ファスナ
【課題】 グロットとピンとを有するファスナにおいて、ピンに対する工具のアクセスを容易にする。
【解決手段】 貫通孔51が形成された基部52及び貫通孔の周縁部に突設された係合片61を備えたグロメット2と、貫通孔に相対回転可能に挿入されるピン3とを有するファスナ1であって、係合片のピン側を向く部分には係止爪65が突設され、ピンの外周面には、ピンの抜去方向への相対変位を規制するべく、係止爪に係合する係止凸部25と、ピンの貫通孔に対する他側への相対変位を許容する通路部24とがピンの周方向に隣接して形成され、ピンの挿入端には、工具係合部37が形成され、ピンは、係止爪が係止凸部に対応する回転位置と係止爪が通路部に対応する回転位置との間で、工具係合部に係合する工具によってグロメットに対して貫通孔の軸線回りに回転されることを特徴とする。
【解決手段】 貫通孔51が形成された基部52及び貫通孔の周縁部に突設された係合片61を備えたグロメット2と、貫通孔に相対回転可能に挿入されるピン3とを有するファスナ1であって、係合片のピン側を向く部分には係止爪65が突設され、ピンの外周面には、ピンの抜去方向への相対変位を規制するべく、係止爪に係合する係止凸部25と、ピンの貫通孔に対する他側への相対変位を許容する通路部24とがピンの周方向に隣接して形成され、ピンの挿入端には、工具係合部37が形成され、ピンは、係止爪が係止凸部に対応する回転位置と係止爪が通路部に対応する回転位置との間で、工具係合部に係合する工具によってグロメットに対して貫通孔の軸線回りに回転されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメット及びピンを備えたファスナに関する。
【背景技術】
【0002】
2つのパネルを締結すべく、それぞれのパネルに形成された挿通孔に挿通され、各挿通孔に結合して各パネルを締結するファスナが公知となっている(例えば、特許文献1)。このようなファスナは、貫通孔が形成された基部及び貫通孔の一側における開口端の周縁部に突設された可撓性を有する複数の係合片を備えたグロメットと、貫通孔に相対回転可能に挿入されるピンとを有している。グロメットの各係合片は、重ねて配置された両挿通孔に挿通され、この状態でピンが貫通孔の他側の開口端から挿入されることによって、各係合片がピンに押圧されて貫通孔の径方向外方に押し広げられ、係合片が挿通孔に係合する。各係合片のピン側を向く部分には係止爪が突設されており、ピンの外周面には、ピンの貫通孔に対する他側への相対変位を規制するべく、係止爪に係合する係止凸部と、ピンの貫通孔に対する他側への相対変位を許容するべく、前記係止爪が前記ピンに対して変位可能な通路部とがピンの周方向に隣接して形成されている。これにより、係止爪が係止凸部に対応する回転位置に位置するときには、ピンのグロメットからの抜去が阻止されて係合片が両挿通孔に係合した状態を維持し、係止爪が通路部に対応する回転位置に位置するときには、ピンのグロメットからの抜去が可能となり、係合片と両挿通孔との係合が解除される。ピンの基端部には工具が係合可能な工具係合部が形成されており、工具を使用することによってピンのグロメットに対する相対回転位置を選択することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−45048号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載のファスナでは、ピンの基端側に工具を使用するための空間がない場合には、ピンのグロメットに対する相対回転を行うことができないという問題がある。特に、ピンの基端部に他の部材を結合させた場合には、工具係合部への工具のアクセスがより困難になるという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであって、ピンに対する工具のアクセスを容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、貫通孔(51)が形成された基部(52)及び前記貫通孔の一側における開口端の周縁部に突設された可撓性を有する複数の係合片(61)を備えたグロメット(2)と、前記貫通孔に相対回転可能に挿入されるピン(3)とを有し、前記ピンが前記貫通孔の他側の開口端から挿入されることによって、前記係合片が前記ピンに押圧されて前記貫通孔の径方向外方に押し広げられるファスナ(1)であって、前記係合片の前記ピン側を向く部分には係止爪(65)が突設され、前記ピンの外周面には、前記ピンの前記貫通孔に対する前記他側への相対変位を規制するべく、前記係止爪に係合する係止凸部(25)と、前記ピンの前記貫通孔に対する前記他側への相対変位を許容するべく、前記係止爪が前記ピンに対して変位可能な通路部(24)とが前記ピンの周方向に隣接して形成され、前記ピンの挿入端には、工具係合部(37)が形成され、前記ピンは、前記係止爪が前記係止凸部に対応する回転位置と前記係止爪が前記通路部に対応する回転位置との間で、前記工具係合部に係合する工具によって前記グロメットに対して前記貫通孔の軸線(A)回りに回転されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ピンの挿入端側に工具係合部が形成されているため、ピンの基端側に工具を使用するためのスペースが確保できない場合や、ピンの基端部に他の部材を結合させる場合にも工具を工具係合部にアクセスさせることが可能になる。
【0008】
本発明の他の側面は、前記ピンの外面の前記係止凸部及び前記通路部の前記挿入端側には、前記係止爪が突入可能な凹部(33)が形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、係止爪と凹部との係合によってグロメットに対するピンの位置を規定することができる。すなわち、グロメットに対してピンを仮留めすることができる。
【0010】
本発明の他の側面は、前記ピンの外面には、前記ピンの長手方向に延在するリブ(31)が延設され、前記ピンを前記貫通孔に挿入する際に、前記貫通孔の周方向において隣り合う前記係合片間に前記リブが配置され、前記係止爪が前記凹部に対応する位置に配置されることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、グロメットに対するピンの回転位置を規定することができる。
【0012】
本発明の他の側面は、前記リブは、前記通路部の前記ピンの周方向において前記係止凸部と隣り合う側と相反する側の部分から前記ピンの挿入端側へと延設され、前記挿入端側へと進むにつれて前記係止凸部側へと進むように前記ピンの長手方向に対して傾斜している。
【0013】
この構成によれば、係止爪が通路部から凹部へと移動する際に、ピンの周方向において係止凸部に対応する位置に係止爪を配置することができる。
【0014】
本発明の他の側面は、前記凹部と前記係止凸部との境界部には、前記凹部から前記係止凸部の突出端に到る傾斜面(36)が形成されており、前記凹部と前記通路部との境界部には、前記凹部側が前記通路部よりも低くなる段部(34)が形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、係止爪が凹部からピンの基端側へ移動する際には、係止爪は段部によって凹部から通路部への移動が阻止される一方、傾斜面を通過して係止凸部を基端側に跨ぐことができる。
【0016】
本発明の他の側面は、前記段部は、前記ピンの基端側に進むにつれて、前記係止凸部側に進むように前記ピンの周方向に対して傾斜して延在していることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、係止爪が凹部からピンの基端側へ移動する際には、係止爪は段部によって傾斜面側に導かれる。
【0018】
本発明の他の側面は、前記係合片の基端部の前記ピン側と相反する側の外面には、前記貫通孔の周方向に延在する凹溝(66)が形成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、凹溝によって係合爪は貫通孔の径方向外方に撓み易くなる。そのため、係合爪が挿入されるべき孔と結合することができる。また、係合爪は、ピンの挿入によって外方へと容易に撓むため、係合爪が挿入されるべき孔との結合強度が増大する。
【0020】
本発明の他の側面は、前記ピンの外面には、仮留め孔(103)が凹設され、前記貫通孔の周方向において隣り合う前記係合片の間の部分には前記仮留め孔に係止される仮留め爪(111)が形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、仮留め孔と仮留め爪との係合によって、グロメットに対してピンを仮留めすることができる。
【0022】
本発明の他の側面は、前記仮留め孔は、前記係止凸部よりも前記ピンの基端側に設けられていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、仮留め孔を前記ピンの基端側に設けたことによって、仮留め孔と仮留め爪とが係合する仮留め状態において、ピンのグロメットの貫通孔に対する挿入長さが増大するため、仮留め状態におけるピン及びグロメットの結合安定性が向上する。すなわち、仮留め状態におけるピン及びグロメットの互いの相対位置関係が安定する。
【0024】
本発明の他の側面は、前記ピンの基端部には、外方へと突出したフランジ(16)が設けられ、前記グロメットには、前記貫通孔と同軸に環状のボス部(53)が設けられ、前記ピンが前記貫通孔に挿入された状態で、前記フランジの突出端(205)が前記ボス部の内周面に摺接可能となっていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、フランジ部の突出端がボス部の内周面に摺接することによって、ピンのグロメットに対する姿勢が支持される。すなわち、ピンのグロメットに対する倒れが抑制される。
【発明の効果】
【0026】
以上の構成によれば、グロットとピンとを有するファスナにおいて、ピンに対する工具のアクセスを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係るファスナの分解斜視図
【図2】第1実施形態に係るファスナの斜視図
【図3】第1実施形態に係るピンの側面図
