説明

ファクシミリ装置及びその制御方法並びにプログラム

【課題】 手動送信を行う場合に、回線接続後に送信画像の供給が遅くならないようにすること。
【解決手段】 スキャナ制御部13の初期化が完了しないなど、使用可能な状態にない場合、回線接続部16による回線捕捉を行わないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動送信機能を有するファクシミリ装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナやプリンタなどを有した装置において、電源投入時等に各部の初期化処理を行い、それぞれの初期化処理が完了してから動作を行わせるものが知られている(特許文献1参照)。また、このようなスキャナやプリンタを持ったファクシミリ装置において手動送信機能を有したものが知られている。手動送信とは、相手装置との回線接続を行った後、ユーザによる手動操作によって画像データの送信を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−248479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなファクシミリ装置においては、電話回線を介して通信を行う部分の初期化が終了すると、通信相手の装置へのダイヤリングや回線接続が可能な状態となる。ところが、相手装置との回線接続が行われた後、手動送信のためにスキャナを用いて原稿の読み取りを行わせようとした場合に、スキャナの初期化が終了していないことがあり、その場合にはスキャナの初期化を待つ必要がある。しかしながら、回線を接続した後に初期化を待つと、回線接続時間が長くなってしまったり、タイムアウトしてしまったりすることがある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みなされたものであり、手動送信を行う場合に、回線接続後に送信画像の供給が遅くならないようにしたファクシミリ装置及びその制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するため、本発明のファクシミリ装置は、原稿上の画像を読み取り画像データを生成する読取手段と、前記読取手段により生成された画像データを、電話回線と接続して送信する送信手段と、前記読取手段の状態を判定する判定手段と、前記判定手段により前記読取手段が原稿上の画像の読み取りが行えないと判定された場合、前記送信手段による手動送信のための電話回線への接続を行わないよう制御する制御手段とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、読取手段が原稿上の画像の読み取りが行えない場合、手動送信のための電話回線への接続を行わないようにするので、手動送信を行う場合に、回線接続後に送信画像の供給が遅くならない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態のファクシミリ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】操作部11による受け付けの可否を示すテーブルの内容を示す図である。
【図3】ファクシミリ装置100による処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態におけるファクシミリ装置100の構成を示すブロック図である。
【0011】
図1において、システム制御部は以下に示す各部11〜15の動作の調停を行い、ファクシミリ装置100全体を統括的に制御する。また、システム制御部10は各種情報を記憶する記憶部を含み、システム制御部10は記憶部に記憶されている制御プログラムを読み出し、それを実行することによりファクシミリ装置100の動作を制御する。また、システム制御部10は記憶部に記憶されている動作パラメータを読み出し、処理内容を変更する。
【0012】
操作部11は、ユーザによる各種操作を受け付ける。操作部11には、回線捕捉を行うためのオンフックキー、ファクシミリ送信の開始を指示する送信開始キー、コピー開始を指示するコピー開始キー、電話番号の入力を行うためのダイヤルキーなどを含む。表示部12は、ファクシミリ装置100の各種状態をユーザに通知するための表示を行う。操作部11と表示部12の機能を兼ね備えたタッチパネルとしてもよい。
【0013】
スキャナ制御部13は、原稿を読み取るスキャナや、スキャナで読み取った原稿上の画像を表す画像データを処理する画像処理部などを含み、スキャナを用いた読取処理の制御を行う。スキャナ制御部13では、ファクシミリ装置100の電源が投入されたときや、省電力モードから復帰したとき、初期化処理が実行され、初期化処理が完了するまではスキャナによる読取処理は実行できない。
【0014】
プリンタ制御部14は、画像データに基づく画像をインクやトナーなどの記録剤を用いて記録シート上に印刷するプリンタ、プリンタが印刷するための画像データの処理を行う画像処理部などを含み、プリンタを用いた印刷処理の制御を行う。プリンタ制御部14では、ファクシミリ装置100の電源が投入されたときや、省電力モードから復帰したとき、初期化処理が実行され、初期化処理が完了するまではプリンタによる印刷処理は実行できない。
【0015】
ファクシミリ制御部15は、MODEMやファクシミリ用画像データの画像処理部等を含み、G3ファクシミリ手順(ITU−T T.30に従った手順)で行われるファクシミリ通信の制御を行う。ファクシミリ手順の実行や、ファクシミリ用画像データの符号化・復号化、MODEMを用いた変復調等を制御する。ファクシミリ制御部15では、ファクシミリ装置100の電源が投入されたときや、省電力モードから復帰したとき、初期化処理が実行され、初期化処理が完了するまではファクシミリ通信処理は実行できない。なお、ファクシミリ制御部15は、G3ファクシミリ手順に代えてG4ファクシミリ手順の実行を行うようにしてもよいし、G3ファクシミリ手順とG4ファクシミリ手順の両方に対応するようにしてもよい。
