説明

ファインパターン用電解銅箔

【課題】 本発明は、ファインパターン化に対応し得る電解銅箔及びそれらを用いた銅張積層板ならびにプリント配線板を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、ファインパターン用電解銅箔であって、カーボン量が18ppm 以下の未処理箔の析出面を平滑化処理して表面粗度Rzが5μm 以下の平滑面を形成し、次いで該平滑面または未処理箔の光沢面の少なくとも一方の面に粗化処理を行うことにより、粗化処理面の表面粗度をRzで6μm 以下としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はファインパターン化が可能な電解銅箔、この電解銅箔を使用した銅張積層板ならびにプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の小型化、軽量化、高密度化に伴い、プリント回路の回路間隔と回路幅をより狭くすること、すなわちファインパターン化の要求が強くなりつつある。特に、回路間隔、回路幅ともに100μm 以下にすることが望まれており、これに答えるために、プリント回路形成のためのエッチング技術の向上、レジストの性能向上等がなされているが、それとともに、ファインパターン化が可能な電解銅箔の開発が急がれている。
【0003】従来の電解銅箔は、電解製箔工程で得られた銅箔の析出面側に更に粗化処理や防錆処理等を施した上で、析出面側と絶縁基板を熱融着する方法が主流であるが、この従来の電解銅箔ではファインパターンが得られなかった。
【0004】従来の電解銅箔でファインパターン化ができないのは次の理由によるものと考えられる。
■従来の電解銅箔では電解銅箔自体のエッチング特性、すなわちエッチング速度およびエッチングの均一性が良好でなく、このためシャープなエッチング面が得られない。
■エッチングによる回路形成の際に絶縁基板との接着面に銅の一部が残留し、これが溶解しにくい。
【0005】従来の電解銅箔では、銅箔の析出面を粗化して表面粗度Rzが7〜15μm になるようにし、この上に防錆処理等を施した銅箔を絶縁基板との接着面としているが、このように接着面が比較的大きな表面粗度の銅箔を用いた銅張基板では、銅箔の粗化面にあった銅粒子や樹脂状に析出した銅箔の一部が絶縁基板に深くくい込んでいる。このため、大きな接着力が得られる反面、プリント回路を形成するためのエッチングにおいて、完全にこの銅が溶解するのに時間がかかる。この結果、銅箔と絶縁基板とのボトムラインの直線性が乏しく、回路間隔を狭くすると隣接する回路どうしの絶縁が悪くなるような欠陥が生じやすくなる。
【0006】ファインパターン化の尺度は、一般的に図1に示すエッチングファクター(=2T/(Wb−Wt))によって示される。この値が大きいほど回路断面はシャープな形状となるが、これは使用する電解銅箔の厚さ、所望の回路幅等によって要求値が異なる。例えば、35μm 厚箔で、回路幅100μm の現状のエッチングファクターは2〜2.5であるが、3〜4.5、あるいはそれ以上にすることが要求されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ファインパターン化に対応し得る電解銅箔及びそれらを用いた銅張積層板ならびにプリント配線板を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、電解銅箔であって、カーボン量が18ppm 以下の未処理箔の析出面を平滑化処理して表面粗度Rzが5μm 以下の平滑面を形成し、次いで該平滑面または未処理箔の光沢面の少なくとも一方の面に粗化処理を行うことにより、粗化処理面の表面粗度をRzで6μm 以下にしたことを特徴とする。
【0009】前記の平滑化処理に先立ち、未処理箔を100〜300℃の温度で加熱処理してもよい。
【0010】前記の平滑化処理は、光沢メッキ、電解研磨、圧延の中の少なくとも一つの方法で行うことが好ましい。
【0011】本発明の電解銅箔は、銅帳積層板またはプリント配線板に用いられるが、粗化処理を施した面を絶縁基板と接着するのがよい。
