ファイバ又はフィラメント
体積変調着色生成物質(6)と、物質を細長いコアの形で封じ込め、少なくとも部分的に光透過性である格納手段(8)と、物質の体積における変化を生成するよう物質を刺激し、それにより、フィラメント又はファイバの色を変化する刺激手段(4)を有するフィラメント又はファイバ(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバ又はフィラメント、特に、その中に光学的に検出可能な効果を生成する目的でファブリック又は衣服に含めるのに適したファイバ又はフィラメントに係る。
【背景技術】
【0002】
色変化又は発光するファイバを生成する様々な方法が知られている。
【0003】
1つの公知の方法は、ファイバの一端に光が供給されると穿孔を通して光を「漏らす」穿孔された光ファイバを使用する。この方法の不利点は、LEDといった外部光源が必要であることである。
【0004】
別の公知の方法は更に、特定のサーモクロミック材料、即ち、温度変化の影響を受けて色を変化する材料を使用する。このような方法は、特許文献1に開示される。多くの用途に対して、電気刺激を直接使用することができないことと、周囲の温度が効果に影響を与えることは不利である。
【0005】
もう1つの公知の方法は、電界の影響下で光を放射する電子発光体材料の使用に基づく。このような方法は、特許文献2及び特許文献3に記載される。少なくとも2つの電極をファイバに組み込むことで、そのような方法に使用する電界を形成する。
【0006】
この方法を用いてファイバの色の能動的制御を実現することが可能ではあるが、色変化を実現するためにファイバに高電圧をかけなければならない。更に、この方法は、昼の光では、不十分なコントラストを有するファイバを生成する。というのは、エレクトロルミネセント効果は、発光だからである。
【0007】
本発明は、特に、ウェアラブル電子機器の分野に係る。この分野は、感知、作動、発光、及び色変化といった特定の機能を衣服に組み込むことを目的とする。衣服、家具等の形成のために織物内に色変化特性を組み込むことが可能であることが特に望ましい。このような技術は、ウェラブルディスプレイ、ウェラブル指示器を作成する、及び、美学的な理由のために織物に対する色又はパターンの変化を単純にもたらすために使用することが可能である。
【0008】
導電性ファイバ及び電子光材料を含むファイバを織り交ぜることによりウェラブルディスプレイを生成することが知られている。このようなディスプレイでの問題は、発光効果は、1つのファイバにまとめられていないということである。これは、効果が、衣服又はファイバから形成された他の作品全体に亘って均一ではないことを意味する。更に、導電性素子を含む織り交ぜられた2つのファイバのセットか、又は、編まれた構造上に配置される追加の導電層のいずれかを使用することが必要である。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0410415号
【特許文献2】英国特許出願第2273606号
【特許文献3】国際公開第97/15939号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、色変化機能が単一のファイバ又はフィラメントに組み込まれ、その色変化は能動的に制御可能である、ファイバ又はフィラメントを提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、低印加圧力において色変化を実現し、また、良好な色コントラストを達成することをもう1つの目的とする。
【0011】
本発明は、例えば、衣服又は家具を形成するために使用されうるファブリックを本発明のファイバ又はフィラメントから形成することを更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の面では、体積変調着色生成物質と、物質を細長いコアの形で封じ込め、少なくとも部分的に光透過性である格納手段と、物質の体積における変化を生成するよう物質を刺激し、それにより、フィラメント又はファイバの色を変化する刺激手段を有するフィラメント又はファイバを提供する。
【0013】
従って、本発明により、ファイバ又はフィラメントの色変化又は発光の真の一体化を実現することが可能である。何故なら、色変化機能が、単一のファイバ、フィラメント、又は糸に組み込まれるからである。
【0014】
更に、本発明のファイバ又はフィラメントにおける色変化は能動的に制御することが可能であり、上述した公知の方法において必要である電圧より低い電圧を必要とする。一般的に、色変化は、本発明のファイバ又はフィラメントにおいて、約10mVの電圧を用いて達成可能である。
【0015】
更に、体積変調着色生成物質の使用により、色変化は、反射原理を用いて達成される。これは、日中の光において良好なコントラストが達成されることを意味する。
【0016】
物質は、任意の公知の体積変調着色生成物質を有しえ、例えば、米国特許第6,287,485号に記載されたようなタイプの物質である。
【0017】
このような光変調材料は、自然にある色素細胞の挙動を模倣する。イカやタコといった頭足類は、皮膚の色とパターンを素早く変化させる能力を有する。この現象は、それらの皮膚にある色素細胞による。このようなタイプの色素細胞は、着色剤を有する弾性色素袋と、複数の筋繊維からなる。色を変更するメカニズムは、筋肉の動作に応じた色付き袋のサイズの可逆変更をもたらす着色剤の拡散及び凝集に基づく。色素袋が膨張すると、色が現れ、色素袋が収縮すると、色が消える。
【0018】
この自然の色素細胞の原理に基づいて、色素細胞の色変化メカニズムを真似る材料が設計された(R. Akashi、H. Tsutsui、A. Komuraによる「Polymer gel light−emitting−modulation imitating pigment cells」(Adv. Mater. 2002、第14巻、第24号、1808−1811ページ)を参照されたい)。
【0019】
この材料は、色素といった高い濃度の着色剤を含む刺激反応ゲルである。この材料は、温度、pH、光、又は電界における変化といった外部刺激に反応して可逆の体積相転移を示す。
【0020】
温度により誘発された転移に対して350回以上の体積変化が観察され、一方、1V/cmまで低い電界の印加による最大100回の特定のゲルにおける体積変化が測定された。
【0021】
光変調のメカニズムは、可逆の色変化による。即ち、光変調は、光吸収の面積の変化と、ゲル内の着色剤の吸収効率との間の相乗効果により引き起こされる。
【0022】
体積変調着色生成物質は、例えば、液体、ゲル、又は、体積変調着色生成材料を含む他の組成物でありうる。
【0023】
物質は、水溶液を有し、その中にはポリマーゲル粒子が浸漬されることが有利である。ポリマーゲル粒子は、人工色素細胞を有し、また、5乃至100μmの範囲の直径を有することが好適である。
【0024】
水溶液における色素細胞の濃度は、一般的に5乃至40重量%デ有り、水溶液中のゲルの固体成分含有量は、一般的に1乃至10重量%であることが好適である。
【0025】
刺激手段により刺激されると、ゲル粒子は、基本的に、水溶液から周りの液体を吸収することにより膨らむ。これは、物質の体積全体は実質的に同じままであるが、ゲル粒子により吸収される体積だけが増加することを意味する。
【0026】
刺激手段は、物質を加熱する加熱手段を有することが好都合である。この物質は、体積変調着色剤を有し、この物質の体積は、温度に応じて変化する。加熱手段は、例えば、細長いコアの中を実質的に軸方向に延在する内側電極の形でありうる。
