説明

ファンモータ

【課題】十分な静圧及び風量を得ることができるファンモータを提供する。
【解決手段】本発明のファンモータ1では、インペラ部8の複数の羽根21に、壁部3に近接して回転方向Bに突出し且つ径方向に延在する凸部22を設け、吸気口2aから吸い込まれた空気が、壁部3側に散逸することを防止し、これにより、吸い込まれた空気を排気口4aから効率良く排出し、空気の静圧を十分に高める。さらに、壁部中心3bから内方に向けて突出するベース部10に、吸気口3aに連通して、吸気口3aを回転軸線A方向に拡大する窪み部10cを設けることで、この窪み部10cによって拡大された吸気口3aを通って空気を吸い込み、吸気口3aからの吸気量を増大させる。よって、空気の風量を十分に高めることができる。これにより、十分な静圧と風量とを両立させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型のファンモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、実用新案登録第3081775号公報がある。この公報に記載されたファンモータは、前面、後面、及び一方の側面に開口を有する扁平型のハウジング(殻体)内にモータ及びモータにより回転されるインペラ部を収容した構造になっており、インペラ部の回転により前面及び後面の開口から空気を吸い込み、側面の開口から空気を排出する、いわゆる両面吸気でサイドフロータイプのファンモータである。
【0003】
上記ファンモータにおいて、インペラ部は、モータを覆うボス部(円盤)と、ボス部の周縁で径方向外方に向かって延びる複数の羽根とを有しており、複数の羽根のそれぞれには、インペラ部の回転方向に突出する凸部(導流部)が設けられている。そして、このような凸部を備える構造により、前面の開口から吸い込んだ空気が後面の開口に抜けてしまうことを防止し、吸気・排気の効率向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3081775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなファンモータにおいては、静圧及び風量を十分に発揮し得ることが求められる。しかしながら、上記した従来のファンモータでは、十分な静圧及び風量を得ることが難しかった。
【0006】
本発明は、十分な静圧及び風量を得ることができるファンモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るファンモータは、対面する第1及び第2の壁部のそれぞれに形成された第1及び第2の吸気口と、第1の壁部と第2の壁部との間の第3の壁部に形成された排気口と、第2の吸気口の中央に位置し、第2の壁部から内方に向けて突出するベース部と、を有するハウジングと、ハウジング内でベース部に固定されたモータ部と、モータ部に取り付けられて、モータ部の回転軸線を中心に回転するインペラ部と、を備えたファンモータにおいて、インペラ部は、モータ部が内部に配置されるボス部と、ボス部の周縁から径方向外方に延在する複数の羽根と、を有し、複数の羽根のうち少なくとも一枚には、第2の壁部に近接して回転方向に突出し且つ径方向に延在する凸部が設けられ、ベース部には、第2の吸気口に連通して、第2の吸気口を回転軸線方向に拡大する窪み部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るファンモータによれば、インペラ部がモータ部の回転軸線を中心に回転することで、ハウジングの第1の壁部及び第2の壁部のそれぞれに形成された第1及び第2の吸気口から気体が吸い込まれると共に、ハウジングの第3の壁部に形成された排気口から気体が排出される。ここで、インペラ部の複数の羽根のうち少なくとも一枚には、第2の壁部に近接して回転方向に突出し且つ径方向に延在する凸部が設けられるので、第1の吸気口から吸い込まれた気体が、第2の壁部側に散逸することが防止され、これにより、吸い込まれた気体は排気口から効率良く排出される。よって、気体の静圧を十分に高めることができる。さらに、第2の壁部から内方に向けて突出するベース部には、第2の吸気口に連通して、第2の吸気口を回転軸線方向に拡大する窪み部が設けられているので、この窪み部によって拡大された第2の吸気口を通って気体が吸い込まれることとなり、第2の吸気口からの吸気量を増大させることができる。よって、気体の風量を十分に高めることができる。このように本発明は、十分な静圧と風量とを両立させることができる。
【0009】