【0012】本発明によれば、電解銅箔自体のエッチング特性が向上すると共に電解銅箔と絶縁基板との接着性も高まり、両者の相乗作用によってファインパターン化に優れた電解銅箔が得られ、ひいてはファインパターンを有する電解銅箔を用いた銅張基板およびプリント配線板を得ることができる。
【0013】以下に、作用の面から本発明を説明する。まず、電解銅箔自体のエッチング特性の向上について説明する。
【0014】図2に示すように、電解銅箔は、通常、電解製箔装置により製箔された銅箔に、表面処理装置により密着性向上のための粗化処理、防錆処理を施して製造される。電解製箔装置と呼ばれる回転するドラム状のカソード(表面はSUSまたはチタン製)2と該カソードに対して同心円状に配設されたアノード(鉛またはDSA製)1からなる装置に、電解液3を流通させつつ両極間に電流を流して、該カソード表面に所定の厚さに銅を析出させ、その後該カソード表面から銅を剥ぎとる。未処理銅箔とは、この剥ぎとられた銅箔4のことをいう。
【0015】この後、銅張積層板に必要とされる性能を付与するため、図3に示すような表面処理装置に、未処理銅箔4を通し、電気化学的あるいは化学的な表面処理を連続的に行う。この表面処理した銅箔を表面処理銅箔8とよび、銅張積層板に使用される。
【0016】電解銅箔の機械的性能は未処理銅箔4の性能によって決定されるが、銅箔のエッチング特性、すなわちエッチング速度と均一性も、この未処理銅箔の機械的性能によって多くが決定される。
【0017】電解製箔装置の電解液3の主成分は硫酸銅と硫酸であるが、従来これにゼラチンまたはニカワのような有機物を微量添加してきた。電解液にこのような有機添加剤を加えると、有機添加剤の一部は銅箔内、特に粒界に入り込んで、電解銅箔の表面を平滑化するなど表面粗度を調節する働きがある。また、これにより引張強度が高まり、電解時に銅箔表面にコブやビットなどの凹凸形状発生が抑制される。
【0018】このようにして得られた電解銅箔を用いて銅張基板を作製する訳であるが、該基板上に回路を形成するには銅張基板の電解銅箔部分のエッチングが行われる。
【0019】電解銅箔では、前述のごとく、電析時に銅の粒界に有機添加剤の一部が入り込むため、エッチングにおいては、この添加剤がそのエッチング速度を遅くしたりエッチング速度の均一性を阻害し、エッチング特性を低下させる原因となっていること、それを抑えるには、電解液中の有機添加剤濃度を低くして、未処理銅箔中のカーボン量をある値以下となるようにすれば、製作した電解銅箔のエッチング特性は極めて良好になることを本発明者らが見いだし本発明を完成させるに至った。
【0020】電解液中の有機添加剤濃度を低くしていくと、粒界に入り込む該添加剤の量も次第に減少し、未処理銅箔中に取り込まれる有機添加剤由来のカーボン量が18ppm 以下になると、エッチングの際に上述のようにエッチング特性の低下がかなり抑制され、更に該カーボン量を15ppm 以下にすることによりエッチング特性の低下がほとんどなくなる。
【0021】ここで、電解液中の有機添加剤濃度を更に低下させれば、未処理銅箔中のカーボン量を0ppm 近くにすることができ、更に該有機添加剤濃度を0ppm にすると該カーボン量は0ppm になり、エッチング特性の良好な銅箔になる。しかしながら、実設備において前記の有機添加剤濃度を0ppm にすると、電解製箔工程において銅析出面にコブ等の発生による不良が生じることがある。そこで、実設備においては有機添加剤を極く微量添加することがある。
【0022】未処理銅箔中に取り込まれる有機物量をある値以下に抑えるためには、使用する添加剤の種類、分子量とともに液中の有機添加剤量も一定濃度以下に抑える必要がある。銅箔中のカーボン含有量を18ppm 以下にするためには、上述の電解液温度や電流密度において、該添加剤量を加水分解したニカワにて0〜250ppm の範囲にする。
