説明

ファイバレーザ加工装置

【課題】シード用のレーザダイオードよりパルス波形のシード光を増幅用光ファイバに注入するMOPA方式において、アンプの利得を十分高くしてもスバイクノイズの発生を確実に防止または抑制すること。
【解決手段】このMOPA方式ファイバレーザ加工装置は、シード光発生部10、第1および第2の増幅用光ファイバ12,14および光ビーム照射部16をアイソレータ18,20,22および光結合器24,26を介して光学的に縦続接続している。ここで、シード光発生部10より出力されるパルス波形のシード光のスペクトル中心波長は1054〜1057nmの範囲にあり、ひいては被加工物Wの表面に照射される増幅パルスの光ビームLBのスペクトル中心波長も1054〜1057nmの範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シード光を光ファイバの中で増幅して得られるパルス波形の光ビームを被加工物に照射して所望のレーザ加工を行うファイバレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ファイバレーザで生成したレーザ光を被加工物に照射して所望のレーザ加工を行うファイバレーザ加工装置が普及している。その中で、MOPA(Master Oscillator _ Power Amplifier)方式のファイバレーザ加工装置も注目されている。
【0003】
ファイバMOPA方式は、コアにYb等の希土類元素を添加した光ファイバをレーザ増幅用のアクティブファイバに使用し、シードレーザで生成した低出力のシード光を一端から該アクティブファイバのコアに入れて他端まで伝播させながら、コアを励起光で励起することにより、コアの中でシード光を高出力の加工用の光ビームに増幅または変換するものであり、光/光変換効率が高くてビームモードが安定している等の特長を有している。
【0004】
MOPA方式ファイバレーザのシードレーザとしては、レーザダイオード(LD)が好適に用いられている(たとえば特許文献1)。この場合、シードLDより、Yb添加石英コアの増幅帯域(1060nm〜1100nm)内にスペクトル中心波長(たとえば1090nm)を有するLD光がシード光として出力される。
【0005】
また、MOPA方式ファイバレーザ加工装置のシードレーザとして、波長1064nmのレーザ光を発振出力するYAGレーザを用いることも考えられている(たとえば特許文献2,3)。YAGレーザ光の波長1064nmも、アクティブファイバの誘導放出特性に合致または適合している。
【0006】
図29に、アクティブファイバのコアに広く用いられるYb添加石英のスペクトル特性(吸収断面積/放出断面積)を示す。図示のように、Yb添加石英においては、スペクトルが1060nmを超えると誘導放出に比して吸収が著しく少なくなる。この付近の波長領域における吸収は、レーザ光の再吸収による利得損失の原因になるため、極力小さい方が望ましい。このため、1060nm以上の波長領域(通常1060nm〜1100nm)が増幅帯域に用いられている。他方で、900nm〜990nmの波長領域はスペクトルの放出が少なくて吸収が大きい帯域となっている。
【0007】
したがって、アクティブファイバの一端からコアの中にシード光として波長1060nm〜1100nmのLDまたは波長1064nmのYAGレーザ光を注入し、それと同時に900nm〜990nm帯域内の波長を有するポンピング用の励起光を注入すると、アクティブファイバのコア内では、励起光のエネルギーを吸収して高エネルギー順位に励起されたYbイオンがシード光と同じスペクトル中心波長を有する光を放出して低エネルギー順位に遷移する現象(誘導放出)によって、シード光の増幅が行われる。そして、アクティブファイバの出力端よりシード光(LD光)と同じスペクトル中心波長を有する高出力の加工用光ビームが取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6275250号
【特許文献2】特開2007−253189
【特許文献3】特開2009−220161
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
レーザ加工において、高ピークパワーを有するパルス波形のレーザ光は、被加工物に与える熱影響が少ないため、マーキング、穴あけ等で好適に用いられている。MOPA方式ファイバレーザ加工装置において、パルス幅が数100nm以下の短パルスレーザ光を生成するには、特許文献1のようにシードLDにパルス波形のシード光を出力させる方法、あるいは特許文献2,3のようにシード用のYAGレーザをQスイッチ方式にする方法が採られている。
【0010】
シードLDによりパルス波形のシード光を生成する方法は、シードYAGレーザのQスイッチ方式よりも小型軽量で発振効率が高いという長所がある。しかしながら、MOPA方式ファイバレーザ加工装置においては、アクティブファイバ内で増幅されてシード側に戻ってくる光(戻り光)があり、シードLDよりパルス波形のシード光をアクティブファイバに注入し、高ピークパワーの加工用光ビームを得るためにアンプの利得を上げると、戻り光の中にASE(Amplified Spontaneous Emission)による意図しないスパイクノイズが発生しやすく、これが問題となっている。この種のスパイクノイズは尖頭値が非常に高くて、シードLD、励起光源、アクティブファイバ等にダメージを与えるからである。
【0011】
この問題に対して、従来は、シードLDとアクティブファイバとの間に設けるアイソレータを増やしたり、励起光源(一般にLD)には励起光を通過させて戻り光を遮断する保護フィルタ(たとえば誘電体多層膜)を付けたりしているが、コスト高を伴う割にはASEスパイクノイズによる電気/光学部品のダメージを確実に防止することは難しく、他方でアクティブファイバの保護は全く出来ていない。
【0012】
