説明

ファイルデータ保護機能を備えた電子装置及びファイル保護方法

【課題】突然の電源遮断等によってシステムやプログラムが異常終了した場合に、それに伴ってファイルの実データを保護し更新前の状態に回復する。
【解決手段】更新対象ファイル310のデータを変更する場合に、(1)ファイル操作手段が更新対象ファイル310のバックアップファイル320を作成し、(2)ハッシュ値算出手段が更新対象ファイルのハッシュ値を算出して記録媒体にハッシュ値記録ファイル330として記録し、(3)ファイル操作手段が更新対象のファイルのデータを変更し、(4)ファイル操作手段がハッシュ値記録ファイル330及びバックアップファイル320を削除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイルデータ保護機能を備えた電子装置及びファイル保護方法に関する。より詳細には、ファイル更新中に電源が遮断されたような場合であっても更新対象ファイルの内容が破壊されて利用できなくなることを防止する機能を備えた電子装置及びファイル保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータに搭載されたオペレーティングシステムは各種のデータや設定をファイルとして記録媒体に記録・管理するためのファイルシステムを備えている。ファイルシステムは、データをハードディスク等の記録媒体に書込む際に、データ自体である実データ部分を記録媒体に記録し、その実データの記録媒体上の位置、ファイル名、作成日時、更新日時、アクセス権限等の管理情報を表すメタデータを記録媒体の所定部分に記録することで、ファイルの管理を行っている。
【0003】
ファイルシステムがデータを記録媒体に書込む場合、まず実データの書込みを行い、次いでそのメタデータを記録媒体の所定部分に記録する。このデータの書込みを行っている最中に電源切断やプログラムの異常終了等によって書込み処理が中断してしまう場合がある。そうすると、メタデータが正しく記録されていないために、実データとメタデータの間に不整合が生じてしまい、実データにアクセスすることができなくなってしまう。
【0004】
こうした問題を回避するために、最近では、ジャーナリング機能を有するファイルシステムを利用するオペレーティングシステムが使用されている。ジャーナリング機能を有するファイルシステムは、記録媒体にジャーナルと呼ばれる領域を設けてそこにメタデータの書込みを優先的に行い、それに続いて記録媒体の対応する部分に実データの書込みを行うものである。これにより、メタデータと実データの間で不整合が生じても、不整合が生じる前のメタデータを参照することによってファイルそのものの破壊や消失を避けることが可能となる。
しかしながら、ジャーナリング機能を有するファイルシステムで保護されるのはメタデータまでであってファイルの中身である実データまでは保護されていない。つまり、ジャーナリング機能を有するファイルシステムを導入することで、突然の電源遮断やプログラムの異常終了等に伴ってファイルが破壊されることは避けられるが、実データが壊れることは避けることができず、保存したはずの内容が保存されていないことがあった。
【0005】
下記特許文献1(特開2004−157997号公報)は、主電源で動作するPCに接続された情報記録媒体に記録されたファイルを更新する際に、補助電源から常時電力の供給を受けるRAMに、更新対象ファイルのエントリ情報、どの更新手順まで実施済みであるかを示す処理ステータス、ファイル更新前のファイルを構成するファイルデータの情報を示す復元情報を記録し、次いで新たに更新後のファイルを情報記録媒体に記録し、更新後のファイルデータの格納位置をRAMに記録し、次いで更新後のファイルデータの格納位置を記録媒体に記録するファイル更新装置を開示している。これにより、異常時にしか必要とならない情報を記録媒体に記録することなく、主電源断等により更新途中で異常停止した場合でも、RAMに残された処理ステータスを用いてファイルデータの回復が可能となる。
【0006】
しかしながら、特許文献1のファイル保護方法では、常時補助電源からの電力供給を受けるRAMに復元情報を記憶することが必要であり、こうした備えのない電子装置にこのファイル保護方法を適用することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−157997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、突然の電源遮断等によってシステムやプログラムが異常終了した場合に、それに伴ってファイルデータが破壊されることを防止することであり、特に、ファイルのメタデータだけではなくファイルの内容である実データをも保護する機能を備えた電子装置及び方法を提供することである。
【0009】
加えて、本発明の目的は、突然の電源遮断等によってファイルの更新が失敗した際にファイルの内容である実データをファイル更新前の状態に戻すことができる機能を備えた電子装置及び方法を提供することである。
【0010】