【図4】第1実施形態に係るピンの底面図
【図5】図4のV−V断面図
【図6】第1実施形態に係るグロメットの平面図
【図7】図6のVII−VII断面図
【図8】グロットとピンとの仮結合状態を示す断面図
【図9】図8のIX−IX断面図
【図10】グロットとピンとの結合状態を示す断面図
【図11】グロットとピンとの解除状態を示す断面図
【図12】第2実施形態に係るピンの斜視図
【図13】第2実施形態に係るピンの斜視図
【図14】第2実施形態に係るグロメットの斜視図
【図15】第2実施形態に係るグロットとピンとの仮留め状態を示す斜視図
【図16】第2実施形態に係るグロットとピンとの仮留め状態を示す断面図
【図17】第3実施形態に係るピンの斜視図
【図18】第3実施形態に係るグロットとピンとの仮留め状態を示す斜視図
【図19】第3実施形態に係るグロットとピンとの仮留め状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明を自動車のテールゲートにハイマウントストップランプを取り付けるためのファスナに適用した実施形態を詳細に説明する。以下の説明では、各図に示す座標軸に基づいて方向を規定する。
【0029】
(第1実施形態)
図1及び2に示すように、第1実施形態に係るファスナ1は、グロメット2と、グロメット2に挿入されるピン3とから構成されている。グロメット2及びピン3は、それぞれ樹脂を射出成形したものである。樹脂は、例えばポリアセタール(POM)であってよい。
【0030】
図1に示すように、ピン3は軸線Aに沿って延びる軸部材である。ピン3の軸線A方向における一端を基端部12とし、他端を先端部(挿入端部)13とし、基端部12と先端部13との間の部分を中間部14とする。以下、ピン3の軸線Aに沿った方向を基端側、先端側として説明する。また、軸線Aに沿って基端側から見て、軸線Aを中心とした時計回りの方向を単に時計回り方向、軸線Aを中心とした反時計回りの方向を単に反時計回り方向という。
【0031】
基端部12の端部には、径方向突出する円板状の第1フランジ15が設けられている。基端部12の第1フランジ15より先端側の部分には、径方向突出する円板状の第2フランジ16が設けられている。第2フランジ16は、第1フランジ15よりも直径が大きく、第1フランジ15と空間を介して平行に対向している。第1フランジ15の基端側の端面には、工具が係合可能な第1工具係合孔17が形成されている。本実施形態では、第1工具係合孔17は十字状の断面を有する有底孔であり、プラスドライバーである工具が係合可能となっている。
【0032】
第2フランジ16のピン3の先端側を向く面である下面18には、2つの凸部19が形成されている。2つの凸部19は、互いに軸線Aを中心とした180°回転位置に配置され、それぞれ軸線Aを中心とした周方向に沿って延在している。各凸部19は、その突出端面(下端面)が下面18と平行な面を形成している。各凸部19の時計回り方向側の端部は、テーパ面となっている。
【0033】
先端部13は、中間部14に対して段違いに拡径されている。中間部14の外周面には、4つの第1リブ21が設けられている。4つの第1リブ21は、周方向に90°ずつ間隔をおいて軸線A方向に沿って延設されている。各第1リブ21は、一端が第2フランジ16の下面18に連続し、他端が先端部13の上端面22に連続している。図2〜4に示すように、第1リブ21は、先端部13よりもピン3の径方向外方に突出している。4つの第1リブ21によって、中間部14の水平断面は、十字形状となっている。
【0034】
図1〜4に示すように、先端部13の外周面には、軸線Aを対称軸として互いに回転対称形となる4組の構造が90°間隔で形成されている。各構造は同形をなすため、以下の説明ではその内の1組の構造について説明する。
【0035】
先端部13の外周面であって、第1リブ21の先端側に位置する部分には、通路部24が形成されている。通路部24は、軸線A方向に延在する先端部13の滑らかな表面であり、本実施形態では平面となっている。通路部24は、通路部24に対向又は摺接する物体が、先端側に移動可能なように、物体に引っ掛かる構造がなければよく、他の実施形態では通路部24を曲面としてもよい。また、通路部24は基端側から先端側へと延在する溝としてもよい。
【0036】
通路部24の反時計回り方向側には、先端部13の径方向外方に突出する係止凸部25が形成されている。係止凸部25は、先端部13の周方向に沿って延設され、基端側を向く部分に係止面26を備えている。係止凸部25は、先端部13の上端面22から先端側に離間して形成されており、係止凸部25の先端側部分には先端部13の外周面である曲面27が外部に露出している。曲面27の反時計回り方向の端部は、通路部24と稜線を介して連続している。他の実施形態では、稜線を介さずに通路部24と滑らかな面を形成しつつ連続していてもよい。曲面27の時計回り方向の端部は、他の組の構造を構成する通路部24と段部28を介して隣り合っている。他の実施形態では、段部28を省略し、曲面27と他の組の通路部24とが滑らかに連続させてもよい。
【0037】
通路部24の反時計回り側の端縁、すなわち反時計回り側の他組の構造をなす係止凸部25との境界部から、先端部13の先端側へと延在するセンタリングリブ31が突設されている。センタリングリブ31は、先端側に進むほど時計回り方向に進むように配置されている。換言すると、センタリングリブ31は、軸線Aを中心とした左巻き螺旋状に延在している。図3に示すように、センタリングリブ31は、先端部13の周方向に変位しつつも、概ね第1リブ21の先端側に配置されている。センタリングリブ31の突出端(径方向外端)は、基端側における端部において係止凸部25の突出端と連続している。これにより、センタリングリブ31の側面は、係止凸部25の反時計回り方向側の端面と連続している。
【0038】
図2、3及び5に示すように、通路部24と、その反時計回り方向に隣接する係止凸部25との先端側には、凹部33が径方向内方へと凹設されている。凹部33の時計回り方向における端部は、センタリングリブ31によって囲まれ(区画され)、反時計回り方向における端部は他組のセンタリングリブ31によって囲まれている。
【0039】
凹部33と通路部24との境界部には、凹部33側が通路部24側よりも先端部13の径方向内方に変位した段部34が形成されている。段部34は、反時計回り方向に進むにつれて、基端側に進むように、軸線Aに対して傾斜して延在している。すなわち、軸線Aを中心とした右巻き螺旋状に延在している。凹部33と係止凸部25との境界部には、凹部33の底部から係止凸部25の突出端に到る傾斜面36が形成されている。
【0040】
先端部13の凹部33よりも先端側の部分は、凹部33が設けられた部分よりも外径が大きくなっている一方、曲面27及び通路部24が設けられた基端側の部分よりも外径が小さくなっている。
【0041】
1つの通路部24と、前記通路部24の反時計回り側に隣接した係止凸部25及び曲面27と、前記通路部24の先端側に配置された凹部33と、前記通路部24及び前記凹部33の時計回り方向側に隣接して配置されたセンタリングリブ31とは、一組の構造を構成する。
【0042】
図2〜5に示すように、先端部13の先端面には、工具が係合可能な第2工具係合孔37が形成されている。本実施形態では、第2工具係合孔37は十字状の断面を有する有底孔であり、プラスドライバーである工具が係合可能となっている。
【0043】
図1、2、6及び7に示すように、グロメット2は、軸線Aを軸線とした円形の貫通孔51を中心に有する円板状の基部52を有している。基部52の外周縁には、軸線Aを中心とし、一方へと突出する環状の大径ボス部53が形成されている。また、基部52の上面には、軸線Aを中心とした環状の小径ボス部54が一方へと突設されている。小径ボス部54の内径は貫通孔51の内径より大きく、小径ボス部54の外径は大径ボス部53の内径よりも小さく設定されている。小径ボス部54の突出長さは、大径ボス部53の突出長さより小さく設定されている。大径ボス部53の突出端には、軸線A側へと突出した爪55が形成されている。
【0044】
図2、6及び7に示すように、基部52の小径ボス部54によって囲まれた部分には、傾斜して突出する4つのスロープ57が貫通孔51の周囲に、周方向に等間隔(90°間隔)に形成されている。各スロープ57は、時計回り方向に進むにつれて、底面(基部52の一面)58から突出するように傾斜している。各スロープ57の時計回り方向における端部は、底面58に対して垂直に延びる規制壁59を介して、底面58と連続している。また、各スロープ57の上端は、小径ボス部54の突出端と連続している。
【0045】
貫通孔51の開口端の周縁部には、概ね軸線A方向に沿って突出する4つの係合片61が、貫通孔51を囲むように等間隔(90°間隔)に形成されている。図6に示すように、各係合片61は、軸線Aを中心とした周方向において各スロープ57と対応する位置に配置されている。軸線Aを中心とした周方向において隣り合う係合片61の間には空隙62が形成されている。空隙62は、軸線Aを中心とした周方向において各底面58と対応する位置に配置されている。貫通孔51の孔壁の空隙62に対応する部分には、空隙62に連続する切り欠き63が軸線A方向に沿って凹設されている。切り欠き63は、底面58(基部52の上面)及び基部52の下面に連通している。
【0046】
各係合片61は、貫通孔51側と相反する側の面が略平面状に形成され、軸線Aに沿った方向から見た際に、4つの係合片61が1つの四角形の各辺を構成するように配置されている。各係合片61は、可撓性を有し、貫通孔51の径方向に傾倒可能となっている。各係合片61は、その先端部の貫通孔51側を向く部分に、軸線A側へと突出する係止爪65を有している。各係止爪65は、係合片61の先端側を向く逆止面を有している。各係合片61の基端部の貫通孔51側と相反する側の外面には、係合片61の長手方向と直交する方向に凹溝66が延設されている。凹溝66は、係合片61の長手方向と直交する方向における両端面に連通している。凹溝66によって、係合片61の基端部は他の部分に比べて貫通孔51の径方向における厚みが薄くなっている。
【0047】
