説明

ファブリックとファブリック・ラミネート

本発明により、吸水が減少した糸でできたファブリックとファブリック構造が提供される。このファブリックは、糸と、その糸の間の隙間とを含んでいて、糸の間のその隙間の平均幅は100μmよりも大きい。その糸のうちの少なくとも1本は多数の繊維で構成されている。その少なくとも1本の糸は、繊維の間に空隙を持ち、その空隙はポリマー材料で満たされている。隙間は開放状態のままにされ、その隙間のサイズは処理前と同じである。繊維の間の空隙にポリマー材料を満たされていて水がその空隙に吸収されることが妨げられるため、ファブリックの吸水が減少する。ポリマー材料は、実質的に糸の空隙の中にだけ位置し、その糸の外面の内側に埋め込まれた繊維を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、マルチフィラメントの糸から作られていて、空気透過率が大きくて水の吸収が減少した改良されたファブリックに関する。さらに、本出願は、障壁層を含んでいて、大きな空気透過率または大きな水蒸気透過率を示し、吸水が減少したファブリック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
水と接触した後に吸水能力が低下した衣類用ファブリックが望ましい。ファブリックのための糸は、マルチ-フィラメントまたはスフで構成することができる。繊維/フィラメントの束の形態になったこのような糸は、繊維/フィラメントの間に空隙を有する。糸が水などの液体と接触する場合、液体の大半は糸の空隙の中に浸み込む。この浸み込みプロセスによってテキスタイルが湿って重くなり、乾燥させるのが難しくなることがしばしばある。
【0003】
この欠点を克服する可能な1つの方法は、通常はフルオロカーボンをベースとしているファブリックに疎水性仕上げをしたものを用意することである。しかしこのようなファブリックは、ほんの数回洗濯しただけで撥水性を失う。
【0004】
撥水性を持つようにテキスタイルを処理する別の可能性は、W.L.ゴア&アソシエイツ社の名前のヨーロッパ特許第1 264 036 B1号に開示されている。このヨーロッパ特許第1 264 036 B1号には、フィラメントでできた糸からなり、糸の間に隙間を有するファブリックが記載されている。糸は実質的に全体がシリコーン被覆で覆われているが、そのシリコーン被覆は、糸の間の開口部/隙間を完全には満たしていない。糸の表面はシリコーンで完全に覆われており、糸の交点も同様である。使用するシリコーンは疎水性であるため、被覆されたテキスタイルは撥水性が大きい。その一方で、糸を完全に被覆すると、そのファブリックからなるテキスタイルの性質が失われることになる。そのファブリックのソフトでテキスタイルらしい風合いはもはや存在しない。被覆されたファブリックのべたつくような風合いは必ずしも望ましくはない。
【0005】
ネクステック・アプリケーションズ社に付与されたアメリカ合衆国特許第5,418,051 A号は、シリコーン・ポリマー組成物からなる内部被覆を含む可撓性多孔性ウェブに関する。このウェブは、モノフィラメント、糸、ステープルなどの形態の繊維を含んでいる。ウェブとして、望む任意の組成にできる繊維で織られた、または織られていないファブリックが可能である。ウェブは、フィルムとして、または被覆として、またはそのウェブの中にあってそのウェブの繊維の少なくとも一部を取り囲む層として存在する硬化可能なシリコーン・ポリマー含浸剤を含んでいる。内部被覆の領域にある隙間は、ほとんどが含浸剤で埋められるか塞がれる。ウェブの外面には実質的に含浸剤が存在しない。ウェブの繊維を実質的に完全に包み込んで内部層を形成するシリコーン・ポリマーとは、そのシリコーン・ポリマーの大半が、ウェブの内部にある繊維の表面部に位置していることを意味する。この内部被覆層があるため、ウェブの外面の繊維は被覆されておらず、水をウェブの中に浸出させることができる。こうなることを回避するには、フルオロ化合物をウェブに含浸させた後、シリコーン・ポリマーを付着させる。含浸されたこのようなウェブは、ほんの数回洗濯した後に撥水性を失うことが知られている。さらに、内部被覆層を有するこのようなウェブは空気を透過させない。なぜなら内部層の領域にある隙間はシリコーン・ポリマーで満たされているからである。
【0006】
本発明は、上記の欠点を克服する。
【0007】
本発明の1つの目的は、吸水率が非常に小さい改良されたファブリックとファブリック構造を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、吸水率が非常に小さくて空気透過率が大きいファブリックを提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、吸水率が非常に小さく、空気透過率が大きく、ソフトな風合いのファブリックを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、吸水率が非常に小さく、水蒸気透過率が大きく、防水特性を有するファブリックとファブリック構造を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、請求項1によるファブリックと、請求項41によるファブリック構造と、請求項52による方法が提供される。従属請求項は、そのファブリックとファブリック構造の実施態様に関する。
【0012】
本発明の第1の特徴では、ファブリックは、糸と、その糸の間の隙間とを含んでいて、糸の間のその隙間の平均幅は100μmよりも大きい。少なくとも1本の糸は多数の繊維で構成されている。その少なくとも1本の糸は、その繊維の間に空隙を持ち、その空隙はポリマー材料で満たされている。隙間は開放状態のままに留まり、そのサイズは処理前と同じである。
【0013】
ファブリックそのものを本発明に従って処理すること、またはファブリックを障壁層に接合して例えばラミネートの形態(本発明の第6の特徴)になったファブリック構造を本発明に従って処理することができる。
【0014】
一実施態様では、ファブリックのすべての糸が多数の繊維からなり、繊維の間にポリマー材料で満たされた空隙を有する。
【0015】
繊維間の空隙をポリマー材料で満たすことにより、水がその空隙に入って吸収されることが阻止される。ポリマー材料は実質的に糸の空隙の中だけに存在し、その糸の外面の内側に埋め込まれた繊維を有する。したがってその糸の外面は実質的に変化せず、少なくとも一部にポリマー材料がないままになる。少なくとも一部にポリマー材料がないとは、含浸プロセスの後、ポリマー材料のわずかな部分が非常に薄い層として糸の外面の一部の上に留まっていてもよいことを意味する。すると実質的にテキスタイルらしい風合いが変化しないファブリックになる。これは、ファブリックのテキスタイルらしい性質/特徴が維持され、ファブリックそのものが、柔らかく、優れた風合い、しっかりした掴み心地、べたつかいない風合いを持つことを意味する。
【0016】
満たされた空隙を有するこのような糸とそれぞれのファブリックは、糸の中に液体が浸出するのを阻止する。液体は、糸の外面にだけ付着できるが、糸の内部の空隙を湿らせることはできない。したがってファブリックの吸水率は非常に小さい。ファブリックの吸水率は、ブンデスマン試験(DIN EN 29865、1991年)によると、50%未満、または40%未満、または30%未満、または20%未満、または10%未満である。
【0017】
空気の透過と水蒸気の透過を保証するため、選択されたファブリックは、糸の間に平均幅が100μmよりも大きい隙間を持ち、その隙間は、上記の少なくとも1本の糸を満たすプロセスの後も開放された状態に留まる。さらに別の一実施態様では、隙間の平均幅は150μm〜250μmである。隙間の幅は実質的に変化せず、空隙が満たされた後でさえ開放された状態に留まる。そのため本発明によるファブリックの大きな空気透過率と水蒸気透過率につながる。
【0018】
空気透過率は、一実施態様では300リットル/m2/秒よりも大きい。さらに別の一実施態様では、空気透過率は500リットル/m2/秒よりも大きく、さらには1000リットル/m2/秒よりも大きい。さらに、ファブリックは、化学的流出率が90%よりも大きい(EN-ISO 6530)。
【0019】
本発明の第2の特徴では、ファブリックは、糸と、その糸の間の隙間とを含んでいて、糸の間のその隙間の平均幅は100μmよりも大きい。少なくとも1本の糸は多数の繊維で構成されている。その少なくとも1本の糸は、その繊維の間に空隙を持ち、その空隙はポリマー材料で満たされている。隙間は開放状態のままに留まり、DIN EN 29865(1991年)に言及されている10分間ブンデスマン降雨試験を続けて行なうと、ファブリックの吸水は20%未満である。一実施態様では、処理したファブリックの吸水は10%未満である。
