説明

ファインダー装置

【課題】有機EL素子が設けられたファインダー光学系において、有機EL層による発光表示のコントラストを高める。
【解決手段】発光表示部16は、ファインダー装置において、被写体からの光が通過する光路に交差するように配置する。発光表示部16は、透明基板41と、密閉空間39を形成するために設けられる封止部材42と、密閉空間39内に配置される発光部26Cを備える。ファインダー装置において、透明基板41を接眼側に、封止部材43を対物側に配置する。透明基板41と共に、発光部26Cの有機EL層33bを挟むように、封止部材42上に第1の遮光マスク51を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファインダー装置、及びそれを備えたカメラ等の光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一眼レフカメラ等のファインダー装置において、ペンタプリズムと焦点板の間の被写体結像位置近傍に有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子という)から構成される発光表示部が配置されることが知られている。この有機EL素子は、例えば被写体観察に使用される撮影視野領域において、セグメント表示を構成し、数字等を発光表示することができる(特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2には、撮影視野領域の外側に有機EL素子が設けられ、この有機EL素子を用いて、撮影視野領域の外側に所定の文字パターンを発光表示させる構成が開示されている。特許文献2においては、有機EL素子の発光層の接眼側にさらに遮光部材が積層され、その遮光部材によって発光層の発光の一部が遮光され、所定の文字パターンが発光表示される。
【特許文献1】特開2000−221578号公報
【特許文献2】特許第3539251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファインダー装置に使用される有機EL素子は、被写体からの光を透過するために、封止部材及び基板の両方を透明材料から形成させる必要がある。したがって、特許文献1では数字等を表示されるために設けられたセグメント表示部の周辺においても、被写体からの光が透過することとなる。しかし、セグメント表示部の周辺に被写体からの光が透過すると、セグメント表示部の発光表示と被写体からの光が重なり、セグメントで表示された数字が鮮明に観察されない場合がある。
【0005】
一方、特許文献2においても、有機発光層の周辺部は、遮光されているわけではなく、被写体からの光が透過し、この透過光によって、有機発光層から発せられる光のコントラストが特許文献1と同様に低下させられる。また、遮光部材を有機発光層の上にパターンニングして積層するのは、製造工程上複雑である。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、ファインダー装置に使用される有機EL素子において、簡単な構成で各種情報を高いコントラストで発光表示させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るファインダー装置は、透明材料から形成される第1の基板と、透明材料から形成され第1の基板に対向して設けられると共に、第1の基板との間に密閉空間を形成する第2の基板と、有機発光材料を含み、密閉空間に配置されると共に、発光表示により各種情報を表示するための有機EL層とを備える発光表示部が、被写体からの光が通過する光路に交差するように配置され、各種情報をファインダー窓から観察させるファインダー装置であって、第1の基板が接眼側に、第2の基板が対物側に配置され、第1の基板と共に有機EL層を挟むように、有機EL層より対物側に配置される第1の遮光マスクを備えることを特徴とする。
【0008】
有機EL層より接眼側に配置される第2の遮光マスクを備え、発光表示部は、被写体からの光を透過させ、被写体観察に使用される撮影視野領域を含み、第2の遮光マスクは、撮影視野領域の外側の領域を遮光するように配置されることが好ましい。
【0009】
第2の遮光マスクは第1の開口部を有し、発光表示部において、第1の開口部に対応する領域は、撮影視野領域として形成されることが好ましい。第2の遮光マスクは、第2の開口部を有していても良い。この場合、接眼側から見ると、第2の開口部の内部に配置されるように有機EL層が設けられる。また、第1の遮光マスクは、対物側から見ると、第2の開口部を覆うように形成されることが好ましい。さらには、第2の開口部内に配置される偏光板を有していても良い。
【0010】
また、第2の遮光マスクは、第1の基板の接眼側又は対物側の面に形成されることが好ましく、第1の遮光マスクは、第2の基板の対物側又は接眼側の面に形成されることが好ましい。また、第1の遮光マスクは、密閉空間に配置される吸着剤であっても良い。
【0011】
有機EL層は、例えば、所定の形状にパターニングされて積層されており、これにより遮光マスクを用いなくても、所定のマークやセグメント等を発光表示可能である。
【0012】
本発明に係る別のファインダー装置は、第1の基板の対物側の面に、開口部を有する遮光マスクを形成し、有機EL層は、対物側から見ると開口部に重なるように配置されることを特徴とする。
【0013】
発光表示部は有機EL層に電圧を印加するための第1及び第2の電極を備え、対物側から見ると開口部に重ねられるように、第1の電極、有機EL層、及び第2の電極が第1の基板側からこの順で積層されて配置され、第1の電極は透明電極であるとともに、第2の電極は非透明電極であって、有機EL層の発光表示は、開口部を介して接眼側に出射されることが好ましい。
【0014】
この場合、第2の電極はブラックカソードであることが好ましい。ブラックカソードは例えば、遮光性の陰極金属材料から形成される陰極金属材料層、光吸収性材料から形成される薄膜層、及び遮光性の陰極金属材料から形成される陰極金属材料薄膜層がこの順に積層されて構成される。この場合、第1の遮光マスクは、ブラックカソードを形成するために使用される光吸収性材料及び陰極金属材料それぞれを用いて形成された、光吸収性材料層、陰極金属材料薄膜層が積層されて構成されることが好ましい。
【0015】
