害が脳卒中である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
心血管疾患の治療により、心筋梗塞の損傷の頻度および/または重篤度が減少する、請求項49記載の方法。
【請求項52】
神経変性疾患が、虚血性脳卒中、アルツハイマー病、糖尿病性末梢神経障害、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、およびパーキンソン病から選択される少なくとも1つの状態である、請求項49記載の方法。
【請求項53】
化合物が、血管成長、骨成長、または免疫系活性を刺激する、請求項1、33、または40記載の方法。
【請求項54】
下記化学式Iaのピロール化合物またはそのジアステレオマー、鏡像異性体、もしくは薬学的に許容される塩:

(式中、
Xはハロゲンまたは置換されてもよいアルキル、脂環、アリール、または複素環であり;かつ
Rは任意の適した置換基で、下記以外のものである:

(式中、R'、M、X、およびYは任意の適した置換基である)
)。
【請求項55】
Xがフルオロである、請求項54記載の化合物。
【請求項56】
Xが4-フルオロである、請求項54記載の化合物。
【請求項57】
下記化学式を有する請求項54記載の化合物またはそのジアステレオマー、鏡像異性体、もしくは薬学的に許容される塩:


【請求項58】
下記化学式を有する請求項54記載の化合物またはそのジアステレオマー、鏡像異性体、もしくは薬学的に許容される塩:


【請求項59】
下記化学式を有する請求項54記載の化合物またはそのジアステレオマー、鏡像異性体、もしくは薬学的に許容される塩:


【請求項60】
下記化学式を有する、請求項54記載の化合物またはそのジアステレオマー、鏡像異性体、もしくは薬学的に許容される塩:

(式中、nは整数である)。
【請求項61】
請求項54記載の化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項62】
治療の必要な被験者に、有効量の、請求項54記載の化合物を投与する段階を含む、疾患の治療法。
【請求項63】
化合物が、PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチド、またはそのフラグメントもしくは一部に結合することを確認するための方法であって、以下を含む方法:
該ポリペプチド、またはそのフラグメントもしくは一部、またはその表面上に該ポリペプチド、またはそのフラグメントもしくは一部を発現するファージ粒子を試験化合物と接触させる段階;および
該ポリペプチド、またはそのフラグメントもしくは一部が試験化合物に結合するかどうかを決定する段階。
【請求項64】
試験化合物のポリペプチド、またはそのフラグメントもしくは一部への結合を、下記から選択される少なくとも1つの方法により検出する、請求項63記載の方法:
該試験化合物と該ポリペプチド、またはそのフラグメントもしくは一部との間の相互作用の直接検出による結合の検出;
該試験化合物と該ポリペプチド、またはそのフラグメントもしくは一部との間の相互作用の間接検出による結合の検出;
競合結合アッセイ法を用いた結合の検出;および
該ポリペプチド、またはそのフラグメントもしくは一部の活性のアッセイを用いた結合の検出。
【請求項65】
PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドの活性を刺激または阻害する化合物を同定するための方法であって、以下を含む方法:
該ポリペプチドまたは該ポリペプチドを発現する細胞を試験化合物と接触させる段階;および
該試験化合物が該ポリペプチドの活性を刺激または阻害する程度を決定する段階。
【請求項66】
PDE6D、QR2、またはCLB2ポリペプチドの活性を刺激または阻害するための方法であって、以下を含む方法:
該ポリペプチドまたは該ポリペプチドを発現する細胞を、該ポリペプチドに結合し該活性を刺激または阻害する化合物と接触させる段階。
【請求項67】
接触が、インビトロまたはインビボで実施される、請求項63、64、65、または66のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
化合物が、5000ダルトン未満の分子量を有する小分子である、請求項63、64、65、または66のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
ポリペプチドが、ファージ粒子表面上で発現される、請求項66記載の方法。
【請求項70】
化合物が、請求項63、64、または65のいずれか一項記載の方法により同定される、請求項66記載の方法。
【請求項71】
請求項63、64、または65のいずれか一項記載の方法により同定された化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項72】
治療の必要な被験者に、有効量のアトルバスタチンを投与する段階を含む、PDE6D関連疾患の治療法。
【請求項73】
PDE6D関連疾患が、投与によりPDE6活性の調節によって治療される、請求項72記載の方法。
【請求項74】
アトルバスタチンを投与すると、HMG CoAレダクターゼ活性およびPDE6活性の両方の調節により有益な効果が得られる、請求項72記載の方法。
【請求項75】
PDE6D関連疾患が、HMG CoAレダクターゼ活性の最低限の役割により特徴づけられる、請求項72記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33A】
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【図33B】
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【図33C】
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【図33D】
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【図33E】
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【図33F】
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【図33G】
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【図33H】
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【公表番号】特表2007−516227(P2007−516227A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533150(P2006−533150)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/015444
【国際公開番号】WO2004/110998
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(505046846)アンビット バイオサイエンシス コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】