説明

ファイバレーザ発振器及びファイバレーザ加工装置

【課題】温度変化による補正を容易に行うことができるファイバレーザ発振器を提供する。
【解決手段】発熱部品である励起用レーザダイオード11aを当接配置するベース部31aと該ベース部31aから延設されて筐体17外部に取り出される放熱部31bとを備えて筐体17よりも熱伝導率の高い材質からなる熱交換部31と、熱交換部31に取り付けられる温度センサと、温度センサからの温度情報に基づいて励起用レーザダイオード11aの駆動電流を補正する温度出力補正部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバレーザ発振器及びファイバレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ発振器の一種として、ファイバ(希土類添加ファイバ)を用いた光増幅器によってレーザ光を増幅出力するファイバレーザ発振器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなファイバレーザ発振器は、励起用レーザダイオード等の発熱部品を備え、励起用レーザダイオードを含む発熱部品の自己発熱による温度変化や励起用レーザダイオードの周囲温度変化(環境温度変化)に応じて励起用レーザダイオードに供給する駆動電流の補正を行っている。このような励起用レーザダイオードの駆動電流の補正によってこの励起用レーザダイオードの出力安定性を確保してファイバレーザ発振器から出射されるレーザの出力を安定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−185788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のファイバレーザ発振器は、励起用レーザダイオード等の発熱部品の自己発熱による温度変化や励起用レーザダイオードの周囲温度変化(環境温度変化)に応じて励起用レーザダイオードに供給する駆動電流(電力)の補正を行うべく、それぞれの温度変化を検出するために温度センサを複数設けることが考えられる。しかしながら、周囲温度変化と自己発熱による温度変化とでは温度の変化の速度が異なるため、それぞれの要素を勘案しつつ補正を行うとなると、非常に煩雑になる虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、温度変化による補正を容易に行うことができるファイバレーザ発振器及びファイバレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、種光源において生成される種光を励起用レーザダイオードからの励起用レーザ光により光ファイバ内で増幅させる増幅手段を備えたファイバレーザ発振器であって、少なくとも前記励起用レーザダイオードを含む発熱部品を収容する筐体と、前記発熱部品を当接配置するベース部と、該ベース部から延設されて前記筐体外部に取り出される放熱部とを備えて前記筐体よりも熱伝導率の高い材質からなる熱交換手段と、前記熱交換手段に取り付けられる温度センサと、前記温度センサからの温度情報に基づいて前記励起用レーザダイオードの駆動電流を補正する補正手段とを備えたことをその要旨とする。
【0008】
この発明では、少なくとも励起用レーザダイオードを含む発熱部品を収容する筐体と、発熱部品を当接配置するベース部と該ベース部から延設されて筐体外部に取り出される放熱部とを備えて前記筐体よりも熱伝導率の高い材質からなる熱交換手段と、熱交換手段に取り付けられる温度センサと、温度センサからの温度情報に基づいて励起用レーザダイオードの駆動電流を補正する補正手段とを備える。このように筐体よりも熱伝導率の高い熱交換手段上にレーザダイオードを含む発熱部品を当接配置することで、発熱部品の熱は熱交換手段に偏って伝熱される。そして、この熱交換手段は筐体外部に取り出される放熱部を備えているため、熱交換手段において前記発熱部品の温度と周囲温度(筐体の外部温度)との調和を図ることができる。そして、この熱交換手段に温度センサを取り付けることで、発熱部品の温度と周囲温度とが調和された温度を測定することができ、この温度センサが測定した調和された温度に基づいて補正手段による駆動電力の補正をすることができるため、温度変化による補正を容易に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のファイバレーザ発振器において、前記筐体はアルミニウム合金で構成され、前記熱交換手段は前記アルミニウム合金より熱伝導率が高く構成されることをその要旨とする。
【0010】
この発明では、筐体はアルミニウム合金で構成され、熱交換手段は前記アルミニウム合金より熱伝導率が高く構成されるため、熱交換手段側に発熱部品の熱を伝達することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のファイバレーザ発振器において、前記熱交換手段はヒートパイプ構造であることをその要旨とする。