【0027】
内側電極は、数十μm乃至数百μmの範囲、例えば、100μmの距離だけ格納手段から間隔がおかれることが有利である。
【0028】
フィラメント又はファイバは、加熱手段の中に電流を通し、それにより、フィラメント又はファイバにおける加熱効果をもたらし、それにより、物質が体積、従って色を変化させる手段を更に有することが好適である。
【0029】
或いは、刺激手段は、物質全体に電界をかける電気手段を有し、この物質は、体積変調着色剤を有し、この物質の体積は、電界に応じて変化する。
【0030】
電気手段は、例えば、細長いコアの外面に沿ってそれぞれ延在する一対の電極を有しうる。フィラメント又はファイバは更に、電極を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも部分的に光透過性である絶縁コーティングを有する。
【0031】
電極は、絡み合わされ、コアに沿って実質的に螺旋状にそれぞれ延在することが好適である。
【0032】
或いは、電気手段は、コアの中を実質的に軸方向に延在する内側電極と、外側電極を形成する格納手段を有しえ、フィラメント又はファイバは更に、第2の電極を少なくとも部分的に取り囲む光透過性絶縁コーティングを有する。
【0033】
このような実施例では、第2の電極は、事実上、フィラメント又はファイバのシースを形成し、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)又はポリアニリン(PANI)といった導電性ポリマーから形成されることが好適である。
【0034】
ファイバ又はフィラメントは、ファイバを所定の形状に維持するためのスペーサ手段を有することが好適である。体積変調着色生成物質の性質に依存して、特に物質が液体形状を有し、従って、自己保持形状を有さない場合にフィラメント又はファイバ内にスペーサを含むことが有利である。
【0035】
スペーサ手段は、非導電性材料から形成されることが好適であり、例えば、細長いワイヤ又は実質的に球状のビーズの形でありうる。
【0036】
コアに沿って実質的に軸方向に延在する内側電極を有する本発明の実施例では、スペーサ手段は、内側電極とシースとの間の距離を決定しうる。外側電極を有する本発明の実施例では、スペーサ手段は、内側電極と外側電極との間に延在する。
【0037】
スペーサ手段は、内側電極に沿って実質的に螺旋状に延在する1つ以上のワイヤを有することが有利である。1つ以上のワイヤの直径は、数十μm乃至数百μm、例えば、100μmであることが有利である。1つ以上のワイヤの直径が、物質により形成される色変化層の厚さを決定する。
【0038】
或いは、スペーサ手段は、物質内に入れられた、又は、内側電極上に配置された複数の実質的に球状のビーズを有する。ビーズは、数十μm及び数百μmの範囲、例えば、100μmの直径を有することが有利である。
【0039】
スペーサ手段は、内側電極及び外側電極を有する本発明の実施例において特に有利である。スペーサ手段は、ファイバ又はフィラメントが折れ曲がることを阻止し、従って、電内側電極と外側電極が互いに接触することを阻止する。
【0040】
格納手段は、少なくとも部分的に透明であることが好適である外側シースを有することが有利である。しかし、外側シースは、或いは、不透明であってもよい。
【0041】
外側シースは、弾性ポリマーから好都合に形成される。格納手段は、押出し成形されたポリマーから形成された実質的に細長い部材を有することが好適である。この細長い部材は、内側の実質的に円筒型の中空部分と、その第1の部分と実質的に同軸である外側の実質的に円筒型の部分を有することが好適である。
【0042】
第1の部分は、その中に、内側電極筐体を画成することが好都合である。更に、内側部分と外側部分との間に空間が画成され、その空間は、物質を含むよう適応される。
【0043】
細長い部材は更に、複数の空洞を画成するために内側部分から外側部分に延在する1つ以上のラジアル部分を有し、各空洞は、物質を含みうる。
【0044】
ラジアル部分は、実質的に固体でありえ、それにより、空洞間の物質の移動を阻止する。このような実施例では、各空洞内の物質は、刺激を受けると異なる色を生成するよう選択されうる。
【0045】
或いは、ラジアル部分は、1つ以上の空洞間での連絡を可能にしうる。
【0046】
細長い部材は更に、内側電極筐体内に位置付けられる内側電極を形成し、細長い部材と共に共押出しされる導電性コアを更に有することが有利である。
【0047】
本発明の第2の面では、ファイバ又はフィラメントを形成する方法であって、細長いコアの形に体積変調着色生成物質を含む格納手段を形作る段階と、格納手段に、体積変調着色生成物質を刺激する刺激手段を関連付ける段階と、体積変調着色生成物質を、格納手段により画成される空間に加える段階と、格納手段を密封する段階を有する方法を提供する。
【0048】
格納手段を形作る段階と、格納手段に刺激手段を関連付ける段階は、導電性材料を中心の細長コアの形に、また、非導電性材料を、導電性細長コアを囲む第1の中空細長部及び第1の細長部から間隔がおかれた第2の同軸中空細長部の形に共押出し成形する単一の段階に組み合わされ、第1の細長部及び第2の細長部は、第1の細長部から第2の細長部に延在する1つ以上の半径方向に延在する部分により接合されることが好適である。
【0049】
本発明の方法は、外側細長部の外面上に、透明導電性層を配置する更なる段階を有することが有利である。本発明の方法は、透明導電性層の外面上に、透明保護及び絶縁コーティングを配置する更なる段階を有することが好適である。
【0050】
本発明を、添付図面を参照しながら、以下に例示的にのみ説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
図1及び2をまず参照するに、本発明のファイバは、参照番号2として全体的に示す。ファイバ2は、ファイバ2の軸に沿って実質的に中心に延在する電極4の形の刺激手段を有する。
【0052】
ファイバ2は更に、人工色素細胞の形の体積変調着色剤を含む体積変調着色生成物質6を有する。この物質は、透明で、弾性ポリマーから形成されたシースの形である格納手段8内に保持される。電極は、銅といった任意の好適な材料から形成される。電流が電極4内を流されると、電極はその抵抗により加熱する。この熱が、溶液中に浸漬された色素細胞(図示せず)における体積変化を刺激する物質6における温度上昇を引き起こす。これは次に色変化を引き起こす。シース8は、透明であるので、色変化は、ファイバ2の長さに沿って見ることができる。色素細胞は、水溶液内に浸漬されたポリマーゲル粒子内に含まれる。
【0053】
一般的に、ゲル粒子は、それぞれ、5乃至10μmの範囲である直径を有し、物質2の径方向深度は、数十μm乃至数百μmであり、一般的に、約100μmである。
【0054】
次に、図3及び4を参照するに、本発明のファイバの第2の実施例を、参照番号20として全体的に示す。ファイバ20は、互いに絡み合わされ、ファイバ20に沿って軸方向に延在する2つの電極22、24を有する。各電極22、24は、ファイバ20に沿って実質的に螺旋状に延在する。ファイバ20は更に、外側シース28内に入れられる色素細胞(図示せず)を含む体積変調着色生成物質26を有する。2つの電極22、24間に電圧差をかけることにより、色素細胞における体積変化を刺激する電界が誘発され、その結果、色変化がもたらされる。透明の絶縁コーティング30が電極22、24の周りに塗布される。シース28の直径は、数十μm乃至数百μmの間であり、一般的に、100μmである。
【0055】