また、戻り光を監視し、スパイクノイズが発生した時にアンプの利得を下げ、もしくはファイバレーザの発振動作を停止する技法も提案されている。しかし、一発のスパイクノイズでシードLD、励起光源等が破損することがあり、この技法も有効性に乏しくて実用的ではない。
【0013】
このため、アンプの利得を常時一定の限度(通常20dB以下)に抑える方法が最も無難な手法として多く用いられている。しかし、この限度は目安でしかなく、20dBでもスパイクノイズが発生することがある。また、アンプの利得を抑えながら、高ピークパワーの加工用パルスレーザ光を得るには、アンプを複数多段に接続して一段当たりの低い利得を補う必要があるが、その場合には、部品点数の大幅な増大によって、装置全体の大型化、高コスト化を来している。
【0014】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するものであり、シード用のレーザダイオードよりパルス波形のシード光を増幅用光ファイバに注入するMOPA方式において、アンプの利得を十分高くしてもスパイクノイズの発生を確実に防止または抑制して、シード用レーザダイオード、励起光源、アクティブファイバの破損を防止するとともに、高出力の光ビームによる高品質のレーザ加工を行えるようにしたファイバレーザ加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の観点におけるファイバレーザ加工装置は、シード用のレーザダイオードを有し、前記シード用レーザダイオードを駆動してスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にあるパルス波形のシード光を発生するシード光発生部と、希土類元素として少なくともYbを添加したコアを有し、前記シード光発生部からの前記シード光を入力端より前記コアの中に入れ、前記シード光を出力端に向けて伝搬させながら誘導放出により増幅する増幅用光ファイバと、前記増幅用光ファイバのコアを励起するための励起光を発生する励起光源と、前記シード用レーザダイオードおよび前記励起光源を前記増幅用光ファイバの入力端に光学的に結合する光結合器と、前記増幅用光ファイバの出力端から出るスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にあるパルス波形の光ビームを被加工物に集光照射する光ビーム照射部とを有する。
【0016】
本発明の第2の観点におけるファイバレーザ加工装置は、希土類元素として少なくともYbを添加したコアを有し、入力端より前記コアの中にパルス波形のシード光を入れ、前記シード光を出力端に向けて伝搬させながら誘導放出により増幅する増幅用光ファイバと、前記増幅用光ファイバの入力端にスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にある前記シード光を注入するシード光注入部と、前記増幅用光ファイバの入力端に前記コアを励起するための励起光を注入する励起光注入部と、前記増幅用光ファイバの出力端から出たスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にあるパルス波形の加工用光ビームを被加工物に集光照射する光ビーム照射部とを有する。
【0017】
上記第1または第2の観点におけるファイバレーザ加工装置においては、増幅用光ファイバの中で、シード光は、Yb添加のコアとクラッドとの境界面での全反射によって閉じ込められながらコアの中を軸方向にファイバ出力端側に向って伝搬する。一方、励起光は、クラッド外周界面の全反射によって閉じ込められながら増幅用光ファイバの中を軸方向に伝搬し、その伝搬中にコアを何度も横切ることでコア中のYb原子を励起する。こうして、シード光と励起光とが増幅用光ファイバを伝搬する間に、そのYb添加コアにおいて励起光スペクトルの吸収とシード光スペクトルの誘導放出とが繰り返し行われ、増幅用光ファイバの出力端より所望のパワーを有するまでに増幅されたシード光つまり増幅パルスの光ビームが出される。この第1段増幅パルスの光ビームのスペクトル中心波長はシード光のスペクトル中心波長と同じであり、この増幅パルスの光ビームが光ビーム照射部によって被加工物に昇降照射される。
【0018】
ここで、シード光のスペクトルの中心波長が1054〜1057nmの範囲にあるときは、増幅用光ファイバにおいてはYb添加コアのスペクトル増幅帯域から外れるため、増幅用光ファイバ内の誘導放出においてシード光の再吸収による利得損失が増加することになるが、戻り光としてスパイクノイズが発生する確率が0になる。したがって、励起光源の出力パワーを高くすることにより、上記再吸収による利得損失を補って増幅用光ファイバの利得を任意に上げることができる。
【0019】
本発明の第3の観点におけるファイバレーザ加工装置は、シード用のレーザダイオードを有し、前記シード用レーザダイオードを駆動してスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にあるパルス波形のシード光を発生するシード光発生部と、希土類元素として少なくともYbを添加した第1のコアを有し、前記シード光発生部からの前記シード光を入力端より前記第1のコアの中に入れ、前記シード光を伝搬させながら誘導放出より増幅して、出力端よりスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にある第1段増幅パルスの光ビームを出す第1の増幅用光ファイバと、前記第1の増幅用光ファイバの第1のコアを励起するための第1の励起光を発生する第1の励起光源と、前記シード用レーザダイオードおよび前記第1の励起光源を前記第1の増幅用光ファイバの入力端に光学的に結合する第1の光結合器と、希土類元素として少なくともYbを添加した第2のコアを有し、前記第1の増幅用光ファイバの出力端からの前記第1段増幅パルスの光ビームを入力端より前記第2のコアの中に入れ、前記第1段増幅パルスの光ビームを伝搬させながら誘導放出により増幅して、出力端よりスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にある第2段増幅パルスの光ビームを出す第2の増幅用光ファイバと、前記第2の増幅用光ファイバの第2のコアを励起するための第2の励起光を発生する第2の励起光源と、前記第1の増幅用光ファイバの出力端および前記第2の励起光源を前記第2の増幅用光ファイバの入力端に光学的に結合する第2の光結合器と、前記第2の増幅用光ファイバの出力端から出た前記第2段増幅パルスの光ビームを被加工物に集光照射する光ビーム照射部とを有する。