【0016】
回線接続部16は、NCUなどを含み、電話回線網への接続のための発呼や、通信相手装置からの発呼に応じた電話回線網からの呼び出しに対する着呼を行う。ファクシミリ制御部15からのファクシミリ画像データは回線接続部16を介して通信相手装置に送信され、また通信相手装置から送られたファクシミリ画像データは回線接続部16を介してファクシミリ制御部15が受け取る。
【0017】
図2は、操作部11による受け付けの可否を示すテーブルの内容を示す図である。このテーブルはシステム制御部10の記憶部に記憶される。システム制御部10は、図2のテーブルの内容に基づきファクシミリ装置100の各部の状態に応じて操作部11の操作の受け付けの可否を制御する。
【0018】
図2において、201はファクシミリ装置100において実行可能な機能を示す。コピーとは、コピー開始キーの押下によりスキャナを用いて読み取った原稿上の画像を表す画像データをプリンタ制御部14に転送し、プリンタを用いて記録シート上に画像データに基づく画像をプリントする機能である。手動送信とは、オンフックキーの押下により電話回線網の捕捉を行い、電話番号の入力により相手装置との通信を確立した後に、送信開始キーを押下してスキャナを用いて読み取った原稿上の画像を表す画像データのファクシミリ送信を行う機能である。自動送信とは、原稿をスキャナにセットし、通信相手の電話番号を入力し、送信開始キーを押下すると、相手装置との通信の確立を待たずに原稿の読み取りを開始し、相手装置との通信が確立すると送信を開始する機能である。ファクシミリ装置100はこれら以外にも機能を有するが、ここでの説明は省略する。
【0019】
202は、201で示した各機能を実行する際に操作する必要のある操作部11に含まれる操作キーを示し、その数字は操作する順序を示す。即ち、手動送信の場合には、205で示されるように、ユーザには、オンフックキーの押下後、送信開始キーを押下させる(その順序で操作させるよう表示部12に案内表示を行う)。なお、必要な操作キーはここに示したもの以外もあるが、ここではコピー開始キー、オンフックキー、送信開始キーのみを示した。図中、数字が1つしか入っていないものは、3つのキーのうち1つのキーしか操作されないものを示す。
【0020】
203は、201で示した各機能を実行するに当たって、初期化が完了している必要のあるデバイスリソースを示す。各機能の実行に当たって、図中、丸印が入っているデバイスリソースの全てが初期化完了した場合に、該当する機能の実行を許可する。即ち、スキャナ制御部13とプリンタ制御部14の両方の初期化が完了した場合にコピー機能の実行が可能となる。また、ファクシミリ制御部15とスキャナ制御部13の両方の初期化が完了した場合に手動送信の実行が可能となる。また、ファクシミリ制御部15とスキャナ制御部13の両方の初期化が完了した場合に自動送信の実行が可能となる。
【0021】
204は、201で示した各機能の実行に際して、203で丸印を付したデバイスリソースの初期化が完了する前に、当該機能に関わる操作部11の操作の受け付けを許可するか否かを示す。ここで「可」としたものは、初期化を待たずに操作の受け付けを許可し、「否」としたものは、丸印を付した全てのデバイスリソースの初期化が完了するまで操作の受け付けを許可しない。即ち、スキャナ制御部13またはプリンタ制御部14の初期化が完了していなくとも、操作部11はコピーのための操作(部数の指定、画質の設定、コピー開始キーの押下等)は受け付け、初期化が完了するとその操作に従ったコピー処理を実行する。また、ファクシミリ制御部15またはスキャナ制御部13の初期化が完了していないとき、手動送信のための操作は受け付けない。これは、オンフックキーはその押下により即座に回線の捕捉を行うことが望ましいためである。一方、自動送信を行う場合は、ファクシミリ制御部16またはスキャナ制御部13の初期化が完了していなくとも自動送信のための操作(電話番号の入力、送信開始キーの押下等)は受け付ける。なお、手動送信を行う場合、オンフックキーに代えて、手動送信指示キーとし、当該キーの押下によりオンフックキーを押下した場合と同等の動作を行うものとしてもよい。これにより、例えばファクシミリ装置100が電話機能を有する場合、通話のみのための回線捕捉指示と区別し(スキャナ制御部13の初期化完了を待たずに)電話機能による通信を許可することができる。なお、この例では手動送信の操作の受け付けの可否を、スキャナ制御部13とファクシミリ制御部15の両方が使用可能となったか否かにより判断するようにしたが、スキャナ制御部13のみの状態によって判断してもよい。例えばファクシミリ制御部15に回線捕捉のための制御機能も含まれていた場合、ファクシミリ制御部15が使用可能な状態でない場合にはオンフックキーを押下しても回線捕捉がなされず手動送信が行えないためである。
【0022】
次に、ファクシミリ装置100による処理(主に手動送信を行う場合の処理)について説明する。図3は、この処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートは、システム制御部10内の記憶部に記憶されている制御プログラムをシステム制御部10が実行することにより行われる処理の流れを示す。
【0023】
