説明

ファスナーの複合スライダー

【課題】2つのファスナー付き可撓性部材をその内部空間を外部空間に曝すことなく着脱するファスナー用複合スライダーを提供すること。
【解決手段】第1の可撓性部材と、第2の可撓性部材とを着脱するファスナーの複合スライダーであって、第1スライダー部10、第2スライダー部、第3スライダー部20および第4スライダー部21を備え、これらスライダー部の分岐部を互いに向き合わせると共に、第3スライダー部20を第1スライダー部10に対して略直角に捩り、第4スライダー部21を第2スライダー部に対して略直角に捩っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファスナーに使用する複合スライダー関し、特に、2つのファスナー付き部材をその内部空間を外部空間に曝すことなく着脱するファスナーに使用する複合スライダーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アスベストやダイオキシン等の有害物質を除去したり取り扱ったりする場合、アスベスト等の有害物質が付着した既存物が垂直な壁である場合やアスベスト含有耐火被覆管を破壊して除去する場合等、これらの有害物質の拡散を防止すると共に、作業者が有害物質の影響を受けないようにする必要がある。
【0003】
このため、アスベスト等の有害物質を除去したり取り扱ったりする作業では、外部への飛散防止のために有害物質をシート状の遮蔽膜を用いて遮蔽し、さらに高性能のフィルターを装着した吸引機で内部の空気を排出して、遮蔽空間の内部を負圧状態とし、作業者は、遮蔽空間の外側の作業空間側から遮蔽された遮蔽空間の内部において、治具等を操作して有害物質を除去することが行われている。
【0004】
そして、遮蔽空間の内部において除去した有害物質を、有害物質が作業空間内に漏出することなく、作業空間側に設けた収納袋に収納するようにする。その方法の一例が、特開2009−113986号公報(特許公報1)に示されている。
この方法は、遮蔽膜の作業空間側に突出するシュートを設け、このシュートに収納袋を接続して、収納袋の内部と遮蔽空間とを連通させるものである。そして、除去した有害物質を遮蔽空間からシュートを介して、収納袋に収納する。つぎに、シュートを2箇所で縛ってシュートを閉鎖し、閉鎖部の間でシュートと収納袋を切り離す。
【0005】
しかしながら、上記公報の方法は、シュートを2箇所で縛り、その間でシュートを切断して、シュートと収納袋を切り離すので、縛った間のシュートには有害物質が挟まっている可能性があり、切断後には有害物質が作業空間に飛散する可能性がある。このため、切り離し作業の前に、2箇所の閉鎖部の間にシリコンを充填して切り離し時の有害物質の飛散を防止しているが、シリコンの材料費が嵩むと共に、作業手間が掛るという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献】特開2009−113986号公報 図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明の課題は、2つのファスナー付き可撓性部材をその内部空間を外部空間に曝すことなく着脱するファスナー用複合スライダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、この発明のファスナーの複合スライダーは、
第1噛合レール部材と第2噛合レール部材とを有する第1のファスナーを取り付けた第1の可撓性部材と、第3噛合レール部材と第4噛合レール部材とを有する第2のファスナーを取り付けた第2の可撓性部材とを着脱するファスナーの複合スライダーであって、
上記第1噛合レール部材と第2噛合レール部材を挿通するスリット部と、噛合する閉合部と、噛合を解除する分岐部とを有する第1スライダー部と、
上記第3噛合レール部材と第4噛合レール部材を挿通するスリット部と、噛合する閉合部と、噛合を解除する分岐部とを有する第2スライダー部と、
上記第1スライダー部に挿通した第1噛合レール部材と上記第2スライダー部に挿通した第3噛合レール部材を挿通するスリット部と、噛合する閉合部と、噛合を解除する分岐部とを有する第3スライダー部と、
上記第1スライダー部に挿通した第2噛合レール部材と上記第2スライダー部に挿通した第4噛合レール部材を挿通するスリット部と、噛合する閉合部と、噛合を解除する分岐部とを有する第4スライダー部と備え、
