説明

ファン検査装置、送風装置、ファン付き装置およびファン故障予測方法

【課題】 ファンの回転数検知の煩雑化や、ファン異常の誤検知の問題を回避しながら、故障する前に故障に繋がるファンの劣化を事前に検知する。
【解決手段】 ファン検査装置1は検査指示部2と異常推測部3を有する。検査指示部2は、検査対象のファン6が設定された回転数で回転するようにファン6の回転数を制御する回転数固定モードでのファン制御を、予め定められたタイミングで開始するように指示する。異常推測部3は、回転数固定モード中に取り込んだファン6の回転数情報に基づいて、ファン6の回転数が、前記設定された回転数に基づいて定められた許容範囲から外れているか否かを判断し、当該判断結果に基づいてファンの劣化の有無を推測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の空冷等を行うファンの劣化を推測するファン検査装置、送風装置、ファン付き装置およびファン故障予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、装置内の空気の流れの制御や、部品(装置)の空冷等の目的でファン(送風機)を備えた装置(機器)が多種多様にある。特許文献1,2には、それぞれ、そのような装置に備えられたファンの異常を検知する手法が示されている。これら特許文献1,2に示されているファンの異常検知手法では、装置がファンの回転数を検出し、当該検出した回転数と、装置が制御目標としている回転数とが一致していれば異常無し、一致していない場合には異常有りと装置が判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−90913号公報
【特許文献2】特開2006−140031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような特許文献1,2のファンの異常検知手法では、検出したファンの回転数が制御目標の回転数と一致しているか否かの判断結果に基づいてファンの異常の有無を判断することから、次のような問題が発生する。つまり、特許文献1,2のファンの異常検知手法では、ファンの異常の検知精度を高めるためには、ファンの回転数を精度良く検出する必要があるが、ファンの回転数を精度良く検出することは煩雑な動作を要し、かつ、難しいという問題がある。
【0005】
また、ファンが正常でもファンの回転数はばらつくことから、ファンが異常でなくとも、検出した回転数が制御目標の回転数からずれる事態は多々発生することとなる。このために、特許文献1,2のファンの異常検知手法では、ファンが異常でないのにも拘わらずファンが異常であると判断されるという誤検知が発生し易いという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、上記したような問題、つまり、ファンの回転数検知の煩雑化や、ファン異常の誤検知の問題を回避しながら、故障する前に、故障に繋がるファンの劣化を事前に推測できるファン検査装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のファン検査装置は、
検査対象のファンが設定された回転数で回転するように前記ファンの回転数を制御する回転数固定モードでのファン制御を、予め定められたタイミングで開始するように指示する検査指示部と、
前記回転数固定モード中に取り込んだ前記ファンの回転数情報に基づいて、前記ファンの回転数が、前記設定された回転数に基づいて定められた許容範囲から外れているか否かを判断し、当該判断結果に基づいて前記ファンの劣化の有無を推測する異常推測部と、
を有する。
【0008】
本発明の送風装置は、
上記本発明のファン検査装置と、
検査対象のファンと、
前記ファンの回転数を可変制御する通常モードと、前記ファンが設定の回転数で回転するように前記ファンの回転数を制御する回転数固定モードとの各モードでの前記ファンの回転数制御が可能なファン制御部と、
を有する。
【0009】
本発明のファン付き装置は、上記本発明の送風装置を備えている。
【0010】
本発明のファン故障予測方法は、
検査対象のファンが設定された回転数で回転するように前記ファンの回転数を制御する回転数固定モードでのファン制御を、予め定められたタイミングで開始するように指示し、
前記回転数固定モード中に取り込んだ前記ファンの回転数情報に基づいて、前記ファンの回転数が、前記設定された回転数に基づいて定められた許容範囲から外れているか否かを判断し、
