説明

ファン装置

【課題】 ファン装置による冷却の効率を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】 予め定められたループ状の軌跡であるとともに少なくとも一部の曲率が他の部分の曲率とは異なる軌跡に沿って移動可能な無端の移動体と、前記移動体を前記軌跡に沿って移動させる駆動部と、前記移動体に固定された羽根と、を備える、ファン装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ラジエータ等の種々の装置を冷却するためにファン装置が用いられている。ファン装置としては、複数枚の羽根を放射状に配置した円形状を有するプロペラを回転させるものや、複数枚の羽根を円周上に垂直に並べて形成した筒を回転させるもの等が用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−317963号公報
【特許文献2】特開平5−283879号公報
【特許文献3】特開平5−10541号公報
【0004】
ところで、冷却の対象となる対象物(例えば、ラジエータ)は、種々の形状となり得る。ところが、対象物の形状と、ファン装置が送風可能な領域の形状(例えば、プロペラの形状である円形状)とは、必ずしも一致しているとは限らない。そこで、対象物を冷却するためには、対象物の形状に合わせた送風シュラウド(覆い)や送風ダクト(流路)を設けて風向きを強制的に変える方法や、ファン装置の風量を多めに設定して対象物の全体に送風する方法等が採用されていた。そのために、冷却の効率が低下する可能性があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、ファン装置による冷却の効率を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、この発明によるファン装置は、予め定められたループ状の軌跡であるとともに少なくとも一部の曲率が他の部分の曲率とは異なる軌跡に沿って移動可能な無端の移動体と、前記移動体を前記軌跡に沿って移動させる駆動部と、前記移動体に固定された羽根と、を備える。
【0007】
このファン装置によれば、羽根を対象物の形状に合わせて移動させることが可能となるので、ファン装置による冷却の効率を向上させることができる。
【0008】
上記ファン装置において、さらに、前記羽根に接続されたスライド支持部と、前記羽根の軌跡の少なくとも一部において、前記スライド支持部を前記移動体の移動方向に沿ってスライド可能に案内するガイド部と、を備えることとしてもよい。
【0009】
この構成によれば、羽根が、ガイド部によって、移動体の移動方向に沿って案内されるので、羽根の移動を滑らかにすることができる。
【0010】
上記ファン装置において、さらに、平面内に互いに離れて配置されるとともに、前記移動体を巻き掛ける2つの巻掛車を備え、前記駆動部は、前記2つの巻掛車のうちの少なくとも一方を駆動し、前記移動体を含む面に垂直な方向に沿って見た前記ガイド部の位置は、前記移動体の軌跡で囲まれた範囲の外にあることとしてもよい。
【0011】
この構成によれば、ガイド部が、移動体のループ形状で囲まれた範囲の外に設けられているので、巻掛車の大きさの小型化を図ることができる。その結果、駆動部に要求されるトルクが過剰に大きくなることを防止することができる。
【0012】
上記各ファン装置において、さらに、前記羽根に固定された押力受部と、前記羽根の軌跡の少なくとも一部において、前記押力受部を前記移動体の移動方向に沿って押圧する押圧部と、を備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、羽根が、押圧部によって、移動体の移動方向に沿って押圧されるので、羽根の移動を滑らかにすることができる。
【0014】
上記ファン装置において、前記移動体の軌跡の内の前記押圧部が前記押力受部を押圧する軌跡は平面に含まれる曲線形状を有し、前記平面に垂直な方向に沿って見た場合の前記押力受部の位置は、前記押圧部が前記押力受部を押圧する軌跡上の任意の位置において、前記移動体と前記羽根との接続位置を通り前記羽根の移動方向と平行である直線と、前記押力受部を通り前記羽根の移動方向と平行である直線と、の間に前記羽根の重心が位置するように設定されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、羽根が重心を中心として回転しようとすることを抑制し、羽根の移動を滑らかにすることができる。
