ファンモジュール及びサーバ機器
【課題】サーバ機器へ軸流ファン実装した時の風量増加と低騒音化の両立が要求されている。
【解決手段】空気を取り入れ排出するファンモジュールにおいて、空気の流れに対して上流側に設置された整流格子と下流側に設置された軸流ファンとを有し、前記軸流ファンの回転軸方向から前記ファンモジュールを見た場合に、前記整流格子を構成する静翼の後縁を、前記軸流ファンを構成する動翼の前縁が通過する際には、常に1点で交差するスキューを与えるファンモジュール構成を採用する。
【解決手段】空気を取り入れ排出するファンモジュールにおいて、空気の流れに対して上流側に設置された整流格子と下流側に設置された軸流ファンとを有し、前記軸流ファンの回転軸方向から前記ファンモジュールを見た場合に、前記整流格子を構成する静翼の後縁を、前記軸流ファンを構成する動翼の前縁が通過する際には、常に1点で交差するスキューを与えるファンモジュール構成を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファンモジュール及びサーバ機器に関し、例えば、軸流ファンと整流格子を組み合わせたファンモジュール及びこのファンモジュールを実装した情報機器であるサーバ機器に関する。
【背景技術】
【0002】
OA・IT機器や家電製品には、発熱電子部品の冷却用に冷却ファンが搭載されている。近年、市場においてはこれら家電製品やOA・IT機器の小型化・高性能化が進められている。この小型化・高性能化に伴って機器の内部構造における電子部品の高密度化により電子部品からの発熱量が増加する傾向にある。
【0003】
電子部品からの発熱量増加に対しては、冷却ファンとして小型でかつ風量の得やすい小型軸流ファンが採用されるのが一般的である。小型軸流ファンは多くの場合ファンベンダーが販売している汎用品を、設計者がそれぞれの用途に合わせたものを機器に実装している。
【0004】
当然のことながら、汎用小型軸流ファンは実装される機器ごと調整されているわけではないので、多くの機器においてファンは所望される性能を引き出せていない。
【0005】
特にデータセンタにおけるサーバ機器類に代表される情報機器類のように、機器内部の基盤類が高密度実装されている場合はファンへ流入する空気の乱れや流路幅の減少によりファンの風量は著しく低下し、また騒音は増加する。
【0006】
したがって情報機器類に実装される汎用小型軸流ファンにおいては、実装時の風量増加と低騒音化を可能とする技術が重要視されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、ファンの回転軸方向に対して流れの上流側から順に第一の軸流ファンと第二の軸流ファンの計2個の軸流ファンが直列に配置されており、それぞれの軸流ファンの間には整流装置が配置されていることが記載される。また、前記整流装置は前記第一の軸流ファンから出た流れを転向することで前記第二の軸流ファンに回転方向とは逆向きの旋回流を与えていることが記載される。この効果として前記直列に配置された2個の軸流ファンの静圧特性が向上し風量が増加することが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2008/062835
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のような従来技術では、風量増加の効果が得られる一方で低騒音化については言及していない。したがって、軸流ファン実装時の風量増加と低騒音化とを両立するという課題がある。また、2個の軸流ファンの直列配置を前提としているため、これに該当しない情報機器類への実装形態では使用することができないという課題がある。
【0010】
本発明の目的は、情報機器類に実装時の軸流ファンの風量増加と低騒音化を図ったファンモジュール及びサーバ機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、空気を取り入れ排出するファンモジュールであって、空気の流れに対して上流側に設置された整流格子と下流側に設置された軸流ファンとを有し、前記軸流ファンの回転軸方向から前記ファンモジュールを見た場合に、前記整流格子を構成する静翼の後縁と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁とが異なる半径を有する2つの同心円とそれぞれ2つずつ交点を有し、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の2つの交点を結ぶ直線と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の2つの交点を結ぶ直線とが、前記2つの同心円のうちの一つの同心円上で、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の一つの交点と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の一つの交点とを重ねた場合に、前記2つの同心円のうちの他の同心円上では、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の他の交点と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の他の交点とが一致しないことを特徴とする。
【0012】
また、前記動翼の傾斜方向と前記静翼の傾斜方向を逆向きにすることを特徴とする。
【0013】
また、前記静翼が前記動翼に対し逆予旋回を与えることを特徴とする。
【0014】
または、前記整流格子を構成する静翼がU字状に反る形状であることを特徴とする。
【0015】
または、前記軸流ファンの下流側にも整流格子が配置されていることを特徴とする。
【0016】
または、前記軸流ファンの下流側に配置された前記整流格子を構成する静翼の後縁が前記軸流ファンの回転方向上で前縁の位置に対して正の位置にあることを特徴とする。
【0017】
または、整流格子を構成する静翼の隣接するもの同士の間隔が指の幅よりも狭いことを特徴とする。
【0018】
または、前記いずれかのファンモジュールの、整流格子と軸流ファンが一体となっていることを特徴とする。
【0019】
または、前記いずれかのファンモジュールを、直列または並列に複数個組み合わせることを特徴とする。
【0020】
または、前記いずれかのファンモジュールをサーバ機器類に実装することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、サーバ機器への実装時の軸流ファンにおける風量増化と低騒音化を図ったファンモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1に係るファンモジュールである。
【図2】図1に示すファンモジュールを構成する整流格子である。
【図3】図1に示すファンモジュールを構成する軸流ファンである。
【図4】大気開放時の軸流ファンへの流入である。
【図5】情報機器類に実装時の軸流ファンへの流入である。
【図6】大気開放時と実装時の軸流ファンへ流入する速度分布の比較である。