その判断結果に基づいて前記ファンの劣化の有無を推測する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ファンの回転数検知の煩雑化や、ファン異常の誤検知の問題を回避しながら、故障する前に、故障に繋がるファンの劣化を事前に推測できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る第1実施形態のファン検査装置、送風装置およびファン付き装置を簡略化して示す図である。
【図2】本発明に係る第2実施形態のファン付き装置の制御構成を簡略化して示すブロック図である。
【図3】ファンから出力されるパルス信号の一例を示す波形図である。
【図4】本発明に係る第2実施形態のファン付き装置におけるファンの劣化推測動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明に係る第1実施形態のファン検査装置の構成を簡略化して表すブロック図である。図1(b)は、その第1実施形態のファン検査装置を内蔵した送風装置の構成を簡略化して表すブロック図である。図1(c)は、その送風装置を備えるファン付き装置の構成を模式的に表す図である。
【0015】
第1実施形態のファン検査装置1は、図1(b)に示されるような送風装置5に備えられる。この送風装置5は、ファン検査装置1に加えて、さらに、検査対象のファン6と、ファン制御部7とを有している。ファン6は、送風機である。ファン制御部7は、次に述べる通常モードと回転数固定モードでのファン6の回転数制御が可能な機能を備えている。その通常モードとは、ファン6の回転数を可変制御するモードである。回転数固定モードとは、ファン6が設定された回転数Mで回転するようにファン6の回転数を制御するモードである。送風装置5は、図1(c)に示されるようにファン付き装置8に組み込まれる。
【0016】
第1実施形態のファン検査装置1は、検査対象のファンが故障する前に、故障に繋がるファンの劣化を事前に推測(検知)できる機能を備えている。つまり、ファン検査装置1は、図1(a)に示されるように、検査指示部2と、異常推測部3とを有している。
【0017】
その検査指示部2は、回転数固定モードでのファン6の回転数制御を、予め定められたタイミングで開始するように指示する機能を備えている。
【0018】
異常推測部3は、回転数固定モード中に取り込んだファン6の回転数情報に基づいたファン6の回転数が、前記回転数Mに基づいて定められた許容範囲から外れているか否かを判断し、当該判断結果に基づきファン6の劣化の有無を推測する機能を備えている。
【0019】
この第1実施形態のファン検査装置1は、上記のような検査指示部2と異常推測部3を有しているから、次のように動作してファンの劣化を推測する(換言すれば、ファンの故障を予測する)。すなわち、まず、検査指示部2が、予め定められたタイミングで、回転数固定モードでのファン6の回転数制御を開始するように指示する。そして、ファン検査装置1は、その回転数固定モード中に、ファン6の回転数情報を取り込む。異常推測部3は、その取り込んだ回転数情報に基づいたファン6の回転数が、前記許容範囲外であるか否かを判断し、当該判断結果に基づきファン6の劣化の有無を推測する(故障を予測する)。
【0020】
この第1実施形態は、上記のような構成を備えているので、次のような効果を得ることができる。すなわち、この第1実施形態では、異常推測部3は、ファン6の回転数が、許容範囲外であるか否かを判断している。つまり、ファン6は、部品の経年劣化や初期不良等の部品劣化(異常)に因り、時間(稼働時間)の経過と共に、制御目標の回転数に対する実際の回転数のずれ量(変動幅)が大きくなってくる。この第1実施形態のファン検査装置1は、そのことに着目して、ファン6の劣化推測(異常検知)を行っている。すなわち、ファン検査装置1は、ファン6の回転数が、ピンポイント的な制御目標の回転数からずれたか否かの判断ではなく、制御目標の回転数に対するファン6の回転数のずれ量(変動幅)が許容範囲外か否かの判断結果に基づきファン6の劣化の有無を推測している。この第1実施形態では、ファン6の回転数は正常でもばらつくことを前提にしており、ファン6の回転数を高精度に検出しなくともファン6の劣化を検知できる構成である。つまり、ファンの回転数検知の煩雑化を回避できる。また、ファン6の回転数を高精度に検出できなかったことに因るファン6の異常誤検知の問題も回避できる。
【0021】
さらに、上述したように経年劣化等により時間の経過と共に、制御目標の回転数に対するファン6の回転数のずれ量(変動幅)が大きくなっていくという傾向がある。この傾向に着目することにより、第1実施形態の構成は、ファン付き装置8の稼働に悪影響を与えるファン6の故障が起こる前に、故障に繋がるファン6の劣化を事前に推測できる。