【0016】
なお、この発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、ファン装置、ファン装置とラジエータとを備えた冷却システム、その冷却システムと燃料電池とを備えた燃料電池システム、その冷却システムと内燃機関とを備えた内燃機関システム、これらの燃料電池システムまたは内燃機関システムを備えた車両、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、この発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.第4実施例:
E.第5実施例:
F.変形例:
【0018】
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としての冷却システム300の構成を示す説明図である。この冷却システム300は、ファン装置100と、ファン装置100の前面に配置されたラジエータ200と、を有している。ラジエータ200には、図示しない燃料電池を冷却するための冷却水が循環している。また、この冷却システム300は、車両に搭載されており、その車両の前面に配置されている。
【0019】
ファン装置100は、2つのプーリ110、120と、これらのプーリ110、120に掛けられたベルト140と、ベルト140に固定された複数の羽根150と、プーリ110と機械的に接続されたモータ130と、を有している。なお、図中のF方向は、冷却システム300を後から見る方向(以下「前方向F」と呼ぶ)を示している。
【0020】
図2(A)は、冷却システム300を後面から(図1の前方向Fに沿って)見た概略図である。ラジエータ200は、横に長い長方形状を有している。第1プーリ110は、ラジエータ200の中央左側に位置し、第2プーリ120は、ラジエータ200の中央右側に位置している。2つのプーリ110、120は同じ平面上に位置し、それぞれ、前方向Fと平行な軸を中心に回転可能である。また、2つのプーリ110、120には、ループ状の無端のベルト140が掛けられている。図中では、ベルト140がハッチングを付して示されている。また、モータ130は、第1プーリ110を回転させることが可能である。第1プーリ110が回転すると、ベルト140が、2つのプーリ110、120に掛かった状態で循環移動する。具体的には、ベルト140は、2つのプーリ110、120のそれぞれの位置でプーリの外周に沿って折り返すループ形状を有する軌跡に沿って循環移動する。以下、ベルト140の軌跡を含む面、すなわち、ベルト140を含む面を「軌跡面」と呼ぶ。
【0021】
図2(B)は、ファン装置100を側面から(図2(A)のA方向に沿って)見た概略図である。図2(B)には、第2プーリ120の軸122よりも上の部分が示されている。この軸122は、ラジエータ200に固定されている(図示省略)。
【0022】
ベルト140には、駆動取っ手152が固定されている。駆動取っ手152には、ベルト140のループ形状の外側へ伸びる羽根150が接続されている。この羽根150は板状の形状を有しており、軌跡面Sと平行で、ベルト140の移動方向と垂直な方向に沿って伸びている(図2(A)(B))。ただし、この羽根150は、ベルト140の移動方向とは逆の方向に向かって見ると、軌跡面Sの前面から後面に向かって傾斜している(図示省略)。その結果、ベルト140が移動すると、羽根150がベルト140の移動方向に沿って移動することによって、軌跡面Sの前面から後面へ向かう方向の風が生じる(以下、風の流れる方向を「風方向W」と呼ぶ)。この風は、ファン装置100の前に位置するラジエータ200を通って流れるので、ラジエータ200は、この風によって冷却される。
【0023】
第1プーリ110が回転すると、複数の羽根150は、2つのプーリ110、120のそれぞれの位置で折り返しつつ、ラジエータ200の後面を左右に繰り返し移動する(図2(A))。その結果、横に長いラジエータ200の全体に効率よく風を通すことが可能となる。従って、ファン装置100による冷却の効率を向上させることが可能となる。
【0024】
このように、第1実施例では、複数の羽根150が、一部の曲率が他の部分の曲率と異なる軌跡、すなわち、非円形状の軌跡に沿って循環移動するベルト140に固定されている。従って、冷却の対象となる対象物(本実施例では、ラジエータ200)の形状が円形状や正方形状ではない場合であっても、羽根150を対象物(ラジエータ200)の形状に合わせて移動させることができるので、ファン装置100による冷却の効率を向上させることが可能となる。
