説明

ファンモータ

【課題】騒音や振動の増大が抑制されたファンモータを提供すること課題とする。
【解決手段】車載用でありファンを駆動するためのファンモータは、ステータと、前記ステータを励磁するためのコイルと、ファンが連結された回転軸、前記回転軸に連結されたヨーク、前記ヨークに固定され前記ステータとの間で磁力が作用する永久磁石、を有したロータと、前記回転軸を回転可能に支持し、前記ステータ及び前記コイルと共にインサート成形により一体に成形されている支持部材と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンモータのステータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータには、ステータと、ロータと、ロータと連結される回転軸を回転可能に支持した支持部材とを備えたものがある。
このようなモータは、例えば車両用エアコンや、座席シート空調や、ハイブリット車に用いられる大容量バッテリの冷却装置に用いられる場合、回転軸にファンを取り付けて回転させることで風を起こす。それにより、車両内および座席シートの冷房・暖房のための送風や、大容量バッテリーの加熱を抑制し、バッテリー寿命や出力特性を安定させたりしている。特許文献1、2には、このようなファンモータに関連する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−112504号公報
【特許文献2】特開2010−161895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなモータにおいて、ロータの回転軸を回転可能に支持する支持部材に、ステータを組み付ける場合が考えられる。例えば、支持部材とステータとは、接着、溶着又はネジ締めなどにより固定される。一般的に支持部材とステータとは材質が異なっているため、両部材の熱膨張率も異なっている。このため、熱の影響により、支持部材とステータとの接触部分の状態が変化する恐れがある。これにより、支持部材とステータとが共振して騒音や振動が大きくなる恐れがある。
【0005】
そこで本発明は、騒音や振動の増大が抑制されたファンモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、ステータと、前記ステータを励磁するためのコイルと、回転軸、前記回転軸に連結されたヨーク、前記ヨークに固定され前記ステータとの間で磁力が作用する永久磁石、を有したロータと、前記回転軸を回転可能に支持し、前記ステータ及び前記コイルと共にインサート成形により一体に成形されている支持部材と、を備えた、車載用でありファンを駆動するためのファンモータによって達成できる。
【0007】
支持部材は、ステータ及びコイルと一体に成形されているので、支持部材とステータとの接触部分の状態の変化が抑制される。これに伴い、騒音や振動が抑制される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、騒音や振動の増大が抑制されたファンモータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本実施例に係るファンモータを採用した冷却装置を備えた車両の構成図である。
【図2】図2は、本実施例のファンモータの断面図である。
【図3】図3は、本実施例のファンモータとは構造が異なるファンモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施例に係るファンモータを採用した冷却装置を備えた車両1の構成図である。車両1は、ECU100、エンジン110、駆動用モータ120、動力分割装置130、シャフト140、バッテリ150、冷却装置160を有している。詳しくは後述するが冷却装置160に本実施例のファンモータが採用されている。本実施例の車両は、要求される車両の走行状態に応じて、車両の駆動源としてエンジン110、駆動用モータ120を切り替えることができるハイブリッド車両である。ECU100は、車両1全体の動作を制御する電子制御ユニットである。ECU100は、CPU、ROM、RAMから構成される。ECU100は、各種センサからの出力値に応じて、各装置に指令を出す。動力分割装置130は、遊星歯車機構であり、エンジン110の動力と駆動用モータ120の動力とを切り替えて、シャフト140に伝達することができる。
【0011】
駆動用モータ120は、バッテリ150からの電力に基づいて駆動する。冷却装置160は、バッテリ150を冷却する。冷却装置160は、ECU100により制御されている。冷却装置160がバッテリ150を冷却することにより、温度上昇に基づく充電効率の低下を抑制している。
【0012】
図2は、本実施例のファンモータMの断面図である。ファンモータMには、ファンFが連結されている。ファンFは、ファンモータMの動力により回転する。ファンFが回転することにより、バッテリ150が冷却される。ファンモータMの駆動はECU100により制御されている。