次に、上述したグロメット2及びピン3からなるファスナ1を使用して、テールゲート80にハイマウントストップランプ81を結合する方法及びその結合構造を説明する。図8に示すように、テールゲート80は、板状部82を有し、板状部82には断面が四角形の貫通孔である挿通孔83が形成されている。ハイマウントストップランプ81は、板状のハウジング85と、ハウジング85の下面に突設された直方体状の結合部86とを有している。結合部86は、突出端面と異なる一側面に開口する受容孔87と、受容孔87と突出端面とを連通しつつ、前記一側面に開口するスリット88とを有している。また、ハウジング85には、その上面から受容孔87に連通する工具挿入孔89が形成されている。
【0048】
最初に、グロメット2に第1パッキン91と、第2パッキン92とを装着する。第1パッキン91及び第2パッキン92は、それぞれ可撓性を有するゴム材料から形成されている。第1パッキン91は、中央部に断面円形の貫通孔を有する円板状のパッキンであり、図2及び8に示すように、基部52の大径ボス部53と小径ボス部54との間に装着され、爪55によって抜け止めがなされる。第1パッキン91の厚みは、小径ボス部54の突出長さよりも大きく設定されている。第2パッキン92は、中央部に断面四角形状の貫通孔を有する板状のパッキンである。図1及び8に示すように、第2パッキン92の貫通孔には4つの係合片61が挿入され、第2パッキン92は基部52の下面側に沿って配置される。第2パッキン92は、貫通孔の孔縁が各係合片61の凹溝66に引っ掛かることによって、基部52の下面側に沿った位置に保持される。
【0049】
次に、グロメット2の各係合片61をテールゲート80の挿通孔83に挿入する。このとき、各係合片61は、挿通孔83の孔縁に押圧されて軸線A側へと傾倒しつつ挿入される。挿通孔83の孔縁が各係合片61の凹溝66に対応する位置まで係合片61の挿入が進むと、各係合片61は復元力によって初期位置に復帰し、凹溝66に挿通孔83の孔縁が引っ掛かる。挿通孔83は断面が四角形状であり、4つの係合片61が四角形状に配置されているため、グロメット2はテールゲート80に対して軸線A回りに回転不能に結合される。この状態では、基部52の下面と板状部82の挿通孔83の周縁部分との間に第2パッキン92が挟持され、基部52と板状部82との間がシールされる。
【0050】
グロメット2への各パッキン91,92の装着及びグロメット2とテールゲート80との結合に前後して、ピン3のハイマウントストップランプ81への結合を行う。この結合は、ピン3の第1フランジ15及び基端部12をハイマウントストップランプ81の結合部86の受容孔87及びスリット88に挿入することによって行う。図8に示すように、第1フランジ15及び基端部12は、受容孔87及びスリット88に軸線A回りに回転可能に支持される。これにより、ピン3はハイマウントストップランプ81に対して軸線A回りに回転可能に結合される。
【0051】
次に、ピン3を先端側からグロメット2の貫通孔51に挿入する。ピン3を貫通孔51に挿入する際には、ピン3と貫通孔51との軸線を一致させ、軸線Aを中心とした周方向において、ピン3のセンタリングリブ31と、グロメット2の空隙62及び切り欠き63とが対応するようにピン3とグロメット2との回転位置を合わせ、センタリングリブ31を空隙62及び切り欠き63内に突入させる。これにより、各係合片61の係止爪65は、軸線Aを中心とした周方向において隣り合うセンタリングリブ31の間、すなわち凹部33に対応する位置に配置される。この状態で、ピン3の貫通孔51に対する挿入が進むと、ピン3の先端部13が係止爪65に当接し、各係合片61を径方向外方に拡開する。更に、ピン3の貫通孔51に対する挿入が進むと、図8に示すように、係止爪65が凹部33内に突入し、係合片61が復元力によって初期位置に復帰する。この状態では、係止爪65が凹部33に引っ掛かることによって、グロメット2とピン3とが比較的弱い結合力をもって結合した仮結合状態となる。仮結合状態では、ピン3をグロメット2から抜き出す方向に力を加えることで、係止爪65を凹部33から離脱させることができ、ピン3をグロメット2から抜き出すことができる。仮結合状態では、図9に示すように、センタリングリブ31は、空隙62及び切り欠き63内に配置されている。
【0052】
仮結合状態から、ピン3を貫通孔51に対して更に挿入することによって、係止爪65は凹部33内を基端側へと摺動する。このとき、係止爪65は、凹部33の両脇に設けられたセンタリングリブ31にガイドされて基端側へと導かれる。また、係止爪65は、凹部33と通路部24との境界に設けられた段部34によって係止凸部25の先端側、すなわち傾斜面36へと導かれる。これにより、係止爪65は、傾斜面36上を基端側へと摺動する。このとき、係合片61が拡開しながら、係止爪65が係止凸部25の突出端を基端側へと跨ぐ。係止爪65が係止凸部25を越えると、図10に示すように、係合片61の復元力によって係止爪65は曲面27に当接した結合状態となる。結合状態では、係止爪65の逆止面が係止凸部25の係止面26に係止されるため、係止爪65は係止凸部25を先端側へと越えることはできない。これにより、ピン3が貫通孔51に対して抜去方向に変位できなくなり、ピン3がグロメット2に対して結合される。係止爪65が曲面27に当接した状態では、係合片61は初期位置よりも拡開された状態となっており、係合片61は貫通孔51に対して抜去不能となる。
【0053】
係止爪65が曲面27に当接した状態では、ピン3の第2フランジ16の下面に設けられた凸部19は、グロメット2の基部52の小径ボス部54に囲まれた部分の底面58に当接する。また、第2フランジ16の下面が小径ボス部54の突出端に当接する。この状態では、第2フランジ16の下面と基部52との間で第1パッキン91が挟まれ、第2フランジ16と基部52との間が第1パッキン91によってシールされる。
【0054】
次に、グロメット2とピン3との結合状態の解除方法について説明する。結合状態の解除には、第1工具係合孔17又は第2工具係合孔37に係合可能な工具を使用する。本実施形態では、工具はプラスドライバーである。ハイマウントストップランプ81側から工具挿入孔89を通過して第1工具係合孔17に、又はテールゲート80側から第2工具係合孔37に工具を嵌合し、工具を回転させることによって、ピン3をグロメット2に対して時計回り方向に回転させる。このとき、グロメット2はテールゲート80に対して回転不能に結合されているため、ピン3がハイマウントストップランプ81に対して回転する。なお、逆向きの回転は、ピン3の凸部19が、グロメット2の規制壁59に当接することによって禁止されている。
【0055】
工具によってピン3をグロメット2に対して回転させると、ピン3の凸部19は、グロメット2の底面58上を摺動し、スロープ57に到達する。凸部19は、底面58の小径ボス部54に近接した部分を摺動するため、切り欠き63に引っ掛からないようになっている。凸部19が底面58上を摺動すると同時に、係止爪65は曲面27上を周方向に摺動し、通路部24と当接するようになる。係止爪65は、通路部24に対応する位置に移動することによって係止凸部25を避け、ピン3に対して先端側への移動が可能になる。ピン3のグロメット2に対する回転が進むと、図11に示すように、凸部19はスロープ57上を摺動し、ピン3はグロメット2に対して抜去方向(貫通孔51から抜け出す方向)に変位する。これにより、係止爪65は、通路部24を先端側に摺動する。図11に示す状態をファスナ1の解除状態という。
【0056】
図11に示す状態で、外部から力を加え、ピン3をグロメット2に対して抜去方向に移動させると、係止爪65は、通路部24上をピン3の先端側へと摺動し、段部34を越えて凹部33に到達する。このとき、係止爪65はピン3の長手方向に対して傾斜したセンタリングリブ31にガイドされて、周方向において係止凸部25側へと変位する。これにより、グロメット2及びピン3の位置関係は、図8に示す仮結合状態に戻る。この仮結合状態では、上述したように、力を加えることで、ピン3をグロメット2から抜き出すことができる。
【0057】
本実施形態に係るファスナ1は、ピン3の先端部13に第2工具係合孔37が形成されているため、第1工具係合孔17に工具を到達させることが出来ないような場合でも、第2工具係合孔37に工具を係合させ、グロメット2に対してピン3を回転させることができる。
【0058】
係合片61は、基端部に凹溝66を有し、基端部における肉厚が他の部分に比べて薄く形成されているため、係合片61がピン3によって拡開される際には、係合片61は基端部から屈曲し、貫通孔51の孔縁に強く係合することができる。また、凹溝66が貫通孔51の孔縁に引っ掛かることで係合片61と貫通孔51の孔縁との結合強度を増大させることができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るファスナ100について説明する。ファスナ100は、第1実施形態に係るファスナ1と比較して、センタリングリブ101の形状が特に相違する。ファスナ100について、ファスナ1と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0060】
図12に示すように、ファスナ100の4つのセンタリングリブ101は、ファスナ1と同様に、通路部24及び凹部33の時計回り方向側にピン3の長手方向に沿って延設されている。センタリングリブ101は、その時計回り方向側の側面がピン3の長手方向に延在し、その反時計回り方向側の側面の上半部が先端側に進むにつれて時計回り方向側に進むように傾斜面102を形成しており、下半部がピン3の長手方向に延在している。
【0061】
また、4つのセンタリングリブ101の内、軸線Aを挟んで互いに対向する位置に配置された2つのセンタリングリブ101は、軸線Aの径方向外方を向く面に仮留め孔103が凹設されている。仮留め孔103の先端側には、先端側へと延在するガイド溝104が凹設されている。仮留め孔103とガイド溝104との間には隔壁105が形成されている。図13に示すように、仮留め孔103が形成された2つのセンタリングリブ101と異なる他の2つのセンタリングリブ101は、その軸線Aの径方向外方を向く面にピン3の長手方向に延在する溝106が凹設されている。
【0062】