【図7】図1に示すファンモジュールの一部分を回転軸方向から見たものである。
【図8】本発明の実施例2の効果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例3に係るファンモジュールのある円筒断面である。
【図10】本発明の実施例4に係るファンモジュールである。
【図11】図10に示すファンモジュールを構成する整流格子である。
【図12】本発明の実施例4に係るファンモジュールのある円筒断面である。
【図13】本発明の実施例5に係るファンモジュールである。
【図14】図13に示すファンモジュールを構成する整流格子である。
【図15】本発明の実施例6に係るPCサーバの概略構成図である。
【図16】本発明の実施例7に係るファンモジュールである。
【図17】本発明の実施例7の効果を示すグラフである。
【図18】本発明の実施例8に係るファンモジュールである。
【図19】本発明の実施例9に係るファンモジュールである。
【図20】本発明の実施例10に係るブレードサーバの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施例を図にしたがって説明する。まず、図1〜図3を使ってファンモジュールの概略構成を説明する。なお、各図に示された同一の符号を付された構成は、同一の機能を有するので、別の図においてそれらの説明を省略する場合がある。図1はファンモジュールである。ファンモジュール1は流れの上流側から順に整流格子2と軸流ファン3が直列に並ぶことで構成されている。
【0024】
図2は整流格子である。整流格子2はボス21とボスから伸びる静翼22と静翼を支持する外枠23とから構成されている。
【0025】
図3は軸流ファンである。軸流ファン3はモータが取り付けられた回転するボス31とボスから伸びる動翼32とボスに取り付けられたモータを支持するモータカップ33とモータカップ33を支持する支柱34と支柱する外枠35とから構成されている。
【実施例1】
【0026】
図4、図5、図6を用いて実施例1を説明する。図4は、大気開放時の軸流ファンへの流入の状態を説明する図である。図5は、情報機器類に実装時の軸流ファンへの流入の状態を説明する図である。図6は、大気開放時と実装時の軸流ファンへ流入する速度分布の比較図である。
【0027】
各種情報機器類の冷却において、冷却ファンの上流側には基盤等の流れを乱す抵抗体が置かれているのが普通である。これらの抵抗体に乱された流れが情報機器類に実装されたファンに流入すると騒音が発生する。また、図4に示すように、汎用小型軸流ファンは大気開放条件での使用を前提としているため、軸流ファンへの流入a1は回転軸方向からだけではなく、回転軸と直交する方向からも想定して設計されている。一方で、実装時の軸流ファンは流路が制限されるため、例えば図5に示すように回転軸方向からのみの流入a2となる。このような軸流ファンへの流入条件の違いによる回転軸方向の速度分布の違いを比較すると図6のようになる。図6の縦軸と横軸との交点が、軸流ファンのファン半径0の位置(すなわち軸流ファンのファン中心の位置)を示す。図6からわかるように、実装時の軸流ファン(図6の実線)は流路の制限により回転軸方向の速度が平均的に増加している。すなわち、大気開放時の軸流ファンへ流入する速度分布の平均値に比較して、実装時の軸流ファンへ流入する速度分布の平均値が早くなる。
【0028】
したがって、実装時の軸流ファンは本来想定されている状態とは異なる状態で使用されるため、風量と静圧は低下する。
【0029】
そこで図1に示すファンモジュール1を従来使用されていた軸流ファン同様に各種情報機器類の冷却に使用すると、ファンモジュール上流側に置かれた抵抗体(具体例は後述するが、例えばサーバ機器の冷却対象を意味する。)により乱された流れは整流格子2に整流されて軸流ファン3へと流入する。これにより乱れた流れが軸流ファン3に流入することがないので、発生する騒音は抑制され、また、実装状態でも軸流ファンの設計で想定した流入条件が満たされるように、改善されることで、実装時の軸流ファンの風量と静圧が、上流側に整流格子を有さない軸流ファンと比較して、上昇する。
【実施例2】
【0030】
一方で、図1に示すように、ファンモジュール1において、整流格子2は軸流ファン3の直前に置かれているため軸流ファン3のモータが取り付けられたボス31の回転に伴い動翼32が回転することで、整流格子の静翼22との動静翼干渉を引き起こし、動翼32あるいは静翼22の翼枚数に起因した周波数の騒音が増大することが懸念される。
【0031】
これに対し本実施例2では静翼22と動翼32との位置関係に着目することで、動翼32あるいは静翼22の翼枚数に起因した周波数の騒音増大を抑制する。
【0032】
図7はファンモジュール1を流れの上流側から動翼32の回転軸方向に見たものの一部分である。前述したように、図中の矢印の向きに回転する動翼32が静止した静翼22を通過する際に動静翼干渉が発生する。
【0033】
整流格子2のボス21と中心を同じくする任意の異なる半径を有する円41と円42について、円41と静翼22との交点を点43、円42と静翼22との交点を点44、円41と動翼32との交点を点45、円42と動翼32との交点を点46とする。点43と点44とを結んだ線分を線47、点45と点46とを結んだ線分を線48としたときに、本実施例2のファンモジュールは円41上で点43と点45とを重ねたとき、または円42上で点44と点46とを重ねたときに、線47と線48とが一致しない構成とする。一致しない構成とは、例えば、図7に示すように、動翼32上の点46が、静翼上の点44と重なる位置へ移動した場合、動翼32上の他の点45′は、静翼上の点43と重ならない状態を意味する。
【0034】
この構成は、空気を取り入れ排出するファンモジュールであって、空気の流れに対して上流側に設置された整流格子と下流側に設置された軸流ファンとを有し、前記軸流ファンの回転軸方向から前記ファンモジュールを見た場合に、前記整流格子を構成する静翼の後縁と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁とが、異なる半径を有する2つの仮想の同心円を想定すると、当該同心円とそれぞれ2つずつ交点を有し、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の2つの交点を結ぶ直線と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の2つの交点を結ぶ直線とが、前記2つの同心円のうちの一つの同心円上で、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の一つの交点と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の一つの交点とを重ねた場合に、前記2つの同心円のうちの他の同心円上では、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の他の交点と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の他の交点とが一致しないことを特徴とする構成と考えてよい。