【0013】
ファンモータMは、支持部材10、ステータ20、コイル30、ロータ40、プリント基板60、放熱部材80、蓋部90等を有している。支持部材10は、合成樹脂製であり、ロータ40を回転可能に支持している。ステータ20は金属製である。ステータ20には、複数のコイル30が巻回されている。コイル30は、端子部36によりプリント基板60と電気的に接続されている。プリント基板60は、剛性を有した絶縁性の基板上に導電パターンが形成されたものである。コイル30が通電されることにより、ステータ20が励磁される。支持部材10は、ステータ20、コイル30と共にインサート成形により一体に成形されている。尚、端子部36もコイル30と電気的に接続されており、支持部材10と共にインサート成形により一体に成形されている。支持部材10とプリント基板60とは別体に形成されている。
【0014】
ロータ40は、回転軸42、ヨーク44、複数の永久磁石46、を有している。回転軸42は、ラジアル軸受52、スラスト軸受54を介して支持部材10に回転可能に支持されている。回転軸42の先端にはファンFが固定されている。回転軸42には、ヨーク44が固定されており、ヨーク44は回転軸42と共に回転する。ヨーク44は、略円筒状であり、金属製である。ヨーク44の内周側面には、複数の永久磁石46が固定されている。永久磁石46は、ステータ20の外周面と対向している。永久磁石46とステータ20との間に作用する磁気的吸引力、反発力により、ロータ40はステータ20に対して回転する。このように、ファンモータMはロータ40が回転するアウターロータ型のモータである。
【0015】
支持部材10は、開口部11、軸保持部12、包囲部14、仕切部16、コネクタ部17、モータ支持部18を有している。軸保持部12は、回転軸42、ラジアル軸受52、及びスラスト軸受54が挿入されている孔を画定する。包囲部14は、ステータ20とコイル30との周囲を覆っている。尚、包囲部14は、永久磁石46と対向するステータ20の最も外側の外周側面は覆っていない。仕切部16は、プリント基板60を支持するため、回転軸42に垂直な水平面方向に形成されている。また、コネクタ部17は図示しない相手側コネクタと接続される形状となっている。また、モータ支持部18は仕切部16から更に外側に突出しており後述する穴Gを備えている。
【0016】
プリント基板60は仕切部16の背面側に固定されている。ロータ40は、仕切部16の正面側に設けられている。仕切部16は、ロータ40とプリント基板60とを仕切っている。プリント基板60の背面側には電子部品68が実装されている。電子部品68は、発熱する電子部品である。例えば、電子部品68は、コイル30の通電状態を制御するためのFET等の出力トランジスタ(スイッチング素子)やコンデンサ等である。電子部品68が実装されたプリント基板60の背面は、支持部材10には覆われていない。プリント基板60には、外部機器と接続するための配線Wが接続されている。
【0017】
配線Wは、支持部材10と一体に成形される。配線Wと支持部材10とを一体に成形後、配線Wをプリント基板60に形成された孔に挿入して配線Wとプリント基板60とを半田により電気的に接続する。
【0018】
尚、支持部材10には、防振用ゴム70を嵌合させるための穴Gが設けられており、防振用ゴム70を使用状況に応じて適時変更することができる。モータMは、不図示の設置壁面やボルトなどに穴Gに嵌合された防振用ゴム70を介してモータ支持部18を固定することにより、ファンモータMが所定位置に設置される。
【0019】
本実施例では防滴性や防塵性を確保するため、プリント基板60の収める支持部材10の開口部11を蓋部90で圧入固定して覆っている。そして、電子部品68と放熱部材80は直接または伝熱素材を介して接触しており、電子部品68から発生する熱は放熱部材80によって冷却される。放熱部材80は、熱伝導率の高い金属製であり、複数のフィンを備えている。また、この放熱部材80も支持部材10と一体に成形されている。放熱部材80と電子部品68とは、金属製の部材または熱伝導率の高い接着剤により熱的に接続されている。また、放熱部材80と電子部品68とは、例えば内部に揮発性の液体を作動流体として封入されているヒートパイプにより連結してもよい。
【0020】
尚、特に防滴性や防塵性を確保する必要が無い場合は、蓋部90を用いなくてもよい。その際は放熱部材80を取り付けなくても、開口部11から電子部品68の熱を逃がすことができる。
【0021】
次に、本実施例のファンモータMとは構造が異なるファンモータMxと比較して、本実施例のファンモータMについて説明する。図3は、本実施例のファンモータMとは構造が異なるファンモータMxの断面図である。尚、ファンモータMxについて、本実施例のファンモータMと類似の部分については、類似の符号を付することにより、重複する説明を省略してある。
