説明

ファイル

【課題】隣り合うファイル同士を連結する機構を備えたファイルを低コストで製造する。
【解決手段】ファイル本体2の表面側にポケット3を形成したファイル1において、ファイル本体2の下端部の左右両端寄りに、逆U字形の切れ込みを入れてフック部5を形成する。また、ファイル本体2の上端部の左右両端寄りに下向き凸状の円弧形状の切れ込みを入れることによりスリット状の係止孔6を形成する。上下に並べた複数のファイル本体2の、下側のファイル本体2の係止孔6に、上側のファイル本体1のフック部5を挿し込むことによって、ファイル1同士を容易に連結することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポケットに絵等の物品を収納して、この収納状態のまま教室の壁等に留めて展示する際に用いられるファイルであって、特に、複数のファイルをその吊り下げ方向に連結し得るようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
学校の教室等で児童の絵等を壁に展示する際に、下記特許文献1に示すように、ファイル本体にポケットを形成したファイルを用いることがある。このポケットには、絵を描いた画用紙等の物品を収納することができる。前記ファイル本体の四隅には、雌雄嵌合するスナップボタンが設けられている。そして、このスナップボタンの雌雄を互いに留め合うことで、複数のファイルを上下又は左右に自在に連結し得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3085039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のファイルは、ファイル本体の四隅に、このファイル本体とは別部材であるスナップボタンを設けている。このため、スナップボタンの部品コスト及び取り付けのための加工コストを要する。
【0005】
そこで、この発明は、隣り合うファイル同士を連結する機構を備えたファイルを低コストで製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明は、ファイル本体に物品を収納するポケットを設け、複数の前記ファイル本体をその吊り下げ方向に互いに連結可能としたファイルにおいて、前記ファイル本体の下端部に切れ込みを入れて、上向きに延びるフック部を形成し、前記ファイル本体の上端部に切れ込みを入れてスリット状の係止孔を形成し、上下に並べた前記ファイル本体の、下側のファイル本体の前記係止孔に、上側のファイル本体の前記フック部を挿し込んで、前記ファイル本体同士を連結する構成とした。
【0007】
この構成においては、ファイル同士の連結をなすためのフック部及び係止孔のいずれも、ファイル本体に切れ込みを入れて形成したものである。すなわち、連結機構の形成に際して、ファイル本体とは別部材であるスナップボタン等を必要としない。また、ファイル本体に切れ込みを入れる作業は、自動化が容易で非常に簡便である。このため、部品調達及び加工に伴うコストの抑制を図ることができる。
【0008】
また前記構成においては、前記係止孔を、前記ファイル本体を吊り下げた際に下向きに凸状の円弧形状をなすように形成するのがより好ましい。
【0009】
このように下向きに円弧形状とすると、前記係止孔の上側が、前記円弧を下辺縁とする舌片となる。この舌片は、その付け根付近において自在に屈曲し、例えばこの舌片をファイルの裏面側から表面側に押すと、この舌片が前記表面側に突出する。この突出により、舌片下側を周縁の一部とする係止孔が下向きに開口する。この係止孔の開口によって、上側に配置したファイル本体の前記フック部を、前記係止孔の下側から挿し込みやすくなって、ファイル同士の連結をスムーズかつ簡便に行うことができる。
【0010】
また、係止孔を下向きの円弧形状とすると、この係止孔が直線状の場合と比較して、前記円弧の下側への張り出し分だけ、前記フック部の係止孔への挿し込み量(前記係止孔の下端からフック部の上端までの長さ)が相対的に大きくなる。このため、吊り下げたファイルに児童が不用意に手を触れても、ファイル同士の連結が外れて落下しにくい、というメリットもある。
【発明の効果】
【0011】
この発明では、ファイル本体に切れ込みを入れて形成したフック部を、上側に配置したファイルのファイル本体に切れ込みを入れて形成した係止孔に挿し込むことにより、複数のファイルをその吊り下げ方向に連結し得るようにした。ファイル本体に切れ込みを入れることにより、フック部及び係止孔からなる連結機構を構成したので、この連結機構として別部材を用意する必要がない。また、切れ込みを入れるという非常に簡便な作業によって、連結機構が形成される。このため、製造コストの抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明に係るファイルの第一の実施形態を示す正面図
【図2】第一の実施形態に係るファイルを吊り下げ方向に複数連結した状態を示す正面図
【図3】第一の実施形態に係るファイルの(a)は係止孔近傍、(b)はファイル同士を連結した状態の連結部近傍、を示す要部正面図
【図4】(a)は図3(a)中のIVa−IVa線に沿った縦断面図、(b)は図3(b)中のIVb−IVb線に沿った縦断面図
【図5】第一の実施形態に係るファイルの連結工程において、(a)は連結前の状態、(b)はフック部と係止孔を対向させた状態、(c)は連結が完了した状態、を示す斜視図
【図6】第一の実施形態に係るファイルの変形例を示す正面図
【図7】図6に示すファイルを吊り下げ方向に複数連結した状態を示す正面図
【図8】本願発明に係るファイルの第二の実施形態を示す正面図
【図9】第二の実施形態に係るファイルの(a)は係止孔近傍、(b)はファイル同士を連結した状態の連結部近傍、を示す要部正面図
【図10】(a)は図9(a)中のXa−Xa線に沿った縦断面図、(b)は図9(b)中のXb−Xb線に沿った縦断面図
【図11】第二の実施形態に係るファイルの連結工程において、(a)は連結前の状態、(b)はフック部と係止孔を対向させた状態、(c)は連結が完了した状態、を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係るファイルの第一の実施形態を図1に示す。このファイル1は、ファイル本体2の表面側にポケット3を形成した縦長の透明樹脂材によって構成される。このポケット3の左右端及び下端の三辺は、ファイル本体2との間で溶着されたシール部4となっていて、このポケット3に収納した物品が脱落しないようにしている。
