説明

ファブリー病に対する治療の選択を診断し、評価するためのアッセイ

ファブリー病に罹患した患者が、特異的な薬理的シャペロンによる治療に対して応答するか否かを決定するための、インビトロおよびインビボ法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願との相互引照
本件特許出願は、2006年5月16日付で出願された、米国仮特許出願第60/801,089号および2006年10月23日付で出願された、米国仮特許出願第60/853,631号の基づく優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、ファブリー病に罹っている患者が、特異的な薬理的シャペロン(specific pharmacological chaperone)による治療の利益を得るか否かを決定するための方法を提供する。本発明は、患者の細胞内における、1-デオキシガラクトノジリマイシン等の薬理的シャペロンに対するα-ガラクトシダーゼA応答性を決定するための、2つの方法、即ちインビトロ法およびインビボ法を例示する。本発明は、またファブリー病に罹っている疑いのある患者において、ファブリー病の診断を行うための方法をも提供する。
【0003】
背景技術
ファブリー病は、リソソームα-ガラクトシダーゼA(α-GAL)のX-連鎖遺伝性欠乏症に起因する、グリコスフィンゴリピド(GSL)リソソーム蓄積症であり、該α-ガラクトシダーゼAは、該グリコスフィンゴリピド由来の末端α-ガラクトシル残基の加水分解に対して応答し得る酵素である(Brady等, N Engl J Med. 1967; 276: 1163-7)。
該酵素活性における欠乏は、ファブリー病患者の細胞内での、支配的にグロボトリアオシルセラミド(セラミドトリヘキソシド;CTH、GL-3)からなる、中性のグリコスフィンゴリピドの段階的な堆積をもたらす。症状は、腎不全および心臓発作および卒中の高い危険性を含む、重篤かつ衰弱性のものであり得る。突然変異の幾つかが、正確な高次構造形状に折畳まれることのない、安定性の低いα-GALの生成を結果する可能性のある、α-GALのアミノ酸配列の変化を引起す。患者の細胞中で生産されたα-GALは、しばしば幾分かのレベルの生物学的活性の発現可能性を維持しているが、該細胞の性能調節メカニズムは、小胞体、即ちERにおける誤って折畳まれたα-GALを、これが分解および排除のために該細胞の別の部分へと、最終的に移動するまで、認識し、かつ維持する。結果として、正常な場合にはGL-3を加水分解するリソソームまで、α-GALは殆どまたは全く移動しない。これは、細胞内でのGL-3の蓄積に導き、これがファブリー病の諸症状の原因であると考えられている。更に、該ERにおける、該誤って折畳まれたα-GAL酵素の蓄積は、細胞に対するストレス、および炎症-様の応答へと導き、これは細胞性機能不全および疾患に寄与する恐れがある。
【0004】
ファブリー病は、臨床上の症状発現によって、3群に分類される:即ち、全身性血管障害を伴う古典的な形態;心臓組織に限定された臨床的症状発現を伴う異型変異型;および遅発型疾患(該疾患の中程度〜重篤な形態を伴う、女性の保因者を含む)である。
該古典型疾患の発生頻度は、男性において約1:40,000〜1:60,000であると見積もられており、様々な人種群において、世界全体において報告されている。典型的には、罹患した男性は、殆どまたは全く検出可能なα-GAL濃度を示さず、しかも最も重篤に冒されている。該臨床上の症状発現は、角化血管腫(皮膚上の小さな、隆起した赤紫の斑)、先端感覚異常(手および足における灼熱感)、乏汗症(発汗能力低下)、および特徴的な角膜および水晶体の混濁を含む(遺伝性疾患の代謝並びに分子論的基礎(The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease), 第8版, 2001, Scriver等編, pp. 3733-3774, マグロウヒル(McGraw-Hill), N.Y.)。脂質の貯蔵は、阻害された動脈循環および心臓発作および卒中の高い危険性へと導く可能性がある。心臓は、また肥大し、かつ腎臓は、徐々に影響を受ける可能性がある。他の症状は、発熱、および特に食後の胃腸管障害を含む。該罹患した男性の期待寿命は減じられ、心臓、脳および/または腎臓の血管性疾患の結果として、その死亡は、40または50歳代で起こる。
【0005】
遅発性のファブリー病に罹患した個体は、男性または女性であり得る。遅発性のファブリー病は、異型変異型として現れ、徐々に明らかにされる証拠は、世界において説明されていない、かなりの数の「異型変異型」が存在する可能性があることを示す。α-GAL突然変異を含むX染色体を遺伝により継承した女性は、その生涯の後半において症状を示す可能性があり、これはこの疾患の罹患率を著しく高める。これら患者は、典型的にその成人期において初めて疾患の症状を経験し、またしばしば単一の器官に集中する疾患の症状を持つ。例えば、遅発性のファブリー病に罹患した多くの男性および女性は、その心臓の左心室の肥大を患う。遅発性のファブリー病は、また原因不明の卒中として現れる可能性がある。該患者の加齢に伴って、該疾患の心臓性の合併症が進行し、また死に至る可能性がある。
これとは対照的に、ファブリー病の穏やかな「心臓異形」に罹った患者は、通常正常なα-GAL活性の5-15%を有し、また左心室肥大または心筋症を呈する。これらの心臓異形に罹った患者は、その古典的疾患に罹った片割れが、著しい危険にさらされた場合にも、本質的に無症候性を維持する。心臓異形は、説明できない左心室肥大性心筋症に罹っている成人男性患者の11%において見られ、このことは、ファブリー病が、以前に予想された以上に高頻度であることを示唆している(Nakao等, N. Engl. J. Med., 1995; 333: 288-293)。
【0006】
該α-GAL遺伝子は、Xq22にマッピングされており(Bishop等, Am. J. Hum. Genet., 1985; 37: A144)、また全長に及ぶcDNAおよびα-GALをコードする、完全な12-kbのゲノム配列が報告されている(Calhoun等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1985; 82: 7364-7368; Bishop等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1986; 83: 4859-4863; Tsuji等, Eur. J. Biochem. 1987; 165: 275-280;およびKornreich等, Nucleic Acids Res. 1989; 17: 3301-3302)。ファブリー病を引起す突然変異の顕著な遺伝子異質性がある(遺伝性疾患の代謝並びに分子論的基礎(The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease), 第8版, 2001, Scriver等編, pp. 3733-3774, マグロウヒル(McGraw-Hill), N.Y.; Eng等, Am. J. Hum. Genet. 1993; 53: 1186-1197; Eng等, Mol. Med. 1997; 3: 174-182;およびDavies等, Eur. J. Hum. Genet. 1996; 4: 219-224)。これまでに、僅かな欠失および挿入に加えて、様々なミスセンス、ナンセンスおよびスプライシング突然変異、および大きな遺伝子の再配列が報告されているが、突然変異の大多数は、ミスセンス突然変異である。
ファブリー病は、雑多であり、しばしば遺伝子型と表現型とを相関付けることは困難である。同一の遺伝子型を持つ人々は、しばしば異なる臨床的症状および疾患の病理を示す。しかし、残留酵素活性と疾患の重篤度との間に相関がみられることが明らかとなり、該α-GAL活性がより低いと、最大の重篤度をもつ疾患を結果する。α-GAL突然変異の大多数はミスセンス突然変異であり、その殆どは触媒的サイトの範囲外であるが、不安定な酵素を安定化する、特異的な薬理的シャペロン(SPC)によって救助され得る、該不安定酵素を、何れの突然変異がもたらすかを、および何れの突然変異が、該SPCを用いても安定化できないかを予想することは困難である。
【0007】
ファブリー病の診断
ファブリー病は、稀であり、多数の器官を巻添えにし、発症の広い年齢範囲に及んでおり、また雑多であるので、適切な診断法を得ることが、課題の一つである。保健医療の専門家において、気付かれることは稀であり、また誤診も頻繁である。結局のところファブリー病に冒されていると診断された患者において、重要と考えられる診断の幾つかの例は、僧帽弁逸脱症、糸球体腎炎、突発性蛋白尿症、全身性エリテマトーデス、ウィップル病、急性腹部疾患、潰瘍性大腸炎、急性間欠性ポルフィリン症、およびオカルト悪性腫瘍を含む。従って、典型的疾患に冒された男性に関してさえ、診断は、典型的に約5-7年またはそれ以上の期間さえも要する。ヒトがファブリー病に冒されている期間が長いほど、該冒された器官がより多大な損傷を受け易く、また該ヒトの状態がより重篤になる恐れがあるので、これは重大な問題である。ファブリー病の診断は、最も頻繁には、血漿中の低いα-GAL活性または末梢白血球(WBCs)を基にして確認され、一度患者に症候が見られる場合には、突然変異分析と組み合わされる。保因女性の酵素学的な同定が、保因者の幾つかの細胞における、ランダムなX-染色体不活性化のために、信頼性が低いので、女性における診断は、より一層興味深い。例えば、幾人かの真正の保因者(典型的に罹患した男性の娘)は、正常値乃至極めて低い活性までの範囲にある、α-GAL酵素活性を持つ。保因者は、白血球においては、正常なα-GAL酵素活性を持つことができるので、遺伝子検査によるα-GAL突然変異の同定のみが、正確な保因者の同定および/または診断を与える。
【0008】
ファブリー病の治療
ファブリー病を治療するために承認されている唯一の療法は、酵素置換療法であり、これは典型的には、対応する野生型のタンパク質[ファブラジム(FabrazymeTM)、ゲンザイム社(Genzyme Corp.)]の生成物の静脈内注入を含む。タンパク質置換療法に係る主な問題の一つは、該注入されたタンパク質が迅速に分解されることから、インビボでのタンパク質の治療上有効な量の達成および維持である。この問題を克服するための一般的な方法は、経費のかかる、高用量での多数回の注入を実施することである。
タンパク質置換療法は、以下のような幾つかの付随的な問題を有している:例えば大規模での製造、精製、および適切に折畳まれたタンパク質の保存に係る困難さ;グリコシル化天然タンパク質の入手性に係る問題;抗-タンパク質免疫応答の発生;およびタンパク質が血液脳関門を横切り、中枢神経系病理を緩和する能力を持たないこと(即ち、低い生体利用性)。更に、置換酵素は、ファブリー病の病理において顕著に現れる、腎臓足細胞および心臓筋細胞における基質の蓄積を減じるのに十分な量で、心臓または腎臓に侵入することができない。
【0009】
機能性タンパク質をコードする核酸配列を含む組換えベクターまたは機能性タンパク質を発現する、遺伝子的に変性されたヒト細胞を用いた遺伝子療法も、タンパク質置換の利益を受ける、タンパク質欠乏症およびその他の疾患を治療するために評価されている。有望ではあるが、この方法は、技術的な困難、例えばベクターが分割細胞を感染させ、あるいは形質導入する能力を持たないこと、該ターゲット遺伝子の低い発現性および一旦該遺伝子が送達された際のその発現の調節等によって制限される。
