説明

ピース集合体、及びピース配列計算システム

【課題】実在するピース集合体を用いて、任意の様々な完成画像に組み合わせることのできる技術と共に、ピースの配列表の提供の対価を課金する技術を提供する。
【解決手段】複数の種類の模様などが記載されたピースを配列して全体として所望の画像を構成するピース集合体とピース集合体の配列表を出力する配列計算装置とから成るピース配列計算システムを提供する。本発明のピース集合体は、各ピースの画像面に模様等を記載すると共に識別符号を付与し、使用者が、識別符号に基づく配列表や完成画像に従って各ピースを配列することで完成画像を構成できるようにする。配列計算装置1には各ピースに記載された模様などをピース画像データとして格納したピース画像データベース16、原画像データ入力手段、ピースに対応させて原画像を分割する原画像データ分割手段、分割された領域画像データとピース画像データとを比較する画像比較手段、全体で最適な各ピースの配列を決定するピース配列決定手段、配列結果出力手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のピースを配列して全体として所望の完成画像を構成するピース集合体と、その配列表を出力するシステム、配列表に関する課金システム、それらの処理方法に関し、より詳しくは一般的な模様や文字を記載したピースから完成画像を構成する技術に係る。
【背景技術】
【0002】
ジグソーパズルは周知のように1枚の完成画像をパズルの形状に分割して切断し、外縁の凹凸の形状や各ピースに描かれた画像の一部を頼りにして組み合わせていく。従って、1つのパズルセットから完成する完成画像は1種類だけであり、任意の画像を組み合わせることはできない。
【0003】
また、このような特性から、ジグソーパズルは店頭で販売される時点で、どのような画像が完成するかが決まっており、購入者は好みの完成画像のパズルセットを購入する。任意の完成画像のジグソーパズルを楽しみたい場合には、オーダーメイドのサービスが提供されており、それを利用することもできるが、その場合でも一度製作した完成画像は変えることができない。
【0004】
さらに、従来のジグソーパズルでは一度完成させると、二度目に完成させる作業は、一度目と同じ繰り返しになるため、作業の楽しみや、完成画像への期待感などが損なわれてしまう。多くのユーザは一度完成させると、分解せずにそのまま展示することなどが多かった。
【0005】
一方、様々な写真を組み合わせて、その写真とは異なる完成画像を作り上げる技術が知られている。フォトモザイクと言われる当該技術は、例えば特許文献1に開示されている。これによれば、目的とするターゲットイメージをタイル領域に分割して、そのタイル領域と様々な写真とを比較して類似するものを選択、配列し、全体でその配列を見るとターゲットイメージに近似したモザイクイメージに見えるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3090924号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術に鑑みて創出されたものであり、実在するピース集合体を用いて、任意の様々な完成画像に組み合わせることのできる技術と共に、ピースの配列表の提供の対価を課金する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、原画像(ターゲットイメージ)に近似した完成画像を作ることを目的とするが、その原画像は、特定のものでなく、任意のものを選ぶことができ、それを限られた数のピース集合体によって成立させることができる。
例えば300ピースは、ジグソーパズルとしては、比較的少ない数のピース数であるが、本発明のピース集合体では、300ピースを組み立てて、任意の人間の顔として認識させることが可能である。
【0009】
一人一人の人間の顔は、頬骨の位置や口や目の形、鼻の大きさや形のように、微少な違いやニュアンスを持っており、それら個々の顔を表現した本発明のピース集合体による完成画像は、それを見る人の差異認識力と記憶力によって、特定の人間の顔として認識できる。本来、このような表現を限られたピースで達成するのは困難なことであるが、本発明はそれを可能にしており、いままでにない魅力を持ったジグソーパズルを提供するものである。
【0010】
本発明は、ジグソーパズルを1つの応用例とする次のようなピース集合体を提供することができる。
すなわち、予め複数の種類の模様や文字(以下、模様等)が記載された複数のピースを配列して全体として所望の完成画像を構成するピース集合体であって、各ピースの画像面には、種類毎に少なくとも色相、彩度、明度のいずれかが異なる模様や文字を記載すると共に、ピースの種類毎や、全てのピース毎に異なる識別符号を付与し、使用者が、可変的な画像入力情報に基づいて生成された識別符号の配列表に従って各ピースを配列して完成画像を構成することができるようにする。また、可変的な画像入力情報に基づいて生成された配列に従った完成画像を参照して各ピースを配列し、この識別符号の配列表によって正解を確認できるようにしてもよい。
【0011】
上記のピース集合体において、各ピースが平板状の部品から成り、その画像面を一面に構成する一方、その反対面にその識別符号を記載する構成でもよい。
【0012】
上記各ピースがジグソーパズルのピースであって、他の各ピースと外縁部の凹凸により組み合い可能な構成でもよい。従来のジグソーパズルと同様に、完成時の数が特定されている構成でも、あるいは完成画像に合わせて使うピース数が可変する構成でもよい。各ピースの形状が同一であって、少なくとも2方向への回転が可能な構成でもよい。
【0013】
上記の各ピースの画像面が、ピース内で均一又は所定の向きに変化する色相、彩度、明度のいずれかを有するパターン画像である構成でもよい。
【0014】
上記の各ピースの画像面の模様又は文字が色相、彩度、明度のいずれかについて所定の向きに変化している構成において、識別符号にもその向きの情報を含ませると共に、配列表にも各ピースの配列と向きとの情報を記載しておくことで、使用者が各ピースの向きを配列表の指示に合わせて配列できるようにしてもよい。ここで、識別符号に向きの情報を含ませる方法として、識別符号を記入する向きで変化の向きを表してもよいし、識別符号中に向きを示す矢印などの記号を入れてもよい。
【0015】
また、上記の各ピースがジグソーパズルのピースであって、他の各ピースと外縁部の凹凸により組み合い可能であると共に、画像面の模様や文字が、識別符号として機能する構成でもよい。
【0016】
上記各ピースの画像面が、それぞれ独立した著作物であって、各ピースのピース画像データを所定の演算式によって演算したときに、色相、彩度、明度の少なくともいずれかが、所定の分布となるように異なる画像を各ピースに用いる構成でもよい。著作物としては、例えば、アニメのキャラクタや、顔写真、絵画などを用いることができる。
【0017】
本発明は上記のピース集合体を用いる次のようなピース配列計算システムを提供することもできる。