【0020】
また、本発明の第4の観点におけるファイバレーザ加工装置は、希土類元素として少なくともYbを添加した第1のコアを有し、入力端より前記第1のコアの中にパルス波形のシード光を入れ、前記シード光を伝搬させながら誘導放出により増幅して、出力端よりスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にある第1段増幅パルスの光ビームを出す第1の増幅用光ファイバと、前記第1の増幅用光ファイバの入力端にスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にある前記シード光を注入するシード光注入部と、前記第1の増幅用光ファイバの入力端に前記第1のコアを励起するための第1の励起光を注入する第1の励起光注入部と、希土類元素として少なくともYbを添加した第2のコアを有し、入力端より前記第2のコアの中に前記第1の増幅用光ファイバからの前記第1段増幅パルスの光ビームを入れ、前記第1段増幅パルスの光ビームシード光を伝搬させながら誘導放出により増幅して、出力端よりスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にある第2段増幅パルスの光ビームを出す第2の増幅用光ファイバと、前記第2の増幅用光ファイバの入力端に前記第2のコアを励起するための第2の励起光を注入する第2の励起光注入部と、前記第2の増幅用光ファイバの出力端から出た前記第2段増幅パルスの光ビームを被加工物に集光照射する光ビーム照射部とを有する。
【0021】
上記第3または第4の観点におけるファイバレーザ加工装置においては、上記第1または第2のファイバレーザ加工装置と同様の作用効果が奏されるのに加えて、複数段のアンプ構成により装置全体の利得を一層高くすることができる。
【0022】
本発明の好適な一態様においては、各々の励起光源は、1つまたは複数の第1の励起用レーザダイオードを有し、各々の増幅用光ファイバの利得は20dB以上である。
【0023】
また、好適な一態様においては、シード光発生部が、シード光のスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にあるようにシード用レーザダイオードの温度を制御するLD温調部を有する。あるいは、シード光発生部が、シード用レーザダイオードで生成される光をスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲に固定する手段、たとえばファイバブラッググレーティング(FBG)を有する。
【0024】
また、好適な一態様においては、シード光のスペクトルにおいて1056nm〜1057nmの領域におけるパワーがその全域でピークパワーの−10dBより高くなるという第2の要件が満たされる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のファイバレーザ加工装置によれば、シード用のレーザダイオードよりパルス波形のシード光を増幅用光ファイバに注入するMOPA方式において、アンプの利得を十分高くしてもスバイクノイズの発生を確実に防止または抑制することができる。このことにより、シード用レーザダイオード、励起光源、アクティブファイバの破損を防止するとともに、高出力の光ビームによる高品質のレーザ加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態におけるMOPA方式ファイバレーザ加工装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を導出するのに用いられた実験機の構成を示すブロック図である。
【図3】上記実験機においてシードLDより出力されたパルス波形のシード光のパワーを示す図である。
【図4】上記実験機においてアクティブファイバより出力された増幅パルスの光ビームのパワーを示す図である。
【図5】上記実験機で行われた実験の結果を一覧表で示す図である。
【図6】図5の表におけるシードLDのベース温度とシード光のスペクトル中心波長との相関をプロットで示す図である。
【図7】上記実験の測定サンプル[1]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図8】上記実験の測定サンプル[2]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図9】上記実験の測定サンプル[3]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図10】上記実験の測定サンプル[4]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図11】上記実験の測定サンプル[5]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図12】上記実験の測定サンプル[6]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図13】上記実験の測定サンプル[7]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図14】上記実験の測定サンプル[8]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図15】上記実験