【0023】有機添加剤が電解液中に取り込まれる量については、通常、銅箔中のCおよびSを定量することによって知ることができる。これは、有機添加剤は有機物であるので、Cが主成分であるのは当然であるが、通常Sを含む有機物を添加剤に使用する例が多いためである。ただし、Sについては、有機添加剤だけから取り込まれるのではなく、電解液の主成分に硫酸を使用していることから、電解液からも取り込まれる。事実、Sを含まない有機添加剤を使用しても、電解銅箔中からSが検出される。したがって、電解銅箔中に取り込まれる有機添加剤の定量には、Cを分析することが最も適している。尚、通常の電解銅箔には、無機体のカーボンが取り込まれることはないと考えられる。
【0024】本発明では、更に未処理銅箔に平滑化処理を施す前に加熱処理を行ってもよい。未処理銅箔中のカーボン量を18ppm 以下にすることにより、エッチング特性の良好な電解銅箔を得ることができるが、更に、常温および高温時の伸び、あるいは耐屈曲性等銅箔の物理的特性を向上させ得るからである。
【0025】具体的には、未処理銅箔を100〜300℃で加熱処理して銅箔を再結晶させる。加熱温度は、必要とされる銅箔特性に応じ前記の範囲で適宜選択すればよい。尚、加熱処理温度が100℃より低い温度ではこのような効果がほとんどなく、また300℃よりも高い温度になると、熱収縮によって銅箔に伸びやしわが発生して好ましくない。
【0026】ここで、常温および高温時の伸び、耐屈曲性を更に向上させるための加熱処理の所要時間は、加熱温度に反比例する。たとえば、120℃だと24時間要するが、260℃だと10秒程度でよい。したがって、低い加熱温度しか得られない場合には、コイル状の銅箔を炉中に保持して加熱処理を行う、いわゆるバッチ加熱による方法が適している。高い加熱温度が得られる場合には加熱炉中を走行させて銅箔を加熱する連続加熱方法による方法が好適である。
【0027】しかし、ファインパターン化を実現させるには前記の手段(以下、第1の手段という)だけでは不十分であり、次に示す第2の手段を組み合わせなければならない。第2の手段は、電解銅箔と絶縁基板との接着面を改善して、接着力を確保しながら、エッチングにおいて必要な部分の銅を絶縁基板に残留させずに迅速に溶解させる方法である。
【0028】具体的には、前記のエッチング特性の良好な銅箔を用いて、銅箔析出面側を平滑化処理し、更にこの平滑化処理が施された面(以下、平滑面という)または銅箔の光沢面の少なくとも一方の面に粗化処理を施し、この粗化した面と絶縁基板とを接着できるようにした電解銅箔である。第一の手段で示したエッチング特性の良好な銅箔を使用すると共にこの第2の手段を施すことにより、本発明の銅箔は、ファインパターン回路形成のために格段に優れたものとなる。
【0029】銅箔の平滑面を絶縁基板と接着させると、回路形成のためのエッチング時に不要な部分の銅が絶縁基板に残留することが防止でき、その結果シャープなプリント回路断面を形成させ得るが、このままでは銅箔と絶縁基板とのピール強度が低いため実用にならない。そこで、ピール強度が実用強度以下にしない程度の粗化処理を行う。粗化処理は、平滑面または銅箔の光沢面のいずれかに施すのが一般的であるが、必要に応じて両面に施してもかまわない。
【0030】平滑化処理をしていない銅析出面の表面粗度Rzは7〜15μm 程度であるが、平滑化処理の後でRz5μm 以下、更に粗化処理の後でもRz6μm 以下にすることが必要である。また、銅箔の光沢面に粗化処理する場合もRzを6μm 以下にするのがよい。どちらの場合も、6μm よりも大きいと絶縁基板に銅が残留しやすくなるからであるが、より好ましくはRzを1〜3μm にするのがよい。
【0031】一方、銅箔の光沢面のRzはもともと1〜2μm であるので平滑化は必要ないが、こちら側を接着面とする場合には、接着面とは反対側の析出面側のRzを5μm 以下にして、レジストやドライフィルムが剥離しないようにする。5μm よりも大きいと銅箔とレジストやドライフィルムとの接着力が極めて低くなり、剥離しやすくなるからである。より好ましくは1〜3μm にするのがよい。
【0032】銅箔析出面の平滑化を行う手段としては複数の方法があるが、本発明では、光沢メッキ、電解研磨、圧延の中から少なくとも一つの方法を用いて行う。
【0033】第1の方法は、銅箔析出面に光沢メッキを施す方法である。光沢メッキは特開平5−29740に示されている。光沢銅メッキ層としては、電解銅箔の表面粗さを低下させることができれば特に制約はなく、例えば、公知の光沢銅メッキ法を用いて電解銅箔面に形成させることができる。