さらに、本発明の目的は、補助電源等を備えていない電子装置において、突然の電源遮断が生じた際にファイルの実データをファイル更新前の状態に回復できる機能を備える電子装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のファイルデータ保護機能を備えた電子装置の発明は、制御手段と、更新対象ファイルを記録する記録媒体と、ファイル操作手段と、前記更新対象ファイルを構成するデータからハッシュ値を生成するハッシュ値算出手段と、を備えるファイルデータ保護機能を備えた電子装置であって、前記更新対象ファイルのデータを変更する場合に、前記ファイル操作手段は前記更新対象ファイルのバックアップファイルを作成し、前記ハッシュ値算出手段は前記更新対象ファイルのハッシュ値を算出して前記記録媒体にハッシュ値記録ファイルとして記録し、前記ファイル操作手段は前記更新対象ファイルのデータを変更し、前記更新対象ファイルのデータ変更後に前記ファイル操作手段が前記ハッシュ値記録ファイル及び前記バックアップファイルを削除することを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記ファイルデータ保護機能を備えた電子装置は前記バックアップファイルが存在するか否か、及び、前記ハッシュ値記録ファイルが存在するか否かを判定するファイル有無判定手段を備え、前記電子装置の電源オン時に、前記ファイル有無判定手段が前記バックアップファイル及び前記ハッシュ値記録ファイルの両者が存在すると判定した場合には、前記ハッシュ値算出手段が前記更新対象ファイルからハッシュ値を算出してその値を前記ハッシュ値記録ファイルに記録されたハッシュ値と比較し、両者が一致しない場合に前記ファイル操作手段が前記バックアップファイルを前記更新対象ファイルに書き戻すことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、前記ファイル有無判定手段が、前記バックアップファイルが存在するのに対し前記ハッシュ値記録ファイルが存在しないと判定した場合には、前記ファイル操作手段が前記バックアップファイルを削除することを特徴とする。
また、本発明の一態様は、前記ハッシュ値算出手段が前記更新対象ファイルから算出されたハッシュ値と前記ハッシュ値記録手段に記録されたハッシュ値とを比較し、両者が一致している場合に、前記ファイル操作手段が前記バックアップファイルと前記ハッシュ値記録ファイルとを削除することを特徴とする。
【0013】
本発明のファイル保護方法は、制御手段と、更新対象ファイルを記録する記録媒体と、ファイル操作手段と、前記更新対象ファイルを構成するデータからハッシュ値を生成するハッシュ値算出手段と、を備える電子装置におけるファイル保護方法であって、前記ファイル保護方法は、前記更新対象ファイルのデータを変更する場合に、(1)前記ファイル操作手段が前記更新対象ファイルのバックアップファイルを作成するステップと、(2)前記ハッシュ値算出手段が前記更新対象ファイルのハッシュ値を算出して前記記録媒体にハッシュ値記録ファイルとして記録するステップと、(3)前記ファイル操作手段が前記更新対象のファイルのデータを変更するステップと、(4)前記ファイル操作手段が前記ハッシュ値記録ファイル及び前記バックアップファイルを削除するステップと、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、上記発明の一態様は、前記電子装置はさらにファイル有無判定手段を備え、前記ファイル保護方法は、さらに前記電子装置の電源オン時に、前記ファイル有無判定手段が前記バックアップファイル及び前記ハッシュ値記録ファイルの両者が存在すると判定した場合には、前記ハッシュ値算出手段が前記更新対象ファイルからハッシュ値を算出してその値を前記ハッシュ値記録ファイルに記録されたハッシュ値と比較し、両者が一致しない場合に前記ファイル操作手段が前記バックアップファイルを前記更新対象ファイルに書き戻すことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様は、前記ファイル有無判定手段が、前記バックアップファイルが存在するのに対し前記ハッシュ値記録ファイルが存在しないと判定した場合には、前記ファイル操作手段が前記バックアップファイルを削除することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様は、前記ハッシュ値算出手段が前記更新対象ファイルから算出されたハッシュ値と前記ハッシュ値記録手段に記録されたハッシュ値とを比較し、両者が一致している場合に、前記ファイル操作手段が前記バックアップファイルと前記ハッシュ値記録ファイルとを削除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のファイルデータ保護機能を備えた電子装置によれば、更新対象ファイルのデータを変更する場合に、更新対象ファイルのバックアップファイルを作成し、更新対象ファイルのハッシュ値を算出してハッシュ値記録ファイルとして記録してから更新対象ファイルのデータを変更し、変更後にハッシュ値記録ファイルとバックアップファイルを削除する。
