説明

ファイバ測定装置

【課題】ファイバの故障診断の測定を長距離且つ高分解能に対応して行うことを目的とする。
【解決手段】本発明のファイバ測定装置1は、ファイバ2に出力したレーザ光の戻り光を検出するフォトディテクタ6と、フォトディテクタ6が検出した戻り光の信号のうちレーザ光の周波数成分を抽出する帯域制限回路12と、帯域制限回路12により帯域制限がされた信号の波形を微分して、微分した信号を微分する前の信号に加算する第1微分回路31および加算回路32を有する波形等化回路15と、を備えている。これにより、長距離且つ高分解能にファイバの故障診断の測定を行うことができるようになる。且つ、アナログ回路で構成しているため、単純な回路構成および簡単な処理でリアルタイムに故障診断の測定を行うことができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの測定を行うファイバ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ(以下、ファイバ)の測定を行うための方式の1つにOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)がある。OTDRは、レーザ光源から光パルス(レーザ光)をファイバに入力して、ファイバからの後方散乱光(レーリ散乱光)およびフレネル反射光を検出する。これにより、ファイバの損失分布状態を表示している。
【0003】
図9は従来のOTDRの一例を示している。同図において、ファイバ測定装置101はファイバ102のOTDR測定を行う。ファイバ測定装置101は駆動回路103とレーザダイオード104と光カプラ105とフォトディテクタ106と信号増幅回路107と制御処理回路108と表示装置109とを備えている。
【0004】
駆動回路103はレーザダイオード104に駆動電源を供給する。レーザダイオード104は駆動電源によりレーザ光を発光する。光カプラ105はレーザ光を分岐する手段であり、レーザダイオード104が発光したレーザ光をファイバ102に導く。ファイバ102で発生する後方散乱光およびフレネル反射光は光カプラ105で反射して、フォトディテクタ106に入射する。
【0005】
フォトディテクタ106はレーザ光を検出して光電変換を行い、電流を発生する。この電流が電圧信号に変換されて、信号増幅回路107により増幅される。増幅された電圧信号は制御処理回路108で所定の信号処理が行われて、表示装置109に表示される。また、制御処理回路108は駆動回路103を制御して、レーザ光を発光させる制御を行う。
【0006】
図10はファイバ102に融着点、接続点(コネクタ)、曲げ損失を生じている場合における表示装置109に表示される後方散乱光レベルを示している。なお、ファイバ102の先端は開放端になっている。この図に示すように、ファイバ102に入力されたレーザ光は融着点、接続点(コネクタ)、曲げ損失の箇所で後方散乱光レベルが大きく変化する。そして、開放端の箇所で後方散乱光レベルは大きく変化する。
【0007】
図10に示すグラフはファイバ102の損失分布状態を示している。これを表示装置109に表示することで、ファイバ102の特性を認識することができる。ファイバを測定する方式としては、他にフォトンカウンティング方式がある。フォトンカウンティング方式は、ファイバから戻ったレーザ光の光強度に比例した光子数を計数して、その発生確率からファイバの特性を求める方式である。このフォトンカウンティング方式とOTDRとを組み合わせた技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−184038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
OTDR方式は長距離(100Km程度)から短距離(500m程度)といったような、広範囲のファイバの特性を測定することができる。長距離の測定を行うために、レーザ光を高出力にする。このために、誘導ブリルアン散乱等の非線形光学現象が発生するため、測定精度の分解能が低くなる。
【0010】
また、長距離のファイバ特性を測定するためにレーザ光を高出力にすると、アッテネータ回路やリミッタ回路といったレベル調整回路を設ける必要がある。これらの回路が不整合を生じることで、リンギングが発生する。このリンギングにより測定精度の分解能はさらに低くなる。また、リンギングを回避するために平滑回路を設けると、当該平滑回路が信号の分解能を低下させる要因となる。
【0011】
