説明

ピロール置換2−インドリノンプロテインキナーゼ阻害剤の多形

本発明は、3−ピロール置換 2−インドリノン化合物5−(5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−3−イリデンメチル)−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−アミドの多形に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
クロスレファレンス
本出願は、2003年2月24日に出願された米国仮出願番号60/448,863に対する35U.S.C.119(e)規定の優先権を主張し、その開示全体を参照として本明細書に援用する。
発明の背景
発明の分野
本発明は、3−ピロール置換2−インドリノン化合物5−(5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−3−イリデンメチル)−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−アミドの多形に関する。
【0002】
背景技術
5−(5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−インドール−3−イリデンメチル)−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−アミドは、プロテインキナーゼ(PK)調節能を示す化合物である。当該化合物は、それゆえ異常なPK活性に関連する疾患を治療するのに有益である。
【0003】
簡潔には、PKはタンパク質のチロシン、セリンおよびトレオニン残基の水酸基のリン酸化を触媒する酵素である。実質上細胞生命の全ての側面(例えば、細胞増殖、分化および増殖)や色々とPK活性に依存しているので、この表面的には単純な活性の結果は驚異的である。さらに、異常なPK活性は、乾癬のような相対的に生命を脅かすものではない疾患からグリア芽細胞腫(脳の癌)のような非常に悪性の疾患までにおよぶ多くの疾患に関連している。
【0004】
5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドは、リセプターチロシンキナーゼ(RTK)(PKの一つのクラス)の阻害剤である。RTKおよびそれらのリガンド、VEGF、PDGF、およびFGFは、充実性腫瘍中での脈管形成として知られる血管新生を媒介する。結果として、RTKを阻害することによって腫瘍中の新しい血管の生長が阻害される。理論的には、抗脈管形成剤と名付けられたこの新しいクラスの化合物は、通常の抗癌剤と比較して生体への毒性はかなり低い。5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドは、コンパニオン動物(主にイヌ)の癌の治療用として現在開発中であり、そしてとりわけヒトの癌の治療にも有用である。そのような癌には制限的でない例として、白血病、脳の癌、非小細胞肺癌、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、グリア芽細胞腫、肺癌、膀胱癌、頭部および頚部癌、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、神経膠腫、結腸直腸癌、泌尿器癌および消化管間質腫が含まれる。また、制限的ではないが肥満細胞症を含むマスト細胞の過剰発現も含まれる。
発明の概要
本発明者らは、化合物5−(5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−3−イリデンメチル)−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−−イルエチル)−アミドが、それぞれ異なった物理的性質を有する2つの多形、多形Iおよび多形IIで存在することを見つけた。
【0005】
それゆえ第1の態様は、本発明は式Iの化合物:
【0006】
【化1】

【0007】
実質的に多形I型を含まない、に関する。
第2の態様は、本発明は式Iの化合物:
【0008】
【化2】

【0009】
実質的に多形II型を含まない、に関する。
好ましい態様では、第1の態様の化合物は、図1に示すPXRDパターン型IIを有し、そして第2の態様の化合物は図1に示すPXRDパターン型Iを有する。
【0010】
第3の態様では、本発明は式Iの化合物の多形Iを含む組成物に関し、
【0011】
【化3】

【0012】
ここで、多形Iは、前記組成物の約85重量%以上;または前記組成物の約90重量%以上;または前記組成物の約95重量%以上;または前記組成物の約99重量%以上含まれる。
【0013】
第4の態様では、本発明は式Iの化合物の多形IIを含む組成物に関し、
【0014】
【化4】

【0015】
ここで、多形IIは、前記組成物の約85重量%以上;または前記組成物の約90重量%以上;または前記組成物の約95重量%以上;または前記組成物の約99重量%以上含まれる。
【0016】
5番目の態様では、本発明は式Iの化合物の多形に関し、
【0017】
【化5】

【0018】
ここで、前記多形は以下によって調製される:
(a)酸性水性溶液中で前記化合物を溶解し;
(b)前記水性溶液を塩基性化し、それによって多形II型を実質的に含まない前記化合物を沈殿させ;そして
(c)沈殿した前記化合物の多形I型を分離する。
【0019】
6番目の態様では、本発明は式Iの化合物の多形に関し、
【0020】
【化6】

【0021】
ここで、前記多形は以下によって調製される:
(a)水素結合を形成しない極性有機溶媒中に前記化合物を溶解し;
(b)前記極性有機溶媒を蒸発させ、それによって多形II型を実質的に含まない前記化合物を沈殿させ;そして
(c)沈殿した前記化合物の多形I型を分離する。
【0022】
7番目の態様は、本発明は式Iの化合物の多形に関し、
【0023】
【化7】