【0018】
これにより、ファイルの変更中には必ずバックアップファイルが作成されているため、ファイルの変更中に異常が発生してもバックアップファイルを使用してファイルを回復することが可能となる。また、ハッシュ値記録ファイルを作成しているために、更新対象のハッシュ値を算出して比較することで、更新対象のファイルのデータが破壊されているかどうかを判定することが可能となる。
【0019】
また、本発明の一態様によれば、電子装置はファイル有無判定手段を備えており、ファイル更新時等に異常が発生し、再度電源オンになったときに、バックアップファイルとハッシュ値記録ファイルが存在するか否かを判定し、両者が存在すると判定した場合には、更新対象ファイルのデータからハッシュ値を算出し、ハッシュ値記録ファイルのハッシュ値と一致するか否かを判定し、一致していない場合には、更新対象ファイルのデータが破壊されているとみなし、正常なバックアップファイルのデータを更新対象ファイルに書き戻すことでファイルのデータを回復することが可能となる。
【0020】
また、本発明の一態様によれば、ファイル更新時に異常が発生し、再度電源オンになったときに、バックアップファイルとハッシュ値記録ファイルが存在するか否かを判定し、バックアップファイルが存在するのに対しハッシュ値記録ファイルが存在しない場合に、更新対象ファイルのデータが編集される前に異常が発生したとみなしてバックアップファイルを削除し、正常な更新対象ファイルのみを記録媒体に残してファイルを回復することが可能となる。
【0021】
また、本発明の一態様によれば、電子装置はファイル有無判定手段を備えており、ファイル更新時等に異常が発生し、再度電源オンになったときに、バックアップファイルとハッシュ値記録ファイルが存在するか否かを判定し、両者が存在すると判定した場合には、更新対象ファイルのデータからハッシュ値を算出し、ハッシュ値記録ファイルのハッシュ値と一致するか否かを判定し、両者の値が一致するなら更新対象ファイルは正常な状態であるとみなしてバックアップファイルとハッシュ値記録ファイルとを削除することでファイルを回復できる。
【0022】
また、本発明の電子装置におけるファイル保護方法によれば、上記電子装置の発明におけるのと同様の効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施例のVoIP電話機100の内部ブロック図である。
【図2】VoIP電話機100においてファイル更新時の処理を示すフローチャートである。
【図3】VoIP電話機100のファイル更新時の処理の概略説明図である。
【図4】VoIP電話機100において電源オン時の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本願発明を実施するための最良の形態を実施形態を図1〜図4を参照して詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのファイル保護機能を備えた電子装置としてVoIP(Voice over Internet Protocl)電話機を例示して説明するものであって、本発明をこのVoIP電話機に特定することを意図するものではなく特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなくその他のファイル保護機能を備えた電子装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例に係るファイル保護機能を備えた電子装置としてのVoIP電話機について図1を参照して説明する。なお、図1は、本実施例のVoIP電話機100の内部ブロック図であり、電話機に特有のA/Dコンバータ、D/Aコンバータ、コーデック等の音声処理に関係した機能は本発名とは関係ないので図示を省略している。
【0026】
VoIP電話機100は、制御手段110、フラッシュメモリ120、ファイル操作手段130、ハッシュ値算出手段140、ファイル有無判定手段150、ディスプレイ160、キーボード170を備えて構成されている。
【0027】
制御手段110は、CPU111、RAM112、ROM113を備えて構成されており、ROM113に記憶されているファームウェア等のプログラムをCPU111において実行することによりVoIP電話機100各部の動作を制御・統括する。フラッシュメモリ120はVoIP電話機100に内蔵された不揮発性メモリであり、VoIP電話機100のユーザID、パスワード、インターネット設定、アドレス帳等の各種のファイル121が保存される。図1では単一のファイルしか図示されていないが、実際には複数のファイルが保存されている。
【0028】