さらに、長距離でのファイバ特性を測定するためにファイバを測定する装置で信号の増幅度を高くしている。信号の利得と信号の周波数帯域幅との積は一定(GB積一定)になる。このため、信号の増幅度を高くすると、広域の周波数特性が劣化し、測定する信号の分解能を低下させる。
【0012】
従って、OTDRは長距離且つ低分解能の測定となる。一方、特許文献1のフォトンカウンティング方式は高分解能に測定を行うために、微弱な出力のパルス光を用いているため、測定可能な距離は短距離になる。つまり、フォトンカウンティング方式は短距離且つ高分解能の測定となる。
【0013】
特許文献1では、OTDRとフォトンカウンティング方式とを組み合わせて、それぞれのモードを切り替えている。従って、OTDRとフォトンカウンティング方式との両者を切り替えて使用することができるが、長距離且つ高分解能の測定を行うことはできない。
【0014】
そこで、本発明は、ファイバの測定を長距離且つ高分解能に対応して行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上の課題を解決するため、本発明のファイバ測定装置は、ファイバに出力したレーザ光の戻り光を検出する光検出部と、この光検出部が検出した前記戻り光の信号のうち前記レーザ光の周波数成分を抽出する帯域制限回路と、この帯域制限回路により帯域制限がされた信号の波形を微分して、微分した信号を微分する前の信号に加算する微分加算回路を有する波形等化回路と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
このファイバ測定装置によれば、帯域制限回路および波形等化回路を設けることで、高分解能にファイバの測定を行うことができるようになり、高出力のレーザ光を用いることができることから、長距離におけるファイバの反射測定を行うことができる。且つ、複雑な処理回路を用いていないため、簡単な処理および単純な回路でリアルタイムに測定を行うことができるようになる。
【0017】
また、前記波形等化回路は、前記微分加算回路により得られた信号の波形を微分して、微分する前の信号から微分した後の信号を減算する微分減算回路を有することを特徴とする。
【0018】
微分加算回路により波形の立ち上がりエッジを検出しているが、微分減算回路を用いて波形の立ち下りエッジを検出することで、測定精度をより高い分解能にすることができるようになる。
【0019】
また、前記帯域制限回路と前記波形等化回路とを有する狭帯域測定回路と、前記ファイバからの戻り光を増幅して、この戻り光の損失から前記ファイバの特性を測定する広帯域測定回路と、前記狭帯域測定回路と前記広帯域測定回路とを切り替えるスイッチと、を備えていることを特徴とする。
【0020】
長距離のファイバの測定を高分解能に行うときには狭帯域測定回路を選択し、広範囲の区間のファイバの測定を行うときには広帯域測定回路を用いるようにスイッチ制御を行うことで、長距離且つ高分解能の測定と広範囲の測定とを1台の装置で対応することができるようになる。
【0021】
また、前記信号のピークレベルを表示可能にするために、前記信号をバイアスするバイアス回路を備えたことを特徴とする。
【0022】
バイアス回路を用いることで、信号のピークレベルも認識可能なように表示することができるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、帯域制限回路および波形等化回路を用いることで、干渉した信号を分離して識別できることから、高分解能にファイバの測定を行うことができる。高出力のレーザ光を用いることができることから、長距離の測定にも対応できる。且つ、アナログ回路による簡単な処理で且つ単純なハードウェアでリアルタイムに測定を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態のファイバ測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】狭帯域測定回路の構成を示すブロック図である。
【図3】バイアス回路および波形の一例を示す図である。
【図4】波形等化回路および波形の一例を示す図である。
【図5】広帯域測定回路の構成を示すブロック図である。
【図6】PON区間測定の一例を示す図である。
【図7】ONU測定の一例を示す図である。
【図8】帯域制限される前後の利得と周波数との関係を示す図である。
【図9】従来のファイバ測定装置の構成を示すブロック図である。
