説明

ファイル転送システム

【課題】送信者端末と受信者端末間の大容量電子ファイル授受におけるユーザ処理時間の短縮を可能とする。
【解決手段】送信元クライアント端末と、送信先クライアント端末と、複数の配送ウェブサーバとが、ネットワーク接続されているファイル転送システムであって、前記配送ウェブサーバは、ファイルの送受信を行うファイル送受信部と、前記送信元クライアント端末又は前記送信先クライアント端末と、複数の前記配送ウェブサーバとの間の往復遅延時間(RTT)を計算するRTT計算部と、を有し、前記送信元クライアント端末は、複数の前記配送ウェブサーバのうちのいずれか1つの配送ウェブサーバにアクセスし、そこからRTTが最も短い第2の配送ウェブサーバに対して、前記送信先クライアント端末の電子メールアドレスと、ロケーションヒントと、送信したいファイル本体と、を含む電子ファイルを送信することを特徴とするファイル転送システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイル転送システムに関し、特に、国際間のような遠隔地間で、大容量の電子ファイルを、インターネットを経由して転送するサービスを提供するファイル転送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、インターネットにおける電子ファイル(電子データ)の送受信には、RFC5321で標準化されているSMTP(Simple Network Protocol:簡易メール転送プロトコル)が広く使われてきた。しかしながら、SMTPは、本来、テキストベースのプロトコルであり、また自己の管理下にないメールサーバ間を経由していく通信であるため、経由する途中のメールサーバのディスク容量の制限から、大容量の電子ファイルの送受信を行えない場合があるという問題があった。
【0003】
また、RFC959で標準化されているFTP(File Transfer Protocol:ファイル転送プロトコル)では、途中のサーバを経由することなく、直接、送信元と受信元とのTCPセッションを接続するため、大容量の電子ファイルの送受信も可能である。しかしながら、送信者と受信者とが、WAN(Wide Area Network:広域網)を経由する場合には、TCP/IPアプリケーションとしてのファイル転送システムにおいて、輻輳処理などでRTT(Round Trip Time:往復遅延時間)が長くなることに対する性能劣化が発生するという問題があった。これは、TCP/IPが、データ転送後に確認応答パケット(ACK)を必要とするようなコネクション型の通信方式であることに起因する。
【0004】
そこで、例えば、下記特許文献1に開示されているように、TCP/IPの実装のウィンドウサイズを調整して送信者と受信者との通信を高速化する手法が提案されている。
【0005】
また、下記特許文献2に開示されているように、ウェブサーバとウェブブラウザのようなサーバとクライアント間において、差分計算、キャッシング、またはプロトコル縮小技法によって性能向上の手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−195326号公報
【特許文献2】特表平11−500895号公報
【特許文献3】特開2004−23794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載されている方法は、RTTが比較的小さい100ミリ秒以下の、例えば国内での送信者と受信者との間でのデータ転送における性能改善には有効であるが、国際間での通信のように、100ミリ秒を超えるRTTが発生する送信者と受信者との間のデータ転送における通信状況の改善には効果が見えにくいという問題があった。また、差分計算、キャッシングなどの手法では、ファイル転送の場合の様な、過去の送信データとの同一性が少ない場合には、通信状況の改善の効果が見えにくい問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みなされたものであり、その目的は、電子メールでは送信ができないCADデータの様な大容量の電子ファイルの国際間での送受信を、RTTが長くなることに依存する長い待ち時間なしに、送信者や受信者が送受信することができるファイル転送技術を提供することを目的とする。
【0009】
また、例えば新興国のように、ネットワークの品質が不安定である場合であっても、送信者や受信者が待ち時間をなく送受信ができるファイル転送サービスを提供することも目的とする。
【0010】