ファイル操作手段130は、フラッシュメモリ120に保存されたファイルのオープン、クローズ、ファイルデータの読出し、書込み、ファイルの作成、削除を行う。ハッシュ値算出手段140は、フラッシュメモリ120に保存されたファイルデータを読出し、そのデータから固定長のメッセージダイジェスト、つまりハッシュ値を算出するものである。ファイル有無判定手段150は、後述するファイル回復処理時に対象のファイルが存在するか否かを判定するものである。
【0029】
ディスプレイ160は、VoIP電話機100に一体型に形成された液晶ディスプレイであって、ユーザに対し、日付、通話状況、各種設定画面を表示する。キーボード170は、VoIP電話機100に設けられた電話番号、文字入力のためのテンキーと他の機能キーから構成されている。ユーザはディスプレイ160を視認しながらキーボード170を操作することによって電話番号の入力、アドレス帳の管理、VoIP電話機100の各種設定を行うことができる。
【0030】
次に、図2〜4を参照してVoIP電話機100におけるファイル保護処理の流れについて説明する。なお、図2はVoIP電話機100においてファイル更新時の処理を示すフローチャートである。図3はVoIP電話機100のファイル更新時の処理の概略説明図である。図4はVoIP電話機100において電源オン時の処理を示すフローチャートである。
【0031】
例えば、フラッシュメモリ120には、ファイル121として、VoIP電話機100の設定変更をロックするためのパスワードを記録したパスワードファイルが「conf」というファイル名で保存されているとする(図3(a)に対応)。以下この「conf」ファイルを更新対象ファイル310として説明する。
【0032】
更新対象ファイル310を更新する際には、図2のステップS200において、ファイル操作手段130が更新対象ファイル310のバックアップファイル320を作成する(図3(b)に対応)。これはシステムコマンド「cp conf conf.old」をCPU111において実行することにより行われる。このとき、実際には、ファイル操作手段130は更新対象ファイル310のバックアップファイル320をバッファ、つまりRAM112内に作成するだけなので、「sync」コマンドを実行することにより、RAM112に記憶されたバックアップファイル320を強制的にフラッシュメモリ120に記憶させる。バックアップファイル320は更新対象ファイル310と同一のディレクトリに記録される。
【0033】
次いで、ステップS210において、ファイル操作手段130は更新対象ファイル310のファイルデータを読込んでRAM112に一時的に記憶し、ファイルデータをもとにハッシュ値算出手段140がメッセージダイジェスト、つまりハッシュ値を計算する。ステップS220において、算出されたハッシュ値はファイル操作手段130によって新たに作成されるハッシュ値ファイル330に記録される(図3(c)に対応)。これは「md5sum conf>comf.md5」コマンドをCPU111において実行することにより行われる。次いでCPU111において「sync」コマンドを実行することによりハッシュ値ファイル330がフラッシュメモリ120の更新対象ファイル310及びバックアップファイル320と同一ディレクトリに保存される。
【0034】
次いで、ステップS230において、ファイル操作手段130はユーザがキーボード170から入力した変更後のパスワードの値を書込むことによって更新対象ファイル310の編集、更新を行う(図3(d)の340に対応)。その後、「sync」コマンドを実行することにより更新済みの更新対象ファイル340をフラッシュメモリ120に反映させる。
【0035】
ステップS240において、ファイル操作手段130はフラッシュメモリ120に記録されているハッシュ値ファイル330を消去する。これは「rm conf.md5」コマンドをCPU111において実行することにより行われ、「sync」コマンドを実行することによりハッシュ値ファイル330の消去をフラッシュメモリ120に反映させる。
次いで、ステップS250においてバックアップファイル320を削除し、更新対象ファイル310の更新処理を終了する(図3(e)に対応)。これは「rm conf.old」コマンドをCPU111において実行することにより行われ、「sync」コマンドを実行することによりバックアップファイル320の消去をフラッシュメモリ120に反映させる。
【0036】
上記の各ステップS200〜S250のいずれかの処理を実行中にVoIP電話機100の電源が突然オフになった場合は、電源が再度オンになった際に図4に示す処理を行ってファイルの回復を行う。
【0037】
ステップS401において、ファイル有無判定手段150は、フラッシュメモリ120の更新対象ファイル310が記録されているのと同一ディレクトリにバックアップファイル320が存在するか否かを判定する。バックアップファイル320が存在していなければ図3(a)又は図3(e)のようにファイルの編集の処理全体を行う前か後のいずれかの状態で電源オフになったのであって更新対象ファイル310「conf」は正常なファイルであることが分かるから、ファイルの回復処理を終了する。
【0038】