【0034】光沢銅メッキの対極としては、例えば、含りん銅、鉛、鉛合金、白金族の金属および白金族金属の酸化物を被覆したチタン電極箔を用いることができ、この中では特に含りん銅電極が好ましい。
【0035】メッキ浴の温度は、15〜40℃が好ましい。メッキ浴の温度が40℃を越えるときには、添加剤の消耗が激しくなる場合や、得られたメッキ面の光沢性が不十分になる場合があり、15℃未満の場合はメッキ面の光沢性が不十分になる場合があるからである。
【0036】電流密度は、0.5〜20A/dm2 が好ましい。電流密度が20A/dm2 を越えるときには、メッキ面の光沢性が不十分になる場合があり、0.5A/dm2 未満の場合には、得られたメッキ面の光沢性が不十分になることがあり、生産性が低下する。このようにして得られた光沢銅メッキ層の表面粗さは、0.2〜5μm が好ましい。
【0037】また、銅箔析出面側の平滑化の第2の方法は、銅箔析出面を電解研磨する方法である。本発明の電解研磨は、銅箔表面の凹凸の中で凸部分を選択的に電解溶解させる方法であれば、いかなる方法でもよいが、例えば、電解液をりん酸、対極を白金電極としてアノード電解すれば、表面粗度を著しく低下させることができ、本発明の平滑化を実現することができる。
【0038】更に、銅箔析出面側の平滑化の第3の方法は、銅箔析出面を圧延により平滑化する方法である。本発明における圧延の主な目的は、銅箔の析出面側の凹凸を機械的になくす、あるいは小さくすることにあるので、それを満たせばいかなる圧延でもよいが、一般的な冷間圧延は作業性がよく使いやすい。また圧下率を適度に選ぶことにより、伸び率が高い銅箔を得ることができる。
【0039】圧下率は銅箔の厚さや未処理箔の析出面の粗度によって異なるが、通常5〜80%の範囲が好ましい。圧下率が5%未満の場合はほとんど平滑化がなされず、また80%を越えると平滑化にむらが生じるからである。更に好ましくは20〜60%で、この範囲であれば均一な平滑化ができるだけでなく、伸び率を向上させることが可能となるからである。
【0040】以上、銅箔析出面の平滑化に関して、光沢メッキ、電解研磨、圧延を示したが、必要に応じてこれらの方法の中から2、3種類を選んで、層状にしたり、またそれらを繰り返してもよい。
【0041】次に粗化方法について示す。本発明に用いる銅箔を絶縁基板と接合するのは、銅箔の光沢面または平滑化処理を施した面のどちらでもよいが、いずれの面もそのままでは絶縁基板との接合強度が低いため、銅箔の少なくとも一方の面を粗化処理することが好ましい。
【0042】粗化処理の方法としては、例えば酸性電解液中、限界電流密度近傍の高電流密度で、銅、銅合金、亜鉛、および亜鉛合金からなる群より選ばれた一種または二種以上の金属薄膜を電着する方法(英国特許GB203246A、特開昭63−89698号公報)が好ましい。
【0043】粗化処理に用いる浴としては塩酸浴や硫酸浴が好ましいが、中でも、硫酸浴は表面粗度が小さい処理面を形成することができるとともに、この処理面と接合する絶縁基板や他の層との接合強度を高めることができるので、更に好ましい。
【0044】このようにして得られた銅箔を絶縁基板に接着することにより銅張積層板を完成させる。絶縁基板としては例えばガラスエポキシ板があり、熱融着により銅箔と接合させる。また他の絶縁基板としては紙フェノール板があり、例えばエポキシ系接着剤で銅箔と接合させる。
【0045】
【発明の実施の形態】実施例1〜3の方法で本発明に従った銅箔を作製し、エッチング評価装置を用いてエッチングファクターによる評価を行った。
【0046】実施例1チタン製の回転ドラム状カソード2と、このカソードドラムに対して同心円状に配設されたアノード(DSA電極)1からなる電解銅箔製造設備に、電解液3を流通させつつ、両極間に電流を流して銅箔4を製造した。電解液は、銅の含量が90g/l 、硫酸が100g/l になるようにした硫酸銅と硫酸の混合液で、更に塩化物イオンを20ppm 、加水分解したニカワを68ppm 、電解液に添加した。電解液温度を55℃とし、電流密度55A/dm2 の条件で製箔を行い、厚さ約35μm 、析出面の表面粗度(Rz値)7μm の未処理箔を得た。未処理箔の光沢面(ドラム面側)の表面粗度は1μm だった。また、未処理箔中のカーボン量は7ppm であった。