【0020】
本発明の第3の特徴では、ファブリックは、糸と、その糸の間の隙間とを含んでいて、糸の間のその隙間の平均幅は100μmよりも大きい。少なくとも1本の糸は多数の繊維で構成されている。その少なくとも1本の糸は、その繊維の間に空隙を持ち、その空隙はポリマー材料で満たされている。隙間は開放状態のままに留まり、DIN EN 29865(1991年)に言及されている10分間ブンデスマン降雨試験を続けて行なうと、ファブリックの吸水は20%未満であり、ファブリックの空気透過率(EN ISO 9237、1995年)は500リットル/m2/秒よりも大きい。さらに別の一実施態様では、ファブリックの空気透過率は1000リットル/m2/秒よりも大きい。
【0021】
本発明の第4の特徴では、ファブリックは、糸と、その糸の間の隙間とを含んでいて、糸の間のその隙間の平均幅は100μmよりも大きい。少なくとも1本の糸は多数の繊維で構成されている。その少なくとも1本の糸は、その繊維の間に空隙を持ち、その空隙はポリマー材料で満たされている。水蒸気透過層がファブリックの一方の側に隣接しており、ファブリック構造を形成することができる。水蒸気透過層として、水蒸気透過障壁層または水蒸気透過テキスタイル層が可能である。その障壁層が液体不透過性および/またはガス不透過性になっていてもよかろう。多くの実施態様では、障壁層は膜またはフィルムであり、少なくとも1つの裏張りテキスタイル層と組み合わされる。
【0022】
“水蒸気透過層”という用語は、その層を水蒸気が通過するのを保証するあらゆる層を意味する。その層として、この明細書に記載したテキスタイル層または障壁層が可能であろう。障壁層は、水蒸気透過抵抗(Ret)として測定した水蒸気透過率が20m2/Pa/W未満のものが可能である。
【0023】
この明細書では、“障壁層”という用語は、空気の侵入をできるだけ少なくし、理想的にはさまざまな他のガス(例えばガス状化合物の攻撃)に対する障壁となるフィルム、膜、被覆と定義する。障壁層は、空気不透過性および/またはガス不透過性である。障壁層は、空気透過率が25リットル/m2未満である場合に空気を透過させないと見なされ、特別な実施態様では、空気透過率が5リットル/m2未満である場合に空気を透過させないと見なされる(EN ISO 9237、1995年)。さらに別の一実施態様では、障壁層は、液体の水の浸入をできるだけ少なくし、理想的にはさまざまな液体状化学物質の攻撃に対する障壁にもなる。この層は、少なくとも0.13バールの圧力で液体の水の浸入を阻止するのであれば、液体不透過性である。水の浸入圧は、この明細書に記載してあるように、ISO 811に記載されているのと同じ条件で障壁層のサンプルについて測定される。
【0024】
障壁層は、一実施態様では、空気は通さないが水蒸気は通す(通湿性)という性質を与えるため、少なくとも1つの水蒸気透過性かつ空気不透過性の膜を含んでいる。この膜は、液体も通さず、少なくとも水を通さないことが好ましい。
【0025】
この明細書で用いるのに適した可撓性で水不透過性かつ水蒸気透過性の1つの膜が、アメリカ合衆国特許第3,953,566号に開示されている。この特許には、多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料が開示されている。この多孔性延伸PTFEは、フィブリルが互いに接続された節を特徴とする微細構造を有する。望むのであれば、延伸PTFEを疎水性および/または疎油性の被覆材料で被覆することによって水不透過性を大きくできる。
【0026】
水不透過性かつ水蒸気透過性の膜は、微孔性材料でもよかろう。微孔性材料としては、例えば、高分子量の微孔性ポリエチレンまたはポリプロピレン、微孔性ポリウレタンまたはポリエステル、親水性モノリシック・ポリマー(ポリウレタンなど)がある。
【0027】
障壁層と本発明のファブリックの組み合わせにより、快適で水を容易にはじく衣類が提供される。“衣類”とは、身に着けるあらゆる製品を意味し、履物、帽子、手袋、シャツ、外套、ズボンなどが挙げられる。
【0028】
本発明の第5の特徴では、ファブリックは、糸と、その糸の間の隙間とを含んでいて、糸の間のその隙間の平均幅は100μmよりも大きい。少なくとも1本の糸は多数の繊維で構成されている。その少なくとも1本の糸は、その繊維の間に空隙を持ち、その空隙は、少なくとも1種類のシリコーンからなるポリマー材料で満たされている。多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)でできていて水蒸気を通すが液体の水は通さない膜が、ファブリックの一方の側に隣接している。一実施態様では、この膜を、少なくとも1種類の不連続な接着剤を用いて少なくとも1つの裏張りテキスタイル層とラミネートにする。
【0029】
本発明の第6の特徴では、ファブリック構造は少なくとも2つの層を含んでいる。第1の層は、糸と、その糸の間の隙間とを含むファブリックであり、糸の間のその隙間の平均幅は100μmよりも大きい。少なくとも1本の糸は多数の繊維で構成されている。第2の層は、第1の層の一方の側に接合された水蒸気透過障壁層である。糸は繊維の間に空隙を持ち、その空隙はポリマー材料で満たされている。
【0030】
障壁層は、液体不透過性および/または空気不透過性にすることもできる。
【0031】
少なくとも1種類の接着剤で2つの層を互いに付着させてファブリック・ラミネートを形成する。
【0032】
ポリマー材料は、シリコーン、非膨張ポリウレタン、アモルファスなペルフルオロポリマー、ならびにこれらの混合物からなるグループの中から選択することができる。ポリマー材料は、毛管力によって糸の空隙の中に浸出するよう、粘性率が非常に小さい必要がある。さらに、粘性率が小さいことで、閉じられた膜がファブリックの隙間の間に形成されることが阻止される。したがって隙間は、処理後でさえ開いた状態が維持される。使用可能なポリマー材料は、空隙が満たされる前は3000mPa/秒未満の粘性率を持つ。さらに別の一実施態様では、ポリマー材料の粘性率は2000mPa/秒未満である。別の一実施態様では、ポリマー材料の粘性率は1000mPa/秒未満である。さらに、ポリマー材料は、液体中で実質的に膨張しない性質、および/または液体に溶けない性質を持つ。ポリマー材料は、架橋していてもいなくてもよい。
【0033】
市販されているアモルファスなペルフルオロポリマーは、Teflon(登録商標)AF(デュポン社)、Hyflon(登録商標)AD(ソルヴェー・ソレクシス社)、Cytop(登録商標)(旭硝子社)として知られている。Teflon(登録商標)AFは、デュポン社が製造しているアモルファスなペルフルオロポリマーの1つのファミリーであり、2,2-ビス-トリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソール(PDD)を他のフッ素含有モノマーと共重合させることによって製造される。現在のところ、市販されているTeflon(登録商標)AFはPDDとテトラフルオロエチレン(TFE)のコポリマーであり、Teflon(登録商標)AF1600およびTeflon(登録商標)AF2400として知られている。
【0034】
特別な実施態様では、ポリマー材料は少なくとも1種類のシリコーンからなる。
【0035】
本発明では、より快適でより保護された改善されたファブリックを記述する。このファブリックは、糸の内部の満たされた空隙と糸の間の開いた隙間があるため、もはや水を浸出させず、非常に小さな水吸収率を示し、再乾燥プロセスがより速くなり、冷たい架橋部がなく、雨の後の質量増加が非常に少ない。さらに、このファブリックは、開いた隙間に基づく大きな水蒸気透過率を持つ。
【0036】
本発明の含浸ファブリックは、燃焼に対する抵抗力と非溶融特性を示す。非溶融特性は、消防士のためのファブリックの用途で非常に有用である。非溶融特性は、縁部折り曲げ試験(NFPA 1971)によって証明される。
【0037】
本発明の含浸ファブリックは、処理されていないファブリックと比べて燃焼に対する抵抗力が向上している。燃焼に対するこの向上した抵抗力は、充填材料としてのシリコーンによって維持される。なぜなら使用されるシリコーンは、LOI(限界酸素指数)が大きいからである。シリコーンのLOIは約24〜35である。被覆されたファブリックの燃焼に対する抵抗力を測定する1つの方法が、ドイツ/ヨーロッパ基準DIN-EN 532(1994年)に記載されている。ここには、テキスタイルとテキスタイル材料への炎の広がりを測定する方法が記載されている。