ここで、凸部は、羽根の第2の壁部側の端部に沿って、羽根の径方向の外端から内端に向かって第2の壁部側の端部の途中まで延在していると好適である。この場合、羽根の第2の壁部側の端部において、羽根の径方向の内端寄りには凸部が設けられない部分ができるため、第2の吸気口から吸い込まれる気体の流れが凸部により妨げられることが防止される。よって、上記したベース部の窪み部との協働により、第2の吸気口からの十分な吸気量を確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分な静圧及び風量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係るファンモータをカバー側から見た斜視図である。
【図2】図1のファンモータをカバーの反対側から見た斜視図である。
【図3】図1のファンモータの縦断面図である。
【図4】インペラ部の平面図である。
【図5】インペラ部の底面図である。
【図6】第2実施形態に係るファンモータをカバーの反対側から見た斜視図である。
【図7】図6のファンモータの縦断面図である。
【図8】従来のファンモータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るファンモータについて、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
(第1実施形態)
図1〜図3に示すように、ファンモータ1は、例えばノートパソコン、デジタルビデオカメラ、カーナビゲーションなどの機器に内蔵されて、これらの冷却に利用される両面吸気でサイドフロータイプのブロア型ファンモータである。
【0014】
ファンモータ1のハウジング6は、略円形の第2の壁部3の周縁に第3の壁部4が垂直に連設されてなるハウジング本体6aと、第2の壁部3に対面するようにハウジング本体6aの開口の一部を塞ぐカバー2と、を有する。以下、第2の壁部3及び第3の壁部4は単に壁部3,4という。カバー2には、円形の吸気口2aが形成されており、壁部3には、吸気口2aに対面する3つの吸気口3aが壁部中心3bの周囲に形成されている。また、壁部4の一部には、長方形の排気口4aが形成されている。
【0015】
さらに、ファンモータ1は、ハウジング6内に固定されて、通電により回転力を生じるモータ部7と、モータ部7に取り付けられて、モータ部7で生じた回転力により回転軸線Aを中心に回転する樹脂製のインペラ部8とを備えている。これらのモータ部7及びインペラ部8は、ハウジング6内に収容されている。ファンモータ1は、インペラ部8の回転により、吸気口2a,3aから空気を吸い込むと共に排気口4aから空気を排出する。
【0016】
ここで、ハウジング6は、3つの吸気口3aの中央に位置して、壁部中心3bからハウジング6の内方に向けて突出するベース部10を有している。このベース部10は、ハウジング6内においてモータ部7を固定するための土台である。ベース部10は、壁部3の一部として延びる3本の連結片11により、ハウジング本体6aに一体成形されている。ベース部10は、先端が回転軸線Aを中心とする円板状に突出したベース板10aと、ベース板10a上でベース板10aの中央に垂直に立設された円筒状の軸受保持部10bと、連結片11から回転軸線A方向に膨出された四角柱形状の脚部10dとにより構成されている。
【0017】
このような構成のベース部10には、脚部10dの採用により、吸気口3aに連通して、吸気口3aを回転軸線A方向且つ径方向に拡大する窪み部10cが3箇所に形成されている。こうしてベース板10aに窪み部10cが形成されることで、吸気口3aは、ベース板10aの裏面側に形成されることになる。
【0018】
モータ部7は、ベース板10a上に重ねて固定されて、インペラ部8の停止位置を規制するためのフラックスプレート12と、フラックスプレート12上に重ねて固定されて、ベース板10aと略等しい外形をなす回路基板13と、回路基板13上において、軸受保持部10bを挟んで対称に並置された2個のコイル14とを有している。回路基板13には、磁気を検知するホール素子(図示せず)などが搭載され、ホール素子からの電気信号に基づいて各コイル14への給電が制御される。
【0019】
さらに、モータ部7は、軸受保持部10b内に嵌入されて、軸受保持部10bに対し圧入などにより固定された筒状の油含浸軸受16と、油含浸軸受16の軸孔16a内に挿入されて上下方向に延び、油含浸軸受16に対し回転自在なシャフト17とを有している。すなわち、軸受保持部10b、油含浸軸受16、及びシャフト17は、回転軸線Aを中心として同軸に配置されている。ファンモータ1において、ベース部10、フラックスプレート12、回路基板13、コイル14、及び油含浸軸受16は、ステータを構成している。