本発明に係る別のファインダー装置は、有機EL層より対物側、及び接眼側それぞれに配置される第1及び第2の偏光板を備え、第1の偏光板は、第2の偏光板と共に有機EL層を挟み込むように配置されることを特徴とする。また、本発明に係る光学機器は、例えば一眼レフカメラ等のカメラであって、上記ファインダー装置を備えることを特徴とする。なお、本発明においては、第1の基板は、有機EL層が積層されるための透明基板、第2の基板は封止部材であっても良いが、勿論第1の基板が封止部材、第2の基板が透明基板であっても良い。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、有機EL層と重なるように配置される遮光マスクが有機EL層より対物側に設けられることにより、有機EL層の周辺部に透過光が入射されることが防止される。したがって、各種情報を有機EL層によって高いコントラストで発光表示させることができる。また、第1の基板の所定位置に遮光マスクを形成し、または、第1及び第2の偏光板を用いることによっても同様に、各種情報を高いコントラストで発光表示させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態が適用された一眼レフカメラのファインダー装置を示す。なお、以下の説明においては、一眼レフカメラに適用された場合を説明するが、本発明は、顕微鏡、コンパクトカメラ等のその他の光学機器にも適用することが可能である。
【0018】
ファインダー装置10は、対物レンズ11と、クイックリターンミラー12と、ピント板13と、ペンタプリズム14と、接眼レンズ15と、発光表示部16と、ファインダー窓17とを備える。
【0019】
被写体で反射された反射光は、対物レンズ11を介して、クイックリターンミラー12で反射され、ピント板13に導かれ、ピント板13で一旦結像される。その後上記反射光は、ペンタプリズム14で2回反射され、接眼レンズ15を介してファインダー窓17に入射され、ファインダー窓17からピント板13に結像された被写体像が視認される。クイックリターンミラー12はレリーズスイッチ(不図示)が押されると、光路上から退避させられ、対物レンズ11によって導かれた反射光は、CCDやフィルム等に導かれ、これらを露光する。
【0020】
発光表示部16は、ピント板13と、ペンタプリズム14の間で、被写体からの光が通過する光路に交差する横断領域上に配置される。すなわち、発光表示部16は被写体結像位置近傍に配設される。発光表示部16から発せられた光も、ペンタプリズム14、接眼レンズ15を介してファインダー窓17内に入射される。なお、発光表示部16は、クイックリターンミラー12とピント板13の間に配置することも可能である。
【0021】
発光表示部16をファインダー窓から観察したときの模式的な平面図を図2に示す。なお、本明細書において“対物側”、“接眼側”とは、それぞれ、光路に沿った“対物側”、“接眼側”であることを意味し、図1における発光表示部16の下面側が“対物側”、上面側が“接眼側”となる。また、接眼側から見ると、第1の遮光マスク51は視認できないが、図2においては第1の遮光マスク51の輪郭は2点鎖線で示す。
【0022】
第1の発光表示部16は、矩形のファインダー視野領域21と、ファインダー視野領域21の上下左右の外側を囲み、枠状に形成されたファインダー視野外領域19とを含む。ファインダー視野領域21は、ファインダー窓17から視認可能な領域であるが、ファインダー視野外領域19はファインダー窓17から視認することができない領域である。なお、ファインダー視野領域21は、図2においては点線で囲まれた領域である。
【0023】
発光表示部16の対物側には第1の遮光マスク51が設けられ、対物側から発光表示部16に入射される光の一部を遮光する。発光表示部16の接眼側には、第1および第2の開口部53、54を有する第2の遮光マスク52が設けられ、発光表示部16からファインダー窓17に入射される光の一部を遮光する。
【0024】
第2の遮光マスク52は、ファインダー視野外領域19の全てと、ファインダー視野領域21の第1及び第2の開口部53、54が設けられた部分以外の全てを覆うように形成される。第1の開口部53は、接眼側から見ると縦横比が例えば約4:3の略矩形を呈する。第2の開口部54は横方向の長さが第1の開口部53と略同一であり、かつ縦方向の長さが第1の開口部53より短く形成された横長の矩形を呈する。
【0025】
第1の開口部53によって開口された矩形状の部分は、被写体からの反射光を透過させ、被写体観察に使用される撮影視野領域22として使用される。また、ファインダー視野領域21において、撮影視野領域22を取り囲む四角枠状の領域は各種情報を表示するための情報表示領域23として形成される。情報表示領域23には被写体からの反射光が入射されず、この領域では被写体を観察することはできない。
【0026】
第2の開口部54は、情報表示領域23内であって、撮影視野領域22(すなわち、第1の開口部53)の下方に配置される。第2の開口部54の内部には、接眼側から見ると、有機EL素子から構成される複数の発光部26A〜26Eが配置されている。発光部26A〜26Eの発光表示は、第2の開口部54を介して発光表示部16から出射され、ファインダー窓17に入射される。
【0027】
第1の遮光マスク51は、第2の開口部54と同様に情報表示領域23内であって、撮影視野領域22の下方に配置される。第1の遮光マスク51は、第2の開口部54よりわずかに大きい横長の矩形形状を呈し、対物側(すなわち、図2における裏側)から見ると、第2の開口部54を完全に覆うように配置されている。
【0028】
発光部26A、26B、26Cは、それぞれ花、山、稲妻の形状にパターニングされ、そのパターニングされた形状に応じた光を発することができる。すなわち、発光部26A、26B、26Cは、花、山、及び稲妻のシンボルマークを発光表示させることができる。発光部26A、26Bは撮影モードを表示するために使用されると共に、発光部26Cはストロボ発光の有無を表示するために使用される。発光部26D、26Eは、それぞれ複数の発光要素から成るセグメント発光部であって、各発光要素は各セグメントの形状にパターニングされている。各セグメントは、適宜発光することにより、発光部26D、26Eは数字、文字を発光表示することができる。発光部26D、26Eは、例えばシャッタースピード、絞り値を表示するために使用される。
【0029】