の測定サンプル[9]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図16】上記実験の測定サンプル[10]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図17】上記実験の測定サンプル[11]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図18】上記実験の測定サンプル[12]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図19】上記実験の測定サンプル[13]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図20】上記実験の測定サンプル[14]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図21】上記実験の測定サンプル[15]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図22】上記実験の測定サンプル[16]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図23】上記実験の測定サンプル[17]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図24】上記実験の測定サンプル[18]で得られたシード光のスペクトルを示す図である。
【図25A】本発明におけるスペクトル中心波長の定義を説明するための一例を示す図である。
【図25B】本発明におけるスペクトル中心波長の定義を説明するための別の例を示す図である。
【図26】図5の表におけるシード光のスペクトル中心波長とスパイクノイズ発生確率との相関をプロットで示す図である。
【図27】上記実験機のオシロスコープにより観測された通常の戻り光および異常な戻り光(スパイクノイズ)を示す図である。
【図28】実施形態のMOPAファイバレーザ加工装置におけるシード光発生部の一変形例を示す図である。
【図29】Yb添加石英におけるスペクトル特性(吸収断面積/放出断面積)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1〜図28を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0028】
図1に、本発明の一実施形態におけるMOPA方式ファイバレーザ加工装置の構成を示す。このファイバレーザ加工装置は、シード光発生部10、第1および第2の増幅用光ファイバ(以下「アクティブファイバ」と称する)12,14および光ビーム照射部16をアイソレータ18,20,22および光結合器24,26を介して光学的に縦続接続している。
【0029】
シード光発生部10は、シード用のレーザダイオード(以下「シードLD」と称する。)30と、このシードLD30をパルス波形の電流で駆動してパルス発振させるLD駆動回路32と、シード光のスペクトル中心波長に関連してシードLD30の温度を制御するLD温調部34とを有している。シードLD30は、ファイバカップリングLDとして構成されている。
【0030】
シード光発生部10と第1のアクティブファイバ12との間に設けられる光結合器24は、複数たとえば3つの入力ポート24IN(1),24IN(2),24IN(3)と1つの出力ポート24OUTとを有している。第1の入力ポート24IN(1)には、アイソレータ18を介してシードLD30が接続される。第2の入力ポート24IN(2)には、第1のアクティブファイバ12のコアを励起するための励起用LD(以下「ポンプLD」と称する。)36が接続される。第3の入力ポート24IN(3)は、増設ポートであり、ここに別のポンプLD36(図示せず)が接続されてもよく、あるいは後述するように戻り光モニタ装置(54,56)が接続されてもよい。出力ポート24OUTには、アクティブファイバ12の入力端が接続される。
【0031】
シード光発生部10、アイソレータ18および光結合器24により、第1のアクティブファイバ12に対するシード光注入部が構成されている。ポンプLD36および光結合器24によって、第1のアクティブファイバ12に対する励起光注入部が構成されている。
【0032】
第1のアクティブファイバ12は、少なくともYbイオンを添加した石英からなるコアと、このコアを同軸に取り囲むたとえば石英からなるクラッドとを有しており、全長(ファイバ長)がたとえば3〜15mに選ばれている。第1のアクティブファイバ12(第1段アンプ)の利得は、ポンプLD36の総合出力によりたとえば10〜40dBの範囲で調節可能となっている。
【0033】
第1のアクティブファイバ12と第2のアクティブファイバ14との間に設けられる光結合器26は、複数たとえば7つの入力ポート26IN(1),26IN(2)〜26IN(7)と1つの出力ポート26OUTとを有している。第1の入力ポート26IN(1)には、アイソレータ20を介して第1のアクティブファイバ12の出力端が接続される。第2〜第5の入力ポート26IN(2) 〜26IN(5)には、第2のアクティブファイバ14のコアを励起するためのポンプLD38がそれぞれ接続される。なお、本実施形態において、第6および第7の入力ポートは空きポートとなっているが、必要に応じてポンプLDを増設することもできる。出力ポート26OUTには、第2のアクティブファイバ14の入力端が接続される。
【0034】
第2のアクティブファイバ14も、第1のアクティブファイバ12と同様に、少なくともYbを添加した石英からなるコアと、このコアを同軸に取り囲むたとえば石英からなるクラッドとを有しており、全長(ファイバ長)がたとえば3〜15mに選ばれている。第2のアクティブファイバ14(第2段アンプ)の利得は、ポンプLD38の総合出力によりたとえば10〜40dBの範囲で調節可能となっている。
【0035】