【0022】
(第2実施形態)
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。
【0023】
図2は、本発明に係る第2実施形態のファン付き装置の制御構成を簡略化して示すブロック図である。この第2実施形態のファン付き装置は、コンピュータ装置等の装置であり、この第2実施形態に主に関わる構成として、図2に示されるように、ファン12と、制御装置13と、ディスプレイ14と、入力装置15とを有している。
【0024】
ファン12は、回転駆動して風を起こすことによって、ファン付き装置の筐体(図示せず)内に筐体外の空気を導入すると共に、筐体内の空気を排気する機能を備えている。この第2実施形態では、ファン12は、回転数情報を持つパルス信号を出力する機能(回転数情報出力機能)を備えている。そのパルス信号は、回転数が速くなるに従ってパルス出力の周期が短くなるというように、回転数に応じた周期でパルスが立ち上がる信号である。
【0025】
ディスプレイ14は、映像を映す表示手段である。
【0026】
入力装置15は、キーボードや操作スイッチ等のような、手動操作によって情報を入力したり、ファン付き装置を操作する装置である。
【0027】
制御装置13は、ファン付き装置の動作を制御する装置である。当該制御装置13は、演算装置17と、記憶装置18とを有している。記憶装置18は、コンピュータプログラムやデータ等を格納する記憶媒体を有する装置である。当該記憶装置18の記憶媒体には、カウンタ20a,20bとして機能する記憶領域が設定されている。
【0028】
演算装置17は、ファン制御部22と、検査指示部23と、回転数検出部24と、異常推測部25と、主制御部26とを有している。なお、この第2実施形態では、検査指示部23と異常推測部25によりファン検査装置が構成され、当該ファン検査装置と、ファン12と、ファン制御部22とにより、送風装置が構成される。
【0029】
主制御部26は、例えばCPU(Central Processing Unit)(図示せず)により実現される。この主制御部26は、記憶装置18に格納されているコンピュータプログラムに記載されている制御手順に従って動作することにより、ファン付き装置の予め定められた各種動作を制御する。換言すれば、CPUは、記憶装置18のコンピュータプログラムに従って動作することにより、主制御部26としての機能を有する。例えば、主制御部26は、入力装置15によって電源が投入されて、当該ファン付き装置の起動が指示されたことを検知した場合には、コンピュータプログラムの装置起動用の制御手順でもって装置起動動作を制御する。また、主制御部26は、入力装置15によって装置の停止(シャットダウン)が指示されたことを検知した場合には、コンピュータプログラムのシャットダウン用の制御手順でもって装置停止処理を行って電源供給を遮断する。
【0030】
ファン制御部22は、後述する通常モードと回転数固定モードでファン12の回転数を制御することが可能な機能を備えている。この第2実施形態では、ファン制御部22は、ファン12へ供給する駆動電力を制御することで回転数制御を行う電気回路により構成されている。当該ファン制御部22は、通常モードでは、例えばファン付き装置の筐体の内部温度を検出する温度センサ(図示せず)による温度測定値に基づいて、ファン12への駆動電力を可変制御してファン12の回転数を可変制御する。この第2実施形態では、通常モードでのファン12の回転数制御は、PWM(Pulse Width Modulation)制御手法を利用し、回転数の可変制御を行う。
【0031】
また、ファン制御部22は、回転数固定モードでは、ファン12の仕様により定まる最大駆動電力を供給してファン12が設定の回転数である最大回転数Wで一定回転するようにファン12の回転数を制御する。
【0032】
検査指示部23は、例えばCPU(図示せず)により実現される。この検査指示部23は、記憶装置18に格納されているコンピュータプログラムに記載されている制御手順に従って動作することにより、後述するような検査開始の指示動作を制御する。換言すれば、CPUは、記憶装置18のコンピュータプログラムに従って動作することにより、検査指示部23としての機能を有する。
【0033】