すなわち、上記ピース集合体と、そのピース集合体の配列結果を出力する配列計算装置とから成るピース配列計算システムであって、配列計算装置には、各ピースに記載された模様や文字の画像をピース画像データとして格納したピース画像データベースと、完成画像の元となる原画像データを入力する原画像データ入力手段と、その原画像データを、ピースを配列した時に各ピースに対応する領域の領域画像データに分割する原画像データ分割手段と、その領域画像データと各ピースのピース画像データとを所定の比較値を用いて比較する画像比較手段と、全てのピースに係る比較値を入力して所定の演算式により最適な各ピースの配列を決定するピース配列決定手段と、決定された配列をその識別符号を用いて配列表データとして出力するか、該決定された配列に従った完成画像を出力するか、の少なくともいずれかの配列結果を出力する配列結果出力手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
上記の画像比較手段において、領域画像データの各領域画像上の1以上の測定点と、各ピースの画像面上の同位置の測定点とを対照し、各点における色相、彩度、明度の少なくともいずれかに係る値の差を前記比較値として算出する構成でもよい。
【0019】
上記の画像比較手段において、領域画像と、各ピースの画像面とを、配列可能な角度分だけ順次回転させるという制約下で、その画像の色相、彩度、明度のいずれかについての変化の向きを出来る限り揃え、その状態で前記比較値を算出するようにしてもよい。
この比較値の算出の結果、各ピースを所定の向きに変化させる場合に、識別符号にもその向きの情報を含ませておき、上に記載の画像比較手段が、各ピースの画像面を回転させた時の回転角度の情報を、各ピースの配列と共に前記配列表に記載して出力する構成でもよい。
【0020】
上記のピース配列決定手段が、画像比較手段において算出された比較値について、2つのピースを抽出した時の比較値と、それらのピースを交換した時の比較値とを比べて、後者の方がピースの画像面と対応する領域画像とが近似しているときにはそれらのピースを交換する処理を行い、この処理をすべての組のピースについて繰り返すことで、全体として最適な各ピースの配列を決定する構成でもよい。
【0021】
上記ピース配列計算システムにおいて、配列計算装置の原画像データ入力手段が、ユーザ端末からネットワーク回線を通じて送信された原画像データを受信すると共に、配列結果出力手段が、そのユーザ端末に向けてネットワーク回線を通じて配列表データ、又は完成画像の少なくともいずれかを送信する構成でもよい。
【0022】
上記画像面の模様や文字が、前記識別符号として機能し、配列結果出力手段が、完成画像を出力する構成でもよい。
【0023】
本発明は、上記の配列結果を出力する配列計算装置として提供することもできる。
また、次のような配列計算処理方法として提供することもできる。まず、あらかじめその各ピースに記載された模様や文字の画像をピース画像データとして格納したピース画像データベースを備えておき、次の各ステップを有する。
(S1) 原画像データ入力手段が、その完成画像の元となる原画像データを入力する原画像データ入力ステップ
(S2) 原画像データ分割手段が、その原画像データを、そのピースを配列した時に各ピースに対応する領域の領域画像データに分割する原画像データ分割ステップ
(S3) 画像比較手段が、その領域画像データとその各ピースのピース画像データとを所定の比較値を用いて比較する画像比較ステップ
(S4) ピース配列決定手段が、全てのそのピースに係る比較値を入力して所定の演算式により最適な各ピースの配列を決定するピース配列決定ステップ配列結果出力手段が、決定された配列をその識別符号を用いて配列表データとして出力するか、該決定された配列に従った完成画像を出力するか、の少なくともいずれかの配列結果を出力する配列結果出力ステップ
【0024】
また、次のようなピース配列計算課金システムを提供することもできる。
本システムでは、予め複数の種類の模様や文字が記載された複数のピースを配列して全体として所望の画像を構成する上記同様のピース集合体と、使用者からの配列表の注文に対して課金額を計算すると共に、そのピース集合体の配列結果を出力する配列計算課金装置とから成る。
配列計算課金装置は、上記ピース画像データベースと、あるユーザ端末からネットワーク回線を通じて送信されたその完成画像の元となる原画像データを受信する原画像データ入力手段と、上記同様の原画像データ分割手段、画像比較手段、ピース配列決定手段に加え、ユーザ端末に向けてネットワーク回線を通じて決定された配列を該識別符号を用いて配列表データとして送信するか、該決定された配列に従った完成画像を送信するか、の少なくともいずれかの配列結果を送信する配列結果出力手段、課金データベースにそのユーザ端末の使用者情報と、配列結果の対価情報とを記録する課金記録手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、上記構成を備えることにより次のような効果を奏する。
すなわち、各ピースの画像面に記載された模様や文字によって生じる、色相や彩度、明度の変化を利用して、所望の完成画像を構成することができる。特に、各ピースに識別符号を付与することで、識別符号を手がかりに組み合わせて画像を完成させることができる。
【0026】
このようなピース集合体では、各ピースのセットは共通にしながら、配列表次第で所望の画像を完成させることができる。例えばジグソーパズルに適用すれば、毎回異なる画像に完成させることもでき、何度も組み合わせを楽しむことができるようになる。
また、配列計算装置により自分の画像でも自動的に配列表を生成することができる上、完成画像は、元になる原画像をモザイク化したものであるため、完成の予想がつかず、遊技性の高い製品を提供することができる。
【0027】
さらに、本発明の特徴である配列表の提供に課金することで、組み合わせ自由なパズルを一度提供した後に、継続的にユーザに課金を行う装置と方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明システムの全体説明図である。
【図2】本発明の処理方法の流れ図である。
【図3】本発明に係るピースの説明図である。
【図4】本発明に係るピースの説明図である。
【図5】本発明に係るピースの回転に係る説明図である。
【図6】本発明に係る領域画像とピース画像との対応を示す説明図である。
【図7】本発明に係るピースの説明図である。
【図8】本発明に係るピース集合体の説明図である。
【図9】本発明に係る画像比較部の処理の詳細な流れ図である。
【図10】本発明に係るピースの回転に係る説明図である。
【図11】本発明に係るピースの回転に係る説明図である。
【図12】本発明に係るピースの識別符号に係る説明図である。
【図13】本発明の配列計算装置の出力として得られる完成画像の一例である。
【図14】本発明の配列計算装置の出力として得られる完成画像の一例である。
【図15】本発明に係る課金システムの全体説明図である。
【図16】本発明の課金システムにおける課金処理方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