【図10】ファイバの特性測定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1はファイバ測定装置1を示している。ファイバ測定装置1は光パルス試験器であり、光ファイバとしてのファイバ2の測定を行う。
【0026】
ファイバ測定装置1は駆動回路3とレーザダイオード4と光カプラ5とフォトディテクタ6と狭帯域測定回路7と広帯域測定回路8と制御処理回路9と表示装置10とを備えている。広帯域測定回路8の前後にはスイッチS1、S2が設けられており、狭帯域測定回路7の前後にはスイッチS3、S4が設けられている。これらのスイッチS1〜S4はマルチプレクサ等により実現してもよい。
【0027】
駆動回路3はレーザダイオード4に駆動電源を供給する回路である。レーザダイオード4は駆動回路3が供給する駆動電源によって動作し、所定のパルス幅を有するレーザ光を発光する。光カプラ5は光を分岐させる手段である。レーザダイオード4が発光したレーザ光は光カプラ5によりファイバ2に導かれる。このファイバ2に入力されたレーザ光は反射して、戻り光を発生する。この戻り光は、ファイバ2で全反射した光或いは後方散乱光(レーリ散乱光)やフレネル反射光となる。
【0028】
この戻り光は光カプラ5によりフォトディテクタ6の側に向けて導波されて、フォトディテクタ6で検出される。フォトディテクタ6は戻り光を光電変換して、電流を発生する。発生した電流は、スイッチS1、S3の制御により、狭帯域測定回路7と広帯域測定回路8との何れかに入力される。
【0029】
狭帯域測定回路7は長距離且つ高分解能にファイバの反射測定を行う。図2は狭帯域測定回路7を示しており、変換増幅回路11と帯域制限回路12とバイアス回路13と増幅回路14と波形等化回路15とを備えて構成している。また、波形等化回路15にはAD変換部16が接続されている。
【0030】
変換増幅回路11はフォトディテクタ6が発生した電流を電圧信号に変換する。帯域制限回路12は電圧信号のうちレーザ光の周波数(パルス幅の周波数)の成分を抽出するバンドパスフィルタである。ここでは、帯域制限回路12はコンデンサにより実現している。バイアス回路13は直流バイアスを発生させる回路である。
【0031】
図3a)はバイアス回路13の一例を示している。このバイアス回路13はダイオードクランプ回路であり、可変電圧源21とダイオード22と抵抗23とコンデンサ24とを有している。可変電圧源21は与える電圧Eを変化させることができ、この電圧Eによりバイアス電圧を重畳することができる。
【0032】
図2に示すように、帯域制限回路12で帯域制限がされた電圧信号はバイアス回路13により電圧がバイアスされて、増幅回路14に入力される。増幅回路14は電圧信号を増幅して波形等化回路15に出力する。
【0033】
図4は波形等化回路15としてパルスストリーミング回路を用いた例である。この図に示すように、波形等化回路15は、第1微分回路31と加算回路32と第2微分回路33と減算回路34とを有して構成される。第1微分回路31と加算回路32とにより微分加算回路が構成され、第2微分回路3と減算回路34とにより微分減算回路が構成される。
【0034】
第1微分回路31は電圧信号を時間軸方向に微分する。加算回路32は第1微分回路31が微分した信号に微分する前の電圧信号を加算する。この電圧信号に対して第2微分回路33が時間軸方向に微分を行う。減算回路34は第2微分回路33が微分を行う前の電圧信号から第2微分回路が微分した信号を減算する。第1微分回路31および第2微分回路33は例えばコンデンサと抵抗とにより構成される回路で実現できる。
【0035】
波形等化回路15の出力は、図2に示すように、AD変換部16に入力されて、アナログ信号からデジタル信号に変換される。このAD変換部16が変換したデジタル信号が図1に示す制御処理回路9に入力される。
【0036】
広帯域測定回路8はファイバの広範囲の区間の特性を測定する回路になり、従来のOTDRと同様にレーリ散乱光、反射や曲げ損失の変化を測定する。図5は広帯域測定回路8の構成を示している。広帯域測定回路8は変換増幅回路17と増幅回路18とを有しており、AD変換部19に接続されている。変換増幅回路17は前述したものと同じであり、フォトディテクタ6からの電流を電圧信号に変換する。増幅回路18は変換された電圧信号を増幅してAD変換部19に出力する。AD変換部19は電圧信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して、制御処理回路9に出力する。
【0037】