【0024】
ここで、前記多形は以下によって調製される:
(a)水素結合を形成する極性有機溶媒中に前記化合物を溶解し;
(b)前記極性有機溶媒を蒸発させ、それによって多形I型を実質的に含まない前記化合物を沈殿させ;そして
(c)沈殿した前記化合物の多形II型を分離する。
【0025】
本発明の好ましい態様では、6番目の態様の水素結合を形成しない極性有機溶媒はTHFである。他の好ましい態様では、7番目の態様の水素結合を形成する極性有機溶媒はメタノールである。
【0026】
8番目の態様では、本発明は第一または第二の態様の化合物および製剤的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物に関する。
9番目の態様では、本発明は、プロテインキナーゼを第一または第二の態様の化合物と接触させる工程を含む、プロテインキナーゼの触媒活性を調整する方法に関する。
好ましい態様では、プロテインキナーゼは、リセプターチロシンキナーゼ、非−リセプターチロシンキナーゼおよびセリン−トレオニンキナーゼからなる群から選択される。
【0027】
10番目の態様では、生物内のプロテインキナーゼ関連疾患を治療または予防する方法であって、第一または第二の態様の化合物、および製剤的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物の治療的に有効量を前記生物に投与することを含む方法に関する。好ましい態様では、前記プロテインキナーゼ関連疾患は、リセプターチロシンキナーゼ関連疾患、非−リセプターチロシンキナーゼ関連疾患およびセリン−トレオニンキナーゼ関連疾患からなる群から選択される。他の好ましい態様では、前記プロテインキナーゼ関連疾患は、EGFR関連疾患、PDGFR関連疾患、IGFR関連疾患、c−kit関連疾患およびflk関連疾患からなる群から選択される。更に他の好ましい態様では、前記プロテインキナーゼ関連疾患は、白血病、脳の癌、非小細胞肺癌、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、グリア芽細胞腫、肺癌、膀胱癌、頭部癌、頚部癌、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、神経膠腫、結腸直腸癌、泌尿器癌および消化管間質腫からなる群から選択される癌である。また、制限的ではないが肥満細胞症を含むマスト細胞の過剰発現も含まれる。更に他の好ましい態様では、前記プロテインキナーゼ関連疾患は、糖尿病、自己免疫異常、過剰増殖疾患(hyperproliferation disorder)、再狭窄、線維症、乾癬、フォンヘペルーリンドー病(von Heppel-Lindau disease)、変形性関節症、リウマチ様関節炎、脈管形成、炎症性疾患、免疫疾患および心血管疾患からなる群から選択される。更なる他の好ましい態様では、生物はヒトである。
【0028】
11番目の態様では、第一または第二の態様の化合物および製剤的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含む、コンパニオン動物の癌の治療方法に関する。好ましい態様では、前記コンパニオン動物はネコまたはイヌである。
発明の詳細な説明
特に言及しない限り、明細書および特許請求の範囲で使用されている以下の用語は、下に述べる意味を有する。
【0029】
"多形"は、結晶格子中の分子の異なった配列および/または配座によるいくつかの固有の型を生じる、物質の固体相に関する。
多形は、化合物の異なった溶媒和物化されていない(unsolvated)結晶形としても定義することができる。
【0030】
多形は、典型的には異なった化学および物理的性質を有する。本発明の好ましい態様の文脈では、用語“多形”は、溶媒和物(すなわち、溶媒または水を含む型)、アモルファス型(すなわち、非結晶形)および脱溶媒した溶媒和物(すなわち、溶媒和物から溶媒を除去することによってのみ調製できる型)をも含む。
【0031】
本発明の好ましい態様では、純粋な単一の多形、並びに二つまたはそれ以上の異なった多形を含む混合物も含まれる。純粋な単一の多形は、実質的に他の多形を含まない。"実質的に含まない"とは、他の多形は約15重量%以下、より好ましくは約10重量%以下、さらにより好ましくは約5重量%以下、もっとも好ましくは約1重量%以下の量で存在することを意味する。当業者は、“約15重量%以下の量”というフレーズは、興味の対象の多形が約85重量%以上の量で存在することを意味することは理解できるであろう。同様に、“約10重量%以下”とは、興味の対象の多形が約90重量%以上の量で存在することを意味し、そして他も同様である。
【0032】
本発明の好ましい態様の化合物の多形は、化合物の特定の多形が同じ化合物の他の多形よりもよりよい物理的および化学的特性を有していることがあるので望ましい。例えば、ある多形は、ある溶媒中において高い溶解性を有するであろう。そのような高められた溶解性は、本発明の好ましい態様の化合物の調剤または投与を容易にすることができる。異なった多形は、薬剤の錠剤化特性に影響を与え、そして薬剤の製剤化に影響を与える異なった機械的特性(例えば、異なった圧縮性、融和性、錠剤性)も有するかもしれない。特定の多形は、他の多形と比較して、同じ溶媒中での異なった溶解速度をも示すかもしれない。異なった多形は、異なった物理的(準安定多形からより安定な多形への固体状態転換)および化学的(反応性)安定性を有することもできる。
【0033】
本発明の好ましい態様は、本発明の好ましい態様の多形および製剤的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物を含む。本発明の好ましい態様の多形を含む製剤的に許容される組成物の製剤化のための担体および賦形剤は、当業界ではよく知られており、そして例えば2001年2月15日に出願された米国特許出願番号09/783,264に開示されており、その開示全体を本明細書に援用する。WO01/60814参照。
【0034】
本発明の好ましい態様には、プロテインキナーゼの触媒活性を調整する方法であって、前記プロテインキナーゼを本発明の好ましい態様の多形と接触させる工程を含む方法が含まれる。前記プロテインキナーゼは、リセプターチロシンキナーゼ、非−リセプターチロシンキナーゼおよびセリン−トレオニンキナーゼからなる群から選択される。
【0035】
本発明の好ましい態様は、生物内(例えばヒト)のプロテインキナーゼ関連疾患を治療または予防する方法であって、本発明の好ましい態様の多形および製剤的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物の治療的に有効量を前記生物に投与することを含む方法が含まれる。本発明の好ましい態様では、プロテインキナーゼ関連疾患は、リセプターチロシンキナーゼ関連疾患、非−リセプターチロシンキナーゼ関連疾患およびセリン−トレオニンキナーゼ関連疾患からなる群から選択される。本発明の他の好ましい態様では、プロテインキナーゼ関連疾患は、EGFR関連疾患、PDGFR関連疾患、IGFR関連疾患、およびflk関連疾患からなる群から選択される。本発明の他の好ましい態様では、プロテインキナーゼ関連疾患は、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、グリア芽細胞腫、肺癌、膀胱癌、頭部および頚部癌、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、神経膠腫、結腸直腸癌、泌尿器癌および消化管間質腫からなる群から選択される癌である。本発明の好ましい態様では、プロテインキナーゼ関連疾患は、糖尿病、自己免疫異常、過剰増殖疾患(hyperproliferation disorder)、再狭窄、線維症、乾癬、フォンヘペルーリンドー病(von Heppel-Lindau disease)、変形性関節症、リウマチ様関節炎、脈管形成、炎症性疾患、免疫疾患および心血管疾患からなる群から選択される。
【0036】
本発明の好ましい態様では、本発明の好ましい態様の多形および製剤的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含むコンパニオン動物の癌の治療方法も含まれる。本明細書で使用されるように、“コンパニオン動物”という用語には、制限的ではないがネコおよびイヌが含まれる。
【0037】
実施例
以下の実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施することができるために記載している。それらは、本発明の範囲を制限するように解釈してはならず、単にそれらの例示的および代表的なものに過ぎない。
【0038】
5−(5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−3−イリデンメチル)−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−アミドの合成
【0039】
【化8】