幾つかの酵素欠乏症を治療するための、第三の比較的最近の方法は、欠損酵素タンパク質の天然基質の産生を減じるための、小分子阻害剤の使用を含み、これによって該病理を改善している。この「基質低減」法は、グリコスフィンゴリピド貯蔵疾患を含む、リソソーム貯蔵疾患と呼ばれる、一群の約40種の関連する酵素疾患に関して特異的に説明されている。治療剤として利用するための提案された該小分子阻害剤は、細胞性糖脂質の合成に関与しており、該欠損酵素によって破壊される必要のある、所定量の細胞性糖脂質を還元する。この方法は、また糖脂質が生物学的な機能、特に神経学的機能にとって必要である点において制限され、また過度の欠乏状態は、有害な効果を引起す可能性がある。
【0010】
以前に、LSDsと関連する酵素の小分子阻害剤の結合が、突然変異酵素および対応する野生型酵素両者の安定性を高めることができることが示された(米国特許第6,274,597号;同第6,583,158号;同第6,589,964号;同第6,599,919号;同第6,916,829号;および同第7,141,582号;これら全てを、参考としてここに組入れる)。特に、幾つかのターゲットリソソーム酵素に対して特異的、選択的、競合的阻害剤である、グルコースおよびガラクトースの小分子誘導体の投与が、インビトロにて細胞内の該酵素の安定性を効果的に高め、かつ結果として該酵素の該リソソームへの搬送性を高めることが見出された。かくして、該リソソーム中の酵素の量を高めることにより、該酵素基質の加水分解性が増大されるものと期待される。この方法に隠された元々の理論は、以下の通りである:該突然変異酵素タンパク質は、該ERにおいて不安定であるから(Ishii等, Biochem. Biophys. Res. Comm. 1996; 220: 812-815)、該酵素タンパク質は、正常な輸送経路において遅延され(ER→ゴルジ装置→エンドソーム→リソソーム)、また早期に分解される。従って、突然変異酵素と結合し、かつその安定性を高める化合物は、該酵素に対する「シャペロン」として機能でき、また該ERを出て、また該リソソームに移動できるその量を増大するように機能し得る。更に、幾つかの野生タンパク質の折畳みおよび輸送が不完全であり、幾つかの野生型タンパク質の70%までが、幾つかの例においては、その最終的な細胞位置に達する前に、分解されることから、該シャペロンは、野生型酵素を安定化し、かつ該ERを出て、また該リソソームまで輸送することのできるその量を高めるために使用することができる。この方法は、インビトロおよびインビボにおいて、β-グルコセレブロシダーゼおよびα-グルコシダーゼ(これら酵素の欠乏は、夫々ゴーシェ病およびポンペ病と関連する)を含む、幾つかのリソソーム酵素を増大することが示されている。
【0011】
しかし、上に示したように、SPC療法に関する上首尾の候補は、所定の突然変異を持つ必要があり、該突然変異は、該ERからの輸送を可能とする配座を安定化し、かつ該配座に折畳む潜在能力を持つ、酵素の生成をもたらすものである。該酵素の著しい切捨てを起こす突然変異、例えばナンセンス突然変異、または該シャペロンの結合を防止する触媒ドメインにおける突然変異は、SPC療法を用いて「救済し得る」あるいは「増強し得る」ものとは思われない。該触媒サイト以外のミスセンス突然変異は、SPCsを用いて救済し得るものと十分に考えられるが、応答性の突然変異に対するスクリーニングを、必ずしも必要としない。このことは、ファブリー病が、WBCにおける欠乏α-GAL活性を検出することにより診断する場合でさえも、特定のファブリー病患者がSPCによる治療に応答するか否かを予想することは、不可能ではないにしても、極めて困難である。その上、WBCは、培養液中(インビトロ)でほんの短期間のみ生存するに過ぎないので、α-GALのSPCによる増強に関するスクリーニングは困難である。
SPC療法を効果的に応用するためには、SPC療法に対する応答性につき患者をスクリーニングするための、広く応用できる、迅速かつ効率的な方法を、治療開始に先立って採用する必要がある。即ち、当分野においては、該患者にとってコスト的および感情的な便益両者を考慮して、治療の決断をなす前に、有力な治療法につき酵素増強を迅速に評価するための、比較的非-侵襲的な方法に対する必要性が残されている。
【0012】
発明の概要
本発明は、患者がSPC療法に対する候補であるか否かを決定するための2つの方法を提供する。具体的には、本発明は、SPCの存在下または不在下における、ファブリー病に罹患した患者由来の血球中の、α-GAL活性を評価するためのインビボおよびインビトロアッセイを提供する。本発明は、また任意の数の他のタンパク質異常および/または酵素欠乏に対する治療の選択肢としての、SPCの評価に関する基準をも含む。本発明は、また該アッセイを実施するのに必要な成分を含む診断用キットをも提供する。本発明は、更にファブリー病に罹患している可能性のある患者由来のT細胞中のα-GAL活性を測定することによる、改善されたファブリー病の診断法を提供する。
【0013】
詳細な説明
本発明は、SPCが、ファブリー病に罹患した患者由来の細胞の酵素活性を増強するか否かを、正確に決定することを可能とする2つの方法を提供する。これらアッセイは、該患者がSPC療法の候補であるか否かの決定を可能とする。この新規なインビトロアッセイは、極めて高感度であり、インビボにて大規模で培養し、維持する必要のない、単離されたT細胞について行うことができ、該アッセイは、これを実施するに要する時間を短縮(線維芽細胞を用いた場合と比較して)する。このアッセイは、またファブリー病に罹患している疑いのある患者、特に女性の患者に関する診断アッセイとして利用することも可能である。というのは、α-GAL活性を検出するのに典型的に使用されるWBCアッセイよりもより高感度であるからである。この新規なインビボアッセイは、同様に非-侵襲的であり、またSPC療法が、特定の患者において有効であるか否かを決定するための、極めて信頼性の高い方法を提供する。更に、遺伝子型決定との組合せで、これらのアッセイ両者は、新たに発見されたα-GAL突然変異(例えば、自発的な突然変異)が、誤って折畳まれたα-GALを生成するか否か、および結果として潜在的にSPCを用いて「救済可能」であるか否かを決定するための方法を提供する。
【0014】
定義
本明細書において使用する用語は、一般的に、本発明の内容および各用語を使用する特定の内容において、当分野における通常の意味を有する。幾つかの用語は、本発明の組成物および方法、および該組成物を製造し、また使用する方法の説明において、実務者に対する付随的な手引きを与えるべく、以下に記載しあるいは本明細書の至る所で説明する。
用語「ファブリー病」とは、リソソームα-ガラクトシダーゼA活性の欠乏による、グリコスフィンゴリピド異化作用のX-連鎖先天性誤差を意味する。この欠損は、心臓、腎臓、皮膚、および他の組織の、血管内皮リソソームにおける、グロボトリアオシルセラミド(セラミドトリヘキソシド)および関連するグリコスフィンゴリピドの蓄積を生じる。
用語「異型ファブリー病(患者)」とは、該α-GAL欠乏の主として心臓での症状発現、即ち心臓、特に左心室の著しい肥大へと導く、心筋細胞内での、グロボトリアオシルセラミド(GL-3)の段階的な蓄積を伴う患者を意味する。
【0015】
「保因者」とは、欠失α-GAL遺伝子を持つ一つのX染色体および正常な遺伝子を持つ一つのX染色体を有し、かつ正常な対立遺伝子のX染色体不活性化が、1またはそれ以上の細胞型において存在する女性である。保因者は、しばしばファブリー病に悩まされている。
「患者」とは、特定の疾患について診断されている対象を意味する。該患者は、ヒトまたは動物であり得る。「ファブリー病患者」とは、ファブリー病について診断され、かつ以下において更に定義されるような、突然変異を被ったα-GALを有する対象(個人)を意味する。ファブリー病の特徴的なマーカーは、典型的には、女性の方がより軽度に影響されるが、同一の罹患率で男性の半接合体保有者および女性保因者において起こり得る。
ヒトα-ガラクトシダーゼA(α-GAL)は、ヒトGla遺伝子によってコードされる酵素を意味する。該ヒトα-GAL酵素は、429個のアミノ酸からなり、またゲンバンク(GenBank)承認番号No. U78027を持つ。
【0016】
一態様において、ここで使用するような用語「突然変異α-GAL」は、ERにおいて通常存在する状態の下で、該酵素が安定な配座を達成することを不可能にする、α-GALをコードする遺伝子において突然変異を持つ、α-GALを包含する。安定な配座達成の不履行は、該酵素を該リソソームに搬送せず、寧ろ実質的な量の該酵素の分解を結果する。このような突然変異は、しばしば「配座突然変異」と呼ばれる。
不安定なα-GALをもたらす、ファブリー病に係るα-GALの突然変異の、非限定的な例は、L32P; N34S; T41I; M51K; E59K; E66Q; I91T; A97V; R100K; R112C; R112H; F113L; T141L; A143T; G144V; S148N; A156V; L166V; D170V; C172Y; G183D; P205T; Y207C; Y207S; N215S; A228P; S235C; D244N; P259R; N263S; N264A; G272S; S276G; Q279E; Q279K; Q279H; M284T; W287C; I289F; M296I; M296V; L300P; R301Q; V316E; N320Y; G325D; G328A; R342Q; E358A; E358K; R363C; R363H; G370S;およびP409Aを含む。
【0017】
ここで使用する用語「特異的な薬理的シャペロン」(SPC)あるいは「薬理的シャペロン」とは、タンパク質と特異的に結合し、1またはそれ以上の以下に列挙する効果を有する、小分子、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物等を包含する任意の分子を意味する。該効果は、以下の通りである:(i) 該タンパク質の安定な分子配座の生成能を高め;(ii) 該ERから他の細胞位置、好ましくは本来の細胞位置への該タンパク質の搬送を誘発し、即ち該タンパク質のER-関連分解を防止し;(iii) 誤って折畳まれたタンパク質の凝集を防止し;および/または(iv) 該タンパク質に対する、野生型の機能および/または活性を、少なくとも部分的に回復または増強する。例えば、α-GALと特異的に結合する化合物は、このものが、α-GALと結合し、かつこれにシャペロン作用を及ぼし、しかも関連するまたは関連のない酵素の一般的な群とは結合せず、かつこれらにシャペロン作用を及ぼさないものを意味する。より具体的には、この用語は、内因性のシャペロン、例えばBiP、あるいは様々なタンパク質に対して非-特異的なシャペロンであることが明らかにされている非-特異的な薬剤、例えばグリセロール、DMSOまたは重水素置換水、即ち化学的シャペロンを意味しない(Welch等, 細胞ストレスおよびシャペロン(Cell Stress and Chaperones), 1996; 1(2):109-115; Welch等, Journal of Bioenergetics and Biomembranes, 1997; 29(5):491-502; 米国特許第5,900,360号、同第6,270,954号、および同第6,541,195号を参照のこと)。本発明においては、該SPCは、可逆的、競合的阻害剤である。
【0018】
酵素の「競合的阻害剤」とは、該酵素基質の化学的構造および分子的幾何形状と、構造的に類似しており、該基質とほぼ同一の位置において結合する化合物を意味する。従って、該阻害剤は、該基質分子と同一の活性サイトに対して競合し、結果としてそのKmを増大する。競合的阻害剤は、十分な基質分子が該阻害剤との置換のために利用可能である場合には、通常可逆的であり、即ち競合的阻害剤は、可逆的に結合し得る。従って、該酵素阻害量は、該阻害剤の濃度、基質濃度、および該活性サイトに対する該阻害剤および基質の相対的なアフィニティーに依存する。