バックアップファイル320が存在する場合、フラッシュメモリ120の更新対象ファイル310が記憶されたディレクトリの状態は図3(b)〜図3(d)のいずれかの状態で電源オフになったと考えられる。そこでステップS402において、ファイル有無判定手段150はハッシュ値ファイル330が存在するか否かを判定する。ハッシュ値ファイル330が存在していなければ、図3(b)のようにバックアップファイル320を作成後の状態で電源オフになったと考えられるから、ステップS403においてファイル操作手段130はバックアップファイル320を消去し、更新対象ファイル310「conf」が正常なファイルであるとみなし、ファイルの回復処理を終了する。なお、このときの処理は「rm conf.old;sync」コマンドを実行することにより行われる。
【0039】
なお、上記のステップS403の処理を実行中に電源オフになってしまった場合、再度電源オン時に、バックアップファイル320の内容に関わりなく、ステップS401の処理においてバックアップファイル320が存在するか否かを判定し、バックアップファイル320が存在しているならこのステップS402の処理を行うことでファイルの回復処理が可能となり、バックアップファイル320が既に消去されているならそのまま更新対象ファイル310が正常なファイルとみなされて回復処理が終了される。
【0040】
ステップS402において、ハッシュ値ファイル330が存在すると判定された場合、ステップS404において、ハッシュ値算出手段140は更新対象ファイル310のファイルのデータからハッシュ値を算出する。次いで、ステップ405において、算出された更新対象ファイル310のハッシュ値と、ハッシュ値ファイル330に記憶されたハッシュ値とが一致するか否かを判定する。
【0041】
ハッシュ値が一致しない場合、図3(d)のように、更新対象ファイル310が編集中にVoIP電話機100が電源オフになったことが分かるから、バックアップファイル320が回復されるファイルのデータとして正しいことになる。それで、ファイル操作手段130は、ステップS406においてバックアップファイル320を更新対象ファイル310にコピーし、次いで、ステップS407においてハッシュ値ファイル330を消去し、ステップS408において、バックアップファイル320を消去し、ファイルの回復処理を終了する。上記ステップS406〜S408の処理は、「cp conf.old conf;sync」コマンド、「rm conf.md5;sync」コマンド、「rm conf.old;sync」コマンドをCPU111において実行することにより行われる。
【0042】
なお、上記のステップS406〜S408の処理を実行中に電源オフになってしまった場合、再度電源オン時に、バックアップファイル320が更新対象ファイル310にコピー完了でなければステップS405の処理でハッシュ値が一致しないのでもう一度ステップS406〜S408の処理が行われることでファイルの回復が可能となる。また、ハッシュ値ファイル330が消去されていない場合もステップS405の処理でハッシュ値が一致しないのでもう一度ステップS406〜S408の処理が行われる。さらに、ハッシュ値ファイル330が壊れている場合もステップS405の処理でハッシュ値が一致しないのでステップS406〜S408の処理によって更新対象ファイル310の回復が可能となる。ハッシュ値ファイル330が既に消去されている場合は、ステップS401〜S403において説明したのと同様の方法でファイルの回復を行うことができる。
【0043】
ステップS405においてハッシュ値が一致した場合、図3(c)のように更新対象ファイル310、バックアップファイル320、ハッシュ値ファイル330が正常な状態で電源オフになったことになる。そこでファイル操作手段130は、ステップS407においてハッシュ値ファイル330を消去し、ステップS408においてバックアップファイル320を消去し、ファイルの回復処理を終了する。なお、このときの処理は、「rm conf.md5;sync」コマンド、「rm conf.old;sync」コマンドをCPU111において実行することにより行われる。
【0044】
さらに、上記のステップS407、S408の処理を実行中に電源オフになった場合は、再度電源オン時に、ハッシュ値ファイル330が消去される前であればステップS47、S408の処理を実行することでファイルの回復が可能であり、ハッシュ値ファイル330が壊れていればステップS405でハッシュ値が一致しないと判定されるからステップS406〜S408の処理を行ってファイルを回復し、ハッシュ値ファイル330が既に消去されていればステップS401〜S403で説明したのと同様の処理を行ってファイルを回復することができる。
【0045】
上記の実施例では、ファイル保護機能を備えた電子装置としてVoIP電話機を例示して説明した。しかしながら、本発明は上記の実施例に限られず、ファイルをハードディスクやフラッシュメモリ等に記憶する機能を有するコンピュータに適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