【0035】
さらに、この構成は、前記整流格子を構成する静翼の後縁を、前記軸流ファンを構成する動翼の前縁が通過する際には、常に1点で交差するスキューを与える構成と考えてよい。
【0036】
この構成によれば、動翼32は静翼22を常にただ一点でのみ通過することとなり、したがって動静翼干渉が同時に生じる面積を最小にすることができる。この効果として動翼32あるいは静翼22の翼枚数に起因した騒音の各周波数成分の音圧レベルの増大を抑制することが可能となる。図8は本実施例2の効果を示すグラフである。図8より、図7に示した実施例2のファンモジュールは、翼枚数に起因した翼通過周波数騒音(音圧レベル)を低減していることが確認できる。実施例2を実施した場合、実施例2を未実施の場合と比較して、全体として音圧レベルが小さくなる。なお、図8の横軸の「翼通過周波数の次数」をn次とすると、(騒音の周波数/(軸流ファンの回転数×翼の枚数))=nの関係がある。
【実施例3】
【0037】
実施例3は、実施例1ないし2のファンモジュールにおいて、静翼で流れを転向する構成を加えることにより実装時の風量をさらに増加させる実施例である。図9は本実施例3に係る静翼22と動翼32の位置関係を示すファンモジュールのある円筒断面である。空気の流れの上流側から整流格子の静翼22と軸流ファンの動翼32が並んでおり、動翼32は回転方向Rの向きに回転している。静翼22は回転方向Rに対してU字状に反る断面形状をしている。
【0038】
ファンモジュールへの流れの速度成分51は静翼22によって転向されることで流れの速度成分52となり、動翼32へと流入する。したがって、静翼22の存在により動翼32には回転方向Rとは逆向きの周方向速度である流れの速度成分54を有する流れが流入していることになる。すなわち、静翼が動翼に対し逆予旋回を与えることになる。通常、軸流ファンを設計する場合、動翼への流れは周方向の速度成分を持たないとして設計されている。しかし、軸流ファンを各種情報機器類等に実装して使用する場合、流れが乱されることにより、軸流ファンの回転方向と同じ方向の周方向の速度成分を有した流れが軸流ファンに流入する。なお、流れの速度成分53は、ファンモジュールへの流れの速度成分51と同じ向き、同じ大きさとなる。
【0039】
【数1】
【0040】
式1は軸流ファンの理論全圧を示す式である。この式によれば、軸流ファンの理論全圧は軸流ファン出口の周方向の速度成分である旋回速度Cu2と回転速度u2の積から軸流ファン入口の周方向の速度成分であるCu1と回転速度u1の積を減じたものに空気の密度ρを乗じることで得られる。したがって、この式によれば、軸流ファンへ流入する流れが軸流ファンの回転方向と同じ方向の周方向の速度成分を有する場合、軸流ファンの全圧を低下させてしまうことがわかる。一方、本実施例3の静翼22は動翼32の回転方向Rとは逆向きの周方向の速度成分を有する流れを動翼32に与えている。式1によれば、このような流れは軸流ファンの理論全圧を上昇させ、これに伴い静圧は上昇し風量も増加する。
【実施例4】
【0041】
図10は実施例4に係るファンモジュール11である。ファンモジュール11は流れの上流側から、第一の整流格子2、軸流ファン3、第二の整流格子6の順に配置された構成を有する。第一の整流格子2および軸流ファン3は実施例1ないし3におけるものと同一のものである。
【0042】
図11は第二の整流格子6の構成を示す図である。第二の整流格子6はボス61とボスから伸びる複数の静翼62と静翼を支持する外枠63とから構成されている。
【0043】
図12は本実施例4に係る静翼22と動翼32と静翼62との位置関係を示すファンモジュールのある円筒断面である。空気の流れの上流側から第一の整流格子の静翼22と軸流ファンの動翼32と第二の整流格子の静翼62が並んでおり、動翼32は回転方向Rの向きに回転している。ここで、静翼62の後縁は回転方向Rにおいて前縁の位置に対して正の位置にある。なお静翼22に流入し動翼32に至るまでの流れは図9と同様である。
さらに、動翼32から出た流れは速度成分55で静翼62に流入する。静翼62を通過した流れは整流され速度成分56で流出する。
【0044】
【数2】
【0045】
式2は第二の整流格子による静圧上昇を示す式である。この式によれば、整流格子の静圧上昇は静翼入口の速度の絶対値V2の2乗から静翼入口の速度の絶対値の2乗を減じたものを2で割ったものに空気の密度ρと静圧効率ηsを乗じることで得られる。この効果を図12に対応づけると、速度55は静翼62に減速されて速度56に変化している。すなわち減速分の静圧上昇によって風量が増加する。
【実施例5】
【0046】
図13は本実施例5に係るファンモジュール12である。ファンモジュール12は流れの上流側から順に整流格子7と軸流ファン3が直列に並ぶことで構成されている。
【0047】
図14は、図13の整流格子7の詳細構成を示す図である。整流格子7はボス71とボスから伸びる複数の静翼72と一つ以上のガイドリング73と静翼を支持する外枠74とから構成されている。静翼72の翼枚数は隣接するもの同士の間隔が、サーバ機器を取り扱う人間の指の大きさよりも狭くなるようとられており、更にまたガイドリング73を設けることにより指の進入を完全に防いでいる。
【0048】
ファンモジュール12は整流格子7の指の進入を完全に防ぐ効果により、ファンモジュール交換作業時における安全上の対策が施されている。
【0049】
なお本実施例5においてガイドリング73は必ずしも必要なく、静翼72の隣接するもの同士の間隔が指よりも狭ければ、同様の効果が得られる。
【実施例6】
【0050】
図15は本実施例6に係るファンモジュールを実装したPCサーバの構成概略図である。サーバ機器の一種であるPCサーバ8はシャーシ81とCPUを実装した内部基板を有するユニット82とファンモジュール13から構成されている。
【0051】
ファンモジュール13としては、実施例1乃至実施例5のいずれかで説明するものを使用でき、本実施例では、ファンモジュール13は整流格子と軸流ファンとが接着されることにより一体構造となっており、ファンモジュール13の取り付け作業および交換作業に要する時間を短縮している。
【実施例7】
【0052】
図16は本実施例7に係るファンモジュールである。ファンモジュール111はファンモジュール14とファンモジュール15を直列に配置した構成である。ファンモジュール14及び15としては、実施例1乃至実施例6のいずれかで説明したものを使用できる。
【0053】
情報機器類の中でも特に、内部構造が高密度化されているものに関しては装置圧損が大きくなるため、静圧上昇により必要な冷却風量を得ることを目的に2台以上の軸流ファンを直列に使用している。軸流ファンを直列に使用することで台数増加分の静圧上昇が期待されるが、一般的にこれだけの効果は得られていない。例として、2台の軸流ファンを単に直列に使用した場合には2倍の静圧上昇が期待されるが、実際は1.5倍程度の静圧しか得られていない。
【0054】
本実施例7のように、複数の実施例1乃至実施例6のいずれかで説明したファンモジュールを直列に使用した場合には、軸流ファン単体をファンモジュール化することで静圧が上昇し、また流れも整流されているため、図17に示すように、軸流ファン単体を直列に使用した場合の2倍以上の静圧上昇が得られる。
