説明

ファクシミリ装置

【課題】既存のファクシミリ装置に簡単な変更を加えるだけでバッファアンダーランを防止できるファクシミリ装置を提供する。
【解決手段】画像データ記憶部10には画像データが記憶されている。符号化部12は符号化則の異なる複数の符号化部を備えている。符号化方式選択部11は、いずれかの符号化方式を選択する。フレーム生成部13は、所定のフィールドに符号化データを含むフレームを生成する。モデム15は、フレームを変調して回線へ送出する。ダミーデータ量決定部14はダミーデータテーブル141を備え、モデム15における現在の伝送速度および前記符号化方式選択部11で選択されている現在の符号化方式をパラメータとしてダミーデータテーブル141を参照することでダミーデータ量を決定する。ダミーデータ追加部131は、決定された量のダミーデータをフレームに追加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファクシミリ装置装置に係り、特に、画像データを符号して符号化データを生成する符号化が、この符号化データの送信に遅れることに起因したバッファアンダーランを防止する機能を備えたファクシミリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ送信では、原稿読取装置で読み取られた画像データや上位装置から受信して一時記憶された画像データを、MH方式,MR方式,MMR方式,JIBIG方式,JPEG方式等の符号化則で適宜に符号化し、符号化データをモデムから電話回線等の通信回線へ所定の伝送速度で送出する。このとき、符号化データ量がモデムから通信回線に送出されるデータ量を下回ってしまうと、モデムから送出するデータが不足してバッファアンダーラン状態に陥ってしまう。
【0003】
このような技術課題に対して、特許文献1には、符号化プロセスにおいて符号化データのデータ量を1ライン単位で監視し、1ライン分の符号化データ量が所定のデータ量を下回ると、1ライン分の符号化データ量が前記所定のデータ量となるようにダミーデータを追加する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−261673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来技術では、ダミーデータが符号化プロセスにおいて追加されるので、ファクシミリ装置が複数の符号化則を備えている場合には、ダミーデータを追加する手順を全ての符号化プロセスに追加しなければならず、符号化プロセスの設計変更を行う工数が増えたり、各符号化プロセスの手順が増加してしまい、各符号化プロセスを記憶するメモリ容量が増加してしまうという技術課題があった。
【0005】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、既存のファクシミリ装置に簡単な変更を加えるだけでバッファアンダーランを防止できるファクシミリ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明は、画像データを符号化して得られる符号化データを分割してフレーム単位で伝送するファクシミリ装置において、符号化方式の異なる複数の符号化手段と、前記複数の符号化手段のいずれかを選択する符号化方式選択手段と、所定量の符号化データが格納されたフレームを順次に生成するフレーム生成手段と、前記各フレームを伝送するモデムと、符号化方式とモデムの伝送速度との組み合わせごとに、各フレームに追加するダミーデータ量が記憶されたダミーデータテーブルと、選択されている符号化方式とモデムの伝送速度とに対応したダミーデータ量を前記ダミーデータテーブルから読み出して、前記各フレームに追加するダミーデータ量を決定するダミーデータ量決定手段と、決定された量のダミーデータを各フレームに追加するダミーデータ追加手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、符号化データにダミーデータを付与するプロセスが符号化プロセス外に設定され、符号化プロセスの後段において、符号化データが格納されるフレームに付与するダミーデータ量を調節することで、符号化速度とモデムの伝送速度との差分を吸収してバッファアンダーランを防止するようにしたので、既存のファクシミリ装置に簡単な変更を加えるだけでバッファアンダーランを防止できるファクシミリ装置を提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係るファクシミリ装置の主要部の構成を示した機能ブロック図であり、ここでは、本発明の説明に不要な構成は図示が省略されている。
【0009】
画像データ記憶部10には、原稿読取装置(図示せず)で読み取られた画像データや、上位装置(図示せず)から転送された画像データが一時記憶されている。符号化部12は、MH符号化部121,MR符号化部122,MMR符号化部123,JBIG符号化部124,JPEG符号化部125等の、符号化則の異なる複数の符号化部を備えている。符号化方式選択部11は、画像データの内容やモデム15が通信相手とネゴシエーションを行って決定した符号化方式等に基づいて、いずれかの符号化方式を選択する。
【0010】
フレーム生成部13は、HDLC (High Level Data Link Control)に準拠したフレーム構造で符号化データを含むフレームを生成する。モデム15は、通信相手のファクシミリ装置と事前にネゴシエーションを行って符号化方式および伝送速度を決定し、HDLCフレームを変調して回線へ送出する。
【0011】
ダミーデータ量決定部14は、モデム15の伝送速度および符号化方式をパラメータとして最適なダミーデータ量を決定するダミーデータテーブル141を備え、前記モデム15における現在の伝送速度および前記符号化方式選択部11で選択されている現在の符号化方式をパラメータとしてダミーデータテーブル141を参照することでダミーデータ量を決定し、これをフレーム生成部13のダミーデータ追加部131へ通知する。ダミーデータ追加部131は、前記ダミーデータ量決定部14から通知された量のダミーデータをHDLC フレームに追加する。
【0012】
図2は、前記HDLCフレーム構造の一例を示した図であり、各フレームがフラグシーケンスFで始まりフラグシーケンスFで終わるフラグ同期方式が採用され、各フラグシーケンスFのデータ内容は7EHである。アドレスフィールドAには相手アドレスが登録され、制御フィールドCにはフレーム種別、制御内容、フレーム番号等の制御情報が登録され、これにFCF(ファクシミリ制御フィールド)、FIF(データフィールド)、FCS(フレームチェックシーケンス)の各フィールドが続く。本実施形態では、FCSとしてCRC方式 (Cyclic Redundancy Check)が採用されている。
【0013】
図3は、前記ダミーデータテーブル141の一例を示した図である。本実施形態では、HDLC フレームのFIFフィールドに格納される符号化データ量が256または64オクテットに固定されているので、モデム15から送出されるデータ量が、各フレームに付与されるフラグシーケンスFの個数で制御される。
【0014】
本実施形態では、符号化部12で選択されている符号化方式とモデムの伝送速度との組み合わせごとに、フレーム周期で不足するデータ量Δdを実験的に求め、この差分Δdに相当するフラグシーケンスFの個数dijがダミーデータテーブル141の対応欄に予め記憶されている。
【0015】
次いで、図4のフローチャートを参照して、本実施形態の動作を詳細に説明する。ステップS1では、前記符号化方式選択部11で選択されている符号化方式が判定される。ステップS2では、モデム15の現在の伝送速度が判定される。ステップS3では、前記符号化方式および伝送速度の判定結果に基づいてダミーデータテーブル141が参照され、対応するダミーデータ量(フラグシーケンス数)数dijが読み出される。
【0016】
ステップS4では、前記dij個のフラグシーケンスFを含む可変長のHDLCフレームが生成され。ステップS5においてモデム15へ転送される。ステップS6では、全ての画像データの符号化が完了したか否かが判定され、完了していなければ、ステップS2へ戻って上記した各処理が繰り返される。
【0017】
このように、本実施形態によれば、モデム15の伝送速度に対する符号化部12の符号化速度が遅くなるほど、各フレームではダミーデータ量が増加してフレーム長が長くなり、結果的に送信データ量が増えるので、バッファアンダーランを防止できるようになる。
【0018】
なお、上記した実施形態では、各フレームに格納される符号化データ量が一定であり、各フレームのフレーム長が可変長である場合を例にして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、各フレームに格納される符号化データ量が可変長であり、各フレームのフレーム長が固定長の場合にも、同様に適用できる。
【0019】
このような場合、符号化方式とモデムの伝送速度との組み合わせごとに、伝送量に対して不足する符号化データ量を実験的に求め、この不足データ量を補えるフラグシーケンスFの個数をダミーデータ数eijとしてダミーデータテーブル141の対応欄に予め記憶しておく。そして、ファクシミリ通信時には、符号化速度に応じた量の符号化データを含むフレームに、ダミーデータテーブル141から読み出した個数eijのフラグシーケンスFを追加し、フレーム長を一定に整えて後段のモデム15へ転送すれば良い。
【0020】
このように、本実施形態によれば、モデム15の伝送速度に対する符号化部12の符号化速度が遅くなるほど、各フレームでは符号化データ量に対するダミーデータ量の割合が増加し、結果的に符号化データの伝送速度が低下するので、バッファアンダーランを防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るファクシミリ装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図2】HDLCフレーム構造を示した図である。
【図3】ダミーデータテーブルの一例を示した図である。
【図4】本実施形態の動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
10…画像データ記憶部,11…符号化方式選択部,12…符号化部,13…フレーム生成部,14…ダミーデータ量決定部,15…モデム,131…ダミーデータ追加部,141…ダミーデータテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを符号化して得られる符号化データを分割し、フレームの所定フィールドに登録してフレーム単位で伝送するファクシミリ装置において、
符号化方式の異なる複数の符号化手段と、
前記複数の符号化手段のいずれかを選択する符号化方式選択手段と、
所定量の符号化データが格納されたフレームを順次に生成するフレーム生成手段と、
前記各フレームを伝送するモデムと、
符号化方式とモデムの伝送速度との組み合わせごとに、各フレームに追加するダミーデータ量が記憶されたダミーデータテーブルと、
選択されている符号化方式とモデムの伝送速度とに対応したダミーデータ量を前記ダミーデータテーブルから読み出し、各フレームに追加するダミーデータ量を決定するダミーデータ量決定手段と、
前記決定された量のダミーデータを各フレームに追加するダミーデータ追加手段とを含むことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項2】
前記ダミーデータがフレームの前後に付与されるフラグシーケンスであり、前記ダミーデータ量がフラグシーケンスの個数で代表されることを特徴とする請求項1に記載のファクシミリ装置。
【請求項3】
前記フレームは、フレーム長が可変長であって、前記符号化データが格納されるフィールドが固定長であり、モデムの伝送速度に対する符号化手段の符号化速度が遅くなるほど、ダミーデータ量が増加してフレーム長が長く成ることを特徴とする請求項1または2に記載のファクシミリ装置。
【請求項4】
前記フレームは、フレーム長が固定長であって、前記符号化データが格納されるフィールドが可変長であり、モデムの伝送速度に対する符号化手段の符号化速度が遅くなるほど、ダミーデータ量が増加して、符号化データ量が減少することを特徴とする請求項1または2に記載のファクシミリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−103931(P2008−103931A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283997(P2006−283997)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】