【0014】
ファイル本体2の下端部の左右両端寄りには、このファイル本体2にその表面から裏面に至る逆U字形の切れ込みを入れることによって、ファイル本体2の上向きに延びるフック部5が形成されている。
【0015】
また、ファイル本体2の上端部の左右両端寄りには、このファイル本体2にその表面から裏面に至る下向き凸状の円弧形状の切り込みを入れることによって、スリット状の係止孔6が形成されている。この係止孔6の上側は、前記円弧を下辺縁とする舌片となっている。この舌片は、その付け根付近において自在に屈曲し、この舌片の表裏面方向に軽く力を加えることにより、ファイル本体2の表面側又は裏面側のいずれにも自在に突出させることができる。
【0016】
このファイル1は、図2に示すように、上側に配置したファイル本体2に形成した係止孔6に、下側に配置したファイル本体2に形成したフック部5を挿し込んで吊り下げることによって、互いに連結することができる。連結したファイル1の各ポケット3には、画用紙等の物品Pが収納される。
【0017】
フック部5と係止孔6とからなる連結機構を図3及び4に示す。この連結機構は、係止孔6(図3(a)及び図4(a)を参照)にフック部5を引っ掛けて(図3(b)及び図4(b)を参照)、下側のファイルを上側のファイルに吊り下げることで構成される。このとき、フック部5は係止孔6の下端から、図3(b)中に示すL1の深さだけ挿し込まれる。
【0018】
フック部5と係止孔6とからなる連結機構による連結の手順について、図5を用いて詳しく説明する。まず、連結するファイル1を吊り下げ方向(上下方向)に並べる(同図(a)を参照)。次に、係止孔6の上側の前記舌片を、ファイル本体2の裏面側から指で押す。すると、この舌片がファイル本体2の表面側に突出する(同図(b)を参照)。この突出によって、係止孔6が下向きに開口し、この開口部から、フック部5を容易に挿し込むことができる(同図(c)を参照)。
【0019】
このフック部5及び係止孔6の個数は特に限定されず、ファイル本体2の素材強度や収納する物品の重さ等を考慮して適宜増やしてもよい。上記第一の実施形態では、複数のファイル1を縦長に配置して、各ファイル1の短辺側で連結したが、図6及び7に示すように、複数のファイル1を横長に配置して、各ファイル1の長辺側で連結してもよい。このときは、ファイル本体2の長辺の左右両端側にフック部5及び係止孔6を形成する。
【0020】
この発明に係るファイルの第二の実施形態を図8に示す。このファイル1は、ファイル本体2にポケット3を形成し、このファイル本体1の下端部にフック部5を、上端部に係止孔6を形成した点で、第一の実施形態に示すファイル1と同じであるが、係止孔6の形状を円弧形状ではなく、一直線状の切れ込み(スリット)とした点で異なる。
【0021】
第二の実施形態に係るファイル1の連結機構を図9及び10に示す。この連結機構は、係止孔6にフック部5を引っ掛けて、下側のファイル1を吊り下げるものであり、図3及び4で説明した連結機構と同じである。この第二の実施形態においては、フック部5は係止孔6の下端から、図9(b)中に示すL2の深さだけ挿し込まれる。この挿し込み深さL2は、第一の実施形態における挿し込み深さL1と比較すると、円弧の張り出し分だけ浅いが、これでも係止孔6からのフック部5の抜け止めを図ることは可能である。
【0022】
この第二の実施形態における連結の手順を図11に示す。この手順は、図5において説明した手順とほぼ同じであるが、本実施形態における係止孔6には舌片がないため、第一の実施形態のように係止孔6から下向きに開口する開口部はない。このため、フック部5を係止孔6にそのまま挿し込んで、上下のファイル1を連結させる。
【0023】
ファイル1を構成する樹脂は、図2に示したように物品Pを収納した状態で複数のファイル1(通常は4〜5枚程度)を連結して吊り下げた際に、連結機構(フック部5及び係止孔6)が折れ曲がったり、破れたりしないのであれば、特にその素材は限定されない。ポケット3に画用紙に描いた絵等を収納して展示するのではなく、単に物品を収納できればよければ、透明素材でなく不透明素材でこのポケット3を構成してもよい。
【0024】
上記の各実施形態においては、連結する上側のファイル1を手前側に、下側のファイル1を奥側に配置したが、この上下のファイル1、1の前後(手前と奥)を逆に、すなわち係止孔6の裏面側からフック部5を挿し込むようにしても勿論構わない。
【符号の説明】
【0025】
1 ファイル
2 ファイル本体
3 ポケット
4 シール部
5 フック部
6 係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイル本体(2)に物品(P)を収納するポケット(3)を設け、複数の前記ファイル本体(2)をその吊り下げ方向に互いに連結可能としたファイルにおいて、
前記ファイル本体(2)の下端部に切れ込みを入れて、上向きに延びるフック部(5)を形成し、前記ファイル本体(2)の上端部に切れ込みを入れてスリット状の係止孔(6)を形成し、上下に並べた前記ファイル本体(2、2)の、下側のファイル本体(2)の前記係止孔(6)に、上側のファイル本体(2)の前記フック部(5)を挿し込んで、前記ファイル本体(2)同士を連結することを特徴とするファイル。
【請求項2】
前記係止孔(6)が、前記ファイル本体(2)を吊り下げた際に下向きに凸状の円弧形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載のファイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−56200(P2012−56200A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201947(P2010−201947)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000103688)オクイ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】