図1には本発明の代表的な実施例として、本発明の配列計算装置(1)と、インターネット(2)、ユーザ端末(3)によるシステムの構成例を示す。本発明のピース集合体は、以下ではジグソーパズルを例に説明する。
【0030】
まず、ユーザ端末(3)においてユーザが可変的な画像入力情報である所望の原画像のデータ(30)を取り込んでインターネット(2)を通じて配列計算装置(1)に送信する。例えば、販売するジグソーパズルのパッケージに、アクセスするサーバである配列計算装置(1)のアドレスを記載した紙片を封入しておき、購入したユーザがそのアドレスに公知のウェブブラウザを用いてアクセスするようにすればよい。
【0031】
配列計算装置(1)では、ユーザ端末(3)に対して、画像の送信を促すメッセージを表示し、ユーザ端末(3)では画面に表示される「アップロード」ボタンを押下することで、原画像データ(30)を指定し、配列計算装置(1)に送信を開始する。
原画像データ(30)は、配列計算装置(1)のCPUに設ける原画像データ入力部(11)が受信し、図示しない外部記憶装置に格納する。
【0032】
図2に示すように、本発明の最初の処理は原画像データ入力ステップ(S10)である。本実施例では、原画像データ入力ステップ(S10)はユーザ端末(3)からデータを受信する処理としたが、例えば本装置(1)に備えた外部記憶装置内から原画像データ(30)を読み込む処理でもよいし、接続したイメージスキャナやデジタルカメラで原画像データ(30)を取得する処理でもよい。
【0033】
次の原画像データ分割ステップ(S11)に進む前に、ここでは原画像データ(30)を後段の処理で扱いやすくするために画像補正する処理を行う。
まず、本実施例では完成画像として単色の画像出力を行うため、原画像データ(30)からカラー情報を除去し、グレースケールの画像に変換する。この変換処理は、本装置(1)のCPUに備えた図示しない画像補正処理部によって行われる。グレースケールへの変換技術は公知であるから説明を省略する。最も薄い部分を255(白)、最も濃い部分を0(黒)とする256階調のグレースケールにする。
【0034】
完成画像において特徴的な部分が再現されるように、輪郭の強調処理を施してもよい。画像補正処理部は公知のコントラストの強調処理を実行して、黒い部分はより黒く、白い部分はより白くする。例えば、0〜30の値を取る画素は0、225〜255の値を取る画素は255、というように変換する。
【0035】
さらに、画像補正処理部において、特徴的な小さな部分を強調する処理を行ってもよい。具体的には、原画像データ(30)が人物写真であるとき、目の瞳孔や眉毛、歯などは小さい部分であるとしても、顔の特徴を際だたせる部分である。
そこで、所定数以下の画素の集合、例えば30画素以下の領域が、その周辺部分よりも暗い場合には、その領域をより暗くする。逆にその部分が周辺よりも明るい場合には、さらに明るくする。本処理によって、小さな領域の特徴を強調することができる。
【0036】
以上のような補正処理を行った後、ヒストグラムを計算して、原画像データ(30)のグレースケールのレベル調整を行ってもよい。
ところで、本発明では完成画像をカラーにしてもよく、その場合には色の三要素である色相、彩度、明度を用いて、それぞれのレベル調整を行ってもよい。カラー画像におけるコントラストの調整処理や、カラーバランスの調整処理についても公知であり、画像補正処理部で適宜これらの処理を実行することができる。
また各パラメータは8ビット(256階調)の値に限らず、8階調、16階調など小さくして処理の高速化を図ってもよい。もちろん、16ビットなどより精細なパラメータを用いても良い。
本実施例では、グレースケールを用いているため、以下では明度のみを用いて説明を続ける。すなわち、明度0は黒、明度255が白である。
【0037】
次に原画像データ分割ステップ(S11)について説明する。原画像データ分割部(12)は、外部記憶装置に格納したピース画像データベース(16)からピース画像のサイズを取得する。すなわち、完成画像は、各ピースの組み合わせによって再現されるため、原画像(30)も各ピースの大きさに合わせて分割する。
予め各ピースの大きさが決まっている場合には、ピース画像データベース(16)を照会することなく、分割処理を行っても良い。
【0038】
本実施例では入力する画像は縦131画像、横95画素で、1つのピースは6画素四方である。完成時に縦21ピース、横15ピースから成る。なお、ここで縦横ともに5画素の余裕があるのは、前記した小さな領域の特徴を強調する際に、その領域を拡張する余地を残しているためである。
【0039】
本ステップ(S11)により、原画像データ(30)は315ピースの領域画像データ(31)に分割される。各ピースの領域画像データは、例えば変数target[row][col]のように、行列で表す315個のデータとしてメモリ又は外部記憶装置に格納される。
【0040】
以上の分割処理(S11)が完了すると、本発明の要部である画像比較ステップ(S12)以下に進む。
画像比較ステップ(S12)において画像比較部の処理は、まず上記の領域画像データをピースの態様に合わせて正規化する処理である。この説明のためにはまず本実施例におけるピースの態様について説明する必要がある。
【0041】
本実施例のピースは、図3(a)〜(d)に示すように、ピース内が均一に白のピース(41)と、均一に黒のピース(44)の他、明度がピース内で変化するピース(42)(43)を含んでいる。そして、図4に示すように、外縁部(45a)の凹凸が全てピース(45)の中心(45b)に対して点対称に形成され、左右上下のピースと組み合うようになっている。
【0042】
ピース(45)の外縁部(45a)をこのような凹凸形状としていることによって、本実施例のピースは90度ずつ回転させても、他のピース、例えば隣接するピース(46)とそのまま組み合わせることが可能になっている。
この結果、図5に示すように、明度が変化するピース(42)(43)の場合には、回転させることで、時計で5時方向に向かって濃くなる第1状態(a)から、90度回転させた8時方向に濃くなる第2状態(b)、11時方向の第3状態(c)、2時方向の第4状態(d)の複数の模様として利用することができる。
【0043】
このようなグラデーション模様をピースの模様に用いている意味は、上記領域画像データ(31)における明度の変化をできるだけ忠実に再現することにある。例えば、図1に示した領域画像データ(31)の右上の領域画像の拡大図を図6(a)に示す。この領域画像(a)では領域内の左下に少しだけ人物の頭部が見えており、この再現にはピース(42)を90度回転させた図6(b)の状態が適当である。
【0044】
このようにピースを回転しても配列できるように構成すれば、ピースの種類を少なくしながら、領域画像データとの近似性を高くすることができ、忠実な原画像の再現に寄与する。
なお、本発明ではピースの形状は正方形に限られず、90度回転した場合に配列不可能な場合もある。このような場合には配列可能な角度だけ回転させる制約を設けておけばよい。例えば、ピースが長方形で、180度回転した場合だけ組み合い可能な構成では、正立と倒立の2通りの配置で変化を利用すればよい。