以下の記載は、本発明において意図する特異的な薬理的シャペロンの幾つかに関する説明である。
1-デオキシガラクトニジリマイシン(1-deoxygalactonojirimycin)は、以下のような構造を持つ化合物を意味する:
【0019】
【化1】

【0020】
この用語は、遊離塩基および任意の塩形状を包含する。DGJの塩酸塩は、ミガラスタット(migalastat)塩酸塩[ミガラスタット(Migalastat)]として公知である。α-GALに対する更に別のSPCは、Fan等による米国特許第6,274,597号、同第6,774,135号、および同第6,599,919号に記載されており、またα-3,4-ジ-エピ-ホモノジリマイシン(α-3,4-di-epi-homonojirimycin)、4-エピ-ファゴマイン(fagomine)、およびα-アロ-ホモノジリマイシン、N-メチル-デオキシガラクトニジリマイシン、β-1-C-ブチル-デオキシガラクトニジリマイシン、およびα-ガラクト-ホモノジリマイシン、カリステギン(calystegine)A3、カリステギンB2、カリステギンB3、N-メチル-カリステギンA3、N-メチル-カリステギンB2、およびN-メチル-カリステギンB3を包含する。
【0021】
ここで使用する用語「特異的に結合(する)」とは、薬理的シャペロンと、α-GAL等のタンパク質との相互作用、具体的には該薬理的シャペロンとの接触に、直接関与する該タンパク質のアミノ酸残基との相互作用を意味する。薬理的シャペロンは、ターゲットタンパク質、例えばα-GALと特異的に結合して、α-GALにはシャペロン作用を及ぼすが、関連するまたは関連のないタンパク質の一般的な群には該作用を及ぼさない。任意の与えられた薬理的シャペロンと相互作用するタンパク質のアミノ酸残基は、該タンパク質の「活性サイト」内にあっても、なくてもよい。特異的結合は、日常的な結合アッセイを通して、または構造的な研究、例えば同時-結晶化、NMR等による研究を通して評価できる。α-GALに対する該活性サイトは、該基質結合サイトである。
「欠乏α-GAL活性」とは、ファブリー病または任意の他の疾患(特に、血液疾患)に罹患しておらず、またはその恐れのない正常な固体におけるα-GAL活性(同一の方法を用いて)と比較して、正常な範囲以下である患者由来の細胞における、α-GAL活性を意味する。
【0022】
ここで使用する用語「α-GAL活性を増強する(高める)」または「α-GAL活性を増大する」とは、α-GALに対して特異的な薬理的シャペロンと接触させていない細胞(好ましくは、例えば初期の時点において、同一の細胞型または同一の細胞)における量に相対的に、該α-GALに対して特異的な該薬理的シャペロンと接触させた細胞中で、安定な配座を取っているα-GALの量の増大を意味する。この用語は、また該タンパク質に対して特異的な薬理的シャペロンと接触させていないα-GALの搬送に相対的な、α-GALに対して特異的な薬理的シャペロンと接触させた細胞中で、該α-GALの該リソソームへの搬送量を高めることをも意味する。これら用語は、野生型および突然変異α-GAL両者に関連する。一態様において、該細胞内のα-GALの量における増加は、該SPCで処理されている細胞由来のライゼート中の人工的な基質の加水分解量を測定することによって、決定される。加水分解量の増加は、高いα-GAL活性の指標となる。
該用語「α-GAL活性」とは、細胞内の野生型α-GALの、正常な生理的機能を意味する。例えば、α-GAL活性は、GL-3の加水分解を含む。
【0023】
「応答個体」とは、その細胞が、SPCとの接触に応答して、十分に高いα-GAL活性、および/または症状の改善または代用マーカーにおける改良を示す、対象(ファブリー病と診断され、もしくは該疾患に罹患している疑いのある)である。ファブリー病に対する、代用マーカーにおける改善の、非-限定的な例は、細胞(例えば、線維芽細胞)および組織におけるα-GAL濃度またはその活性の増加;GL-3の蓄積量における減少;ホモシステインおよび血管細胞接着分子-1(VCAM-1)の血漿濃度における減少;心筋細胞および心臓弁膜線維細胞内でのGL-3の蓄積量における減少;心臓肥大(特に左心室)の減少、弁不全症の改善、および不整脈における減少;蛋白尿症の改善;CTH等の脂質、ラクトシルセラミド、セラミドの尿中濃度の低下、およびグルコシルセラミドおよびスフィンゴミエリンの尿中濃度の増大(Fuller等, Clinical Chemistry. 2005; 51: 688-694);腎糸球体上皮細胞における積層封入体(ゼブラ(Zebra)体)の欠如;腎機能の改善;乏汗症の鎮静;角化血管腫の欠如;および高周波感覚神経性難聴、段階的難聴、突発性聴覚喪失、または耳鳴り等の聴覚異常性の改善を含む。神経学的症状の改善は、一過性の虚血性発作(TIA)または卒中の予防;および先端感覚異常として現れるニューロパシー性の痛みの改善(先端部の灼熱感またはヒリヒリ感)を包含する。
【0024】
上記応答の1またはそれ以上を達成する用量が、「治療上有効な用量」である。
上記「製薬上許容される」なる熟語は、生理的に許容され、またヒトに投与した場合に、典型的には不都合な反応を起こさない、分子状実在物および組成物を意味する。好ましくは、ここで使用するように、該用語「製薬上許容される」とは、動物において、より特定的にはヒトにおける使用に関する、連邦政府または州政府または米国薬局方または他の一般的に認識されている薬局方に列挙されている、取締り機関によって承認されていることを意味する。用語「担体」とは、該化合物と共に投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを意味する。このような製薬担体は、無菌液体、例えば水およびオイルであり得る。水または水性溶液、塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液が、担体として使用するのに好ましく、特に注射可能な溶液が好ましい。適当な製薬担体は、「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」,E.W. Martin著, 第18版またはその他の版に記載されている。
【0025】
ここで使用する用語「単離(された)」とは、指定された物質が、その通常見出される環境から、取出されることを意味する。従って、単離された生物学的物質は、細胞性成分、即ち該物質が見出され、あるいは製造される該細胞の成分を含まないものであり得る。核酸分子の場合、単離された核酸は、PCR生成物、ゲル上のmRNAバンド、cDNA、または制限断片を含む。もう一つの態様において、単離された核酸は、好ましくはそれを見出すことのできる染色体から切取られ、またより好ましくは、該核酸は、非-調節性、非-コード領域、または該染色体中に見出される場合に、該単離された核酸分子に含まれる該遺伝子の上流または下流に位置する他の遺伝子とは、最早接合されない。更に別の態様において、該単離された核酸は、1またはそれ以上のイントロンを欠いている。単離された核酸は、プラスミド、コスミド、人工的な染色体等に挿入された配列を含む。従って、一特定の態様においては、組換え核酸が単離された核酸である。単離されたタンパク質は、細胞内で結合している、他のタンパク質または核酸、またはこれら両者と、あるいは該タンパク質が膜-結合タンパク質である場合には、細胞膜と結合することができる。単離されたオルガネラ、細胞または組織は、これらが生物中において見出された、解剖学的なサイトから取出される。単離された物質は精製することができるが、必ずしもその必要はない。
【0026】
用語「約(about)」および「約(approximately)」とは、一般的に、測定値の性質または精度を与える、測定された量の、誤差の許容の程度を意味する。典型的には、誤差の程度の例は、与えられた値またはその範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。あるいはまた、および特に生物学的系において、用語「約(about)」および「約(approximately)」とは、ある大きさの範囲内、好ましくは与えられた値の10-倍または5-倍、およびより好ましくはその2-倍までの範囲の値を意味することができる。ここに与えられた数値的な量は、特に述べない限りおよその値であり、明白に述べられていない場合には、該用語「約(about)」および「約(approximately)」が、あることを推定できる。
【0027】
方法
SPC療法が、女性保因者を含むファブリー病患者にとって有効な治療であるか否かを容易に決定するために、ファブリー病患者由来のWBC、またはWBCの亜群におけるα-GAL活性に関する、単純で非-侵襲的なDGJ救済アッセイを開発した。
I. インビトロアッセイ
一態様において、本発明の診断法は、T細胞を精製し、ファブリー病患者(またはファブリー病に罹患した疑いのある患者)由来の血液検体から、T細胞培養物を樹立する工程を含む。T細胞培養物を、次にSPC、例えばDGJ等により、十分な期間処理し、あるいは処理せずに、α-GAL活性の増強(即ち、増大)を明らかにする。該T細胞を、次いで溶解し、得られたライゼートを、酵素活性測定のためのアッセイにおいて使用する。未処理の細胞由来のライゼート中のα-GAL活性と比較しての、該SPCで処理した細胞由来のライゼート中のα-GAL活性における十分な増加は、該患者が、SPC療法に応答したであろうこと(即ち、該患者が「応答個体」であること)を示す。
この態様は、以下のようにして実施できる:
【0028】
白血球の分離
WBC(白血球)は、標準的な技術、例えば採取、遠心分離、選別、および洗浄を利用して調製される。より具体的には、以下のような段階に従って調製することができる:
1. 血液サンプルをファブリー病患者から採取する。特別な態様では、約8〜10mLのサンプルを、適当な容器、例えばベクトン-ディッケンソン(Becton-Dickenson)からのCPTチューブ(抗-凝集剤および分離媒体を含む)に取出す。
2. 該血液サンプルを遠心分離処理に掛け、赤血球を、白血球および血漿から分離する。典型的には、この段階は、卓上型遠心分離機を用いて、約20-30分間、約1800xgおよび室温にて、あるいは該赤血球が、血漿および白血球(WBCs)から分離されるまで行われる。しかし、他の公知の白血球分離技術、例えばフィコール-ハイパック(Ficoll-Hypaque)、パーコル(Percoll)または他の同様な密度勾配法を利用することも可能である。もう一つの態様において、抗体-媒介または負の選択を利用する磁気分離により、WBCからT細胞を富化して、未結合のT細胞を得るために、他の細胞型を除去する。T細胞を富化するための任意の公知法を利用できるが、より好都合な、最も経費のかからない方法が好ましい。
【0029】
3. 該血漿層の半分を捨て(該白血球層を乱すことなしに)、また該白血球を含有する残留する流体を、遠心管に移す。
4. 次いで、該WBCをペレット化し、2回またはそれ以上に渡り、該ペレット化した細胞を適当な等張バッファー、例えばPBSに再懸濁し、約320xgにて、約15-20分間に渡り遠心分離処理する。
5. 次いで、該ペレットを、小体積の適当な等張バッファー、例えばPBSに再懸濁する。該ペレットの半分を、凍結のために、ラベルを付した低温処理用バイアルに移す。他の半分を、以下に記載するように、T細胞培養物を樹立するために使用する。凍結すべき該サンプルを遠心分離処理し、次いで、凍結する前に、小体積の適当な等張バッファー、例えばRPMI 1640+DMSOに再懸濁する。
【0030】
T細胞培養物
一態様において、T細胞培養物は、例えば以下のような手順に従って、該WBC調製物中に存在する、T細胞を刺激することによって樹立する:
1. 上記の洗浄した細胞を、適当な細胞培養培地、例えばT細胞刺激性サイトカインおよび/または分裂促進因子を補充したRPMIに再懸濁する。示唆された刺激性サイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15フィトヘマグルチニン(PHA)、コンカナバリンA (con A)、およびヨウシュヤマゴボウ由来の分裂促進因子を含む。一特定の態様において、該WBCは、FBS、IL-2、および刺激濃度のPHAを補充した、適当な体積のRPMI 1640培地中に再懸濁する。次いで、これらを、適当な培養容器に移し、増殖させるのに十分な時間、例えば約2-3日間インキュベートする。
2. 該T細胞を増殖させた後、約3×106細胞/バイアルにて、極低温保存のために補充された、例えばFCSおよびDMSOを含有するRPMI 1640培地を用いて凍結することができる。これは、解凍して、5×105生細胞/mLなる、5mLの培養液を得るのに十分なものである。
【0031】
当業者は、T細胞刺激性サイトカインまたは分裂促進因子の適当な量を確認できるであろうことを述べておくが、典型的には、このような薬剤は、サイトカインについては、約1ng/mL〜約25ng/mLなる範囲(または約100U/mL)の量で添加される。分裂促進因子に関しては、その濃度は、約10ng/mL〜約10μg/mLなる範囲内にあり、低μg/mLの範囲が最も有効である。
酵素活性/増強アッセイ
典型的に、上で単離されたT細胞(例えば、約2.5×106)は、DGJ等の該SPCの不在下または存在下で、適当な培養容器内の培地(凍結されている場合には、予め解凍し)中で、α-GAL活性における変化を見積もるのに十分な時間、例えば2または3日間成長させる。α-GALを増強することが期待されるDGJの用量は、約2nM〜約150nMなる範囲、好ましくは約1nM〜約100nMなる範囲、およびより好ましくは約5nM〜約50nMなる範囲内にある。一特定の態様において、DGJは、約20μMなる用量にて添加される。細胞は、遠心分離により収穫し、PBSで2度洗浄することができる。ペレットは、酵素活性につきアッセイされるまで、-80℃にて凍結状態で保存することができる。
次いで、溶解バッファー(または脱イオン水)の添加および物理的破壊(ピペット処理、撹乱および/または攪拌、および/または超音波処理)によって、室温にて、または氷上で細胞を溶解し、次いで得られるライゼートを氷上でプールし、次に該プールしたライゼートを少量のアリコートに分割し、凍結させる。
【0032】
該ライゼートを、該アッセイの直前に解凍することができ、またマイクロプレート等の適当なウエルに添加する前に、渦流ミキサーを用いて懸濁し、かつ超音波処理すべきである。次いで、N-アセチルガラクトースアミン(GalNAc)を各ウエルに添加(α-ガラクトシダーゼBを阻害するため)し、引続き短時間のインキュベートに処する。次に、4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシド(4-MU Gal)または他の適当な標識DGJ基質を添加し、該プレートを短期間穏やかに混合し、覆いを被せ、37℃にて、基質を加水分解するのに十分な期間、通常は約1時間インキュベートする。該反応を停止させるために、10.7なるpHのNaOH-グリシンバッファーを、各ウエルに添加し、該プレートを、蛍光プレートリーダー(例えば、ワラック1420ビクター3(Wallac 1420 Victor3TM)または同様な装置)で読取らせる。励起および発光波長は、通常通り夫々355nmおよび460nmに設定した。一単位の酵素活性は、1時間当たり1nMの4-メチルウンベリフェロンの加水分解を触媒する酵素量として定義される。各患者サンプルに対して、少なくとも3個の正常なサンプルをも同時にテストすべきである。
【0033】
当分野における当業者は、このアッセイの様々な改良を、容易に行うことができるであろう。α-GAL活性を検出するのに使用できる、人工的な基質の例は、p-ニトロフェニル-α-D-ガラクトピラノシドおよび4-MU GALを含むが、これらに限定されない。明らかに、ヒトα-GALによって開裂し得る基質のみが、使用するのに適している。フルオロゲン性(fluorogenic)基質の使用が好ましいが、α-GAL活性のその他の測定法を、この方法で使用することを意図しており、その例は、色素原性基質または免疫定量技術の利用を含む。
【0034】
診断および予後
該T細胞アッセイは、該増強アッセイを行う前に、DGJの存在下での、該T細胞の培養段階を単に排除することによって、ファブリー病を診断するための診断アッセイとして利用すべく、容易に改良することができる。ファブリー病に罹患している疑いのある個体から樹立した、T細胞中のα-GALの活性は、寧ろ、コントロールとしての正常な個体由来のT細胞を用いて定量することができる。更に、α-GAL活性およびSPC増強アッセイ両者は、一つの患者サンプル由来の、同一のT細胞を用いて、殆ど同時に行うことができる。T細胞は、より多くのα-GALを発現でき(WBCと比較して、正常なT細胞におけるα-GAL活性は、より一層高い)、また誤差の余地がより小さいので、ある患者が、該正常な範囲以下のα-GAL活性をもつか否かを、より高い確実性にて、確認することは容易であろう。従って、該T細胞アッセイの利用は、恐らく誤診を回避することを可能とするであろう。
更に、該改良アッセイは、またSPC療法を開始した患者の経過を継続的に追跡して、α-GAL活性が、該療法の開始前に対して、増大していることを確認することをも可能とする。
【0035】
II. インビボアッセイ
第二の態様においては、WBCを、インビボでのSPCによるα-GALの増強につき評価する。この態様においては、ベースライン値を得るために、SPCの投与前に、患者由来のWBC中のα-GAL活性を評価する。次いで、患者に、毎日DGJ(例えば、150mg/日)を、十分な期間、例えば約10日〜約2週間投与し、次いで血液を抜取り、α-GAL活性のベースライン値からの変化を決定する。投与前またはその後の該細胞の培養は、必要とされない。
該インビボ評価期間中の、DGJ投与の用量および投与様式は、患者に応じて(突然変異には極めて高い不均一性があるので)、また該患者の残留α-GAL活性に応じて変えることができる。非-限定例として、以下のような用量および投与様式が、多くの「救済可能な」個体においてα-GALを高めるのに、十分であると予想される:25mg(2回/日(b.i.d)); 50mg(1回/日); 50mg(b.i.d.); 50mg(一日おきに1回); 75mg(1回/日); 75mg(b.i.d.); 100mg(1回/日); 100mg(b.i.d.); 150mg(1回/日); 150mg(b.i.d.); 150mg(一日おきに1回); 250mg(1回/日); 250mg(b.i.d.)および250mg(一日おきに1回)。特別な態様においては、該用量は、50mg(1回/日); 50mg(一日おきに1回); 150mg(1回/日); 150mg(一日おきに1回)。
【0036】
本発明によるDGJの投与剤は、任意の投与経路に適した処方状態にあるが、経口投与剤形、例えば錠剤、カプセルまたは溶液として、経口経路で投与されることが好ましい。一例として、患者には、各々25mg、50mg、75mgまたは100mgまたはその組合せを含むカプセルが経口投与される。このアッセイに関連して、経口投与する場合、該患者には、食事なしに(例えば、投与前2時間および投与後2時間は、食事なし)、該DGJを投与することが好ましい。というのは、食事と共に摂取した場合には、生体利用性が低下する恐れがあり、そのため結果が不正確になる恐れがある。
他の治療、例えばERTを受けている患者は、該インビボアッセイ前の少なくとも約28日間に渡り、該治療を中断して、確実に、最も正確な結果を得るべきである。
白血球の分離
該T細胞インビボアッセイのために、WSCsを、上記のように単離かつ分別する。しかし、凍結(上記段階5により)前に、該ペレットにRPMI培地またはDMSOを添加すべきではない。
【0037】
酵素活性/増強アッセイ
ペレットを氷上で解凍し、次いで溶解バッファーの添加および物理的破壊(例えば、渦流ミキサーおよび攪拌、および/または室温での超音波処理)によって、該細胞を十分な時間に渡り溶解し、次いで氷上のポリプロピレンチューブ内に該ライゼートをプールし、更に該プールしたライゼートを凍結用のアリコートに分割する。
次に、該WSCのライゼートを氷上で解凍し、混合(ここでも超音波処理および/または撹乱により)する。次に、各ライゼートのサンプル並びに標準物質および負のコントロールを、例えば24または96ウエルマイクロプレート中の、適当なウエルに添加する。例えば、pH4.6のクエン酸塩/リン酸塩バッファー中の、等量のGalNAcを、各ウエルに添加し、次いで標識された基質、例えば4-MU Gal(同様に、pH4.6のクエン酸塩/リン酸塩バッファー中の)を、全てのウエルに添加し、周囲温度にて短期間インキュベートする。次いで、該プレートを、簡単に混合し、37℃にて、基質を加水分解するのに十分な時間、例えば約1時間インキュベートする。該十分な時間の経過後、該反応を、停止バッファーの添加により停止させ、該プレートを、蛍光プレートリーダー(例えば、ワラック1420ビクター3(Wallac 1420 Victor3TM)で読取り、ウエル当たりの酵素活性を決定する。
【0038】
当業者は、このアッセイの様々な改良を、容易に確認できる。α-GAL活性を検出するのに利用できる人工的な基質の例は、p-ニトロフェニルα-D-ガラクトピラノシドおよび4-MU Galを含むが、これらに限定されない。明らかに、ヒトα-GALによって開裂し得る基質のみが、使用するのに適している。フルオロゲン性(fluorogenic)基質の使用が好ましいが、α-GAL活性のその他の測定法を、この方法で使用することを意図しており、その例は、色素原性基質または免疫定量技術の利用を含む。
適正決定基準
SPC療法に対する適性を決定するための基準は、ベースラインにおける患者の残留酵素活性、即ち上記のインビトロアッセイにおいて該未処理T細胞において決定された活性、または該インビボアッセイにおいて、SPCの投与前のWSCにおける活性に依存する。該残留活性が低いほど、患者が治療に対する応答個体であると予想するのに必要な増強の程度が高くなる。
一態様において、該インビトロアッセイに対する適性を決定するための基準は、以下の通りである:
【0039】
・リンパ細胞中の残留α-GAL活性が、正常値の1%未満である場合、DGJと共にインキュベートした後のα-GAL活性は、正常値の少なくとも2%でなければならない;
・リンパ細胞中の残留α-GAL活性が、正常値の1%〜正常値の<3%である場合、DGJと共にインキュベートした後のα-GAL活性は、該ベースラインレベルの少なくとも2xでなければならない;
・リンパ細胞中の残留α-GAL活性が、正常値の3%〜正常値の<10%未満である場合、DGJと共にインキュベートした後のα-GAL活性は、健常者の該ベースラインレベルよりも、少なくとも該正常値の3%高い値でなければならない;
・リンパ細胞中の残留α-GAL活性が、正常値の10%またはそれ以上である場合、DGJと共にインキュベートした後のα-GAL活性は、該ベースラインレベルの少なくとも1.3xでなければならない。
【0040】