【0038】
本発明の第7の特徴には、ファブリックの吸水率を最小にする方法が記載されている。この方法は、
a)糸と、その糸の間の隙間とを含んでいて、その隙間の平均幅は100μmよりも大きく、少なくとも1本の糸は多数の繊維からなり、その繊維の間には空隙がある構成のファブリックを用意するステップと、
b)粘性率が3000mPa/秒未満の液体ポリマー材料を用意するステップと、
c)空隙をポリマー材料で満たす一方で、隙間は開放状態のままにするステップを含んでいる。
【0039】
ステップc)の後にファブリックを硬化させるステップd)がさらに含まれる。ステップd)の後にファブリックを処理して疎水性にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】多数の繊維を有する処理されていない糸の断面である。
【図2】多数の繊維を有する処理されていない糸を液体に接触させた後の断面である。
【図3】本発明のファブリックである。
【図4】本発明による処理された糸の断面図である。
【図5】本発明による処理された糸を液体に接触させた後の断面図である。
【図6】本発明の一実施態様であり、ファブリックに接合された障壁層を示している。
【図6A】障壁層がテキスタイル層と組み合わされた本発明の一実施態様である。
【図6B】2層ラミネートを含むファブリック構造が形成された本発明の一実施態様である。
【図6C】3層ラミネートを含むファブリック構造が形成された本発明の一実施態様である。
【図7】ファブリック中の処理されていない糸の断面の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図8】図7の処理されていない同じ糸の断面を拡大したSEMである。
【図9】図7および図8の同じファブリックの処理された糸の断面のSEMである。
【図10】図9の処理された同じ糸の断面を拡大したSEMである。
【図11】図9と図10の処理されたファブリックの表面のSEMである。
【図12】ファブリック・ラミネートの断面のSEMである。
【図13】図12のファブリック・ラミネートの断面を拡大したSEMである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、糸20の撥水性が改善された結果としてファブリック10で使用される糸20の吸水が減るファブリック10を記述する。本発明は、特に、ファブリック10を製造する元になる多数の繊維からなる少なくとも1本の糸20の開放された空隙に何らかの液体が保持されるのを阻止する処理をしたファブリック10を記述する。本発明は特に、ファブリック10で用いられる少なくとも1本の糸20が毛管現象によって湿るのを阻止する。
【0042】
吸水とは、水に所定の期間浸したときにファブリック10によって吸収される水の量を意味する。ファブリックによって吸収される水の質量を乾燥したファブリックの質量で割った値が、吸水率である。
【0043】
図1は、ファブリックのための典型的な糸の概略断面図であり、この糸そのものは、繊維またはフィラメント50の束である。
【0044】
“ファブリック”とは、糸から作られた材料を意味する。特に、この明細書では、“ファブリック”という用語は、糸からなり、その糸の間に隙間があるシート状の構造(織られたもの、または織られていないもの)を意味する。
【0045】
この明細書では、“糸”という用語は、多数の繊維やフィラメントなどが束の形態になったものからなり、編んだり織ったりするのに適していてファブリックの形成に用いられる連続的なストランドを意味する。糸は、撚り合わされた多数のフィラメント(紡績糸)として、または撚らずに互いに集められた多数のフィラメント(撚りなしの糸)として登場する。糸は、間に空隙が規定された複数の互いに関連した繊維、または互いに絡み合った繊維からなる。糸は、単一のモノフィラメントで構成することもできる。
【0046】
この明細書では、“空隙”という用語は、糸の繊維またはフィラメントの間の空いた空間/体積を意味する。空隙は、糸の内部の繊維間の毛管空間として説明することもできる。空隙は、通常は空気で満たされている。空隙の平均サイズは、糸の内部に繊維/フィラメントがどれくらいきつく配置されているかに応じ、0〜10μmが可能である。
【0047】
この明細書では、“繊維”という用語は、長くて、折り曲げ可能で、凝集性がある、自然または人工の糸状の物体を意味し、モノフィラメント、ステープル、フィラメントなどがある。繊維は、公知の技術などで形成できるユニットの形態であると見なすことができる。
【0048】
この明細書では、“フィラメント”という用語は、長さの決まっていない繊維を意味する。
【0049】
この明細書では、“ラミネート”という用語は、接着剤などで接合された少なくとも2つの個別の層を意味する。
【0050】
この明細書では、“ファブリック構造”という用語は、少なくとも1つの水蒸気透過層に少なくとも隣接しているファブリックを意味する。その水蒸気透過層は、ファブリックの隣にあって接合されずに引っ掛かっていてもよい。特別な一実施態様では、上記の少なくとも1つの水蒸気透過層は、ファブリックの少なくとも一方の側に接合される。特別な一実施態様では、ファブリックは、この明細書に記載した障壁層を含むラミネートに隣接する。別の特別な一実施態様では、ファブリック構造は、ファブリックとこの明細書に記載した少なくとも1つの障壁層で形成されたラミネートである。
【0051】
図1の糸20は、糸20の個々の繊維50の間にいくつかの空隙60がある多数の繊維50からなる。糸20が水などの液体と接触すると、その液体はまず糸20の外面22に留まり、次いで繊維50の間に浸入して糸20の空隙を満たす。
【0052】
糸の選択は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、再生セルロース、酢酸セルロース、レーヨン、アセテート、アラミド、ガラス、モダクリル、木綿、羊毛、絹、リネン、ジュート、ならびにこれらの混合物からなるグループの中からなされる。糸の繊維は、連続した多数のフィラメント、スフ、またはこれらの組み合わせを含んでいる。ファブリックの形成に用いられる繊維は特殊加工されていない。本発明の一実施態様では、糸は、ポリエステルからなるフィラメントを含んでいる。別の一実施態様では、糸は、50%のポリエステル・スフと50%の再生セルロース・スフ(例えばLyocell)を含んでいる。ファブリックの形成に用いられる糸は、従来から知られている多数の技術を利用して製造できる。使用する糸の線密度は、充填プロセスまたは含浸プロセスの前に80dtex〜300dtexであることが好ましい。
【0053】
糸20は、例えば特殊加工されていないポリエステルまたはポリアミドを含んでいるが、撚りの程度は約600回/mである。
【0054】
ファブリックは、単一のモノフィラメントからなる糸も含むことができる。単一のモノフィラメントからなるそのような糸は空隙を持たないため、満たされることはありえない。このファブリックは、多数の繊維からなる糸と、単一のモノフィラメントからなる糸の混合物を含むことができる。
【0055】
特別な一実施態様では、ファブリックのすべての糸が多数の繊維からなる。
【0056】
図2は、多数の繊維50からなる糸20において、糸20の空隙が水などの液体40で完全に満たされている様子を示している。その結果、糸20は以前よりも重くなり、糸20でできたファブリック10は望ましくない重さを獲得する。多くの場合、水の吸収量は100g/m2を超える可能性がある。空隙60から素早く液体を除去することはほとんど不可能である。
【0057】
図3は、本発明によるファブリック10を示している。ファブリック10は糸20からなり、その糸を経方向と緯方向に用いて織布が形成される。この実施態様では、すべての糸20は、それ自体が、糸20の間に隙間30を有する繊維またはフィラメント50の束である。ファブリック10は充填プロセスの後でさえ糸20の間の隙間30が満たされないままに留まるように構成されている。したがって湿気を身体から隙間30を通じて外部に運ぶことができるため、このファブリックは、着用者の快適さに寄与し続けることができる。隙間30は、水蒸気透過率と空気透過率が大きくなるためには100μmよりも大きい必要がある。一実施態様では、隙間30は、少なくとも300リットル/m2/秒という空気透過率を保証する。さらに別の一実施態様では、隙間30は、少なくとも500リットル/m2/秒という空気透過率を保証する。
【0058】