さらに、輸出国では国家による検閲は禁止されているが、輸入国では国家による検閲が実施されるような輸入国と輸出国との間の法規の違いに対しても柔軟に対応することが可能にすることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、送信元クライアント端末と、送信先クライアント端末と、複数の配送ウェブサーバとが、ネットワーク接続されているファイル転送システムであって、前記配送ウェブサーバは、ファイルの送受信を行うファイル送受信部と、前記送信元クライアント端末又は前記送信先クライアント端末と、複数の前記配送ウェブサーバとの間の往復遅延時間(RTT)を計算するRTT計算部と、を有し、前記送信元クライアント端末は、複数の前記配送ウェブサーバのうちのいずれか1つの第1の配送ウェブサーバにアクセスし、前記第1の配送ウェブサーバの前記RTT計算部により計算された前記送信元クライアント端末との間のRTTが最も短い第2の配送ウェブサーバに対して、前記送信先クライアント端末の電子メールアドレスと、位置情報のヒントとなるロケーションヒントと、送信したいファイル本体と、を含む電子ファイルを送信することを特徴とするファイル転送システムが提供される。
【0012】
尚、第1の配送ウェブサーバと第2の配送ウェブサーバが同じ場合もある。送信に失敗すると電子ファイルを他の配送ウェブサーバに転送する。
【0013】
前記第2の配送ウェブサーバは、自己のRTT計算部により、前記ロケーションヒントに基づいて前記送信先クライアント端末との間のRTTが最も短い第3の配送ウェブサーバを求め、前記第2の配送ウェブサーバと前記第3の配送ウェブサーバとが異なる場合には、前記電子ファイルを自己ファイル送受信部により、前記第3の配送ウェブサーバに転送するとともに、前記第3の配送ウェブサーバのURLを前記送信先クライアント端末に送信することを特徴とする。
【0014】
前記送信先クライアント端末は、受信した前記第3の配送ウェブサーバのURLにアクセスし、前記電子ファイルを受け取ることを特徴とする。前記送信先クライアント端末が、前記ファイルの受け取りに失敗した場合には、前記第3の配送ウェブサーバは、自己のRTT計算部により、次にRTTが小さい配送ウェブサーバであって前記電子ファイルを未転送の第4の配送ウェブサーバを算出し、前記第4の配送ウェブサーバに対して前記電子ファイルを転送するとともに、前記第4の配送ウェブサーバのURLを前記送信先クライアント端末に送信することを特徴とする。
【0015】
また、前記配送ウェブサーバは、前記送信元クライアント端末によりアップロードされた前記電子ファイルを保存するファイル履歴管理部を有することを特徴とする。前記配送ウェブサーバは、前記送信先クライアント端末によりダウンロードされた前記電子ファイルを保存するファイル履歴管理部を有することが好ましい。送信者端末にアップロードされた電子ファイルを転送元の配送ウェブサーバに履歴ファイルを保存する手段と、受信者端末にダウンロードされる電子ファイルを転送先の配送ウェブサーバに履歴ファイルを保存する手段を持つことにより、輸出入国で国家による検閲が実施されるような法規に対しても柔軟に対応することが可能になる。
【0016】
また、本発明は、送信元クライアント端末と、送信先クライアント端末と、複数の配送ウェブサーバとが、ネットワーク接続されているファイル転送システムにおける第1の配送ウェブサーバであって、ファイルの送受信を行うファイル送受信部と、前記送信元クライアント端末又は前記送信先クライアント端末と、複数の前記配送ウェブサーバとの間の往復遅延時間(RTT)を計算するRTT計算部と、を有し、前記送信元クライアント端末からのアクセスに応じて、前記第1の配送ウェブサーバの前記RTT計算部により計算された前記送信元クライアント端末との間のRTTが最も短い第2の配送ウェブサーバに対して、前記送信先クライアント端末の電子メールアドレスと、位置情報のヒントとなるロケーションヒントと、送信したいファイル本体と、を含む電子ファイルを送信することを特徴とする第1の配送ウェブサーバである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、遠隔地間で、大容量電子ファイルの送信時におけるRTTに依存する待ち時間を少なくし、また受信時においてもRTTに依存する待ち時間を少なくすることができる。
また、国際回線の品質が不安定な国との間の電子ファイルの送受信に関しても、送信者と受信者は待ち時間を低減して処理を実行することができる。
また、輸出入国で国家による検閲が実施されるような法規に対しても柔軟に対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態による国際間ファイル転送システムの全体構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】図2(a)は、図1に示す配送ウェブサーバの一構成例を示す機能ブロック図であり図2(b)は、クライアント端末の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】図1に示すA国の送信元クライアント端末(A)がファイルを送信し、PaaS#1上の配送ウェブサーバがファイルを受信する処理の流れの一例を示すフローチャート図である。
【図4】図1に示すPaaS#1上の配送ウェブサーバが、PasS#2上の配送ウェブサーバもしくはPasS#3上の配送ウェブサーバにファイルを転送する処理の流れを示すフローチャート図である。