次に、図5及び6を参照するに、本発明のファイバの第3の実施例を、参照番号40として全体的に示す。ファイバ40は、中心電極42を有し、中心電極は、色素細胞(図示せず)を含む体積変調着色生成物質44により囲まれる。第2の電極46は細胞の形にあり、従って、格納手段としても作用する。第2の電極は、ITO(インジウムスズ酸化物)といった透明の導電性材料から形成されることが好適である。しかし、この材料は、限定された弾性を有する。というのは、この材料は、比較的低い変形(一般的に2%)において破損するからである。ファイバの弾性を維持するために、電極46は、PEDOT又はPANIといった導電性ポリマーから形成されうる。電界が、電極42及び46間に電圧差をかけることによって作成され、これは、色素細胞の体積変化、従って、ファイバ40に色変化をもたらす。ファイバは更に、電極46を囲む透明絶縁シース48を有する。
【0056】
本願において上述した本発明の第1の実施例及び第3の実施例では、中心電極(4、42)に任意選択の色付き層を追加しうる。このような実施例は、色付き層の色が見える状態と、色素細胞の体積増加時に色素細胞の色が見える第2の状態との間で切り替わることを可能にする。色付き層の色は、色素細胞内の色素の色と同様に自由に選択されうる。しかし、色素の色は、層の色とは異ならなくてはならない。
【0057】
図7a及び7bを参照するに、本発明のファイバの第4の実施例を、参照番号70として全体的に示す。ファイバ70は、ファイバ40(図5及び6)と類似しており、図5及び6において示す部分に対応する部分には、理解をし易いよう対応する参照番号を付している。
【0058】
ファイバ70は更に、スペーサワイヤ72の形のスペーサを有する。スペーサワイヤ72は、物質6の体積に明確な厚さが存在することを確実にする。これは、物質6は、液体状の特性を有し、従って、固定の形状を有さないので必要である。この実施例におけるスペーサは、1つ以上のワイヤの形であり、これらは、内側電極42の周りに絡ませられる。電極42と電極74との間の距離は、スペーサワイヤ72の直径により決定される。図示する実施例では、各スペーサワイヤの直径は、数十μm乃至数百μmの間であり、一般的に、10μmである。スペーサワイヤは、内側電極と外側電極の間の短絡を阻止するよう非導電性であるべきである。
【0059】
図8a及び8bを参照するに、本発明のファイバの第5の実施例を、参照番号80として全体的に示す。ファイバ80は、中心電極82を有し、この中心電極は、体積変調着色生成物質86、外側電極84、及び外側シース88により囲まれる。ファイバ80は更に、物質86内に入れられた実質的に球状のスペーサビーズの形のスペーサ90を有する。各ビーズ90の直径が、内側電極82と外側電極84との間の所望の距離に実質的に等しい。これは、逆に、物質86の厚さを決定し、この厚さは、一般的に、数十μm乃至数百μm、例えば、100μmである。スペーサ球体90は、内側電極と外側電極の間の短絡を阻止するよう非導電性であるべきである。ビーズは、物質86内に組み込まれるか、又は、内側電極82上に直接置かれてもよい。
【0060】
図9を参照するに、本発明のファイバの第6の実施例を、参照番号100として全体的に示す。ファイバ100は、共押出しにより形成される。少なくとも2つの材料、即ち、内側電極110を形成する導電性材料と、シース120を形成する非導電性材料が押出し処理に使用される。非導電性材料は、例えば、ポリマー材料でありうる。
【0061】
シース120は、内側にある実質的に円筒状の部分130により中心電極110を少なくとも実質的に取り込むよう形作られる。シースは更に、中心部分130から、中心部分130と実質的に同軸である外側の実質的に円筒状の部分150に延在し、互いに間隔があけられるラジアル部分140を有する。従って、シース120は、ファイバ100の長さに沿って延在する空洞160を画成する。空洞は、互いに分離されていても、又は、物質が空洞間を移動可能であってもよい。
【0062】
このような幾何学は、スピナレットを通して共押出しする周知の技術を用いて得られる。ファイバ100は更に、例えば、ITO又は導電性ポリマーから形成される透明導電性層170と、透明保護及び絶縁コーティング180を有する。層170及びコーティング180は、押出しシース120の周りに置かれる。空洞160は次に、例えば、キャピラリー充填法により体積変調着色生成物質190で充填される。
【0063】
図9は、3つの空洞160を有するファイバ100を示すが、他の幾何学及び異なる数の空洞も可能であることを理解するべきである。シース180は、ファイバ100に強度及び構造を与える。
【0064】
中心電極及び/又はシェル電極と、例えば、図3に示す巻き付けられた電極との他の可能な組合せも、電界を生成するために可能であることを理解するべきである。
【0065】
色素細胞における色素は、異なる色を得るために様々であることが可能である。色変化織物が、異なる色特性又は色素を有するファイバの様々なセットを織り交ぜ、各セットを別々に制御することにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のファイバの第1の実施例を示す断面図である。
【図2】図1のファイバを示す断面図である。
【図3】本発明のファイバの第2の実施例を示す図である。
【図4】図3のファイバを示す断面図である。
【図5】本発明のファイバの第3の実施例を示す断面図である。
【図6】図5のファイバを示す図である。
【図7a】本発明のファイバの第4の実施例を示す図である。
【図7b】本発明のファイバの第4の実施例を示す図である。
【図8a】本発明のファイバの第5の実施例を示す図である。
【図8b】本発明のファイバの第5の実施例を示す図である。
【図9】本発明のファイバの第6の実施例を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバ又はフィラメント、特に、その中に光学的に検出可能な効果を生成する目的でファブリック又は衣服に含めるのに適したファイバ又はフィラメントに係る。
【背景技術】
【0002】
色変化又は発光するファイバを生成する様々な方法が知られている。
【0003】
1つの公知の方法は、ファイバの一端に光が供給されると穿孔を通して光を「漏らす」穿孔された光ファイバを使用する。この方法の不利点は、LEDといった外部光源が必要であることである。
【0004】
別の公知の方法は更に、特定のサーモクロミック材料、即ち、温度変化の影響を受けて色を変化する材料を使用する。このような方法は、特許文献1に開示される。多くの用途に対して、電気刺激を直接使用することができないことと、周囲の温度が効果に影響を与えることは不利である。
【0005】
もう1つの公知の方法は、電界の影響下で光を放射する電子発光体材料の使用に基づく。このような方法は、特許文献2及び特許文献3に記載される。少なくとも2つの電極をファイバに組み込むことで、そのような方法に使用する電界を形成する。
【0006】
この方法を用いてファイバの色の能動的制御を実現することが可能ではあるが、色変化を実現するためにファイバに高電圧をかけなければならない。更に、この方法は、昼の光では、不十分なコントラストを有するファイバを生成する。というのは、エレクトロルミネセント効果は、発光だからである。
【0007】
本発明は、特に、ウェアラブル電子機器の分野に係る。この分野は、感知、作動、発光、及び色変化といった特定の機能を衣服に組み込むことを目的とする。衣服、家具等の形成のために織物内に色変化特性を組み込むことが可能であることが特に望ましい。このような技術は、ウェラブルディスプレイ、ウェラブル指示器を作成する、及び、美学的な理由のために織物に対する色又はパターンの変化を単純にもたらすために使用することが可能である。