【0040】
5−フルオロ−1,3−ジヒドロ−インドール−2−オンを5−ホルミル−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−アミドと縮合し、表記化合物を得た。
【0041】
MS+ve APCI 397 [M++1].
スケールアップ手順:
5−ホルミル−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(61g)、5−フルオロ−1,3−ジヒドロ−インドール−2−オン(79g)、エタノール(300mL)およびピロリジン(32mL)を4.5時間リフラックスした。酢酸(24mL)をその混合物に添加し、リフラックスを30分間続けた。その混合物を室温まで冷却し、固形物が真空ろ過で集められ、エタノールで2度洗浄した。その固形物を12N塩酸(6.5mL)を含む40%アセトン水(400ml)中で130分間攪拌した。その固形物を真空ろ過で回収し、40%アセトン水で2度洗浄した。該固形物を真空下で乾燥して5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(86g、収率79%)をオレンジの固形物として得た。H-NMR(ジメチルスルフォキシド−d6)δ2.48, 2.50 (2×s, 6H, 2×CH3), 6.80, 6.88, 7.68, 7.72 (4×m, 4H, 芳香族およびビニル), 10.88 (s, 1H, CONH), 12.12 (s, 1H, COOH), 13.82 (s, 1H, ピロールNH)。MS m/z 299 [M-1]。
【0042】
5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(100g)およびジメチルホルムアミド(500mL)を攪拌し、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(221g),1−(2−アミノエチル)ピロリジン(45.6g)およびトリエチルアミン(93mL)を添加した。その混合物を室温で2時間攪拌した。得られた固形物を真空ろ過により回収し、エタノールで洗浄した。該固形物を64℃で一時間エタノール(500ml)中で攪拌することによってスラリー洗浄し、室温まで冷却した。該固形物を真空ろ過により回収し、エタノールで洗浄し、真空下で乾燥して、5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸 (2−ピロリジン−1−イル−エチル)−アミド(101.5g、77%収率)を得た。H-NMR(ジメチルスルホキシド−d6)δ1.60(m, 4H, 2×CH2), 2.40, 2.44 (2×s, 6H, 2×CH3), 2.50 (m, 4H, 2×CH2), 2.57, 3.35 (2×m, 4H, 2×CH2), 7.53, 7.70, 7.73, 7.76 (4×m, 4H, 芳香族およびビニル), 10.88 (s, 1H, CONH), 13.67 (s, 1H, ピロールNH)。MS m/z 396 [M+1]。
【0043】
多形の同定と物理的特性の決定のための一般的な解析方法
様々な溶媒中での多形の溶解性の評価
多形およそ1.5mgを10mlのガラス容器(風袋測定した)に移し、重量測定した(正確に0.1mg)。段階的にガラス容器に溶媒を添加した(それぞれの容器に1つの溶媒)。それぞれの添加の後に、該ガラス容器に蓋をしてシェイクした。固体の溶解を目視で観測した。もしあきらかな溶解が見られなかったら、すばやくさらなる溶媒を添加した。もし溶解が明らかであれば、その容器を次の溶媒の添加まで少なくとも30分間ベンチに置いた。このステップを、黒と白の背景に対して結晶が見られなくなるまで繰り返した。溶解性は、重量を最終容積および最後の添加前の容積で割ることによって段階分けした。もし、10mlの溶媒添加後でも固形物が残っていれば、その溶解性は重量を最終容積で割ったものより低いと表現した。もし固形物が最初の溶媒添加後に完全に溶解した場合は、その溶解性は重量を溶媒体積で割ったものよりも大きいと表現した。溶解性は、mg/mLで表した。すべての実験は室温で実施した。
【0044】
多形のpH−溶解性プロファイルの決定
pH1−13としたHClまたはNaOHのいずれかの様々な濃度の約3mlの水溶液を10mlガラス容器に移した。多形の十分な量を添加した。該容器をアルミホイルでラップして、手で攪拌した。それらをさらなる処置まで終夜ドラフト内に置いた。
【0045】
粉末X線回折(PXRD)