【図5】図1に示すB国の送信先クライアント端末(受信者)が配送ウェブサーバ2もしくは配送ウェブサーバ3からクライアント端末(B)がファイルを受信する処理の流れを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態によるファイル転送技術について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態によるファイル転送システムの一構成例を示す機能ブロック図である。図1に示すように、ファイル転送システムは、A国のPaaS#1のデータセンター107、A国のPaaS#1のデータセンター107上の配送ウェブサーバ106、B国のPaaS#2のデータセンター109、PaaS#2のデータセンター109上の配送ウェブサーバ108、B国のPaaS#3のデータセンター113、PaaS#3のデータセンター113上の配送ウェブサーバ112、を有している。さらに、A国において、ファイルを送信する送信元クライアント端末101と、B国において、ファイルを受信する送信先クライアント端末102と、を有している。これらの配送ウェブサーバ106、108、112、送信元クライアント端末101(送信者)、送信先クライアント端末102(受信者)は、インターネットなどのネットワーク103を介して接続可能に構成されている。
【0021】
図1では、説明を簡単にするために、A国、B国に、これらの配送ウェブサーバ106、108、112、送信元クライアント端末101、送信先クライアント端末102が設けられている例を示しているが、実際には、その他の複数の国のデータセンターとそのデータセンター上の配送ウェブサーバとクライアント端末とが設けられているのが一般的である。
【0022】
図2(a)は、各配送ウェブサーバの一構成例を示す機能ブロック図である。各配送ウェブサーバ201(106、108、112)は、ファイルの送受信を行うファイル送受信プログラム(送受信部)202と、クライアント端末と配送ウェブサーバ間、或いは、配送ウェブサーバ間のRTTを計算するRTT計算プログラム(RTT計算部)203と、ファイルの履歴を管理するファイル履歴管理プログラム204と、ファイルを保存するデータベースサーバ205と、を有している。データベースサーバ205は、配送ウェブサーバ外に設けられていても良い。さらに、上記各プログラム202、203、204を読み込む高速のRAM(メモリ)207と、メモリ207上に展開したプログラムを実行するためのCPU206と、を有している。
【0023】
図2(b)は、クライアント端末101(102)の一構成例を示す機能ブロック図である。図2(b)に示すように、クライアント端末は、例えば一般的なパーソナルコンピュータ(PC)であり、全体を制御するCPU131、メモリ133、通信部135、キーボードなどの操作部137、液晶ディスプレイなどの表示部139を有している。
【0024】
図3は、国際間ファイル転送サービスにおける、ファイル送信処理の流れの一例を示すフローチャート図である。
【0025】
ユーザ(A国の送信者)は、送信元クライアント端末(クライアントコンピュータ)101を用いて、インターネット103を介してA国のPaaS#1のデータセンター107上の配送ウェブサーバ106にアクセスする(ステップ301)。送信元クライアント端末101の表示部139のブラウザに表示される配送ウェブサーバ106が提供するWebページにおいて、ユーザが操作部137などを用いて、送信メニューを選択する(ステップ302)。
【0026】
すると、配送ウェブサーバ106は、配送ウェブサーバ106自身と送信元クライアント端末101(アクセス元)のIPアドレス間のRTTを、RTT計算プログラム203を使用して計算するとともに、各配送ウェブサーバ108、112に対して、アクセス元IPアドレスを通知して問い合わせを行う。問い合わせを受けた各配送ウェブサーバ108、112は、RTT計算プログラム203を使用して自己(配送ウェブサーバ)と通知されたIPアドレスとの間のRTTを計算して、問い合わせ元の配送ウェブサーバ106に計算結果を通知する。配送ウェブサーバ106は、全ての計算結果を比較して、最もRTTが小さい配送ウェブサーバを算出することができる(ステップ303)。
【0027】
尚、RTTの一般的な計測方法については、RFC 619(Mean Round-Trip Times in the ARPANET)において標準化されている他、上記特許文献3においても、主として受信側主体の場合において、詳細に説明されている。
【0028】
算出した結果、問い合わせを行った配送ウェブサーバ106自身がRTT最小の配送ウェブサーバである場合(ステップ304でYES)、送信元クライアント端末101の表示部において、配送ウェブサーバ106自身の送信用Webページに遷移する。他の配送ウェブサーバがRTT最小の場合(ステップ304でNO)、RTT最小の配送ウェブサーバの送信用Webページにリダイレクトし、その配送ウェブサーバの送信用Webページに遷移する(ステップ305)。
【0029】