上記第1スライダー部と第2スライダー部とは、上記第1スライダー部のスリット部と第2スライダー部のスリット部とを互いに反対側に向かせ、かつ上記第1スライダー部の分岐部と第2スライダー部の分岐部との向きを揃え、
上記第3スライダー部と第4スライダー部とは、互いに離間すると共に、上記第3スライダー部のスリット部と第4スライダー部のスリット部とを互いに向き合わせ、かつ上記第3スライダー部の分岐部と第4スライダー部の分岐部との向きを揃え、
さらに、上記第1スライダー部と第2スライダー部の分岐部側と、上記第3スライダー部と上記第4スライダー部の分岐部側とを互いに向き合わせ、かつ上記第3スライダー部を上記第1スライダー部に対して略直角に捩り、上記第4スライダー部を上記第2スライダー部に対して略直角に捩ったことを特徴としている。
【0009】
また、1実施形態のファスナーの複合スライダーは、上記第1の可撓性部材が、その両側に第1のファスナーを跳ね出して取り付けていると共に、第2の可撓性部材は、その両側に第2のファスナーを跳ね出して取り付けていることを特徴としている。
【0010】
また、1実施形態のファスナーの複合スライダーは、上記第1の可撓性部材が、シュート部材で、上記第2の可撓性部材が、有底袋状部材であることを特徴としている。
【0011】
また、1実施形態のファスナーの複合スライダーは、上記第1の可撓性部材は、可撓性の遮蔽膜で、上記第2の可撓性部材は、防護服であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
この発明のファスナーの複合スライダーによれば、上記第1噛合レール部材と第2噛合レール部材を挿通するスリット部と、噛合する閉合部と、噛合を解除する分岐部とを有する第1スライダー部と、上記第3噛合レール部材と第4噛合レール部材を挿通するスリット部と、噛合する閉合部と、噛合を解除する分岐部とを有する第2スライダー部と、上記第1スライダー部に挿通した第1噛合レール部材と上記第2スライダー部に挿通した第3噛合レール部材を挿通するスリット部と、噛合する閉合部と、噛合を解除する分岐部とを有する第3スライダー部と、上記第1スライダー部に挿通した第2噛合レール部材と上記第2スライダー部に挿通した第4噛合レール部材を挿通するスリット部と、噛合する閉合部と、噛合を解除する分岐部とを有する第4スライダー部と備え、上記第1スライダー部と第2スライダー部とは、上記第1スライダー部のスリット部と第2スライダー部のスリット部とを互いに反対側に向かせ、かつ上記第1スライダー部の分岐部と第2スライダー部の分岐部との向きを揃え、上記第3スライダー部と第4スライダー部とは、互いに離間すると共に、上記第3スライダー部のスリット部と第4スライダー部のスリット部とを互いに向き合わせ、かつ上記第3スライダー部の分岐部と第4スライダー部の分岐部との向きを揃え、さらに、上記第1スライダー部と第2スライダー部の分岐部側と、上記第3スライダー部と上記第4スライダー部の分岐部側とを互いに向き合わせ、かつ上記第3スライダー部を上記第1スライダー部に対して略直角に捩り、上記第4スライダー部を上記第2スライダー部に対して略直角に捩っているので、上記第1の可撓性部材と第2の可撓性部材のそれぞれのファスナーにスライドさせることによって、ファスナーで上記第1の可撓性部材と第2の可撓性部材を個々に、かつ同時に封止できると共に、これらを気密状に接続することができる。また、上記複合スライダーを逆方向にスライドさせると、上記第1の可撓性部材と第2の可撓性部材のそれぞれを気密状に封止すると共に、かつ同時に分離することができる。
【0013】
また、1実施形態によれば、上記第1の可撓性部材が、その両側に第1のファスナーを跳ね出して取り付けていると共に、第2の可撓性部材は、その両側に第2のファスナーを跳ね出して取り付けているので、上記ファスナーの跳ね出し部を上記複合スライダーに取り付けやすくなる。
【0014】
また、1実施形態によれば、上記第1の可撓性部材が、シュート部材で、上記第2の可撓性部材が、有底袋状部材であるので、有害物質を除去する遮蔽空間から除去した有害物質を、上記シュート部材を介して、上記有底袋状部材内に容易に収納することができる。
【0015】