粉末X線回折は、スシンタグ(Scintag)DMS/NT1.30aおよびマイクロソフトウィンドーズNT 4.0ソフトウェアによる操作の基、Scintag X2 Advanced Diffraction Systemを使用して測定した。そのシステムは、1.5406ÅのCuKα放射を与える銅のX線源 (45kVおよび40mA)、および固相Peltier冷却検出器を使用する。そのビームアパーチャーは、チューブ発散、2と4mmのアンチ散乱スリット、および0.5と0.2mm幅の受光スリットを使用してコントロールした。データは、0.03/ステップのステップスキャンで各ステップ一秒のカウントタイムで、2〜35の2シータで測定した。測定には、スシンタグラウンド(Scintag round)、直径9mmインサートであるトップローディングステンレススチールサンプルカップを使用した。粉末をホルダーにパックし、緩やかにグラススライドで圧縮し、サンプル表面とホルダーの表面の間が共平面となるようにした。
【0046】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)データは、DSC熱量測定装置(TA Instruments 2920)を使用して得た。粉末1−10mgをアルミニウムDSCパンにパックした。アルミニウムの蓋をパンのトップに置き、押し付けた。その押し付けられたパンをサンプルセルに、レファレンスである空のパンとともに置いた。温度は、30℃から300℃まで10℃/分の速度で上昇させた。
【0047】
偏光顕微鏡
顕微鏡観察は、オリンパスBHSP偏光顕微鏡を用いて行った。粉をシリコンオイル上に置き、顕微鏡用スライドとカバーガラスの間に分散させた。観察の前に、粉末サンプルをよく分散させるためにカバーグラスを徐々にスライドに対してこすりつけた。顕微鏡観察は、粉末サンプルの粒子サイズ、形、および結晶性を評価するために使用した。顕微鏡にホットステージをつけたときは、他の技術(例えば、DSC、熱重量分析(TGA))によって観測された熱的事象も可視化される。
フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)
KBrペレットして赤外解析のための多形サンプルを調製した。赤外透過データを、TGS検出器付のNicolet 760FTIRで、4000〜400cm−1の範囲で取得した。装置ゲインとして表現される感度は4であった。データは、Happ-Genzel apodizationを使用したフーリエ変換値として加工された。最終のFT−IRスペクトルは200スキャン(200 individual scans)で表した。
フーリエ変換ラマンスペクトル
多形約2mgを1.7mmガラスキャピラリーチューブにパックし、1.00WT 1064-nm レーザー光にさらした。ラマンスペクトルは3800から100cm−1で取得した。そのデータは、INGAS検出器を有するNicolet 960 FT−ラマンスペクトロメーターを使用して収集した。装置ゲインとして表される感度は8であった。データは、再びHapp-Genzel apodizationを使用したフーリエ変換値として加工した。その最終FT−ラマンスペクトルは、200スキャン(200 individual scans)で表した。
回転ディスク固有溶解速度(IDR)測定
IDRは、ファイバーオプティックUV自動溶解システム(fiber optic UV automated dissolution system)を使用して測定した。その溶解プロセスを、分ごとに10データポイントで、ファイバーオプティックプローブを使用して、ある場合には426.2nmで継続的にモニターした。実験のための圧縮したディスクを調製するために、粉をステンレススチール(SS)のダイ(1 1/4“dia×1”、ID 3/16”)中で、ハイスピードスチール(HSS)パンチ(直径3/16”および長さ3 1/2”)を使用して圧縮した。そのHSSパンチは、約10mgの薬剤をダイの穴に置くために約1/4”を残して、約3/4”の距離でダイに挿入された。ステンレススチールベースのプレートは(直径1/4”)、穴をカバーするように置かれた。全体の組み立ては、2ボルトのホルダーによって確かめられた。粉を圧縮するために、カーバープレス(Carver press)を〜1000lbs(〜37,000psi)で3分間使用した。ダイとホルダーはカーバープレスから除かれ、パンチはペレットをリラックスさせられる/広げられるように少し引き戻した。それから、ダイを止めねじでHSSパンチにきつく取り付けた。薬剤ペレットの一表面がさらされている薬剤を含む全体のパンチとダイの集合物は、ホルダーからユニットとして除去され、電気モーターにつけられた。データ取得プログラムの開始後3分後に、ダイを300rpmで回転させ、溶解培地中に沈めた。その溶解培地は、ガス抜きをし、500ml水ジャケットビーカー(Pyrex, No.1000)に入れた。最初の3分間のデータはそれぞれの溶解試験のベースライン値を提供した。その溶解培地はpH=2溶液(0.01 N HClおよび0.05 M KCl)からなっていた。そのダイは、薬剤コンパクトが500ml溶解容器の底から約2.5”で液体表面からもおよそ同じ距離になるように位置された。
【0048】
その固有の溶解プロファイルをマイクロソフトエクセルを使用してプロットし、固有の溶解速度を式(1)に従ったプログラムによって自動的に計算させた。
【0049】
【化9】