本発明では、糸20にポリマー材料70が満たされる/含浸される。そのポリマー材料70はそれぞれの糸20の繊維またはフィラメント50の間に浸入し、その間の空隙を満たす(図4参照)。一実施態様では、糸20の空隙60は完全にポリマー材料70で満たされる。さらに別の一実施態様では、空隙60はほぼポリマー材料70で満たされるため、いくつかの空隙60、特に糸20の中心にある空隙60が満たされずに残る。特別な一実施態様では、少なくとも糸20の外面22の内側にある繊維50がポリマー材料70に埋め込まれている。この実施態様では、糸20の外面22には実質的にポリマー材料70がない。
【0059】
別の一実施態様では、ポリマー材料70の少なくとも一部が糸20の外面22の周囲に薄い外皮を形成する。
【0060】
糸の空隙60が満たされているため、水などの液体は糸の繊維50またはフィラメント50の間に浸入することができない。したがってファブリック10の水の吸収が顕著に少なくなる。
【0061】
ポリマー材料70は、少なくとも1種類のシリコーンからなる。別の一実施態様では、ポリマー材料70は、少なくとも1種類の非膨張性ポリウレタンからなる。さらに別の一実施態様では、ポリマー材料70は、アモルファスなペルフルオロポリマー(例えばTeflon AF(登録商標))からなる。
【0062】
空隙60を満たす前のポリマー材料70は、粘性率(初期粘性率)が3000mPa/秒未満の液体として存在している。別の一実施態様では、空隙60を満たす前のポリマー材料70は、粘性率が2000mPa/秒未満の液体として存在している。さらに別の一実施態様では、空隙60を満たす前のポリマー材料70は、粘性率が1000mPa/秒未満の液体として存在している。ポリマー材料70の粘性率が3000mPa/秒未満、2000mPa/秒未満、1000mPa/秒未満だと、そのポリマー材料70は、繊維またはフィラメント50の間に浸入して空隙60を満たすと同時に隙間30から自由に出ていくことができる。特にキシロールやペトロールなどの公知の溶媒を用いると、ポリマー材料70のその小さな粘性率に到達することができる。溶媒は、望む粘性率を得るのに必要な量を添加することができる。
【0063】
一実施態様では、シリコーンをポリマー材料70として用いる。使用するシリコーンは、RTVタイプ、LSRタイプ、またはこれらの混合物が可能である。これらのシリコーンは2つの部分からなり、使用する前にその2つの部分を混合する。
【0064】
RTV(室温硫化)シリコーンの硬化プロセスは、室温において混合点から始まるが、温度を上げると加速される。好適な硬化温度は120℃〜180℃である
【0065】
LSR(液体シリコーン・ゴム)シリコーンは硬化させるのに高温(すなわち160℃〜200℃)を必要とする。
【0066】
硬化時間は、糸の中に含まれるシリコーンの量、ラインの速度、加熱領域の長さ、加熱領域のために選択した温度に依存する。
【0067】
ポリマー材料70、特にシリコーンは、1種類または数種類の添加剤を含むことができる。使用する添加剤として、反射剤、うどん粉病抵抗剤、風合い変更剤、粘性剤、流動剤、可撓剤、紫外線吸収材、充填剤、導電剤、熱伝導剤、放射線吸着剤、難燃剤、放射線反射剤が可能である。
【0068】
難燃剤として、ホウ素化合物、アルミナ三水和物、ハロゲン含有化合物を含むアンチモン酸化物、水酸化マグネシウム、有機または無機のリン化合物などが可能である。
【0069】
被覆されていないファブリックは、ポリマー材料70を付着させるための基部として用いられる。
【0070】
ファブリック10は、質量が20〜500g/m2である。一実施態様では、ファブリック10は質量が75〜350g/m2である。さらに別の一実施態様では、ファブリックの被覆されていない状態の質量は約100g/m2である。
【0071】
ファブリック10は、織られていても編まれていてもよい。ファブリック10は経糸14と緯糸16で製造され、糸の数は10〜40糸/cmである。
【0072】
付着させるポリマー材料70の量は、ファブリック10の質量に応じ、約35〜55g/m2である。残っている隙間30は、平均の直径が初期のファブリック10から実質的に変化していない。なぜならポリマー材料70は、糸の繊維またはフィラメント50の間の空隙60の中にだけ位置するからである。いくつかの実施態様では、ポリマー材料の薄い表皮層が糸20の外面22の周囲の一部に残ったままになってよく、そうなっていても隙間30の直径には無視できる影響しかない。
【0073】
図3のファブリック10は、多数の繊維50からなる糸20でできた織られたファブリック10を示している。織られた糸と糸の交点の間にはいくつかの隙間30が形成される。これらの隙間30は平均幅が100μmよりも大きく、本発明のファブリック10の大きな水蒸気透過率と空気透過率を保証している。糸20の断面は、それぞれの糸20が多数の繊維またはフィラメント50からなることを示している。繊維50の間の空隙60はポリマー材料70で満たされ(図4参照)、糸20の空隙に液体が浸入するのを阻止する。ポリマー材料は、少なくとも1種類のシリコーンで構成することができる。
【0074】
本発明のファブリック10にはポリマー材料70が含浸され、ポリマー材料70が糸20の空隙を満遍なく満たす。したがって、処理されていないファブリックと比べてファブリック10のテキスタイルとしての性質が変化せずに残る。また、隙間30の平均幅が実質的に変化しないため、水蒸気透過率(通湿性)と空気透過率の値も相変わらず非常に大きい。その一方で、水の吸収率は顕著に低下する。
【0075】
本発明の含浸ファブリックの製造法を以下に説明する。粘性率が3000mPa/秒未満の液体ポリマー材料を含浸溶液として用意する。特別な一実施態様では、ポリマー材料は、小さな粘性率を保証する溶媒を含んでいる。この含浸溶液は、2つのクロム製ローラーの間に位置する。一方のローラー(塗りローラー)だけが移動し、上方にある他方のローラーは動かない。上方のローラーとその下にある塗りローラーのギャップを正確に設定することにより、溶液を計量して塗りローラーの上に載せる。したがってローラー間のギャップは、ファブリックの厚さに応じて約50〜150μmである。溶液は、ファブリックが塗りローラーのまわりを通過するときに含浸溶液と接触してファブリックの糸構造の中に浸入するため、その塗りローラーから“ぬぐい”取られる。過剰な溶液があれば塗りローラーの表面に残って糸の間の隙間は開放状態のままになるため、隙間に溶液は存在しない。その後、炉の中で約2分間にわたって120℃〜160℃にて硬化プロセスを実施する。いくつかの実施態様では時間は1分間である。
【0076】
含浸溶液として、粘性率が3000mPa/秒以下のあらゆるポリマー材料を使用することができる。ファブリックと接触させる前のポリマー材料は、粘性率(初期粘性率)が3000mPa/秒未満の液体として存在する。別の一実施態様では、ファブリックと接触する前のポリマー材料は、粘性率が2000mPa/秒未満の液体として存在する。さらに別の一実施態様では、ファブリック10と接触する前のポリマー材料は、粘性率が1000mPa/秒未満の液体として存在する。
【0077】
図4は、本発明の一実施態様による糸20の断面を示している。繊維50の間の空隙60がポリマー材料70で満たされている。その結果、繊維50がポリマー材料70の中に完全に埋もれた断面になる。図4は、ポリマー材料70が断面の中央に集まっていて、糸20の外面22にはポリマー材料70がない状態になっている本発明の一実施態様を示している。外面22の少なくとも一部をポリマー材料70の薄い表皮で覆うことも可能である。
【0078】
図5は、水などの液体40が本発明のファブリック10に接触したときの状況を示している。ファブリック10の糸20の空隙60がポリマー材料70で満たされているため、液体は糸20の外面22とだけ接触することができる。糸20の満たされた空隙60は、液体40が糸に吸収されるのを阻止する。
【0079】
図6は、本発明の一実施態様によるファブリック10を示しており、少なくとも1つの水蒸気透過層90がそのファブリック10の一方の側に隣接してファブリック構造を形成している。水蒸気透過層90の少なくとも1つの側に裏張りテキスタイル層86を付加することが可能である。裏張りテキスタイル層86は、衣類で着用者の方を向いた最も内側の層を形成することができる。裏張りテキスタイル層86は、水蒸気透過層90の少なくとも一方の側に付着させること、または水蒸気透過層90に接合せずに引っ掛けることができる。
【0080】
本発明の一実施態様では、水蒸気透過層90が障壁層になっていてもよい。本発明のさらに別の一実施態様では、水蒸気透過層90が少なくとも1つのテキスタイル層になっていてもよい。このテキスタイル層は、少なくとも1つのシームまたは少なくとも1種類の接着剤によってファブリック10の一方の側に接合することもできる。衣類の最も内側の層をそのテキスタイル層で形成でき、最も外側の層を本発明のファブリック10で形成できることが好ましい。テキスタイル層の機能は、主に着用者の汗を染み込ませることであるため、いわゆるプッシュ・プル・ファブリックになることができる。