図14に示すように、グロメット2の切り欠き63には、軸線Aを中心とした周方向に延在する梁110が掛け渡され、梁110の中間部には軸線A側に突出する仮留め爪111が形成されている。大径ボス部53の外縁には、直線状部分を有する固定片112が突設されている。
【0063】
第2実施形態に係るファスナ100は、グロメット2とピン3とが仮留めされた状態を維持することができる。グロメット2とピン3とを仮留め状態にするには、グロメット2及びピン3を同軸に配置し、かつセンタリングリブ101と梁110(空隙62及び切り欠き63)との軸線Aを中心とした周方向位置が対応するように配置した状態でピン3を貫通孔51に挿入する。これにより、梁110に形成された仮留め爪111は、センタリングリブ101に形成されたガイド溝104又は溝106内に進入し、ガイド溝104又は溝106にガイドされる。ピン3の貫通孔51に対する挿入が進むと、図15及び16に示すように、ガイド溝104内にある仮留め爪111は隔壁105を越えて、仮留め孔103内に突入し、仮留め孔103に係止される。この状態をファスナ100の仮留め状態という。溝106内にある仮留め爪111は、そのまま溝106に位置し続ける。
【0064】
ファスナ100は、仮留め状態とした後に、ファスナ1と同様にテールゲート80及びハイマウントストップランプ81と結合させることができる。仮留め状態からピン3を貫通孔51に対して更に挿入することで、仮留め爪111は仮留め孔103の基端側へと移動して仮留め孔103から離脱する。同時にグロメット2の係止爪65がピン3の凹部33内に突入し、仮結合状態となる。以後の結合状態への移行、結合状態から仮結合状態への復帰はファスナ1と同様である。なお、仮結合状態から、ピン3を貫通孔51から抜き去る際には、仮留め爪111はセンタリングリブ101の傾斜面102上を摺動し、ピン3がグロメット2に対して回転し、仮留め爪111が仮留め孔103に係合することはない。
【0065】
ファスナ100は、グロメット2の固定片112の直線状部分が、テールゲート80又はハイマウントストップランプ81に形成された係止構造に当接することによって、テールゲート80又はハイマウントストップランプ81に対して軸線A回りに回転不能に結合される。
【0066】
ファスナ100は、グロメット2とピン3とを仮留め状態として、納品及び使用できるため、部材の締結作業において準備及び作業が容易となる。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るファスナ200は、第2実施形態に係るファスナ100と同様に仮留め状態をとりうる構成となっており、ピン3に形成される仮留め孔201の位置がファスナ100の仮留め孔103の位置と相違する。ファスナ200について、ファスナ100(ファスナ1)と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0068】
図17に示すように、ファスナ200のピン3は、ファスナ100と概ね同様の構成を有するが、ファスナ100と異なり、センタリングリブ101上に仮留め孔103、ガイド溝104及び隔壁105が形成されていない。ファスナ200のピン3は、4つの第1リブ21の内、互いに相反する方向に突出する2つの第1リブ21の外面に仮留め孔201を有している。仮留め孔201は、ピン3の径方向中心側に凹設された有底孔である。ファスナ200では、仮留め孔201が、ファスナ100の仮留め孔103の位置よりもピン3の基端側に偏倚した位置に形成されている。
【0069】
図18に示すように、ファスナ200のグロメット2は、ファスナ100と概ね同様の構成を有し、梁110及び仮留め爪111を有している。仮留め爪111は、仮留め孔201に係合し、ファスナ200を仮留め位置に維持する。図18及び19に示すように、ファスナ200の仮留め位置では、センタリングリブ101はグロメット2の空隙62に配置され、各係合片61の係止爪65は、凹部33に配置される。
【0070】
ファスナ200は、ファスナ100と比較して、仮留め状態において、グロメット2の貫通孔51に対するピン3の挿入長さが長く、グロメット2からのピン3の突出長さが短いため、グロメット2に対するピン3の倒れが抑制され、安定性がよい。また、ファスナ200は、仮留め状態において、各係合片61の係止爪65が凹部33に突入しているため、更に安定性が高められている。
【0071】
ファスナ200のグロメット2は、ファスナ1と同様に貫通孔51の周囲にスロープ57を有している。ファスナ200のピン3は、ファスナ1と同様に、第2フランジ16のスロープ57と対応する位置に凸部19を有している。ピン3がグロメット2に対して回転し、凸部19がスロープ57上を下側から上側へと摺動することによってピン3は貫通孔51から抜け出す方向に変位する。
【0072】
また、ファスナ200のグロメット2は、大径ボス部53の先端から軸線A方向へと突出する突片204を周方向に90°間隔で4つ有している。ピン3の第2フランジ16の外周部には、突片204に当接可能な4つのカム片205が径方向外方に向けて突設されている。カム片205は、ピン3が回転されて凸部29がスロープ57上を摺動する際に、突片204に当接し、ピン3を抜去方向に変位させる。また、カム片205は、その突出端において、大径ボス部53の内周面に摺接可能になっている。カム片205が、大径ボス部53の内周面に摺接(当接)することによって、ピン3のグロメット2に対する姿勢が維持される(すなわち、倒れが抑制される)。
【0073】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、凸部19及びスロープ57は必須の構成ではなく、省略してもよい。また、実施形態では、ピン3の第1フランジ15がハイマウントストップランプ81の受容孔87に係合する構成としたが、ピン3とハイマウントストップランプ81との結合構造は公知の様々な形状を適用し得る。また、本発明に係るファスナは、テールゲート80やハイマウントストップランプ81に限らず、様々な部材を結合することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,100,200…ファスナ、2…グロメット、3…ピン、15…第1フランジ、16…第2フランジ、17…第1工具係合孔、19…凸部、21…第1リブ、24…通路部、25…係止凸部、26…係止面、27…曲面、31,101…センタリングリブ、33…凹部、34…段部、36…傾斜面、37…第2工具係合孔、51…貫通孔、52…基部、57…スロープ、58…底面、59…規制壁、61…係合片、62…空隙、63…切り欠き、65…係止爪、66…凹溝、80…テールゲート、81…ハイマウントストップランプ、83…挿通孔、87…受容孔、88…スリット、89…工具挿入孔、102…傾斜面、103,201…仮留め孔、104…ガイド溝、105…隔壁、106…溝、110…梁、111…仮留め爪
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメット及びピンを備えたファスナに関する。
【背景技術】
【0002】
2つのパネルを締結すべく、それぞれのパネルに形成された挿通孔に挿通され、各挿通孔に結合して各パネルを締結するファスナが公知となっている(例えば、特許文献1)。このようなファスナは、貫通孔が形成された基部及び貫通孔の一側における開口端の周縁部に突設された可撓性を有する複数の係合片を備えたグロメットと、貫通孔に相対回転可能に挿入されるピンとを有している。グロメットの各係合片は、重ねて配置された両挿通孔に挿通され、この状態でピンが貫通孔の他側の開口端から挿入されることによって、各係合片がピンに押圧されて貫通孔の径方向外方に押し広げられ、係合片が挿通孔に係合する。各係合片のピン側を向く部分には係止爪が突設されており、ピンの外周面には、ピンの貫通孔に対する他側への相対変位を規制するべく、係止爪に係合する係止凸部と、ピンの貫通孔に対する他側への相対変位を許容するべく、前記係止爪が前記ピンに対して変位可能な通路部とがピンの周方向に隣接して形成されている。これにより、係止爪が係止凸部に対応する回転位置に位置するときには、ピンのグロメットからの抜去が阻止されて係合片が両挿通孔に係合した状態を維持し、係止爪が通路部に対応する回転位置に位置するときには、ピンのグロメットからの抜去が可能となり、係合片と両挿通孔との係合が解除される。ピンの基端部には工具が係合可能な工具係合部が形成されており、工具を使用することによってピンのグロメットに対する相対回転位置を選択することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−45048号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載のファスナでは、ピンの基端側に工具を使用するための空間がない場合には、ピンのグロメットに対する相対回転を行うことができないという問題がある。特に、ピンの基端部に他の部材を結合させた場合には、工具係合部への工具のアクセスがより困難になるという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであって、ピンに対する工具のアクセスを容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、貫通孔(51)が形成された基部(52)及び前記貫通孔の一側における開口端の周縁部に突設された可撓性を有する複数の係合片(61)を備えたグロメット(2)と、前記貫通孔に相対回転可能に挿入されるピン(3)とを有し、前記ピンが前記貫通孔の他側の開口端から挿入されることによって、前記係合片が前記ピンに押圧されて前記貫通孔の径方向外方に押し広げられるファスナ(1)であって、前記係合片の前記ピン側を向く部分には係止爪(65)が突設され、前記ピンの外周面には、前記ピンの前記貫通孔に対する前記他側への相対変位を規制するべく、前記係止爪に係合する係止凸部(25)と、前記ピンの前記貫通孔に対する前記他側への相対変位を許容するべく、前記係止爪が前記ピンに対して変位可能な通路部(24)とが前記ピンの周方向に隣接して形成され、前記ピンの挿入端には、工具係合部(37)が形成され、前記ピンは、前記係止爪が前記係止凸部に対応する回転位置と前記係止爪が前記通路部に対応する回転位置との間で、前記工具係合部に係合する工具によって前記グロメットに対して前記貫通孔の軸線(A)回りに回転されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ピンの挿入端側に工具係合部が形成されているため、ピンの基端側に工具を使用するためのスペースが確保できない場合や、ピンの基端部に他の部材を結合させる場合にも工具を工具係合部にアクセスさせることが可能になる。