図1に示す制御処理回路9は狭帯域測定回路7、広帯域測定回路8が出力する電圧信号に対して信号処理を行う。信号処理した結果は表示装置10に表示される。表示装置10は例えばディスプレイ等である。制御処理回路9は駆動回路3の制御も行っており、制御処理回路9の指令に基づいて、駆動回路3が駆動電源を供給して、レーザダイオード4がレーザ光を発光する。
【0038】
以上が構成である。次に、動作について説明する。ここでは、PON区間測定とONU測定との2つの測定を適用している。PON(Passive Optical Network)システムは、光加入者線端末局装置(OLT:Optical Line Terminal)と加入者宅内或いは構内に設置される光加入者線終端装置(ONU:Optical Network Unit)との間にファイバおよび分岐装置を設けたシステムである。
【0039】
図6に示すように、OLT40にはファイバ2を介してファイバ測定装置1が接続される。OLT40からのファイバは分岐装置42−1により2分岐して、次に分岐装置42−2、42−3によりそれぞれ16分岐する。これにより、1本のファイバが32本に分岐する。32本のファイバはONU41−1〜41−32に接続される。
【0040】
PON区間測定は、図1に示した広帯域測定回路8を用いて行う。このために、スイッチS1およびS2をオンにして、スイッチS3およびS4をオフにする。これにより、広帯域測定回路8が有効になり、狭帯域測定回路7が無効になる。駆動回路3によりレーザダイオード4が駆動されて、レーザ光が発光する。このレーザ光は光カプラ5を介して、光ファイバ2に導かれ、図6に示すOLT40に至る。
【0041】
OLT40から分岐装置42−1に至るファイバにレーザ光が導かれ、分岐装置42−1で2分岐した後に、分岐装置42−2、42−3で16分岐を行う。ファイバではレーリ散乱光およびフレネル反射光が発生し、これらのレーリ散乱光およびフレネル反射光がOLT40、ファイバ2を介して、ファイバ測定装置1に入力される。
【0042】
ファイバ測定装置1では光カプラ5からフォトディテクタ6で光検出がされ、光検出された電流が広帯域測定回路8に入力される。そして、変換増幅回路17で電圧信号に変換されて、増幅回路18で増幅される。AD変換部19でデジタル信号に変換して、制御処理回路9で処理することにより、ファイバ2の測定を行う。
【0043】
図6b)はOLT40からONU41−1〜41−32までの何れにも障害を生じていない正常な場合の測定結果を示している。分岐装置42−1〜42−3の位置でそれぞれ反射が測定される。同図c)はOLT40と分岐装置42−1との間のファイバに障害(同図のAの箇所)を生じている場合を示している。この場合には、障害を生じた箇所で損失が大きくなり、レーリ散乱光が測定できなくなる。これにより、当該箇所で障害を生じていることが検出される。
【0044】
同図d)は分岐装置42−1と42−2との間に障害(同図のBの箇所)を生じた場合を示している。この場合には、障害を生じた箇所で損失して、レーリ散乱光を測定できなくなる。これにより、当該箇所で障害を生じていることが検出される。OLT40から分岐装置42−2、42−3までの間は広範囲の区間であり、この広範囲の区間のファイバの測定を行うときには、PON区間測定モードとして広帯域測定回路8を使用する。これにより、広範囲の区間でのファイバの障害を測定することができる。
【0045】
分岐装置42−2、42−3からONU41−1〜41−32までの遠方の区間を高分解能に測定するときには、ONU測定モードに切り替える。ONU測定モードに切り替えるときには、ファイバ測定装置1のスイッチS1およびS2をオフにして、S3およびS4をオンにする。これにより、広帯域測定回路8がオフになり、狭帯域測定回路7がオンになる。
【0046】
分岐装置42−2、42−3からONU41−1〜41−32までの間の区間は、OLT40から見て長距離(遠距離)になるが、分岐装置42−2、42−3からONU41−1〜41−32までの距離は短い。そして、OLT40を基準としたときに、ONU41−1〜41−32までの距離差は非常に短くなっている。ONU41−1〜41−32に接続されるファイバの測定を行うために、ONU41−1〜41−32に全反射装置を取り付ける。これにより、ファイバ測定装置1から出力されたレーザ光は32本に分岐されて、全反射装置により全反射される。
【0047】
ファイバ測定装置1は全反射したレーザ光を入力する。このとき、ONU41−1〜41−32の距離差が非常に短いため、戻り光の反射波は干渉する。従来のOTDR、つまり広帯域測定回路8では広範囲の区間のファイバの測定を行うことができるものの、高い分解能の測定を行うことはできない。そこで、ONU測定モード(狭帯域測定回路7)を用いて測定を行う。