撮影視野領域22(すなわち、接眼側から見ると第1の開口部53の内部)にも有機EL素子から構成される複数の発光部25A〜25K、27A〜27Fが設けられる。各発光部25A〜25K、27A〜27Fは、所定形状にパターニングされて形成され、そのパターニングされた形状に応じた光を発することができる。発光部26A〜26Eの発光表示は、第1の開口部53を介して発光表示部16から出射され、ファインダー窓17に入射される。
【0030】
発光部25A〜25Kは、略方形にパターニングして形成され、撮影視野領域22の中央領域Cにおいて、3×3設けられるとともに、中央領域Cを挟むように、中央領域Cの左右の外側に1つずつ設けられる。本実施形態の一眼レフカメラは、多点測距が可能であり、各発光部25A〜25Kは、各測距点に対応した位置に設けられ、合焦ポイントとして使用される。例えばオートフォーカスで撮影されるとき、各合焦ポイントの位置における測距が行われ、ピントが合った1つの合焦ポイントが発光表示させられ、これにより観察者は合焦位置を確認することができる。
【0031】
発光部27A、27Bはそれぞれ円弧状にパターニングされ、撮影視野領域22の中心点を左右から挟むマークとして形成される。発光部27C〜27Fは、それぞれ両端が内側に折り曲げられた上下に延びる棒状にパターニングされ、発光部27C、27Dは中央領域Cを左右から挟むマークとして形成される。また、発光部27E、27Fは、中央領域Cの外側に設けられた2点の合焦マーク25J、25Kを左右から挟むマークとして形成される。発光部27A〜27Fによってパターニングされたマークは、AFエリアを示すためのフォーカスエリアの指標として使用される。
【0032】
各発光部25A〜25K、26A〜26E、27A〜27Fそれぞれ(但し、発光部26D、26Eにおいては各発光要素)には、ファインダー視野外領域19から延ばされる陽極線31、及び陰極線32が接続され、これら陽極線31、及び陰極線32を介して、各発光部又は発光要素に電圧が印加される。なお、図2においては、発光部27C、27Dに接続される陽極線31、陰極線32のみを示したが、他の発光部にも同様に陽極線31、陰極線32が接続される。このような構成により、各発光部(又はセグメント)に入力される電流は、それぞれ独立に制御することが可能である。但し、各発光部(又はセグメント)に入力される電流が独立制御できるのであれば、1本の陽極線31又は1本の陰極線32が複数の発光部(またはセグメント)に接続されていても良い。なお、陽極線31、及び陰極線32は、後述するように透明材料で形成され、被写体観察の妨げとはならない。
【0033】
図3は、本実施形態に係る発光表示部16の断面図である。なお、図3では、代表的に発光部26C、27Cの構成を示す。図3に示すように、発光表示部16は、透明基板41(第1の基板)と、透明基板41に対向して設けられる封止部材42とを備える。透明基板41及び封止部材42はガラス、プラスチック等の透明材料から形成される。透明基板41は平板状に形成されると共に、封止部材42はキャップ構造を有し、平板状のベース部43(第2の基板)とその周縁から下方に向けて立設される側壁部44とから一体的に形成される。
【0034】
封止部材42は、側壁部44の先端部が、接着剤37を介して透明基板41に接着され、透明基板41と封止部材42との間に密閉空間39が形成される。ファインダー装置10においては、図3における下側(すなわち、透明基板41側)が接眼側、上側(すなわち、封止部材42側)が対物側に配置される。
【0035】
撮影視野領域22における透明基板41の上には、上述した発光部25A〜25K、及び発光部27A〜27F(図2参照)が形成される。撮影視野領域22に形成された各発光部25A〜25K、及び発光部27A〜27Fは、それぞれ透明基板41の上面41Uに積層された陽極34aと、陽極34aの上に積層された有機EL層33aと、有機EL層33aの上にさらに積層された陰極35aとを備える。
【0036】
情報表示領域23における透明基板41の上には、発光部26A〜26Eが形成される。各発光部26A〜26Eは、それぞれ透明基板41の上面41Uに積層された陽極34bと、陽極34bの上に積層された有機EL層33bと、各有機EL層33bの上にさらに積層された陰極35bとを備える。
【0037】
なお、陽極34a、34b、有機EL層33a、33b、及び陰極35a、35bは、各発光部25A〜25K、26A〜26E、及び27A〜27F毎(ただし、発光部26D,26Eにおいては発光要素毎)に設けられ、これにより、各発光部は、それぞれ独立に発光することが可能である。但し、各発光部がそれぞれ独立に発光可能な構成であれば、1つの陽極34a(又は34b)の上に、複数の有機EL層が積層されていても良いし、1つの陰極35a(又は35b)が2つ以上の有機EL層の上に跨るように積層されていても良い。各陽極34a、34bは、それぞれ陽極線31(図2参照)に接続されると共に、各陰極35a、35bはそれぞれ陰極線32(図2参照)に接続される。
【0038】
各発光部又は発光要素は、上述したように、所定のシンボルマーク、セグメント等を発光表示するために、所定の形状にパターニングされている。例えば、発光部26Cにおける陽極34b、有機EL層33b、及び陰極35bは、接眼側から見るとこれらが重ねられた部分が、稲妻の形状を呈するように積層されている。他の発光部、発光要素についても、同様に形成される。
【0039】
陽極34a、34b、陽極線31、及び陰極線32(図2参照)は、透明電極であって、例えばITO(Indium Tin Oxide)、ATO(antimony doped tindioxide)、ZnO(zinc oxide)等の透明導電性金属化合物から形成される。有機EL層33a、33bは、陽極側から順に例えば正孔輸送材料で構成される正孔輸送層、有機発光材料で構成される有機発光層、電子輸送材料で構成される電子輸送層等が積層されて構成され、適宜赤、緑、青、又は白色の光を発するように構成される。発光部25A〜25K、27A〜27Fそれぞれの陰極35aは透明電極であって、例えばITO、ATO、ZnO等の透明導電性金属化合物のみから形成されても良いが、好ましくは以下に示すように2層構造で形成される。
【0040】