この第2実施形態では、検査指示部23は、予め定められたタイミングで、回転数固定モードでのファン12の回転数制御を開始させる指示の信号をファン制御部22に出力する機能を備えている。この検査指示部23からファン制御部22への指示の信号は、ファン制御部22の構成に応じた信号形態を有する。この第2実施形態では、その指示信号は、ファン制御部22を構成する電気回路に、最大駆動電力をファン12に供給させるのに必要な電力レベルを持つ制御信号である。なお、その指示信号は、例えば、回転数固定モードでファン12の回転数制御を行う期間中、検査指示部23からファン制御部22に供給され続ける。この場合には、検査指示部23からファン制御部22への指示信号の供給を停止することにより、ファン制御部22は、回転数固定モードでのファン12の回転数制御を終了する。
【0034】
上記のような指示を出力するタイミングは、この第2実施形態では、入力装置15によって電源が投入されてファン付き装置の起動が指示された以降の起動処理期間中に設定されている。あるいは、上記タイミングは、入力装置15によってファン付き装置の停止が指示された以降の停止処理期間中に設定されていてもよい。あるいは、上記タイミングは、ファン付き装置の起動処理期間中および停止処理期間中の両方の期間中に設定されていてもよい。
【0035】
また、回転数固定モードの終了タイミングは、例えば、上記のような回転数固定モード開始の指示信号を出力してからの経過時間と、記憶装置18に予め登録されている回転数固定モード期間の時間情報とに基づいて決定される。
【0036】
検査指示部23は、さらに、回転数固定モードでのファン12の回転数制御の開始を指示した場合には、記憶装置18のカウンタ20aのカウント値を1つカウントアップする機能をも有している。つまり、カウンタ20aのカウント値は、回転数固定モードでファン12の回転数制御が行われた回数である。
【0037】
回転数検出部24は、主制御部26等と同様に、CPU(図示せず)により実現される。この回転数検出部24は、記憶装置18に格納されているコンピュータプログラムに記載されている制御手順に従って動作することにより、後述するような回転数検出動作を制御する。換言すれば、CPUは、記憶装置18のコンピュータプログラムに従って動作することにより、回転数検出部24としての機能を有する。
【0038】
回転数検出部24は、ファン12から出力される回転数情報を持つパルス信号を取り込んで、ファン12の回転数を次のように検出する機能を備えている。例えば、ファン12から出力される回転数情報を持つパルス信号は、図3に示されるような波形を持つ。このパルス信号におけるパルスの立ち上がりエッジ間の時間Tがファン12の1回転の周期に相当する時間である。
【0039】
回転数検出部24は、検査指示部23から回転数固定モード開始の指示が出力されたことを検知してからの経過時間が、予め定めた時間に達したことを検知したときに、上記したようなパルス信号のパルスの立ち上がりエッジ間の時間Tを検出(計測)する。上記のように、回転数固定モードの開始が指示されて直ちにファン12の回転数を検出しない理由は、回転数固定モードでの回転数制御が開始された直後は、ファン12の回転数が不安定であり、安定しないからである。この第2実施形態では、上記のように、回転数固定モードでのファン12の回転が安定した以降にファン12の回転数を検出できる構成としている。
【0040】
回転数検出部24は、上記のように検出した時間Tをファン12の回転数Nとして出力する。なお、回転数検出部24は、その時間Tに基づき回転数を算出し、当該算出した回転数を出力してもよい。また、回転数検出部24による回転数Nの出力は、同じ回転数固定モード中に1回だけでもよいし、連続的にあるいは断続的に複数回行ってもよく、適宜設定された回数行われる。
【0041】
異常推測部25も、主制御部26等と同様に、CPU(図示せず)により実現される。この異常推測部25は、記憶装置18に格納されているコンピュータプログラムに記載されている制御手順に従って動作することにより、ファン12の異常推測(故障予測)に関わる動作を制御する。換言すれば、CPUは、記憶装置18のコンピュータプログラムに従って動作することにより、異常推測部としての機能を有する。
【0042】
すなわち、異常推測部25は、回転数検出部24から回転数Nを受け取り、当該回転数Nが次に示すような許容範囲から外れているか否かを判断する機能を備えている。上記許容範囲とは、ファン12を回転数固定モードで回転させるときの回転数(つまり、この第2実施形態では最大回転数M)に対して許容されるずれ量(変動幅)である。この許容範囲を示す情報(つまり、許容範囲の上限値Huと下限値Hdの情報)は記憶装置18に予め登録される。例えば、ファン12の最大回転数Mが4200rpm(回転/分)であり、当該最大回転数Mに対する許容される変動幅(変動率)が±5%であり、さらに、回転数Nがファン12の1回転の周期で表されているとする。この場合には、許容範囲の上限値Huとして、例えば13.61msecが、また、下限値Hdとして、例えば15.04msecが、それぞれ、許容範囲の情報として記憶装置18に登録される。