【0008】
本発明の他の側面は、前記ピンの外面の前記係止凸部及び前記通路部の前記挿入端側には、前記係止爪が突入可能な凹部(33)が形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、係止爪と凹部との係合によってグロメットに対するピンの位置を規定することができる。すなわち、グロメットに対してピンを仮留めすることができる。
【0010】
本発明の他の側面は、前記ピンの外面には、前記ピンの長手方向に延在するリブ(31)が延設され、前記ピンを前記貫通孔に挿入する際に、前記貫通孔の周方向において隣り合う前記係合片間に前記リブが配置され、前記係止爪が前記凹部に対応する位置に配置されることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、グロメットに対するピンの回転位置を規定することができる。
【0012】
本発明の他の側面は、前記リブは、前記通路部の前記ピンの周方向において前記係止凸部と隣り合う側と相反する側の部分から前記ピンの挿入端側へと延設され、前記挿入端側へと進むにつれて前記係止凸部側へと進むように前記ピンの長手方向に対して傾斜している。
【0013】
この構成によれば、係止爪が通路部から凹部へと移動する際に、ピンの周方向において係止凸部に対応する位置に係止爪を配置することができる。
【0014】
本発明の他の側面は、前記凹部と前記係止凸部との境界部には、前記凹部から前記係止凸部の突出端に到る傾斜面(36)が形成されており、前記凹部と前記通路部との境界部には、前記凹部側が前記通路部よりも低くなる段部(34)が形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、係止爪が凹部からピンの基端側へ移動する際には、係止爪は段部によって凹部から通路部への移動が阻止される一方、傾斜面を通過して係止凸部を基端側に跨ぐことができる。
【0016】
本発明の他の側面は、前記段部は、前記ピンの基端側に進むにつれて、前記係止凸部側に進むように前記ピンの周方向に対して傾斜して延在していることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、係止爪が凹部からピンの基端側へ移動する際には、係止爪は段部によって傾斜面側に導かれる。
【0018】
本発明の他の側面は、前記係合片の基端部の前記ピン側と相反する側の外面には、前記貫通孔の周方向に延在する凹溝(66)が形成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、凹溝によって係合爪は貫通孔の径方向外方に撓み易くなる。そのため、係合爪が挿入されるべき孔と結合することができる。また、係合爪は、ピンの挿入によって外方へと容易に撓むため、係合爪が挿入されるべき孔との結合強度が増大する。
【0020】
本発明の他の側面は、前記ピンの外面には、仮留め孔(103)が凹設され、前記貫通孔の周方向において隣り合う前記係合片の間の部分には前記仮留め孔に係止される仮留め爪(111)が形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、仮留め孔と仮留め爪との係合によって、グロメットに対してピンを仮留めすることができる。
【0022】
本発明の他の側面は、前記仮留め孔は、前記係止凸部よりも前記ピンの基端側に設けられていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、仮留め孔を前記ピンの基端側に設けたことによって、仮留め孔と仮留め爪とが係合する仮留め状態において、ピンのグロメットの貫通孔に対する挿入長さが増大するため、仮留め状態におけるピン及びグロメットの結合安定性が向上する。すなわち、仮留め状態におけるピン及びグロメットの互いの相対位置関係が安定する。
【0024】
本発明の他の側面は、前記ピンの基端部には、外方へと突出したフランジ(16)が設けられ、前記グロメットには、前記貫通孔と同軸に環状のボス部(53)が設けられ、前記ピンが前記貫通孔に挿入された状態で、前記フランジの突出端(205)が前記ボス部の内周面に摺接可能となっていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、フランジ部の突出端がボス部の内周面に摺接することによって、ピンのグロメットに対する姿勢が支持される。すなわち、ピンのグロメットに対する倒れが抑制される。
【発明の効果】
【0026】
以上の構成によれば、グロットとピンとを有するファスナにおいて、ピンに対する工具のアクセスを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係るファスナの分解斜視図
【図2】第1実施形態に係るファスナの斜視図
【図3】第1実施形態に係るピンの側面図
【図4】第1実施形態に係るピンの底面図
【図5】図4のV−V断面図
【図6】第1実施形態に係るグロメットの平面図
【図7】図6のVII−VII断面図
【図8】グロットとピンとの仮結合状態を示す断面図
【図9】図8のIX−IX断面図
【図10】グロットとピンとの結合状態を示す断面図
【図11】グロットとピンとの解除状態を示す断面図
【図12】第2実施形態に係るピンの斜視図
【図13】第2実施形態に係るピンの斜視図
【図14】第2実施形態に係るグロメットの斜視図
【図15】第2実施形態に係るグロットとピンとの仮留め状態を示す斜視図
【図16】第2実施形態に係るグロットとピンとの仮留め状態を示す断面図
【図17】第3実施形態に係るピンの斜視図
【図18】第3実施形態に係るグロットとピンとの仮留め状態を示す斜視図
【図19】第3実施形態に係るグロットとピンとの仮留め状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明を自動車のテールゲートにハイマウントストップランプを取り付けるためのファスナに適用した実施形態を詳細に説明する。以下の説明では、各図に示す座標軸に基づいて方向を規定する。
【0029】
(第1実施形態)
図1及び2に示すように、第1実施形態に係るファスナ1は、グロメット2と、グロメット2に挿入されるピン3とから構成されている。グロメット2及びピン3は、それぞれ樹脂を射出成形したものである。樹脂は、例えばポリアセタール(POM)であってよい。
【0030】
図1に示すように、ピン3は軸線Aに沿って延びる軸部材である。ピン3の軸線A方向における一端を基端部12とし、他端を先端部(挿入端部)13とし、基端部12と先端部13との間の部分を中間部14とする。以下、ピン3の軸線Aに沿った方向を基端側、先端側として説明する。また、軸線Aに沿って基端側から見て、軸線Aを中心とした時計回りの方向を単に時計回り方向、軸線Aを中心とした反時計回りの方向を単に反時計回り方向という。
【0031】
基端部12の端部には、径方向突出する円板状の第1フランジ15が設けられている。基端部12の第1フランジ15より先端側の部分には、径方向突出する円板状の第2フランジ16が設けられている。第2フランジ16は、第1フランジ15よりも直径が大きく、第1フランジ15と空間を介して平行に対向している。第1フランジ15の基端側の端面には、工具が係合可能な第1工具係合孔17が形成されている。本実施形態では、第1工具係合孔17は十字状の断面を有する有底孔であり、プラスドライバーである工具が係合可能となっている。
【0032】
第2フランジ16のピン3の先端側を向く面である下面18には、2つの凸部19が形成されている。2つの凸部19は、互いに軸線Aを中心とした180°回転位置に配置され、それぞれ軸線Aを中心とした周方向に沿って延在している。各凸部19は、その突出端面(下端面)が下面18と平行な面を形成している。各凸部19の時計回り方向側の端部は、テーパ面となっている。
【0033】
先端部13は、中間部14に対して段違いに拡径されている。中間部14の外周面には、4つの第1リブ21が設けられている。4つの第1リブ21は、周方向に90°ずつ間隔をおいて軸線A方向に沿って延設されている。各第1リブ21は、一端が第2フランジ16の下面18に連続し、他端が先端部13の上端面22に連続している。図2〜4に示すように、第1リブ21は、先端部13よりもピン3の径方向外方に突出している。4つの第1リブ21によって、中間部14の水平断面は、十字形状となっている。
【0034】
図1〜4に示すように、先端部13の外周面には、軸線Aを対称軸として互いに回転対称形となる4組の構造が90°間隔で形成されている。各構造は同形をなすため、以下の説明ではその内の1組の構造について説明する。
【0035】
先端部13の外周面であって、第1リブ21の先端側に位置する部分には、通路部24が形成されている。通路部24は、軸線A方向に延在する先端部13の滑らかな表面であり、本実施形態では平面となっている。通路部24は、通路部24に対向又は摺接する物体が、先端側に移動可能なように、物体に引っ掛かる構造がなければよく、他の実施形態では通路部24を曲面としてもよい。また、通路部24は基端側から先端側へと延在する溝としてもよい。
【0036】
通路部24の反時計回り方向側には、先端部13の径方向外方に突出する係止凸部25が形成されている。係止凸部25は、先端部13の周方向に沿って延設され、基端側を向く部分に係止面26を備えている。係止凸部25は、先端部13の上端面22から先端側に離間して形成されており、係止凸部25の先端側部分には先端部13の外周面である曲面27が外部に露出している。曲面27の反時計回り方向の端部は、通路部24と稜線を介して連続している。他の実施形態では、稜線を介さずに通路部24と滑らかな面を形成しつつ連続していてもよい。曲面27の時計回り方向の端部は、他の組の構造を構成する通路部24と段部28を介して隣り合っている。他の実施形態では、段部28を省略し、曲面27と他の組の通路部24とが滑らかに連続させてもよい。