【0025】
また、第1実施例では、ラジエータ200の後ろのシュラウド等の壁を省略することができる。従って、車両の高速走行時には、ラジエータ200の前面から吹き込む風の流れを阻害することを抑制することができるので、自然に流れる風を利用した効率のよい冷却を行うことができる。
【0026】
B.第2実施例:
図3は、第2実施例における冷却システム300aを示す説明図である。図3(A)は、図2(A)と同様に冷却システム300aを後面から(前方向Fに沿って)見た概略図である。図3(B)は、ファン装置100aを側面から(図3(A)のA方向に沿って)見た概略図である。図2に示す第1実施例との違いは、羽根150aに滑車154aが設けられ、さらに、ファン装置100aに、滑車154aを案内する溝レール160aが設けられている点だけである。他の構成は第1実施例と同じである。
【0027】
羽根150aの、駆動取っ手152に接続された端150a1(図3(B))とは反対側の端150a2には、スライド軸155aが接続されている。このスライド軸155aは、ベルト140のループ形状の外側へ向かって伸びた後、前方向Fに屈曲し、その先端には滑車154aが嵌め込まれている。この滑車154aは、スライド軸155aを中心に回転可能である。
【0028】
一方、溝レール160aは、羽根150aの移動に伴う滑車154aの移動の軌跡に沿って、設けられている(図3(A))。その結果、溝レール160aは、ラジエータ200の略外縁を辿るループ形状を有している。また、この溝レール160aの、ベルト140の移動方向に垂直な断面は、ループ形状の外側から内側へ向かって窪んだ凹形状を有している(図3(B))。滑車154aは、この溝レール160aの凹部に掛けられている。また、この溝レール160aは、ラジエータ200に固定されている(図示省略)。
【0029】
第1プーリ110が回転し、ベルト140が循環移動すると、羽根150aがベルト140の移動方向に沿って移動する。この際、滑車154aは、スライド軸155aを介してベルト140の移動方向に引っ張られ、溝レール160aに沿って移動する。その結果、羽根150aの端150a2が、風圧によって風の流れの上流側(前方向F)に引っ張られ、羽根150aが傾くことを抑制することができる。
【0030】
このように、第2実施例では、羽根150aに接続された滑車154aが溝レール160aによってベルト140の移動方向に沿って案内されるので、羽根150aの移動を滑らかにすることができる。さらに、羽根150aが風圧によって傾くことを抑制することができる。その結果、ファン装置100aによる冷却の効率を向上させることができる。
【0031】
C.第3実施例:
図4は、第3実施例における冷却システム300bを示す説明図である。図3に示す第2実施例との違いは、羽根150bの、ベルト140bとの固定位置と、滑車154bとの固定位置とが、入れ替わっている点である。また、2つのプーリ110b、120bの大きさが大きくなっている。他の構成は第2実施例と同じである。
【0032】
図4(A)は、図3(A)と同様に冷却システム300bを後面から(前方向Fに沿って)見た概略図である。第3実施例のファン装置100bでは、第1プーリ110bと第2プーリ120bとの大きさは、ラジエータ200の縦方向の大きさとほぼ同じ大きさに設定されている。これらのプーリ110b、120bに掛けられたベルト140bの軌跡は、ラジエータ200の略外縁を辿るループ形状を有している。
【0033】
図4(B)は、ファン装置100bを側面から(図4(A)のA方向に沿って)見た概略図である。図4(B)には、第2プーリ120bの軸122bよりも上の部分が示されている。軸122bはラジエータ200に固定されている(図示省略)。ベルト140bには、駆動取っ手152bが固定されている。この駆動取っ手152bは、前方向Fに伸びた後、ベルト140bのループ形状の内側に向かって屈曲し、羽根150bに接続されている。この羽根150bは、図3に示す第2実施例の羽根150aと同様に、ベルト140bを含む軌跡面Sbと平行で、ベルト140bの移動方向と垂直な方向に沿って伸びている。
【0034】
羽根150bの、駆動取っ手152bに接続された端150b2(図4(B))とは反対側の端150b1には、スライド軸155bが接続されている。このスライド軸155bは、ベルト140bのループ形状の内側へ向かって伸びた後、前方向Fに屈曲し、その先端には滑車154bが嵌め込まれている。この滑車154bは、スライド軸155bを中心に回転可能である。
