説明

ファブリック

【課題】本発明の課題は、好ましくは、低弾性、高伸張性、および、低漏洩性を有する、高くかさ高加工された縦糸および横糸を有する有利な織物ファブリックを提供することである。
【解決手段】織られた、熱可塑性ポリマーの、かさ高加工糸を備え、2kgの力、25mmの幅で5%〜60%の縦糸の伸張と、2kgの力、25mmの幅で40%〜250%の横糸の伸張と、を有するファブリックが開示される。ファブリックは、例えばトランスミッションベルトなどのリブベルトの作動面上のファブリックとして有益である。また、このファブリックを備えるリブベルトと、このファブリックを製造する方法とが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファブリック及び該ファブリックを製作する方法に関する。特に、リブベルトの作動面に使用するファブリックに関する。
【背景技術】
【0002】
長手方向においてリブまたは「歯」を有するトランスミッションベルト(マルチVベルト(multivee)、マイクロVベルト(microvee)、ポリVベルト(polyvee)、または、リブベルト)として概ね知られる)は、非同期の動力の伝達のための自動車および産業用途に幅広く使用される。例えば、このようなベルトは、発電機、エアコンポンプ、パワーステアリング、および他の用途の機能に動力を伝達する、車のエンジンの補機駆動システムに使用される。
【0003】
最近の設計では、作動面にエラストマーまたはゴムを有し、時によっては、後で外側にフロック加工される。このようなベルトは、限定された寿命および貧弱な耐久性(特に用途で必要とされる多くの使用回数の後)を含む別の問題によく悩まされ、使用中にベルトのリブおよび/または平坦面に皹が入りがちである。他には、ノイズ(軋み、または、使用中、特に開始時の軋み)と、望ましくない高摩擦で低摩耗抵抗な性質とが問題である。
【0004】
耐久性を高め、ベルトのノイズを減少させるために、ファブリックは、作業(すなわち、リブ)面上のベルトの本体に付着されて用いられる。
【0005】
残念ながら、既知のファブリックは、貧弱な耐久性と、エラストマーが硬化する前に、ベルトのファブリックからベルト本体のエラストマーが染み出させる、高漏洩性とを含む問題に悩まされる。このような漏出は、エラストマーがベルトの作動面上に存在し、耐久性およびノイズ問題に貢献していることを意味する。また、既知のファブリックは低伸張性にも悩まされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、これらの問題に対処し、例えばリブベルトの作動面上で使用され得るファブリックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、織られた、熱可塑性ポリマーの、かさ高加工糸を備え、かつ、2kgの力、25mm幅サンプルで5%〜60%の縦糸の伸張と、2kgの力、25mm幅サンプルで40%〜250%の横糸の伸張とを有するファブリックを提供する。
【0008】
25mm幅サンプルで2kgの力での縦糸の伸張は、好ましくは5%〜50%、より好ましくは10%〜40%、最も好ましくは10%〜30%の範囲内である。
【0009】
25mm幅サンプルで2kgの力での横糸の伸張は、好ましくは50%〜200%、より好ましくは50%〜150%、最も好ましくは70%〜150%の範囲内である。
【0010】
本発明は、好ましくは、低弾性、高伸張性、および、低漏洩性を有する、高くかさ高加工された縦糸および横糸を有する有利な織物ファブリックを提供する。
【0011】
驚くことに、出願人は、かさ高加工された熱可塑性ポリマー糸の使用が、ベルトの製造中のファブリックからのエラストマー漏出の問題をかなり解消し、同時に、同時に耐久性とノイズの低減との両方において改善することを発見した。
【0012】
過去にはこの問題のために編まれたファブリックが使用されてきたが、編まれたファブリックは、エラストマーの漏出、耐久性、および寸法安定性の観点から厳しい制限を有する。
【0013】
ファブリックの有利な縦糸および横糸伸長は、特にカバー特性について大きな利点をもたらたす。例えばリブベルトの作動面上に使用される際のファブリックの横糸伸長の性質は、エラストマーの漏出を低減または防止し、最適なノイズおよび摩擦特性を有する表面を提供する、リブの良好なカバーを滑車面に提供し、さらに、ベルトの製造中にリブの形成を可能にすることから重要である。ファブリックの縦糸伸長特性は、使用中の駆動システムにおいて様々な滑車に沿って繰り返し曲げられることによる、ファブリック自体と、ベルトの本体内のエラストマーとの曲げ疲労破損を防止するのに大切である。
【0014】
好ましくは、ファブリックは、エラステインを含まない。
【0015】
ベルト用のファブリックの必要な伸張レベルを達成するために、以前は(ポリウレタンを含む)エラステインを含むファブリックが使用されてきたが、出願人は、エラステイン成分がその低い熱安定性(使用による劣化をもたらす)や、磨耗抵抗などの所望される機能性の欠如のためファブリック自体に向いていないことを発見した。本発明のファブリックは、エラステインが含まれない場合は機能繊維がファブリックベルト内に含まれてもよく、これらの繊維は、作業方向にのみ揃えられてもよいため、有利である。
【0016】
好ましくは、熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、およびポリ(フェニレン・スルファイド、PPS)、あるいは、これらのポリマーの2つ以上の混合材から選択される。
【0017】
これらの熱可塑性ポリマーは、耐久性をもたらし、ノイズ問題を対処するために最も役立つことが証明されており、本発明の驚くべき栄転に貢献するかさ高加工の後で特に分厚くなる。
【0018】
好ましいポリマーは、ポリアミドであり、好ましいポリアミドはナイロン6.6またはナイロン6である。
【0019】
糸の引張強度は、30cN/Tex〜80cN/Texであることが好ましい。
【0020】
通常、糸は、あや織り、うね織り、パナマ織り、および/またはホップサック織り、あるいは同様の織り方から選択したパターンで織られることが好ましい。これにより、糸は、低漏洩性を有する密なファブリックを提供する。最も好ましい織りパターンは、あや織り、またはうね織りである。
【0021】
好ましくは、糸は、仮よりかさ高加工糸であり、特に好ましくは、FTピン技術を使用して仮よりかさ高加工糸である。仮よりレベルは、1500〜3500回転/m(tpm)であることが好ましい。
【0022】
ベルト内のファブリック(ベルト内に組み込まれる前)の2kgの力での横糸の伸張は、好ましくは60%〜150%、より好ましくは75%〜150%、さらに好ましくは75%〜140%である。縦糸および横糸の伸張は、長さ10cm、幅25mmのサイズのサンプルを使って、500mm/分のクロスヘッド速度を使用し、1kNの能力のロードセルを有するインストロン社製引張試験機でテストされて決定される。
【0023】
好ましくは、ファブリックは、50g/m〜600g/m、好ましくは150g/m〜250g/mの範囲内の密度を有する。通常、ファブリックは、0.2mm〜2.0mm、好ましくは0.5mm〜1.2mmの厚みを有する。
【0024】
ファブリックの通気性は、Frazier機器の方法によって決められるように、約15〜100m/min(50〜300ft/ft/minに相当する)の範囲内である。
【0025】
驚くことに、ファブリックが、50〜150エンド/25mmおよび/または30〜100ピック/25mmを有すると有利(特に、漏洩性に関して)である。
【0026】
第2の態様において、その作動面上(好ましくは接着されて)の本発明の第1の態様によるファブリックを有するリブベルトが提供される。
【0027】
第3の態様において、ファブリックを製造する方法が提供され、この方法は、熱可塑性ポリマーのかさ高加工糸を提供するステップと、糸を織って、25mmの幅、2kgの力で5%〜50%の縦糸の伸張と、25mmの幅、2kgの力で40%〜200%の横糸の伸張と、を有するファブリックを形成するステップとを備える。
【0028】
好ましくは、糸をかさ高加工ステップは、110℃〜270℃、好ましくは180℃〜260℃、より好ましくは200℃〜260℃の温度で糸を仮よりかさ高加工するステップを備える。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、リブベルトにおける、特に使用のためのファブリックの特性および製造が説明される以下の事例によって明確にされる。
【0030】
[可塑性糸材料]
最も好ましい糸の材料は、ポリアミド、ナイロン6.6である。利用される別の意図材料は、ナイロン6、ポリ(エチレン・テフタレート、PET)、ポリ(フェニレン・スルファイド、PPS)、または、別の熱可塑性繊維である。糸の引張強度は、好ましくは30〜80cN/Texである。
【0031】
糸の線密度は、通常、40dtex〜500dtexである。
[製造方法]
ベルトの作動面で使用するためのファブリックは、好ましくはFTピン技術を使って仮よりかさ高加工される。この工程は、糸と、所望の伸張とカバーと特性をもたらす完成した物品とに高いかさをもたらす。FTかさ高加工工程おいて採用される温度は、繊維にタイプに適するものであり、ナイロン6.6の場合は、190℃〜260℃、好ましくは230℃〜250℃である。
【0032】
ファブリックは、比較的重いファブリックを与える特定のベルト構造によって必要とされる織構造を使って織られる。これらのパターンは、うね織り、あや織り、パナマ織り、ホップサック織り、ドビー織り、およびジャカード織りなどを含み得る。
【0033】
織り工程の後、ファブリックは、様々技法と、圧力染色機、幅広い洗浄機、およびストレスをかけない乾燥(例えば回転乾燥)技術を含む設備を用いて補助器具を回転させて繊維の残余を除去し、ベルトの性能を高めるために非常に高いレベルの縦糸および横糸の伸張性を生じさえ保持するように繊維洗浄/完成されてもよい。
[ファブリックの特性]
ファブリックは以下の特性を有する。
i. 密度:50g/m〜600g/m、通常150g/m〜250g/m
ii. 厚み:0.2mm〜2.0mm、通常0.5mm〜1.2mm
iii.長さ方向(縦)伸張:5%〜50% (2.0kg/幅25mm)
iv. 幅方向(横)伸張:40%〜200% (2.0kg/幅25mm)、通常60 %〜120%
v. 通気性(Frazier):15〜100m/min(50〜300ft /ft/min)
vi. エンド数:50〜150/25mm
vii.ピック数:30〜100/25mm
viii.分離した縦糸の引張:20%〜80%
ix. 分離した横糸の伸張:60%〜250%
【0034】
制御したファブリック(比較例)と、ファブリック1、2、および3との詳細を下記の表1に示す。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
織られた、熱可塑性ポリマーの、かさ高加工糸を備え、2kgの力、25mmの幅で5%〜60%の縦糸の伸張と、2kgの力、25mmの幅で40%〜250%の横糸の伸張と、を有することを特徴とするファブリック。
【請求項2】
エラステインを含まないことを特徴とする請求項1に記載のファブリック。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、およびポリ(フェニレン・スルファイド、PPS)、または、これらのポリマーの2つ以上の混合物から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載のファブリック。
【請求項4】
前記縦糸および前記横糸の引張強度は、30〜80cN/Texの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のファブリック。
【請求項5】
前記糸は、あや織り、うね織り、パナマ織り、および/またはホップサック織りから、好ましくは、あや織りまたはうね織りから選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のファブリック。
【請求項6】
前記糸は、仮よりかさ高加工糸であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のファブリック。
【請求項7】
前記横糸の伸張は、2kgの力、25mmの幅で60%〜150%、好ましくは75%〜150%、より好ましくは75%〜140%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のファブリック。
【請求項8】
前記ファブリックは、50g/m〜600g/m、好ましくは150g/m〜250g/mの範囲内の密度を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のファブリック。
【請求項9】
前記ファブリックは、0.2mm〜2.0mm、好ましくは0.5mm〜1.2mmの範囲内の厚みを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のファブリック。
【請求項10】
前記ファブリックの通気性は、15〜100m/minの範囲内であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のファブリック。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマーは、ナイロン、ポリ(エチレン・テフタレート)、またはPPSを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のファブリック。
【請求項12】
50〜150エンド/25mm、および/または30〜100ピック/25mmを有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のファブリック。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のファブリックを作動面に備えることを特徴とするリブベルト。
【請求項14】
ファブリックを製造する方法であって、
熱可塑性ポリマーのかさ高加工糸を提供するステップと、
前記糸を織って、2kgの力、25mmの幅で5%〜60%の縦糸の伸張と、2kgの力、25mmの幅で40%〜250%の横糸の伸張と、を有するファブリックを形成するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記糸をかさ高加工するステップは、190℃〜270℃の温度を使用して前記糸を仮よりかさ高加工するステップを備えることを特徴とする請求項14に記載の方法。

【公開番号】特開2013−64220(P2013−64220A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−202479(P2012−202479)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(510281128)ヒースコート・ファブリックス・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】