さらに、ピースが正6角形の場合には、60度ずつ回転させることもできる。この場合には、ピース上のグラデーションの種類を少なくしても、原画像の再現性を高くすることができる。
【0045】
本実施例では、90度の回転に加えて、原画像に近い完成画像を得るために、グラデーションの向きを3種類設けている。この図を図7に示す。図7(a)では5時の向きに向かって漸次濃くなり、(b)では4時の向き、(c)では3時の向きである。
すなわち、各ピースの変化の向きは30度ずつ変化しており、この3種類と、上記した90度の回転を組み合わせることで、30度ずつ全ての向きのグラデーションを表すことができる。
【0046】
さらに、図3に示したように、グラデーションの程度も変えており、ピースの左半分が白く、右半分がやや黒くなるピース(42)や、左半分もやや黒く、右半分は更に黒いピース(43)などがある。具体的には、3時方向、4時方向、5時方向にそれぞれ濃くなる度合いを増すようにしてあり、各7段階ある。最も度合いが高いピースはピース内でのコントラストが高いことになる。
加えて、ピース上の平均の明度を15段階で変化させている。
全てのピースを並べたパズルセットの全体図を図8に示す。
【0047】
本発明の特徴の一つとして、このように単調なパターンとしてパズルセットを提供することで、視覚的に興味深く、パズルの遊技性を高めることにも寄与する。特に、グラデーションを活かした配列でパズル商品を提供することが好ましい。
あるいは、先に本発明技術を用いて1つの完成画像を組み合わせた状態でユーザに提供し、ユーザが所望の完成画像を組み合わせるときには、それを崩し、再度作業にかかることで、画像の変化の様子を楽しむこともできる。
【0048】
本発明では、ピースの画像面に表示されるのは上記のようなグラデーションのパターンに限らず、模様や文字でもよい。模様には、幾何学模様のような抽象的な図柄でもよいし、イラスト・絵画、写真などでもよい。各ピースにそれぞれ異なるキャラクタを描いてもよい。文字は全ての言語の文字、文字様の柄などでもよい。
また、カラー画像を用いる場合には、上記のような明度の変化だけでなく、色相の変化、彩度の変化で分類してもよい。これらの3要素を組み合わせて分類してもよい。
【0049】
再び、画像比較部(13)の処理(S12)に説明を戻す。図9は該処理の詳細なフローチャートである。
画像比較部(13)は、外部記憶装置のピース画像データベース(16)を読み出し、上記したようなピースの画像面の分類、特に明度の変化の向きの種類を取得する。すなわち、上記例で言えば、3時、4時、5時の向きである。0時を0度として時計回りに表すと、90度、120度、150度になる。これらは、ピース画像データベース(16)から読み出さずに、システムの標準仕様として予め定義しておいてもよい。
【0050】
画像比較部は、全ての領域画像データ(31)の明度の変化を検出する。この検出は公知の画像処理方法を用いることが出来るが、例えば、4角形であれば、中心を通る直交軸で区分される4ブロックの平均明度を比較して、どの向きに明度が変化しているかを検出することもできる。(領域画像データの明度変化検出ステップ:S121)
この向きが上記90度ないし150度の範囲に最も近くなるように、該領域画像データ(31)を回転させる。この回転も90度単位であり、回転角度を領域画像データ毎に記録しておく。(領域画像データ回転ステップ:S122)
【0051】
90度に最も近い角度を75度〜105度、120度に最も近い角度を105度〜135度、150度に最も近い角度を135度〜165度とすれば、全ての領域画像データの変化の向きは、75度〜165度の範囲内(時計では2時半〜5時半の向き)に収まることになる。
また、言うまでもなく各ピース画像もこの範囲内の向きを持っている。
【0052】
この処理をモデル化して表すと図10のようになる。処理前の領域画像データ(310)が図10(a)のような画像であり、4つのタイル(311)〜(314)に区分されるとする。
各領域画像で、第1タイル(311)は右下に濃い部分(311a)があるため変化の向きは概ね110度程度であり回転の必要はない。第2タイル(312)は左下に濃い部分(312a)があり、これを右下に動かすために270度回転させる。同様に第3タイル(313)は90度の回転、第4タイル(314)は180度の回転である。
この回転処理(S122)により図10(b)では全ての領域画像が、右下向きに変化する画像となっている。
【0053】
本発明では、以上のように出来る限り向きを揃えるように回転させる。出来る限りという条件が伴うのは、上述の通り、ピースの形状によって配列可能な回転角度が決まっているからである。本実施例では90度であるが、この角度は実施態様によって様々である。また、ピースの変化の向きの種類によっても、どの程度近似したものが得られるかは異なる。そこで、回転角度の制約の下で可能な限り近似するように回転することになる。
【0054】
ピース画像と領域画像の変化の向きが揃った段階で、両者の比較処理を行う。全てのピース画像と、領域画像の画像マッチングをとって最大のマッチングが得られる組み合わせを見つけることは、公知の画像認識技術でも可能である。本発明ではコンピュータを用いるため、全てのピース画像の位置の組み合わせを変化させた場合における、領域画像との画像マッチングの値を積算して、最大のマッチングとなる場合のピース画像の位置を本発明の配列とするだけでもよい。
【0055】
しかし、ピース数が多いと計算量が膨大になるため、本実施例では好適な計算方法を示す。それは、まずピース画像を何も選抜すること無しに、適当な順番で該領域画像データと重ねて配置してみる。(もちろんコンピュータ処理上行うだけで、実体的に配置することはない。)
その場合、例えば図11のように領域画像データの態様が考慮されないので、(a)では 領域画像A(320)の画像は右向きの変化であるにもかかわらず、ピース画像A(321)は下向きの変化の画像が重ねられている。(b)では逆に領域画像B(322)は下向きであるのに対して、ピース画像B(323)は右向きである。
【0056】
そこで、ピース画像と領域画像の比較値を算出する。2つの画像の比較する算出方法は極めて多数の技術が提供されており、これらを任意に使うことができるが、本実施例では、3点の明度を比較する方法を用いる。3点とは、図中に示すようにタイルの中心(C)、中央右端(X)、中央下端(Y)である。
【0057】
各点での明度の差が大きいほど両者のミスマッチ値が高いことになるから、例えば領域画像A(320)の中心の明度をAtc(A tile central)、中央右端・中央下端の明度をそれぞれAtx(A tile x),Aty(A tile y)とする。また、ピース画像A(321)の各位置の明度をそれぞれAsc,Asx,Asyとする。
さらに、領域画像B(322)、ピース画像B(323)の各地点における明度も同様に表して、Btc,Btx,Bty,Bsc,Bsx,Bsyとする。
【0058】