ユーザは、送信元クライアント端末101の表示部139のブラウザに表示された送信用Webページ上において、ファイル転送先の送信先クライアント端末102(受信者)のメールアドレス・ロケーションヒント・送信したいファイルを指定して、RTT最小のウェブサーバ(例えば106)に、送信先クライアント端末の送信先メールアドレス・ロケーションヒント・送信したいファイルの送信を行う(ステップ306)。
【0030】
尚、ロケーションヒントとは、例えば、「フランス」など国名や地域名などが該当する。また、「アメリカ(西部)」「アメリカ(ハワイ)」など国名と地方の組にしても良く、「オセアニア」など大州としても良い。要するに、送信先の大まかなロケーション(地域名)がわかるような情報であれば、文字、地図、その他の情報であっても良い。以下においては、ロケーションヒントが「B国」である場合を例にして説明する。
【0031】
次いで、配送ウェブサーバ106は、ステップ306で送信されたファイル(メールアドレス・ロケーションヒントを含む)を受信する(307)。配送ウェブサーバ106は、受信したファイル(送信先クライアント端末のメールアドレス・ロケーションヒントを含む)を履歴ファイルとしてファイル履歴管理プログラム204を用いて配送ウェブサーバ106の例えばデータベースサーバ205内に保存する(ステップ308)。
【0032】
図4は、本実施の形態によるファイル転送システム(国際間ファイル転送サービス)における、配送ウェブサーバ間のファイル転送処理の流れを示すフローチャート図である。
【0033】
配送ウェブサーバ106は、上記ロケーションヒント(B国)から、RTT計算プログラム203を使用して、送信先クライアント端末102(受信者)と各配信ウェブサーバ間のRTTを計算するとともに、各配送ウェブサーバ108、112にロケーションヒントを通知して問い合わせを行う。問い合わせを受けた各配送ウェブサーバ108、112は、RTT計算プログラム203を使用して、送信先クライアント端末102(受信者)と配送ウェブサーバ108、112との間のRTTを計算して、問い合わせ元の配送ウェブサーバ106に計算結果を通知する。尚、各ロケーションヒントに対応するIPアドレスは事前に各ウェブサーバに登録しており、RTT計算プログラム203は、ロケーションヒントに対応するIPアドレスをRTTの計算に利用する。配送ウェブサーバ106は、全ての計算結果を比較して、最もRTTが小さい配送ウェブサーバを算出する(ステップ401)。
【0034】
算出した結果、自分(配送ウェブサーバ106)がRTT最小の配送ウェブサーバの場合(ステップ402でYES)、配送ウェブサーバ106上のダウンロード先のURLが記載された電子メールを、送信先クライアント端末102のメールアドレスに宛てて送信する(ステップ408)。
【0035】
一方、配送ウェブサーバ106以外の他の配送ウェブサーバ108・112がRTT最小の場合には(ステップ402でNO)、配送ウェブサーバ106は、RTT最小の配送ウェブサーバ(例えば108)に向けて、ステップ307で受信したファイルを転送する(ステップ403)。例として転送先のサーバを配送ウェブサーバ108とする。
【0036】
このとき、ロケーションヒント・送信先クライアント端末102(受信者)のメールアドレス情報も転送する。この転送が成功すれば(ステップ404でYES)、配送ウェブサーバ108がファイルの受信を完了する(ステップ406)。転送に失敗した場合(ステップ404でNO)、最初に転送を試みた配送ウェブサーバの次にRTTが小さい配送ウェブサーバを算出し直し(ステップ405)、その配送ウェブサーバに向けて転送する(ステップ403)。再び転送に失敗した場合は、さらに、その次にRTTが小さい配送ウェブサーバに転送を試み、この処理を繰り返す。
【0037】
転送が完了すると(ステップ404においてYESでステップ406に進む)、転送先の配送ウェブサーバ108は、受信したファイルを履歴ファイルとして配送ウェブサーバ108内に保存する(ステップ407)。これは、ファイルの輸入国であるB国で、国家による検閲が実施されるような場合に、転送先ウェブサーバ108内のデータベースサーバ205内にファイルの履歴を残すことで、輸入国側での検閲に対応するためである。
【0038】
その後、配送ウェブサーバ108は、配送ウェブサーバ108上のダウンロード先のURLが記載された電子メールを、送信先クライアント端末102のメールアドレスに向けて送信する(ステップ408)。
【0039】
図5は、本実施の形態によるファイル転送システム(国際間ファイル転送サービス)における、ファイル受信時の処理の流れを示すフローチャート図である。
【0040】
送信先クライアント端末102(ユーザ(B国の受信者))は、図4のステップ408で配送ウェブサーバ108から送信された電子メールを受信する(ステップ501)。その後、送信先クライアント端末102により、インターネット103を介して、電子メールに記載された配送ウェブサーバ108上のURLに基づいて、B国のPaaS#2のデータセンター109上の配送ウェブサーバ108にアクセスする(ステップ502)。送信先クライアント端末102は、アクセス先の配送ウェブサーバ108によって提供されたWebページを表示部139に表示させ、この表示メニューなどを用いて、配送ウェブサーバ108に保存されているファイルを受信する(ステップ503)。