もう一つの態様において、ファブリー病に罹患した患者は、DGJ等のSPCの存在下で、T細胞におけるα-GAL活性が、少なくとも約35-40nM/hr/mgタンパク質(これは、正常値の約58%である)である場合、SPC療法に対して適正なものとして分類できる。本発明によれば、該平均の特質が、余りに変動性であって、包括的な手段としては報告できなかった。従って、患者のT細胞サンプルを、該患者検体の採取日から48時間以内に採取し、同等の条件下で生育させた(実施例1参照)、少なくとも3個の正常なコントロールに対して、活性を比較した。比較として、A97V、R301QおよびR111Hをベースラインにて含む、ファブリー病患者由来のT細胞中のα-GAL活性は、8nM/hr/mgタンパク質、4nM/hr/mgおよび1.8nM/hr/mgであった。T細胞は、他のWBCと比較して、高レベルでα-GALを発現し、従ってT細胞に富む培養物中のα-GAL活性は、全WBCにおける正常と考えられる活性(21nM/h/mgタンパク質〜約50nM/h/mgタンパク質;Desnick等, 遺伝性疾患の代謝並びに分子論的基礎(The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Diseases), 第8版, 2001, Scriver等編, pp. 3733-3774, マグロウ-ヒル, N.Y.)よりもかなり高いことが予想される。比較のために、突然変異R220X、R356WおよびG132Rを有する、3名のファブリー病患者は、夫々0.22、0.18および0.26nM/hr/mgタンパク質なるWBC α-GAL活性を有していた。
【0041】
一態様において、インビボアッセイに関連して、適正基準を決定するのに、以下の基準を使用する:
・ベースラインα-GALが、正常値の1%未満である場合、DGJで処理した後の、15日目のα-GAL活性は、正常値の少なくとも2%でなければならない;
・ベースラインα-GALが、正常値の1%〜正常値の<5%である場合、α-GAL活性は、該治療期間の経過後のベースラインレベルの少なくとも2xでなければならない;
・ベースラインα-GALが、正常値の5%〜正常値の<10%である場合、該α-GAL活性は、該治療期間の経過後の該ベースラインレベルよりも、少なくとも該正常値の5%高い値でなければならない;
・ベースラインα-GALが、正常値の10%またはそれ以上である場合、該α-GAL活性は、該治療期間の経過後の該ベースラインレベルの少なくとも1.5xでなければならない。
もう一つの態様において、インビトロまたはインビボアッセイの何れかにあって、SPCと共に培養されていない細胞における活性と比較しての、SPCと共に培養された細胞中の、少なくとも約20%という、活性における増加は、該患者が、臨床的に関連する(治療上有効な)SPC療法に対する応答を持つことを示す指標であり得る。
【0042】
この発見は、特にファブリー病および一般的にはリソソーム蓄積症に関する、診断法を改善し、また臨床的治療法の決定を容易にする方法を与える。その上、この方法は、適当な細胞型における、広範囲に及ぶ遺伝的に規定された疾患にまで拡張することができる。この疾患群は、とりわけ、他のリソソーム蓄積症、嚢胞性線維症(CFTR)(呼吸器系または汗腺上皮細胞)、家族性高コレステロール血症(LDLレセプタ、LPL-脂肪細胞または血管上皮細胞)、癌(p53;PTEN-腫瘍細胞)およびアミロイドーシス(トランスチレチン)を包含する。
キット
本発明は、また治療処置の決定を行うための、販売目的の診断テストキットをも提供する。該キットは、一つの便利な包装体内に、場合により使用説明書および分析指針を含む、勿論患者の血液以外の、上でおよびより具体的には以下の実施例で論じる、調製並びに各アッセイを実施するための材料の全てを提供する。
【0043】
非-限定的な例の一つとして、α-GAL活性を評価するためのキットは、最小限度、以下に列挙するものを含む:
a. 少なくとも1種のT細胞刺激剤;
b. 特異的な薬理的シャペロン;
c. 該酵素アッセイ用の色素原またはフルオロ原性基質(適当な標準物質を含む);および;
d. GalNAc。
該キットは、タンパク質増強アッセイを、最適に実施するための使用説明書(instruction)をも含むことができる。もう一つの態様において、該キットは、適当なチューブ、バッファー(例えば、溶解バッファー)、およびマイクロプレートを含む。
一態様において、該SPCは、乾燥状態で供給され、これは添加する前に再生されるであろう。
もう一つの態様において、本発明は、ファブリー病診断用のキットを提供する。この態様において、該SPCは、該キット内には含まれず、また該使用説明書は、診断に対して特別に作成される。
SPCによる酵素増強につき、正のテスト結果を示す患者は、次に該薬剤で治療され、一方特定の薬剤による酵素増強を示さない患者は、治療を回避して、経費を節減し、かつ治療的様相に応答しないという、感情的な犠牲の発生を回避できる。
【0044】
本発明を、以下に示される実施例によって、更に説明する。このような実施例は、例示の目的でのみ使用され、本発明の範囲および意味またはあらゆる例示される用語を、何ら限定するものではない。同様に、本発明は、ここに記載される任意の特定の好ましい態様に限定されない。事実、本発明の多くの改良並びに変更が、本明細書を読んだ際に、当業者には明らかであろう。従って、本発明は、添付した特許請求の範囲並びに特許請求の範囲に権利の及ぶ等価物の全範囲によってのみ限定される。
実施例1:α-GAL活性に及ぼす、SPCの効果を評価するインビトロ法
本実施例は、特異的な薬理的シャペロンに対する、ファブリー病患者の応答性を決定するための、インビトロ診断アッセイを提供する。
A. Tリンパ細胞を成長させるための、ヒトWBCペレットの調製
【0045】
1. 材料:
・CPTチューブ;ベクトン-ディッケンソン(Becton-Dickenson)(クエン酸ナトリウム含有、BDバクテイナー(VacutainerTM)CPTTM細胞調製チューブ、カタログ# 362761);
・ヒトIL-2 (組換え)、プレプロテック(PreProTECH)、カタログ# 200-02;
・フィトヘマグルチニン(M型) (PHA)、液状、インビトロゲン(Invitrogen)、カタログ# 10576-015;
・RPMI-1640培地、メディアテック社(Mediatech Inc.)、カタログ# 10-040-CV;
・ウシ胎児血清、メディアテック社、カタログ# 35-010-CV;
・クエン酸1水和物、ACS、マリンクロット(Mallinckrodt)、カタログcat # 0627;
・二塩基性リン酸ナトリウム(Na2HPO4)、ACS、マリンクロット、カタログ# 7917;
・水酸化ナトリウムの容積基準溶液10N、マリンクロット、カタログ# H385;
・リン酸、ACS、マリンクロット、カタログ# PX0995-3;
・4-MU α-D-ガラクトピラノシド(4-MU-Gal)、シグマ(Sigma)、カタログ# M-7633;
・N-アセチル-D-ガラクトースアミン(GalNAc)、シグマ、カタログ# A-2795;
・4-メチルウンベリフェロン(4-MU)、シグマ、カタログ# M-1381;
・グリシン、組織培養グレード、フィッシャー(Fisher)、カタログ# BP381;
・二重脱イオン処理(Double deionized)水;
・ドゥルベコリン酸緩衝塩水、PBS (CaおよびMgを含まず)、メディアテック社(Mediatech Inc.)、カタログ# 21-031-CV;
・マイクロBCAプロテインアッセイキット(Micro BCA Protein Assay Kit)、ピアース(Pierce)、カタログ# 23235;
・96-ウエルマイクロタイタープレート、丸底コスター(Costar)黒色ポリスチレン96-ウエル、カタログ# 3792;
・コスター24-ウエル組織培養液処理したマイクロプレート、コーニングライフサイエンスズ(Corning Life Sciences)、カタログ# 3526;
・15mLポリプロピレンファルコンチューブ、ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、カタログ# 352097;
・滅菌極低温バイアル(Cryovials);
・湿潤5%CO2、37℃インキュベータ;
・37℃の水浴;
・蛍光プレートリーダー
【0046】
2. WBC分離
・患者の血液を、8mLのCPTチューブに採り、これを18-25℃にて保存した;
・血液採取後即座に、該チューブを8-10回に渡り転倒させることによって混合した;
・該チューブを、スイングバケットを備えた卓上式遠心分離機を用いて、室温(18-25℃)にて30分間、1800xgにて遠心分離処理した。遠心分離のための閉じられたキャニスター型のバケットの使用を含む、血液検体を扱うための一般的な予防手段を採用した。
・該遠心分離処理に続いて、該血液組成物の幾つかの層が、分離可能となり、このことは、赤血球が、血漿および白血球から分離したことを示す。この分離が起こらない場合には、5分間手で温め、再度遠心分離処理する。
3. WBCの洗浄
・該血漿層の半分を、減圧により吸引し、該白血球を乱さないように捨てた。該細胞層を含む残りの流体全てを、パスツールピペットで、15mLの円錐形スクリューキャップ付きファルコン(Falcon)遠心管に移した。
・PBSを添加して、容積を14mLとし、該チューブを反転させることにより混合した。
・該チューブを、室温にて20-30分間、1300rpm(約320xg)にて遠心分離処理した。
・該遠心分離の直後に、出来るだけ多くの上澄を、減圧により吸引し、生成する細胞ペレットを乱さないように捨てた。
【0047】
4. 随意の洗浄
・該細胞ペレットを、該チューブの底部を軽く叩くことによって、該残留液体中に再度懸濁させた。
・10mLのPBSを、該再懸濁した細胞に添加し、室温にて20分間、1300rpmにて遠心分離処理した。
・該遠心分離の直後に、出来るだけ多くの上澄を、減圧により吸引し、生成する細胞ペレットを乱さないように捨てた。
5. 随意工程:WBCペレットの凍結
・該細胞ペレットを、該チューブの底部を、指で軽く叩くことによって、該残留液体中で混合した。
・0.5〜1mLのPBSを、該再懸濁した細胞に添加し、該ペレットの半分を、(マイクロピペットの滅菌した先端を利用して)標識した1.8mLの極低温バイアルに移した。
・該バイアルを、室温にて5分間、5000rpm(約2250g)にて遠心分離処理した。
・該上澄液の全てを、該細胞ペレットを乱すことなしに、パスツールピペットを用いて捨てた。
・10%FBSおよび5%DMSOを含む、0.5〜1mLのRPMI 1640を、次に該チューブに添加し、液体窒素細胞保存フリーザーに移す前に、-80℃にて一夜凍結させた。
【0048】
B. 血液検体からの、T-細胞培養物の樹立
1. 該洗浄した細胞を、10%コスミックカーフセラム(Cosmic Calf Serum)(CCS、ハイクロンラボラトリーズ(Hyclone Laboratories), UT, ローガン)、約25ng/mLのIL-2(プレプロテック(PreProTECH), NJ, ロッキーヒル)および製造業者の推奨する濃度のPHA(ライフテクノロジー(Life Technology), MD, ガイザースバーグ)を含む3.0mLのRPMI 1640中に再懸濁した。次いで、これら細胞を、直立の25cm3培養フラスコに移し、37℃、5%CO2にて、3-4日インキュベートした。
2. 該細胞培養物を、5mLの成長培地(RPMI 1640、10%FBS、25ng/mL IL-2)で希釈した。次いで、該フラスコ中で、細胞濃度を約5×105細胞/mLに調節した。
3. 該細胞の成長を、毎日監視した。細胞を、直立のフラスコ内で、5×105〜1.5×106細胞なる範囲内に維持した。該フラスコ内での該培地の深さを、1cm(T25において約7mLおよびT75において20mL)に維持した。培養物を、倍化時間約24時間で、約21日間維持した。該培養物の老化期は、成長速度の急激な低下によって明らかであろう。培養時間は、恐らくPHAを用いて再-刺激することによって、延長できる。
4. 随意-凍結T-リンパ細胞:T-リンパ細胞は、20%FCSおよび7.5%DMSOを含むRPMI 1640培地を用いて、3×106細胞/バイアルにて凍結することができる。5、6または7日目に、3×106細胞/バイアルにて、できる限り多くのバイアルを低温保存する。これは、5×105生細胞/mLにて、培養物5mLを解凍するのに十分である。