【0050】
溶解培地の体積は300mlであった。溶解培地にさらされるペレットの表面面積は、0.177cmであった。溶解のための時間は、通常は15分であったが必要に応じ変更した。
【0051】
5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミド多形の物理的特性の決定
5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドの2つの多形の型を同定した。該化合物の2つの多形型の熱力学的関係、それらの溶解性特性、およびそれらの固体状態特性は、固体型選択および活性製剤成分(API)製造での適切なプロセスコントロールにおいて、速やかに明らかになった。それゆえ、様々な技術(例えば、溶解性、IDR、PXRD、IR/ラマン分光、偏光顕微鏡およびDSC)を使用して、該化合物の2つの多形型の間の安定性を理解し、固体状態特性を明らかにする努力を行った。
溶解性
様々な溶媒中での5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドの評価された溶解性を表Aに示した。当該実験は、多形Iを使用して室温で実施した。その溶解性は、3つのグループに分けられた。
グループI
イソプロピルアルコール、CHCl、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、クロロホルム、トルエン、ヘキサンおよび水pH>6水中での5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸 (2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドの溶解性:溶解性は大変低い(<<0.3 mg/mL)。
グループII
メタノール、エタノール、ジオキサンおよびTHFでの溶解性:溶解性は依然として低い(0.1−0.4mg/mL)が、グループIの溶媒での溶解性よりは明らかに高い。
グループIII
5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドのジメチルスルフォキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびpH<=2水中での溶解性:溶解性は相対的に高い(>1mg/ml)。
【0052】
【表1】