この発明では、熱交換手段はヒートパイプ構造であるため、発熱部品からの熱を比較的早く熱交換手段の放熱部側に伝達することが可能となるため、熱交換手段の放熱部側(周囲温度)とベース部側の温度差を即座に減少させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のファイバレーザ発振器において、前記熱交換手段は、銅、金、銀、CFRP及び3次元C/Cコンポジットのいずれかの材質で構成されることをその要旨とする。
【0013】
この発明では、熱交換手段は、銅、金、銀、CFRP及び3次元C/Cコンポジットのいずれかの材質で構成されるため、熱伝達効率を高めて、熱交換手段の放熱部側とベース部側の温度差を即座に減少させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のファイバレーザ発振器において、前記励起用レーザダイオード以外の前記種光源及び前記希土類ドープファイバの少なくとも一方を前記筐体に収容することをその要旨とする。
【0015】
この発明では、励起用レーザダイオード以外の発熱部品となる種光源及び増幅手段の前記希土類ドープファイバの少なくとも一方を筐体に収容することで、励起用レーザダイオードに熱の影響を与えるこれらの部品についても考慮して励起用レーザダイオードの駆動電流の補正を行うことが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のファイバレーザ発振器において、前記励起用レーザダイオード、前記希土類ドープファイバ及び前記種光源が同一の前記熱交換手段の前記ベース部に当接配置され、前記熱交換手段には前記温度センサが1つ取り付けられることをその要旨とする。
【0017】
この発明では、励起用レーザダイオード、希土類ドープファイバ及び種光源が同一の熱交換手段のベース部に当接配置されることで、複数の熱交換手段を設けることがなくなるため、部品点数を抑えることができる。また、熱交換手段が1つであるため温度センサも同様に1つとすることができ、更に部品点数を抑えることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のファイバレーザ発振器を備えたことをその要旨とする。
この発明では、ファイバレーザ加工装置にファイバレーザ発振器を備えるため、請求項1〜6の効果と同様の効果を奏することができるファイバレーザ加工装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
従って、上記記載の発明によれば、温度変化による補正を容易に行うことができるファイバレーザ発振器及びファイバレーザ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施形態のレーザマーキング装置のブロック図。
【図2】励起ユニットの配置例を示す模式図。
【図3】励起ユニットの温度測定について説明するための模式図。
【図4】別例の励起ユニットの温度測定について説明するための模式図。
【図5】別例の励起ユニットの温度測定について説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のファイバレーザ発振器を備えたファイバレーザ加工装置をファイバーマーキング装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、レーザマーキング装置1には、ワーク2に照射するレーザ光のソースを生成するレーザ発振器3と、レーザ発振器3から出射されたレーザ光を調光してワーク2に走査しながら照射するヘッド4とが設けられている。また、レーザマーキング装置1には、レーザマーキング装置1の動作を制御するコントローラ5と、操作パネルとなるコンソール6とが設けられている。なお、レーザマーキング装置1がレーザ加工装置に相当する。
【0022】
レーザ発振器3には、レーザ出力の種光源となるレーザダイオード(LD:Laser Diode)7と、レーザダイオード7から出力された光(以降、種光Saと言う)を増幅する増幅器8とが設けられている。レーザダイオード7は、レーザ発振器3内のドライバ9を介してコントローラ5に接続されている。コントローラ5は、ドライバ9を駆動制御することにより、レーザダイオード7をパルス発振(間欠駆動)させて、レーザダイオード7から図2に示すパルス状の種光Saを出力させる。なお、レーザダイオード7がレーザ光源に相当する。
【0023】
図1に示すように、増幅器8には、光を単一方向にのみ通す光アイソレータ10と、レーザダイオード7の種光Saを増幅させる励起ユニット11とが設けられている。励起ユニット11は、図2に示すように、励起用レーザダイオード11aと、前記コントローラ5からの指令に基づいて励起用レーザダイオード11aの駆動を制御するドライバ11bと、ドライバ11bと励起用レーザダイオード11aを電気的に接続するファイバ11cとを備える。そして、コントローラ5は、ドライバ11bを駆動制御することにより、励起用レーザダイオード11aから一定強度の光(以降、励起用レーザ光Sbと記す)を出力させる。
【0024】