【0081】
障壁層として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE、ポリウレタン、または他の適切な物質のいずれかを含む膜、フィルム、ラミネートが可能である。
【0082】
ファブリックで将来衣類になったときに外側になるのとは反対側を別の層に隣接させて多層複合体を形成することができる。一例では、ファブリックは、別の層とラミネートにされるか、別の層で被覆される。例えばファブリックの一方の側を障壁層に取り付けたり接着したりすることができる。障壁層は、水は通さないが水蒸気は通すフィルムまたは膜などであり、例えばモノリシックで通湿性のあるポリウレタンまたはポリエステルポリエーテルのフィルム、または多孔性(特に微孔性)のポリエチレンまたはポリプロピレン、またはポリウレタンが挙げられる。膜またはフィルムの一実施態様は、アメリカ合衆国特許第3,953,566号に開示されている延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜で構成される。この膜は、フィブリルによって互いに接続された節を特徴とする多孔性微細構造を持つ。この膜は液体の水が通過するのに抵抗するが、水蒸気は透過させる。この膜は、1〜100g/m2の質量にすることができる。
【0083】
ePTFEを含む膜またはフィルムでは、ePTFEに疎水性含浸剤を含浸させることができる。ePTFEは、表面に、水に抵抗するが水蒸気は透過させる材料(例えばアメリカ合衆国特許第4,194,041号に開示されているタイプの水蒸気透過性ポリウレタン)からなるフィルムまたは被覆の連続層を持つことができる。水蒸気透過性ポリマーからなるこの連続層は、水分子を輸送するという意味で親水性ポリマーであるため、ここでは親水性ポリマーと呼ぶことにする。この親水性の層は拡散によって水を選択的に輸送するが、圧力による液体または空気の流れはサポートしない。したがってポリマーからなるこの連続層は、水分、すなわち水蒸気は運ぶが、液体の水や、空気中を運ばれる微粒子、微生物、油、これら以外の汚染物質などの通過を妨げる。
【0084】
水蒸気透過障壁層は、一実施態様では、ファブリック10の一方の側に直接付着させることができる。ファブリック10に障壁層を直接付着させることは、不連続な接触層を用いて実現できる。別の実施態様では、少なくとも1つのシーム(例えば接着性シーム、溶接式シーム、縫合するシーム)を利用して取り付けることができる。
【0085】
本発明のファブリック10を水蒸気透過性障壁層と組み合わせて空気不透過性および/または液体不透過性を提供することができる。
【0086】
本発明の一実施態様では、障壁層は少なくとも空気不透過性である。“空気不透過性”という用語は、障壁層、または障壁層と組み合わせたファブリック10の空気透過率が25リットル/m2未満であり、いくつかの実施態様では5リットル/m2未満であることを意味する。
【0087】
さらに別の一実施態様では、障壁層は液体不透過性である。“液体不透過性”という用語は、障壁層、または障壁層と組み合わせたファブリック10の水浸入圧が0.13バールよりも大きいことを意味する。
【0088】
別の一実施態様では、処理されたファブリック10を、空気不透過性かつ液体不透過性かつ水蒸気透過性の障壁層と接合する。
【0089】
図6Aは、ファブリック層10と水蒸気透過層90を含むファブリック構造80が形成された本発明の一実施態様を示している。水蒸気透過層90は、障壁層92と少なくとも1つの裏張りテキスタイル層86で形成される。裏張りテキスタイル層86は、織られていても、織られていなくても、編まれていてもよく、多彩な材料(例えばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなど)で製造できる。裏張りテキスタイル層86は、障壁層92の一方の側に取り付けられる。
【0090】
本発明の一実施態様では、障壁層92と裏張りテキスタイル層86は多層ラミネートを形成する。これは、ラミネートを作り上げている個々の層を接着剤または他の接合法によって接合できることを意味する。
【0091】
さらに別の一実施態様では、障壁層92に、裏張りテキスタイル層86に加えて別のテキスタイル層を設けることができる。その別のテキスタイル層は、障壁層92で裏張りテキスタイル層86があるのとは反対側に接着剤によって接合される。この3層ラミネートは、ファブリック層10に隣接した位置で接合せずに引っ掛けてもよいし、ファブリック10に接着剤で接合してもよい。
【0092】
図6Bは、ファブリック構造80が2層ラミネート85で形成された本発明の一実施態様を示している。このラミネート85は、水蒸気透過性障壁層92と、本発明による織られた含浸ファブリック層10を含んでいる。障壁層92とファブリック層10の接合は、不連続な接着剤95(例えば複数の点状の接着剤、ネット状の接着剤、接着剤の粉末)を通じてなされる。
【0093】
本発明の別の例では、ラミネート85は処理されていないファブリック層を用いて形成され、あとでそのラミネートに本発明に従ってポリマー材料が含浸される。そうすることによってファブリックに含まれる糸の空隙がポリマー材料で満たされるが、ファブリック層10の隙間は開放されたままに留まり、障壁層92は処理されないままに留まる。
【0094】
図6Cは、図6Bのラミネート85において、障壁層92の他方の側に裏張りテキスタイル層86が配置されたものを示している。この実施態様では、裏張りテキスタイル層86は不連続な接着剤95を通じて障壁層92に接合され、3層ラミネートを形成する。裏張りテキスタイル層86は、本発明による含浸プロセスの前または後に障壁層92に接合することができる。
【0095】
衣類は、ズボン、上着、帽子、手袋などの形態が可能である。
【0096】
衣類または衣類の一部を準備するには、処理されたファブリック10と水蒸気透過層90を別々の部分にすること、または水蒸気透過層90を処理されたファブリック10に接合することができる。
【実施例1】
【0097】
100%ポリエステル(PES)の糸でできたファブリックを用いる。このファブリックは、撚りの程度が約600回/mでdtexが100f36×2のフィラメント糸でできた織られたテキスタイルである。糸は特殊加工されていない。糸の間の隙間は、経糸と緯糸の方向の直径が約180μm〜230μmである。このような織られたテキスタイルは、SR-ヴェバテックス社(ドイツ国)から入手できる。
【0098】
図7と図8は、含浸前の実施例1の糸の断面を異なる倍率で示したSEMである。
【0099】
図7は、処理していない何本かの糸20が、糸20の間に隙間30を有する織られた構造の中で繊維の束の形態になったもののSEMを示している。それぞれの糸20は、フィラメントの形態の多数の繊維50を含んでいる。
【0100】
図8は、多数の繊維50からなる図7の処理されていない糸20の断面をより拡大したSEMを示している。糸20の繊維50の間と糸20の断面内にはサイズが異なるいくつかの空隙60がある。
【0101】
上に説明した方法を利用し、ファブリック10にシリコーン溶液を含浸させた。シリコーン溶液は、ヴァッカー・ヘミー社(ドイツ国)のSilGel 612であり、1000mPa/秒という粘性率を持つ。塗りローラー上のこのシリコーン溶液の厚さは約70μm(=ローラー間のギャップ)である。処理後のファブリック10の硬化時間は、160℃の温度で約1分間であった。
【0102】
図9は、織られたテキスタイルの処理された糸20を示している。糸20の外面の一部はシリコーン材料からなる非常に薄い表皮で覆われている。糸20の断面は、繊維50の間の空隙60が、ポリマー材料70として機能するシリコーン材料で満たされている様子を示している。糸20の間の隙間30は開放されていて、シリコーン材料で満たされていない。
【0103】
図10は、図9の処理された糸をより大きな倍率で示している。繊維50の間の空隙60はシリコーン材料(ポリマー材料)で満たされていて、空いた空隙は実質的に残されていない。すべての繊維50がポリマー材料70の中に埋め込まれている。したがって液体などの他の材料が糸20の内部で繊維50の間に吸収されることはありえない。
【0104】