ステップ301では、操作部11による操作がなされたか判断する。操作がなされたと判断された場合はステップ302に進む。ステップ302では、この操作がオンフックキーの押下、またはそれに相当する操作であったか判断する。これ以外であった場合、ステップ303に進み、その操作内容に従った処理を行う。ここでは手動送信以外の処理の説明は省略する。
【0024】
次にステップ304では、ファクシミリ制御部15とスキャナ制御部13の両方の初期化が完了し手動送信可能な状態であるか判断する。ここでいずれか一方の初期化が完了しておらず、手動送信が行えない状態である場合、ステップ305に進み、表示部12に「送信できません」と表示するなどして、手動送信が行えないことをユーザに通知し、手動送信のための回線接続を禁止する。一方、ファクシミリ制御部15とスキャナ制御部13の両方の初期化が完了していれば、ステップ306で回線捕捉するとともに、入力された電話番号に従って発呼する。そしてステップ307では、送信開始キーが押下されたか判断する。このとき、相手装置との通信が確立せず、例えば話中のためビジートーンが返ってきた場合や、通信が確立しても通信相手がファクシミリ受信不可能な場合(自動応答でファクシミリ受信を受け付けない状態等)などは、手動送信が開始できない。従って、ステップ308でユーザによるキャンセル操作がなされるのを待ち、キャンセル指示された場合、ステップ310に進み、回線切断を行う。
【0025】
ステップ309では、送信開始キーの押下に従ってスキャナ制御部13による制御に従いスキャナにセットされた原稿上の画像を読み取り画像データを生成し、ファクシミリ制御部15の制御により生成された画像データのファクシミリ送信を実行する。そして全ての送信対象の画像データの送信が終了し、ユーザが回線切断指示を行うと、ステップ310で回線切断を行う。
【0026】
なお、ステップ304における判断はスキャナ制御部13とファクシミリ制御部15の状態を判定し、その判定結果と図2のテーブルとを比較し、それに応じた分岐がなされる。ただし、図2のテーブルを変更し、ここではスキャナ制御部13の状態のみを判定するようにしてもよい。
【0027】
以上のような実施形態によれば、手動送信の際、スキャナがまだ使えないにも関わらず回線捕捉を行い、画像データの送信開始が遅延してしまったり、画像データの送信が規定時間内までに行えずにタイムアウトしてしまうような事態を防ぐことができる。また、このとき、他の実行可能な処理は受け付けるので、特定の処理が実行可能となるまで他の処理が行えないような事態も防ぐことができる。
【0028】
なお、以上の例では、必要な構成の初期化が完了したか否かを判断基準としたが、初期化以外、他の処理で使用しているため、当該構成が手動送信で使用できないことを判断基準としてもよい。
【0029】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施例の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。また、プログラムは、1つのコンピュータで実行させても、複数のコンピュータが連動して実行するようにしてもよい。また、上記した処理の全てをソフトウェアで実現する必要はなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿上の画像を読み取り画像データを生成する読取手段と、
前記読取手段により生成された画像データを、電話回線と接続して送信する送信手段と、
前記読取手段の状態を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記読取手段が原稿上の画像の読み取りが行えないと判定された場合、前記送信手段による手動送信のための電話回線への接続を行わないよう制御する制御手段とを有することを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項2】
前記制御手段により手動送信のための電話回線との接続が行えない場合、その旨を示す情報を表示する表示手段を有することを特徴とする請求項1に記載のファクシミリ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記判定手段により前記読取手段が原稿上の画像の読み取りが行えないと判定された場合であっても自動送信のための操作は受け付けることを特徴とする請求項1または2に記載のファクシミリ装置。
【請求項4】
画像を印刷する印刷手段を有し、前記制御手段は、前記判定手段により前記読取手段が原稿上の画像の読み取りが行えないと判定された場合であっても前記読取手段と前記印刷手段を用いたコピーのための操作は受け付けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のファクシミリ装置。
【請求項5】
原稿上の画像を読み取り画像データを生成する読取手段を有し、読取手段により生成された画像データの手動送信機能を有するファクシミリ装置の制御方法であって、
前記読取手段の状態を判定し、
前記読取手段が原稿上の画像の読み取りが行えないと判定された場合、手動送信のための電話回線への接続を行わないよう制御することを特徴とするファクシミリ装置の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のファクシミリ装置の制御方法をコンピュータにより実現するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−10029(P2012−10029A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142952(P2010−142952)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】