【0043】
つまり、異常推測部25は、回転数検出部24から受け取った回転数Nを、上限値Huと下限値Hdのそれぞれに比較し、回転数Nが許容範囲外(N>Hu、かつ、N<Hd)であるか否かを判断する。そして、異常推測部25は、回転数Nが許容範囲外であると判断した場合には、記憶装置18のカウンタ20bのカウント値を1つカウントアップする。つまり、カウンタ20bのカウント値は、ファン12の回転数Nが許容範囲外(異常)と判断された回数(異常発生回数)を示す数値である。
【0044】
さらに、異常推測部25は、カウンタ20bのカウント値をカウントアップした後には、カウンタ20a,20bのカウント値をそれぞれ読み出す。そして、異常推測部25は、回転数固定モードでの回転数制御を行った回数(カウンタ20aのカウント値)に対する異常発生回数(カウンタ20bのカウント値)の割合である異常発生率Pを算出する。そして、異常推測部25は、その算出した異常発生率Pが、記憶装置18に予め登録されているしきい値S(例えば、0.8(80%))以上であるか否かを判断する。異常推測部25は、その判断の結果、異常発生率Pがしきい値S以上であると判断した場合には、ファン12が故障の前兆を示す劣化状態にあることを例えばディスプレイ14を利用して報知する。例えば、ディスプレイ14には、ファン12が劣化して故障発生が懸念されることからメンテナンスを受けることを推奨する旨のメッセージが表示される。なお、そのメッセージの内容は、ファン12の故障発生が懸念される状態である旨を報知できれば、特に限定されない。
【0045】
なお、ファン付き装置に図2の点線に示されるような報知ランプ28が設けられる場合には、異常推測部25は、その報知ランプ28を点灯させることで、上記のようなファン12の故障が懸念されることを報知してもよい。また、ファン12の故障の前兆を示す劣化状態が推測(検知)された以降にも、ファン12の劣化推測動作を行ってもよいが、装置動作の無駄を無くす観点に基づき、ファン12の交換等のメンテナンスが行われるまで、ファン12の劣化推測動作を実施しなくてもよい。
【0046】
図4は、この第2実施形態におけるファン付き装置におけるファンの劣化推測動作(故障予測動作)の一例を示すフローチャートである。この図4を参照して、ファン付き装置におけるファンの劣化推測動作の一例を簡単に説明する。
【0047】
例えば、ステップS101において、主制御部26が、装置起動処理あるいは装置停止処理を開始すると、ステップS102において、検査指示部23は、回転数固定モードでのファン12の回転数制御の開始をファン制御部22に指示する。然る後に、ステップS103において、回転数検出部24がファン12の回転数Nを検出する。そして、ステップS104において、異常推測部25は、その検出された回転数Nが許容範囲の上限値Huを超えているか否かを判断する。この判断により、回転数Nが上限値Huを超えていると判断した場合には、ステップS105において、異常推測部25は、回転数Nが許容範囲外であると判断する。そして、ステップS106において、異常推測部25は、カウンタ20bのカウント値を1つカウントアップする。さらに、ステップS107において、異常推測部25は、カウンタ20a,20bのカウント値を利用して、異常発生率Pを算出する。さらに、ステップS108において、異常推測部25は、その異常発生率Pがしきい値S以上であるか否かを判断する。この判断動作によって、異常発生率Pがしきい値S以上であると判断した場合には、ステップS109において、異常推測部25は、ファン12が劣化して故障が懸念されることをディスプレイ14等により報知する。
【0048】
一方、前記ステップS104において、異常推測部25は、回転数Nが上限値Huを超えていないと判断した場合には、ステップS110において、回転数Nが下限値Hdを下回っているか否かを判断する。そして、異常推測部25は、回転数Nが下限値Hdを下回っていると判断した場合には、回転数Nが許容範囲外であると判断して、前記ステップS105以降の動作を行う。また、異常推測部25は、前記ステップS110において、回転数Nが下限値Hdを下回っていないと判断した場合には、ステップS111において、回転数Nが許容範囲内であると判断する。
【0049】