すなわち、陰極35aは、有機EL層の上に積層される第1の陰極層と、第1の陰極層の上に積層される第2の陰極層とによって構成されることが好ましい。第1の陰極層は、例えばアルミニウム、インジウム、マグネシウム、カルシウム、チタニウム、イットリウム、リチウム、及びこれらの合金等の遮光性の陰極金属材料から形成されるとともに、第2の陰極層は、ITO、ATO、ZnO等の透明導電性金属化合物から形成される。第1の陰極層は遮光性物質によって構成されるが、その層厚が例えば100Å以下に設定されることにより、実質的に光透過性を有し、これにより陰極35aは透明電極に構成される。なお、この場合、第1の陰極層と各有機EL層の間には、電子注入層が積層されていたほうが良い。電子注入層は例えばLiFによって形成され、その厚さは例えば7Åである。なお、第2の陰極層の厚さは例えば2000Åである。
【0041】
陰極35aがITO等の透明導電性金属化合物のみから形成されると仕事関数が高くなり電子の注入性が低下する。しかし、陰極35aが第1及び第2の陰極層から構成され、かつ第1の陰極層に上述したような低仕事関数の陰極金属材料が用いられる場合、電子の注入性の低下を最小限に抑制することができる。
【0042】
発光部25A〜25K、27A〜27Fは、透明材料である陽極34a、有機EL層33a、陰極35aから構成され、被写体からの光を透過するので、非発光時、被写体観察の妨げと成らない。なお、発光部25A〜25K、27A〜27Fの陰極35aは、後述する発光部26A〜26Eの陰極35bと同様に非透明電極で構成されていても良い。この場合、発光部25A〜25K、27A〜27Fは、被写体からの光を遮光するため、その遮光により非発光時でも合焦マーク等が遮光表示されることとなる。
【0043】
発光部26A〜26Eは、情報表示領域23に設けられ、被写体からの光を透過させる必要がないので、発光部26A〜26Eを構成する陰極35bは非透明電極で構成され、上述したアルミニウム等の遮光性の陰極金属材料から形成される。これにより、陰極35bは仕事関数が低くなり電子の注入性に優れるため、発光部26A〜26Eの発光効率は、撮影視野領域22に設けられた発光部25A〜25K、27A〜27Fの発光効率より優れる。
【0044】
密閉空間39内には、密閉空間39内の水分を吸収し、除去するための吸着剤40が設けられる。吸着剤40は撮影視野領域22を避けるように設けられ、例えば図3に示すように情報表示領域23に設けられる。吸着剤40は例えばベース部43の下面43Dに接着して設けられる。吸着剤40としては、例えば酸化バリウム、酸化カルシウム、モレキュラーシーブス、シリカゲル等の非透明材料から成る吸着剤や、アルミニウム錯体を主成分とする透明材料から成る吸着剤を使用することができる。
【0045】
第2の遮光マスク52は、透明基板41の下面41Dに形成され、これにより発光部25A〜25K、26A〜26E、及び27A〜27Fより接眼側に配置される。第2の開口部54の内部であって、透明基板41の下面41Dには、位相差板付き偏光板55が配置される。
【0046】
第1の遮光マスク51は、ベース部43の上面43U(すなわち、対物側の面)に形成されると共に、上述したように、対物側から見ると、第2の開口部54を完全に覆うように形成される。これにより、第1の遮光マスク51は、透明基板41と共に発光表示部26A〜26E(すなわち、有機EL層33b)を挟むように、発光部26A〜26Eより対物側に配置される。
【0047】
第1及び第2の遮光マスク51、52は例えば黒色顔料、黒色染料等を配合した合成樹脂、塗料等を、フォトレジスト、スクリーン印刷等によって、それぞれベース部43の上面43U及び透明基板41の下面41Dに被膜、塗布することにより形成される。また、例えば、ベース部43の上面43U及び透明基板41の下面41Dをスリ面にし、そのスリ面にカーボンブラック等の顔料、染料等を分散した水溶液を塗布後、乾燥することにより形成される。また、例えばクロム、ニッケル、銅等の金属又はこれらの金属酸化物の薄膜により形成される。この場合、第1の遮光マスク51は、例えばスパッタリング、真空蒸着等により成膜される。但し、第1及び第2の遮光マスク51、52は、黒色に限らず他の色の遮光マスクに形成することも可能である。
【0048】
次に、本実施形態の作用について説明する。本実施形態においては、発光表示部16に対物側から被写体からの反射光がベース部43を介して入射されるが、第1の遮光マスク51が設けられた領域では、被写体からの光が入射されない。また、発光表示部16に入射された被写体からの光は、一部が接眼側に設けられた第2の遮光マスク52によって遮光されると共に、一部が第1の開口部53を介して透明基板41の下面41Dから出射され、被写体像として観察される。なお、上述したように第1の開口部53からは、発光部25A〜25K、27A〜27Fからの発光も出射し、被写体像と共に、合焦マークやフォーカスエリアの指標もファインダー窓17において観察される。
【0049】
第2の遮光マスク52は、第2の開口部54も有するが、対物側から見ると(図2参照)、第2の開口部54は第1の遮光マスク51に完全に覆われているので、第2の開口部54が設けられた領域には、被写体からの光が入射されない。したがって、第2の開口部54からは、被写体からの光が出射されることはない。一方、発光部26A〜26Eからの光は、第2の開口部54から出射され、シンボルマークや数字等がファインダー窓17において観察される。
【0050】
このように、第2の開口部54からは、被写体からの光が出射されず、発光部26A〜26Eからの光のみが出射されることとなる。したがって、第2の開口部54から出射される発光部26A〜26Eの光は、被写体からの光と重なることがないので、発光部26A〜26Fの表示コントラストは向上し、視認性の高い発光表示を実現することができる。
【0051】
また、本実施形態では、第2の開口部54の内部には被写体からの光を遮光するためのマスクを形成する必要は無いので、第2の開口部54の内部には上述したように偏光板55を設けることができる。
【0052】
第2の開口部54の内部に偏光板55が設けられることにより、第2の開口部54から発光表示部16内に入射される外部光は円偏光される。したがって、第2の開口部54から入射される外部光の一部は、発光部26A〜26Fを構成する陰極35bで反射されるが、その反射光は、再び第2の開口部54を介して発光表示部16の外部に出射されない。一方、有機EL層33bから発せられた光は、陰極35bで反射した光を含め、第2の開口部54を介して発光表示部16の外部に出射される。すなわち本実施形態では、偏光板55が設けられたことによっても、発光部26A〜26Fの表示コントラストを向上させることができる。