図11は、この例による、処理されて織られた含浸ファブリック12の表面の写真である。経糸14と緯糸16が織られたファブリック12を形成していて、糸14と16の間に隙間30がある。ファブリック12の隙間30は開放されていて、シリコーン材料で閉じられてはいない。したがってこのファブリックはやはり水蒸気透過性かつ空気透過性である。さらに、それぞれの糸20の繊維束構造が見られる。したがって外面22の内側の繊維50だけがシリコーン材料70に埋め込まれていて、外面22の少なくとも一部にはポリマー材料70がない。
【0105】
表1は、処理前と処理後のファブリック10の技術的特徴を示している。
【0106】
【表1】

【0107】
付着させるポリマー材料70としてのシリコーンの量は約30〜40g/m2である。処理されたファブリック10の水蒸気透過率(通湿性)は低下するが、それでも大きい。この低下の理由は、空隙60がポリマー材料70で閉じられているために糸20の空隙60をもはや水蒸気を通過させるのに利用できないというものである。水蒸気の通過は、糸20の間の隙間30を通じてだけ起こる。処理されていないファブリックと処理されたファブリック10の空気透過率は同じである。なぜなら処理されたファブリックの隙間30の幅は処理されていないファブリックの幅と同じだからである。
【0108】
表2は、処理されていないファブリックと処理されたファブリックの吸水率を2つの方法について示している。
【0109】
【表2】

【0110】
試験Iと試験IIの主な違いは、試験IIでは、ブンデスマン試験の後にファブリックを揺すってファブリックの表面に積み重なった液滴などの液体を除去したことである。試験Iに関しては、処理されたファブリックは吸水が10%未満に低下する。家庭で数回洗濯した後でさえ、吸水はまだ20%未満である。試験IIでは、処理されたファブリックが実質的に水を吸収しないことを証明している。
【0111】
本発明によるファブリックを“滑り試験”でテストした。結果を表3に示す。
【0112】
表3は、“滑り試験”の結果を示している。
【0113】
【表3】

【0114】
“滑り試験”は、本発明のファブリック、または本発明によるラミネートのファブリック層からなるテキスタイルの改善された風合い(性質)を証明するために開発された。
【0115】
比較用のファブリックは、ヨーロッパ特許第1 264 036号に従って製造する。このようなファブリックは、糸の間に隙間を持つ糸からなる織られたテキスタイルを含んでいる。糸は実質的に全体がシリコーン被覆で覆われているが、シリコーン被覆は、糸の間の隙間を完全には満たさない。糸の表面はシリコーンで完全に覆われている。
【0116】
実施例1の処理されていないファブリックと処理されたファブリックからなるテキスタイルの風合い/性質に関する特性は、“滑り試験”を行なってみると実質的に同じである。本発明のファブリックからなるテキスタイルの感覚はしたがってシリコーン材料を含浸させた後も維持される。比較のため、糸がシリコーン材料で完全に覆われたファブリックは、この試験で約3倍大きな数値を示す。これは、テキスタイルの性質が非常に悪いことを示している。
【実施例2】
【0117】
実施例1に記載した処理されていないファブリックを用いた。標準的なラミネーション法を利用し、このファブリックを防水かつ水蒸気透過性の障壁層とのラミネートにした。ePTFEでできた多孔性の膜を障壁層90として用いた。この膜はアメリカ合衆国特許第3,953,566号と第4,187,390号に従って製造し、アメリカ合衆国特許第4,194,041号に記載されている水蒸気透過性の親水性ポリウレタンからなる連続層で被覆した。得られた膜を今後は被覆されたePTFE膜と呼ぶ。2層ラミネートを作るため、アメリカ合衆国特許第4,532,316号に記載されているようなポリウレタン接着剤をドット・パターンにしたものを利用し、実施例1のファブリックを被覆されたePTFE膜のePTFE側に貼り付けた。得られたラミネートは、水を通さないが水蒸気は通すラミネートである。
【0118】
このラミネートにヴァッカー・ヘミー社の粘性率が1000mPa/秒であるシリコーン溶液SilGel 612を含浸させた。実施例1に記載したのと同じ方法を利用した。含浸プロセスでは、ラミネートのテキスタイル側を塗りローラーに向け、含浸のためのシリコーン溶液と出会うようにした。
【0119】
図12と図13は、処理されたこのようなラミネートの断面のSEMを異なる倍率で示している。
【0120】
図12は、本発明に従ってシリコーン材料70を含浸させた実施例2による2層ラミネート85の断面のSEMを示している。織られたファブリック12がラミネート85の第1の層を形成する。被覆されたePTFE膜84がラミネート85の第2の層を形成する。両方の層は、不連続に付着された接着剤を用いて互いに接合される。糸20の面22にはいかなるシリコーン材料も実質的に存在しないが、フィラメント50の間の空隙はシリコーン材料70で満たされている。糸20の間の隙間30と被覆されたePTFE膜84の表面にはシリコーン材料70が存在しないため、ラミネート85は、含浸プロセスの後も相変わらず水蒸気を透過させる。
【0121】
図13は、図12の処理された糸20のSEMをより大きな倍率で示している。繊維50の間の空隙はシリコーン材料70で満たされていて、空いた空隙は残されていない。したがって液体などの他の材料が糸20の内側や繊維50の間に吸収されることはありえない。
【0122】
表4は、処理前と処理後のラミネートの技術的特徴を示している。
【0123】
【表4】

【0124】
付着させるシリコーンの量は約30〜40g/m2である。処理されたラミネートの水蒸気透過率(通湿性)は相変わらず非常に大きく、処理されていないラミネートの範囲に近い。被覆されたePTFE膜そのものは空気を透過させないため、処理されていないラミネートと処理されたラミネートも空気を透過させない。
【0125】
表5は、処理されていないラミネートと処理されたラミネートの吸水率を2つの方法について示している。
【0126】
【表5】

【0127】
本発明に従って処理したラミネートは、試験Iに従うと吸水率が20%未満であり、試験IIに従うと10%未満というはるかに優れた吸水率を示す。また、10回洗濯した後、吸水の数値は相変わらず20%未満である。
【0128】
試験手続き
【0129】
空気透過率:
【0130】
ファブリック(テキスタイル)の空気透過率を測定するため、ファブリックを通過する空気流を測定する試験機械を利用する。サンプルを2つのリングの間に配置すると、試験面積は100cm2になる。100Paという一定の圧力でサンプルから空気を吸引する。サンプルから来る空気の量を単位をリットル/m2/秒として測定し、計算する。試験法はEN ISO 9237に記載されている。
【0131】
水蒸気透過率:
【0132】
ファブリックのためのMVTR試験法
【0133】
本発明によるファブリックの水蒸気透過率(MVTR)をEN ISO 15496に従って測定した(単位はg/m2/24時間)。水蒸気透過性であると考えられるためには、ファブリックの水蒸気透過率は一般に少なくとも1000である必要があり、好ましくは1500よりも大きく、より好ましくは3000g/m2/24時間よりも大きい必要があり、15,000g/m2/24時間を超えることが可能である。
【0134】
障壁層ためのRET試験法:
【0135】
水蒸気透過抵抗(Ret)は、シート状の構造または複合体の特別な材料特性であり、一定の部分圧勾配のもとで所定の面積を通過する蒸発潜熱束を表わす。本発明の障壁層は、水蒸気透過抵抗Retが150 (m2×Pa)/Wよりも小さい場合に水蒸気透過性である。障壁層は、Retが20 (m2×Pa)/W未満であることが好ましい。水蒸気透過率はホーエンシュタインMDM乾式法によって測定される。この方法は、アパレル生理学研究所(社団法人Hohenstein)の標準試験仕様書第BPI 1.4(1987年)に記載されている。
【0136】
隙間の幅:
【0137】
処理されたファブリックは糸の間に隙間を含んでいて、空気透過率を300リットル/m2/秒よりも大きく、500リットル/m2/秒よりも大きく、1000リットル/m2/秒よりも大きくしている。これらの隙間は幅が少なくとも100μmである。この幅は、ファブリックに含まれる2本の糸の間の最小距離を意味する。したがって本発明による可能な最小の隙間は、サイズが100×100μmである。一実施態様では、隙間は幅が100〜1000μmである。
【0138】
隙間の幅を測定するため、顕微鏡(例えばツァイス社の顕微鏡)を用いる。サンプルを顕微鏡下に置き、距離に関する電子的測定プログラムと組み合わせて幅を好ましくは50倍の倍率で測定する。さらに有用な任意の倍率を用いることができる。
【0139】
水を透過させない能力:
【0140】