【0037】
通路部24の反時計回り側の端縁、すなわち反時計回り側の他組の構造をなす係止凸部25との境界部から、先端部13の先端側へと延在するセンタリングリブ31が突設されている。センタリングリブ31は、先端側に進むほど時計回り方向に進むように配置されている。換言すると、センタリングリブ31は、軸線Aを中心とした左巻き螺旋状に延在している。図3に示すように、センタリングリブ31は、先端部13の周方向に変位しつつも、概ね第1リブ21の先端側に配置されている。センタリングリブ31の突出端(径方向外端)は、基端側における端部において係止凸部25の突出端と連続している。これにより、センタリングリブ31の側面は、係止凸部25の反時計回り方向側の端面と連続している。
【0038】
図2、3及び5に示すように、通路部24と、その反時計回り方向に隣接する係止凸部25との先端側には、凹部33が径方向内方へと凹設されている。凹部33の時計回り方向における端部は、センタリングリブ31によって囲まれ(区画され)、反時計回り方向における端部は他組のセンタリングリブ31によって囲まれている。
【0039】
凹部33と通路部24との境界部には、凹部33側が通路部24側よりも先端部13の径方向内方に変位した段部34が形成されている。段部34は、反時計回り方向に進むにつれて、基端側に進むように、軸線Aに対して傾斜して延在している。すなわち、軸線Aを中心とした右巻き螺旋状に延在している。凹部33と係止凸部25との境界部には、凹部33の底部から係止凸部25の突出端に到る傾斜面36が形成されている。
【0040】
先端部13の凹部33よりも先端側の部分は、凹部33が設けられた部分よりも外径が大きくなっている一方、曲面27及び通路部24が設けられた基端側の部分よりも外径が小さくなっている。
【0041】
1つの通路部24と、前記通路部24の反時計回り側に隣接した係止凸部25及び曲面27と、前記通路部24の先端側に配置された凹部33と、前記通路部24及び前記凹部33の時計回り方向側に隣接して配置されたセンタリングリブ31とは、一組の構造を構成する。
【0042】
図2〜5に示すように、先端部13の先端面には、工具が係合可能な第2工具係合孔37が形成されている。本実施形態では、第2工具係合孔37は十字状の断面を有する有底孔であり、プラスドライバーである工具が係合可能となっている。
【0043】
図1、2、6及び7に示すように、グロメット2は、軸線Aを軸線とした円形の貫通孔51を中心に有する円板状の基部52を有している。基部52の外周縁には、軸線Aを中心とし、一方へと突出する環状の大径ボス部53が形成されている。また、基部52の上面には、軸線Aを中心とした環状の小径ボス部54が一方へと突設されている。小径ボス部54の内径は貫通孔51の内径より大きく、小径ボス部54の外径は大径ボス部53の内径よりも小さく設定されている。小径ボス部54の突出長さは、大径ボス部53の突出長さより小さく設定されている。大径ボス部53の突出端には、軸線A側へと突出した爪55が形成されている。
【0044】
図2、6及び7に示すように、基部52の小径ボス部54によって囲まれた部分には、傾斜して突出する4つのスロープ57が貫通孔51の周囲に、周方向に等間隔(90°間隔)に形成されている。各スロープ57は、時計回り方向に進むにつれて、底面(基部52の一面)58から突出するように傾斜している。各スロープ57の時計回り方向における端部は、底面58に対して垂直に延びる規制壁59を介して、底面58と連続している。また、各スロープ57の上端は、小径ボス部54の突出端と連続している。
【0045】
貫通孔51の開口端の周縁部には、概ね軸線A方向に沿って突出する4つの係合片61が、貫通孔51を囲むように等間隔(90°間隔)に形成されている。図6に示すように、各係合片61は、軸線Aを中心とした周方向において各スロープ57と対応する位置に配置されている。軸線Aを中心とした周方向において隣り合う係合片61の間には空隙62が形成されている。空隙62は、軸線Aを中心とした周方向において各底面58と対応する位置に配置されている。貫通孔51の孔壁の空隙62に対応する部分には、空隙62に連続する切り欠き63が軸線A方向に沿って凹設されている。切り欠き63は、底面58(基部52の上面)及び基部52の下面に連通している。
【0046】
各係合片61は、貫通孔51側と相反する側の面が略平面状に形成され、軸線Aに沿った方向から見た際に、4つの係合片61が1つの四角形の各辺を構成するように配置されている。各係合片61は、可撓性を有し、貫通孔51の径方向に傾倒可能となっている。各係合片61は、その先端部の貫通孔51側を向く部分に、軸線A側へと突出する係止爪65を有している。各係止爪65は、係合片61の先端側を向く逆止面を有している。各係合片61の基端部の貫通孔51側と相反する側の外面には、係合片61の長手方向と直交する方向に凹溝66が延設されている。凹溝66は、係合片61の長手方向と直交する方向における両端面に連通している。凹溝66によって、係合片61の基端部は他の部分に比べて貫通孔51の径方向における厚みが薄くなっている。
【0047】
次に、上述したグロメット2及びピン3からなるファスナ1を使用して、テールゲート80にハイマウントストップランプ81を結合する方法及びその結合構造を説明する。図8に示すように、テールゲート80は、板状部82を有し、板状部82には断面が四角形の貫通孔である挿通孔83が形成されている。ハイマウントストップランプ81は、板状のハウジング85と、ハウジング85の下面に突設された直方体状の結合部86とを有している。結合部86は、突出端面と異なる一側面に開口する受容孔87と、受容孔87と突出端面とを連通しつつ、前記一側面に開口するスリット88とを有している。また、ハウジング85には、その上面から受容孔87に連通する工具挿入孔89が形成されている。
【0048】
最初に、グロメット2に第1パッキン91と、第2パッキン92とを装着する。第1パッキン91及び第2パッキン92は、それぞれ可撓性を有するゴム材料から形成されている。第1パッキン91は、中央部に断面円形の貫通孔を有する円板状のパッキンであり、図2及び8に示すように、基部52の大径ボス部53と小径ボス部54との間に装着され、爪55によって抜け止めがなされる。第1パッキン91の厚みは、小径ボス部54の突出長さよりも大きく設定されている。第2パッキン92は、中央部に断面四角形状の貫通孔を有する板状のパッキンである。図1及び8に示すように、第2パッキン92の貫通孔には4つの係合片61が挿入され、第2パッキン92は基部52の下面側に沿って配置される。第2パッキン92は、貫通孔の孔縁が各係合片61の凹溝66に引っ掛かることによって、基部52の下面側に沿った位置に保持される。
【0049】
次に、グロメット2の各係合片61をテールゲート80の挿通孔83に挿入する。このとき、各係合片61は、挿通孔83の孔縁に押圧されて軸線A側へと傾倒しつつ挿入される。挿通孔83の孔縁が各係合片61の凹溝66に対応する位置まで係合片61の挿入が進むと、各係合片61は復元力によって初期位置に復帰し、凹溝66に挿通孔83の孔縁が引っ掛かる。挿通孔83は断面が四角形状であり、4つの係合片61が四角形状に配置されているため、グロメット2はテールゲート80に対して軸線A回りに回転不能に結合される。この状態では、基部52の下面と板状部82の挿通孔83の周縁部分との間に第2パッキン92が挟持され、基部52と板状部82との間がシールされる。
【0050】
グロメット2への各パッキン91,92の装着及びグロメット2とテールゲート80との結合に前後して、ピン3のハイマウントストップランプ81への結合を行う。この結合は、ピン3の第1フランジ15及び基端部12をハイマウントストップランプ81の結合部86の受容孔87及びスリット88に挿入することによって行う。図8に示すように、第1フランジ15及び基端部12は、受容孔87及びスリット88に軸線A回りに回転可能に支持される。これにより、ピン3はハイマウントストップランプ81に対して軸線A回りに回転可能に結合される。
【0051】
次に、ピン3を先端側からグロメット2の貫通孔51に挿入する。ピン3を貫通孔51に挿入する際には、ピン3と貫通孔51との軸線を一致させ、軸線Aを中心とした周方向において、ピン3のセンタリングリブ31と、グロメット2の空隙62及び切り欠き63とが対応するようにピン3とグロメット2との回転位置を合わせ、センタリングリブ31を空隙62及び切り欠き63内に突入させる。これにより、各係合片61の係止爪65は、軸線Aを中心とした周方向において隣り合うセンタリングリブ31の間、すなわち凹部33に対応する位置に配置される。この状態で、ピン3の貫通孔51に対する挿入が進むと、ピン3の先端部13が係止爪65に当接し、各係合片61を径方向外方に拡開する。更に、ピン3の貫通孔51に対する挿入が進むと、図8に示すように、係止爪65が凹部33内に突入し、係合片61が復元力によって初期位置に復帰する。この状態では、係止爪65が凹部33に引っ掛かることによって、グロメット2とピン3とが比較的弱い結合力をもって結合した仮結合状態となる。仮結合状態では、ピン3をグロメット2から抜き出す方向に力を加えることで、係止爪65を凹部33から離脱させることができ、ピン3をグロメット2から抜き出すことができる。仮結合状態では、図9に示すように、センタリングリブ31は、空隙62及び切り欠き63内に配置されている。
【0052】
仮結合状態から、ピン3を貫通孔51に対して更に挿入することによって、係止爪65は凹部33内を基端側へと摺動する。このとき、係止爪65は、凹部33の両脇に設けられたセンタリングリブ31にガイドされて基端側へと導かれる。また、係止爪65は、凹部33と通路部24との境界に設けられた段部34によって係止凸部25の先端側、すなわち傾斜面36へと導かれる。これにより、係止爪65は、傾斜面36上を基端側へと摺動する。このとき、係合片61が拡開しながら、係止爪65が係止凸部25の突出端を基端側へと跨ぐ。係止爪65が係止凸部25を越えると、図10に示すように、係合片61の復元力によって係止爪65は曲面27に当接した結合状態となる。結合状態では、係止爪65の逆止面が係止凸部25の係止面26に係止されるため、係止爪65は係止凸部25を先端側へと越えることはできない。これにより、ピン3が貫通孔51に対して抜去方向に変位できなくなり、ピン3がグロメット2に対して結合される。係止爪65が曲面27に当接した状態では、係合片61は初期位置よりも拡開された状態となっており、係合片61は貫通孔51に対して抜去不能となる。