【0049】
T-細胞培養物を樹立する際には、以下の点に注意すべきである:
・へパリン処理したチューブ(または適当な抗-凝集剤を含むチューブ)に新鮮な血液検体を採取し、その日に使用すべきである。該検体を24時間以内に処理しない場合には、ACDチューブを使用すべきである(Clin. Chem., 1988, Jan;34(1):110-3; Clin. Diagn. Lab. Immunol., 1998, Nov;5(6):804-7)。
・通常、5日までに2×107個の細胞を樹立するのに、各10mLの血液8サンプルで十分である。
・Tリンパ細胞は、HIVウイルスの特異的ターゲットである。該患者のHIV状態が、未知である場合には、細心の注意を払うべきである。
・IL-2の新たな各ロットをテストして、最適の濃度を決定すべきである。これら実験のために使用するプレプロテックからのロットが、25ng/mLにおいて最適であり、50ng/mLまでの濃度において、細胞増殖における僅かな減少を示した。
・分裂促進因子、例えばフィトヘマグルチニンA(PHA)の各ロットは、供給元(インビトロゲン(Invitrogen))によりアッセイされており、またその推奨する希釈度において使用すべきである。
・全ての培養物は、37℃、5%CO2にて、水で飽和された雰囲気内に維持される。
・単核細胞およびリンパ細胞も、リンパ細胞分離培地(フィコール-ハイパック(Ficoll-Hypaque))またはリンフォプレプ(Lymphoprep)チューブを使用し、その製造元の標準的な手順に従って採取することができる。
【0050】
蛍光活性化細胞選別によって分析した場合、該IL-2およびPHS刺激方式は、99%CD3-ポジティブ細胞(全てのT細胞サブセットを染色する)をもたらし、等しい数のCD4-ポジティブ細胞およびCD4-ネガティブ細胞(データは示さず)を含む。
C. シャペロン治療
該T細胞の密度は、培地(RPMI 1640、10%FBS、25ng/mL IL-2) 3mL当たり1×106細胞に調節される。次いで、3mL(〜1×106細胞)を、ラベル付けした6-ウエルの培養プレートの6個のウエル各々にピペットで分配し、37℃、5%CO2にて、一夜インキュベートする。次いで、3mLの追加の培地を3つのウエルに添加し、最終体積を6mL/ウエルとした。残りの3つのウエルに対し、約40μM(2x;最終濃度は20μM)なる濃度のDGJ(ケンブリッジメジャーラボラトリーズ社(Cambridge Major Laboratories, Inc.) WI, ジャーマンタウン)を含有する3mLの培地、4-5日間。細胞を遠心分離(400xgにて約10分間)によって収穫し、10mLのPBSで1回洗浄した。得られたペレットを、1mLのPBS中に再懸濁し、1.7mLの微量遠心管に移し、3000rpmにて5分間、冷蔵した小型遠心機で遠心分離した。得られた上澄を、吸引し、得られるペレットを、酵素活性につきアッセイするまで、-80℃にて凍結状態で保存した。
該増強アッセイを実施する前に、DGJを2nM-200μMなる範囲内で使用して、DGJの最適濃度を決定した。その結果、20μMが最適であることが分かった。
【0051】
D. 線維芽細胞の調製
比較のために、線維芽細胞培養物を、前に記載したように調製した(例えば、米国特許第6,274,597号)。簡単に説明すると、線維芽細胞培養物は、患者の皮膚のバイオプシー由来のものであり、また10%FBSを含むDMEM中で、該培養物が樹立されるまで(3-4週間)、成長させた。
E. 活性のアッセイ
アッセイに先立って、該T細胞を氷上で解凍させ、2分間超音波照射し、また全ての他のアッセイ薬剤は、室温にて解凍させた。α-GAL活性の蛍光測定法によるアッセイを、本質的に以前に記載されたように行った(Kusiak等, J. Biol. Chem., 1978; 253(1), 184-190)。該細胞を、激しくピペット処理し、かつ撹乱しつつ、0.2mLの脱イオン水中で溶解した。4℃にて2分間、13000rpmにて遠心分離した後に得られた上澄を、新たなチューブに入れ、α-GAL源として使用した。24-ウエルマイクロプレート内で、37℃にて、該上澄のアリコート50μL(標準的なタンパク質定量アッセイにおいて20μLを用いて測定した値と匹敵するタンパク質を含む)を、タウロコール酸塩を含まず、BSA(3mg/mL)を含む、クエン酸/リン酸塩バッファー(27mMクエン酸/46mMリン酸塩バッファー、pH 4.6)中の、3.75mMの4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシド(4-MU Gal)(リサーチプローダクツインターナショナル(Research Products International), IL, マウントプロスペクト(Mount Prospect))と共にインキュベートすることによって、α-GAL活性を決定した。α-GALの割合は、全活性を、N-アセチルガラクトースアミニダーゼの特異的阻害剤である、117mMのN-アセチルガラクトースアミン(GalNAc)(シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.), MO, セントルイス)の存在下で観測された活性と比較することによって決定した。ワラック1420ビクター3(Wallac 1420 Victor3TM)蛍光検出リーダー(パーキンエルマー(Perkin Elmer)社製、CA)を使用して、夫々355nmおよび460nmなる励起および発光波長にて、放出された4-MUを測定した。蛍光測定用標準、および負のサンプル(基質を含まないか、あるいはライゼートを含まない)に関する適当なウエルをも使用した。各患者のサンプルに対して、少なくとも3つの正常なサンプルを同時にテストした。
【0052】
インキュベーションは、典型的には30分間行ったが、より長時間または短時間を使用して、同様な結果を得ることも可能である。
酵素活性(nM/hr/mgタンパク質)は、以下の式に従って算出した:
[(サンプルの蛍光)/(標準の蛍光)]×[(60分)/(インキュベート時間(分))]×[(1000μL)/(アッセイした体積(μL))]×[1/(タンパク質値(mg/mL))]
酵素活性の1単位は、1時間当たり、1nMの4-メチルウンベリフェロンの加水分解を触媒する、酵素の量として定義される。該蛍光出力における該ベースライン「ノイズ」を、6回のブランクの平均値を評価することによって得た。SPC治療に伴う該活性が、該ベースラインを、少なくとも2標準偏差越えた場合に、応答性であり、ノイズではないと考えた。
比較の線維芽細胞増強アッセイに関連して、線維芽細胞(〜1.5×106)を、20μMのDGJの不在下または存在下で、3日間、T75組織培養フラスコ内で、12mLの培地中で生育させた。該インキュベーション期間の終了時点において、細胞を、トリプシン-EDTA溶液で処理して、該フラスコから取出し、遠心分離処理により集め、3回リン酸緩衝塩水で洗浄した。細胞ペレットを、α-GAL活性につきアッセイするまで、-80℃にて凍結させた。該抽出バッファーを含む、該細胞ペレットを処理するための全ての段階、超音波処理時間および使用した体積は、上でアッセイしたT-細胞について使用したものと同一である。
【0053】
F. ウエスタンブロット
α-GALタンパク質のレベルを、ウエスタンブロットにより測定した。タンパク質は、マイクロBCAプロテインアッセイ(Micro BCA Protein Assay)キット(ピアース(Pierce), IL, ロックフォード(Rockford))を使用し、標準物質としてウシ血清アルブミン(BSA)を用いて測定した。562nmにおける吸光度は、モレキュラーデバイスズベルサマックス(Molecular Devices VersaMax)吸光度リーダーを、96-ウエルフォーマットで使用して測定した。ウエスタンブロットに先立つゲル電気泳動のために、ノベックストリグリシン(Novex Triglycine)そのもの、または8-16%勾配ゲル(インビトロゲン)中でのSDS-PAGEを利用して、タンパク質を分離した。ウエスタンブロットは、α-GALに対するウサギポリクローナル抗体を用いて展開し、以前に記載されたようにして行った(Park等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2003; 100: 3450-54)
結果:
T細胞を使用した、上記の方法は、T細胞アッセイと、実質的に同様にして(但し、約1.5x106個の線維芽細胞を、2.5x106個のT細胞の代わりに、各ウエルに塗布した)行った線維芽細胞を基本とするα-GALアッセイを比較した場合、迅速かつ効果的である。
【0054】
この方法を利用して、ファブリー病患者由来のT細胞を、20μMのDGJの存在下または不在下で、夫々1、2および4日間インキュベートし、細胞ホモジネート中の該α-GAL活性を測定し、正常なコントロール値と比較した。該培地を2日後に新しくし、また該細胞を更に2日間インキュベートした場合には、A97Vのα-GAL活性は、該正常なコントロールの13%であった(図1、白丸)。しかし、20μMのDGJを、該T細胞を含む培地に添加した場合、該α-GAL活性は、インキュベーションの僅か1日後に、正常値の約40%まで増大し、インキュベーションの4日後には、正常値の約80%まで増大し続けた(図1、黒丸)。新たなDGJの添加、および2日後の培地の添加および更に2日間のインキュベーションは、一回のDGJの添加について観測されたものに対して、プロフィールにおいて、如何なる変化も示さなかった。3日後に観測された活性における、DGJを添加しなかった際に観測されたα-GAL活性とは、明らかに識別可能なレベルへの増加は、その後の実験において、20μMのDGJと共にインキュベートした3日後を、標準的測定時間として採用することへと導いた。3日間という時間の使用は、新たな培地を使用しおよび/または3日後に培養物中の細胞を分離する必要性を排除する。
【0055】
正常なコントロール由来のT細胞における、DGJの用量効果を決定するために、2nM〜200μMなる範囲内のDGJを使用して、患者細胞中のα-GAL活性を測定し(図2A)、同一の日にアッセイされた未処置の正常なコントロール値と比較した。α-GAL活性は、2nM〜20μMなる範囲のDGJによって増大した。200μMにおいて、DGJは、正常なα-GAL活性を、未処理の正常なコントロールの平均値の約40%まで阻害した。この同一のDGJ濃度範囲内で、突然変異したα-GAL活性の最適の増強を、該A97V突然変異につき決定し、正常なコントロールと比較した(図2B)。3種の別々の実験を、A97Vに及ぼす用量効果について行った。2nM〜20μMなる範囲の濃度のDGJは、用量-依存様式で、A97Vのα-GAL活性を高めた。しかし、DGJ濃度200μMにおいて、細胞を20μMのDGJにおいて成長させた際の、α-GAL活性の最高レベルと比較した場合には、該活性における減少がみられた。これら3つの実験全てにおいて、該A97V突然変異の活性の最適の増強は、20μMのDGJにて観測され、2および200μMにおいては、僅かに低い活性を示した。同一の濃度範囲において、突然変異R112HおよびR301Qをテストした場合には、同様なパターンが現れ、増強された活性の最大のレベルは、20μMのDGJにて観測された(図2C)。これらの結果は、様々な突然変異が、類似する用量応答性プロフィールを持つが、増強レベルにおいて異なることを示した。該用量効果につきテストされた3種のα-GAL突然変異遺伝子型の中では、該20μMのDGJが、該正常なコントロールの少なくとも50%までの、α-GALにおける増加をもたらした。
【0056】
少なくとも11の明確な遺伝子型を持つ、ファブリー病に罹患した患者由来の突然変異α-GALの救済効果が、このT-細胞を基本とするα-GALアッセイを使用し、薬理的シャペロンを使用して観測された。以下の表1に記載された結果は、DGJが、T細胞および線維芽細胞(F)中の、少なくとも5種の異なるα-GALの突然変異型の活性を増強することを示した。しかし、該薬理的シャペロンは、4種の異なるα-GALの突然変異型の活性を増強しなかった。1種の古典的なファブリー病患者のα-GAL活性は、中間的なレベルのDGJによって増強された。このアッセイの重要性は、これが、薬理的シャペロン投与の利益を受けるものと思われる患者に関するスクリーニングのために使用できるという事実にあり、従って不要な治療および組織バイオプシーによる経費増およびこれらに対するフラストレーションの発生を回避することができる。
【0057】
【表1】





使用した略号:PT:患者;NL:正常な個体;E:増強性;I:増強性(中間的);NE:非-増強性
【0058】
該インビトロアッセイにおいて、突然変異を被ったα-GAL活性の最適の増強が、約20μMのDGJを用いて達成されることが確認された。該用量効果に関してテストした、3種のα-GAL突然変異体遺伝子型の中では、該20μMのDGJが、各々につき該正常なコントロールの少なくとも50%まで、α-GALの増加をもたらした(図3)。
上記表1において、増強可能な群は、α-GAL活性が、DGJの存在下で培養した場合に、正常なコントロールの少なくとも50%である(例えば、R112Hは、正常なコントロール活性の60%まで増強された)患者を包含した。事実、該増強可能な群においては、突然変異:A97V、R301Q、R112HおよびL300Pが存在する。例えば、A97V突然変異に係る活性は、DGJの存在下において、14%から75%に増大し、これは6-倍の増加であった。同様に、R301Qの活性は、正常値の7%から80%へと12-倍に増加し、R112Hの活性は3%から60%に増加し、ほぼ20-倍の変化であった。更に、L300P突然変異における活性は、正常値の2%から72%へと増加し、37-倍の増加であり、これは、検討した増強可能な突然変異の中で、最大であった。L300Pは、DGJの不在下における活性の幾分かが、検出の最低閾値以下である点において例外的であった。これら結果は、突然変異-依存性増強レベルおよび比を明らかにしている。
【0059】
ウエスタンブロットは、正常なコントロール細胞およびA97VおよびR301Q突然変異を持つ細胞において、DGJによる処置によって、バンド強度が著しく増大し、一方、R356W、G132R、およびA143Pに関しては、如何なる増大も見られなかった(図3)。該タンパク質は、低分子量側にシフトしているものと考えられ、これは、小胞体から、ゴルジ装置を介して、リソソームへと移動することによる、該酵素の成熟を示した。該ウエスタンブロットは、DGJによるα-GAL活性の増強が、高い濃度のα-GALタンパク質と相関していることを示す。ウエスタンブロットによって測定したような高いタンパク質レベルが、より高い酵素活性をもたらさない例は、いまだ観測されていない。
【0060】
論考
SPCによる酵素の増強に係るテスト系内でのT細胞の使用は、アッセイの速度における顕著な利点および他の培養系を越える便宜を与える。どの患者が、SPC療法からの利益を得ることができるかを決定する際の決定的な段階は、DGJによりα-GAL活性を増強するための、患者-由来の細胞をスクリーニングするための迅速かつ信頼性の高い方法を開発することであった。上記結果は、短命細胞培養物を迅速に生成する方法が、該増強に関するテストを可能とし、また作用のメカニズムに関する将来の研究のための、および付随的なシャペロン分子をスクリーニングするための、有用な系を提供するものであることを立証している。伝統的に、罹患した個体および保因者の状態を診断するために使用されている白血球は、必要により、反復的にアッセイするのに十分に長い期間に渡り、生存することはない。
エプスタイン-バール(Epstein-Barr)ウイルスで形質転換したBリンパ芽球(Fan等, Nat Med., 1999; 5(1), 112-115)および一次線維芽細胞培養物(Fan, 上記文献; Mayes等, Clin. Chim. Acta., 1981; 112(2), 247-251)をテストしたが、これらは、臨床研究のために、患者をスクリーニングすべく大規模で使用するには不便である。一次線維芽細胞培養物は、侵襲的な皮膚パンチバイオプシーを必要とし、また一般的に該アッセイにとって十分な細胞を生育するためには、少なくとも3〜4週間を要する。B細胞リンパ芽球は、酵素活性に未知の効果を及ぼすことに加えて、時間および労力の浪費につながる、エプスタイン-バールウイルスによるトランスフェクションおよび選別工程を必要とする。
【0061】
本発明は、正常なコントロール個体およびファブリー病に罹患した患者由来の新鮮な血液から、T細胞培養物を樹立する方法を提供する。これらの培養物は、7〜10日間、α-GALに関する増強アッセイで使用するために、増殖させることが可能である。これらのデータは、またDGJ増強の有効性が、該T細胞生育培地において、約3日後に明らかになったことを示す。得られたこれらデータは、特定の遺伝子型に対して、SPCによる酵素活性の増強程度の再現性のある尺度となる。
この方法は、グリコスフィンゴリピドシス、ムコ多糖症、およびグリコーゲン蓄積症(ポンペ病)を包含する他の遺伝子疾患の、他のSPCを基本とする増強アッセイのために使用でき、また広範囲に渡る遺伝により規定される疾患、例えば嚢胞性線維症(CFTR)および癌(p53、PTEN)等における、研究並びに臨床的プロトコールとして拡張することができる。
【0062】
実施例2:SPCのα-GAL活性に及ぼす効果を評価するためのインビボ法
本例は、10種の異なるα-GAL突然変異を被ったファブリー病患者(n=11)における、DGJのオープンラベルフェイズ(open label Phase) II研究で得た結果を説明し、またインビボアッセイの使用の効果を確認する。該患者は、上記したT-細胞アッセイにおける、α-GAL活性の増加に基く、該フェイズII研究のために選別された。その遺伝子型は、以下の通りであった:T41L(2名の患者); A143T; A97V; M51K; S276G; L300P; G328A; P205T; N215S; およびL415P。
幾人かの患者(8)は、以下のような投与スケジュールに従ってDGJの投与を受けた:25mg b.i.d. (1日2回)、2週間;100mg b.i.d.、2-4週間;250mg b.i.d.、4-6週間;および25mg b.i.d.、6-12週間。3名の患者は、この研究全体を通して、1日おきに150mgのDGJの投与を受けた。血液を、各投与期間の終了時点において、8mLのバクテイナー(Vacutainer) CPTチューブに取出し、以下に説明するように処理した:
【0063】
A. アッセイ用のヒトWBCペレットの調製
実施例1に記載の手順と同様に、但し凍結前に、該ペレットにFBS/DMSOを添加せずに、WBCを調製した。
準備的なデータを、以下の表にまとめた:
B. アッセイ用のヒトWBCライゼートの調製
・該WBCペレットを含有するマイクロチューブに、0.6mLの溶解バッファー(26mMのクエン酸/46mMのリン酸塩、pH 5.5);
・これらチューブを、該細胞が再懸濁されるまで、撹乱させた;
・チューブを室温にて約15分間インキュベートするが、各2分間当て撹乱することにより、該懸濁液を攪拌した;
・チューブを2分間超音波処理し、次いで約10秒間攪拌した;
・ライゼートを、氷上で冷却されるまでインキュベートし、次いで予め冷したポリプロピレン容器(氷上)内でプールした;
・容器を攪拌し、プールしたライゼートを、予め冷し、0.100mLのアリコートに分割して、ラベル付けした0.5mLのスクリューキャップ付きポリプロピレン微量遠心管に入れた。プールしたライゼートを混合し、一方で各10-20個のアリコートに、攪拌により等分した;
・アリコートを、使用するまで、-80℃にて保存した。
【0064】
C. ヒトWBCアッセイ
・ライゼートを含む各チューブを、氷上で解凍し、2分間超音波処理し、次いで1分間攪拌した;
・各50μLの標準物質、コントロール、または臨床サンプルを、黒色マイクロプレートの適当なウエルに添加した(標準物質に対して、0.5%BSA含有WBC溶解バッファー50μLを使用);
・50μLの117mM GalNAcを、全てのウエルに添加し、該プレートを、周囲温度にて5分間インキュベートした;
・50μLの5mM 4-MU Gal基質を、全てのウエルに添加し、該ウエルを、プレートシェーカーで30秒間混合した;
・該プレートを覆い、約1時間37℃にてインキュベーションした;
・10.7なるpHをもつ0.2M NaOH/グリシンバッファー100μLを各ウエルに添加して、該反応を停止させた;
・該プレートを、実施例1に記載したように、蛍光プレートリーダーにより読取った。
【0065】
結果
少なくとも12週間に渡り、DGJで治療した第一の11名の患者からの利用可能なデータは、DGJによる治療が、該11名の患者中10名において、ファブリー病において欠乏する該酵素の活性の増大へと導くことを示唆している(図4)。該L415P遺伝子型を持つ患者は、DGJ治療(6週間目)に伴う、該活性の増加を示さなかった(図5)。該表における正常値に対する百分率を算出する目的のために、正常なα-GALのレベルを、多重投与フェイズIの研究から、15名の健常な志願者の白血球中の、α-GALのレベルの平均値を用いて導いた。該11名の患者は、10種の異なる遺伝的突然変異を表し、また正常値の0〜30%なる範囲に及ぶ、α-GALのベースラインレベルを有していた。
これらデータは、平均して2-倍のα-GALの増加を示し、また白血球において測定した、何名かの患者の10-倍および15-倍までの増加であることを示す。活性は、6-24週に渡り、高い値を維持し、また用量を25mg b.i.d.まで減じた(データ提示せず)際に計数した。
【0066】
論考
これらの結果に基き、実施例1に記載したようなT細胞を使用し、インビボアッセイまたはインビトロアッセイを利用して、シャペロンに対する適性につき、候補としての患者をスクリーニングすることが可能になると考えられた。というのは、該T細胞アッセイにおいて、α-GAL活性が大幅に増加することが立証された、11名の患者のうち10名が、2週間に渡るDGJによる治療後に、増加することが明らかになったからである。インビボでのスクリーニングは、DGJおよび他のシャペロンを用いた治療に対するインビボ応答の、より一層正確な評価を可能とすることができる。というのは、該インビトロアッセイは、全身性の相互作用のために、インビボ応答の完全に正確な予測を可能とせず、また適当な用量決定のために有用であり得るからである。この活性における顕著な増加は、僅かに50mg/日(25mg b.i.d.)なる低用量にて、2週間後に現れた(異なる投与方式が、本発明においては意図されているが)。
これらの方法は、他の遺伝に起因する疾患、例えばタンパク質の成熟がERにおいて起こる嚢胞性線維症に加えて、グリコスフィンゴリピドシス、ムコ多糖症、および他のリソソーム蓄積症を包含する他の遺伝性疾患に関する、シャペロンを基本とする増強アッセイのために使用できる。
【0067】
本発明は、ここに記載した特定の態様により、その範囲が限定されるものではない。事実、ここに記載した態様に加えて、本発明の様々な改良が、上記説明および添付図から、当業者には明らかに夏であろう。このような改良は、本発明の添付した特許請求の範囲内に入るものとする。