【0055】
なお、本実施例7で説明したファンモジュール111は2台のファンモジュールを直列に配置したファンモジュールであるが、本実施例7の効果は直列に配置するファンモジュールの個数を限定することなく得られる。また、直列に配置するファンモジュールは必ずしも同じものを使用する必要はない。
【実施例8】
【0056】
図18は本実施例8に係るファンモジュールである。ファンモジュール112は流れの上流側から順に第一の軸流ファン3と第一の整流格子6と第二の整流格子2と第二の軸流ファン3が直列に並ぶことで構成されている。
【0057】
そして、前記第二の軸流ファンの回転軸方向から前記ファンモジュールを見た場合に、前記第二の整流格子を構成する静翼の後縁と前記第二の軸流ファンを構成する動翼の前縁とが、異なる半径を有する2つの仮想の同心円を想定すると、当該同心円とそれぞれ2つずつ交点を有し、前記第二の整流格子を構成する静翼の後縁上の2つの交点を結ぶ直線と前記第二の軸流ファンを構成する動翼の前縁上の2つの交点を結ぶ直線とが、前記2つの同心円のうちの一つの同心円上で、前記第二の整流格子を構成する静翼の後縁上の一つの交点と前記第二の軸流ファンを構成する動翼の前縁上の一つの交点とを重ねた場合に、前記2つの同心円のうちの他の同心円上では、前記第二の整流格子を構成する静翼の後縁上の他の交点と前記第二の軸流ファンを構成する動翼の前縁上の他の交点とが一致しないことを特徴とする。
【0058】
さらに、前記第二の軸流ファンは動翼を有し、前記第二の整流格子は、静翼を有し、前記動翼の傾斜方向と前記静翼の傾斜方向が逆向きであることが望ましい。
【0059】
ファンモジュール112は実施例7同様に軸流ファン単体を直列に使用した場合以上の静圧上昇が得られ、特にファンモジュールに寸法制約が課せられ、実施例7の構成が採用できない場合、に効果を発揮する。
【実施例9】
【0060】
図19は本実施例9に係るファンモジュールである。ファンモジュール113はファンモジュール16とファンモジュール17を並列に配置した構成である。
【0061】
情報機器類の中でも特に、内部構造が低密度なものの風量を増加させる際には軸流ファンを並列に使用することで冷却風量を増加している。本実施例9のようにファンモジュールを並列に使用することで、軸流ファンの並列使用に対して実装時の冷却風量を増加させることが可能となる。
【0062】
なお本実施例9で説明したファンモジュール113は、実施例1乃至実施例8のいずれかで説明した2台のファンモジュールを並列に配置したファンモジュールであるが、並列に配置するファンモジュールの台数を限定することなく、また、並列に配置するファンモジュールは必ずしも同じものを使用する必要はなく効果が得られる。
【実施例10】
【0063】
図20は本実施例10に係るサーバ機器の一例であるブレードサーバの構成概略図である。ブレードサーバ9は筐体91とサーバブレードを含む電子機器部92とファンモジュール1111から構成される。
【0064】
ファンモジュール1111としては例えば、実施例1ないし9のファンモジュールを複数個組み合わせた構成とすることで、ブレードサーバ9の風量増加と低騒音化の効果が得られる。
【0065】
また本実施例10におけるファンモジュールは用途をブレードサーバのみに限定されるものではなく、ラックサーバやPCサーバ等のサーバ機器類全般を対象としたファンモジュールである。
【0066】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0067】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0068】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 ファンモジュール
2 整流格子
3 軸流ファン
21、31 ボス
22 静翼
23、35 外枠
32 動翼
33 モータカップ
34 支柱
【技術分野】
【0001】
本発明はファンモジュール及びサーバ機器に関し、例えば、軸流ファンと整流格子を組み合わせたファンモジュール及びこのファンモジュールを実装した情報機器であるサーバ機器に関する。
【背景技術】
【0002】
OA・IT機器や家電製品には、発熱電子部品の冷却用に冷却ファンが搭載されている。近年、市場においてはこれら家電製品やOA・IT機器の小型化・高性能化が進められている。この小型化・高性能化に伴って機器の内部構造における電子部品の高密度化により電子部品からの発熱量が増加する傾向にある。
【0003】
電子部品からの発熱量増加に対しては、冷却ファンとして小型でかつ風量の得やすい小型軸流ファンが採用されるのが一般的である。小型軸流ファンは多くの場合ファンベンダーが販売している汎用品を、設計者がそれぞれの用途に合わせたものを機器に実装している。
【0004】
当然のことながら、汎用小型軸流ファンは実装される機器ごと調整されているわけではないので、多くの機器においてファンは所望される性能を引き出せていない。
【0005】
特にデータセンタにおけるサーバ機器類に代表される情報機器類のように、機器内部の基盤類が高密度実装されている場合はファンへ流入する空気の乱れや流路幅の減少によりファンの風量は著しく低下し、また騒音は増加する。
【0006】
したがって情報機器類に実装される汎用小型軸流ファンにおいては、実装時の風量増加と低騒音化を可能とする技術が重要視されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、ファンの回転軸方向に対して流れの上流側から順に第一の軸流ファンと第二の軸流ファンの計2個の軸流ファンが直列に配置されており、それぞれの軸流ファンの間には整流装置が配置されていることが記載される。また、前記整流装置は前記第一の軸流ファンから出た流れを転向することで前記第二の軸流ファンに回転方向とは逆向きの旋回流を与えていることが記載される。この効果として前記直列に配置された2個の軸流ファンの静圧特性が向上し風量が増加することが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2008/062835
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のような従来技術では、風量増加の効果が得られる一方で低騒音化については言及していない。したがって、軸流ファン実装時の風量増加と低騒音化とを両立するという課題がある。また、2個の軸流ファンの直列配置を前提としているため、これに該当しない情報機器類への実装形態では使用することができないという課題がある。
【0010】