【0053】
係止爪65が曲面27に当接した状態では、ピン3の第2フランジ16の下面に設けられた凸部19は、グロメット2の基部52の小径ボス部54に囲まれた部分の底面58に当接する。また、第2フランジ16の下面が小径ボス部54の突出端に当接する。この状態では、第2フランジ16の下面と基部52との間で第1パッキン91が挟まれ、第2フランジ16と基部52との間が第1パッキン91によってシールされる。
【0054】
次に、グロメット2とピン3との結合状態の解除方法について説明する。結合状態の解除には、第1工具係合孔17又は第2工具係合孔37に係合可能な工具を使用する。本実施形態では、工具はプラスドライバーである。ハイマウントストップランプ81側から工具挿入孔89を通過して第1工具係合孔17に、又はテールゲート80側から第2工具係合孔37に工具を嵌合し、工具を回転させることによって、ピン3をグロメット2に対して時計回り方向に回転させる。このとき、グロメット2はテールゲート80に対して回転不能に結合されているため、ピン3がハイマウントストップランプ81に対して回転する。なお、逆向きの回転は、ピン3の凸部19が、グロメット2の規制壁59に当接することによって禁止されている。
【0055】
工具によってピン3をグロメット2に対して回転させると、ピン3の凸部19は、グロメット2の底面58上を摺動し、スロープ57に到達する。凸部19は、底面58の小径ボス部54に近接した部分を摺動するため、切り欠き63に引っ掛からないようになっている。凸部19が底面58上を摺動すると同時に、係止爪65は曲面27上を周方向に摺動し、通路部24と当接するようになる。係止爪65は、通路部24に対応する位置に移動することによって係止凸部25を避け、ピン3に対して先端側への移動が可能になる。ピン3のグロメット2に対する回転が進むと、図11に示すように、凸部19はスロープ57上を摺動し、ピン3はグロメット2に対して抜去方向(貫通孔51から抜け出す方向)に変位する。これにより、係止爪65は、通路部24を先端側に摺動する。図11に示す状態をファスナ1の解除状態という。
【0056】
図11に示す状態で、外部から力を加え、ピン3をグロメット2に対して抜去方向に移動させると、係止爪65は、通路部24上をピン3の先端側へと摺動し、段部34を越えて凹部33に到達する。このとき、係止爪65はピン3の長手方向に対して傾斜したセンタリングリブ31にガイドされて、周方向において係止凸部25側へと変位する。これにより、グロメット2及びピン3の位置関係は、図8に示す仮結合状態に戻る。この仮結合状態では、上述したように、力を加えることで、ピン3をグロメット2から抜き出すことができる。
【0057】
本実施形態に係るファスナ1は、ピン3の先端部13に第2工具係合孔37が形成されているため、第1工具係合孔17に工具を到達させることが出来ないような場合でも、第2工具係合孔37に工具を係合させ、グロメット2に対してピン3を回転させることができる。
【0058】
係合片61は、基端部に凹溝66を有し、基端部における肉厚が他の部分に比べて薄く形成されているため、係合片61がピン3によって拡開される際には、係合片61は基端部から屈曲し、貫通孔51の孔縁に強く係合することができる。また、凹溝66が貫通孔51の孔縁に引っ掛かることで係合片61と貫通孔51の孔縁との結合強度を増大させることができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るファスナ100について説明する。ファスナ100は、第1実施形態に係るファスナ1と比較して、センタリングリブ101の形状が特に相違する。ファスナ100について、ファスナ1と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0060】
図12に示すように、ファスナ100の4つのセンタリングリブ101は、ファスナ1と同様に、通路部24及び凹部33の時計回り方向側にピン3の長手方向に沿って延設されている。センタリングリブ101は、その時計回り方向側の側面がピン3の長手方向に延在し、その反時計回り方向側の側面の上半部が先端側に進むにつれて時計回り方向側に進むように傾斜面102を形成しており、下半部がピン3の長手方向に延在している。
【0061】
また、4つのセンタリングリブ101の内、軸線Aを挟んで互いに対向する位置に配置された2つのセンタリングリブ101は、軸線Aの径方向外方を向く面に仮留め孔103が凹設されている。仮留め孔103の先端側には、先端側へと延在するガイド溝104が凹設されている。仮留め孔103とガイド溝104との間には隔壁105が形成されている。図13に示すように、仮留め孔103が形成された2つのセンタリングリブ101と異なる他の2つのセンタリングリブ101は、その軸線Aの径方向外方を向く面にピン3の長手方向に延在する溝106が凹設されている。
【0062】
図14に示すように、グロメット2の切り欠き63には、軸線Aを中心とした周方向に延在する梁110が掛け渡され、梁110の中間部には軸線A側に突出する仮留め爪111が形成されている。大径ボス部53の外縁には、直線状部分を有する固定片112が突設されている。
【0063】
第2実施形態に係るファスナ100は、グロメット2とピン3とが仮留めされた状態を維持することができる。グロメット2とピン3とを仮留め状態にするには、グロメット2及びピン3を同軸に配置し、かつセンタリングリブ101と梁110(空隙62及び切り欠き63)との軸線Aを中心とした周方向位置が対応するように配置した状態でピン3を貫通孔51に挿入する。これにより、梁110に形成された仮留め爪111は、センタリングリブ101に形成されたガイド溝104又は溝106内に進入し、ガイド溝104又は溝106にガイドされる。ピン3の貫通孔51に対する挿入が進むと、図15及び16に示すように、ガイド溝104内にある仮留め爪111は隔壁105を越えて、仮留め孔103内に突入し、仮留め孔103に係止される。この状態をファスナ100の仮留め状態という。溝106内にある仮留め爪111は、そのまま溝106に位置し続ける。
【0064】
ファスナ100は、仮留め状態とした後に、ファスナ1と同様にテールゲート80及びハイマウントストップランプ81と結合させることができる。仮留め状態からピン3を貫通孔51に対して更に挿入することで、仮留め爪111は仮留め孔103の基端側へと移動して仮留め孔103から離脱する。同時にグロメット2の係止爪65がピン3の凹部33内に突入し、仮結合状態となる。以後の結合状態への移行、結合状態から仮結合状態への復帰はファスナ1と同様である。なお、仮結合状態から、ピン3を貫通孔51から抜き去る際には、仮留め爪111はセンタリングリブ101の傾斜面102上を摺動し、ピン3がグロメット2に対して回転し、仮留め爪111が仮留め孔103に係合することはない。
【0065】
ファスナ100は、グロメット2の固定片112の直線状部分が、テールゲート80又はハイマウントストップランプ81に形成された係止構造に当接することによって、テールゲート80又はハイマウントストップランプ81に対して軸線A回りに回転不能に結合される。
【0066】
ファスナ100は、グロメット2とピン3とを仮留め状態として、納品及び使用できるため、部材の締結作業において準備及び作業が容易となる。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るファスナ200は、第2実施形態に係るファスナ100と同様に仮留め状態をとりうる構成となっており、ピン3に形成される仮留め孔201の位置がファスナ100の仮留め孔103の位置と相違する。ファスナ200について、ファスナ100(ファスナ1)と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0068】
図17に示すように、ファスナ200のピン3は、ファスナ100と概ね同様の構成を有するが、ファスナ100と異なり、センタリングリブ101上に仮留め孔103、ガイド溝104及び隔壁105が形成されていない。ファスナ200のピン3は、4つの第1リブ21の内、互いに相反する方向に突出する2つの第1リブ21の外面に仮留め孔201を有している。仮留め孔201は、ピン3の径方向中心側に凹設された有底孔である。ファスナ200では、仮留め孔201が、ファスナ100の仮留め孔103の位置よりもピン3の基端側に偏倚した位置に形成されている。
【0069】
図18に示すように、ファスナ200のグロメット2は、ファスナ100と概ね同様の構成を有し、梁110及び仮留め爪111を有している。仮留め爪111は、仮留め孔201に係合し、ファスナ200を仮留め位置に維持する。図18及び19に示すように、ファスナ200の仮留め位置では、センタリングリブ101はグロメット2の空隙62に配置され、各係合片61の係止爪65は、凹部33に配置される。
【0070】
ファスナ200は、ファスナ100と比較して、仮留め状態において、グロメット2の貫通孔51に対するピン3の挿入長さが長く、グロメット2からのピン3の突出長さが短いため、グロメット2に対するピン3の倒れが抑制され、安定性がよい。また、ファスナ200は、仮留め状態において、各係合片61の係止爪65が凹部33に突入しているため、更に安定性が高められている。
【0071】
ファスナ200のグロメット2は、ファスナ1と同様に貫通孔51の周囲にスロープ57を有している。ファスナ200のピン3は、ファスナ1と同様に、第2フランジ16のスロープ57と対応する位置に凸部19を有している。ピン3がグロメット2に対して回転し、凸部19がスロープ57上を下側から上側へと摺動することによってピン3は貫通孔51から抜け出す方向に変位する。
【0072】