図9に示すように、これらの値を用いて、ピース画像A(321)を領域画像A(320)に重ねている時に、次の計算によりミスマッチ値を求めることができる。(S123)
(式1)
AatA=(Atc-Asc)×(Atc-Asc)+(Atx-Asx)×(Atx-Asx)+(Aty-Asy)×(Aty-Asy)

同様に、ピース画像B(323)を領域画像B(322)に重ねている時(S124)
(式2)
BatB=(Btc-Bsc)×(Btc-Bsc)+(Btx-Bsx)×(Btx-Bsx)+(Bty-Bsy)×(Bty-Bsy)
となる。
【0059】
さらに、ピース画像を入れ替えた場合には、ピース画像B(323)を領域画像A(320)に重ねている時(S125)
(式3)
BatA=(Btc-Asc)×(Btc-Asc)+(Btx-Asx)×(Btx-Asx)+(Bty-Asy)×(Bty-Asy)

ピース画像A(321)を領域画像B(322)に重ねている時(S126)
(式4)
AatB=(Atc-Bsc)×(Atc-Bsc)+(Atx-Bsx) ×(Atx-Bsx)+(Aty-Bsy)×(Aty-Bsy)
となる。
【0060】
そして、ピースA・Bがそれぞれ領域A・Bにある場合と、それぞれ領域B・Aにある場合とのミスマッチ値の合計を算出(S127)(S128)し、比較(S129)する。
具体的には、
(式5)
((AatB+BatA)<(AatA+BatB))ならば、ピースA・Bの位置を入れ替え
の処理を行う。
【0061】
本実施例では、以上のような比較処理(S12)を繰り返し、全てのピースの組み合わせについて、順にミスマッチ値を計算して位置の交換を行う。すべての組み合わせについて比較が完了した段階で、最適なピースの配列(32)が決定(S13)される。
【0062】
具体的な比較のプログラムは次の表1の通りである。
【表1】

【0063】
なお、上記においては3点の測定点を用いたが、本発明では測定点の数は1つ以上で数を問わない。本実施例であれば、右下に1つでもある程度有効な比較を行うことができる。また数が多いほど好適な比較が行えるので、中央及び4隅などでもよい。
【0064】
配列決定ステップ(S13)において、ピース配列決定部(14)は、決定された配列と共に、各ピースを、配置が決まった領域画像の回転角度に一致させてピースの回転角度を定義する処理を行う。
すなわち、図10で説明したように、比較処理(S12)のために領域画像を回転させていたが、このまま対応するピースを並べても、領域画像が不適切な回転をしているため完成画像は得られない。
そこで、領域画像の回転角度、例えば第2タイル(312)は270度回転させていたので、この第2タイルの位置に配置されたピース画像は−270度回転させて、正しい向きに改めなければならない。
本発明では、実在するピースでユーザが並べる際にピースの向きを回転させることになるので、本装置(1)は向きの情報を一緒に出力すれば良いことになる。
【0065】
ピース配列決定部(14)で回転すべき角度が定義されたら、最後に配列結果出力部(15)における配列結果出力ステップ(15)に進む。
ここでは、各ピースに付与した識別符号により配列表を出力する。識別符号の最も簡単な例はピースに通し番号を記載することである。
【0066】
ここで、配列結果出力部(15)は、配列結果に従って各ピース画像を組み合わせる画像処理を行い、完成画像データとして出力してもよい。本発明では、配列表のみ出力、完成画像のみ出力、両者をあわせて出力、のいずれの構成でもよい。
【0067】
図12には識別符号の表示方法の例を示す。図12(a)のように表面に模様を記載して、その裏面に番号を記載してもよい。また(b)のように表面に小さく番号を表示してもよい。識別できれば足りるから(c)のように記号でもよい。識別符号は、各ピース毎に全て固有である必要はなく、少なくとも模様の態様毎に識別できればよい。
【0068】
特に番号や文字などの場合には、その向きによってピースの向きをユーザが知ることができる。例えば、図12(a)で「132」が読める向きを0度として、配列表記載の指示と逆方向に指定角度回転させれば、裏返した時に、指示通りの向きとなる。例えば、-270度の場合には、時計回りに270度回せばよい。
なお、記号であっても図12(c)のようにある頂点に寄せて記載しておけば、記号の位置を揃えることで本来の向きに合わせることもできる。
【0069】
上記とは逆に、識別符号を配列可能な各方向から、あるいはその一部の方向から同様に見えるように記載してもよい。たとえば本実施例のパズルの場合には、図12(d)に示すように各配列時に正立する4つの向きの識別符号を記載し、正しい向きが使用者に分からないようにすることもできる。これによって、パズルの難易度が向上し、使用者が向きを調整する楽しみを得ることもできる。この場合の正解を確認するために、正しい配列結果の完成画像の表示と比較することもできる。
【0070】
なお、各ピースの裏面には識別符号だけでなく、図12(e)のように表面と同様の模様を記載してもよい。模様は濃淡や色彩を表面とは変化させてもよいし、同様でもよい。このように記載をすることで、識別符号を頼りに組み合わせて行く場合でも、徐々に画像が作られていく過程を楽しむことができる。
【0071】
配列結果出力部(15)の出力(33)方法は任意である。
一例として、各ピースの配列(行と列で表示)と向きを表2のように出力してもよい。
【0072】
【表2】

【0073】
あるいは、実際に配置したときのピースの輪郭を表示すると共に、各ピースに識別符号を記載する方法でもよい。この場合、視覚的なイメージが得られるので、ピースを探して順に組み合わせていく楽しみを得ることができる。
【0074】
上述した通り、配列結果として完成画像を出力(33)してもよい。本発明による完成画像の例を図13に示す。図上でみられるように、上記のような処理の結果として、ピース上のグラデーションや明度を活かし、各ピース上の模様を適切に回転させることで、比較的に少ないピース数でも個人が十分に識別出来る程度まで原画像を再現することができる。
なお、参考として完成画像データを配列表と共に出力したり、完成画像データのみを表示する構成でもよい。
【0075】
出力結果の配列表(33)はインターネット(2)を通してユーザ端末(3)に送信され、ユーザ端末(3)の画面に出力したり、プリンタから印刷する。
本構成によって、ユーザが原画像データ(30)をインターネットを通じて本装置(1)に送信することで、配列表(33)を入手することのできる一連のシステムが成立する。
【0076】
ユーザ端末(3)が携帯電話端末である場合など、端末上で完成画像データを十分に表示できない場合には、完成画像のイメージを送信する一方で、そのプリントアウト画像などを郵送して送付する方法を用いてもよい。
【0077】
上記の画像比較部(13)における計算式では明度のみを用いる構成を示したが、繰り返すように色相、彩度、明度を組み合わせて用いてもよい。また、ピース全体の明度の平均値やその他の統計値を用いて、それらによる比較を行ってもよい。
【0078】