【0047】得られた未処理箔の析出面に光沢メッキを施した。メッキ浴の組成とメッキ条件は下記のようにした。これにより未処理箔の析出面に約9μm の光沢メッキが施され、その光沢メッキ後の表面粗度は0.8μm であった。
【0048】
メッキ浴組成 金属銅 55g/l 硫酸 55g/l 塩化物イオン 90ppm (塩化ナトリウムとして)
添加剤 装飾用光沢銅メッキ添加剤(日本シェーリング製カパラシ ド210:メーキャップ剤5ml及び光沢剤A0.5ml含有)
メッキ条件 対極 含りん銅板 液温 27℃ 電流密度 6A/dm2
【0049】次いで、光沢メッキを施した面に粗化処理を行った。粗化は2層の銅メッキ層を設けたが、その粗化のための浴組成と条件は下記の通りである。この粗化処理した面の表面粗度を測定したところ、0.8μm であり、粗化処理前とあまり変わらなかったが、電子顕微鏡で観察したところ、光沢銅メッキの凹凸面上に更に微細な凹凸が形成されていた。また、第2層目の銅メッキの後、更に防錆処理を施して本発明の電解銅箔を完成した。
【0050】


【0051】得られた銅箔を0.5mm厚のガラスエポキシ絶縁板に熱融着して銅張積層板を完成した。更に、後述の「評価法」に示した方法で回路パターンを形成してプリント配線板を完成した。
【0052】実施例2光沢メッキ処理に先立ち未処理箔を、窒素雰囲気中で加熱した以外は実施例1と全く同様にして実施例2の電解銅箔ならびに銅張基板を完成した。この場合の加熱は、未処理箔を窒素雰囲気中260℃に加熱した6mの長さの加熱炉を用い、12m/min (炉内滞留時間30秒)で走行させることによって行った。得られた電解銅箔の光沢面(ドラム側)の表面粗度は1μm 、光沢メッキ後粗化処理した析出面の表面粗度は0.8μm で、それぞれ実施例1と全く同じだった。また、未処理箔中のカーボン量は7ppm であった。
【0053】実施例3粗化処理を、光沢メッキを施した面(析出面)ではなくて銅箔の光沢面に施した以外は実施例1と全く同様にして実施例3の電解銅箔および銅張基板を完成した。得られた電解銅箔の光沢面(ドラム側)の表面粗度は1μm 、光沢メッキ処理した析出面の表面粗度は0.8μm であった。また、未処理箔中のカーボン量は7ppm であった。
【0054】実施例4未処理箔の析出面の平滑化を光沢メッキではなく、電解研磨によって行った以外は実施例1と全く同様にして実施例4の電解銅箔および銅張基板を完成した。電解研磨は、電解液として試薬りん酸と水とを3:2の割合で混合した液を使用し、対極に白金板、液温25℃、電流密度20A/dm2 の条件で2分間通電することによって行った。得られた電解銅箔の光沢面(ドラム側)の表面粗度は1μm、電解研磨後粗化処理した析出面の表面粗度は1.3μm であった。また、未処理箔中のカーボン量は7ppm であった。
【0055】実施例5未処理箔の厚さを58μm とし、未処理箔の析出面の平滑化を光沢メッキではなく、圧延によって行った以外は実施例1と全く同様にして実施例5の電解銅箔および銅張基板を完成した。圧延は冷間圧延で、圧下率40%で行った。得られた電解銅箔の光沢面(ドラム側)の表面粗度は1μm 、圧延後粗化処理した析出面の表面粗度は1.2μm であった。また、未処理箔中のカーボン量は7ppm であった。
【0056】比較例1加水分解したニカワの添加量を300ppm とした以外は実施例1と同様にして未処理箔を作製し、これに光沢メッキや電解研磨等の平滑化を行うことなく、銅箔の析出面に実施例1と同様な粗化処理と防錆処理を行い、比較例1の電解銅箔を完成した。更に、粗化処理面側を実施例1と同様にガラスエポキシ絶縁基板に熱融着して銅張基板を作製した。得られた電解銅箔の光沢面(ドラム側)の表面粗度は1μm 、粗化処理した析出面の表面粗度は8μm であった。また、未処理箔中のカーボン量は23ppm であった。