特許、特許出願、刊行物、製品の説明、ゲンバンク(GenBank)の承認番号、およびプロトコールが、本件特許出願全体を通じて引用されており、その開示事項は、全体として、あらゆる目的にとって、ここに参考として組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】A97Vに関する増強の時間的推移を示す。α-GAL AにおいてA97V突然変異を持つT-細胞を、20μMのDGJの不在下(白丸)または存在下(黒丸)において、1〜4日間培養し、次いでα-GAL活性についてアッセイした。2日後の培地の交換およびDGJを含む(白抜き三角)または含まない(黒三角)新鮮な培地による置換は、観測した酵素活性に何ら効果を及ぼさなかった。
【図2】正常なコントロールおよびファブリー病患者由来のT-細胞におけるDGJの濃度依存性を示す。正常な個体(2A)由来のT-細胞を、2nM〜200μMなる範囲のDGJと共に3日間インキュベートし、次いでα-GAL活性についてアッセイした。異なる経過日におけるこれら3つの実験の結果を示す。夫々A97V(2B)、R112H(2C)、またはR301Q(2C)突然変異を持つ、ファブリー病患者由来のT-細胞を、2nM〜200μMなる範囲のDGJと共に3日間インキュベートし、次いでα-GAL活性についてアッセイした。各々3回ずつ行った、3種の独立の、DGJ投与実験群を示している。
【図3】様々なファブリー病患者由来のT-細胞を、20μMのDGJの不在下または存在下で、3日間インキュベートし、次いでα-GAL活性についてアッセイした。該α-GALの特異的活性の、平均の正常値に対する百分率をグラフにして、ファブリー病患の種々の遺伝子型に及ぼすDGJの救済効果を示した。下方のパネルは、α-GALに対して特異的なポリクローナルウサギ抗体をプローブとした、各突然変異に対するウエスタン部ロットの結果を示す。これは、増強可能な突然変異A97VおよびR301Qに対して高いタンパク質安定性を持つことを立証しており、また突然変異R356W、G132RおよびA143Pに対しては、タンパク質量の増加をもたらさないことを立証している。
【図4】DGJによる治療後の、ファブリー病患者のWBCにおける、α-GAL活性のインビボ増強を、グラフで示したものである。
【図5】10種の遺伝子型に対する、α-GALのインビトロおよびインビボ増強の比較を、グラフで示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質の活性において欠失のある患者が、該タンパク質に対する特異的な薬理的シャペロンによる治療に対して、応答するか否かを決定する方法であって、該方法が、
a. 患者内の、あるいは該患者由来の細胞と、該タンパク質に対して特異的な、薬理的シャペロンとを接触させる工程、および
b. 該特異的な薬理的シャペロンと接触しなかった細胞内のタンパク質活性と、該特異的な薬理的シャペロンと接触した細胞内のタンパク質活性とを比較する工程、
を含み、
該特異的な薬理的シャペロンと接触しなかった細胞内の該タンパク質活性と比較しての、該特異的な薬理的シャペロンと接触した細胞内の該タンパク質活性における十分な増加が、該特異的な薬理的シャペロンによる治療に対して、該個体が応答することを示すものである、
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記活性における欠失が、前記タンパク質をコードする遺伝子におけるミスセンス突然変異によって引起されるものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質が、酵素である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記酵素が、リソソーム酵素である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、リソソーム蓄積症に関して診断されている、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記リソソーム酵素が、α-GALであり、かつ前記リソソーム蓄積症が、ファブリー病である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記特異的な薬理的シャペロンが、1-デオキシガラクトノジリマイシンである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、白血球であり、かつ前記特異的な薬理的シャペロンとの前記接触が、インビボにて起こる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記白血球が、Tリンパ細胞であり、かつ前記特異的な薬理的シャペロンとの前記接触が、インビトロにて起こる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記Tリンパ細胞が、
a. 前記患者から得た血液サンプルから白血球を分離し、
b. 該白血球を洗浄し、および
c. Tリンパ細胞に富む細胞培養物を樹立する、
ことによって得られる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記Tリンパ細胞が、前記特異的な薬理的シャペロンとしての1-デオキシガラクトノジリマイシンの不在下、またはその存在下にて、約1〜3日間培養された、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記1-デオキシガラクトノジリマイシンの不在下、またはその存在下における前記培養を、約3日間行う、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記Tリンパ細胞由来のライゼート中の、基質の加水分解を定量する、蛍光測定アッセイを利用して、前記α-GALの活性を測定する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記患者が応答するか否かを示す、前記1-デオキシガラクトノジリマイシンの存在下での、前記ライゼート中の活性における前記十分な増加を、以下の基準:
i) ベースライン活性が、正常値の1%未満である場合、培養後の、あるいはSPCで処置した後の該活性は、正常値の少なくとも2%でなければならない;
ii) ベースライン活性が、正常値の1%〜3%未満である場合、培養後の、あるいはSPCで処置した後の該活性は、該ベースラインレベルの少なくとも2倍でなければならない;
iii) ベースライン活性が、正常値の3%〜10%未満である場合、培養後の、あるいはSPCで処置した後の該活性は、健常者の該ベースラインレベルよりも、正常値の少なくとも3%高い値でなければならない;
iv) ベースライン活性が、正常値の10%またはそれ以上である場合、培養後の、あるいはSPCで処置した後の該活性は、該ベースラインレベルの少なくとも1.3xでなければならない、
に従って測定する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記患者が応答するか否かを示す、前記1-デオキシガラクトノジリマイシンの存在下での前記活性における十分な増加が、該1-デオキシガラクトノジリマイシンの不在下における該活性と比較して、約2倍〜25倍なる範囲である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記患者が応答するか否かを示す、前記1-デオキシガラクトノジリマイシンの存在下での前記活性における十分な増加が、該1-デオキシガラクトノジリマイシンと共に培養されていない細胞内の該活性を、少なくとも約20%越える、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、約2週間に渡り、毎日1-デオキシガラクトノジリマイシンの投与を受ける、請求項8記載の方法。
【請求項18】
前記投与が、経口投与である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記1-デオキシガラクトノジリマイシンが、約50-500mg/日なる用量で投与される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記用量が、約100-250mg/日なる範囲内にある、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記用量が、約150mg/日である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記1-デオキシガラクトノジリマイシンが、1日当たり1回投与される、請求項19記載の方法。
【請求項23】
更に、2週間の終了時点において、血液サンプルを採取し、白血球を分離する工程をも含む、請求項17記載の方法。
【請求項24】
前記白血球由来のライゼートにおける、基質の加水分解を定量する、蛍光測定アッセイを利用して、前記α-GAL活性を測定する、請求項17記載の方法。
【請求項25】
前記患者が応答するか否かを示す、前記1-デオキシガラクトノジリマイシンの存在下での、前記ライゼート中の活性における前記十分な増加を、以下の基準:
i) ベースライン活性が、正常値の1%未満である場合、培養後の、あるいはSPCで処置した後の該活性は、正常値の少なくとも2%でなければならない;
ii) ベースライン活性が、正常値の1%〜5%未満である場合、培養後の、あるいはSPCで処置した後の該活性は、該ベースラインレベルの少なくとも2倍でなければならない;
iii) ベースライン活性が、正常値の5%〜10%未満である場合、培養後の、あるいはSPCで処置した後の該活性は、健常者の該ベースラインレベルよりも、正常値の少なくとも5%高い値でなければならない;
iv) ベースライン活性が、正常値の10%またはそれ以上である場合、培養後の、あるいはSPCで処置した後の該活性は、該ベースラインレベルの少なくとも1.5xでなければならない、
に従って測定する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
a. 少なくとも1種のT細胞刺激剤;
b. 特異的な薬理的シャペロン;
c. 該シャペロンに対する標識基質;
d. GalNAc;および
e. タンパク質増強アッセイを行うための使用説明書
を含むことを特徴とする、キット。
【請求項27】
前記T細胞刺激剤が、マイトジェンである、請求項26記載のキット。
【請求項28】
前記マイトジェンが、PHAである、請求項27記載のキット。
【請求項29】
前記刺激剤が、サイトカインである、請求項26記載のキット。
【請求項30】
前記サイトカインがIL-2である、請求項29記載のキット。
【請求項31】
前記薬理的シャペロンが、1-デオキシガラクトノジリマイシンである、請求項26記載のキット。
【請求項32】
更に、1種またはそれ以上の血液採取用チューブ、遠心管、およびクライオチューブをも含む、請求項26記載のキット。
【請求項33】
前記タンパク質が、酵素である、請求項26記載のキット。
【請求項34】
前記酵素が、α-ガラクトシダーゼAである請求項33記載のキット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−537149(P2009−537149A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511222(P2009−511222)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/069046
【国際公開番号】WO2007/137072
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508340916)アミークス セラピューティックス インコーポレイテッド (3)
【出願人】(508342024)ナショナル インスティテュート オブ ヘルス (2)
【Fターム(参考)】