また、1実施形態によれば、上記第1の可撓性部材は、可撓性の遮蔽膜で、上記第2の可撓性部材は、防護服であるので、例えば、ウイルスなどの蔓延を防止する隔離室を上記遮蔽膜で形成し、その内部に上記防護服を着用した医師等が入り、安全に作業をすることができる。また、例えば、大きい空間で有害物質を除去する場合、作業員が上記防護服を着用して上記遮蔽膜の形成した遮蔽空間の中へ入って、安全に除去作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明のファスナー用複合スライダーの実施形態の斜視図である。
【図2】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ図1のA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線における切断断面図である。
【図3】この発明のファスナー用複合スライダーに使用する第1の可撓性部材および第2の可撓性部材の斜視図である。
【図4】この発明のファスナー用複合スライダーを第1の可撓性部材および第2の可撓性部材に適用する説明図であり、(a)は、両部材の位置関係を示す説明図、(b)は、この発明のファスナー用複合スライダーを両部材に取り付けの説明図、(c)は、この発明のファスナー用複合スライダーで両部材を接続する説明図である。
【図5】この発明のファスナー用複合スライダーを除去した有害物質を収納する有底袋状部材とシュートに適用する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の形態により詳細に説明する。
図1は、この発明のファスナー用複合スライダーの実施形態の斜視図である。
図2(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ図1のA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線における切断断面図である。
【0018】
このファスナー用複合スライダー1は、図1に示すように、その正面の形状が略台形形状である主体2と、上記主体2の短辺側側面および長辺側側面に設けたスライダー部と、上記スライダー部間に連通する連通溝とから構成される。上記主体2は、正面3と、短辺側側面4と、長辺側側面5と、斜辺側側面6と、底面7で外形を形成している。
【0019】
上記主体2の短辺側側面4に設けた第1スライダー部10と第2スライダー部11は、図2(a)に示すように、上記主体2の短辺側側面4に、かつ正面側と底面側にそれぞれ没入して設けてある。上記第1スライダー部10は、後述する第1噛合レール部材と第2噛合レール部材の噛合部43、46を噛合する閉合部12を有する。上記閉合部12は、上記第1噛合レール部材と第2噛合レール部材の噛合部43、46を係止する係止部13、13を主体2の正面側に有すると共に、上記第1噛合レール部材と第2噛合レール部材のテープ部42、45を併せて挿通し正面側側面3に向って開口するスリット14を主体2の正面側に上記係止部13、13の間に隣接して設けてある。さらに、上記第1スライダー部10の主体2の長辺側方向の奥には、図2(b)に示すように、上記第1噛合レール部材と第2噛合レール部材の噛合部43、46の噛合を解除すると共に、2つの噛合部を分岐する分岐柱からなる分岐部15が上記閉合部12の底面から主体2の正面側に向って立設してある。
【0020】
同様に、上記第2スライダー部11は、後述する第3噛合レール部材と第4噛合レール部材の噛合部53、56を噛合する閉合部16を有する。上記閉合部16は、上記第3噛合レール部材と第4噛合レール部材の噛合部53、56を係止する係止部17、17を主体2の底面側に有すると共に、上記第3噛合レール部材と第4噛合レール部材のテープ部52、55を併せて挿通するスリット18を主体2の底面側に上記係止部17、17の間に隣接して設けてある。さらに、上記スライダー部11の主体2の長辺側奥には、図2(b)に示すように、上記第3噛合レール部材と第4噛合レール部材の噛合部53、56の噛合を解除すると共に、2つの噛合部を分岐する分岐柱からなる分岐部19が上記閉合部16の底面から主体の底面側に向って立設してある。
【0021】