【0008】
導電性ファイバ及び電子光材料を含むファイバを織り交ぜることによりウェラブルディスプレイを生成することが知られている。このようなディスプレイでの問題は、発光効果は、1つのファイバにまとめられていないということである。これは、効果が、衣服又はファイバから形成された他の作品全体に亘って均一ではないことを意味する。更に、導電性素子を含む織り交ぜられた2つのファイバのセットか、又は、編まれた構造上に配置される追加の導電層のいずれかを使用することが必要である。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0410415号
【特許文献2】英国特許出願第2273606号
【特許文献3】国際公開第97/15939号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、色変化機能が単一のファイバ又はフィラメントに組み込まれ、その色変化は能動的に制御可能である、ファイバ又はフィラメントを提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、低印加圧力において色変化を実現し、また、良好な色コントラストを達成することをもう1つの目的とする。
【0011】
本発明は、例えば、衣服又は家具を形成するために使用されうるファブリックを本発明のファイバ又はフィラメントから形成することを更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の面では、体積変調着色生成物質と、物質を細長いコアの形で封じ込め、少なくとも部分的に光透過性である格納手段と、物質の体積における変化を生成するよう物質を刺激し、それにより、フィラメント又はファイバの色を変化する刺激手段を有するフィラメント又はファイバを提供する。
【0013】
従って、本発明により、ファイバ又はフィラメントの色変化又は発光の真の一体化を実現することが可能である。何故なら、色変化機能が、単一のファイバ、フィラメント、又は糸に組み込まれるからである。
【0014】
更に、本発明のファイバ又はフィラメントにおける色変化は能動的に制御することが可能であり、上述した公知の方法において必要である電圧より低い電圧を必要とする。一般的に、色変化は、本発明のファイバ又はフィラメントにおいて、約10mVの電圧を用いて達成可能である。
【0015】
更に、体積変調着色生成物質の使用により、色変化は、反射原理を用いて達成される。これは、日中の光において良好なコントラストが達成されることを意味する。
【0016】
物質は、任意の公知の体積変調着色生成物質を有しえ、例えば、米国特許第6,287,485号に記載されたようなタイプの物質である。
【0017】
このような光変調材料は、自然にある色素細胞の挙動を模倣する。イカやタコといった頭足類は、皮膚の色とパターンを素早く変化させる能力を有する。この現象は、それらの皮膚にある色素細胞による。このようなタイプの色素細胞は、着色剤を有する弾性色素袋と、複数の筋繊維からなる。色を変更するメカニズムは、筋肉の動作に応じた色付き袋のサイズの可逆変更をもたらす着色剤の拡散及び凝集に基づく。色素袋が膨張すると、色が現れ、色素袋が収縮すると、色が消える。
【0018】
この自然の色素細胞の原理に基づいて、色素細胞の色変化メカニズムを真似る材料が設計された(R. Akashi、H. Tsutsui、A. Komuraによる「Polymer gel light−emitting−modulation imitating pigment cells」(Adv. Mater. 2002、第14巻、第24号、1808−1811ページ)を参照されたい)。
【0019】
この材料は、色素といった高い濃度の着色剤を含む刺激反応ゲルである。この材料は、温度、pH、光、又は電界における変化といった外部刺激に反応して可逆の体積相転移を示す。
【0020】
温度により誘発された転移に対して350回以上の体積変化が観察され、一方、1V/cmまで低い電界の印加による最大100回の特定のゲルにおける体積変化が測定された。
【0021】
光変調のメカニズムは、可逆の色変化による。即ち、光変調は、光吸収の面積の変化と、ゲル内の着色剤の吸収効率との間の相乗効果により引き起こされる。
【0022】
体積変調着色生成物質は、例えば、液体、ゲル、又は、体積変調着色生成材料を含む他の組成物でありうる。
【0023】
物質は、水溶液を有し、その中にはポリマーゲル粒子が浸漬されることが有利である。ポリマーゲル粒子は、人工色素細胞を有し、また、5乃至100μmの範囲の直径を有することが好適である。
【0024】
水溶液における色素細胞の濃度は、一般的に5乃至40重量%デ有り、水溶液中のゲルの固体成分含有量は、一般的に1乃至10重量%であることが好適である。
【0025】
刺激手段により刺激されると、ゲル粒子は、基本的に、水溶液から周りの液体を吸収することにより膨らむ。これは、物質の体積全体は実質的に同じままであるが、ゲル粒子により吸収される体積だけが増加することを意味する。
【0026】
刺激手段は、物質を加熱する加熱手段を有することが好都合である。この物質は、体積変調着色剤を有し、この物質の体積は、温度に応じて変化する。加熱手段は、例えば、細長いコアの中を実質的に軸方向に延在する内側電極の形でありうる。
【0027】
内側電極は、数十μm乃至数百μmの範囲、例えば、100μmの距離だけ格納手段から間隔がおかれることが有利である。
【0028】
フィラメント又はファイバは、加熱手段の中に電流を通し、それにより、フィラメント又はファイバにおける加熱効果をもたらし、それにより、物質が体積、従って色を変化させる手段を更に有することが好適である。
【0029】
或いは、刺激手段は、物質全体に電界をかける電気手段を有し、この物質は、体積変調着色剤を有し、この物質の体積は、電界に応じて変化する。
【0030】
電気手段は、例えば、細長いコアの外面に沿ってそれぞれ延在する一対の電極を有しうる。フィラメント又はファイバは更に、電極を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも部分的に光透過性である絶縁コーティングを有する。
【0031】
電極は、絡み合わされ、コアに沿って実質的に螺旋状にそれぞれ延在することが好適である。
【0032】
或いは、電気手段は、コアの中を実質的に軸方向に延在する内側電極と、外側電極を形成する格納手段を有しえ、フィラメント又はファイバは更に、第2の電極を少なくとも部分的に取り囲む光透過性絶縁コーティングを有する。
【0033】
このような実施例では、第2の電極は、事実上、フィラメント又はファイバのシースを形成し、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)又はポリアニリン(PANI)といった導電性ポリマーから形成されることが好適である。
【0034】
ファイバ又はフィラメントは、ファイバを所定の形状に維持するためのスペーサ手段を有することが好適である。体積変調着色生成物質の性質に依存して、特に物質が液体形状を有し、従って、自己保持形状を有さない場合にフィラメント又はファイバ内にスペーサを含むことが有利である。
【0035】
スペーサ手段は、非導電性材料から形成されることが好適であり、例えば、細長いワイヤ又は実質的に球状のビーズの形でありうる。
【0036】