【0053】
本実施形態では、第2の遮光マスク52は透明基板41の接眼側の面(下面41D)に形成されたが、後述する第3の実施形態のような構成を用いて、透明基板41の対物側の面(上面41U)に形成されても良い。
【0054】
図4は第1の実施形態の第1の変形例を示す。第1の実施形態では、第1の遮光マスク51はベース部43の上面43Uに形成されていたが、本変形例では、第1の遮光マスク51は、密閉空間39内部であって、ベース部43の下面43D(接眼側の面)に形成さる。なお、密閉空間39内には、上述したように吸着剤が配置されるので、吸着剤が第1の遮光マスク51として使用されても良い。この場合、吸着剤には非透過性のものが使用され、好ましくは黒色顔料、黒色塗料等により適宜着色されていても良い。なお、本変形例では、その他の構成は、第1の実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0055】
図5は第1の実施形態の第2の変形例を示す。第1の実施形態では、矩形状に形成された第1及び第2の開口部53、54の内周面は、4辺ともが遮光マスクによって形成され閉塞されていたが、例えば、図5に示すように、左辺が開口されていても良い。このような場合、第1及び第2の開口部53,54は、ファインダー視野領域21のみならず、ファインダー視野外領域19に形成されることとなると共に、情報表示領域23はコの字状に形成される。
【0056】
図6は、第2の実施形態に係る発光表示部を示す。第1の実施形態では、第1の遮光マスク51は有機EL層より対物側に設けられたが、本実施形態では、第1の遮光マスク51は有機EL層より接眼側に設けられる。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0057】
第2の実施形態においては、第1の遮光マスク51は透明基板41の上面41Uの上に形成される。第1の遮光マスク51は、花、山、稲妻、及びセグメント形状にパターニングされた複数の第3の開口部56を有する。但し、図6においては、発光部26Cに対応して形成される第3の開口部56のみを示す。
【0058】
本実施形態における第1の遮光マスク51は、第1の実施形態と同様の材料に形成されても良いが、好ましくは、例えばクロム、ニッケル、銅等の金属又はこれらの金属酸化物の薄膜により形成される。この場合、第1の遮光マスク51は、例えばスパッタリング、真空蒸着等により成膜後、例えばフォトリソグラフィーによりパターニングされて、第3の開口部56が形成される。
【0059】
第1の遮光マスク51の上面を平坦化すると共に、第1の遮光マスク51を保護するために、第1の遮光マスク51の上面及び第3の開口部56の内部には平坦化膜57が積層されている。平坦化膜57は、例えば透明樹脂材料から形成され、その上面は平坦面に形成される。平坦化膜57は、例えば第1の遮光マスク51の上面に、合成樹脂が塗布された後、乾燥又は硬化されて形成される。
【0060】
平坦化膜57の上面には、さらに無機酸化物層58が積層される。無機酸化物層58は、透明で電気絶縁性を有する酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(AlO2)、又は酸化チタン(TiO2)等の無機酸化物が被膜されて形成される。無機酸化物層58が設けられることにより、平坦化膜57及び第1の遮光マスク51から発生する水分や酸素を遮断することができる。
【0061】
無機酸化物層58の上面には、第1の実施形態と同様に、陽極34b、有機EL層33b、陰極35bがこの順で積層され、各発光部26A〜26Eが形成される。各発光部26A〜26Eは、第1の実施形態と同様に、花、山、稲妻、及びセグメント形状にパターニングされている。このようにパターニングされた各発光部26A〜26E(陽極34b、有機EL層33b、陰極35b)は、それぞれ対物側から見ると、パターニングして形成された各第3の開口部56に重なり、かつ覆うように形成されている。
【0062】
但し、本実施形態においてシンボルマークを発光表示するために使用される各発光部26A〜26Cは、所定の形状にパターニングされていなくても良い。有機EL層33bより接眼側に設けられた第1の遮光マスク51は、所定形状にパターニングされた第3の開口部56を有し、各発光部26A〜26Eから発した光は、シンボルマークに応じてパターニングされた第3の開口部56を介して出射されるからである。
【0063】
透明基板41の下面41Dには、第1の実施形態と同様に第1及び第2の開口部53、54を有する第2の遮光マスク52が形成される。第2の開口部54は、対物側から見ると、第1の遮光マスク51及び陰極35bによって覆い隠されるように配置される。すなわち、第2の開口部54は、第3の開口部56が設けられた部分以外においては、第1の遮光マスク51によって覆われると共に、第3の開口部56が設けられた部分においては、陰極35bによって覆われる。
【0064】
次に、本実施形態における作用を説明する。撮影視野領域22においては、第1の実施形態と同様に、対物側から被写体からの反射光が発光表示部16を透過して、第1の開口部53を介してファインダー窓17に入射され、被写体像として観察される。
【0065】
また、情報表示領域23において、第2の開口部54は、上述したように、対物側から見ると、第1の遮光マスク51及び陰極(非透明電極)35bによって覆い隠されている。したがって、情報表示領域23において、発光表示部16に入射された光は、陰極35b、第1及び第2の遮光マスク51、52のいずれかによって遮光され、発光表示部16の接眼側から出射されることはない。
【0066】
したがって、第2の開口部54からは、被写体からの反射光が出射されることはなく、発光表示部26A〜26Eから発せられた光のみが出射することとなる。これにより、本実施形態でも、第2の開口部54から出射される発光部26A〜26Eの光は、被写体からの光と重なることがないので、発光部26A〜26Eの表示コントラストは向上し、視認性の高い発光表示を実現することができる。また、第1の実施形態と同様に、偏光板55が設けられているので、この偏光板55によっても発光部26A〜26Eの表示コントラストを向上させることができる。
【0067】