上記主体2の長辺側側面に設けた第3スライダー部20と第4スライダー部21は、図2(e)に示すように、上記主体2の長辺側側面5に、かつ両斜辺側にそれぞれ離間して設けてある。上記第3スライダー部20は、上記第1歯合レール部材44と第2噛合レール部材47の噛合部43、53を噛合する閉合部22を有する。上記閉合部22は、上記第1歯合レール部材44と第2噛合レール部材47の噛合部43、53を係止する係止部23、23を主体2の中央側に有すると共に、上記第1歯合レール部材44と第2噛合レール部材47のテープ部42、52を併せて挿通するスリット24を主体2の中央側に上記係止部23、23の間に隣接して設けてある。さらに、上記第3スライダー部20の主体2の短辺側方向の奥には、図2(d)に示すように、上記第1歯合レール部材44と第2噛合レール部材47の噛合部43、53の噛合を解除すると共に、2つの噛合部を分岐する分岐柱からなる分岐部25が上記閉合部22の底面から主体中央側に向って立設してある。
【0022】
同様に、上記第4スライダー部21は、上記第1歯合レール部材44と第2噛合レール部材47の噛合部46、56を噛合する閉合部26を有する。上記閉合部26は、上記第1歯合レール部材44と第2噛合レール部材47の噛合部46、56を係止する係止部27、27を主体2の中央側に有すると共に、上記第1歯合レール部材44と第2噛合レール部材47のテープ部45、55を併せて挿通するスリット28を主体2の中央側に上記係止部27、27の間に隣接して設けてある。さらに、上記スライダー部21の主体2の短辺側方向の奥には、図2(d)に示すように、上記第1歯合レール部材44と第2噛合レール部材47の噛合部46、56の噛合を解除すると共に、2つの噛合部を分岐する分岐柱からなる分岐部29が上記閉合部17の底面から主体中央側に向って立設してある。
【0023】
上記離間した第3スライダー部20と第4スライダー部21は、それぞれの上記スリット25、28を対向して配置されていると共に、それぞれの上記スリット25、28の間に空間を形成している。そして、上記第3スライダー部20と第4スライダー部21は、それぞれ上記第1スライダー部10と第2スライダー部11に対して略直角に捩じった状態になっている。
【0024】
上記スリット14は、長辺側側面5に向うに従って、図2(c)に示すように、上記分岐部15の位置で、上記正面側側面3に開口する2つの連通溝30、31に分岐される。上記連通溝30は、略直角に捩れて、上記第1スライダー部10と上記第3スライダー部20とを連通し、上記連通溝31は、略直角に捩れて、上記第1スライダー部10と上記第4スライダー部21とを連通している。上記連通溝30、31は、ファスナーのテープ部を挿通するだけの幅を有し、上記正面側側面3に開口すると共に開口部と反対側に噛合部を挿通して噛合部の移動を案内する案内部32、33を形成している。そして、上記連通溝30、31は、主体2の中央部で、それぞれ上記正面側側面3の位置から上記斜辺側側面かつ上記底面側側面7に向って斜めに(略45度)曲線状に曲がっている。
【0025】
また、同様に、上記スリット17は、長辺側側面5に向うに従って、図2(c)に示すように、上記分岐部19の位置で、上記底面側側面7に開口する2つの連通溝35、36に分岐される。上記連通溝35は、略直角に捩れて、上記第2スライダー部11と上記第3スライダー部20とを連通し、上記連通溝36は、略直角に捩れて、上記第2スライダー部11と上記第4スライダー部21とを連通している。上記連通溝35、36は、ファスナーのテープ部を挿通するだけの幅を有し、上記底面側側面7に開口すると共に開口部と反対側に噛合部を挿通して噛合部の移動を案内する案内部37、38を形成している。そして、上記連通溝35、37は、主体2の中央部で、それぞれ上記底面側側面7の位置から上記斜辺側側面かつ上記正面側側面3に向って斜めに(略45度)曲線状に曲がっている。
【0026】
上記スリット24は、短辺側側面4に向うに従って、図2(c)、(d)に示すように、上記分岐部25の位置で、上記正面側側面3と底面側側面7に開口し湾曲する2つの連通溝30、35に分岐され、上記スリット14およびスリット17に連通している。上記連通溝30、35は、ファスナーのテープ部を挿通するだけの幅を有し、上記正面側側面3と底面側側面7に開口すると共に開口部と反対側に噛合部を挿通して噛合部の移動を案内する案内部32、37を形成している。そして、上記連通溝30、35は、主体2の中央部で、それぞれ上記正面側側面3と底面側側面7の位置から中央部かつ一方の上記傾斜側側面6に向って斜めに(略45度)曲線状に曲がっている。
【0027】
上記スリット28は、短辺側側面4に向うに従って、図2(c)、(d)に示すように、上記分岐部29の位置で、上記正面側側面3と底面側側面7に開口し湾曲する2つの連通溝31、36に分岐され、上記スリット14およびスリット17に連通している。上記連通溝31、36は、ファスナーのテープ部を挿通するだけの幅を有し、上記正面側側面3と底面側側面7に開口すると共に開口部と反対側に噛合部を挿通して噛合部の移動を案内する案内部33、38を形成している。そして、上記連通溝31、36は、主体2の中央部で、それぞれ上記正面側側面3と底面側側面7の位置から中央部かつ他方の上記傾斜側側面6に向って斜めに(略45度)曲線状に曲がっている。
【0028】
なお、上記案内部32、33、37、38は、上記連通溝30、31、35、36の幅がファスナーの噛合部を挿通する幅を有すれば省略しても良い。
また、上記ファスナー用複合スライダー1において、上記連通溝30、31、35、36を形成したが、これら連通溝は、必ずしも形成する必要はなく、要するに上記第1スレイダー部10、第2スレイダー部11、第3スレイダー部20、第4スレイダー部21を適宜手段によって一体に連結しておれば良い。
【0029】
図3は、この発明のファスナー用複合スライダーに使用する第1の可撓性部材および第2の可撓性部材の斜視図である。
図4は、この発明のファスナー用複合スライダーを第1の可撓性部材および第2の可撓性部材に適用する説明図で、図4(a)は、両部材の位置関係を示す説明図、図4(b)は、この発明のファスナー用複合スライダーを両部材に取り付けの説明図、図4(c)は、この発明のファスナー用複合スライダーで両部材を接続する説明図である。
【0030】
第1の可撓性部材40は、可動性の樹脂製のシート材からなり、筒部と底部からなる樹脂製袋のように、筒状形状である。上記第1の可撓性部材40は、その筒形状の一端縁に第1のファスナー41を気密状に取り付けてある。上記第1のファスナー41は、第1テープ部42とその一端縁に取り付けた第1噛合部43とからなる第1噛合レール部材44と、第2テープ部45とその一端縁に取り付けた第2噛合部46とからなる第2噛合レール部材47とで構成されている。上記第1テープ部42の他端縁には、上記第1の可撓性部材40の筒形状の一端縁が気密状に取り付けられている。また、上記第2テープ部45の他端縁には、上記第1の可撓性部材40の筒形状の一端縁が気密状に取り付けられている。
【0031】
そして、上記第1のファスナー41の第1噛合レール部材44は、上記第1の可撓性部材40の両方に跳ね出し片44a、44bを跳ね出している。この跳ね出し量は、上記複合スライダー1の短辺と長辺の間の寸法以上が望ましい。また、上記第2噛合レール部材47は、上記第1の可撓性部材40の両方に跳ね出し片47a、47bを跳ね出している。さらに、上記第1噛合レール部材44の第1噛合部43と上記第2噛合レール部材47の第2噛合部46とが、上記第1テープ部42と第2テープ部45とを対向させて、歯合している。なお、図3で、上記第1のファスナー41は、噛合していない状態を描いているが、噛合している状態でもよい。また、上記第1の可撓性部材40の第1のファスナー41との取り付け部を開口した状態を描いているが、併せた状態でも良い。
【0032】
同様に、第2の可撓性部材50は、可動性の樹脂製のシート材からなり、筒部と底部からなる樹脂製袋のように、筒状形状である。上記第2の可撓性部材50は、その筒形状の一端縁に第2のファスナー51を気密状に取り付けてある。上記第2のファスナー51は、第3テープ部52とその一端縁に取り付けた第3噛合部53とからなる第3噛合レール部材54と、第4テープ部55とその一端縁に取り付けた第4噛合部56とからなる第4噛合レール部材57とで構成されている。上記第3テープ部52の他端縁には、上記第2の可撓性部材50の筒形状の一端縁が気密状に取り付けられている。また、上記第4テープ部55の他端縁には、上記第2の可撓性部材50の筒形状の一端縁が気密状に取り付けられている。
【0033】
そして、上記第2のファスナー51の第3噛合レール部材54は、上記第2の可撓性部材50の両方に跳ね出し片54a、54bを跳ね出している。また、上記第4噛合レール部材57は、上記第2の可撓性部材50の両方に跳ね出し片57a、57bを跳ね出している。さらに、上記第3噛合レール部材54の第3噛合部53と上記第4噛合レール部材57の第2噛合部56とが、上記第3テープ部52と第4テープ部55とを対向させて、歯合している。なお、図3で、上記第2のファスナー51は、噛合していない状態を描いているが、歯合している状態でもよい。また、上記第2の可撓性部材50の第2のファスナー51との取り付け部を開口した状態を描いているが、併せた状態でも良い。
【0034】
つぎに、上記第1の可撓性部材40と第2の可撓性部材50とを上記複合スライダー1を用いて着脱する方法について説明する。
上記第1の可撓性部材40と第2の可撓性部材50とを、図4(a)に示すように、それぞれの第1のファスナー41と第2のファスナー51を向かい合わせに対向して配置する。
【0035】
つぎに、図4(b)に示すように、上記第1のファスナー41と第2のファスナー51の跳ね出した跳ね出し片44a、47a、54a、57aの位置に上記複合スライダー1の短辺側側面4を跳ね出し片に向けて配置する。そして、上記複合スライダー1の第1スライダー部10の閉合部12に跳ね出し片44a、47aを長辺側側面5に突出するまで挿入する。そうすると、上記跳ね出し片44aは、上記連通溝30と案内部32によって案内されて直角に捩られながら上記第3スライダー部20の閉合部22から突出する。また、上記跳ね出し片47aは、上記連通溝31と案内部33によって案内されて直角に捩られながら上記第4スライダー部21の閉合部26から突出する。
【0036】
つぎに、上記複合スライダー1の第2スライダー部11の閉合部16に跳ね出し片54a、57aを長辺側側面5に突出するまで挿入する。そうすると、上記跳ね出し片54aは、連通溝35と案内部37によって案内されて直角に捩られながら上記第3スライダー部20の閉合部22から突出する。また、上記跳ね出し片57aは、上記連通溝36と案内部38によって案内されて直角に捩られながら上記第4スライダー部21の閉合部26から突出する。上記閉合部22と閉合部26から突出した上記跳ね出し片44aと跳ね出し片54aおよび跳ね出し片47aと跳ね出し片57aは、それぞれ上記閉合部22、26を通過するので、上記第1噛合部43と第3噛合部53とが噛合し、上記第2噛合部46と第4噛合部56とが噛合している。
【0037】
つぎに、上記第1の可撓性部材40と上記第2の可撓性部材50の端部を合致させた後、上記複合スライダー1から突出した跳ね出し片を適宜固定して、上記複合スライダー1を跳ね出し片44b、47b、54b、57bに向って(矢印Xの方向)スライドスライドさせる。そうすると、上記各跳ね出し片は、上記閉合部22、26を通過するので、上記第1噛合部43と第3噛合部53とが噛合し、上記第2噛合部46と第4噛合部56とが噛合する。すなわち、上記第1噛合部43側の第1テープ部42(第1噛合レール部材44)に取り付けた上記第1の可撓性部材40と上記第3噛合部53側の第3テープ部52(第3噛合レール部材54)に取り付けた第2の可撓性部材50とが接続される。また、上記第2噛合部46側の第2テープ部45(第2噛合レール部材47)に取り付けた上記第1の可撓性部材40と第4噛合部56側の第4テープ部57(第4噛合レール部材55)に取り付けた上記第2の可撓性部材50とが接続される。このように、上記第1の可撓性部材40と第2の可撓性部材50とは、完全に気密状に接続されると共に、その内部空間は連通する。
【0038】
そして、上記跳ね出し片44b、47b、54b、57bを適宜固定し、上記複合スライダー1をその長辺側側面を前にして、上記跳ね出し片44a、47a、54a、57aに向って(矢印Yの方向)スライドさせ、上記跳ね出し片44a、47a、54a、57aから抜き取る。そうすると、上記各跳ね出し片は、上記閉合部12、16を通過するので、上記第1噛合部43と第2噛合部47とが噛合し、上記第3噛合部53と第4噛合部56とが噛合する。すなわち、上記第1の可撓性部材40と第2の可撓性部材50とが分離される。なお、図4においては、上記第1の可撓性部材40と上記第2の可撓性部材50の開口幅を等しくしているが、等しくなくても良く、その場合は、上記複合スライダー1のスライド量を開口幅の短い方に合わせたスライド量にする。
【0039】
図5は、この発明のファスナー用複合スライダーを除去した有害物質を収納する有底袋状部材とシュートに適用する説明図である。
【0040】
つぎに、実施例として、上記ファスナー用複合スライダー1を除去した有害物質を収納する有底袋状部材とシュートに適用する場合について、図5を参照して説明する。
壁面60に付着したアスベスト等の有害物質61を遮蔽膜62によって遮蔽し、空間を作業空間63と遮蔽空間64とに区画する。そして、上記遮蔽膜62の下方に開口を設け、この開口に上記第1の可撓性部材である筒状のシュート部材65の開口一端側を取り付ける。上記シュート65の他端側にファスナーがその両端を跳ね出して取り付けてある。また、上記シュート部材65に除去した有害物質を収納廃棄するための上記第2の可撓性部材である有底袋状部材66が接続されている。上記有底袋状部材66にはファスナーがその両端を跳ね出して取り付けてある。上記シュート部材65のファスナーの一方の跳ね出し部と上記有底袋状部材66のファスナーの一方の跳ね出し部とを上記複合スライダー1の短辺側の閉合部12、16に挿入し、上記複合スライダー1を上記シュート部材65のファスナーの他方の跳ね出し部および上記有底袋状部材66のファスナーの他方の跳ね出し部までスライドさせる。そうすると、上記シュート部材65と上記有底袋状部材66は、接続されると共に互いの内部空間が連通する。その後、上記遮蔽空間64内の除去した有害物質を、上記シュート部材65を介して、上記有底袋状部材66に収納する。収納が終わると、上記複合スライダー1を逆方向にスライドさせる。そうすると、上記シュート部材65と上記有底袋状部材66のファスナーが気密状に噛合すると共に、上記シュート部材65と上記有底袋状部材66は分離される。分離された有害物質を収納した上記有底袋状部材66は、廃棄場へ廃棄される。
【0041】
また、この発明のファスナー用複合スライダー1は、図示しないが、上記第1の可撓性部材40として可撓性の遮蔽膜を用い、上記第2の可撓性部材50として防護服を用いると、例えば、ウイルスなどの蔓延を防止する隔離室を遮蔽膜で形成し、その内部に防護服を着用した医師等が入り、安全に作業をする環境を形成することができる。また、例えば、大きい空間で有害物質を除去する場合、作業員が防護服を着用して遮蔽膜の中へ入って、安全に除去作業を行うことができる。
【0042】
この発明のファスナーの複合スライダー1によれば、上記第1噛合レール部材44と第2噛合レール部材47を挿通するスリット部14と、噛合する閉合部12と、噛合を解除する分岐部15とを有する第1スライダー部10と、上記第3噛合レール部材54と第4噛合レール部材57を挿通するスリット部17と、噛合する閉合部16と、噛合を解除する分岐部19とを有する第2スライダー部11と、上記第1スライダー部10に挿通した第1噛合レール部材44と上記第2スライダー部47に挿通した第3噛合レール部材54を挿通するスリット部24と、噛合する閉合部22と、噛合を解除する分岐部25とを有する第3スライダー部20と、上記第1スライダー部10に挿通した第2噛合レール部材47と上記第2スライダー部11に挿通した第4噛合レール部材57を挿通するスリット部28と、噛合する閉合部26と、噛合を解除する分岐部29とを有する第4スライダー部21と備え、上記第1スライダー部10と第2スライダー部11とは、上記第1スライダー部10のスリット部14と第2スライダー部11のスリット部17とを互いに反対側に向かせ、かつ上記第1スライダー部10の分岐部15と第2スライダー部11の分岐部19との向きを揃え、上記第3スライダー部20と第4スライダー部21とは、互いに離間すると共に、上記第3スライダー部20のスリット部24と第4スライダー部21のスリット部28とを互いに向き合わせ、かつ上記第3スライダー部20の分岐部25と第4スライダー部21の分岐部29との向きを揃え、さらに、上記第1スライダー部10と第2スライダー部11の分岐部側と、上記第3スライダー部20と上記第4スライダー部21の分岐部側とを互いに向き合わせ、かつ上記第3スライダー部20を上記第1スライダー部10に対して略直角に捩り、上記第4スライダー部21を上記第2スライダー部11に対して略直角に捩っているので、第1の可撓性部材40と第2の可撓性部材50のそれぞれのファスナー41、51にスライドさせることによって、ファスナー41、51で第1の可撓性部材40と第2の可撓性部材50を個々に、かつ同時に封止できると共に、これらを気密状に接続することができる。
また、上記複合スライダー1を逆方向にスライドさせると、第1の可撓性部材40と第2の可撓性部材50のそれぞれを気密状に封止すると共に、かつ同時に分離することができる。
【0043】