光ビーム照射部16は、第2のアクティブファイバ14の出力端より取り出されるパルス波形の加工用光ビームLBをたとえばコリメータ39、ベントミラー40等の光伝送系を介して受け取り、受け取った光ビームLBをステージ42上の被加工物W表面の所望の位置に集光照射するようになっている。たとえば、マーキング加工を行う場合、光ビーム照射部16にはガルバノスキャナが搭載される。
【0036】
制御部44は、キーボードあるいはマウス等の入力装置46およびディスプレイ(図示せず)等と接続するマイクロコンピュータからなり、メモリに格納された制御プログラムに基づいて上述した装置内の各部および装置全体の制御を行う。
【0037】
このMOPA方式ファイバレーザ加工装置において、マーキング加工を行う場合、シード光発生部10は、スペクトル中心波長が1054〜1057nmの範囲にあるパルス波形のシード光(LD光)を所望のパルス幅(たとえば0.1〜200ns)、所望のピークパワー(たとえば100〜300mW)および所望の繰り返し周波数(たとえば20〜500kHz)で出力するように構成されている。なお、繰り返し周波数は、10kHz〜1MHzの範囲で出力するように構成することができる。シード光発生部10より出力されたパルス波形のシード光は、アイソレータ18および光結合器24を介して第1のアクティブファイバ12のコアに注入される。
【0038】
一方、ポンプLD36は、スペクトル中心波長が915nmである連続波(cw)の励起光を出力するように構成されている。ポンプLD36より出力される連続波の励起光は光結合器24を介して第1のアクティブファイバ12のコアに注入される。なお、ポンプLD36は、出力する光のスペクトル中心波長を900〜990nmの範囲で選択することができる。
【0039】
第1のアクティブファイバ12の中で、シード光は、コアとクラッドとの境界面での全反射によって閉じ込められながらコアの中を軸方向にファイバ出力端側に向って伝搬する。一方、励起光は、クラッド外周界面の全反射によって閉じ込められながらアクティブファイバ12の中を軸方向に伝搬し、その伝搬中にコアを何度も横切ることでコア中のYbイオンを光励起する。
【0040】
こうして、シード光と励起光とがアクティブファイバ12を伝搬する間に、そのYb添加コアにおいて励起光スペクトルの吸収とシード光スペクトルの誘導放出とが繰り返し行われ、アクティブファイバ12の出力端より所望のパワー(たとえば200Wのピークパワー)を有するまでに増幅されたシード光つまり第1段増幅パルスの光ビームが出される。この第1段増幅パルスの光ビームのスペクトル中心波長はシード光のスペクトル中心波長と同じであり、1054〜1057nmの範囲にある。
【0041】
第1のアクティブファイバ12の出力端から出た第1段増幅パルスの光ビームは、アイソレータ20および光結合器26を介して第2のアクティブファイバ14のコアに注入される。一方、ポンプLD38からのスペクトル中心波長が915nmの連続波(cw)の励起光が光結合器26を介して第2のアクティブファイバ14のコアに注入される。
【0042】
第2のアクティブファイバ14においても、増幅対象の光ビームが異なるだけで、つまりシード光が第1段増幅光ビームに置き換わるだけで、第1のアクティブファイバ12と同様の誘導放出機構による光増幅が行われ、アクティブファイバ14の出力端より所望のパワー(たとえば2kWのピークパワー)を有する第2段増幅パルスの光ビームが出される。この第2段増幅パルスの光ビームのスペクトル中心波長もシード光のスペクトル中心波長と同じであり、1054〜1057nmの範囲にある。
【0043】
こうして、第2のアクティブファイバ14の出力端から取り出された第2段増幅パルスの光ビームが、加工用の光ビームLBとして、たとえばコリメータ39、ベントミラー40を介して光ビーム照射部16へ送られる。
【0044】
光ビーム照射部16は、マーキング加工用のガルバノスキャナおよびfθレンズを備えている。ガルバノスキャナは、直交する2方向に首振り運動の可能な一対の可動ミラーを有しており、制御部44の制御の下でシード光発生部10のパルス発振動作に同期して両可動ミラーの向きを所定角度に制御することで、加工用光ビームLBをステージ42上の被加工物W表面の所望の位置に集光照射する。被加工物Wの表面に施されるマーキング加工は、典型的には文字や図形等を描画するものであるが、トリミング等の表面除去加工等も可能である。
【0045】
上記のように、この実施形態のMOPA方式ファイバレーザ加工装置においては、シード光発生部10より出力されるパルス波形のシード光のスペクトル中心波長が1054〜1057nmの範囲にあり、ひいては被加工物Wの表面に照射される増幅パルスの光ビームLBのスペクトル中心波長が1054〜1057nmの範囲にあることが重要であり、主たる特徴となっている。
【0046】
すなわち、1060nm以上の波長領域に増幅帯域があるYb添加コアのアクティブファイバにおいてシード光のスペクトル中心波長を1054〜1057nmに選ぶことは、シード光の再吸収による利得損失を積極的に受容することであり、MOPA方式ファイバレーザの分野ではこれまでの技術常識に反している。
【0047】
しかし、本発明者は、シード光のスペクトル中心波長を1054〜1057nmに選ぶことにより、意外なことに、アンプの利得を相当高くしてもASEによるスパイクパルスの発生を確実に防止できることを以下に述べる実験を通じて見出した。
【0048】
図2に、本発明者の使用した実験機の構成を示す。図中、上記実施形態におけるMOPA方式ファイバレーザ加工装置(図1)の構成要素と実質的に同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0049】