図1に示すように、増幅器8には、種光Saと励起用レーザ光Sbとを結合する多重器13が設けられている。多重器13は、種光Saを励起用レーザ光Sbに合波する。また、多重器13には、多重器13にて合波した光を、一端部側から入射し他端部側から出射するファイバ(希土類ドープファイバ)14が接続されている。ここで、多重器13にて合波した光のうち、励起用レーザ光Sbにより希土類ドープファイバ14に添加されている希土類元素を励起し、希土類ドープファイバ14が励起状態となる。この励起状態の希土類ドープファイバ14に種光Saが入射(一端部側から入射)されると、誘導放出により希土類ドープファイバ14内で種光Saが増幅され、増幅された光(種光、レーザ光)が希土類ドープファイバ14の他端部側から出射される。よって、本例のレーザ発振器3は、ファイバ14によって光増幅するファイバレーザ発振器3となっている。ファイバ14は、図2に示す増幅した光(以降、増幅光Scと記す)をヘッド4に出力する。そして、ヘッド4は、この増幅光Scを図示しない走査手段(ガルバノスキャナ)によって走査しながらワーク2に照射して、ワーク2を加工する。
【0025】
図1に示すように、コンソール6には、例えば液晶画面等からなる表示器15が設けられている。表示器15には、例えばレーザマーキング装置1の動作モードを設定する各種設定画面や、レーザマーキング装置1の現在動作状態を表示する加工進捗画面などが表示される。また、コンソール6には、レーザマーキング装置1の各種動作態様を設定する際に操作する操作部16が設けられている。操作部16には、例えば電源ボタン、テンキー、モード入力ボタンなどがある。
【0026】
ここで、本実施形態の増幅器8の励起ユニット11は、前述したように、励起用レーザダイオード11aと、ドライバ11bと、ファイバ11cとを備え、これらの部品等が箱状の筐体17内部に収納されている(図2参照)。図2の場合、複数の励起用レーザダイオード11aが励起LD群として設けられ、これらが協同して所望の励起光が多重器13に出力される。
【0027】
筐体17は、図3に示すようにその一部をヒートパイプ構造の熱交換部31の一部が兼ねている。筐体17は、熱交換部31の一部以外の部分が例えばアルミニウム合金で構成される。熱交換部31は、前記筐体17の一部を兼ねるとともに励起用レーザダイオード11aが当接配置されるベース部31aと、このベース部31aからU字状に筐体17外部に延設される放熱部31bとを備えて前記アルミニウム合金よりも熱伝導率が高いヒートパイプ構造をなしている。
【0028】
ところで、励起用レーザダイオード11aのレーザ出力は、励起用レーザダイオード11a等の発熱部品の発熱による励起用レーザダイオード11a周囲の温度Tkの変化に応じて、出力強度が変化する特性がある。また、他の発熱部品(本実施形態では、励起用レーザダイオード11a以外の発熱部品、つまり、温度補正の対象としている部品以外の発熱部品)からの熱の影響により、また、天候(気候)、時間帯、空調等の影響により筐体17外部の温度(環境温度)Trも変化する。この環境温度Trが変化すると更に励起用レーザダイオード11aにもその影響を与え、励起用レーザダイオード11aのレーザ出力が変化することが懸念される。
【0029】
上記のことを勘案し、本実施形態のレーザマーキング装置1には、環境温度Tr及び発熱部品周囲の温度Tkが調和された温度Tcの温度変化によらず最終的なレーザ出力を一定値に補正する温度/出力補正機能が設けられている。この場合、コントローラ5のメモリ20には、どの調和された温度Tcのときにどの値で実レーザ出力を補正すればよいかが設定された温度補正テーブル21が記憶されている。
【0030】
そして前記熱交換部31の温度を熱交換部31の温度測定点P1において温度センサ22で測定する構成としている。この温度測定点P1は前記発熱部品周囲の温度Tkと環境温度Trが調和された温度Tcの測定点である。
【0031】
温度センサ22は、例えばサーミスタが使用され、配線23を介してドライバ11bと電気的に接続されている。温度センサ22は、レーザマーキング装置1の電源(レーザ電源)がオンされると、調和された温度Tcの測定を開始し、その測定温度Dtをコントローラ5に出力する。
【0032】
図1に示すように、コントローラ5には、温度センサ22から入力した測定温度Dtを基に温度補正テーブル21を参照してレーザ出力を補正する温度出力補正部24が設けられている。温度出力補正部24は、温度補正テーブル21から割り出した補正値を基に、励起用レーザダイオード11aを制御することにより、実レーザ出力を補正する。また、温度出力補正部24は、制御した出力を入力に戻す処理を繰り返し行って目標値に近づけるフィードバック制御にて、励起用レーザダイオード11aを制御する。
【0033】
次に、本実施形態のレーザ発振器3の動作例(作用)を説明する。
本実施形態では、筐体17よりも熱伝導率の高い熱交換部31のベース部31a上に励起用レーザダイオード11aを含む発熱部品を当接配置し、この熱交換部31の温度測定点P1の温度を温度センサ22で測定する。そして、測定温度Dtに基づいて温度出力補正部24は、温度補正テーブル21を参照して励起用レーザダイオード11aからのレーザ出力を補正するようになっている。このため、測定点(P1)1つで環境温度Trと発熱部品周囲の温度Tkとが調和された温度Tcの温度変化のみを考慮して補正するだけで、温度変化による補正を行っている。