なお、第1および第2の実施形態では、第1の遮光マスク51は、透明基板41の下面41D上であって、第2の開口部54内に設けられることも考えられる。しかし、第1の遮光マスク51を第2の開口部54内に設けると、偏光板55が設けられなくなるので、第1の遮光マスク51は、透明基板41の上面41U又はベース部43の上面43U上に形成したほうが良い。また、第2の実施形態では、平坦化膜57、無機酸化物層58は適宜いずれか一方または両方が省略されていても良い。
【0068】
図7は、第2の実施形態の第1の変形例を示す。第1の変形例における第1の遮光マスク51は、第2の実施形態と同様に、透明基板41の上面41Uに形成されるが、その構成が第2の実施形態と異なる。また、陰極35bはブラックカソードとして形成されている点も相違する。以下これら相違点を中心に説明する。
【0069】
本変形例において、情報表示領域23における透明基板41の上面41Uには、第2の実施形態と同様に、発光部26A〜26Eが設けられる。各発光部26A〜26Eはそれぞれ、第1の実施形態と同様に、透明基板41の上に、陽極34b、有機EL層33b、陰極35bがこの順に積層されて構成される。
【0070】
陰極35bは、上述したようにブラックカソードで構成され、例えば、有機EL層33b側(すなわち、図7における下側)から順に陰極金属材料層、光吸収性薄膜層、陰極金属材料薄膜層が積層されてから形成される。陰極金属材料(薄膜)層は例えば上述したアルミニウム等の遮光性の陰極金属材料から形成される。また、光吸収性薄膜層は光を吸収し外光の反射を低減させるものであればよく、例えばCuPc(銅フタロシアニン)等の絶縁材料によって形成される。また、透明基板41の上には、各発光部26A〜26Eを取り囲むように、第1の遮光マスク51が積層される。すなわち、第1の遮光マスク51は、各発光部26A〜26Eが積層された部分を内部に配置するように開口され、その開口された部分が第3の開口部56として形成される。
【0071】
第1の遮光マスク51は、例えば透明基板41側から順に上記CuPc等で形成された光吸収性材料層、遮光性のある陰極金属材料から形成される陰極金属材料層が積層されて構成され、黒色遮光マスクに形成される。なお、透明基板41の上には、上述したように陽極線31及び陰極線32が配線され、第1の遮光マスク51の一部はこれらの上に積層されることとなる。しかし、第1の遮光マスク51の一部を構成する陰極金属材料と陽極線31及び陰極線32は、光吸収性材料層がCuPcのような絶縁材料であれば、それによって絶縁されることとなる。したがって、第1の遮光マスク51を積層したことによって、陽極線31及び陰極線32がショートすることはない。なお、本実施形態においては、上記絶縁を確実にするために、第1の遮光マスク51において、CuPcよりさらに透明基板41側には上述した無機酸化物層が積層されていても良い。
【0072】
対物側から発光表示部16を見ると、第2の実施形態と同様に、第2の開口部54は、陰極35b(ブラックカソード)及び第1の遮光マスク51によって、覆われていることとなる。したがって、本実施形態でも、情報表示領域23において、発光表示部16に入射された光は、第1及び第2の遮光マスク51、52又は陰極35bのいずれかに遮光されることとなり、発光表示部16の接眼側から出射されることはない。
【0073】
すなわち、第2の開口部54からは、被写体からの光が出射されることはなく、発光部26A〜26Eから発せられた光のみが出射することとなる。これにより、本変形例でも、第2の開口部54から出射される発光部26A〜26Eの光は、対物側から入射した光と重なることがないので、発光部26A〜26Fの表示コントラストは向上し、視認性の高い発光表示を実現することができる。また、ブラックカソードを用いることにより、第2の開口部54を介して発光表示部16内に入射された外部光が陰極35bで反射されることが防止される。したがって、本変形例では、図7に示すように、偏光板55が設けられなくても良い。もちろんコントラストを高めるために偏光板を設けることも可能である。さらに、第1の遮光マスク51は、ブラックカソードを形成するために使用される光吸収性材料及び陰極金属材料それぞれを用いて形成されるので、第1の遮光マスク51は簡単に形成することができる。但し、第1の遮光マスク51は、第2の実施形態と同様の構成を有していても良い。
【0074】
図8は、第3の実施形態に係る発光表示部を示す。第1及び第2の実施形態においては、遮光マスクは第1及び第2の遮光マスクとして異なる面上に形成されるが、本実施形態では、遮光マスクは同一の面上に形成される。以下、本実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。
【0075】
図8に示すように、本実施形態では、透明基板41の上面41Uの上に第1及び第3の開口部63、66を有する遮光マスク60が形成される。遮光マスク60は、ファインダー視野外領域19の全てと、ファインダー視野領域21の第1及び第3の開口部63、66の内部以外の全てを覆うように形成される。第1の開口部63は、第1の実施形態の第1の開口部53と同様に配置され、第1の開口部63によって開口された矩形状の部分は、被写体観察に使用される撮影視野領域22として使用される。また、第3の開口部66は、第2の実施形態における第3の開口部56と同様に、情報表示領域23に複数設けられ、それぞれ花、山、稲妻、及びセグメント形状にパターニングされる。
【0076】
遮光マスク60の上には、第2の実施形態と同様に、平坦化膜57が積層される。平坦化膜57は、第3の開口部66の内部にも積層され、情報表示領域23において、遮光マスク60の上面を平坦化するが、第1の開口部63の内部には積層されない。平坦化膜57の上には、第2の実施形態と同様に、無機酸化物層58が積層される。
【0077】
情報表示領域23において、無機酸化物層58の上には、陽極34b、有機EL層33b、陰極35bが積層され、発光部26A〜26Eが形成される。ここで、各発光部26A〜26Eは、第2の実施形態と同様に、第3の開口部66に対応するように所定の形状にパターニングされる。すなわち、各発光部26A〜26Cは、それぞれ花、山、稲妻の形状にパターニングされるとともに、発光部26D,26Eは複数の発光要素から構成され、各発光要素が各セグメントの形状にパターニングされる。このような構成により、第3の開口部66は、対物側から見ると、発光部26A〜26E(非透明電極である陰極35b)に覆われていることになる。