【0022】
図3に示すように、ファンモータMxにおいて、支持部材10xは、ステータ20x、コイル30xとは個別に成形されている。詳細には、ステータ20xは、コイル30xが巻回された状態で、支持部材10xの軸保持部12x周囲に嵌合している。また、支持部材10xとステータ20xとは、接着、溶着、又はネジ締め等により固定されている。このため、ファンモータMxが高温化した場合には、支持部材10xとステータ20xとの接触部分の状態が変化して、共振に基づく騒音や振動が大きくなる恐れがある。特に、高温化するバッテリ150付近にファンモータMxが配置される場合には、配置条件等によってはファンモータMxが高温化する恐れがある。
【0023】
しかしながら、本実施例のファンモータMにおいては、図2に示したように、ステータ20、コイル30は、インサート成形により支持部材10に一体に成形されている。これにより、ファンモータMが高温化した場合であっても、支持部材10とステータ20との接触部分の状態は、ファンモータMxに比べて変化しない。従って、騒音や振動の増大が抑制される。
【0024】
また、図3に示すように、ファンモータMxにおいて、支持部材10xとステータ20xとの接触部分の面積は、軸保持部12xの外周部分に依存する。このため、支持部材10xとステータ20xとの接触部分の面積は比較的小さく、熱などの影響により支持部材10xとステータ20xとの締結力は弱くなる恐れがある。
【0025】
しかしながら、本実施例のファンモータMにおいては、図2に示したように、ステータ20の最も外側の付近まで支持部材10と一体に形成されている。このため、支持部材10とステータ20との接触面積は、支持部材10xとステータ20xとの接触面積よりも大きい。従って、上記のような締結力の低下を抑制でき、かつ構造上の絶対的な強度が上がる。これにより、締結力の低下に起因する騒音、振動の増大を抑制できる。
【0026】
また、図3に示すように、ファンモータMxにおいては、ロータ40xとプリント基板60xとは対向している。このため、ロータ40xやファンFの回転による空気の流れなどの影響により、プリント基板60xが振動する恐れがある。
【0027】
しかしながら、本実施例のファンモータMにおいては、図2に示したように、ロータ40とプリント基板60との間は支持部材10の仕切部16が仕切っている。このため、ロータ40の回転により生じる空気の流れがプリント基板60に影響を与えることが防止される。これにより、騒音や振動の増大が抑制される。
【0028】
また、図3に示すように、プリント基板60xは、部分的に支持部材10xからむき出しの状態にある。このためプリント基板60xが振動して騒音が生じた場合、音が支持部材10xの外部に漏れ出る。
【0029】
しかしながら、本実施例のファンモータMにおいては、開口部11が蓋部90により塞がれているので、プリント基板60の大部分が支持部材10と蓋部90とにより囲まれる。また、蓋部90が設けられていない場合であっても、支持部材10を設置壁面に固定した場合等には、プリント基板60は支持部材10と設置壁面とにより囲まれる。このため、何らかの原因によりプリント基板60が振動して騒音が生じたとしても、支持部材10の外部に漏れ出ることが抑制される。これにより、騒音の増大が抑制される。
【0030】
尚、プリント基板をインサート成形により支持部材と共に一体に成形することにより、プリント基板の振動を抑制することが考えられる。しかしこのような構成は、以下のような問題が生じる恐れがある。支持部材が加熱、冷却を繰り返すことにより、支持部材は膨張、収縮を繰り返す。これにより、プリント基板には繰り返し応力が加えられ、プリント基板への負荷が増大する。
【0031】
また、支持部材は場所によって厚みや大きさが異なるため、熱による膨張、伸縮の程度も、場所によって異なってくる。このため、プリント基板が撓むように繰り返し応力が加えられる恐れがある。特に、プリント基板が繰り返して撓むことにより、プリント基板に実装された電子部品との電気接続性にも影響を与える恐れがある。特に、このようなモータを長期間使用する場合には、プリント基板が繰り返し撓むことにより、悪影響を与える恐れがある。
【0032】
本実施例のモータMにおいては、図2に示したように、支持部材10とプリント基板60とは一体に形成されていない。このため、プリント基板60には上記のような負荷がかからない。これにより、プリント基板60の長期的な使用を確保できる。
【0033】
また、プリント基板に実装された発熱する電子部品が支持部材に覆われている場合、電子部品の発熱により支持部材が部分的に高温となる恐れがある。支持部材上での温度差が大きくなると、これに起因して、支持部材の膨張、伸縮の程度が場所によって大きく異なる恐れがある。このため、支持部材が部分的に膨張、伸縮を繰り返すことにより、プリント基板に対しても継続的に応力が加えられる恐れがある。これにより、繰り返しプリント基板が撓むように変形される恐れがある。