また、1実施形態によれば、上記第1の可撓性部材40が、その両側に第1のファスナー41を跳ね出して取り付けていると共に、第2の可撓性部材50は、その両側に第2のファスナー51を跳ね出して取り付けているので、ファスナーの跳ね出し部を複合スライダー1に取り付けやすくなる。
【0044】
また、1実施形態によれば、上記第1の可撓性部材40が、シュート部材65で、上記第2の可撓性部材50が、有底袋状部材66であるので、有害物質を除去する遮蔽空間から除去した有害物質をシュート部材65を介して、有底袋状部材66内に容易に収納することができる。
【0045】
また、1実施形態によれば、上記第1の可撓性部材40は、可撓性の遮蔽膜で、上記第2の可撓性部材50は、防護服であるので、例えば、ウイルスなどの蔓延を防止する隔離室を遮蔽膜で形成し、その内部に防護服を着用した医師等が入り、安全に作業をすることができる。また、例えば、大きい空間で有害物質を除去する場合、作業員が防護服を着用して遮蔽膜の中へ入って、安全に除去作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ファスナー用複合スライダー
10 第1スライダー部
11 第2スライダー部
12、16 閉合部
15、19、25、29 分岐部
20 第3スライダー部
21 第4スライダー部
22、26 閉合部
30、31、35、36 連通溝
40 第1の可撓性部材
41 第1のファスナー
50 第2の可撓性部材
51 第2のファスナー
65 シュート部材
66 有底袋状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1噛合レール部材と第2噛合レール部材とを有する第1のファスナーを取り付けた第1の可撓性部材と、第3噛合レール部材と第4噛合レール部材とを有する第2のファスナーを取り付けた第2の可撓性部材とを着脱するファスナーの複合スライダーであって、
上記第1噛合レール部材と第2噛合レール部材を挿通するスリット部と、噛合する閉合部と、噛合を解除する分岐部とを有する第1スライダー部と、
上記第3噛合レール部材と第4噛合レール部材を挿通するスリット部と、噛合する閉合部と、噛合を解除する分岐部とを有する第2スライダー部と、
上記第1スライダー部に挿通した第1噛合レール部材と上記第2スライダー部に挿通した第3噛合レール部材を挿通するスリット部と、噛合する閉合部と、噛合を解除する分岐部とを有する第3スライダー部と、
上記第1スライダーに挿通した第2噛合レール部材と上記第2スライダー部に挿通した第4噛合レール部材を挿通するスリット部と、噛合する閉合部と、噛合を解除する分岐部とを有する第4スライダー部と備え、
上記第1スライダー部と第2スライダー部とは、上記第1スライダー部のスリット部と第2スライダー部のスリット部とを互いに反対側に向かせ、かつ上記第1スライダー部の分岐部と第2スライダー部の分岐部との向きを揃え、
上記第3スライダー部と第4スライダー部とは、互いに離間すると共に、上記第3スライダー部のスリット部と第4スライダー部のスリット部とを互いに向き合わせ、かつ上記第3スライダー部の分岐部と第4スライダー部の分岐部との向きを揃え、
さらに、上記第1スライダー部と第2スライダー部の分岐部側と、上記第3スライダー部と上記第4スライダー部の分岐部側とを互いに向き合わせ、かつ上記第3スライダー部を上記第1スライダー部に対して略直角に捩り、上記第4スライダー部を上記第2スライダー部に対して略直角に捩ったことを特徴とするファスナーの複合スライダー。
【請求項2】
請求項1記載のファスナーの複合スライダーにおいて、
上記第1の可撓性部材は、その両側に第1のファスナーを跳ね出して取り付けていると共に、第2の可撓性部材は、その両側に第2のファスナーを跳ね出して取り付けていることを特徴とするファスナーの複合スライダー。
【請求項3】
請求項1または2記載のファスナーの複合スライダーにおいて、
上記第1の可撓性部材は、シュート部材で、上記第2の可撓性部材は、有底袋状部材であることを特徴とするファスナーの複合スライダー。
【請求項4】
請求項1または2記載のファスナーの複合スライダーにおいて、
上記第1の可撓性部材は、可撓性の遮蔽膜で、上記第2の可撓性部材は、防護服であることを特徴とするファスナーの複合スライダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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