【0035】
一方、溝レール160bは、羽根150bの移動に伴う滑車154bの移動の軌跡に沿って設けられている(図4(A))。また、この溝レール160bの、ベルト140bの移動方向に垂直な断面は、ベルト140のループ形状の内側から外側へ向かって窪んだ凹形状を有している(図4(B))。滑車154bは、この溝レール160bの凹部に掛けられている。また、この溝レール160bは、ラジエータ200に固定されている(図示省略)。
【0036】
第1プーリ110bが回転し、ベルト140bが循環移動すると、羽根150bがベルト140bの移動方向に沿って移動する。この際、滑車154bは、スライド軸155bを介してベルト140bの移動方向に引っ張られ、溝レール160bに沿って移動する。
【0037】
このように、ベルト140bのループ形状の内側に溝レール160bを設けた場合にも、羽根150bに接続された滑車154bが溝レール160bによって案内される。従って、羽根150bの移動を滑らかにし、さらに、羽根150bが風圧によって傾くことを抑制することができる。その結果、ファン装置100bによる冷却の効率を向上させることができる。
【0038】
D.第4実施例:
図5は、第4実施例における冷却システム300cを示す説明図である。図4に示す第3実施例との違いは、羽根150bのスライド軸155cに、プーリ110c、120c側に突出する力受突起部156cが設けられており、さらに、2つのプーリ110c、120cのそれぞれに、羽根150b側に突出する押圧突起部116c、126cが複数設けられている点だけである。他の構成は図4に示す第3実施例と同じである。
【0039】
図5(A)は、図4(A)と同様に冷却システム300cを後面から(前方向Fに沿って)見た概略図である。ベルト140bの第1プーリ110cに掛かる部分に固定されている羽根150bは、第1プーリ110cと共に回転する。ここで、第1プーリ110cの、力受突起部156cと重なる位置の裏側(羽根150b側)には、押圧突起部116cが固定されている。同様に、第2プーリ120bの、力受突起部156cと重なる位置の裏側には、押圧突起部126cが固定されている。
【0040】
図5(B)は、ファン装置100cを側面(図5(A)のA方向に沿って)見た概略図である。図5(B)には、第2プーリ120cの軸122cよりも上の部分が示されている。ベルト140bの移動方向に沿って見ると、力受突起部156cと押圧突起部126cとは、一部が互いに重なっている。
【0041】
図5(C)は、力受突起部156cと押圧突起部126cとの近辺を示す斜視図である。押圧突起部126cと力受突起部156cとの位置関係は、押圧突起部126cの移動方向の前方に力受突起部156cが接するように、設定されている。このような、力受突起部156cと押圧突起部126cとの位置関係は、ベルト140bにおける羽根150bの固定位置を調整することによって実現することができる。
【0042】
図6は、力受突起部156cと押圧突起部126cとの位置関係の変化を示す説明図である。図6には、ベルト140bが第2プーリ120cに巻きとられ、羽根150bが第2プーリ120cの回転方向に沿って折り返す際の、位置関係の変化が示されている。
【0043】
ベルト140bの移動に従って、力受突起部156cは、図中のa位置からl位置まで順番に移動する。また、押圧突起部126cも、図中のa位置からl位置まで順番に移動する。力受突起部156cと押圧突起部126cとのそれぞれの同じ符号が付された位置は、同じ時点での位置を示している。
【0044】
ベルト140bと羽根150bとの固定位置(以下「羽根ベルト固定位置」と呼ぶ)が第2プーリ120cに掛かるまでは(第1範囲R1)、羽根150bは直線上を移動する。この際、力受突起部156cも直線上を移動する(a〜d位置)。一方、押圧突起部126cは、第2プーリ120cの回転に従って、円周上を移動しつつ、力受突起部156c(羽根150b)に近づく。ここで、押圧突起部126cは、力受突起部156cに後ろから接する位置にくる(d位置)。
【0045】