上記実施例では、完成画像を表すために色の濃淡だけで表現する例を示した。すなわち、基本的にはグレースケールの画像であり、色彩を有する場合でも赤の濃さ、青の濃さ、のように固定色の濃淡で表現している。
しかし、本発明では完成画像をカラー画像とすることもできる。そのために、個々のピースごとに異なった色を表示したり、色の異なるそれぞれのピースに異なる明度を付与し、それらを配列することでカラーを表現できるようにしてもよい。
【0079】
各ピースの色を考慮する場合には、上記実施例における中心明度の情報に、色相の情報を加え、例えば緑の明度、青の明度、赤の明度の各情報を用いる。そして、各領域画像における中心点の各色相の明度と、比較対象のピースの中心点の各情報とを比較し、最も類似するものを選択すればよい。比較の方法は、公知の類似度の算出方法を用いることができるが、例えば各色相毎に明度の差の自乗を求めてその和が最も小さいものを選択する方法でもよい。
【0080】
上記では一般的なジグソーパズルを予定して、平板状の部品であるピースを用いたが、本発明に係るピースはいかなる形態でもよく、立方体や直方体等のブロック状のピース、ドミノゲームの駒、消しゴムなどでもよい。材料も紙、プラスチック、木、金属、布などいかなる素材でもよい。ぬいぐるみやクッションなどの弾力性のある部材をピースとしてもよい。
隣接するピースと配列できればよいので、必ずしも凹凸形状を有して組み合う必要もない。
【0081】
形状をブロック状にした場合は、識別符号をいずれか1面に表示し、残りの5面すべてに色相、彩度、明度のいずれかが異なる模様や文字を記載してもよい。配列表に従ってすべての識別符号が上になるように配置したあと、識別符号ごとに「上方向に2回転、その面を上にしたまま右方向に1回」というように個々のキューブの回転指示を与えることにより、上になる面を5面×4=20通りに変化させることができ、少ないピース数で、より正確な完成画像を提供することができる。
【0082】
識別符号を2面以上に表示して、例えばその対向面を完成画像を表現する面とすることもできる。識別符号を表示する面の色や模様などを変化させて、配列表中においてどの面の識別符号を用いるかを指定できるようにしてもよい。識別符号の文字種により、ある面は数字、ある面はアルファベット、ある面は記号やマークのように区別してもよい。
【0083】
また、1面を識別符号表示とし、残りの5面を、色相、彩度、明度のいずれかが異なる模様でありながら、ある面はモノトーンで、ある面はセピア色で、ある面は葉っぱなど自然界からとったパターンで、ある面は幾何学的な模様などにすることにより、使用者が好きなパターンを選んで完成画像を作るようにすることもできる。
また、モノトーンの画像を作ったあと、一部のブロックだけを回転させてセピアにするなど、組合せを楽しむこともできる。
【0084】
また本発明のピース集合体を300ピースの集合体を1組として提供する場合、使用者が同一又は異種のピース集合体の組を用いることにより、より精度の高いターゲットイメージを完成させることができる。例えば、同一の300ピースのパッケージを2組入手して600ピースのパズルとして組合せる場合、同一の識別符号が2個ずつになるが、本発明システムにおいてこれらを用いて配列表を出力できるようにしてもよい。
異種のピース集合体を用いることができるようにする場合には、各組毎に識別符号の表示方法を変化させるか、ピース集合体の全シリーズにわたって固有となる識別符号を付与するようにすればよい。
【0085】
なお、本発明をジグソーパズルとして提供する場合、1面のみに模様や文字を表示するのであれば概ね200ピース以上、特に300ピース以上が好ましい。完成画像において個人の顔の特徴を判断できるようにするためには一定数のピースがあることが望ましく、好適な例としては上記実施例の通りである。一方、ピース数が増えればより精密に原画像を再現できるが、システムにおける計算処理量が増加すること、使用者の完成までの時間が長くなりすぎるため、一般的には1000ピース以下、特に500ピース以下が好ましい。上記のように使用者の嗜好や能力にあわせて容易にピース数を増やせることも本発明の特徴である。
【0086】
さらに、完成時のピース数を可変にすることもできる。例えば、500ピースのジグソーパズル製品として販売しても、遊技時にはユーザの指定により、300ピース、400ピースで完成させることができる。あるいは300ピースの製品を複数組み合わせて、400、500ピースで完成させることもできる。
具体的には、上記の原画像データ分割ステップ(S11)において、原画像をユーザの指定したピース数に応じて分割することで実現される。
従来のジグソーパズルでは完成画像のピース数が決まっていたため難易度が決まってしまう難点があったが、本発明では用いるピース数をユーザに合わせて任意に変えることができるので、1つのジグソーパズルセットでもユーザの年齢やスキル、遊技時間に合わせて適宜ピース数の異なるジグソーパズルとして遊技することができる。
【0087】
本構成においては、用いるピースを明確に区別できるようにするため、画像面又は識別符号に分類可能な表示を行ってもよい。例えば、100ピース毎に、色を変えたり、特定の記号を付したり、キャラクタが表示される場合にはその登場するアニメの種類を変えたりするなど、ユーザが使用するピースか否かを容易に判別できるようにすることが望ましい。
また、同じ数のピースを使用する場合においても、ユーザの指定により、縦横比を変えて完成させることもできる。例えば、600ピースであれば、人物の顔だけを表現するときには横20ピース、縦30ピースで完成できるようにして、人物の全身像のように縦長の画像の場合には、横15ピース、縦40ピースで完成できるようにすることもできる。
【0088】
本発明で用いるピース画像の模様はそれぞれが1枚の写真、絵画等の著作物でもよい。ここでいう著作物とは、著作権法上の著作物に準じて、思想又は感情を創作的に表現した主に美術を指し、著作権法による保護の有無などは問わない。このような著作物は、ピース単体で鑑賞して楽しむことができる特徴がある。特にジグソーパズルのピースとすることで、各ピースの画像を楽しみながら配列することができ、外形を基準に配列する通常のジグソーパズルとは異なる遊技性を付与することができる。
【0089】
著作物を用いたピース画像の場合、上記実施例のように最適なグラデーション模様を用いることができないため、完成画像を再現するのに適したピースの集合が得られない場合がある。そこで、このような実施例では、ピース集合体を定める時に、各ピースのピース画像データを所定の演算式によって演算し、色相、彩度、明度の少なくともいずれかが、所定の分布となるようにピース画像を決めることが好ましい。
【0090】
具体的には、多数のピース画像候補について、上述した計算方法を含む任意の計算方法によって色相、彩度、明度のいずれかに係る値を算出し、その値が異なる分布となるようにピース画像を選択する。例えば、色相であれば赤、青、緑に近い各色相のものがそれぞれ含まれるようなピース画像を選択したり、彩度や明度では値が小さいものから大きいものまでが含まれるようなピース画像を選択する。