【0078】
したがって、本実施形態でも、情報表示領域23において、対物側から入射された被写体からの光は、陰極35b又は遮光マスク60のいずれかによって遮光され、透明基板41の下面41Dから出射されることはない。これにより、本実施形態においても、第3の開口部66から出射される発光部26A〜26Eの光は、対物側から入射された被写体からの光と重なることがないので、発光部26A〜26Fの表示コントラストは向上し、視認性の高い発光表示を実現することができる。
【0079】
なお、撮影視野領域22においては、第1の実施形態と同様に発光部25A〜25K、及び27A〜27Fが形成され、撮影視野領域22では、被写体観察に加えて、これら発光部の発光表示も観察される。また、第2の実施形態のように、陰極35bはブラックカソードとして形成されても良い。
【0080】
図9は、第4の実施形態に係る発光表示部を示す。第1の実施形態においては、遮光マスクが第1および第2の遮光マスクとして2面上に形成されるが、本実施形態では、第3の実施形態と同様に、遮光マスクは1面上に形成される。以下、本実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。
【0081】
図9に示すように、本実施形態では、ベース部43の上面43Uの上に、第1の開口部73を有する遮光マスク70が形成される。遮光マスク70は、ファインダー視野外領域19の全てと、ファインダー視野領域21の第1の開口部73の内部以外の全てを覆うように形成される。第1の開口部73は、第1の実施形態の第1の開口部53と同様に設けられ、第1の開口部73によって開口された矩形状の部分は、被写体観察に使用される撮影視野領域22として使用される。
【0082】
以上の構成により、本実施形態では、情報表示領域23の全てが遮光マスク70によって覆われることになる。したがって、本実施形態でも、情報表示領域23では、対物側から入射される被写体の光の全てが、遮光マスク70によって遮光され、透明基板41の下面41Dから出射されることはない。すなわち、本実施形態においても、情報表示領域23において発せられる発光部26A〜26Eの光は、被写体からの光と重なることがないので、発光部26A〜26Fの表示コントラストは向上し、視認性の高い発光表示を実現することができる。
【0083】
図10は、第4の実施形態の第1の変形例を示す。第4の実施形態においては、遮光マスク70は、ベース部43の上面43Uに形成されたが、本実施形態では、ベース部43の下面43Dに形成される。
【0084】
本変形例でも、遮光マスク70は、ファインダー視野領域21の第1の開口部73が設けられた部分以外の全ての部分と、ファインダー視野外領域19を覆うように形成される。但し、側壁部44が設けられた部分には、遮光マスク70が形成されないので、ファインダー視野外領域19の一部には遮光マスク70が形成されない。以上の本変形例でも、情報表示領域23の全てが遮光マスク70によって覆われることとなるので、情報表示領域23に形成された発光部26A〜26Eから発する光は、被写体からの光と重なることがないので、発光部26A〜26Eの表示コントラストは向上し、視認性の高い発光表示を実現することができる。
【0085】
なお、第4の実施形態において、遮光マスク70は第1の実施形態の遮光マスク51、52と同様の構成を有する。また、第1及び第4の実施形態の変形例において、第1の遮光マスク51または遮光マスク70が密閉空間39内に配置される場合、遮光マスクの下面側には、例えば水分やガスの遮蔽のために、無機酸化物層が積層されていても良い。
【0086】
図11は、第5の実施形態に係る発光表示部16を示す。本実施形態においては、第1の遮光マスク51の代わりに第1の偏光板81が設けられる点、陰極35bが透明導電性金属化合物から形成され、透明電極で構成される点を除いては、第1の実施形態と同様の構成を有する。
【0087】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、第1及び第2の開口部53、54を有する第2の遮光マスク52が形成される。また、第2の開口部54の内部であって、透明基板41の下面41Dには、第2の偏光板82が配置されている。第1の偏光板81は、第1の実施形態の第1の遮光マスク51と同様に、ベース部43の上面43Uに形成されると共に、対物側から見ると、第2の開口部54を完全に覆うように形成される。なお、第1及び第2の偏光板81は、偏光方向が互いに垂直な方向に組合されている。
【0088】
発光部26A〜26Eは、接眼側から見ると、第1の実施形態と同様に(図2参照)、第2の開口部54の内部に配置されている。すなわち、本実施形態では、第1の偏光板81は、第2の偏光板82と共に発光部26A〜26E(陽極34b、有機EL層33b、陰極35b)を挟み込むように配置される。
【0089】
本実施形態では、第2の開口部54内部には、第2の偏光板82が配置され、また、対物側から見ると、その第2の偏光板82には、第1の偏光板81が重ねられるように配置されている。ここで、第1及び第2の偏光板81、82は、偏光方向が互いに垂直な方向に組合されているので、対物側から入射された被写体からの光は、第2の開口部54を介して接眼側に出射されない。一方、発光部26A〜26Eの発光表示は、第2の開口部54(第2の偏光板82)を介して接眼側に出射される。したがって、本実施形態においても、他の実施形態と同様に、発光部26A〜26Fの表示コントラストは向上し、視認性の高い発光表示を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】カメラのファインダー光学系の平面図である。
【図2】発光表示部の平面図である。
【図3】第1の実施形態における発光表示部の断面図である。
【図4】第1の実施形態の第1の変形例における発光表示部の断面図である。
【図5】第1の実施形態の第2の変形例における発光表示部の平面図である。
【図6】第2の実施形態における発光表示部の断面図である。
【図7】第2の実施形態の第1の変形例における発光表示部の断面図である。
【図8】第3の実施形態における発光表示部の断面図である。
【図9】第4の実施形態における発光表示部の断面図である。