羽根ベルト固定位置が、第2プーリ120cに掛かり、羽根150bが第2プーリ120cの回転に沿って移動すると(第2範囲R2)、力受突起部156cと押圧突起部126cとは、接した状態で円周上を移動する(d〜i位置)。この際、力受突起部156cは押圧突起部126cによって押される。すなわち、羽根150bの一端150b1(図5(B))は、押圧突起部126cによって押され、羽根150bの他端150b2は、ベルト140bによって押されることとなる。このように、羽根150bは、その両端150b1、150b2をベルト140bの移動方向に沿って押されるので、滑らかに向きを変えながら移動することができる。
【0046】
羽根ベルト固定位置が、第2プーリ120cから離れると(第3範囲R3)、羽根150bは直線上を移動する。その結果、力受突起部156cも直線上を移動する(i〜l位置)。一方、押圧突起部126cは、第2プーリ120cの回転に従って、円周上を移動しつつ、力受突起部156c(羽根150b)から遠ざかる。
【0047】
以上、羽根150bの力受突起部156cと、第2プーリ120cの押圧突起部126cとの位置関係について説明したが、力受突起部156cと、第1プーリ110cの押圧突起部116cとの位置関係についても、同様に設定されている。
【0048】
このように、第4実施例では、羽根150bが回転移動する際に、羽根150bの一端はベルト140bに押され、他端は押圧突起部116c、126cに押される。その結果、向きを変える移動を滑らかなものとすることができるので、ファン装置100cによる冷却の効率を向上させることができる。
【0049】
なお、図6中には、f位置における羽根150bが示されている。この羽根150b内部には、その重心位置CMが示されている。また、位置FPは、羽根ベルト固定位置FPを示している。さらに、3つの直線L1〜L3は、いずれも、羽根150bの移動方向と平行な直線を示している。但し、第1直線L1は力受突起部156cを通り、第2直線L2は羽根ベルト固定位置FPを通り、第3直線L3は重心位置CMを通る。このように、重心位置CMは、2つの直線L1、L2の間に位置している。換言すれば、羽根ベルト固定位置FPと力受突起部156cとは、第3直線L3を挟んで互いに反対側にオフセットしている。従って、羽根150bを回転移動させる2つの力は、羽根150bを、その重心位置CMを中心に回転させようとする力成分を互いに打ち消し合う。その結果、羽根150bが重心位置CMを中心に回転しようとすることを抑制し、羽根150bの移動を滑らかにする効果をより高めることができる。
【0050】
E.第5実施例:
図7は、第5実施例における冷却システム300dを示す説明図である。図5に示す第4実施例との違いは、羽根150bの外側の端150b2の代わりに、羽根150bの中央付近に駆動取っ手152dが接続されている点である。また、2つのプーリ110d、120dの大きさが小さくなっている。他の構成は図5に示す第4実施例と同じである。
【0051】
図7(A)は、図5(A)と同様に冷却システム300dを後面から(前方向Fに沿って)見た概略図である。第5実施例のファン装置100dでは、第1プーリ110dと第2プーリ120dとの大きさは、ラジエータ200の縦方向の大きさのほぼ半分の大きさに設定されている。従って、これらのプーリ110d、120dに掛けられたベルト140dは、羽根150bの中央付近と重なっている。また、第1プーリ110dには、図5の第4実施例の第1プーリ110cと同様の押圧突起部116dが設けられている。また、第2プーリ120dには、第4実施例の第2プーリ120cと同様の押圧突起部126dが設けられている。
【0052】
図7(B)は、ファン装置100dを側面から(図7(A)のA方向に沿って)見た概略図である。図7(B)には、第2プーリ120dの軸122dよりも上の部分が示されている。ベルト140dには駆動取っ手152dが固定されている。この駆動取っ手152dは、前方向Fに伸びた後、羽根150bの中央付近に接続されている。
【0053】
このように、第5実施例では、羽根150bとベルト140dとの固定位置が、羽根150bの中央付近に設定されている。従って、ベルト140dが、羽根150bの重心付近に力を加えることとなるので、羽根150bの移動を滑らかにすることができる。その結果、ファン装置100dによる冷却の効率を向上させることができる。
【0054】
なお、第5実施例において、押圧突起部116d、126dと、力受突起部156cとを省略することとしてもよい。また、溝レール160bと、滑車154bとを省略することとしてもよい。
【0055】
F.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0056】
変形例1:
上述の各実施例において、羽根を固定したベルトと、溝レールと、の位置関係については、任意に設定することができる。ただし、図3に示す第2実施例のように、ベルト140を含む面Sに垂直な方向(例えば、前方向F)に沿って見た溝レール160aの位置が、ベルト140で囲まれた範囲の外であれば、第1プーリ110の大きさを小さくすることができるので、第1プーリ110を回転させるモータ130のトルクを小さくすることができる。
【0057】
変形例2:
羽根を移動方向に沿って案内するためのスライド支持部とガイド部との構成としては、図3、図4、図5、図7に示した各実施例における、滑車154a、154bと溝レール160a、160bとに限らず、種々の形式のものを採用することができる。例えば、滑車の回転軸を、軌跡面に平行で、ベルトの移動方向に垂直なものとしてもよい。この場合も、滑車を掛ける溝レールを用いて、滑車を羽根の移動方向に沿って案内すればよい。また、スライド支持部としては、滑車を用いる形式に限らず、他の形式を採用してもよい。例えば、溝レールに掛かる爪状の突起をスライド支持部として用いてもよい。一般に、スライド支持部とガイド部との構成としては、ガイド部が、スライド支持部を、羽根の移動方向に沿ってスライド可能に案内するものであればよい。換言すれば、ガイド部が、羽根の移動方向とは異なる方向へのスライド支持部の動きを抑制する構成を採用することができる。
【0058】
また、ガイド部(例えば、上述の各実施例における溝レール)は、羽根の軌跡の全範囲に設けられていなくてもよい。ただし、少なくとも一部の軌跡においてガイド部が設けられていれば、羽根の移動を滑らかにすることができる。
【0059】
変形例3:
羽根を移動方向に沿って押すための押圧部の構成としては、図5、図7に示した各実施例における押圧突起部116c、116d、126c、126dに限らず、種々の形式のものを採用することができる。例えば、プーリと同じ軸を中心に、プーリと同じ角速度で回転する歯車を押圧部として用いてもよい。この際、歯車の歯に、羽根に固定された押力受部を掛けて歯車を回転させることとすればよい。なお、図5、図7に示した各実施例では、スライド軸155cを介して羽根150bに固定された力受突起部156cが「押力受部」に相当する。また、押圧部が羽根と接して羽根を直接に押すこととしてもよい。この場合には、羽根の押圧部と接する部分が「押力受部」に相当することとなる。いずれの場合も、羽根が向きを変えながら移動する軌跡(曲線形状の軌跡)に、押圧部を設ければ、羽根の向きを滑らかに変えることができる。
【0060】
なお、羽根が方向を変えながら移動する軌跡に限らず、羽根が直進する軌跡に押圧部を設けてもよい。例えば、図5に示す実施例において、第1プーリ110cから第2プーリ120cへ(左から右へ)羽根150bが直進する軌跡において、力受突起部156cを後ろから押す突起部(以下「直進突起部」と呼ぶ)を、ベルト140bと平行に移動させることとしてもよい。具体的には、力受突起部156cの直線状の軌跡の側を繰り返し辿るループ状のベルト(以下「直進ベルト」と呼ぶ)を設け、この直進ベルトに直進突起部を固定すればよい。この際、この直進ベルトをベルト140bと同じ速度で循環移動させれば、直進突起部は、力受突起部156cを適切に押すことができる。
【0061】
変形例4:
上述の各実施例では、2つのプーリを用いてベルトの軌跡を定めているが、3以上のプーリを用いてベルトの軌跡を定めてもよい。例えば、3つのプーリを用いて、三角形状の軌跡に沿ってベルトを循環移動させてもよい。ただし、プーリの数を2つとし、これら2つのプーリにベルトを巻き掛ける構成を採用すれば、ファン装置の構成を簡単なものとすることができる。
【0062】
また、ベルトを駆動させる方法としては、ベルトの内側に設けられたプーリを回転させる方法に限らず、種々の方法を採用することができる。例えば、ベルトを挟むように、ベルトの内側と外側とにプーリを設け、外側のプーリを回転駆動させてもよい。
【0063】
また、上述の各実施例では、巻掛伝動体と巻掛車との組み合わせとして、ベルトとプーリとを採用しているが、他の種類の組み合わせを採用してもよい。例えば、チェーンとスプロケットとを用いることとしてもよい。
【0064】
変形例5:
上述の各実施例では、少なくとも一部の曲率が他の部分の曲率とは異なる軌跡に沿って移動可能な移動体を実現する方法として、無端の巻掛伝動体(例えば、ベルトやチェーン)を複数の巻掛車(例えば、プーリやスプロケット)に巻き掛けて循環移動させる巻掛伝動機構を用いる方法を採用している。従って、非円形状の軌跡に沿って移動する移動体を容易に実現することが可能である。