その際、それぞれ、1/3ずつ含まれるようにしてもよいし、想定される完成画像によって比率を変えることもできる。例えば色相において、顔写真を主な完成画像とする場合には、肌色の面積が広いので、肌色に近い白色ないし黄色の色相のピースを60%、髪の毛や目の色となる黒を20%、その他を20%、のように分布させてもよい。
【0091】
ピース画像に上記のような著作物を用いた場合などは、ピース画像だけで十分に各ピースを識別することができる。この場合、画像面以外に識別符号を表示することなく、ピース画像自体を識別符号として機能させてもよい。
すなわち、画像面の画像がそのまま識別符号であるから、ユーザはピース画像を見て各ピースを配列する。例えば、ピース画像がアニメのキャラクタや、顔写真、絵画などであれば、ユーザは配列表(この場合は、完成画像が配列表となる)を見て、各位置のキャラクタ等を認識し、当該ピースを探し、向きを合わせて配置する、という手順でパズルを組み立てることができる。
【0092】
本発明で用いるピース画像の模様は、一部又は全部を一定のルールで組み合わせると1枚のイラストや絵画、写真を構成するような画像でもよい。例えば、図14に示すように1枚の街頭のカラー写真を各ピースに分割してピース画像を作成してもよい。この場合には、分割したのと同じように組み立てれば元の街頭の写真(a)が完成し、本発明の結果得られる配列表に従えば、ユーザが望む任意の画像、例えば人間の顔を表現することができる。(b)と(c)は、(a)を500ピースに分割してヴィーナスと自由の女神の顔を作成した実例である(各ピースの形状は省略)。前者は通常のジグソーパズルとして色や柄を合わせることが楽しめ、後者の場合にはオリジナルな画像を表現できるユニークさや、予測しにくい完成画像の意外性を楽しむことができる。これにより極めて遊技性の高い製品が提供できる。
【0093】
最後に、本発明のピース配列計算装置(1)を用いた、配列表に対する課金方法とその装置構成につき説明する。上述したように、本発明によればピース上に記載しておく画像は、完成画像と関わらないので、まずピースだけを販売し、購入したユーザが所望の原画像を決めることになる。
そうだとすれば、例えば2画像までは無料で配列表を作成するサービスをインターネットで提供すると共に、追加で配列表を望むユーザにはこれを販売するビジネスモデルが成立する。このような販売方法は、従来のジグソーパズルでは不可能な方法であり、本発明のピース集合体によって初めて可能となるのである。
【0094】
そこで、図15に示すように、図1の本装置(1)に加えて、無料又は一定の対価を減額するクーポンなどの情報をユーザ端末(3)から受信する割引情報受信部(17)と、その割引情報の有効性を判定する割引情報有効性判定部(18)と、課金記録部(19)と、課金の履歴を格納する課金情報データベース(20)を備えた配列計算課金装置(1’)を提供する。
【0095】
本装置(1’)における処理の流れは図16の通りである。まず、パズル等の製品としてピース集合体を配布する。(ピース集合体配布ステップ:S21)
この製品に、所定回数は無料で配列結果出力のサービスを受けられるクーポン紙片を同封し、該紙片に割引情報としてユーザIDとパスワードを記載しておく。
この製品を購入したユーザはユーザ端末(3)から本装置(1’)の所定ウェブサイトにアクセスし、そこで割引情報を入力する。
【0096】
割引情報受信部(17)がこれを受信する(S28)と共に、配列結果出力サービスへのアクセスとして、上記と同様に原画像データ入力ステップ(S22)、原画像データ分割(S23)、画像比較(S24)、ピース配列決定(S25)、配列結果出力(S26)の各ステップを処理する。
その後、上記の割引情報の有効性を割引情報有効性判定部(18)で判定する。
【0097】
具体的には、外部記憶装置に格納しておくユーザIDとパスワードの情報と照合し、その情報が正しいか、またこれまでのサービスの利用回数を照合し、割引可能な場合には割引情報に対応する割引金額(無料も含む)を求める。
【0098】
そして、課金記録部(19)が外部記憶装置に備えておくサービスの利用料金から、該割引金額を減算し、会員情報(IDやパスワード)と共に、課金情報データベース(20)に記録する。無料の場合には記録しなくてもよい。
作成された課金情報(20)は、クレジットカード会社への請求や、銀行引き落としなどの既存の決済システムに送信して課金が完了する。
【0099】
上記課金システムによれば、製品にIDとパスワードを同封しておくことにより、製品価格に配列結果出力サービスの料金を付加して請求することが可能であり、購入したユーザが最初は支払の手続をとらずに製品を使用することができる。
一方、最初の利用をする際にもインターネットへのアクセスを求めることで、会員登録などを促進することが可能であり、本サービスの運営者においても顧客情報を集めることができる。
【0100】
さらに、登録会員には無料で特別な配列表を配布するなどのサービスの提供が可能となり、パズル製品を継続的に使用させて顧客との関係を維持することにも寄与する。
登録会員同士で割引情報の交換を行わせたり、割引情報を記載したクーポンを販売してプレゼントに利用させるなど、会員同士の交流の促進の手段にも成りうる。
【0101】
以上の課金方法において、必ずしも割引情報を用いず、単に配列表の出力の対価を課金するシステムとして提供してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 配列計算装置
2 インターネット
3 ユーザ端末
11 原画像データ入力部
12 原画像データ分割部
13 画像比較部
14 ピース配列決定部
15 配列結果出力部
16 ピース画像データベース
30 原画像データ
31 領域画像データ
32 完成画像
33 配列表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め複数の種類の模様や文字が記載された複数のピースを配列して全体として所望の完成画像を構成するピース集合体であって、
各ピースの画像面には、種類毎に少なくとも色相、彩度、明度のいずれかが異なる模様や文字を記載すると共に、当該ピースの種類または全てのピース毎に異なる識別符号を付与し、
使用者が、可変的な画像入力情報に基づいて生成された該識別符号の配列表に従って各ピースを配列して完成画像を構成するか、あるいは可変的な画像入力情報に基づいて生成された配列に従った完成画像を参照して各ピースを配列し、該識別符号の配列表によって正解を確認できるようにした
ことを特徴とするピース集合体。
【請求項2】
前記各ピースが平板状の部品から成り、該画像面を一面に構成する一方、その反対面に該識別符号を記載する
請求項1に記載のピース集合体。
【請求項3】
前記各ピースがジグソーパズルのピースであって、他の各ピースと外縁部の凹凸により組み合い可能である
請求項2に記載のピース集合体。
【請求項4】
前記各ピースの画像面が、ピース内で均一又は所定の向きに変化する色相、彩度、明度のいずれかを有するパターン画像である
請求項1ないし3のいずれかに記載のピース集合体。
【請求項5】
前記各ピースの画像面の模様又は文字が色相、彩度、明度のいずれかについて所定の向きに変化している構成において、前記識別符号にもその向きの情報を含ませると共に、