【0041】
ファイルの受信が成功すれば、処理が完了となる(ステップ504でYES)。
ファイルの受信が失敗した場合(ステップ504でNO)、配送ウェブサーバ108は各配送ウェブサーバに、送信先クライアント端末102(受信者)のIPアドレスを通知して問い合わせを行う(ステップ505)。問い合わせを受けた各配送ウェブサーバは、RTT計算プログラム203を使用して、送信先クライアント端末102(受信者)と各配送ウェブサーバとの間のRTTを計算して、問い合わせ元の配送ウェブサーバ108に計算結果を通知する(ステップ506)。ステップ507で、次にRTTが小さい配送ウェブサーバ112を算出する。配送ウェブサーバ108は、計算結果が最小の配送ウェブサーバで、このファイルが未転送の配送ウェブサーバ112に対して転送を実施する(ステップ508)。ここで、転送処理済みの配送ウェブサーバ108でなく未転送の配送ウェブサーバ112にファイルを転送するのは、転送処理済みの配送ウェブサーバ間(106−108)で転送が繰り返されループするようなことを無くすためである。再び失敗した場合はさらに次にRTTが小さく、ファイルが未転送の配送ウェブサーバに転送を試み、これを繰り返す。
【0042】
転送が完了すると、転送先の配送ウェブサーバ112は、受信したファイルを履歴ファイルとして配送ウェブサーバ内に保存する(ステップ509)。次いで、新たなダウンロード先(転送先)の配送ウェブサーバ112のURLを送信先クライアント端末102(受信者)のメールアドレスに宛てて電子メールで送信する(510)。次いで、ステップ501に戻り、処理を繰り返す。
【0043】
以上に説明したように、本実施の形態によるファイル転送技術を用いると、例えば国際間のような遠隔地間で、CADデータのような大容量の電子ファイルを送信時のRTTに依存する待ち時間を少なくし、また受信時にもRTTに依存する待ち時間を少なくして受信することができる。
【0044】
また、国際回線の品質が不安定な国との電子ファイルの送受信も、送信元クライアント端末(送信者)と送信先クライアント端末(受信者)とは、待ち時間を少なくして処理をすることができる。
【0045】
また、転送元(先)の国家の法規に依存したウェブサーバの設置のための許可証を取得して転送元(先)の現地の法規に従ったサービスの運用を実施する事ができる。
【0046】
尚、上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0047】
また、本実施の形態で説明した機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。
【0048】
本発明は、以下の開示を含む。
本発明は、近年において、全世界で安価に提供されるようになってきたPaaS(Platform as a Service)と呼ばれる環境のサーバを利用することにより、全世界のPaaSに分散配置された配送ウェブサーバを設置する手段と、電子ファイルの送信者が使用しているクライアントコンピュータ上のブラウザから、電子ファイルを受信先の位置情報のヒント情報(ロケーションヒント)を指定する手段と、送信者から送信のRTTが最も短い配送ウェブサーバを算出してアップロードし、アップロードされた配送ウェブサーバから受信者がダウンロードするRTTが最も短い配送ウェブサーバを特定して電子ファイルを転送する手段と、転送先の配送ウェブサーバ上のダウロード先のURLを受信者の電子メールアドレスに送信し、受信者は電子メールで受信したURLから受信者が使用しているクライアントコンピュータ上のブラウザを利用してダウンロードする手段を持つ。
【0049】
また、前記の配送ウェブサーバ間の通信において、転送先の配送ウェブサーバへの通信が遮断されている場合には、通信が遮断されている配送ウェブサーバを除外して受信者からのダウンロードのRTTが短くなる配送ウェブサーバを算出して配送する手段を持つ。
【0050】
また、転送先のウェブサーバから受信者へのダウンロードにおいて通信が遮断されてしまう場合に、通信が遮断されている配送ウェブサーバを除外して受信者からのダウンロードのRTTが短くなる配送ウェブサーバを算出して配送する手段を持つ。
【0051】
また、転送元と転送先のウェブサーバにおいてアップロードとダウンロードする対象の電子ファイルの履歴ファイルを保存する手段を持つ。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、ファイル転送システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
101 送信元クライアント端末(コンピュータ)(A国の送信者)
102 送信先クライアント端末(コンピュータ)(B国の受信者)