【0034】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)発熱部品である励起用レーザダイオード11aを当接配置するベース部31aと該ベース部31aから延設されて筐体17外部に取り出される放熱部31bとを備えて筐体17よりも熱伝導率の高い材質からなる熱交換部31と、熱交換部31に取り付けられる温度センサ22と、温度センサ22からの温度情報に基づいて励起用レーザダイオード11aの駆動電力を補正する温度出力補正部24とを備える。このように筐体17よりも熱伝導率の高い熱交換部31のベース部31a上にレーザダイオード11aを当接配置することで、発熱部品である励起用レーザダイオード11aの熱は熱交換部31に偏って伝熱される。そして、この熱交換部31は筐体17外部に取り出される放熱部31bを備えているため、熱交換部31において励起用レーザダイオード11a周囲の温度Tkと周囲温度である環境温度Tr(筐体17の外部温度)との調和を図ることができる。そして、この熱交換部31に温度センサ22を取り付けることで、発熱部品である励起用レーザダイオード11a周囲の温度Tkと環境温度Trとが調和された温度Tcを測定することができ、この温度センサ22が測定した測定温度Dt(=調和された温度Tc)に基づいて温度出力補正部24による駆動電力の補正をすることができるため、温度変化による補正を容易に行うことができる。
【0035】
(2)筐体17はアルミニウム合金で構成され、熱交換部31はアルミニウム合金より熱伝導率が高く構成されるため、熱交換部31側に発熱部品である励起用レーザダイオード11aの熱を伝達することができる。この結果、温度センサ22を熱交換部31のいずれに載置してもほぼ同様の温度を測定することが可能となる。
【0036】
(3)熱交換部31はヒートパイプ構造であるため、発熱部品である励起用レーザダイオード11aからの熱を比較的早く熱交換部31の放熱部31b側に伝達することが可能となるため、熱交換部31の放熱部31b側とベース部31a側の温度差を即座に減少させることができる。この結果、温度センサ22を熱交換部31のいずれに載置してもほぼ同様の温度を測定することが可能となる。
【0037】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・上記実施形態では、熱交換部31のベース部31aが筐体17の一部を兼ねる構成としたが、これに限らない。例えば、図4に示すように、有底筒状の筐体本体17aと、この筐体本体17aの開口を貫通孔17cを形成した状態で閉塞する蓋部17bとで筐体17を構成し、前記貫通孔17cから熱交換部31のベース部31aを挿入配置する構成を採用してもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、熱交換部31をベース部31aと放熱部31bとで略U字状としたが、これに限らない。例えば図5に示すように、同一平面上においてループ上をなすように熱交換部31を構成し、一部(放熱部31b)が筐体17外部に露出する構成を採用してもよい。
【0039】
・上記実施形態では、特に言及していないが、熱交換部31について銅、金、銀、CFRP及び3次元C/Cコンポジットのいずれかの材質を用いる構成を採用してもよい。このような構成とすることで、熱伝達効率を高めて、熱交換手段の放熱部側とベース部側の温度差を即座に減少させることができる。
【0040】
・上記実施形態では、熱交換部31としてヒートパイプ構造を採用したが、筐体17の材質よりも熱伝導率が高い銅、金、銀、CFRP及び3次元C/Cコンポジット等の材質を用いて、ヒートパイプ構造としない構成を採用してもよい。要は、発熱部品周囲の温度Tkと環境温度Trとが調和された温度を測定できる構成であればよい。
【0041】
・上記実施形態では、特に言及していないが、更なる放熱性向上のために、励起用レーザダイオード11aと筐体17外部との距離を極力短くする構成が望ましい。例えば、前述した3次元C/Cコンポジットのように熱伝導材(高伝導率)かつ高剛性材を用いることで、ベース部31aの厚みを薄くして筐体17外部と励起用レーザダイオード11aとの距離を短くすることが可能となる。
【0042】
・上記実施形態では、特に言及していないが、複数の励起用レーザダイオード11aを1つの筐体17内部に収容する場合、筐体内壁と各励起用レーザダイオード11aとの距離を等しくすることが望ましい。このような構成とすることで、各励起用レーザダイオード11aが環境温度Trから受ける影響を等しくすることができ、各励起用レーザダイオード11aの温度変化のバラツキを抑えることができる。
【0043】
・上記実施形態では、熱交換部31を主に増幅器8の励起用レーザダイオード11aに対応して配置したが、これに加えて種光Saを出力するレーザダイオード7についても同様に熱交換部31のベース部31aと当接配置して温度特性による補正を行う構成を採用してもよい。これに加えて、希土類ドープファイバ14についても同様に熱交換部31のベース部31aと当接配置してもよい。
【0044】
また、単に励起用レーザダイオード11aと希土類ドープファイバ14とを熱交換部31のベース部31aと当接配置して励起用レーザダイオード11aの温度特性による補正を行う構成を採用してもよい。この他、自身の発熱や環境温度変化によって出力が変化するなどの温度特性を有する素子についても同様に熱交換部31のベース部31aと当接配置して補正を行う構成を採用してもよい。このように、励起用レーザダイオード以外の発熱部品となるレーザダイオード7及び希土類ドープファイバ14の少なくとも一方を筐体17に収容することで、励起用レーザダイオード11aに熱の影響を与えるこれらの部品についても考慮して励起用レーザダイオード11aの駆動電流の補正を行うことが可能となる。