図示のように、実験機は、シード光発生部10とアイソレータ18との間に光切替器50を挿入し、シード光発生部10より出力されるシード光を光切替器50を介して分光装置52に選択的に入力可能とし、分光装置52によりシード光のスペクトル測定を行えるようにした。さらに、光結合器24の第3入力ポート24IN(3)にPINフォトダイードからなる受光素子54を介してオシロスコープ56を接続し、戻り光をモニタできるようにした。第1のアクティブファイバ12の出力端にはフェルール58を取り付け、第1段増幅パルスの光ビームの出力波形をPINフォトダイードからなる受光素子を介してオシロスコープ56または別のオシロスコープでモニタできるようにした。また、スパイクノイズからポンプLD36を保護するために、ポンプLD36に誘電体多層膜からなる保護フィルタ60を取り付けた。
【0050】
この実験では、シード光発生部10より図3に示すようなパルス波形(ピークパワー:207mw、パルス幅:80ns)のシード光を20kHzの繰り返し周波数で出力させるとともに、ポンプLD36より励起光を1.6Wで出力させた。なお、図3のシードLDの出力パワーは中心波長1060nmで得られている。この場合、第1のアクティブファイバ12の出力端からは、図4に示すようなパルス波形(ピークパワー:254w、パルス幅:75ns)を有する第1段増幅パルスの光ビームが得られた。アンプの利得は、約31dBであった。
【0051】
シード光発生部10においては、LD温調部34の温調機能(ペルチェ素子およびサーミスタ使用)により、シードLD30のベース温度を広い範囲で任意の温度に調整し、それによってシード光のスペクトル中心波長を可変することができるようになっている。
【0052】
本発明者が、この実験機において、LD温調部34を通じてシードLD30のベース温度を−5℃〜25℃の範囲内でステップ的(18段階)に可変して、各段階のLDベース温度で得られるシード光のスペクトル中心波長を分光装置52で測定するとともに、スパイクノイズの発生回数をオシロスコープ56で測定したところ、図5の表に示すような測定結果が得られた。
【0053】
図6に、図5の表におけるシードLD30ベース温度とシード光のスペクトル中心波長との相関をプロットで示す。また、図7〜図24に、18段階の各測定サンプル[1]〜[18]について分光装置52により測定されたシード光のスペクトルをそれぞれ示す。図中、横軸は波長(nm)、縦軸はパワー(nW)を表わす。
【0054】
本発明において、スペクトルの中心波長は、図25Aおよび図25Bに示すように定義される。すなわち、図25Aに示すように、ピークが1つしかない場合は、そのピーク値の半値をとる2つの波長λ1,λ2の中心点λcつまり(λ1+λ2)/2を中心波長とする。また、図25Bに示すように、ピークが複数あり、最大ピーク値の半値をとる波長が3つ以上(図示の例は4つ)ある場合は、その最短の波長λ1と最長の波長λ4の中心点λcつまり(λ1+λ4)/2を中心波長とする。
【0055】
図6に示すように、シードLD30のベース温度が常温(22℃〜25℃)のときは、シード光の中心波長が1060nmに固定される。
【0056】
しかし、常温以下では、シードLD30のベース温度が低くなるほど、シード光の中心波長が小さくなり、ベース温度が8℃〜16℃でシード光の中心波長が1054nm〜1058nmの範囲内に入る。より詳細には、16℃で1057.5nm、15℃で1057nm、14℃で1056.5nm、11℃で1056nm、9℃で1055nm、8℃で1054nmである。
【0057】
そして、シードLD30のベース温度が7℃以下になると、シード光の中心波長が1054nmよりも短くなる。より詳細には、7℃で1053.5nm、6℃で1053nm、4℃で1052nm、3℃で1052nm、2℃で1051.5nm、−1℃で1050.5nm、−2℃で1050.5nm、−4℃で1050.5nm、−5℃で1049nmである。
【0058】
図26に、図5の表におけるシード光の中心波長とスパイクノイズ発生確率との相関をプロットで示す。ここで、スパイクノイズ発生確率は、上記実験機においてシード光発生部10より上記のような繰り返し周波数(20kHz)でパルス波形のシード光(図3)を出力させたときに、オシロスコープで観測された単位時間(10分間)当たり(つまり12×106パルス当たり)のスパイクノイズ発生確率(ppm)で表わしている。
【0059】
この実験機(および図1の装置)におけるスパイクノイズは、ASEによるものと考えられており、図27に示すように通常の戻り光に比して著しく(数倍以上)高いピーク値(尖頭値)を有している。このようなスパイクノイズが戻り光として光結合器24の入力ポートに入ってくると、アイソレータ18を逆方向に通過してシードLD30にダメージを与えたり、ポンプLD36を破壊することがある。
【0060】
上記実験においては、シード光のスペクトルの中心波長が1060nmのときにスパイクノイズの発生確率が1000ppm以上であり、これは想定内の結果であった。しかし、スペクトル中心波長が1054〜1057nmの範囲にあるときに、スパイクノイズの発生が皆無であること、つまり発生確率が0になることは全く予想外の発見であった。
【0061】
なお、シード光のスペクトル中心波長が1054〜1057nmの範囲にあるときは、第1のアクティブファイバ12の増幅帯域(1060nm〜)から外れるため、アクティブファイバ12内の誘導放出においてシード光の再吸収による利得損失が増加し、アクティブファイバ12の利得が中心波長1060nmのときの値(約31dB)よりも幾らか低下する。しかし、スパイクノイズの発生確率が0であるから、シード光の中心波長に起因する利得の低下を補って余るほどポンプLD36の総合出力を安心して任意に大きくすることができる。したがって、スパイクノイズの発生を前提とした従来一般の利得上限値(20dB)を容易にクリア(撤廃)することができる。
【0062】
本発明者が、上記実験で得られたデータ、特に図7〜図24に示すシード光のスペクトルについて更なる解析を行った結果、スパイクノイズの発生確率が0になるときのスペクトルの属性として中心波長に関する上記要件(第1要件)の他にもう一つ重要な要件(第2要件)があることを見出した。