コアに沿って実質的に軸方向に延在する内側電極を有する本発明の実施例では、スペーサ手段は、内側電極とシースとの間の距離を決定しうる。外側電極を有する本発明の実施例では、スペーサ手段は、内側電極と外側電極との間に延在する。
【0037】
スペーサ手段は、内側電極に沿って実質的に螺旋状に延在する1つ以上のワイヤを有することが有利である。1つ以上のワイヤの直径は、数十μm乃至数百μm、例えば、100μmであることが有利である。1つ以上のワイヤの直径が、物質により形成される色変化層の厚さを決定する。
【0038】
或いは、スペーサ手段は、物質内に入れられた、又は、内側電極上に配置された複数の実質的に球状のビーズを有する。ビーズは、数十μm及び数百μmの範囲、例えば、100μmの直径を有することが有利である。
【0039】
スペーサ手段は、内側電極及び外側電極を有する本発明の実施例において特に有利である。スペーサ手段は、ファイバ又はフィラメントが折れ曲がることを阻止し、従って、電内側電極と外側電極が互いに接触することを阻止する。
【0040】
格納手段は、少なくとも部分的に透明であることが好適である外側シースを有することが有利である。しかし、外側シースは、或いは、不透明であってもよい。
【0041】
外側シースは、弾性ポリマーから好都合に形成される。格納手段は、押出し成形されたポリマーから形成された実質的に細長い部材を有することが好適である。この細長い部材は、内側の実質的に円筒型の中空部分と、その第1の部分と実質的に同軸である外側の実質的に円筒型の部分を有することが好適である。
【0042】
第1の部分は、その中に、内側電極筐体を画成することが好都合である。更に、内側部分と外側部分との間に空間が画成され、その空間は、物質を含むよう適応される。
【0043】
細長い部材は更に、複数の空洞を画成するために内側部分から外側部分に延在する1つ以上のラジアル部分を有し、各空洞は、物質を含みうる。
【0044】
ラジアル部分は、実質的に固体でありえ、それにより、空洞間の物質の移動を阻止する。このような実施例では、各空洞内の物質は、刺激を受けると異なる色を生成するよう選択されうる。
【0045】
或いは、ラジアル部分は、1つ以上の空洞間での連絡を可能にしうる。
【0046】
細長い部材は更に、内側電極筐体内に位置付けられる内側電極を形成し、細長い部材と共に共押出しされる導電性コアを更に有することが有利である。
【0047】
本発明の第2の面では、ファイバ又はフィラメントを形成する方法であって、細長いコアの形に体積変調着色生成物質を含む格納手段を形作る段階と、格納手段に、体積変調着色生成物質を刺激する刺激手段を関連付ける段階と、体積変調着色生成物質を、格納手段により画成される空間に加える段階と、格納手段を密封する段階を有する方法を提供する。
【0048】
格納手段を形作る段階と、格納手段に刺激手段を関連付ける段階は、導電性材料を中心の細長コアの形に、また、非導電性材料を、導電性細長コアを囲む第1の中空細長部及び第1の細長部から間隔がおかれた第2の同軸中空細長部の形に共押出し成形する単一の段階に組み合わされ、第1の細長部及び第2の細長部は、第1の細長部から第2の細長部に延在する1つ以上の半径方向に延在する部分により接合されることが好適である。
【0049】
本発明の方法は、外側細長部の外面上に、透明導電性層を配置する更なる段階を有することが有利である。本発明の方法は、透明導電性層の外面上に、透明保護及び絶縁コーティングを配置する更なる段階を有することが好適である。
【0050】
本発明を、添付図面を参照しながら、以下に例示的にのみ説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
図1及び2をまず参照するに、本発明のファイバは、参照番号2として全体的に示す。ファイバ2は、ファイバ2の軸に沿って実質的に中心に延在する電極4の形の刺激手段を有する。
【0052】
ファイバ2は更に、人工色素細胞の形の体積変調着色剤を含む体積変調着色生成物質6を有する。この物質は、透明で、弾性ポリマーから形成されたシースの形である格納手段8内に保持される。電極は、銅といった任意の好適な材料から形成される。電流が電極4内を流されると、電極はその抵抗により加熱する。この熱が、溶液中に浸漬された色素細胞(図示せず)における体積変化を刺激する物質6における温度上昇を引き起こす。これは次に色変化を引き起こす。シース8は、透明であるので、色変化は、ファイバ2の長さに沿って見ることができる。色素細胞は、水溶液内に浸漬されたポリマーゲル粒子内に含まれる。
【0053】
一般的に、ゲル粒子は、それぞれ、5乃至10μmの範囲である直径を有し、物質2の径方向深度は、数十μm乃至数百μmであり、一般的に、約100μmである。
【0054】
次に、図3及び4を参照するに、本発明のファイバの第2の実施例を、参照番号20として全体的に示す。ファイバ20は、互いに絡み合わされ、ファイバ20に沿って軸方向に延在する2つの電極22、24を有する。各電極22、24は、ファイバ20に沿って実質的に螺旋状に延在する。ファイバ20は更に、外側シース28内に入れられる色素細胞(図示せず)を含む体積変調着色生成物質26を有する。2つの電極22、24間に電圧差をかけることにより、色素細胞における体積変化を刺激する電界が誘発され、その結果、色変化がもたらされる。透明の絶縁コーティング30が電極22、24の周りに塗布される。シース28の直径は、数十μm乃至数百μmの間であり、一般的に、100μmである。
【0055】
次に、図5及び6を参照するに、本発明のファイバの第3の実施例を、参照番号40として全体的に示す。ファイバ40は、中心電極42を有し、中心電極は、色素細胞(図示せず)を含む体積変調着色生成物質44により囲まれる。第2の電極46は細胞の形にあり、従って、格納手段としても作用する。第2の電極は、ITO(インジウムスズ酸化物)といった透明の導電性材料から形成されることが好適である。しかし、この材料は、限定された弾性を有する。というのは、この材料は、比較的低い変形(一般的に2%)において破損するからである。ファイバの弾性を維持するために、電極46は、PEDOT又はPANIといった導電性ポリマーから形成されうる。電界が、電極42及び46間に電圧差をかけることによって作成され、これは、色素細胞の体積変化、従って、ファイバ40に色変化をもたらす。ファイバは更に、電極46を囲む透明絶縁シース48を有する。
【0056】
本願において上述した本発明の第1の実施例及び第3の実施例では、中心電極(4、42)に任意選択の色付き層を追加しうる。このような実施例は、色付き層の色が見える状態と、色素細胞の体積増加時に色素細胞の色が見える第2の状態との間で切り替わることを可能にする。色付き層の色は、色素細胞内の色素の色と同様に自由に選択されうる。しかし、色素の色は、層の色とは異ならなくてはならない。
【0057】
図7a及び7bを参照するに、本発明のファイバの第4の実施例を、参照番号70として全体的に示す。ファイバ70は、ファイバ40(図5及び6)と類似しており、図5及び6において示す部分に対応する部分には、理解をし易いよう対応する参照番号を付している。
【0058】
ファイバ70は更に、スペーサワイヤ72の形のスペーサを有する。スペーサワイヤ72は、物質6の体積に明確な厚さが存在することを確実にする。これは、物質6は、液体状の特性を有し、従って、固定の形状を有さないので必要である。この実施例におけるスペーサは、1つ以上のワイヤの形であり、これらは、内側電極42の周りに絡ませられる。電極42と電極74との間の距離は、スペーサワイヤ72の直径により決定される。図示する実施例では、各スペーサワイヤの直径は、数十μm乃至数百μmの間であり、一般的に、10μmである。スペーサワイヤは、内側電極と外側電極の間の短絡を阻止するよう非導電性であるべきである。