【0020】
シャフト17の上端には、インペラ部8の中心部を構成するキャップ状のボス部18が圧入又は接着などにより固定されている。そして、ボス部18の裏面側には、金属製で円環板状のバックヨーク19が配置され、ボス部18内でバックヨーク19の下面側には、円環状のマグネット20が接着などにより固定されている。モータ部7の一部をなすマグネット20は、コイル14から回転軸線A方向に多少離間した位置でコイル14に対面している。ファンモータ1において、シャフト17、インペラ部8、バックヨーク19、及びマグネット20は、ロータを構成している。
【0021】
インペラ部8は、モータ部7が内部に配置された上記のボス部18と、ボス部18の周縁から径方向外方に延在する複数の羽根21とを有しており、これらは一体成型により成形されている。インペラ部8は、モータ部7で生じた回転力により、シャフト17、ボス部18、バックヨーク19、マグネット20、及び複数の羽根21が一体となってシャフト17を中心に回転方向Bに回転し、吸気口2a,3aから空気を吸い込むと共に排気口4から空気を排出する。なお、吸気口2aからの吸気量は、吸気口3aからの吸気量に比して大きくなる。
【0022】
図4は、インペラ部8の平面図、図5は、インペラ部8の底面図である。図4及び図5に示すように、ボス部18の周縁には、19枚の羽根21が周方向に均等に配置されている。各羽根21は、カバー2から壁部3に向けて回転軸線A方向に沿って延びると共に、ボス部18から径方向外方に向けて回転方向Bに湾曲しながら延びている。すなわち、各羽根21は、回転方向Bにおいて、上流側に凸状をなしている。
【0023】
さらに、各羽根21の壁部3側の端部21aに沿って、壁部3に近接して回転方向Bに突出し且つ径方向に延在する凸部22が設けられている。この凸部22は、羽根21の径方向の外端から内端に向かって、羽根21の壁部3側の端部21aの途中まで延在している。
【0024】
そして、以上のように構成されたインペラ部8がハウジング6内に組み込まれた状態では、羽根21のカバー2側の端部は、その大部分が吸気口2a内に露出している(図1、図3参照)。一方、羽根21の壁部3側の端部21aは、凸部22の部分が壁部3に対向し、凸部22の設けられていない部分が吸気口3aに対向しており、凸部22の径方向の内端が吸気口3a内に多少露出している(図2、図3参照)。
【0025】
本実施形態のファンモータ1によれば、インペラ部8がモータ部7の回転軸線Aを中心に回転することで、ハウジング6のカバー2及び壁部3のそれぞれに形成された吸気口2a,3aから空気が吸い込まれると共に、ハウジング6の壁部4に形成された排気口4aから空気が排出される。ここで、インペラ部8の複数の羽根21には、壁部3に近接して回転方向Bに突出し且つ径方向に延在する凸部22が設けられるので、吸気口2aから吸い込まれた空気が、壁部3側に散逸することが防止され、これにより、吸い込まれた空気は排気口4aから効率良く排出される。よって、空気の静圧を十分に高めることができる。さらに、壁部中心3bから内方に向けて突出するベース部10には、吸気口3aに連通して、吸気口3aを回転軸線A方向に拡大する窪み部10cが設けられているので、この窪み部10cによって拡大された吸気口3aを通って空気が吸い込まれることとなり、吸気口3aからの吸気量を増大させることができる(図3の矢印C参照)。よって、空気の風量を十分に高めることができる。
【0026】
また、凸部22は、羽根21の壁部3側の端部21aに沿って、羽根21の径方向の外端から内端に向かって端部21aの途中まで延在しているので、端部21aには、径方向の内端寄りに凸部22が設けられない部分ができ、吸気口3aから吸い込まれる空気の流れが凸部22により妨げられることが防止される。よって、この凸部22とベース部10の窪み部10cとの協働により、吸気口3aからの十分な吸気量を確保できる。
【0027】
図8に示す従来のファンモータ30では、インペラ部80を構成する羽根40には凸部が設けられず、そのため、吸気口2aから吸い込まれた空気は、壁部3側に散逸し、羽根40の壁部3側の端部40aと壁部3との隙間に侵入していた。よって、空気の静圧を十分に高めることは難しかった。また、ベース部50には窪み部が設けられず、吸気口3aは拡大されることがなく狭小であったので、吸気口3aからの吸気量を増大させることは難しかった(図8の矢印D参照)。
【0028】
しかしながら、本実施形態のファンモータ1によれば、上述したように、十分な静圧と風量とを両立させることができる。
【0029】
(第2実施形態)
図6及び図7に示すように、ファンモータ1Aが第1実施形態のファンモータ1と異なる点は、ベース板10aと脚部10dとを有するベース部10に代えて、壁部3からの突出方向に向かうにつれて半径が漸増するテーパ状(円錐形状)のベース板15aと、連結片11から回転軸線A方向に膨出された三角錐形状の脚部15dとを有するベース部15を備えた点である。すなわち、ベース部15には、吸気口3aに連通して、吸気口3aを回転軸線A方向且つ径方向に拡大する窪み部15bが3箇所に形成されている。
【0030】
本実施形態のファンモータ1Aによれば、ファンモータ1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0031】
(実験例)
第1実施形態に係るファンモータ1を用いた場合と、図8に示した従来のファンモータ30を用いた場合とで、静圧及び風量を実際に測定した。羽根21の回転数は、いずれの場合も6500min−1である。その結果、従来のファンモータ30を用いた場合に比して、ファンモータ1では、静圧が10.6%増大すると共に、風量が13%増大することが確認された。
【0032】
なお、ファンモータ1において凸部22のみを設け、窪み部10cを設けなかった場合では、従来のファンモータ30を用いた場合に比して、静圧が10%増大したが、風量は3%の微増に留まった。また、ファンモータ1において窪み部10cのみを設け、凸部22を設けなかった場合では、従来のファンモータ30を用いた場合に比して、静圧は3%の微増に留まり、風量は9.3%増大した。
【0033】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、凸部22は、羽根21の壁部3側の端部21aに沿って延在する場合に限られず、カバー2側の端部と壁部3側の端部との中間の位置で回転方向に突出し且つ径方向に延在してもよい。また、ハウジング6における吸気口2a,3a及び排気口4aの形状、インペラ部8における羽根21の形状・枚数などは、ファンモータに求められる性能に応じ、適宜設計することができる。また、凸部22は、すべての羽根21に設けられる場合に限られず、一部の羽根21に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1,1A…ファンモータ、2…カバー(第1の壁部)、2a…吸気口、3…第2の壁部、3a…吸気口、4…第3の壁部、4a…排気口、6…ハウジング、7…モータ部、8…インペラ部、10…ベース部、10c…窪み部、15…ベース部、15b…窪み部、18…ボス部、21…羽根、22…凸部、A…回転軸線、B…回転方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対面する第1及び第2の壁部のそれぞれに形成された第1及び第2の吸気口と、前記第1の壁部と前記第2の壁部との間の第3の壁部に形成された排気口と、前記第2の吸気口の中央に位置し、前記第2の壁部から内方に向けて突出するベース部と、を有するハウジングと、
前記ハウジング内で前記ベース部に固定されたモータ部と、
前記モータ部に取り付けられて、前記モータ部の回転軸線を中心に回転するインペラ部と、を備えたファンモータにおいて、
前記インペラ部は、前記モータ部が内部に配置されるボス部と、前記ボス部の周縁から径方向外方に延在する複数の羽根と、を有し、複数の前記羽根のうち少なくとも一枚には、前記第2の壁部に近接して回転方向に突出し且つ径方向に延在する凸部が設けられ、
前記ベース部には、前記第2の吸気口に連通して、前記第2の吸気口を前記回転軸線方向に拡大する窪み部が設けられていることを特徴とするファンモータ。
【請求項2】
前記凸部は、前記羽根の前記第2の壁部側の端部に沿って、前記羽根の径方向の外端から内端に向かって前記第2の壁部側の前記端部の途中まで延在していることを特徴とする請求項1記載のファンモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−252388(P2011−252388A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124637(P2010−124637)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】