【図10】第4の実施形態の第1の変形例における発光表示部の断面図である。
【図11】第5の実施形態における発光表示部の断面図である。
【符号の説明】
【0091】
10 ファインダー装置
16 発光表示部
17 ファインダー窓
19 ファインダー視野外領域
21 ファインダー視野領域
22 撮影視野領域
23 情報表示領域
33a、33b 有機EL層
34a、34b 陽極(第1の電極)
35a、35b 陽極(第2の電極)
51 第1の遮光マスク
52 第2の遮光マスク
53、63、73 第1の開口部
54 第2の開口部
55 偏光板(位相差板付き偏光板)
56、66 第3の開口部
60、70 遮光マスク
81 第1の偏光板
82 第2の偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明材料から形成される第1の基板と、透明材料から形成され前記第1の基板に対向して設けられると共に、前記第1の基板との間に密閉空間を形成する第2の基板と、有機発光材料を含み、前記密閉空間に配置されると共に、発光表示により各種情報を表示するための有機EL層とを備える発光表示部が、被写体からの光が通過する光路に交差するように配置され、前記各種情報をファインダー窓から観察させるファインダー装置であって、
前記第1の基板が接眼側に、前記第2の基板が対物側に配置され、
前記第1の基板と共に前記有機EL層を挟むように、前記有機EL層より対物側に配置される第1の遮光マスクを備えることを特徴とするファインダー装置。
【請求項2】
前記有機EL層より接眼側に配置される第2の遮光マスクを備え、
前記発光表示部は、被写体からの光を透過させ、被写体観察に使用される撮影視野領域を含み、
前記第2の遮光マスクは、前記撮影視野領域の外側の領域を遮光するように配置されることを特徴とする請求項1に記載のファインダー装置。
【請求項3】
前記第2の遮光マスクは第1の開口部を有し、
前記発光表示部において、前記第1の開口部に対応する領域は、前記撮影視野領域として形成されることを特徴とする請求項2に記載のファインダー装置。
【請求項4】
前記第2の遮光マスクは、第2の開口部を有し、
接眼側から見ると、前記第2の開口部の内部に配置されるように前記有機EL層を設けることを特徴とする請求項2に記載のファインダー装置。
【請求項5】
前記第1の遮光マスクは、対物側から見ると、前記第2の開口部を覆うように形成されることを特徴とする請求項4に記載のファインダー装置。
【請求項6】
前記第2の開口部内に配置される偏光板を有することを特徴とする請求項2に記載のファインダー装置。
【請求項7】
前記第2の遮光マスクは、前記第1の基板の接眼側又は対物側の面に形成されることを特徴とする請求項2に記載のファインダー装置。
【請求項8】
前記第1の遮光マスクは、前記第2の基板の対物側又は接眼側の面に形成されることを特徴とする請求項1に記載のファインダー装置。
【請求項9】
前記第1の遮光マスクは、前記密閉空間に配置される吸着剤であることを特徴とする請求項1に記載のファインダー装置。
【請求項10】
前記有機EL層は、所定の形状にパターニングされて積層されることを特徴とする請求項1に記載のファインダー装置。
【請求項11】
透明材料から形成される第1の基板と、透明材料から形成され前記第1の基板に対向して設けられると共に、前記第1の基板との間に密閉空間を形成する第2の基板と、有機発光材料を含み、前記密閉空間に配置されると共に、その発光表示により各種情報を表示する有機EL層とを備える発光表示部が、被写体からの光が通過する光路に交差するように配置され、前記各種情報をファインダー窓から観察させるファインダー装置であって、
前記第1の基板が接眼側に、前記第2の基板が対物側に配置され、
前記第1の基板の対物側の面に、開口部を有する遮光マスクを形成し、
前記有機EL層は、前記対物側から見ると前記開口部に重なるように配置されることを特徴とするファインダー装置。
【請求項12】
前記発光表示部は前記有機EL層に電圧を印加するための第1及び第2の電極を備え、
対物側から見ると前記開口部に重ねられるように、前記第1の電極、前記有機EL層、及び前記第2の電極が第1の基板側からこの順で積層されて配置され、
前記第1の電極は透明電極であるとともに、前記第2の電極は非透明電極であって、前記有機EL層の発光表示は、前記開口部を介して接眼側に出射されることを特徴とする請求項11に記載のファインダー装置。
【請求項13】
前記第2の電極はブラックカソードであることを特徴とする請求項12に記載のファインダー装置。
【請求項14】
前記ブラックカソードは、遮光性の陰極金属材料から形成される陰極金属材料層、光吸収性材料から形成される薄膜層、陰極金属材料から形成される陰極金属材料薄膜層がこの順に積層されて構成されることを特徴とする請求項13に記載のファインダー装置。
【請求項15】
前記第1の遮光マスクは、前記ブラックカソードを形成するために使用される前記光吸収性材料及び陰極金属材料それぞれを用いて形成された、光吸収性材料層、陰極金属材料薄膜層が積層されて構成されることを特徴とする請求項14に記載のファインダー装置。
【請求項16】
透明材料から形成される第1の基板と、透明材料から形成され前記第1の基板に対向して設けられると共に、前記第1の基板との間に密閉空間を形成する第2の基板と、有機発光材料を含み、前記密閉空間に配置されると共に、発光表示により各種情報を表示するための有機EL層とを備える発光表示部が、被写体からの光が通過する光路に交差するように配置され、前記各種情報をファインダー窓から観察させるファインダー装置であって、
前記第1の基板が接眼側に、前記第2の基板が対物側に配置され、
前記有機EL層より対物側、及び接眼側それぞれに配置される第1及び第2の偏光板を備え、前記第1の偏光板は、前記第2の偏光板と共に前記有機EL層を挟み込むように配置されることを特徴とするファインダー装置。
【請求項17】
請求項1乃至16に記載されたファインダー装置を備えた光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−129042(P2008−129042A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310061(P2006−310061)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】