【0059】
図8a及び8bを参照するに、本発明のファイバの第5の実施例を、参照番号80として全体的に示す。ファイバ80は、中心電極82を有し、この中心電極は、体積変調着色生成物質86、外側電極84、及び外側シース88により囲まれる。ファイバ80は更に、物質86内に入れられた実質的に球状のスペーサビーズの形のスペーサ90を有する。各ビーズ90の直径が、内側電極82と外側電極84との間の所望の距離に実質的に等しい。これは、逆に、物質86の厚さを決定し、この厚さは、一般的に、数十μm乃至数百μm、例えば、100μmである。スペーサ球体90は、内側電極と外側電極の間の短絡を阻止するよう非導電性であるべきである。ビーズは、物質86内に組み込まれるか、又は、内側電極82上に直接置かれてもよい。
【0060】
図9を参照するに、本発明のファイバの第6の実施例を、参照番号100として全体的に示す。ファイバ100は、共押出しにより形成される。少なくとも2つの材料、即ち、内側電極110を形成する導電性材料と、シース120を形成する非導電性材料が押出し処理に使用される。非導電性材料は、例えば、ポリマー材料でありうる。
【0061】
シース120は、内側にある実質的に円筒状の部分130により中心電極110を少なくとも実質的に取り込むよう形作られる。シースは更に、中心部分130から、中心部分130と実質的に同軸である外側の実質的に円筒状の部分150に延在し、互いに間隔があけられるラジアル部分140を有する。従って、シース120は、ファイバ100の長さに沿って延在する空洞160を画成する。空洞は、互いに分離されていても、又は、物質が空洞間を移動可能であってもよい。
【0062】
このような幾何学は、スピナレットを通して共押出しする周知の技術を用いて得られる。ファイバ100は更に、例えば、ITO又は導電性ポリマーから形成される透明導電性層170と、透明保護及び絶縁コーティング180を有する。層170及びコーティング180は、押出しシース120の周りに置かれる。空洞160は次に、例えば、キャピラリー充填法により体積変調着色生成物質190で充填される。
【0063】
図9は、3つの空洞160を有するファイバ100を示すが、他の幾何学及び異なる数の空洞も可能であることを理解するべきである。シース180は、ファイバ100に強度及び構造を与える。
【0064】
中心電極及び/又はシェル電極と、例えば、図3に示す巻き付けられた電極との他の可能な組合せも、電界を生成するために可能であることを理解するべきである。
【0065】
色素細胞における色素は、異なる色を得るために様々であることが可能である。色変化織物が、異なる色特性又は色素を有するファイバの様々なセットを織り交ぜ、各セットを別々に制御することにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のファイバの第1の実施例を示す断面図である。
【図2】図1のファイバを示す断面図である。
【図3】本発明のファイバの第2の実施例を示す図である。
【図4】図3のファイバを示す断面図である。
【図5】本発明のファイバの第3の実施例を示す断面図である。
【図6】図5のファイバを示す図である。
【図7a】本発明のファイバの第4の実施例を示す図である。
【図7b】本発明のファイバの第4の実施例を示す図である。
【図8a】本発明のファイバの第5の実施例を示す図である。
【図8b】本発明のファイバの第5の実施例を示す図である。
【図9】本発明のファイバの第6の実施例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積変調着色生成物質と、
前記物質を細長いコアの形で封じ込め、少なくとも部分的に光透過性である格納手段と、
前記物質の体積における変化を生成するよう前記物質を刺激し、それにより、フィラメント又はファイバの色を変化する刺激手段と、
を有するフィラメント又はファイバ。
【請求項2】
前記物質は、体積変調着色剤を有する請求項1記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項3】
前記体積変調着色剤は、人工色素細胞を有する請求項2記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項4】
前記体積変調着色剤は、ポリマーゲル粒子を有し、
前記粒子は、水溶液中に浸漬され、
前記ポリマーゲル粒子及び前記水溶液はともに前記物質を形成する請求項2又は3記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項5】
前記ポリマーゲル粒子は、5乃至100μmの範囲内の直径を有する請求項3記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項6】
前記ポリマーゲル粒子の濃度は、5乃至40重量%であり、
前記ゲルの固形成分含有量は、1乃至10重量%の範囲にある請求項4又は5記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項7】
前記格納手段は、外側シースを有する請求項1乃至6のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項8】
前記外側シースは、透明である請求項7記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項9】
前記外側シースは、弾性ポリマーから形成される請求項7又は8記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項10】
前記刺激手段は、前記物質を加熱する加熱手段を有し、
前記体積変調着色剤は、温度に応じて変化する体積を有するタイプの着色剤である請求項2乃至9のうち何れか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項11】
前記加熱手段は、前記細長いコアの中を実質的に軸方向に延在する内側電極を有する請求項10記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項12】
前記加熱手段の中に電流を流す手段を更に有する請求項10又は11記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項13】
前記内側電極は、数十μm乃至数百μm、一般的に100μmだけ前記格納手段から間隔が置かれる請求項11又は12記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項14】
前記刺激手段は、前記物質全体に電界をかける電気手段を有し、
前記体積変調着色剤は、電界に応じて変化する体積を有するタイプの着色剤である請求項2乃至9のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項15】
前記電気手段は、前記細長いコアの外面に沿ってそれぞれ延在する一対の外側電極を有し、
前記フィラメント又はファイバは更に、前記電極を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも部分的に光透過性の絶縁コーティングを有する請求項14記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項16】
前記外側電極は、絡み合わされ、前記コアに沿って実質的に螺旋状に延在する請求項15記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項17】