【0057】比較例2加水分解したニカワの添加量を68ppm とした以外は比較例1と同様にして、比較例2の電解銅箔および銅張基板を作製した。得られた電解銅箔の光沢面(ドラム側)の表面粗度は1μm 、粗化処理した析出面の表面粗度は8μm であった。また、未処理箔中のカーボン量は7ppm であった。
【0058】比較例3加水分解したニカワの添加量を300ppm とした以外は実施例1と全く同様にして比較例3の電解銅箔および銅張基板を作製した。得られた電解銅箔の光沢面(ドラム側)の表面粗度は1μm 、粗化処理した析出面の表面粗度は0.9μmであった。また、未処理箔中のカーボン量は23ppm であった。
【0059】評価法実施例1〜5、および比較例1〜3で得られた銅張基板のそれぞれに対するエッチング特性の評価を次に示す方法で行った。各銅張基板表面の洗浄後、液レジストを5μm の厚さで均一に塗布して乾燥した。次に、該レジストに試験用回路パターンを重ね、露光機を用いて200mJ/cm2で紫外線照射した。テストパターンは線幅100μm 、線間100μm 、長さ5cmの平行直線を10本並べたものである。照射後直ちに現像し、水洗、乾燥した。
【0060】このように、レジストによる回路が形成された各銅張基板のそれぞれに対し、エッチング評価装置によりエッチングした。エッチング評価装置は単ノズルで、垂直に立てた試料の銅張基板に対し直角方向からエッチング液を噴射するものである。エッチング液には塩化第二鉄と塩酸を混合した液(FeCl3:2mol/l ,HCl:0.5mol/l )を使用し、液温50℃、噴射圧0.16MPa 、液流量1 l/min、試料とノズルの距離15cmにて行った。噴射時間は55秒とした。噴射後直ちに水洗し、アセトンにてレジストを剥離してプリント回路パターンを得た。
【0061】得られた各々のプリント回路パターンに対し、エッチングファクターを測定した。また参考のため、高温伸び率も測定した。その結果を表1に示す。エッチングファクター値が大きいほどエッチング特性が良好と判断できるが、実施例1〜5は比較例1〜3よりもエッチングファクターが格段に大きく、本発明が優れていることを示すものである。
【0062】
【表1】


【0063】
【発明の効果】本発明によって得られた電解銅箔は、銅箔自体のエッチング特性が良好で、また、電解銅箔と絶縁基板との密着性を実用強度に保つことが可能なため、両者の相乗効果によって、ファインパターン化を実現することが可能となる。また、この電解銅箔を絶縁板に接着した銅張基板ならびにプリント回路により、ファインパターン回路を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】エッチングファクターの求め方を示す模式図
【図2】電解製箔装置の構造を示す断面図
【図3】表面処理装置の構成を示す断面図
【符号の説明】
A 銅箔の断面
B 絶縁板
Wt 銅箔断面のトップ幅
Wb 銅箔断面のボトム幅
T 銅箔の厚さ
1 電解製箔装置のアノード
2 電解製箔装置のカソード
3 電解製箔装置の電解液
4 未処理銅箔
5 表面処理装置の電解液
6 表面処理装置の電解液
7 表面処理装置のアノード
8 表面処理銅箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 カーボン量が18ppm 以下の未処理箔の析出面を平滑化処理して表面粗度Rzが5μm 以下の平滑面を形成し、次いで該平滑面または未処理箔の光沢面の少なくとも一方の面に粗化処理を行うことにより、粗化処理面の表面粗度をRzで6μm 以下としたことを特徴とする電解銅箔。
【請求項2】 前記の平滑化処理に先立ち、未処理銅箔を、100〜300℃の温度で加熱処理を行った請求項1の電解銅箔。
【請求項3】 前記の平滑化処理を、光沢メッキ、電解研磨、圧延の中の少なくとも一つの方法で行った請求項1または2の電解銅箔。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか一に記載の電解銅箔の粗化処理を施した面を絶縁基板と接着した銅張積層板またはプリント配線板。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate