説明

ファンを有するコンピュータシステムの検査方法及び検査装置

【課題】ファンを有するコンピュータシステムを効率的に検査できる検査装置及び検査方法を提供すること
【解決手段】本発明にかかる検査装置は、ファン4及びファン4の回転速度を制御するファン回転速度制御手段3を備えるコンピュータシステム1を検査する検査装置2である。検査装置2は、ファン4の回転速度を測定し、規定の回転速度と略同一であるか否かを判定する回転速度判定手段5と、回転速度判定手段5の判定に基づいて、ファン4が、前記規定の回転速度と略同一の速度で回転している累積時間を算出する累積時間算出手段6と、累積時間算出手段6で算出した累積時間と、規定の時間との大小を判定する累積時間判定手段7と、累積時間判定手段7が前記累積時間は前記規定の時間よりも少ないと判定した場合に、ファン回転速度制御手段3に対し、ファン4を前記規定の回転速度で回転させる指示を出力する回転速度指示手段8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンを有するコンピュータシステムの検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータシステムに内蔵されたファンについては、様々な検査方法が提案されている。例えば、特許文献1では、ファンの回転数が閾値よりも小さい場合に、ファンの稼働時間が保証時間より少なければファンの故障と判定し、ファンの稼働時間が保証時間より多ければファンが寿命に達したと判定する技術が開示されている。特許文献2では、ファンの回転数と指示回転数を比較してファンの故障を判定するほか、積算したファンの動作時間がファンの寿命時間を超過した場合に警告を通知する技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献3では、ファンの回転速度の変更が指示された後にファンの回転数の変化がなければ、ファンの故障を通知する技術が開示されている。特許文献4では、二連のファンにおいて、一方のファンを高速に、他方のファンを低速に回転させ、高速回転側のファンの回転数と設定回転数を比較することで、当該ファンの故障を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−307194号公報
【特許文献2】特開2006−140031号公報
【特許文献3】特開2008−208806号公報
【特許文献4】特開2010−133330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般にファンを有するコンピュータシステムにおいて、ファンも含めたコンピュータシステム全体の検査を行う際に、規定の回転パターンで規定検査時間分ファンを動作させるファンの検査工程は、ファン以外の他の検査工程とは別に設けられている。つまり、コンピュータシステムの他の検査工程においては、ファンが規定の回転パターンで動作しているか否かの計測は行われていない。そのため、結果として、コンピュータシステム全体の検査工程において、規定検査時間を超過する規定の回転速度のファンの動作が行われてしまい、検査の工程が余分に生じてしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ファンを有するコンピュータシステムを効率的に検査できる検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる検査装置は、ファン及び前記ファンの回転速度を制御するファン回転速度制御手段を備えるコンピュータシステムを検査する検査装置であって、前記ファンの回転速度を測定し、規定の回転速度と略同一であるか否かを判定する回転速度判定手段と、前記回転速度判定手段の判定に基づいて、前記ファンが前記規定の回転速度と略同一の速度で回転している累積時間を算出する累積時間算出手段と、前記累積時間算出手段で算出した累積時間と規定の時間との大小を判定する累積時間判定手段と、前記累積時間判定手段の判定において、前記累積時間が前記規定の時間よりも少ないと判定された場合に、前記コンピュータシステムの前記ファン回転速度制御手段に対し前記ファンを前記規定の回転速度で回転させる指示を出力する回転速度指示手段と、を備えるものである。
【0008】
本発明にかかる検査方法は、ファン及び前記ファンの回転速度を制御するファン回転速度制御手段を備えるコンピュータシステムを検査する検査方法であって、前記ファンが規定の回転速度と略同一の速度で回転している累積時間を算出する第1のステップと、前記第1のステップで算出された累積時間と規定の時間との大小を判定する第2のステップと、前記第2のステップで前記累積時間が前記規定の時間よりも少ないと判定された場合に、前記ファン回転速度制御手段に対し前記ファンを前記規定の回転速度で回転させる指示を出力する第3のステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ファンを有するコンピュータシステムを効率的に検査できる検査装置及び検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1にかかる、コンピュータシステム及び検査装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】実施の形態2にかかる、本実施の形態にかかる検査装置を使用した検査工程と、使用しない通常の検査工程とを比較した図である。
【図3】実施の形態2にかかる、コンピュータシステム及び検査装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】実施の形態2にかかる、ファンの検査方法の具体例を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態2にかかる、ファンの動作時間積算の具体例を示す図である。
【図6】実施の形態2にかかる、ファンの検査結果の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本実施の形態における、コンピュータシステム及び検査装置の構成例を示すブロック図である。図1において、コンピュータシステム1は、ファン4と、ファン4の回転速度を制御するファン回転速度制御手段3とを備えている。コンピュータシステム1の検査装置である検査装置2は、回転速度判定手段5、累積時間算出手段6、累積時間判定手段7、回転速度指示手段8を備えている。
【0012】
また、コンピュータシステム1と検査装置2とは配線又はネットワークで接続されており、ファン4の回転速度に関する情報は、回転速度判定手段5に対して出力される。回転速度指示手段8が出力する、ファン4の回転速度指示は、ファン回転速度制御手段3に対して出力される。図1における矢印は情報の出力があることを示し、矢印の向きは情報の出力方向を示している。
【0013】
コンピュータシステム1は、例えばサーバ、メインフレーム、スーパーコンピュータといった、大量データ用の処理システムである。あるいは、ワークステーション等の、情報処理を行うコンピュータでもよい。
【0014】
ファン4は、コンピュータシステム1に備えられ、コンピュータシステム1の内部を冷却させる働きを有する。
【0015】
ファン回転速度制御手段3は、コンピュータシステム1の行う処理に応じてファン4の回転速度を決定し、ファン4に対して決定した回転速度の指示を出力する。また、外部(回転速度指示手段8)から回転速度指示を取得した場合、その指示に基づいて、ファン4を規定の速度で回転させる。
【0016】
なお、ここでは図示しないが、具体的な構成としてコンピュータシステム1は、通常のコンピュータと同様、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)といったメモリ、補助記憶装置などを備えている。補助記憶装置は、ハードディスクドライブや磁気テープなどで構成され、大容量のデータを格納することができる。ファン回転速度制御手段3は、CPU、RAM、ROM、補助記憶装置などから構成されており、CPUがRAMに記憶された情報を読み込み、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、CPU等はファン回転速度制御手段3として機能している。
【0017】
検査装置2は、コンピュータシステム1と接続して情報の送受信を行うことが可能であり、パーソナルコンピュータ、ワークステーション等の端末装置で構成される。検査装置2は、ファン4が、検査に係る規定の回転速度で、規定の時間分、回転したか否かを判定する装置である。
【0018】
回転速度判定手段5は、接続されたコンピュータシステム1から、ファン4の回転速度に関する情報を取得する。また、回転速度判定手段5は取得した情報からファン4の回転速度を測定し、規定の回転速度と略同一であるか否かを判定し、その判定結果を累積時間算出手段6に出力する。
【0019】
ここで、ファン4の回転速度に関する情報としては、例えばファン4において回転と同期して出力されるパルス信号がある。この場合、ファン4に回転と同期したパルス信号を出力する端子を設け、コンピュータシステム1をその端子に接続する。コンピュータシステム1はファン4の端子から出力されるパルス信号を取得し、回転速度判定手段5に出力することで、回転速度判定手段5はコンピュータシステム1より出されたパルス信号をファン4の回転速度に関する情報として取得する。
【0020】
累積時間算出手段6は、回転速度判定手段5の判定結果情報を取得し、その判定結果に基づいて、ファン4が前記規定の回転速度と略同一の速度で回転している累積時間を算出し、算出結果を累積時間判定手段7に出力する。ここで略同一であるか否かを判断する許容範囲は、適宜要求される品質やファンの性能に応じて決定される。
【0021】
累積時間判定手段7は、累積時間算出手段6が算出した累積時間の情報を取得し、その累積時間と規定の時間との大小を判定する。累積時間が規定の時間よりも少ないと判定された場合に、累積時間判定手段7は少ないと判定された回転速度の情報を回転速度指示手段8に出力する。
【0022】
回転速度指示手段8は、少ないと判定された回転速度の情報を取得し、ファン回転速度制御手段3に対して、ファン4をその回転速度で回転させる指示を出力する。ファン回転速度制御手段3は、前述の通り、取得した回転速度指示手段8の指示情報に基づき、ファン4を少ないと判定された回転速度で回転させる。
【0023】
ここでは図示しないが、具体的な構成として検査装置2は、通常のコンピュータと同様、CPU、RAM及びROMといったメモリ、補助記憶装置などを備えている。回転速度判定手段5、累積時間算出手段6、累積時間判定手段7、回転速度指示手段8は、CPU、RAM、ROM、補助記憶装置などから構成されており、CPUがRAMに記憶された情報を読み込み、ROMに記憶されたプログラムを実行することで、CPU等は各手段の機能を果たしている。なお、ファンの規定の回転速度及び規定の時間のデータは、検査装置2内の補助記憶装置等に記憶されており、回転速度判定手段5又は累積時間判定手段7は必要に応じてそのデータを参照することができる。また、ファンの規定の回転速度及び規定の時間のデータは、任意に変更することができる。
【0024】
以下、検査装置2がファン4の検査を行う処理について説明する。なお、コンピュータシステム1は動作しており、ファン4はファン回転速度制御手段3の制御に応じた回転を行っている。まず、回転速度判定手段5は、接続されたコンピュータシステム1から、ファン4の回転速度に関する情報を取得する。その上で、回転速度判定手段5は取得した情報からファン4の回転速度を測定し、規定の回転速度と略同一であるか否かを判定し、その判定結果の情報を累積時間算出手段6に出力する。
【0025】
累積時間算出手段6は、取得した情報に基づいて、ファン4が、前記規定の回転速度と略同一の速度で回転している累積時間を算出する。累積時間算出手段6は、算出した累積時間に関する情報を、累積時間判定手段7に出力する。なお、回転速度判定手段5及び累積時間算出手段6が行う処理を、第1のステップと記述する。
【0026】
累積時間判定手段7は、取得した情報に基づき、累積時間と規定の時間との大小を判定する。この判定処理を、第2のステップと記述する。累積時間が規定の時間よりも少ないと判定された場合に、累積時間判定手段7は少ないと判定された回転速度の情報を回転速度指示手段8に出力する。
【0027】
回転速度指示手段8は、取得した情報に基づき、ファン回転速度制御手段3に対して、ファン4を少ないと判定された回転速度で回転させる指示を出力する。この判定処理を、第3のステップと記述する。ファン回転速度制御手段3は、前述の通り、取得したその指示情報に基づき、ファン4を少ないと判定された回転速度で回転させる。
【0028】
以上の検査装置2の構成により、ファンを有するコンピュータシステムを効率的に検査できる検査装置を提供することができる。また、第1、第2、第3のステップを備えた検査方法により、ファンを有するコンピュータシステムを効率的に検査することができる。
【0029】
なお、検査装置の利用として、以下の通り、ファン4も含めたコンピュータシステム1全体の検査を行う例が考えられる。この検査では、コンピュータシステム1において最初にファンの検査以外の検査が行われ、次にファンのみの検査が行われる。なお、「ファンの検査以外の検査」とは、コンピュータシステム1においてファン4及びファン回転速度制御手段3以外の検査を行うことを示し、「ファンのみの検査」とは、コンピュータシステム1において、ファン4及びファン回転速度制御手段3のみの検査を行うことを示す。以下も同様に表記する。
【0030】
まず、コンピュータシステム1においてファンの検査以外の検査がなされる際には、前述の第1のステップは実行されるが、第2のステップ及び第3のステップは実行されない。言いかえれば、検査装置2はファン4の回転速度を計測して規定の速度で回転した累積時間を算出する処理のみ行い、累積時間と規定の時間との大小を判定し、累積時間が規定の時間よりも少ない場合にファン回転速度制御手段3に対して指示を出力する処理は行わない。ファンの検査以外の検査を行う段階で処理を行うのは回転速度判定手段5、累積時間算出手段6であり、その処理の詳細は上述の通りである。なお、ファンの検査以外の検査が行われている時間中、ファン4の回転速度は、コンピュータシステム1が行う処理に応じてファン回転速度制御手段3が制御しており、回転速度指示手段8による制御はなされていない。
【0031】
次に、ファンの検査以外の検査が終了した後、検査装置2は、ファンのみの検査を行う。その際には、第2のステップが実行され、累積時間が規定の時間よりも少ないと判定された場合に、第3のステップが実行される。その後は、第1のステップ以降が実行される。具体的には、累積時間判定手段7は算出された累積時間と規定の時間との大小を判定し、累積時間が規定の時間よりも少ないと判定した場合に、少ないと判定された回転速度の情報を回転速度指示手段8に出力する。回転速度指示手段8は、その情報を取得し、ファン回転速度制御手段3に対して、ファン4を少ないと判定された回転速度で回転させる指示を出力する。ファン回転速度制御手段3は、前述の通り、取得したその指示情報に基づき、ファン4を少ないと判定された回転速度で回転させる。以上の制御によってなされるファン4の回転を、回転速度判定手段5は計測して、上述と同様の処理を行う。以下、累積時間算出手段6、累積時間判定手段7、回転速度指示手段8も上述と同様の処理を行う。このようにして、累積時間判定手段7が、ファン4は規定の時間、規定の回転速度で回転したと判定するまで、ファン4のみの検査が続けられる。
【0032】
以上の処理が行われることで、コンピュータシステム1においてファンの検査以外の検査がなされる際にも、検査装置2は、ファン4が規定の速度で回転している累積時間を算出している。そのため、コンピュータシステム1において、ファンの検査以外の検査の終了後にファンのみの検査を行う際には、回転速度指示手段8は(規定の時間)−(ファンの検査以外の検査で算出した累積時間)で表される時間だけ、ファン4を少ないと判定された回転速度で回転させる制御を行えばよい。言いかえれば、ファンのみの検査を行う際に、規定の時間分、ファン4を規定の回転速度で回転させる必要はない。以上から、ファンを有するコンピュータシステムの検査工程を削減することで、効率的な検査を行える検査装置及び検査方法を提供することができる。
【0033】
実施の形態2
以下、図面を参照して本発明の実施の形態2について説明する。なお、本実施の形態の説明では、実施の形態1と同様の説明について適宜省略を行う。また、本実施の形態では、検査に際して、複数の規定の回転速度及びそれに応じた規定の時間が設定されている。
【0034】
図2は、本実施の形態にかかる検査装置を使用したコンピュータシステムの検査工程と、使用しない通常の検査工程とを比較した図である。図2に示した検査工程は、コンピュータシステムの出荷時等に行われ、ファンも含めたコンピュータシステム全体の機能、耐性等が確認されている。例えばこの検査工程において、ファンが検査で規定された時間、規定された回転速度で回転したことが確認されれば、ファンの品質が保証されたとみなされる。
【0035】
なお、図2では、「電源試験〜温度試験」までの検査工程においては、コンピュータシステムが起動された上で、コンピュータシステムにおけるファン以外の検査が行われており、「ファン試験」においては、コンピュータシステムにおけるファンのみの検査が行われている。また、図2における「安定度試験」においては、コンピュータシステムは動作されておらず、ファンの回転も生じていない。以下、本実施の形態の説明では、「コンピュータシステムにおけるファンの検査以外の検査」を「電源試験〜温度試験」とし、「コンピュータシステムにおけるファンのみの検査」を「ファン試験」と記述する。
【0036】
図2に示した通常の検査工程においては、電源試験〜温度試験の工程で、ファンの計測は行われていない。つまり、ファン試験において、ファンが規定時間、規定の回転速度で回転したか否かが初めて計測される。従って、コンピュータシステム全体の検査工程において、ファンは規定された検査時間を超過して、規定の回転速度の動作を行うことになってしまう。
【0037】
図2に示した、本実施の形態に係る検査装置を使用した検査工程においては、電源試験〜温度試験の検査工程においても、ファンの計測が行われている。この計測においては、ファンにおいて、規定された複数のファンの回転速度と略同一で回転した時間が積算される。
【0038】
ここで、ファンのある規定の回転速度において、積算された時間と規定した検査時間との大小を比較し、積算された時間が規定した検査時間よりも大きくなった場合には、その規定の回転速度に対しては、既にファンの検査が終了したものとみなされる。そのため、ファン試験の工程においては、電源試験〜温度試験の工程で規定の検査時間に達していないファンの回転速度があった場合にのみ、規定の検査時間に達するまで、当該回転速度でそのファンを回転させる制御を行えばよい。
【0039】
図2の下方にある表は、コンピュータシステムの4種類のファンであるファン11、ファン12、ファン13、ファン14(図3を参照)に対して、電源試験〜温度試験の工程で各ファンの計測を行った結果の例である。ここで規定された回転速度は、2000rpm、3000rpm、4000rpmの三種類である。また、表の○は、該当するファンの該当する回転速度に対しては、規定された時間だけ回転が行われたことを示している。表の×は、該当するファンの該当する回転速度に対しては、規定された時間の回転が未だ行われていないことを示している。
【0040】
図2の表では、ファン11、14は、電源試験〜温度試験の工程で、全ての規定された回転速度において、規定された時間での回転を行っている。つまり、ファン試験において、ファン11、14の検査を行う必要はない。
【0041】
また、ファン12は2000rpm及び3000rpmの規定の回転速度において、規定された時間での回転を行っているが、4000rpmの規定の回転速度においては、規定された時間での回転を行っていない。ファン13は、4000rpmの規定の回転速度において、規定された時間での回転を行っているが、2000rpm、3000rpmの規定の回転速度においては、規定された時間での回転を行っていない。以上から、ファン試験は、ファン12については4000rpmの回転速度、ファン13については2000rpm及び3000rpmの回転速度について実行すればよい。
【0042】
以上の処理を行うことで、ファン試験においては、必要最低限の工数でファンの検査を行うことができる。なぜならば、通常の検査工程であれば、ファン11、ファン12、ファン13、ファン14のそれぞれのファンに対して、2000rpm、3000rpm、4000rpmの3種類の規定の回転速度に対するファン試験を行う必要がある。しかし、本実施の形態に係る検査装置を使用した検査工程であれば、電源試験〜温度試験の工程で各ファンの計測を行っているため、ファン12について4000rpmの回転速度、ファン13については2000rpm及び3000rpmの回転速度についての検査のみ実行すればよいからである。
【0043】
次に、図面を参照して、コンピュータシステム及び検査装置の構成例について説明する。図3は、コンピュータシステム及び検査装置の構成例を示すブロック図である。図3においてコンピュータシステム1は、ファン11〜14と、ファン11〜14の回転速度を制御するファン回転速度制御手段10とを備えている。コンピュータシステム1の検査装置である検査装置2は、モニタ部20、記憶手段28、検査時間判定手段29、回転速度指示手段30を備えている。モニタ部20は、回転速度測定手段21、回転速度比較手段22、回転時間計測手段23、回転時間積算手段24、回転時間比較手段25、判定結果保持手段26、判定結果通知手段27を有している。
【0044】
コンピュータシステム1と検査装置2とは配線又はネットワークで接続されており、ファン11〜14の回転速度に関する情報は、回転速度測定手段21に対して出力される。また、回転速度指示手段30はファン11〜14の回転速度指示を出力し、ファン回転速度制御手段10はその情報を取得する。図3における矢印は、図1と同様、情報の出力について示している。
【0045】
なお、各々のファン11〜14においては、回転と同期したパルス信号を出力する端子等が設けられている。回転速度測定手段21は、実施の形態1で記述したように、回転速度に関する情報を取得する。
【0046】
コンピュータシステム1は、ファン11〜14の個々のファン回転速度に関する情報を、回転速度測定手段21に出力する。なお、ここで出力する情報には、回転速度に関する情報の他、「どのファンの回転速度か」を示すファン11〜14の識別情報が含まれている。
【0047】
ファン回転速度制御手段10は、コンピュータシステム1の行う処理に応じてファン11〜14の回転速度を決定し、ファン11〜14に対して、決定した回転速度の指示を出力する。また、ファン回転速度制御手段10は外部(回転速度指示手段30)から指示情報を取得した場合、その指示情報に基づいて、ファン11〜14を規定の速度で回転させる。本実施の形態において、ファン回転速度制御手段10は、ファン11〜14の回転速度を、複数パターンの回転速度で制御することが可能である。なお、コンピュータシステム1の具体例及び具体的な構成は、実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0048】
検査装置2は、コンピュータシステム1と接続して情報の送受信を行うことができる。モニタ部20は、ファン11〜14について、規定の回転速度で回転している時間を積算し、積算された時間が規定の時間に達したか否かの判定を行うセクションである。以下、回転速度測定手段21〜判定結果通知手段27について説明する。ここで、回転速度測定手段21及び回転速度比較手段22、回転時間計測手段23及び回転時間積算手段24は、それぞれ、実施の形態1の回転速度判定手段5、累積時間算出手段6と同様の機能を有する。また、回転時間比較手段25、判定結果保持手段26及び判定結果通知手段27は、実施の形態1の累積時間判定手段7と同様の機能を有する。なお、検査装置2の具体例及び検査装置2の具体的な構成については、実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
【0049】
回転速度測定手段21は、コンピュータシステム1から、ファン11〜14の各々の回転速度に関する情報を逐次取得し、ファン11〜14の回転速度を計測する。回転速度測定手段21は、計測したファンの回転速度の情報を、回転速度比較手段22に出力する。出力する情報には、計測した回転速度の情報の他、「どのファンの回転速度か」を示すファン11〜14の識別情報が含まれている。以下で各手段が出力する情報にも、ファンの識別情報は含まれている。
【0050】
回転速度比較手段22は、回転速度の情報を取得した後、記憶手段28から規定の回転速度の情報を取得して、ファンの回転速度と規定の回転速度を比較し、ファンの回転速度が規定の回転速度と略同一であるか否かを判定する。回転速度比較手段22は、判定結果を回転時間計測手段23に出力する。
【0051】
回転時間計測手段23は、回転速度比較手段22の判定結果を取得し、その結果に基づいてファンが規定の回転速度と略同一で回転している時間を計測し、計測結果を回転時間積算手段24に出力する。
【0052】
回転時間積算手段24は、回転時間計測手段23の計測結果を取得し、その結果に基づき、各ファンにおいて測定した時間を、規定の回転速度毎に積算する。回転時間積算手段24は、積算時間(累積時間)の結果を回転時間比較手段25に出力する。
【0053】
回転時間比較手段25は、回転時間積算手段24から出力された積算時間(累積時間)の情報を取得し、保存する。またその上で、複数の回転速度毎に、積算した時間と規定の検査時間との大小を比較する。例えば、ファン11において、2000rpmで回転したと積算された時間が35時間で、規定の検査時間が30時間であった場合には、ファン11の回転速度2000rpmにおける検査は終了したとして、合格の判定を下す。また、ファン11において、2000rpmで回転したと積算された時間が25時間で、規定の検査時間が30時間であった場合には、ファン11の回転速度2000rpmにおける検査は終了していないとして、不合格の判定を下す。以上のような判定を行い、回転時間比較手段25は判定結果を判定結果保持手段26に出力する。なお、積算した時間と規定の検査時間との判定処理及び判定結果の出力処理は、検査時間判定手段29による制御で、実行されるか否かが決められる。
【0054】
判定結果保持手段26は、回転時間比較手段25の判定結果を取得し、データテーブルとして保持する。データテーブルの具体例は、図2で示した検査結果例の表である。
【0055】
判定結果通知手段27は、判定結果保持手段26から判定結果を取得し、判定結果が不合格となったファンがあると判定した場合、判定結果中から、不合格となったファン及びその回転速度の情報を選択して、回転速度指示手段30に通知する。例えば、判定結果が図2で示した検査結果例の表であれば、判定結果通知手段27は、ファン12においては4000rpm、ファン13においては2000rpm及び3000rpmの規定の回転速度の検査が不合格であると判定する。判定結果通知手段27は、回転速度指示手段30に、不合格となったファン及び回転速度の情報を出力する。
【0056】
また、判定結果通知手段27は、取得した判定結果中に判定結果が不合格となったファンがない(全てのファンが合格である)と判定した場合には、外部に判定処理の結果を通知するとともに、コンピュータシステム1の検査を終了させる制御を検査装置2に対して行う。
【0057】
記憶手段28は、ファンの検査に係る、規定の回転速度及び規定の時間の情報を記憶している。記憶手段28は、具体的には、外部端末2の補助記憶装置等で構成されている。なお、規定の回転速度又は規定の時間については、予めデータテーブルとして保持されていてもよい。
【0058】
検査時間判定手段29は、コンピュータシステム1の検査工程が、電源試験〜温度試験の工程にあるか否かを判定する。コンピュータシステム1の検査工程が電源試験〜温度試験の工程にあると判定した場合には、回転時間比較手段25に対し、前述の合格・不合格の判定を行わず、判定結果を判定結果保持手段26に出力させない制御信号を出力する。コンピュータシステム1の検査工程が電源試験〜温度試験の工程になく、ファン試験の工程にあると判定した場合には、回転時間比較手段25に対し、前述の合格・不合格の判定を行い、判定結果を判定結果保持手段26に出力させる制御信号を出力する。
【0059】
なお、検査時間判定手段29は、外部(検査員)から、検査装置2に対して電源試験〜温度試験までの検査が終了した旨の入力情報がある際、当該入力情報を検知することで、前述の電源試験〜温度試験の工程に関する判定を行う。
【0060】
回転速度指示手段30は、判定結果通知手段27から、不合格となったファン及び回転速度の情報を取得し、その情報に基づき、「各ファン11〜14をどの規定の回転速度で回転させるか」といった、回転速度及びファンの識別情報を含む指示を、ファン回転速度制御手段10に対して出力する。ファン回転速度制御手段10はその指示を取得し、指示に応じて、各ファンに対し、指示された回転速度での動作をする制御命令を出力する。
【0061】
以上で、コンピュータシステム1及び検査装置2の各部の機能を示した。次に、コンピュータシステム1の検査の具体的な過程において、検査装置2の各部がどう機能するかを、図4〜図6を使用して説明する。図4は、検査装置2がファンの検査方法の具体例を示すフローチャートであり、以下、図4の各ステップに沿ってファン検査の説明を行う。なお、コンピュータシステム1の検査では、最初に図2の電源試験〜温度試験の検査が行われ、次にファン試験の検査が行われる。また、検査装置2の各部の処理の詳細説明については、上述の図3に係る説明にて記載したことから、適宜省略して説明する。
【0062】
まず、回転速度測定手段21は、ファン11〜14の回転速度に関する情報を逐次取得し、回転速度の計測を行う(ステップS1)。次に、回転速度比較手段22は回転速度測定手段21が計測したファン11〜14の回転速度に基づき、ファンの回転速度が規定の回転速度と略同一であるか否かの判定を行う(ステップS2)。ファンの回転速度が規定の回転速度と略同一ではないと判定されれば、検査装置2はステップS1に戻って処理を行う。
【0063】
ステップS2において、ファンの回転速度が規定の回転速度と略同一と判定されれば、回転速度比較手段22はその結果を回転時間計測手段23に出力する。回転時間計測手段23は取得した情報に基づき、ファンが規定の回転速度で回転したと見なせる時間を計測する(ステップS3)。また、回転時間計測手段23は、逐次計測した時間を回転時間積算手段24に出力する。
【0064】
ステップS3において、回転時間積算手段24は、計測した動作時間の情報に基づき、ファン11〜14において、回転速度毎に動作時間を積算する(ステップS4)。なお、このステップS1〜S4は、実施の形態1の第1のステップに相当する。
【0065】
以上のステップS2〜ステップS4の処理の具体例について、図5を用いて説明する。図5は、ファン11において、動作時間積算の処理の具体例を示す図である。ファン11は回転速度測定手段21が計測を始めてから、時系列順に、1990rpmで1時間、2300rpmで1時間、3020rpmで1時間、2050rpmで1時間回転している。また、規定の回転速度は2000rpm、3000rpm、4000rpmの3種類であり、回転速度の計測値が規定の回転速度のいずれかの値と±100rpm以下の相違しかなければ、回転速度比較手段22は、ファン11が当該規定の回転速度と略同一の速度で回転していると判定する。つまり、計測値の回転速度が1900rpm〜2100rpm、2900rpm〜3100rpm、3900rpm〜4100rpmならば、それぞれ、規定の回転速度2000rpm、3000rpm、4000rpmと略同一であると判定される。
【0066】
まず、ファン11が1990rpmで1時間回転している場合の処理について説明する。回転速度比較手段22は、ステップS2において、回転速度測定手段21から計測値を取得し、規定の回転速度中で略同一となるものがあるか比較を行う。このとき、回転速度比較手段22は、計測値1990rpmは1900rpm〜2100rpmの範囲に該当していると判定する。この判定から、回転速度比較手段22は、ファン11が規定の速度2000rpmで回転しているものと判定する。図5における、「比較結果」がその判定の結果を示している。
【0067】
回転速度比較手段22は、回転時間計測手段23に対して、ファン11が規定の速度2000rpmで回転している情報を出力する。回転時間計測手段23は、ステップS3において、回転速度比較手段22が出力する情報を取得している間、ファン11が2000rpmで回転している時間を計測している。図4においては、ファン11は1990rpmで1時間回転しているので、回転時間計測手段23はファン11が2000rpmで1時間回転していると計測する。図5における、「計測結果」がその計測の結果を示している。また、回転時間計測手段23は逐次、計測結果を回転時間積算手段24に出力する。
【0068】
回転時間積算手段24は、計測結果に基づき、ファン11が2000rpmで1時間分回転したことを積算する。図5における、「積算結果」がその積算の結果を示している。
【0069】
次に、ファン11が2300rpmで1時間回転している場合の処理について説明する。回転速度比較手段22は、ステップS2において、回転速度測定手段21から計測値を取得し、規定の回転速度中で略同一となるものがあるか比較を行う。この場合には、計測値は1900rpm〜2100rpm、2900rpm〜3100rpm、3900rpm〜4100rpmのいずれの範囲にも該当しないので、回転速度比較手段22は回転時間計測手段23に対して情報を出力しない。以上から、積算結果は、ファン11が2000rpmで1時間分回転したままの状態のまま、変化しない。
【0070】
以降、ファン11が3020rpmで1時間回転している場合、2050rpmで1時間回転している場合についても、回転速度比較手段22、回転時間計測手段23、回転時間積算手段24は同様の処理を行う。回転速度比較手段22は、ファン11がそれぞれの場合において、3000rpm、2000rpmで回転していると判定する。回転時間計測手段23は、回転速度比較手段22の出力する情報から、3000rpmで1時間回転、2000rpmで1時間回転したと計測し、回転時間積算手段24に逐次計測結果を出力する。回転時間積算手段24は、その計測結果から、ファン11が3000rpmで1時間回転、2000rpmで1時間回転したことを、積算結果としてカウントする。以上から、図5に示す具体例では、ファン11の計測開始から4時間経過した際に、ファン11が2000rpmで2時間分回転し、3000rpmで1時間分回転したという、回転時間積算手段24の積算結果が得られる。
【0071】
なお、図5に示した具体例ではファン11のみを取り上げて説明したが、ファン12、13、14といった他のファンについても、同様の処理を行うことができる。
【0072】
以下、図4に戻って、検査方法の具体例について説明する。ステップS4にて回転時間積算手段24が動作時間を積算した後、回転時間積算手段24は、回転時間比較手段25に対して積算時間の情報を出力する。回転時間比較手段25は、出力された情報を取得し、保存する。ここで、検査時間判定手段29は、コンピュータシステム1が電源試験〜温度試験の期間中であるか否かを判定する(ステップS5)。コンピュータシステム1が電源試験〜温度試験の期間中であると判定した場合には、検査時間判定手段29は回転時間比較手段25に対し、前述の合格・不合格の判定処理を行わせない制御を行う。そのため、検査装置2はステップS1に戻って処理を行う。つまり、コンピュータシステム1の電源試験〜温度試験の検査期間中には、ステップS1〜ステップS4までの処理が繰り返し行われているため、ファン11〜14において、各規定の回転速度で回転している時間は逐次積算される。
【0073】
ステップS5において、コンピュータシステム1が電源試験〜温度試験の期間中ではない(ファン試験の期間中である)と判定された場合には、検査時間判定手段29は回転時間比較手段25に対し、前述の合格・不合格の判定処理を行わせる制御信号を出力する。回転時間比較手段25は、それまでのファン11〜14の各規定の回転速度における動作積算時間と、記憶手段28から取得した各規定の回転速度における規定の検査時間とを比較し、合格・不合格の判定処理を行う(ステップS6)。回転時間比較手段25は、この判定処理の結果を判定結果保持手段26に出力し、判定結果保持手段26は、取得した判定結果をデータテーブルに書き込み保持する(ステップS7)。
【0074】
判定結果通知手段27は、判定結果保持手段26に保持された判定結果の中に、不合格となった結果があるか否かを判定する(ステップS8)。なお、ステップS6〜ステップS8は、実施の形態1の第2のステップに相当する。
【0075】
ステップS8において不合格の結果がなければ、判定結果通知手段27は外部に判定処理の結果を通知して(ステップS9)、検査装置2によるコンピュータシステム1のファン検査を終了させる。
【0076】
ステップS8において、不合格の結果があると判定されれば、判定結果通知手段27は回転速度指示手段30に対して、不合格となったファンの種類及びその規定の回転速度の情報を出力する(ステップS10)。回転速度指示手段30は、判定結果通知手段27から取得したその情報に応じ、不合格となった回転速度でファンを回転する試験を行わせるよう、ファン回転速度制御手段10に命令を出力する(ステップS11)。なお、ステップS10及びステップS11は、実施の形態1の第3のステップに相当する。
【0077】
ファン回転速度制御手段10は、取得した命令に応じて、ファン11〜14を制御する(ステップS12)。以降、検査装置2はステップS1の処理に戻り、ステップS8において不合格となる結果がなくなるまで、ファン試験を実行する。全てのファン11〜14が、全ての規定の回転速度で規定時間の回転を行ったと、ステップS8で判定結果通知手段27が判定を行えば、ファン試験は終了となる。
【0078】
以上のステップS6〜ステップS11の処理の具体例について、図6を用いて説明する。図6は、ファン13において、検査結果の具体例を示す図である。図6で、ファン13においては、規定の回転速度及びそれに対応する規定検査時間を、2000rpmで30時間、3000rpmで30時間、4000rpmで30時間と設定している。
【0079】
図6では、電源試験〜温度試験が終了した直後のステップS4において、回転時間積算手段は、ファン13の動作時間について、ファン13が2000rpmで20時間、3000rpmで15時間、4000rpmで35時間動作した積算結果を得ている。図6において、この積算結果に係る時間は、途中積算時間と記述される。以下も同様に記述する。
【0080】
図6の例では、規定の回転速度2000rpmにおいては、規定検査時間30時間に対し、途中積算時間が20時間であるため、ステップS6で判定結果通知手段27によって「時間が10時間不足」という不合格の判定がなされる。同様に2000rpmにおいては、規定検査時間30時間に対し、途中積算時間は15時間であるため、「時間が15時間不足」という判定がなされる。また、3000rpmにおいては、規定検査時間30時間に対し、途中積算時間が35時間であるため、判定は合格となる。なお、これらの判定は図6において「途中判定」と記述され、以下も同様に記述される。
【0081】
以上の途中判定の結果は、判定結果保持手段26に保持される。図2の判定結果表は、その一例である。図2では、ファン13において、ファンの回転速度4000rpmの場合のみ合格となっており、2000rpm、3000rpmの場合は不合格となっている。
【0082】
図6において、ファン13の検査は、規定の回転速度2000rpm、3000rpmについて、規定の検査時間には達していない。従って、ファン試験の工程において、判定結果通知手段27は2000rpmでファン13を回転させる指示を、回転速度指示手段30に通知する。回転速度指示手段30は、ファン回転速度制御手段10に対して、ファン13を2000rpmで回転させる指示を出力する。ファン回転速度制御手段10は、指示に応じて、ファン13を2000rpmで回転させる制御を行う。
【0083】
図6においては、10時間経過した後、回転時間積算手段24ではファン13が2000rpmで10時間回転したと積算している。つまり、ファン13においては、電源試験〜温度試験及びファン試験で、規定の回転速度2000rpmで30時間回転したという積算時間の結果が得られる。この結果は、図6において、2000rpmでの最終積算時間と記述されている。以上から、ファン13の2000rpmにおける判定結果は合格となる。なお、図6における最終判定の○は、合格の結果を示している。以降の記述でも、同様の表記を行う。
【0084】
次に、回転速度指示手段30は、ファン回転速度制御手段10に対して、ファン13を3000rpmで回転させる指示を出力する。ファン回転速度制御手段10は、指示に応じて、ファン13を3000rpmで回転させる制御を行う。図6においては、15時間経過した後、回転時間積算手段24は、ファン13が3000rpmで15時間回転したと積算している。つまり、ファン13においては、規定の回転速度3000rpmで30時間回転したという積算時間の結果が得られる。この結果は、図6において、3000rpmでの最終積算時間と記述されている。以上から、3000rpmにおける判定結果は合格となる。
【0085】
ファン13の規定の回転速度全てにおいて合格の判定がなされたことにより、ファン13については、全ての検査が終了したと判定される。なお、判定結果通知手段27は、ファン13を先に3000rpmで回転させる指示を出力し、後に2000rpmで回転させる指示を出力してもよい。
【0086】
以上、本実施の形態においては、検査装置2は各ファンの回転速度毎に稼働時間を積算して、「積算時間」と「規定検査時間」とを比較した。検査装置2が、あるファンにおいて「規定検査時間」に達していない回転速度を検出した場合には、「規定検査時間」に達するまで、その回転速度で当該ファンを回転させる指示を、ファン回転制御指示手段に対して出力することが可能となる。これにより、検査装置2は必要最低限の工数による効率的なファンの検査を行うことが可能となる。また、複数のファンを備え、各ファンに対して複数種類の回転速度の制御が可能なコンピュータシステムに対しても、検査装置2は実施の形態1と同様の検査を行うことができる。
【0087】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態1・2に係る検査装置には、外部に対してファン又はファン回転速度制御手段の異常を通知する警告手段を設けてもよい。警告手段は、例えば、回転速度指示手段がファン回転速度制御手段に対して規定の速度で回転するように指示したにも関わらず、回転速度判定手段若しくは回転速度測定手段が、ファンが一定時間経過しても当該規定の速度で回転しないと判定した場合に、警告を外部に通知する。
【0088】
また、実施の形態2において図4のステップS5の判定は、検査時間判定手段が外部(検査員)からの入力情報を検知することで行う方法に限らず、次のような方法で行ってもよい。まず記憶手段に、予め設定された電源試験〜温度試験の検査工程の時間を記憶させる。電源試験を開始後、検査時間判定手段は、試験を行ってからの経過時間がその記憶された設定時間を過ぎたか否かを逐次判定することで、ステップS5の判定処理をしてもよい。又は、コンピュータシステムは、電源試験〜温度試験の検査が終了した際にその情報を検査装置に出力し、検査時間判定手段はその情報を取得することで、ステップS5の判定を行うようにしてもよい。
【0089】
さらに、検査装置は、複数のコンピュータシステムについて検査を行うようにしてもよい。その際、各コンピュータシステムが検査装置に対し出力する情報には、回転速度に関する情報、各ファンの識別情報の他に、コンピュータシステムの識別情報が含まれてもよい。
【0090】
実施の形態2においては、回転速度比較手段は、ファンの回転速度の計測値が規定の回転速度のいずれかの値と±100rpm以下の相違しかない場合に、ファンが当該規定の回転速度と略同一の速度で回転している旨を判定すると説明した。しかし、規定の速度と略同一と見なせる差は±100rpmではなく、±50rpm又は±150rpmなど、規定の回転速度と同程度であると見なせる値であれば任意の値でよい。あるいは、−50rpm〜+100rpmといった、上限と下限で値が異なるような設定を行ってもよい。また、回転速度毎に、略同一と見なせる値が変化するようにしてもよい。もちろん、規定の回転速度も、例として示した2000rpm、3000rpm、4000rpmの値に限らない。
【0091】
実施の形態1、2では、コンピュータシステムにおいて、ファンも含めた全体の検査を行うのに検査装置を用いたが、コンピュータシステムにおいてファンのみの検査を行う際に検査装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 コンピュータシステム
2 検査装置
3 ファン回転速度制御手段
4 ファン
5 回転速度判定手段
6 累積時間算出手段
7 累積時間判定手段
8 回転速度指示手段
10 ファン回転速度制御手段
11、12、13、14 ファン
20 モニタ部
21 回転速度測定手段
22 回転速度比較手段
23 回転時間計測手段
24 回転時間積算手段
25 回転時間比較手段
26 判定結果保持手段
27 判定結果通知手段
28 記憶手段
29 検査時間判定手段
30 回転速度指示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン及び前記ファンの回転速度を制御するファン回転速度制御手段を備えるコンピュータシステムを検査する検査方法であって、
前記ファンが、規定の回転速度と略同一の速度で回転している累積時間を算出する第1のステップと、
前記第1のステップで算出された累積時間と、規定の時間との大小を判定する第2のステップと、
前記第2のステップで前記累積時間が前記規定の時間よりも少ないと判定された場合に、前記ファン回転速度制御手段に対し、前記ファンを前記規定の回転速度で回転させる指示を出力する第3のステップと、
を備える検査方法。
【請求項2】
前記コンピュータシステムにおいて、前記ファンの検査以外の検査を実行している間に少なくとも前記第1のステップを実行し、
前記コンピュータシステムにおいて、前記ファンの検査以外の検査が終了後に前記第2のステップ及び前記第3のステップを実行する、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
複数の前記規定の回転速度に対して、前記第1〜第3のステップが実行される、
請求項1及び2に記載の検査方法。
【請求項4】
複数の前記ファンに対して、前記第1〜第3のステップが実行される、
請求項1〜3に記載の検査方法。
【請求項5】
ファン及び前記ファンの回転速度を制御するファン回転速度制御手段を備えるコンピュータシステムを検査する検査装置であって、
前記ファンの回転速度を測定し、規定の回転速度と略同一であるか否かを判定する回転速度判定手段と、
前記回転速度判定手段の判定に基づいて、前記ファンが、前記規定の回転速度と略同一の速度で回転している累積時間を算出する累積時間算出手段と、
前記累積時間算出手段で算出した累積時間と、規定の時間との大小を判定する累積時間判定手段と、
前記累積時間判定手段の判定において、前記累積時間が前記規定の時間よりも少ないと判定された場合に、前記コンピュータシステムの前記ファン回転速度制御手段に対し、前記ファンを前記規定の回転速度で回転させる指示を出力する回転速度指示手段と、
を備える検査装置。
【請求項6】
前記コンピュータシステムにおいて前記ファンの検査以外の検査を実行している間に、少なくとも、前記回転速度判定手段及び前記累積時間算出手段によって、前記ファンが前記規定の回転速度と略同一の速度で回転している累積時間を算出し、
前記コンピュータシステムにおいて前記ファンの検査以外の検査が終了後に、前記累積時間判定手段及び前記回転速度指示手段によって、前記コンピュータシステムの前記ファン回転速度制御手段に対し、前記ファンを前記規定の回転速度で回転させる指示を出力する、
請求項5に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−87689(P2012−87689A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235401(P2010−235401)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】