103 インターネット
104 回線(A国の送信者)
105 回線(B国の受信者)
106 PaaS#1上の配送ウェブサーバ
107 A国のPaaS#1のデータセンター
108 PasS#2上の配送ウェブサーバ
109 B国のPaaS#2のデータセンター
110 回線(A国のPaaS#1のデータセンター)
111 回線(B国のPaaS#2のデータセンター)
112 PaaS#3上の配送ウェブサーバ
113 B国のPaaS#3のデータセンター
114 (B国のPaaS#3のデータセンター)
201 配送ウェブサーバ
202 ファイル送受信プログラム
203 RTT計算プログラム
204 ファイル履歴管理プログラム
205 DB(データベース)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信元クライアント端末と、送信先クライアント端末と、複数の配送ウェブサーバとが、ネットワーク接続されているファイル転送システムであって、
前記配送ウェブサーバは、
ファイルの送受信を行うファイル送受信部と、
前記送信元クライアント端末又は前記送信先クライアント端末と、複数の前記配送ウェブサーバとの間の往復遅延時間(RTT)を計算するRTT計算部と、を有し、
前記送信元クライアント端末は、複数の前記配送ウェブサーバのうちのいずれか1つの第1の配送ウェブサーバにアクセスし、前記第1の配送ウェブサーバの前記RTT計算部により計算された前記送信元クライアント端末との間のRTTが最も短い第2の配送ウェブサーバに対して、前記送信先クライアント端末の電子メールアドレスと、位置情報のヒントとなるロケーションヒントと、送信したいファイル本体と、を含む電子ファイルを送信することを特徴とするファイル転送システム。
【請求項2】
前記第2の配送ウェブサーバは、
自己のRTT計算部により、前記ロケーションヒントに基づいて前記送信先クライアント端末との間のRTTが最も短い第3の配送ウェブサーバを求め、前記第2の配送ウェブサーバと前記第3の配送ウェブサーバとが異なる場合には、前記電子ファイルを自己ファイル送受信部により、前記第3の配送ウェブサーバに転送するとともに、前記第3の配送ウェブサーバのURLを前記送信先クライアント端末に送信することを特徴とする請求項1に記載のファイル転送システム。
【請求項3】
前記送信先クライアント端末は、受信した前記第3の配送ウェブサーバのURLにアクセスし、前記電子ファイルを受け取ることを特徴とする請求項2に記載のファイル転送システム。
【請求項4】
前記送信先クライアント端末が、前記ファイルの受け取りに失敗した場合には、
前記第3の配送ウェブサーバは、自己のRTT計算部により、次にRTTが小さい配送ウェブサーバであって前記電子ファイルを未転送の第4の配送ウェブサーバを算出し、前記第4の配送ウェブサーバに対して前記電子ファイルを転送するとともに、前記第4の配送ウェブサーバのURLを前記送信先クライアント端末に送信することを特徴とする請求項2又は3に記載のファイル転送システム。
【請求項5】
前記配送ウェブサーバは、前記送信元クライアント端末によりアップロードされた前記電子ファイルを保存するファイル履歴管理部を有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のファイル転送システム。
【請求項6】
前記配送ウェブサーバは、前記送信先クライアント端末によりダウンロードされた前記電子ファイルを保存するファイル履歴管理部を有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のファイル転送システム。
【請求項7】
送信元クライアント端末と、送信先クライアント端末と、複数の配送ウェブサーバとが、ネットワーク接続されているファイル転送システムにおける第1の配送ウェブサーバであって、
ファイルの送受信を行うファイル送受信部と、
前記送信元クライアント端末又は前記送信先クライアント端末と、複数の前記配送ウェブサーバとの間の往復遅延時間(RTT)を計算するRTT計算部と、を有し、
前記送信元クライアント端末からのアクセスに応じて、前記第1の配送ウェブサーバの前記RTT計算部により計算された前記送信元クライアント端末との間のRTTが最も短い第2の配送ウェブサーバに対して、前記送信先クライアント端末の電子メールアドレスと、位置情報のヒントとなるロケーションヒントと、送信したいファイル本体と、を含む電子ファイルを送信することを特徴とする第1の配送ウェブサーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−208832(P2012−208832A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75169(P2011−75169)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000233055)株式会社日立ソリューションズ (1,610)
【Fターム(参考)】