水を透過させない能力を国際規格ISO 811に従って測定する。一実施態様では、障壁層は、0.13バールまでの水圧に耐える。
【0141】
水の吸収:
【0142】
テキスタイル構造の水吸収特性を測定する1つの方法は、ブンデスマン試験(DIN EN 29865)(1991年)による降雨試験を利用することである。降雨ユニットは、水の体積と、液滴のサイズと、降雨ユニットから試験サンプルまでの距離とによって規定される雨を作り出す。試験は10分間にわたって実施する。
【0143】
ファブリックとラミネートの水の吸収(試験I)を以下の方法に従って測定する。
1.サンプル(ファブリック/ラミネート)の質量を測定する
2.ブンデスマン降雨試験を10分間実施する
3.サンプルを15秒間回転させる
4.サンプルの質量を測定する
5.ブンデスマン降雨試験の前と比べた質量の増加を計算する(単位は%)。
【0144】
水の吸収試験のさらに別の一実施態様(試験II)では、サンプルを以下のように処理する。
1.サンプル(ファブリック/ラミネート)の質量を測定する
2.ブンデスマン降雨試験を10分間実施する
3.サンプルを15秒間回転させる
4.サンプルを鉛直方向に5回揺する
5.サンプルを室温(20℃/相対湿度65%)にて5分間にわたって乾燥させる
6.サンプルの質量を測定する
7.ブンデスマン降雨試験の前と比べた質量の増加を計算する(単位は%)。
【0145】
処理していないファブリックおよびラミネートのサンプルと、本発明に従って処理したファブリックおよびラミネートのサンプルと、本発明に従って処理したファブリックおよびラミネートについて、60℃にて10回洗濯した後、試験Iと試験IIに従って水の吸収を測定した。
【0146】
家庭での洗濯:
【0147】
国際規格ISO 6330/2A(1984年)に従い、60℃にて家庭で洗濯した。
【0148】
滑り試験:
【0149】
この試験により、原則としてある材料の表面の別の材料に対する抵抗力がわかる。ファブリックとテキスタイルの分野では、この抵抗力を“テキスタイルの風合い”または“テキスタイルのべとつき”と呼ぶ。これは、テキスタイルがよりべたべたした感じになると、通常の典型的なテキスタイルの風合いからより離れることを意味する。
【0150】
試験装置は、0°〜90°の間で移動させることのできるグラウンド・プレート(25×50cm)と、第1の縁部と、その第1の縁部とは反対側の第2の縁部と、重さ100gの金属プレート(10×10cm)を備えている。グラウンド・プレートを動かすと、第1の縁部が下がり、第2の縁部が上がる。
【0151】
滑り試験は以下のステップに従って実施される。
1.サイズが25×50cmのサンプルをグラウンド・プレートの表面に固定する。サンプルがラミネートの場合には、ファブリックの側が最も外側の面になる必要がある。
2.サンプルの表面を横断する2本の線を引く。第1の線はプレートの第1の縁部とサンプルから5cmの距離であり、第2の線はプレートの第1の縁部とサンプルから35cmの距離である。
3.グラウンド・プレートの第2の縁部の領域でサンプルの表面に金属プレートを載せる。
4.金属プレートがサンプルの表面に沿って滑り始めて2本の線を約5秒以内で通過するまでグラウンド・プレートを動かす。
5.プレートの勾配を測定する。
6.この試験を3回繰り返す。
【0152】
プレートの勾配は、サンプルの抵抗力の指標(質量)である。大きな勾配は、サンプルが金属プレートに対して大きな抵抗力を持つことを示している。このようなサンプルのテキスタイルの風合いはよくないことがわかっている。小さな勾配は、サンプルが金属プレートに対して小さな抵抗力を持つことを示しており、この場合にはテキスタイルの風合いが優れている。
【0153】
ポリマー材料の粘性率:
【0154】
ポリマー材料の粘性率は、例えばレオテック社またはブルックフィールド社の回転測定装置(粘度計)で測定することができる。
【0155】
これまでの説明は、本発明をいかにして実現し、利用できるかを示しているが、本発明の範囲を制限することは意図していない。
【0156】
この明細書では本発明の特別な実施態様を示して説明してきたが、本発明がそのような例と説明に限定されることはない。以下に示す請求項の範囲内でのさまざまな変更や修正を本発明の一部として組み込むこと、実現できることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.糸(20)と、その糸の間の隙間(30)とを含んでいて;
b.糸の間のその隙間(30)の平均幅が100μmよりも大きく;
c.少なくとも1本の糸(20)が多数の繊維(50)で構成されていて;
d.その少なくとも1本の糸(20)が、その繊維(50)の間に空隙(60)を持ち;
e.その空隙(60)がポリマー材料(70)で満たされているファブリック(10)。
【請求項2】
前記隙間(30)の平均幅が150μm〜250μmである、請求項1に記載のファブリック(10)。
【請求項3】
前記ポリマー材料(70)の選択が、シリコーン、非膨張性ポリウレタン、アモルファスなペルフルオロポリマー、ならびにこれらの混合物からなるグループの中からなされる、請求項1に記載のファブリック(10)。
【請求項4】
前記ポリマー材料(70)が少なくとも1種類のシリコーン(75)からなる、請求項1に記載のファブリック(10)。
【請求項5】
前記ポリマー材料(70)が、1種類または数種類の添加剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項6】
前記添加剤の選択が、反射剤、うどん粉病抵抗剤、風合い変更剤、粘性剤、流動剤、可撓剤、紫外線吸収材、充填剤、導電剤、熱伝導剤、放射線吸着剤、難燃剤、放射線反射剤からなるグループの中からなされる、請求項5に記載のファブリック(10)。
【請求項7】
前記難燃剤が、ホウ素化合物、アルミナ三水和物、ハロゲン含有化合物を含むアンチモン酸化物、水酸化マグネシウム、有機リン化合物、無機リン化合物のいずれかである、請求項6に記載のファブリック(10)。
【請求項8】
前記空隙(60)が前記ポリマー材料(70)で完全に満たされている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項9】
前記少なくとも1本の糸(20)が外面(22)を持ち、少なくともその外面(22)の内側にある繊維(50)が前記ポリマー材料(70)の中に埋め込まれている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項10】
前記外面(22)の少なくとも一部に前記ポリマー材料(70)が存在しない、請求項9に記載のファブリック(10)。
【請求項11】
吸水率が50%未満である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項12】
吸水率が20%未満である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項13】
吸水率が10%未満である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項14】
前記隙間(30)によって空気透過率が300リットル/m2/秒よりも大きいファブリックになる、請求項1または2に記載のファブリック(10)。
【請求項15】
化学的流出率が90%よりも大きい、請求項1〜14のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項16】
前記繊維(50)が、連続したマルチフィラメント、スフ、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項17】
ニットまたは織布の形態である、請求項1〜16のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項18】
前記糸(20)が多数の繊維(50)からなる、請求項1〜17のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項19】
前記少なくとも1本の糸(20)の選択が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、再生セルロース、酢酸セルロース、レーヨン、アセテート、ポリアクリレート、アラミド、ガラス、モダクリル、木綿、羊毛、絹、リネン、ジュート、ならびにこれらの混合物からなるグループの中からなされる、請求項1〜18のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項20】