【0048】
図7a)はONU41−1〜41−32のうち41−1〜41−7を示している。ONU41−1〜41−7には全反射装置が取り付けられており、ファイバを伝達したレーザ光は全反射装置で全反射をする。全反射したレーザ光は分岐装置41−1〜41−3で纏められて、ファイバ測定装置1に入力される。このときに、各ファイバで全反射した光が相互に干渉する。
【0049】
ファイバ測定装置1では、光カプラ5からフォトディテクタ6で全反射したレーザ光が検出される。そして、電流に変換されて、狭帯域測定回路7に入力される。この電流は変換増幅回路11により電圧信号に変換され、帯域制限回路12で周波数帯域が制限される。帯域制限回路12はレーザダイオード4が発光するレーザ光のパルス幅の周波数帯域を通過させているため、戻り光の成分はレーザ光の周波数帯域の光となっている。その他の周波数成分はカットされている。
【0050】
図8の破線は戻り光の周波数と利得との関係を示しており、実線は帯域制限回路12により通過された光の周波数と利得との関係を示している。同図に示すように、戻り光は直流から低周波の成分を有しているが、帯域制限回路12により高周波(レーザ光の周波数帯域)の成分が抽出されている。
【0051】
直流から低周波にはノイズ成分が含まれている。これは、ファイバを伝達される間にレーザ光および戻り光に生じたノイズおよび電気回路で発生するものである。そこで、帯域制限回路12によりレーザ光の周波数帯域と同じ高周波成分を抽出することで、ノイズ成分が除去できる。これにより、S/N比の向上を図ることができ、信号の識別レベル(ダイナミックレンジ)を向上することができる。
【0052】
帯域制限された戻り光の電圧信号はバイアス回路13により電圧のバイアスがされる。図3b)に示すように、戻り光の電圧信号のレベルには所定のピークがあり、電圧をバイアスすることにより、電圧信号のピークを固定することができる。これにより、電圧信号が飽和することを回避できる。このため、表示装置10に電圧信号のピークを表示することができるようになる。
【0053】
そして、電圧がバイアスされた電圧信号は増幅回路14で増幅されて、波形等化回路15に入力される。波形等化回路15の第1微分回路31により電圧信号の波形が微分される。そして、加算回路32により微分された信号と微分される前の電圧信号とが加算される。
【0054】
第1微分回路31と加算回路32とにより構成される微分加算回路により波形の立ち上がりエッジが補正される。これにより波形の立ち上がり特性が向上し、反射ピークの立ち上がり部分を高分解能に検出することができる。この微分および加算した電圧信号は第2微分回路33に入力される。
【0055】
第2微分回路33では入力した電圧信号を微分する。そして、減算回路34は微分する前の電圧信号から微分した後の信号を減算する。第2微分回路33と減算回路34とにより構成される微分減算回路により波形の立ち下りエッジが補正される。これにより、波形の立ち下り特性が向上し、反射ピークの立ち下り部分を高分解能に検出することができる。
【0056】
従って、図4に示したように、戻り光が干渉して反射ピークが1つの塊になっている場合(反射1と反射2とが干渉して識別できない場合)であっても、反射ピークを分離して識別できるようになる。つまり、帯域制限回路12により帯域制限を行うことにより、ノイズ成分が除去され、波形等化回路15により微分加算および微分減算を行うことにより、干渉して1つの塊となっていたピークを2つのピークに分離することができる。
【0057】
図7b)の波形は、ファイバが正常な場合のONU41−1〜41−7で全反射した波形を示しており、帯域制限回路12および波形等化回路15により、各ONU41−1〜41−7で全反射した反射ピークが分離されている。これにより、反射ピークが明確に分離されていることで、各ONU41−1〜41−7の反射を測定することができる。
【0058】
図7c)の波形は、ONU41−4に至るファイバに障害(同図のCの箇所)を発生した場合を示している。この場合には、ONU41−4にレーザ光が到達しないため、全反射を発生しない。このため、ファイバ測定装置1ではONU41−4からの反射ピークが検出されない。これにより、ONU41−4に至るファイバに障害が発生していることが測定される。
【0059】