【0053】
5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドのpKaは8.50である。予想されたように、この化合物の平衡溶解度は低溶液pHで高かった(表A)。しかし、溶解培地中での粒子の溶解性は、溶解層のpHに依存する。固体と直に接する溶解層のpH値(pHh=0)は、pHメーターにより測定される溶液の平衡pHから得られる。結果を表Bに示した。開始pHが10以上である場合は、5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル] −2,4−ジメチル−1 H−ピロール−3−カルボン酸 (2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドの溶解性は大変低い。それ故、平衡での溶液のpHはほとんど変化しない。一方、開始pHがpH<10であれば、より多くの5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸 (2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドが溶液中に移行し、溶液の平衡pHは開始pHよりも高くなる(表B)それゆえ、バルク溶解培地のpHが1.4くらい低い場合であっても、pHh=0は相対的に高く維持される(>5)ことをデータは示している。
【0054】
【表2】

【0055】
5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドのpH−溶解性プロファイルを測定する試みは成功しなかった。非常に細かい粒子が、pH<2.2において最初の薬剤の溶解で形成された。それらの細かい粒子を0.45μmのフィルターメンブレンに通し、雲状のろ過物を得た。より小さな穴でのフィルターメンブレン (0.1μm)は、そのようなデータをすぐに使用することが明らかではないので試さなかった。
【0056】
IDR
多形IIの固有の溶解速度(IDR)を多形Iのものと比較した。多形IIのIDRは23℃pH2バッファーでの多形IのIDRの約3倍であった(表C)。この結果は、多形IIは安定性に劣り、より低い溶解性を有していて、それゆえ同一温度同一溶媒では低いIDRを有すると予想される、先の観測とは矛盾する。理論に縛られることは望まないが、その矛盾の一つの説明は、その薬剤が実験条件下で固相転換を起こしたというものである。結局、IDRはオリジナルの2つの多形の熱力学的関係では比較できない。多形Iの薬剤ペレットの顕微鏡観察は、固相転換仮説に対するポジティブな証拠を示した。溶解培地に露出している側面でのペレットの色は、最初のペレットの黄色に比較してオレンジ−レッドであった。ペレットが溶解培地(0.05M KCl, pH 2 緩衝液)に接触してすぐに多形Iが塩酸塩に転換されたというのは可能である。通常のイオン効果のため、新しく形成された塩酸塩の溶解性、それ故IDRは、多形IIで予想されたのもよりも非常に低い。多形IIペレットが同じ溶解培地にさらされた後は、明かな色の変化はみられなかった。
【0057】
さらに塩酸塩形成仮説を試験するために、多形IとII両方を上述の溶解培地に懸濁した。しかし、少なくとも懸濁後調製後15分では粒子の色の変化はみられなかった。この結果は、観測された溶解試験中の多形IIの固相安定性には合致しているが、多形Iペレットのすばやい塩酸塩への転換は支持していない。懸濁液を調製して一日後、たぶん塩酸塩の結晶と思われるオレンジーレッド針状結晶が両方の容器でみられた。この結果は、塩酸塩の溶解性は、溶解性試験で使用した培地における多形Iおよび多形II両方の溶解性より低いことを確認している。IDR実験の前の圧密が多形Iの結晶をモディファイし、素早い転換能力を与えるというのも可能である。様々な圧力で圧密された多形IペレットのXRDパターンはある程度のアモルファス含量を示し、それはIDR実験中の素早い塩形成に関係しているかも知れない。
粉末X線回折 (PXRD)
5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドの2バッチの独特に異なった粉末X線回折(PXRD)パターンが観測された(図1)。そのような観測は、この薬剤の多形の存在を示唆している。それゆえ、FTIRとRamanスペクトルを5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸 (2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドの多形を確かめるために使用した。
IRおよびラマンスペクトル
IRとラマンスペクトルを図2および図3にそれぞれ示した。5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドの2つの型において、データとしてスペクトルの違いが明らかに見られる。一般的に、それらのバリエーションは、分子のN−HおよびC=O官能基に関連した振動モードの変化を含む。2つの型のC−H伸縮モードにもいくつかの変化が観測された。5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドの多形IとIIの溶液NMRデータ(DMSO中)は同一であり、5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドの両多形は化学的には等しいことが確かめられた。それゆえ、2つのサンプル間のいずれの振動スペクトルの違いは、5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸 (2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミドの2つの型の結晶パッキングによるようである。
【0058】
多形IIのIRデータを見ると、多形Iのスペクトルでは存在しない3198cm−1での広い振動バンドが存在する。この振動数での広い振動バンドは、O−H伸縮によるであろう。多形IIのIRデータでは、多形Iでは見られる1631cm−1でのC=Oアミドカルボニル伸縮も見られない。逆に、多形 IIのIRデータは、多形Iのデータでは存在しない1589cm−1での強いピークを示している。この振動数での振動は典型的にC=N伸縮である。多形IのIRデータと比較して多形IIのIRデータではC−O振動が存在しないのと共に、C=NとO−H伸縮モードの存在は、2つの形間でのケト−エノール互変異であることを示唆する。その3−アミドカルボニル基間のこの変化の位置は知られていない。しかし、多形IのIRデータでの2798cm−1のCH振動についての多形IIデータにおける2798cm−1と2776cm−1の2つの振動バンドへの割れは、C−Nアミド結合の回転を容易にし、メチル基と隣接するアミド基でエノール化が起きていることを示唆する。両方の多形のFTIRスペクトルを図2に示した。ラマンスペクトルも、2つの多形の粉間で同様な違いを示した(図3)。
偏光顕微鏡
両方の多形は、偏光顕微鏡下で複屈折を示す。それゆえ、両方の多形は、PXRDパターンでの強い回折ピークと符合し、結晶性である。多形Iの粒子は、多形IIのそれよりもかなり小さい。
熱力学的安定性
示差走査熱量測定(DSC)
両方の多形のDSCスキャンは、異なった融点と異なった融解エンタルピーを示す(表C)。多形IIの融点は、多形Iの融点よりも約3℃高い。それゆえ、多形IIは、融点近くでは熱力学的により安定な多形である。より高い融点の多形IIは、より高い溶融エンタルピーをも有する。それゆえ、“融解熱”ルールは、2つの固体形がモノトロピー的関係であると予測する。ホットステージ顕微鏡にて観察された融点は、同様の差(約3℃)を示す。DSCとホット−ステージ顕微鏡の両方から、それぞれの多形の融点以下の温度では、熱的イベントは観測されなかった。
【0059】
【表3】