前記少なくとも1本の糸(20)が、ポリエステルからなるフィラメントを含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項21】
質量が20〜500g/m2である、請求項1〜20のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項22】
質量が75〜350g/m2である、請求項1〜21のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項23】
少なくとも1つの水蒸気透過層(90)が一方の側に隣接している、請求項1〜22のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項24】
前記水蒸気透過層(90)がテキスタイル層を備える、請求項23に記載のファブリック(10)。
【請求項25】
前記水蒸気透過層(90)が、少なくとも1つの水蒸気透過障壁層(92)を備える、請求項23に記載のファブリック(10)。
【請求項26】
前記障壁層(92)がガスを透過させない、請求項25に記載のファブリック(10)。
【請求項27】
前記障壁層(92)が空気を透過させない、請求項25または26に記載のファブリック(10)。
【請求項28】
前記障壁層(92)が液体を透過させない、請求項25〜27のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項29】
空気を透過させず、液体を透過させず、水蒸気を透過させる障壁層(92)が一方の側に接合されている、請求項1〜25のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項30】
前記障壁層(92)が、25リットル/m2未満という空気透過率を持つ空気不透過性である、請求項27または29に記載のファブリック(10)。
【請求項31】
前記障壁層(92)が、5リットル/m2未満という空気透過率を持つ空気不透過性である、請求項27または29に記載のファブリック(10)。
【請求項32】
前記障壁層(92)が、0.13バールという浸水圧を持つ液体不透過性である、請求項28または29に記載のファブリック(10)。
【請求項33】
前記障壁層(92)が膜である、請求項25〜32のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項34】
前記障壁層(92)が、不連続な接着層を用いて一方の側に取り付けられている、請求項25〜33のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項35】
前記障壁層(92)が、少なくとも1つのシームによって一方の側に取り付けられている、請求項25〜33のいずれか1項に記載のファブリック(10)。
【請求項36】
前記障壁層(92)が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)でできた多孔性膜を含む、請求項25または33に記載のファブリック(10)。
【請求項37】
前記空隙に満たす前の前記ポリマー材料(70)が、粘性率が3000mPa/秒未満の液体として存在している、請求項1に記載のファブリック(10)。
【請求項38】
前記空隙(60)に満たす前の前記ポリマー材料(70)が、粘性率が2000mPa/秒未満の液体として存在している、請求項1に記載のファブリック(10)。
【請求項39】
前記空隙(60)に満たす前の前記ポリマー材料(70)が、粘性率が1000mPa/秒未満の液体として存在している、請求項1に記載のファブリック(10)。
【請求項40】
請求項1に記載のファブリック(10)を含む衣類。
【請求項41】
少なくとも2つの層を備えるファブリック構造(80)であって、
a.ファブリック(10)として、
i.糸(20)と、その糸の間の隙間(30)とを含んでいて;
ii.糸(20)の間のその隙間(30)の平均幅が100μmよりも大きく;
iii.少なくとも1本の糸(20)が多数の繊維(50)で構成されていて、その繊維(50)の間に空隙(60)を持つファブリック(10)を含む第1の層と;
b.第1の層の少なくとも一方の側に接合された水蒸気透過障壁層(92)を含む第2の層とを備えていて、
c.前記空隙(60)がポリマー材料(70)で満たされているファブリック構造(80)。
【請求項42】
前記第1の層と前記第2の層が少なくとも1種類の接着剤によって接合されている、請求項41に記載のファブリック構造(80)。
【請求項43】
前記障壁層(92)が液体を透過させない、請求項41または42に記載のファブリック構造(80)。
【請求項44】
前記障壁層(92)がガスを透過させない、請求項41〜43のいずれか1項に記載のファブリック構造(80)。
【請求項45】
前記障壁層(92)が空気を透過させない、請求項41〜44のいずれか1項に記載のファブリック構造(80)。
【請求項46】
前記障壁層(92)が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)でできた多孔性膜を含む、請求項41〜45のいずれか1項に記載のファブリック構造(80)。
【請求項47】
前記ポリマー材料(70)の選択が、シリコーン、非膨張性ポリウレタン、アモルファスなペルフルオロポリマー、ならびにこれらの混合物からなるグループの中からなされる、請求項41〜46のいずれか1項に記載のファブリック構造(80)。
【請求項48】
前記ポリマー材料(70)が少なくとも1種類のシリコーンを含む、請求項41に記載のファブリック構造(80)。
【請求項49】
前記隙間(30)の平均幅が150μm〜250μmである、請求項41に記載のファブリック構造(80)。
【請求項50】
吸水率が50%未満である、請求項41〜49のいずれか1項に記載のファブリック構造(80)。
【請求項51】
吸水率が20%未満である、請求項41〜50のいずれか1項に記載のファブリック構造(80)。
【請求項52】
ファブリック(10)の吸水率を最小にする方法であって、
a.糸(20)と、その糸の間の隙間(30)とを含んでいて、その隙間(30)の平均幅が100μmよりも大きく、少なくとも1本の糸は多数の繊維(50)からなり、その繊維(50)の間には空隙(60)がある構成のファブリックを用意するステップと、
b.粘性率が3000mPa/秒未満の液体ポリマー材料(70)を用意するステップと、
c.前記空隙(60)を前記ポリマー材料(70)で満たす一方で、前記隙間(30)を開放状態のままにするステップを含む方法。
【請求項53】
ステップcの後に前記ファブリック(10)を硬化させるステップdをさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記液体ポリマー材料(70)の粘性率が2000mPa/秒未満である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記液体ポリマー材料(70)の粘性率が1000mPa/秒未満である、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
a.糸(20)と、その糸の間の隙間(30)とを含んでいて;
b.糸の間のその隙間(30)の平均幅が100μmよりも大きく;
c.前記糸(20)が多数の繊維(50)で構成されていて;
d.前記糸(20)がその繊維(50)の間に空隙(60)を持ち;
前記空隙(60)がポリマー材料(70)で満たされ、前記糸の間の隙間(30)が開放状態のままにされているファブリック(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−539338(P2010−539338A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523331(P2010−523331)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007333
【国際公開番号】WO2009/033626
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(391018178)ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエーツ,ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (40)
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】