本発明の目的は、情報機器類に実装時の軸流ファンの風量増加と低騒音化を図ったファンモジュール及びサーバ機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、空気を取り入れ排出するファンモジュールであって、空気の流れに対して上流側に設置された整流格子と下流側に設置された軸流ファンとを有し、前記軸流ファンの回転軸方向から前記ファンモジュールを見た場合に、前記整流格子を構成する静翼の後縁と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁とが異なる半径を有する2つの同心円とそれぞれ2つずつ交点を有し、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の2つの交点を結ぶ直線と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の2つの交点を結ぶ直線とが、前記2つの同心円のうちの一つの同心円上で、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の一つの交点と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の一つの交点とを重ねた場合に、前記2つの同心円のうちの他の同心円上では、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の他の交点と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の他の交点とが一致しないことを特徴とする。
【0012】
また、前記動翼の傾斜方向と前記静翼の傾斜方向を逆向きにすることを特徴とする。
【0013】
また、前記静翼が前記動翼に対し逆予旋回を与えることを特徴とする。
【0014】
または、前記整流格子を構成する静翼がU字状に反る形状であることを特徴とする。
【0015】
または、前記軸流ファンの下流側にも整流格子が配置されていることを特徴とする。
【0016】
または、前記軸流ファンの下流側に配置された前記整流格子を構成する静翼の後縁が前記軸流ファンの回転方向上で前縁の位置に対して正の位置にあることを特徴とする。
【0017】
または、整流格子を構成する静翼の隣接するもの同士の間隔が指の幅よりも狭いことを特徴とする。
【0018】
または、前記いずれかのファンモジュールの、整流格子と軸流ファンが一体となっていることを特徴とする。
【0019】
または、前記いずれかのファンモジュールを、直列または並列に複数個組み合わせることを特徴とする。
【0020】
または、前記いずれかのファンモジュールをサーバ機器類に実装することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、サーバ機器への実装時の軸流ファンにおける風量増化と低騒音化を図ったファンモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1に係るファンモジュールである。
【図2】図1に示すファンモジュールを構成する整流格子である。
【図3】図1に示すファンモジュールを構成する軸流ファンである。
【図4】大気開放時の軸流ファンへの流入である。
【図5】情報機器類に実装時の軸流ファンへの流入である。
【図6】大気開放時と実装時の軸流ファンへ流入する速度分布の比較である。
【図7】図1に示すファンモジュールの一部分を回転軸方向から見たものである。
【図8】本発明の実施例2の効果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例3に係るファンモジュールのある円筒断面である。
【図10】本発明の実施例4に係るファンモジュールである。
【図11】図10に示すファンモジュールを構成する整流格子である。
【図12】本発明の実施例4に係るファンモジュールのある円筒断面である。
【図13】本発明の実施例5に係るファンモジュールである。
【図14】図13に示すファンモジュールを構成する整流格子である。
【図15】本発明の実施例6に係るPCサーバの概略構成図である。
【図16】本発明の実施例7に係るファンモジュールである。
【図17】本発明の実施例7の効果を示すグラフである。
【図18】本発明の実施例8に係るファンモジュールである。
【図19】本発明の実施例9に係るファンモジュールである。
【図20】本発明の実施例10に係るブレードサーバの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施例を図にしたがって説明する。まず、図1〜図3を使ってファンモジュールの概略構成を説明する。なお、各図に示された同一の符号を付された構成は、同一の機能を有するので、別の図においてそれらの説明を省略する場合がある。図1はファンモジュールである。ファンモジュール1は流れの上流側から順に整流格子2と軸流ファン3が直列に並ぶことで構成されている。
【0024】
図2は整流格子である。整流格子2はボス21とボスから伸びる静翼22と静翼を支持する外枠23とから構成されている。
【0025】
図3は軸流ファンである。軸流ファン3はモータが取り付けられた回転するボス31とボスから伸びる動翼32とボスに取り付けられたモータを支持するモータカップ33とモータカップ33を支持する支柱34と支柱する外枠35とから構成されている。
【実施例1】
【0026】
図4、図5、図6を用いて実施例1を説明する。図4は、大気開放時の軸流ファンへの流入の状態を説明する図である。図5は、情報機器類に実装時の軸流ファンへの流入の状態を説明する図である。図6は、大気開放時と実装時の軸流ファンへ流入する速度分布の比較図である。
【0027】
各種情報機器類の冷却において、冷却ファンの上流側には基盤等の流れを乱す抵抗体が置かれているのが普通である。これらの抵抗体に乱された流れが情報機器類に実装されたファンに流入すると騒音が発生する。また、図4に示すように、汎用小型軸流ファンは大気開放条件での使用を前提としているため、軸流ファンへの流入a1は回転軸方向からだけではなく、回転軸と直交する方向からも想定して設計されている。一方で、実装時の軸流ファンは流路が制限されるため、例えば図5に示すように回転軸方向からのみの流入a2となる。このような軸流ファンへの流入条件の違いによる回転軸方向の速度分布の違いを比較すると図6のようになる。図6の縦軸と横軸との交点が、軸流ファンのファン半径0の位置(すなわち軸流ファンのファン中心の位置)を示す。図6からわかるように、実装時の軸流ファン(図6の実線)は流路の制限により回転軸方向の速度が平均的に増加している。すなわち、大気開放時の軸流ファンへ流入する速度分布の平均値に比較して、実装時の軸流ファンへ流入する速度分布の平均値が早くなる。
【0028】
したがって、実装時の軸流ファンは本来想定されている状態とは異なる状態で使用されるため、風量と静圧は低下する。
【0029】
そこで図1に示すファンモジュール1を従来使用されていた軸流ファン同様に各種情報機器類の冷却に使用すると、ファンモジュール上流側に置かれた抵抗体(具体例は後述するが、例えばサーバ機器の冷却対象を意味する。)により乱された流れは整流格子2に整流されて軸流ファン3へと流入する。これにより乱れた流れが軸流ファン3に流入することがないので、発生する騒音は抑制され、また、実装状態でも軸流ファンの設計で想定した流入条件が満たされるように、改善されることで、実装時の軸流ファンの風量と静圧が、上流側に整流格子を有さない軸流ファンと比較して、上昇する。
【実施例2】
【0030】