また、ファスナ200のグロメット2は、大径ボス部53の先端から軸線A方向へと突出する突片204を周方向に90°間隔で4つ有している。ピン3の第2フランジ16の外周部には、突片204に当接可能な4つのカム片205が径方向外方に向けて突設されている。カム片205は、ピン3が回転されて凸部29がスロープ57上を摺動する際に、突片204に当接し、ピン3を抜去方向に変位させる。また、カム片205は、その突出端において、大径ボス部53の内周面に摺接可能になっている。カム片205が、大径ボス部53の内周面に摺接(当接)することによって、ピン3のグロメット2に対する姿勢が維持される(すなわち、倒れが抑制される)。
【0073】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、凸部19及びスロープ57は必須の構成ではなく、省略してもよい。また、実施形態では、ピン3の第1フランジ15がハイマウントストップランプ81の受容孔87に係合する構成としたが、ピン3とハイマウントストップランプ81との結合構造は公知の様々な形状を適用し得る。また、本発明に係るファスナは、テールゲート80やハイマウントストップランプ81に限らず、様々な部材を結合することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,100,200…ファスナ、2…グロメット、3…ピン、15…第1フランジ、16…第2フランジ、17…第1工具係合孔、19…凸部、21…第1リブ、24…通路部、25…係止凸部、26…係止面、27…曲面、31,101…センタリングリブ、33…凹部、34…段部、36…傾斜面、37…第2工具係合孔、51…貫通孔、52…基部、57…スロープ、58…底面、59…規制壁、61…係合片、62…空隙、63…切り欠き、65…係止爪、66…凹溝、80…テールゲート、81…ハイマウントストップランプ、83…挿通孔、87…受容孔、88…スリット、89…工具挿入孔、102…傾斜面、103,201…仮留め孔、104…ガイド溝、105…隔壁、106…溝、110…梁、111…仮留め爪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された基部及び前記貫通孔の一側における開口端の周縁部に突設された可撓性を有する複数の係合片を備えたグロメットと、前記貫通孔に相対回転可能に挿入されるピンとを有し、前記ピンが前記貫通孔の他側の開口端から挿入されることによって、前記係合片が前記ピンに押圧されて前記貫通孔の径方向外方に押し広げられるファスナであって、
前記係合片の前記ピン側を向く部分には係止爪が突設され、
前記ピンの外周面には、前記ピンの前記貫通孔に対する前記他側への相対変位を規制するべく、前記係止爪に係合する係止凸部と、前記ピンの前記貫通孔に対する前記他側への相対変位を許容するべく、前記係止爪が前記ピンに対して変位可能な通路部とが前記ピンの周方向に隣接して形成され、
前記ピンの挿入端には、工具係合部が形成され、
前記ピンは、前記係止爪が前記係止凸部に対応する回転位置と前記係止爪が前記通路部に対応する回転位置との間で、前記工具係合部に係合する工具によって前記グロメットに対して前記貫通孔の軸線回りに回転されることを特徴とするファスナ。
【請求項2】
前記ピンの外面の前記係止凸部及び前記通路部の前記挿入端側には、前記係止爪が突入可能な凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のファスナ。
【請求項3】
前記ピンの外面には、前記ピンの長手方向に延在するリブが延設され、
前記ピンを前記貫通孔に挿入する際に、前記貫通孔の周方向において隣り合う前記係合片間に前記リブが配置され、前記係止爪が前記凹部に対応する位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載のファスナ。
【請求項4】
前記リブは、前記通路部の前記ピンの周方向において前記係止凸部と隣り合う側と相反する側の部分から前記ピンの挿入端側へと延設され、前記挿入端側へと進むにつれて前記係止凸部側へと進むように前記ピンの長手方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項3に記載のファスナ。
【請求項5】
前記凹部と前記係止凸部との境界部には、前記凹部から前記係止凸部の突出端に到る傾斜面が形成されており、
前記凹部と前記通路部との境界部には、前記凹部側が前記通路部よりも低くなる段部が形成されていることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1つの項に記載のファスナ。
【請求項6】
前記段部は、前記ピンの基端側に進むにつれて、前記係止凸部側に進むように前記ピンの周方向に対して傾斜して延在していることを特徴とする請求項5に記載のファスナ。
【請求項7】
前記係合片の基端部の前記ピン側と相反する側の外面には、前記貫通孔の周方向に延在する凹溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つの項に記載のファスナ。
【請求項8】
前記ピンの外面には、仮留め孔が凹設され、
前記貫通孔の周方向において隣り合う前記係合片の間の部分には前記仮留め孔に係止される仮留め爪が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つの項に記載のファスナ。
【請求項9】
前記仮留め孔は、前記係止凸部よりも前記ピンの基端側に設けられていることを特徴とする請求項8に記載のファスナ。
【請求項10】
前記ピンの基端部には、外方へと突出したフランジが設けられ、
前記グロメットには、前記貫通孔と同軸に環状のボス部が設けられ、
前記ピンが前記貫通孔に挿入された状態で、前記フランジの突出端が前記ボス部の内周面に摺接可能となっていることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1つの項に記載のファスナ。
【請求項1】
貫通孔が形成された基部及び前記貫通孔の一側における開口端の周縁部に突設された可撓性を有する複数の係合片を備えたグロメットと、前記貫通孔に相対回転可能に挿入されるピンとを有し、前記ピンが前記貫通孔の他側の開口端から挿入されることによって、前記係合片が前記ピンに押圧されて前記貫通孔の径方向外方に押し広げられるファスナであって、
前記係合片の前記ピン側を向く部分には係止爪が突設され、
前記ピンの外周面には、前記ピンの前記貫通孔に対する前記他側への相対変位を規制するべく、前記係止爪に係合する係止凸部と、前記ピンの前記貫通孔に対する前記他側への相対変位を許容するべく、前記係止爪が前記ピンに対して変位可能な通路部とが前記ピンの周方向に隣接して形成され、
前記ピンの挿入端には、工具係合部が形成され、
前記ピンは、前記係止爪が前記係止凸部に対応する回転位置と前記係止爪が前記通路部に対応する回転位置との間で、前記工具係合部に係合する工具によって前記グロメットに対して前記貫通孔の軸線回りに回転されることを特徴とするファスナ。
【請求項2】
前記ピンの外面の前記係止凸部及び前記通路部の前記挿入端側には、前記係止爪が突入可能な凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のファスナ。
【請求項3】
前記ピンの外面には、前記ピンの長手方向に延在するリブが延設され、
前記ピンを前記貫通孔に挿入する際に、前記貫通孔の周方向において隣り合う前記係合片間に前記リブが配置され、前記係止爪が前記凹部に対応する位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載のファスナ。
【請求項4】
前記リブは、前記通路部の前記ピンの周方向において前記係止凸部と隣り合う側と相反する側の部分から前記ピンの挿入端側へと延設され、前記挿入端側へと進むにつれて前記係止凸部側へと進むように前記ピンの長手方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項3に記載のファスナ。
【請求項5】
前記凹部と前記係止凸部との境界部には、前記凹部から前記係止凸部の突出端に到る傾斜面が形成されており、
前記凹部と前記通路部との境界部には、前記凹部側が前記通路部よりも低くなる段部が形成されていることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1つの項に記載のファスナ。
【請求項6】
前記段部は、前記ピンの基端側に進むにつれて、前記係止凸部側に進むように前記ピンの周方向に対して傾斜して延在していることを特徴とする請求項5に記載のファスナ。
【請求項7】
前記係合片の基端部の前記ピン側と相反する側の外面には、前記貫通孔の周方向に延在する凹溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つの項に記載のファスナ。
【請求項8】
前記ピンの外面には、仮留め孔が凹設され、
前記貫通孔の周方向において隣り合う前記係合片の間の部分には前記仮留め孔に係止される仮留め爪が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つの項に記載のファスナ。
【請求項9】
前記仮留め孔は、前記係止凸部よりも前記ピンの基端側に設けられていることを特徴とする請求項8に記載のファスナ。
【請求項10】
前記ピンの基端部には、外方へと突出したフランジが設けられ、
前記グロメットには、前記貫通孔と同軸に環状のボス部が設けられ、
前記ピンが前記貫通孔に挿入された状態で、前記フランジの突出端が前記ボス部の内周面に摺接可能となっていることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1つの項に記載のファスナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−96546(P2013−96546A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242507(P2011−242507)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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