【0060】
PXRD
2つの多形間の相対的な熱力学的安定性の関係を決定するために、PXRDを使用して室温でスラリー転換実験も実施した。結果を表Dに示した。
【0061】
当業者は、懸案の多形の熱力学的安定性は、制限的ではないが、サンプルサイズ、攪拌速度(もしサンプルが攪拌されていれば)、種結晶が使用されているか、多形間の相対的存在比、使用溶媒および温度を含む多くの因子に依存することは理解できるであろう。
【0062】
【表4】

【0063】
多形 I、20mgを10mlガラス容器中の様々な溶媒に、極微量の多形II種結晶とともに懸濁した。その懸濁液を、フィルターにかけてPXRDによる解析の前に、2週間マグネチックスターラーで攪拌した。メタノールとアセトン懸濁液は純粋な多形IIを生じる、すなわち2つの溶媒で媒介される多形Iから多形IIへの転換を示す。それゆえ、そのデータは、多形IIは室温では多形Iよりも熱力学的に安定であることを示唆している。多形 IIは融点付近でもより安定なので、2つの多形はモノトロピー的に関係している、すなわち、多形IIは室温から融点までより安定である。しかし、多形Iはテトラヒドロフラン (THF)懸濁液中では安定であるようだ。THF中での安定性はアセトン中よりも高いので(表A)、低い溶解性はゆっくりとした転換速度の理由ではない。
【0064】
理論に縛られたくはないが、THF分子が独特に溶液中で5−[5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロインドール−(3Z)−イリデンメチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イルエチル)−アミド分子と相互作用し、多形IIの核形成と結晶成長を阻害し、THF中で多形Iを反応速度的に安定にすることは可能である。
【0065】
以下に多形Iと多形IIの調製について述べる。
多形Iの調製:方法1
5−(5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−3−イリデンメチル)−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−アミド24.8mgを、ホットプレート上で加熱しながらpH2の緩衝液(0.01N HClおよび0.04M KCl)の適当量(少なくとも6ml)に完全に溶解した。その溶液を5分間ドラフトにて冷却した。1N NaOH溶液を添加して溶液から沈殿を生じさせた。その固形は多形IIを含んでおらず、ある程度のアモルファス性状をもった主に多形Iからなっていた。
多形Iの調製:方法2
5−(5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−3−イリデンメチル)−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−アミド41.3mgを25mlテトラヒドロフラン(THF)と5mlの水と混合した。その混合物をわずかに加熱し、その固体物を溶解した。得られたクリアーな溶液を、溶媒を蒸発させるために蓋のされていないガラス容器に回収した。溶媒の適当な量が蒸発するときに沈殿が生じる。その沈殿は、顕微鏡観察によって示された針状結晶からなっていた。その沈殿を濾過し、XRDによる解析の前にゆっくりとすりつぶした。そのすりつぶしは、得られた固形物の粒子サイズを小さくし、PXRDパターンでの好ましい結晶配向の効果を減らす。PXRDの結果は、その個体物は純粋な多形Iであることを示した。
多形IIの調製
5−(5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−3−イリデンメチル)−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−アミド約6mgを少なくとも20mlのメタノールに溶解し、透明な溶液を得た。わずかな加熱が固体の溶解を容易にするのに適当であろう。このメタノール溶液を室温で冷却し、ゆっくりと乾燥するまで蒸発させた。メタノール少量(−2mL)を添加して、固形の一部を溶解した。残存した結晶は多形IIであった。
【0066】
これまでの記述より、当業者は容易に本発明の必須の特徴を理解することができ、そして本発明の精神および範囲から離れることなく、当業者は過度の実験を要さず様々な用途や条件に適応するために本発明の様々な変化や修正をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、5−(5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−3−イリデンメチル)−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−アミドの多形I(型I)および多形II(型II)の粉末X線回折(PXRD)パターンである。
【図2】図2は、5−(5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−3−イリデンメチル)−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−アミドの多形I(上のスペクトル)および多形II(下のスペクトル)のIRスペクトルの高および中波長領域で測定した赤外(IR)透過スペクトルである。
【図3】図3は、5−(5−フルオロ−2−オキソー1,2−ジヒドロ−インドール−3−イリデンメチル)−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボン酸(2−ピロリジン−1−イル−エチル)−アミドの多形I(上のスペクトル)および多形II(下のスペクトル)のラマンスペクトルの高および中波長領域で測定したラマンスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