従って、ONU測定モードでは、帯域制限回路12および波形等化回路15を用いて反射ピークを分離させていることで、高分解能にファイバの反射測定を行うことができる。これにより、距離差が非常に短いONU41−1〜41−32で全反射したときに干渉したとしても、反射ピークを分離することができ、高分解能にファイバの測定を行うことができる。且つ、狭帯域測定回路7の各部はアナログ回路により構成しており、フォトンカウンティング方式のように微弱なパルス光を用いることなく、高出力のレーザ光を用いて測定を行うことができる。これにより、長距離(遠距離)のファイバの測定を行うことができる。つまり、長距離且つ高分解能で測定を行うことができる。
【0060】
また、波形等化回路15は単純なアナログ回路(帯域制限回路12や波形等化回路15等)により構成している。これにより、複雑な処理回路を必要とすることがないため、回路の単純化を実現できる。且つ、フォトンカウンティング方式のように、光子数を計測する処理を必要としないため、リアルタイムに高速に表示装置10に波形を表示することが可能になる。
【0061】
従って、PON区間測定のように広範囲のファイバの測定を行うときには広帯域測定回路7を用いるようにスイッチを切り替え、ONU測定のように長距離且つ高分解能にファイバの反射測定を行うときには狭帯域測定回路8を用いるようにスイッチを切り替えることで、1台のファイバ測定装置1で両者の測定に対応することができる。
【0062】
以上において、波形等化回路15は微分加算回路(第1微分回路31および加算回路32)と微分減算回路(第2微分回路33および減算回路34)とを有していたが、微分減算回路を設けない構成としてもよい。微分加算回路により波形の立ち上がりを高分解能に検出できるため、これにより2つの戻り光の反射ピークを分離して識別できることがある。この場合には、微分加算回路のみで高分解能に測定を行うことができる。ただし、微分加算回路と微分減算回路との両者を用いることで、反射ピークをより明確に識別することができ、さらに高分解能に測定を行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0063】
1 ファイバ測定装置
2、2−1〜2−32 ファイバ
4 レーザダイオード
6 フォトディテクタ
7 狭帯域測定回路
8 広帯域測定回路
9 制御処理回路
10 表示装置
11 変換増幅回路
12 帯域制限回路
13 バイアス回路
14 増幅回路
15 波形等化回路
21 可変電圧源
22 ダイオード
23 抵抗
24 コンデンサ
31 第1微分回路
32 加算回路
33 第2微分回路
34 減算回路
40 分岐装置
41 端末
42 反射装置
S1〜S4 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバに出力したレーザ光の戻り光を検出する光検出部と、
この光検出部が検出した前記戻り光の信号のうち前記レーザ光の周波数成分を抽出する帯域制限回路と、
この帯域制限回路により帯域制限がされた信号の波形を微分して、微分した信号を微分する前の信号に加算する微分加算回路を有する波形等化回路と、
を備えたことを特徴とするファイバ測定装置。
【請求項2】
前記波形等化回路は、前記微分加算回路により得られた信号の波形を微分して、微分する前の信号から微分した後の信号を減算する微分減算回路を有すること
を特徴とする請求項1記載のファイバ測定装置。
【請求項3】
前記帯域制限回路と前記波形等化回路とを有する狭帯域測定回路と、
前記ファイバからの戻り光を増幅して、この戻り光の損失から前記ファイバの特性を測定する広帯域測定回路と、
前記狭帯域測定回路と前記広帯域測定回路とを切り替えるスイッチと、
を備えていることを特徴とする請求項1または2記載のファイバ測定装置。
【請求項4】
前記信号のピークレベルを表示可能にするために、前記信号をバイアスするバイアス回路を備えたこと
を特徴とする請求項3記載のファイバ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−24650(P2013−24650A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157950(P2011−157950)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【出願人】(596157780)横河メータ&インスツルメンツ株式会社 (43)
【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
【Fターム(参考)】