【0065】
なお、上述の各実施例では、移動体の軌跡が1つの平面に含まれているが、移動体の軌跡は必ずしも1つの平面に含まれていなくてもよい。例えば、ラジエータ200の後面上を移動した後に、ラジエータ200の側面上に移動し、さらに、その側面上を移動することとしてもよい。ただし、移動体が1つの平面に含まれる軌跡を移動することとすれば、ファン装置の構成を簡略化することができる。
【0066】
変形例6:
ファン装置の冷却対象としては、燃料電池の冷却水の放熱を行うラジエータに限らず、種々の装置を採用することができる。例えば、内燃機関の冷却水の放熱を行うラジエータを冷却してもよく、燃料電池の本体を冷却してもよく、燃料電池やバッテリ等の電源とモータとを接続するインバータ回路を冷却することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施例としての冷却システム300の構成を示す説明図。
【図2】第1実施例における冷却システム300を示す説明図。
【図3】第2実施例における冷却システム300aを示す説明図。
【図4】第3実施例における冷却システム300bを示す説明図。
【図5】第4実施例における冷却システム300cを示す説明図。
【図6】力受突起部156cと押圧突起部126cとの位置関係の変化を示す説明図。
【図7】第5実施例における冷却システム300dを示す説明図。
【符号の説明】
【0068】
100、100a、100b、100c、100d...ファン装置
110、110b、110c、110d...第1プーリ
120、120b、120c、120d...第2プーリ
122、122b、122c、122d...軸
116c、116d...押圧突起部
126c、126d...押圧突起部
130...モータ
140、140b、140d...ベルト
150、150a、150b...羽根
152、152b、152d...駆動取っ手
154a、154b...滑車
155a、155b、155c...スライド軸
156c...力受突起部
160a、160b...溝レール
200...ラジエータ
300、300a、300b、300c、300d...冷却システム
F...前方向
S、Sb、Sc、Sd...軌跡面
W...風方向
CM...重心位置
FP...羽根ベルト固定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン装置であって、
予め定められたループ状の軌跡であるとともに少なくとも一部の曲率が他の部分の曲率とは異なる軌跡に沿って移動可能な無端の移動体と、
前記移動体を前記軌跡に沿って移動させる駆動部と、
前記移動体に固定された羽根と、
を備える、ファン装置。
【請求項2】
請求項1に記載のファン装置であって、さらに、
前記羽根に接続されたスライド支持部と、
前記羽根の軌跡の少なくとも一部において、前記スライド支持部を前記移動体の移動方向に沿ってスライド可能に案内するガイド部と、
を備える、ファン装置。
【請求項3】
請求項2に記載のファン装置であって、
さらに、平面内に互いに離れて配置されるとともに、前記移動体を巻き掛ける2つの巻掛車を備え、
前記駆動部は、前記2つの巻掛車のうちの少なくとも一方を駆動し、
前記移動体を含む面に垂直な方向に沿って見た前記ガイド部の位置は、前記移動体の軌跡で囲まれた範囲の外にある、ファン装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のファン装置であって、さらに、
前記羽根に固定された押力受部と、
前記羽根の軌跡の少なくとも一部において、前記押力受部を前記移動体の移動方向に沿って押圧する押圧部と、
を備える、ファン装置。
【請求項5】
請求項4に記載のファン装置であって、
前記移動体の軌跡の内の前記押圧部が前記押力受部を押圧する軌跡は平面に含まれる曲線形状を有し、
前記平面に垂直な方向に沿って見た場合の前記押力受部の位置は、前記押圧部が前記押力受部を押圧する軌跡上の任意の位置において、前記移動体と前記羽根との接続位置を通り前記羽根の移動方向と平行である直線と、前記押力受部を通り前記羽根の移動方向と平行である直線と、の間に前記羽根の重心が位置するように設定されている、ファン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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