【0063】
すなわち、図7〜図24のスペクトルにおいて、1056〜1057nmの波長帯域に着目すると、スパイクノイズの発生確率が0になる場合(測定サンプル[4]〜[9])は、決まってこの波長帯域1056〜1057nmの全域でスペクトルのパワーがピークパワーの−10dB(10分の1)よりも高くなっていることがわかる。これに対して、スパイクノイズが発生する場合(測定サンプル[1]〜[3],[10]〜[18])は、決まってこの波長帯域1056〜1057nmの一部または全域でスペクトルのパワーがピークパワーの−10dB(10分の1)よりも低くなっていることがわかる。
【0064】
一般に、この種のMOPA方式ファイバレーザ加工装置で使用されるシードLDの出力のスペクトル帯域幅は半値幅が通常4nm以内と狭いため、上記第1要件が満たされるとき(スペクトル中心波長が1054〜1057nmの範囲にあるとき)は、上記のような第2要件(波長帯域1056〜1057nmの全域でスペクトルのパワーがピークパワーの−10dB(10分の1)よりも高いこと)も同時に満たされる蓋然性は極めて高い。しかし、シードLD30ないしシード光発生部10の固体差または機差によっては、第1要件が満たされても第2要件が満たされず、反対に第2要件が満たされても第1要件が満たされないこともあり得る。したがって、第1および第2要件が同時に満たされるように、シード光発生部10内の調整を行うことが望ましい。
【0065】
この実施形態のMOPA方式ファイバレーザ加工装置(図1)においては、上記のような実験で得られた知見に基づいて、上記第1要件(より好ましくは第1および第2要件)が満たされるように制御部44の制御の下でシード光発生部10内の調整または制御を行うようにしている。
【0066】
このことにより、第1のアクティブファイバ12(第1段アンプ)の利得、さらには第2のアクティブファイバ14(第2段アンプ)の利得をそれぞれ20dB以上あるいは30dB以上に高くしても、ASEによるスパイクノイズが略皆無といってよいほど発生しないので、スパイクノイズに起因するシードLD30、ポンプLD36,38、アクティブファイバ12,14の損傷を確実に防止することができる。また、このことにより、アイソレータ18の使用数を少なくすることや、ポンプLD36,38から保護フィルタ60を省くことも可能であり、部品点数を節減することができる。さらに、ASEによるスパイクノイズの発生を気にせずに両アクティブファイバ12,14の利得を任意に高くできるので、加工用光ビームLBの出力(ピークパワー)を任意に高くして、レーザ加工の品質および効率を大いに向上させることができる。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものではない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0068】
たとえば、シーザ光発生部10において、上記第1要件(スペクトル中心波長が1054〜1057nmの範囲にあること)を満たすために、図26に示すようにシードLD30の出力側にたとえばファイバブラッググレーティング(FBG)のような波長固定手段62を設けることも可能である。
【0069】
上記実施形態のMOPA方式ファイバレーザ加工装置は、第1のアクティブファイバ12に第2のアクティブファイバ14を従続接続して2段アンプとしている。しかし、第2のアクティブファイバ14を省いて一段(単)アンプの構成とすることや、あるいは第2のアクティブファイバ14の後段に第3のアクティブファイバを接続して3段アンプの構成とすることも可能である。
【0070】
本発明のファイバレーザ加工装置は、マーキング加工に限るものではなく、穴あけ、切断、溶接等の他のレーザ加工にも使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シード用のレーザダイオードを有し、前記シード用レーザダイオードを駆動してスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にあるパルス波形のシード光を発生するシード光発生部と、
希土類元素として少なくともYbを添加したコアを有し、前記シード光発生部からの前記シード光を入力端より前記コアの中に入れ、前記シード光を出力端に向けて伝搬させながら誘導放出により増幅する増幅用光ファイバと、
前記増幅用光ファイバのコアを励起するための励起光を発生する励起光源と、
前記シード用レーザダイオードおよび前記励起光源を前記増幅用光ファイバの入力端に光学的に結合する光結合器と、
前記増幅用光ファイバの出力端から出るスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にあるパルス波形の光ビームを被加工物に集光照射する光ビーム照射部と
を有するファイバレーザ加工装置。
【請求項2】
前記励起光源は、1つまたは複数の第1の励起用レーザダイオードを有する、請求項1に記載のファイバレーザ加工装置。
【請求項3】
前記増幅用光ファイバの利得は20dB以上である、請求項1または請求項2に記載のファイバレーザ加工装置。
【請求項4】
シード用のレーザダイオードを有し、前記シード用レーザダイオードを駆動してスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にあるパルス波形のシード光を発生するシード光発生部と、
希土類元素として少なくともYbを添加した第1のコアを有し、前記シード光発生部からの前記シード光を入力端より前記第1のコアの中に入れ、前記シード光を伝搬させながら誘導放出より増幅して、出力端よりスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にある第1段増幅パルスの光ビームを出す第1の増幅用光ファイバと、
前記第1の増幅用光ファイバの第1のコアを励起するための第1の励起光を発生する第1の励起光源と、