一方で、図1に示すように、ファンモジュール1において、整流格子2は軸流ファン3の直前に置かれているため軸流ファン3のモータが取り付けられたボス31の回転に伴い動翼32が回転することで、整流格子の静翼22との動静翼干渉を引き起こし、動翼32あるいは静翼22の翼枚数に起因した周波数の騒音が増大することが懸念される。
【0031】
これに対し本実施例2では静翼22と動翼32との位置関係に着目することで、動翼32あるいは静翼22の翼枚数に起因した周波数の騒音増大を抑制する。
【0032】
図7はファンモジュール1を流れの上流側から動翼32の回転軸方向に見たものの一部分である。前述したように、図中の矢印の向きに回転する動翼32が静止した静翼22を通過する際に動静翼干渉が発生する。
【0033】
整流格子2のボス21と中心を同じくする任意の異なる半径を有する円41と円42について、円41と静翼22との交点を点43、円42と静翼22との交点を点44、円41と動翼32との交点を点45、円42と動翼32との交点を点46とする。点43と点44とを結んだ線分を線47、点45と点46とを結んだ線分を線48としたときに、本実施例2のファンモジュールは円41上で点43と点45とを重ねたとき、または円42上で点44と点46とを重ねたときに、線47と線48とが一致しない構成とする。一致しない構成とは、例えば、図7に示すように、動翼32上の点46が、静翼上の点44と重なる位置へ移動した場合、動翼32上の他の点45′は、静翼上の点43と重ならない状態を意味する。
【0034】
この構成は、空気を取り入れ排出するファンモジュールであって、空気の流れに対して上流側に設置された整流格子と下流側に設置された軸流ファンとを有し、前記軸流ファンの回転軸方向から前記ファンモジュールを見た場合に、前記整流格子を構成する静翼の後縁と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁とが、異なる半径を有する2つの仮想の同心円を想定すると、当該同心円とそれぞれ2つずつ交点を有し、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の2つの交点を結ぶ直線と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の2つの交点を結ぶ直線とが、前記2つの同心円のうちの一つの同心円上で、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の一つの交点と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の一つの交点とを重ねた場合に、前記2つの同心円のうちの他の同心円上では、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の他の交点と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の他の交点とが一致しないことを特徴とする構成と考えてよい。
【0035】
さらに、この構成は、前記整流格子を構成する静翼の後縁を、前記軸流ファンを構成する動翼の前縁が通過する際には、常に1点で交差するスキューを与える構成と考えてよい。
【0036】
この構成によれば、動翼32は静翼22を常にただ一点でのみ通過することとなり、したがって動静翼干渉が同時に生じる面積を最小にすることができる。この効果として動翼32あるいは静翼22の翼枚数に起因した騒音の各周波数成分の音圧レベルの増大を抑制することが可能となる。図8は本実施例2の効果を示すグラフである。図8より、図7に示した実施例2のファンモジュールは、翼枚数に起因した翼通過周波数騒音(音圧レベル)を低減していることが確認できる。実施例2を実施した場合、実施例2を未実施の場合と比較して、全体として音圧レベルが小さくなる。なお、図8の横軸の「翼通過周波数の次数」をn次とすると、(騒音の周波数/(軸流ファンの回転数×翼の枚数))=nの関係がある。
【実施例3】
【0037】
実施例3は、実施例1ないし2のファンモジュールにおいて、静翼で流れを転向する構成を加えることにより実装時の風量をさらに増加させる実施例である。図9は本実施例3に係る静翼22と動翼32の位置関係を示すファンモジュールのある円筒断面である。空気の流れの上流側から整流格子の静翼22と軸流ファンの動翼32が並んでおり、動翼32は回転方向Rの向きに回転している。静翼22は回転方向Rに対してU字状に反る断面形状をしている。
【0038】
ファンモジュールへの流れの速度成分51は静翼22によって転向されることで流れの速度成分52となり、動翼32へと流入する。したがって、静翼22の存在により動翼32には回転方向Rとは逆向きの周方向速度である流れの速度成分54を有する流れが流入していることになる。すなわち、静翼が動翼に対し逆予旋回を与えることになる。通常、軸流ファンを設計する場合、動翼への流れは周方向の速度成分を持たないとして設計されている。しかし、軸流ファンを各種情報機器類等に実装して使用する場合、流れが乱されることにより、軸流ファンの回転方向と同じ方向の周方向の速度成分を有した流れが軸流ファンに流入する。なお、流れの速度成分53は、ファンモジュールへの流れの速度成分51と同じ向き、同じ大きさとなる。
【0039】
【数1】
【0040】
式1は軸流ファンの理論全圧を示す式である。この式によれば、軸流ファンの理論全圧は軸流ファン出口の周方向の速度成分である旋回速度Cu2と回転速度u2の積から軸流ファン入口の周方向の速度成分であるCu1と回転速度u1の積を減じたものに空気の密度ρを乗じることで得られる。したがって、この式によれば、軸流ファンへ流入する流れが軸流ファンの回転方向と同じ方向の周方向の速度成分を有する場合、軸流ファンの全圧を低下させてしまうことがわかる。一方、本実施例3の静翼22は動翼32の回転方向Rとは逆向きの周方向の速度成分を有する流れを動翼32に与えている。式1によれば、このような流れは軸流ファンの理論全圧を上昇させ、これに伴い静圧は上昇し風量も増加する。
【実施例4】
【0041】
図10は実施例4に係るファンモジュール11である。ファンモジュール11は流れの上流側から、第一の整流格子2、軸流ファン3、第二の整流格子6の順に配置された構成を有する。第一の整流格子2および軸流ファン3は実施例1ないし3におけるものと同一のものである。
【0042】
図11は第二の整流格子6の構成を示す図である。第二の整流格子6はボス61とボスから伸びる複数の静翼62と静翼を支持する外枠63とから構成されている。
【0043】
図12は本実施例4に係る静翼22と動翼32と静翼62との位置関係を示すファンモジュールのある円筒断面である。空気の流れの上流側から第一の整流格子の静翼22と軸流ファンの動翼32と第二の整流格子の静翼62が並んでおり、動翼32は回転方向Rの向きに回転している。ここで、静翼62の後縁は回転方向Rにおいて前縁の位置に対して正の位置にある。なお静翼22に流入し動翼32に至るまでの流れは図9と同様である。
さらに、動翼32から出た流れは速度成分55で静翼62に流入する。静翼62を通過した流れは整流され速度成分56で流出する。
【0044】
【数2】
【0045】
式2は第二の整流格子による静圧上昇を示す式である。この式によれば、整流格子の静圧上昇は静翼入口の速度の絶対値V2の2乗から静翼入口の速度の絶対値の2乗を減じたものを2で割ったものに空気の密度ρと静圧効率ηsを乗じることで得られる。この効果を図12に対応づけると、速度55は静翼62に減速されて速度56に変化している。すなわち減速分の静圧上昇によって風量が増加する。
【実施例5】
【0046】
図13は本実施例5に係るファンモジュール12である。ファンモジュール12は流れの上流側から順に整流格子7と軸流ファン3が直列に並ぶことで構成されている。
【0047】
図14は、図13の整流格子7の詳細構成を示す図である。整流格子7はボス71とボスから伸びる複数の静翼72と一つ以上のガイドリング73と静翼を支持する外枠74とから構成されている。静翼72の翼枚数は隣接するもの同士の間隔が、サーバ機器を取り扱う人間の指の大きさよりも狭くなるようとられており、更にまたガイドリング73を設けることにより指の進入を完全に防いでいる。
【0048】
ファンモジュール12は整流格子7の指の進入を完全に防ぐ効果により、ファンモジュール交換作業時における安全上の対策が施されている。
【0049】
なお本実施例5においてガイドリング73は必ずしも必要なく、静翼72の隣接するもの同士の間隔が指よりも狭ければ、同様の効果が得られる。
【実施例6】
【0050】
図15は本実施例6に係るファンモジュールを実装したPCサーバの構成概略図である。サーバ機器の一種であるPCサーバ8はシャーシ81とCPUを実装した内部基板を有するユニット82とファンモジュール13から構成されている。
【0051】
ファンモジュール13としては、実施例1乃至実施例5のいずれかで説明するものを使用でき、本実施例では、ファンモジュール13は整流格子と軸流ファンとが接着されることにより一体構造となっており、ファンモジュール13の取り付け作業および交換作業に要する時間を短縮している。
【実施例7】
【0052】
図16は本実施例7に係るファンモジュールである。ファンモジュール111はファンモジュール14とファンモジュール15を直列に配置した構成である。ファンモジュール14及び15としては、実施例1乃至実施例6のいずれかで説明したものを使用できる。
【0053】
情報機器類の中でも特に、内部構造が高密度化されているものに関しては装置圧損が大きくなるため、静圧上昇により必要な冷却風量を得ることを目的に2台以上の軸流ファンを直列に使用している。軸流ファンを直列に使用することで台数増加分の静圧上昇が期待されるが、一般的にこれだけの効果は得られていない。例として、2台の軸流ファンを単に直列に使用した場合には2倍の静圧上昇が期待されるが、実際は1.5倍程度の静圧しか得られていない。
【0054】
本実施例7のように、複数の実施例1乃至実施例6のいずれかで説明したファンモジュールを直列に使用した場合には、軸流ファン単体をファンモジュール化することで静圧が上昇し、また流れも整流されているため、図17に示すように、軸流ファン単体を直列に使用した場合の2倍以上の静圧上昇が得られる。
【0055】
なお、本実施例7で説明したファンモジュール111は2台のファンモジュールを直列に配置したファンモジュールであるが、本実施例7の効果は直列に配置するファンモジュールの個数を限定することなく得られる。また、直列に配置するファンモジュールは必ずしも同じものを使用する必要はない。
【実施例8】
【0056】
図18は本実施例8に係るファンモジュールである。ファンモジュール112は流れの上流側から順に第一の軸流ファン3と第一の整流格子6と第二の整流格子2と第二の軸流ファン3が直列に並ぶことで構成されている。
【0057】
そして、前記第二の軸流ファンの回転軸方向から前記ファンモジュールを見た場合に、前記第二の整流格子を構成する静翼の後縁と前記第二の軸流ファンを構成する動翼の前縁とが、異なる半径を有する2つの仮想の同心円を想定すると、当該同心円とそれぞれ2つずつ交点を有し、前記第二の整流格子を構成する静翼の後縁上の2つの交点を結ぶ直線と前記第二の軸流ファンを構成する動翼の前縁上の2つの交点を結ぶ直線とが、前記2つの同心円のうちの一つの同心円上で、前記第二の整流格子を構成する静翼の後縁上の一つの交点と前記第二の軸流ファンを構成する動翼の前縁上の一つの交点とを重ねた場合に、前記2つの同心円のうちの他の同心円上では、前記第二の整流格子を構成する静翼の後縁上の他の交点と前記第二の軸流ファンを構成する動翼の前縁上の他の交点とが一致しないことを特徴とする。
【0058】
さらに、前記第二の軸流ファンは動翼を有し、前記第二の整流格子は、静翼を有し、前記動翼の傾斜方向と前記静翼の傾斜方向が逆向きであることが望ましい。
【0059】
ファンモジュール112は実施例7同様に軸流ファン単体を直列に使用した場合以上の静圧上昇が得られ、特にファンモジュールに寸法制約が課せられ、実施例7の構成が採用できない場合、に効果を発揮する。
【実施例9】
【0060】
図19は本実施例9に係るファンモジュールである。ファンモジュール113はファンモジュール16とファンモジュール17を並列に配置した構成である。
【0061】
情報機器類の中でも特に、内部構造が低密度なものの風量を増加させる際には軸流ファンを並列に使用することで冷却風量を増加している。本実施例9のようにファンモジュールを並列に使用することで、軸流ファンの並列使用に対して実装時の冷却風量を増加させることが可能となる。
【0062】
なお本実施例9で説明したファンモジュール113は、実施例1乃至実施例8のいずれかで説明した2台のファンモジュールを並列に配置したファンモジュールであるが、並列に配置するファンモジュールの台数を限定することなく、また、並列に配置するファンモジュールは必ずしも同じものを使用する必要はなく効果が得られる。
【実施例10】
【0063】
図20は本実施例10に係るサーバ機器の一例であるブレードサーバの構成概略図である。ブレードサーバ9は筐体91とサーバブレードを含む電子機器部92とファンモジュール1111から構成される。
【0064】
ファンモジュール1111としては例えば、実施例1ないし9のファンモジュールを複数個組み合わせた構成とすることで、ブレードサーバ9の風量増加と低騒音化の効果が得られる。
【0065】
また本実施例10におけるファンモジュールは用途をブレードサーバのみに限定されるものではなく、ラックサーバやPCサーバ等のサーバ機器類全般を対象としたファンモジュールである。
【0066】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0067】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0068】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 ファンモジュール
2 整流格子
3 軸流ファン
21、31 ボス
22 静翼
23、35 外枠
32 動翼
33 モータカップ
34 支柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を取り入れ排出するファンモジュールであって、