前記のように異常推測部25が前記ステップS109の報知動作後や、前記ステップS111において回転数Nが許容範囲内であると判断した以降には、ステップS112において、装置起動処理中であれば、検査指示部23は、ファン12の回転数制御を通常モードに移行させる。また、装置停止処理中であれば、主制御部26は、ファン12を停止させ装置を停止する。
【0050】
なお、回転数検出部24が回転数固定モード中に回転数Nを複数回検出する場合には、回転数Nが検出される度に、回転数固定モードの期間中、前記ステップS104〜S111の動作を繰り返し行う。
【0051】
この第2実施形態の構成は、第1実施形態で述べたと同様のファン劣化推測に関わる構成を有しているので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この第2実施形態におけるファン12の劣化推測は、ファン12の回転数Nが許容範囲外となった回数を利用して行っている。つまり、この第2実施形態におけるファン12の劣化推測は、ファン12の回転状態のログ(履歴)に基づいて行われている。このため、ファン12の単発的な回転数Nの異常によって、ファン12が異常であると判断されることがなくなることから、この第2実施形態の構成は、ファン12の劣化推測の精度を高めることができる。換言すれば、この第2実施形態の構成は、ファン12の劣化推測の信頼性を高めることができる。さらに、この第2実施形態の構成は、ファン12の異常発生率Pを算出してファン12の異常推測を行っているから、ファン12の劣化推測の精度および信頼性をより高めることができる。
【0052】
さらに、この第2実施形態では、上記のようなファン12の劣化推測動作は、装置起動処理中あるいは装置停止処理中に行う。このファン12の劣化推測を行うタイミングは、ファン12の回転数制御を通常モードで行う期間(つまり、ファン付き装置が通常運転を行っている運用期間)を避けたタイミングである。このため、この第2実施形態におけるファン12の劣化推測は、装置の通常運転を複雑化してしまうことを回避できる。
【0053】
(第3実施形態)
以下に、本発明に係る第3実施形態を説明する。
【0054】
この第3実施形態の構成は、次に述べる相違点を除いては、第2実施形態と同様である。なお、この第3実施形態の説明において、第2実施形態の構成と同一名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0055】
前述した第2実施形態では、異常推測部25は、回転数検出部24から受け取った回転数Nが許容範囲外であると判断する度に、記憶装置18のカウンタ20bのカウント値を1つカウントアップしていた。これに対して、この第3実施形態では、回転数固定モード中に回転数Nが許容範囲外であると判断された回数が、予め設定されたしきい値R以上である場合に、カウンタ20bのカウント値を1つカウントアップする。
【0056】
すなわち、この第3実施形態では、回転数固定モード中に、回転数検出部24は、ファン12の回転数Nを複数回検出する。また、異常推測部25は、カウンタ(図示せず)を内蔵しており、回転数Nが許容範囲外であると判断する度に、その内蔵のカウンタのカウント値Kをカウントアップする。そして、異常推測部25は、同じ回転数固定モード中におけるカウント値Kがしきい値R以上(K≧R)であるか否かを判断し、カウント値Kがしきい値R以上であると判断した場合には、カウンタ20bのカウント値を1つカウントアップする。
【0057】
第3実施形態の上記以外の構成は第2実施形態と同様であり、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この第3実施形態では、上記したように、同じ回転数固定モード中に、回転数Nが許容範囲外であると判断された回数Kがしきい値R以上である場合に、カウンタ20bのカウント値を1つカウントアップする。このような構成は、ファン12の劣化推測に対するファン12の回転数のばらつきの影響をより軽減することができる。これにより、ファン12の劣化推測に対する信頼性をより高めることができる。
【0058】
(その他の実施形態)
なお、この発明は第1〜第3の実施形態に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第2と第3の各実施形態では、ファン制御部22は、ファン12へ供給する駆動電力をPWM制御手法によって制御することでファン12の回転数を制御する電気回路(つまり、ハードウェア)により構成されている。これに代えて、ファン制御部22は、例えば記憶装置18に格納されているコンピュータプログラムに従って動作することでファン制御部22として機能するCPUにより実現されてもよい。換言すれば、ファン制御部22は、ソフトウェアにより実現されてもよい。
【0059】
また、第2と第3の各実施形態では、ファン12は、回転数に応じた周期のパルス信号を出力する回転数情報出力機能付きファンである。これに代えて、ファン12は、そのような回転数情報出力機能を持たないファンであってもよい。このように、回転数情報出力機能を持たないファンを備える場合には、そのファンの回転数を検出する回転数検出手段(例えば、ホールIC(Integrated Circuit)など)を別に設ける。この場合には、その回転数検出手段からの出力値を回転数情報として取り込んで回転数を検出し、前記同様に、ファンの劣化の有無を推測する。
【0060】
さらに、第2と第3の各実施形態では、ファン制御部22は、回転数固定モードでは、ファン12を仕様により定まる最大回転数となるように回転数を制御する。これに対して、回転数固定モードでのファン12の回転数は、最大回転数でなくともかまわない。
【符号の説明】
【0061】
1 ファン検査装置
2,23 検査指示部
3,25 異常推測部
5 送風装置
6,12 ファン
7,22 ファン制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象のファンが設定された回転数で回転するように前記ファンの回転数を制御する回転数固定モードでのファン制御を、予め定められたタイミングで開始するように指示する検査指示部と、
前記回転数固定モード中に取り込んだ前記ファンの回転数情報に基づいて、前記ファンの回転数が、前記設定された回転数に基づいて定められた許容範囲から外れているか否かを判断し、当該判断結果に基づいて前記ファンの劣化の有無を推測する異常推測部と、
を有するファン検査装置。
【請求項2】
前記異常推測部は、前記ファンの回転数が前記許容範囲外であると判断した回数をカウントし、このカウントによるカウント値に基づき前記ファンの劣化の有無を推測する請求項1記載のファン検査装置。
【請求項3】
前記異常推測部は、前記ファンの回転数が前記許容範囲外であるか否かの判断動作を行った回数に対する前記カウント値の割合を異常発生率として算出し、当該異常発生率が、予め定めたしきい値以上であると判断した場合に、前記ファンが劣化していると推測する請求項2記載のファン検査装置。
【請求項4】
前記異常推測部は、前記回転数固定モード中に前記ファンの回転数情報を複数回取り込み、取り込む度に前記回転数が前記許容範囲外であるか否かの判断を行い、前記回転数固定モード中に前記回転数が前記許容範囲外であると判断した回数が予め定めた設定値以上になった場合に、異常発生回数を表すカウント値をカウントアップし、そのカウント値に基づき前記ファンの劣化の有無を推測する請求項1記載のファン検査装置。
【請求項5】
前記異常推測部は、前記回転数固定モードでの回転数制御を行った回数に対する前記カウント値の割合を異常発生率として算出し、当該異常発生率が、予め定めたしきい値以上であると判断した場合に、前記ファンが劣化していると推測する請求項4記載のファン検査装置。
【請求項6】
前記回転数固定モードでのファン制御は、前記ファンの回転数を可変制御する通常モードでのファン制御を開始する前の期間と、前記通常モードでのファン制御を終了した後の期間とのうちの一方又は両方の期間内で行われる請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載のファン検査装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載のファン検査装置と、
検査対象のファンと、
前記ファンの回転数を可変制御する通常モードと、前記ファンが設定された回転数で回転するように前記ファンの回転数を制御する回転数固定モードとの各モードでの前記ファンの回転数制御が可能なファン制御部と、
を有する送風装置。
【請求項8】
請求項7記載の送風装置を備えているファン付き装置。
【請求項9】
検査対象のファンが設定された回転数で回転するように前記ファンの回転数を制御する回転数固定モードでのファン制御を、予め定められたタイミングで開始するように指示し、
前記回転数固定モード中に取り込んだ前記ファンの回転数情報に基づいて、前記ファンの回転数が、前記設定された回転数に基づいて定められた許容範囲から外れているか否かを判断し、
その判断結果に基づいて前記ファンの劣化の有無を推測するファン故障予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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