前記シード用レーザダイオードおよび前記第1の励起光源を前記第1の増幅用光ファイバの入力端に光学的に結合する第1の光結合器と、
希土類元素として少なくともYbを添加した第2のコアを有し、前記第1の増幅用光ファイバの出力端からの前記第1段増幅パルスの光ビームを入力端より前記第2のコアの中に入れ、前記第1段増幅パルスの光ビームを伝搬させながら誘導放出により増幅して、出力端よりスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にある第2段増幅パルスの光ビームを出す第2の増幅用光ファイバと、
前記第2の増幅用光ファイバの第2のコアを励起するための第2の励起光を発生する第2の励起光源と、
前記第1の増幅用光ファイバの出力端および前記第2の励起光源を前記第2の増幅用光ファイバの入力端に光学的に結合する第2の光結合器と、
前記第2の増幅用光ファイバの出力端から出た前記第2段増幅パルスの光ビームを被加工物に集光照射する光ビーム照射部と
を有するファイバレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第1および第2の励起光源は、それぞれ1つまたは複数の第1の励起用レーザダイオードを有する、請求項4に記載のファイバレーザ加工装置。
【請求項6】
前記第1および第2の増幅用光ファイバの利得はそれぞれ20dB以上である、請求項4または請求項5に記載のファイバレーザ加工装置。
【請求項7】
前記シード光発生部が、前記シード光のスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にあるように前記シード用レーザダイオードの温度を制御するLD温調部を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のファイバレーザ加工装置。
【請求項8】
前記シード光発生部が、前記シード用レーザダイオードで生成される光のうちスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲に固定する波長固定手段を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のファイバレーザ加工装置。
【請求項9】
前記波長固定手段は、ファイバブラッググレーティングを有する、請求項8に記載のファイバレーザ加工装置。
【請求項10】
前記シード光のスペクトルにおいて1056nm〜1057nmの領域におけるパワーがその全域でピークパワーの−10dBより高い、請求項1〜9のいずれか一項に記載のファイバレーザ加工装置。
【請求項11】
前記シード光発生部は、前記シード光を0.1ns〜200nsのパルス幅および10kHz〜1MHzの繰り返し周波数で発生する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のファイバレーザ加工装置。
【請求項12】
希土類元素として少なくともYbを添加したコアを有し、入力端より前記コアの中にパルス波形のシード光を入れ、前記シード光を出力端に向けて伝搬させながら誘導放出により増幅する増幅用光ファイバと、
前記増幅用光ファイバの入力端にスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にある前記シード光を注入するシード光注入部と、
前記増幅用光ファイバの入力端に前記コアを励起するための励起光を注入する励起光注入部と、
前記増幅用光ファイバの出力端から出たスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にあるパルス波形の加工用光ビームを被加工物に集光照射する光ビーム照射部と
を有するファイバレーザ加工装置。
【請求項13】
希土類元素として少なくともYbを添加した第1のコアを有し、入力端より前記第1のコアの中にパルス波形のシード光を入れ、前記シード光を伝搬させながら誘導放出により増幅して、出力端よりスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にある第1段増幅パルスの光ビームを出す第1の増幅用光ファイバと、
前記第1の増幅用光ファイバの入力端にスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にある前記シード光を注入するシード光注入部と、
前記第1の増幅用光ファイバの入力端に前記第1のコアを励起するための第1の励起光を注入する第1の励起光注入部と、
希土類元素として少なくともYbを添加した第2のコアを有し、入力端より前記第2のコアの中に前記第1の増幅用光ファイバからの前記第1段増幅パルスの光ビームを入れ、前記第1段増幅パルスの光ビームシード光を伝搬させながら誘導放出により増幅して、出力端よりスペクトルの中心波長が1054nm〜1057nmの範囲にある第2段増幅パルスの光ビームを出す第2の増幅用光ファイバと、
前記第2の増幅用光ファイバの入力端に前記第2のコアを励起するための第2の励起光を注入する第2の励起光注入部と、
前記第2の増幅用光ファイバの出力端から出た前記第2段増幅パルスの光ビームを被加工物に集光照射する光ビーム照射部と
を有するファイバレーザ加工装置。
【請求項14】
前記シード光のスペクトルにおいて1056nm〜1057nmの領域におけるパワーがその全域でピークパワーの−10dBより高い、請求項11または請求項12に記載のファイバレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−243832(P2011−243832A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116113(P2010−116113)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000161367)ミヤチテクノス株式会社 (103)
【Fターム(参考)】