100 VoIP電話機
110 制御手段
120 フラッシュメモリ
130 ファイル操作手段
140 ハッシュ値算出手段
150 ファイル有無判定手段
160 ディスプレイ
170 キーボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御手段と、更新対象ファイルを記録する記録媒体と、ファイル操作手段と、前記更新対象ファイルを構成するデータからハッシュ値を生成するハッシュ値算出手段と、を備えるファイルデータ保護機能を備えた電子装置であって、
前記更新対象ファイルのデータを変更する場合に、前記ファイル操作手段は前記更新対象ファイルのバックアップファイルを作成し、
前記ハッシュ値算出手段は前記更新対象ファイルのハッシュ値を算出して前記記録媒体にハッシュ値記録ファイルとして記録し、
前記ファイル操作手段は前記更新対象ファイルのデータを変更し、
前記更新対象ファイルのデータ変更後に前記ファイル操作手段が前記ハッシュ値記録ファイル及び前記バックアップファイルを削除することを特徴とするファイルデータ保護機能を備えた電子装置。
【請求項2】
前記ファイルデータ保護機能を備えた電子装置は前記バックアップファイルが存在するか否か、及び、前記ハッシュ値記録ファイルが存在するか否かを判定するファイル有無判定手段を備え、
前記電子装置の電源オン時に、前記ファイル有無判定手段が前記バックアップファイル及び前記ハッシュ値記録ファイルの両者が存在すると判定した場合には、前記ハッシュ値算出手段が前記更新対象ファイルからハッシュ値を算出してその値を前記ハッシュ値記録ファイルに記録されたハッシュ値と比較し、両者が一致しない場合に前記ファイル操作手段が前記バックアップファイルを前記更新対象ファイルに書き戻すことを特徴とする請求項1に記載のファイル保護機能を備えた電子装置。
【請求項3】
前記ファイル有無判定手段が、前記バックアップファイルが存在するのに対し前記ハッシュ値記録ファイルが存在しないと判定した場合には、前記ファイル操作手段が前記バックアップファイルを削除することを特徴とする請求項2に記載のファイル保護機能を備えた電子装置。
【請求項4】
前記ハッシュ値算出手段が前記更新対象ファイルから算出されたハッシュ値と前記ハッシュ値記録手段に記録されたハッシュ値とを比較し、両者が一致している場合に、前記ファイル操作手段が前記バックアップファイルと前記ハッシュ値記録ファイルとを削除することを特徴とする請求項2に記載のファイル保護機能を備えた電子装置。
【請求項5】
制御手段と、更新対象ファイルを記録する記録媒体と、ファイル操作手段と、前記更新対象ファイルを構成するデータからハッシュ値を生成するハッシュ値算出手段と、を備える電子装置におけるファイル保護方法であって、
前記ファイル保護方法は、前記更新対象ファイルのデータを変更する場合に、
(1)前記ファイル操作手段が前記更新対象ファイルのバックアップファイルを作成するステップと、
(2)前記ハッシュ値算出手段が前記更新対象ファイルのハッシュ値を算出して前記記録媒体にハッシュ値記録ファイルとして記録するステップと、
(3)前記ファイル操作手段が前記更新対象のファイルのデータを変更するステップと、(4)前記ファイル操作手段が前記ハッシュ値記録ファイル及び前記バックアップファイルを削除するステップと、を備えることを特徴とする。
【請求項6】
前記電子装置はさらにファイル有無判定手段を備え、
前記ファイル保護方法は、さらに前記電子装置の電源オン時に、前記ファイル有無判定手段が前記バックアップファイル及び前記ハッシュ値記録ファイルの両者が存在すると判定した場合には、前記ハッシュ値算出手段が前記更新対象ファイルからハッシュ値を算出してその値を前記ハッシュ値記録ファイルに記録されたハッシュ値と比較し、両者が一致しない場合に前記ファイル操作手段が前記バックアップファイルを前記更新対象ファイルに書き戻すことを特徴とする請求項5に記載のファイル保護方法。
【請求項7】
前記ファイル有無判定手段が、前記バックアップファイルが存在するのに対し前記ハッシュ値記録ファイルが存在しないと判定した場合には、前記ファイル操作手段が前記バックアップファイルを削除することを特徴とする請求項6に記載のファイル保護方法。
【請求項8】
前記ハッシュ値算出手段が前記更新対象ファイルから算出されたハッシュ値と前記ハッシュ値記録手段に記録されたハッシュ値とを比較し、両者が一致している場合に、前記ファイル操作手段が前記バックアップファイルと前記ハッシュ値記録ファイルとを削除することを特徴とする請求項5に記載のファイル保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−8997(P2012−8997A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160826(P2010−160826)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】