空気の流れに対して上流側に設置された整流格子と下流側に設置された軸流ファンとを有し、
前記軸流ファンの回転軸方向から前記ファンモジュールを見た場合に、前記整流格子を構成する静翼の後縁と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁とが異なる半径を有する2つの同心円とそれぞれ2つずつ交点を有し、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の2つの交点を結ぶ直線と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の2つの交点を結ぶ直線とが、前記2つの同心円のうちの一つの同心円上で、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の一つの交点と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の一つの交点とを重ねた場合に、前記2つの同心円のうちの他の同心円上では、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の他の交点と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の他の交点とが一致しないことを特徴とするファンモジュール。
【請求項2】
請求項1記載のファンモジュールにおいて、
前記動翼の傾斜方向と前記静翼の傾斜方向を逆向きにすることを特徴とするファンモジュール。
【請求項3】
請求項1または2記載のファンモジュールにおいて、
前記整流格子を構成する静翼はU字上に反る形状であることを特徴とするファンモジュール。
【請求項4】
請求項3記載のファンモジュールにおいて、
前記静翼が前記動翼に対し逆予旋回を与えることを特徴とするファンモジュール。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のファンモジュールにおいて、
前記軸流ファンの下流側にも整流格子が配置されていることを特徴とするファンモジュール。
【請求項6】
請求項5記載のファンモジュールにおいて、
前記軸流ファンの下流側に配置された前記整流格子を構成する静翼の後縁が前記軸流ファンの回転方向上で前縁の位置に対して正の位置にあることを特徴とするファンモジュール。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のファンモジュールにおいて、
前記整流格子を構成する静翼の隣接するもの同士の間隔が指の幅よりも狭いことを特徴とするファンモジュール。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のファンモジュールにおいて、
ファンモジュールを構成する軸流ファンと整流格子が一体となっていることを特徴とするファンモジュール。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のファンモジュールを、直列または並列に複数個組み合わせたことを特徴とするファンモジュール。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のファンモジュールを実装した、サーバ機器。
【請求項1】
空気を取り入れ排出するファンモジュールであって、
空気の流れに対して上流側に設置された整流格子と下流側に設置された軸流ファンとを有し、
前記軸流ファンの回転軸方向から前記ファンモジュールを見た場合に、前記整流格子を構成する静翼の後縁と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁とが異なる半径を有する2つの同心円とそれぞれ2つずつ交点を有し、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の2つの交点を結ぶ直線と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の2つの交点を結ぶ直線とが、前記2つの同心円のうちの一つの同心円上で、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の一つの交点と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の一つの交点とを重ねた場合に、前記2つの同心円のうちの他の同心円上では、前記整流格子を構成する静翼の後縁上の他の交点と前記軸流ファンを構成する動翼の前縁上の他の交点とが一致しないことを特徴とするファンモジュール。
【請求項2】
請求項1記載のファンモジュールにおいて、
前記動翼の傾斜方向と前記静翼の傾斜方向を逆向きにすることを特徴とするファンモジュール。
【請求項3】
請求項1または2記載のファンモジュールにおいて、
前記整流格子を構成する静翼はU字上に反る形状であることを特徴とするファンモジュール。
【請求項4】
請求項3記載のファンモジュールにおいて、
前記静翼が前記動翼に対し逆予旋回を与えることを特徴とするファンモジュール。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のファンモジュールにおいて、
前記軸流ファンの下流側にも整流格子が配置されていることを特徴とするファンモジュール。
【請求項6】
請求項5記載のファンモジュールにおいて、
前記軸流ファンの下流側に配置された前記整流格子を構成する静翼の後縁が前記軸流ファンの回転方向上で前縁の位置に対して正の位置にあることを特徴とするファンモジュール。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のファンモジュールにおいて、
前記整流格子を構成する静翼の隣接するもの同士の間隔が指の幅よりも狭いことを特徴とするファンモジュール。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のファンモジュールにおいて、
ファンモジュールを構成する軸流ファンと整流格子が一体となっていることを特徴とするファンモジュール。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のファンモジュールを、直列または並列に複数個組み合わせたことを特徴とするファンモジュール。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のファンモジュールを実装した、サーバ機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−47462(P2013−47462A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185443(P2011−185443)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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