前記電気手段は、前記コアに沿って実質的に軸方向に延在する内側電極と、前記格納手段を有し、
前記格納手段は、外側電極を有し、
前記フィラメント又はファイバは更に、前記外側電極を少なくとも部分的に取り囲む光透過性絶縁コーティングを有する請求項14記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項18】
前記外側電極は、導電性ポリマーを有する請求項17記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項19】
前記外側電極は、透明である請求項17又は18記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項20】
前記外側電極は、弾性である請求項17乃至19のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項21】
前記細長いコアの中を軸方向に延在する内側電極を更に有する請求項15記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項22】
スペーサ手段を更に有する請求項1乃至21のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項23】
前記スペーサ手段は、前記コアの中を実質的に軸方向に延在する1つ以上のスペーサワイヤを有する請求項22記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項24】
前記スペーサ手段は、複数の実質的に球状のビーズを有する請求項22記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項25】
前記実質的に球状のビーズは、前記物質内に含まれる請求項24記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項26】
前記スペーサ手段は、前記内側電極と前記格納手段との間に位置付けられる請求項11或いは21、又は請求項11或いは21に従属する任意の請求項に記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項27】
前記スペーサ手段は、前記内側電極と前記1つ以上の外側電極との間に位置付けられる請求項15或いは17、又は、請求項15或いは17に従属する任意の請求項に記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項28】
前記スペーサ手段は、前記内側電極に沿って螺旋状に延在する1つ以上のスペーサワイヤを有する請求項26又は27記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項29】
前記スペーサ手段は、前記内側電極上に配置される実質的に球状のビーズを有する請求項26又は27記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項30】
前記スペーサ手段は、非導電性材料から形成される請求項22乃至29のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項31】
前記内側電極上の色付き層を更に有する請求項11或いは21、又は、請求項11或いは21に従属する任意の請求項に記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項32】
請求項1乃至31のうちいずれか一項記載の複数のフィラメント又はファイバから形成される衣服。
【請求項33】
請求項1乃至31のうちいずれか一項記載の複数のフィラメント又はファイバから形成された織物。
【請求項34】
ファイバ又はフィラメントを形成する方法であって、
細長いコアの形に体積変調着色生成物質を含む格納手段を形作る段階と、
前記格納手段に、前記体積変調着色生成物質を刺激する刺激手段を関連付ける段階と、
体積変調着色生成物質を、前記格納手段により画成される空間に加える段階と、
前記格納手段を密封する段階と、
を有する方法。
【請求項35】
前記格納手段を形作る段階と、前記格納手段に前記刺激手段を関連付ける段階は、導電性材料を中心の細長コアの形に、また、非導電性材料を、前記導電性細長コアを囲む第1の中空細長部及び前記第1の細長部から間隔がおかれた第2の同軸中空細長部の形に、共押出し成形する単一の段階に組み合わされ、
前記第1の細長部及び前記第2の細長部は、前記第1の細長部から前記第2の細長部に延在する1つ以上の半径方向に延在する部分により接合される請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記外側細長部の外面上に、透明導電性層を配置する更なる段階を有する請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記透明導電性層の外面上に、透明保護及び絶縁コーティングを配置する更なる段階を有する請求項36記載の方法。
【請求項1】
体積変調着色生成物質と、
前記物質を細長いコアの形で封じ込め、少なくとも部分的に光透過性である格納手段と、
前記物質の体積における変化を生成するよう前記物質を刺激し、それにより、フィラメント又はファイバの色を変化する刺激手段と、
を有するフィラメント又はファイバ。
【請求項2】
前記物質は、体積変調着色剤を有する請求項1記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項3】
前記体積変調着色剤は、人工色素細胞を有する請求項2記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項4】
前記体積変調着色剤は、ポリマーゲル粒子を有し、
前記粒子は、水溶液中に浸漬され、
前記ポリマーゲル粒子及び前記水溶液はともに前記物質を形成する請求項2又は3記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項5】
前記ポリマーゲル粒子は、5乃至100μmの範囲内の直径を有する請求項3記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項6】
前記ポリマーゲル粒子の濃度は、5乃至40重量%であり、
前記ゲルの固形成分含有量は、1乃至10重量%の範囲にある請求項4又は5記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項7】
前記格納手段は、外側シースを有する請求項1乃至6のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項8】
前記外側シースは、透明である請求項7記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項9】
前記外側シースは、弾性ポリマーから形成される請求項7又は8記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項10】
前記刺激手段は、前記物質を加熱する加熱手段を有し、
前記体積変調着色剤は、温度に応じて変化する体積を有するタイプの着色剤である請求項2乃至9のうち何れか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項11】