【0034】
本実施例のファンモータMにおいては、図2に示したように、プリント基板60に実装されている発熱する電子部品68は、支持部材10により覆われていない。このため、支持部材10上での温度差が大きくなることを抑制している。これにより、プリント基板60が繰り返し撓むように変形されることが防止される。
【0035】
また、図2に示したように、プリント基板60の電子部品68が実装された背面側は、支持部材10に覆われていない。前述したように、支持部材10は、プリント基板60の背面側を露出する開口部11が設けられているからである。このため、例え支持部材10が熱の影響により膨張、伸縮を繰り返したとしても、プリント基板60への影響を抑制できる。尚、開口部11は、電子部品68が実装されているプリント基板60の背面側の少なくとも一部を露出していればよい。
【0036】
また、放熱部材80は、ファンFの回転により送風される位置に設けられている。詳細には、放熱部材80は、図2に示すように、プリント基板60とロータ40とを仕切る仕切部16よりもロータ40側に配置されている。これにより、放熱部材80を効率的に冷却でき、これにより電子部品68を冷却できる。
【0037】
以上のように、本実施例のファンモータ1は、支持部材10の熱膨張、熱伸縮に起因して起こり得る種々の問題の発生を抑制できる。
【0038】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0039】
冷却装置160が採用された車両としてハイブリッド車両を例に説明したが、エンジンのみを駆動源とする通常の車両に冷却装置160を採用してもよい。
【0040】
上記実施例において、冷却装置160を車両1に採用した場合について説明したが、これ限定されず、冷却装置160は、車両以外のものに採用してもよい。
【0041】
上記実施例において、冷却装置160により冷却される冷却対象物として、バッテリ150を例に説明したが、冷却対象物はバッテリ150に限定されない。例えば、冷却装置160は、エンジン110や駆動用モータ120を冷却するために用いてもよし、エアコン送風や、シート空調のために用いても良い。また、冷却装置160は、車両以外のものに採用してもよい。
【0042】
上記実施例において、ファンモータMを冷却装置160に採用した例について説明したが、このような用途に限定されず、例えば、ファンモータMを空調機器等に用いてもよい。
【0043】
発熱する電子部品として出力トランジスタを例に説明したが、発熱する電子部品であればそれ以外のものであってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
M ファンモータ
F ファン
10 支持部材
16 仕切部
17 コネクタ部
18 モータ支持部
20 ステータ
30 コイル
40 ロータ
42 回転軸
44 ヨーク
46 永久磁石
60 プリント基板
68 電子部品
80 放熱部材
90 蓋部
150 バッテリ
160 冷却機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータを励磁するためのコイルと、
ファンが連結される回転軸、前記回転軸に連結されたヨーク、前記ヨークに固定され前記ステータとの間で磁力が作用する永久磁石、を有したロータと、
前記回転軸を回転可能に支持し、前記ステータ及び前記コイルと共にインサート成形により一体に成形されている支持部材と、を備え、
車載用でありファンを駆動するためのファンモータ。
【請求項2】
前記コイルが電気的に接続されたプリント基板を備え、
前記プリント基板には、発熱する電子部品が実装され、
前記電子部品は、前記支持部材に覆われていない、請求項1のファンモータ。
【請求項3】
前記プリント基板は、前記支持部材と一体に成形されていない、請求項2のファンモータ。
【請求項4】
前記支持部材は、前記ロータと前記プリント基板との間を仕切る仕切部を有している、請求項2又は3のファンモータ。
【請求項5】
前記電子部品からの熱が伝わる放熱部材を備え、
前記放熱部材は、前記仕切部よりも前記ロータ側に配置されている、請求項4のファンモータ。
【請求項6】
前記支持部材は、前記電子部品が実装された前記プリント基板の面の少なくとも一部を露出する開口部を有している、請求項2乃至5の何れかのファンモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−85474(P2012−85474A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230991(P2010−230991)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】