実質的に多形I型を含まない。
【請求項2】
式Iの化合物:
【化2】

実質的に多形II型を含まない。
【請求項3】
図1に示されるPXRDパターンを有する型IIの請求項1の化合物。
【請求項4】
図1に示されるPXRDパターンを有する型Iの請求項2の化合物。
【請求項5】
式Iの化合物の多形Iを含む組成物:
【化3】

ここで、多形Iを前記組成物中に約85重量%以上含む。
【請求項6】
多形Iを前記組成物中に約90重量%以上含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
多形Iを前記組成物中に約95重量%以上含む、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
多形Iを前記組成物中に約99重量%以上含む、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
式Iの化合物の多形IIを含む組成物:
【化4】

ここで、多形IIを前記組成物中に約85重量%以上含む。
【請求項10】
多形IIを前記組成物中に約90重量%以上含む、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
多形IIを前記組成物中に約95重量%以上含む、請求項9記載の組成物。
【請求項12】
多形IIを前記組成物中に約99重量%以上含む、請求項9記載の組成物。
【請求項13】
式Iの化合物の多形:
【化5】

ここで、前記多形は、
(a)酸性水性溶液中で前記化合物を溶解し;
(b)前記水性溶液を塩基性化し、それによって多形II型を実質的に含まない前記化合物を沈殿させ;そして
(c)沈殿した前記化合物の多形I型を分離する、
によって調製される。
【請求項14】
式Iの化合物の多形:
【化6】

ここで、前記多形は、
(a)水素結合を形成しない極性有機溶媒中に前記化合物を溶解し;
(b)前記極性有機溶媒を蒸発させ、それによって多形II型を実質的に含まない前記化合物を沈殿させ;そして
(c)沈殿した前記化合物の多形I型を分離する、
によって調製される。
【請求項15】
式Iの化合物の多形:
【化7】

ここで、前記多形は、
(a)水素結合を形成する極性有機溶媒中で前記化合物を溶解し;
(b)前記極性有機溶媒を蒸発させ、それによって多形I型を実質的に含まない前記化合物を沈殿させ;そして
(c)沈殿した前記化合物の多形II型を分離する、
によって調製される。
【請求項16】
前記水素結合を形成しない極性有機溶媒がTHFである、請求項14の方法により調製される多形。
【請求項17】
前記水素結合を形成する極性有機溶媒がメタノールである、請求項15の方法により調製される多形。
【請求項18】
請求項1または2のいずれかの化合物、および製剤的に許容される担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項19】
プロテインキナーゼの触媒活性を調整する方法であって、前記プロテインキナーゼを請求項1または2のいずれかの化合物と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項20】
前記プロテインキナーゼが、リセプターチロシンキナーゼ、非−リセプターチロシンキナーゼおよびセリン−トレオニンキナーゼからなる群から選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
生物内のプロテインキナーゼ関連疾患を治療または予防する方法であって、請求項1または2のいずれかの化合物、および製剤的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物の治療的に有効量を前記生物に投与することを含む、前記方法。
【請求項22】
前記プロテインキナーゼ関連疾患が、リセプターチロシンキナーゼ関連疾患、非−リセプターチロシンキナーゼ関連疾患およびセリン−トレオニンキナーゼ関連疾患からなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記プロテインキナーゼ関連疾患が、EGFR関連疾患、PDGFR関連疾患、IGFR関連疾患、c−kit関連疾患およびflk関連疾患からなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記プロテインキナーゼ関連疾患が、白血病、脳の癌、非小細胞肺癌、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、グリア芽細胞腫、肺癌、膀胱癌、頭部癌、頚部癌、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、神経膠腫、結腸直腸癌、泌尿器癌および消化管間質腫からなる群から選択される癌である、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記プロテインキナーゼ関連疾患が、糖尿病、自己免疫異常、過剰増殖疾患(hyperproliferation disorder)、再狭窄、線維症、乾癬、フォンヘペルーリンドー病(von Heppel-Lindau disease)、変形性関節症、リウマチ様関節炎、脈管形成、炎症性疾患、免疫疾患および心血管疾患からなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記生物がヒトである、請求項21記載の方法。
【請求項27】
請求項1または2のいずれかの化合物および製剤的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物を投与することを含む、コンパニオン動物の癌の治療方法。
【請求項28】
前記コンパニオン動物がネコまたはイヌである、請求項27記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−518755(P2006−518755A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503796(P2006−503796)
【出願日】平成16年2月23日(2004.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/005281
【国際公開番号】WO2004/076410
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
PYREX
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】