前記加熱手段は、前記細長いコアの中を実質的に軸方向に延在する内側電極を有する請求項10記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項12】
前記加熱手段の中に電流を流す手段を更に有する請求項10又は11記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項13】
前記内側電極は、数十μm乃至数百μm、一般的に100μmだけ前記格納手段から間隔が置かれる請求項11又は12記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項14】
前記刺激手段は、前記物質全体に電界をかける電気手段を有し、
前記体積変調着色剤は、電界に応じて変化する体積を有するタイプの着色剤である請求項2乃至9のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項15】
前記電気手段は、前記細長いコアの外面に沿ってそれぞれ延在する一対の外側電極を有し、
前記フィラメント又はファイバは更に、前記電極を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも部分的に光透過性の絶縁コーティングを有する請求項14記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項16】
前記外側電極は、絡み合わされ、前記コアに沿って実質的に螺旋状に延在する請求項15記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項17】
前記電気手段は、前記コアに沿って実質的に軸方向に延在する内側電極と、前記格納手段を有し、
前記格納手段は、外側電極を有し、
前記フィラメント又はファイバは更に、前記外側電極を少なくとも部分的に取り囲む光透過性絶縁コーティングを有する請求項14記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項18】
前記外側電極は、導電性ポリマーを有する請求項17記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項19】
前記外側電極は、透明である請求項17又は18記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項20】
前記外側電極は、弾性である請求項17乃至19のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項21】
前記細長いコアの中を軸方向に延在する内側電極を更に有する請求項15記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項22】
スペーサ手段を更に有する請求項1乃至21のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項23】
前記スペーサ手段は、前記コアの中を実質的に軸方向に延在する1つ以上のスペーサワイヤを有する請求項22記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項24】
前記スペーサ手段は、複数の実質的に球状のビーズを有する請求項22記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項25】
前記実質的に球状のビーズは、前記物質内に含まれる請求項24記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項26】
前記スペーサ手段は、前記内側電極と前記格納手段との間に位置付けられる請求項11或いは21、又は請求項11或いは21に従属する任意の請求項に記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項27】
前記スペーサ手段は、前記内側電極と前記1つ以上の外側電極との間に位置付けられる請求項15或いは17、又は、請求項15或いは17に従属する任意の請求項に記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項28】
前記スペーサ手段は、前記内側電極に沿って螺旋状に延在する1つ以上のスペーサワイヤを有する請求項26又は27記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項29】
前記スペーサ手段は、前記内側電極上に配置される実質的に球状のビーズを有する請求項26又は27記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項30】
前記スペーサ手段は、非導電性材料から形成される請求項22乃至29のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項31】
前記内側電極上の色付き層を更に有する請求項11或いは21、又は、請求項11或いは21に従属する任意の請求項に記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項32】
請求項1乃至31のうちいずれか一項記載の複数のフィラメント又はファイバから形成される衣服。
【請求項33】
請求項1乃至31のうちいずれか一項記載の複数のフィラメント又はファイバから形成された織物。
【請求項34】
ファイバ又はフィラメントを形成する方法であって、
細長いコアの形に体積変調着色生成物質を含む格納手段を形作る段階と、
前記格納手段に、前記体積変調着色生成物質を刺激する刺激手段を関連付ける段階と、
体積変調着色生成物質を、前記格納手段により画成される空間に加える段階と、
前記格納手段を密封する段階と、
を有する方法。
【請求項35】
前記格納手段を形作る段階と、前記格納手段に前記刺激手段を関連付ける段階は、導電性材料を中心の細長コアの形に、また、非導電性材料を、前記導電性細長コアを囲む第1の中空細長部及び前記第1の細長部から間隔がおかれた第2の同軸中空細長部の形に、共押出し成形する単一の段階に組み合わされ、
前記第1の細長部及び前記第2の細長部は、前記第1の細長部から前記第2の細長部に延在する1つ以上の半径方向に延在する部分により接合される請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記外側細長部の外面上に、透明導電性層を配置する更なる段階を有する請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記透明導電性層の外面上に、透明保護及び絶縁コーティングを配置する更なる段階を有する請求項36記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【公表番号】特表2007−521420(P2007−521420A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544666(P2006−544666)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052807
【国際公開番号】WO2005/061764
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052807
【国際公開番号】WO2005/061764
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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