【0045】
なお、励起用レーザダイオード11a、希土類ドープファイバ14及び種光源であるレーザダイオード7を同一の筐体17に収容する場合、同一の熱交換部31のベース部31aに当接配置させて、この熱交換部31には温度センサ22を1つ設ける構成が望ましい。このような構成とすることで、複数の熱交換部31を設けることがなくなるため、部品点数を抑えることができる。また、熱交換部31が1つであるため温度センサ22も同様に1つとすることができ、更に部品点数を抑えることができる。
【0046】
・上記実施形態では、1つの増幅器8で構成したが、前段増幅器及び後段増幅器というように複数の増幅器で構成する場合、前段増幅器及び後段増幅器のそれぞれの励起用レーザダイオード11aと当接配置されるベース部31aを備えたヒートパイプ構造の熱交換部31に温度センサ22を配置する構成を採用してもよい。
【0047】
また、前記前段増幅器及び後段増幅器がコントローラ5とヘッド4とで分離している場合、ヘッド4及びコントローラ5の前段増幅器及び後段増幅器のそれぞれの励起用レーザダイオード11aと当接配置されるベース部31aを備えたヒートパイプ構造の熱交換部31に温度センサ22を配置する構成を採用してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、温度センサ22としてサーミスタを採用したが、これに限らず他の温度センサを採用してもよい。
・上記実施形態では、レーザ加工装置として文字等をマーキングするレーザマーキング装置1を採用したが、レーザを利用した種々のレーザ加工装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
3…ファイバレーザ発振器、7…レーザダイオード(種光源)、8…増幅器(増幅手段)、11a…励起用レーザダイオード、17…筐体、22…温度センサ、24…温度出力補正部(補正手段)、31…熱交換部(熱交換手段)、31a…ベース部、31b…放熱部、Sa…種光、Sb…励起用レーザ光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種光源において生成される種光を励起用レーザダイオードからの励起用レーザ光により希土類ドープファイバ内で増幅させる増幅手段を備えたファイバレーザ発振器であって、
少なくとも前記励起用レーザダイオードを含む発熱部品を収容する筐体と、
前記発熱部品を当接配置するベース部と該ベース部から延設されて前記筐体外部に取り出される放熱部とを備えて前記筐体よりも熱伝導率の高い材質からなる熱交換手段と、
前記熱交換手段に取り付けられる温度センサと、
前記温度センサからの温度情報に基づいて前記励起用レーザダイオードの駆動電流を補正する補正手段と
を備えたことを特徴とするファイバレーザ発振器。
【請求項2】
請求項1に記載のファイバレーザ発振器において、
前記筐体はアルミニウム合金で構成され、前記熱交換手段は前記アルミニウム合金より熱伝導率が高く構成されることを特徴とするファイバレーザ発振器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のファイバレーザ発振器において、
前記熱交換手段はヒートパイプ構造であることを特徴とするファイバレーザ発振器。
【請求項4】
請求項3に記載のファイバレーザ発振器において、
前記熱交換手段は、銅、金、銀、CFRP及び3次元C/Cコンポジットのいずれかの材質で構成されることを特徴とするファイバレーザ発振器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のファイバレーザ発振器において、
前記励起用レーザダイオード以外の前記種光源及び前記増幅手段の前記希土類ドープファイバの少なくとも一方を前記筐体に収容することを特徴とするファイバレーザ発振器。
【請求項6】
請求項5に記載のファイバレーザ発振器において、
前記励起用レーザダイオード、前記希土類ドープファイバ及び前記種光源が同一の前記熱交換手段の前記ベース部に当接配置され、前記熱交換手段には前記温度センサが1つ取り付けられることを特徴とするファイバレーザ発振器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のファイバレーザ発振器を備えたことを特徴とするファイバレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77720(P2013−77720A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217089(P2011−217089)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000106221)パナソニック デバイスSUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】