前記配列表にも各ピースの配列と向きとの情報を記載しておくことで、前記使用者が各ピースの向きを配列表の指示に合わせて配列できるようにした
請求項1ないし4のいずれかに記載のピース集合体。
【請求項6】
前記各ピースがジグソーパズルのピースであって、他の各ピースと外縁部の凹凸により組み合い可能であると共に、
前記画像面の模様や文字が、前記識別符号として機能する
請求項1に記載のピース集合体。
【請求項7】
前記各ピースの画像面が、それぞれ独立した著作物であって、
各ピースのピース画像データを所定の演算式によって演算したときに、色相、彩度、明度の少なくともいずれかが、所定の分布となるように異なる画像を各ピースに用いる
請求項6に記載のピース集合体。
【請求項8】
予め複数の種類の模様や文字が記載された複数のピースを配列して全体として所望の画像を構成するピース集合体と、
該ピース集合体の配列結果を出力する配列計算装置と
から成るピース配列計算システムであって、
該ピース集合体が、
各ピースの画像面には、種類毎に少なくとも色相、彩度、明度のいずれかが異なる模様や文字を記載すると共に、当該ピースの種類または全てのピース毎に異なる識別符号を付与し、
使用者が、該配列計算装置の出力した該識別符号の配列表に従って各ピースを配列して完成画像を構成するか、あるいは該配列計算装置の出力した完成画像を元に各ピースを配列し、該識別符号の配列表によって正解を確認できるようにすると共に、
該配列計算装置が、
該各ピースに記載された模様や文字の画像をピース画像データとして格納したピース画像データベースと、
該完成画像の元となる原画像データを入力する原画像データ入力手段と、
該原画像データを、該ピースを配列した時に各ピースに対応する領域の領域画像データに分割する原画像データ分割手段と、
該領域画像データと該各ピースのピース画像データとを所定の比較値を用いて比較する画像比較手段と、
全ての該ピースに係る比較値を入力して所定の演算式により最適な各ピースの配列を決定するピース配列決定手段と、
決定された配列を該識別符号を用いて配列表データとして出力するか、該決定された配列に従った完成画像を出力するか、の少なくともいずれかの配列結果を出力する配列結果出力手段と
を備えた
ことを特徴とするピース配列計算システム。
【請求項9】
前記画像比較手段において、
前記領域画像データの各領域画像上の1以上の測定点と、前記各ピースの画像面上の同位置の測定点とを対照し、各点における色相、彩度、明度の少なくともいずれかに係る値の差を前記比較値として算出する
ことを特徴とする請求項8に記載のピース配列計算システム。
【請求項10】
前記画像比較手段において、
前記領域画像と、前記各ピースの画像面とを、
配列可能な角度分だけ順次回転させるという制約下で、該画像の色相、彩度、明度のいずれかについての変化の向きを出来る限り揃え、
その状態で前記比較値を算出すると共に、
前記配列結果出力手段が配列表を出力する時に、該回転させた時の回転角度の情報を、各ピースの配列と共に前記配列表に記載して出力する
請求項9に記載のピース配列計算システム。
【請求項11】
前記ピース配列計算システムにおいて、
前記配列計算装置の前記原画像データ入力手段が、ユーザ端末からネットワーク回線を通じて送信された前記原画像データを受信すると共に、
前記配列結果出力手段が、該ユーザ端末に向けてネットワーク回線を通じて前記配列表データ、又は完成画像の少なくともいずれかを送信する
請求項8ないし10のいずれかに記載のピース配列計算システム。
【請求項12】
前記画像面の模様や文字が、前記識別符号として機能し、
前記配列結果出力手段が、完成画像を出力する
請求項8ないし11のいずれかに記載のピース配列計算システム。
【請求項13】
予め複数の種類の模様や文字が記載された複数のピースを配列して全体として所望の画像を構成するピース集合体の配列結果を出力する配列計算装置であって、
該各ピースに記載された模様や文字の画像をピース画像データとして格納したピース画像データベースと、
該完成画像の元となる原画像データを入力する原画像データ入力手段と、
該原画像データを、該ピースを配列した時に各ピースに対応する領域の領域画像データに分割する原画像データ分割手段と、
該領域画像データと該各ピースのピース画像データとを所定の比較値を用いて比較する画像比較手段と、
全ての該ピースに係る比較値を入力して所定の演算式により最適な各ピースの配列を決定するピース配列決定手段と
決定された配列を該識別符号を用いて配列表データとして出力するか、該決定された配列に従った完成画像を出力するか、の少なくともいずれかの配列結果を出力する配列結果出力手段と
を備えた
ことを特徴とする配列計算装置。
【請求項14】
予め複数の種類の模様や文字が記載された複数のピースを配列して全体として所望の画像を構成するピース集合体と、
使用者からの配列表の注文に対して課金額を計算すると共に、該ピース集合体の配列結果を出力する配列計算課金装置と
から成るピース配列計算課金システムであって、
該ピース集合体が、
各ピースの画像面には、種類毎に少なくとも色相、彩度、明度のいずれかが異なる模様や文字を記載すると共に、当該ピースの種類または全てのピース毎に異なる識別符号を付与し、
使用者が、該配列計算装置の出力した該識別符号の配列表に従って各ピースを配列して完成画像を構成するか、あるいは該配列計算装置の出力した完成画像を元に各ピースを配列し、該識別符号の配列表によって正解を確認できるようにすると共に、
該配列計算課金装置が、
該各ピースに記載された模様や文字の画像をピース画像データとして格納したピース画像データベースと、
あるユーザ端末からネットワーク回線を通じて送信された該完成画像の元となる原画像データを受信する原画像データ入力手段と、
該原画像データを、該ピースを配列した時に各ピースに対応する領域の領域画像データに分割する原画像データ分割手段と、
該領域画像データと該各ピースのピース画像データとを所定の比較値を用いて比較する画像比較手段と、
全ての該ピースに係る比較値を入力して所定の演算式により最適な各ピースの配列を決定するピース配列決定手段と
該ユーザ端末に向けてネットワーク回線を通じて、決定された配列を該識別符号を用いて配列表データとして送信するか、該決定された配列に従った完成画像を送信するか、の少なくともいずれかの配列結果を送信する配列結果出力手段と、
課金データベースに該ユーザ端末の使用者情報と、該配列結果の対価情報とを記録する課金記録手段と
を備えた
ことを特徴とするピース配列計算課金システム。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−179091(P2010−179091A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1071(P2010−1071)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(391010529)株式会社テンヨー (33)
【Fターム(参考)】