説明

ファーネスカーボンブラック、該カーボンブラックの製造法および該カーボンブラックを含有するタイヤ

【課題】高負荷下での減少した摩耗性により特に特徴付けられる改善された反転カーボンブラック。
【解決手段】CTAB値20〜190m2/gおよび24M4−DBP吸収量40〜140ml/100gを有し、SSBR/BRゴムコンパウンドへの配合中に関係式
tanδ0/tanδ60 > 2.76−6.7×10-3×CTAB
を満足するtanδ0/tanδ60の比を有し、その際、tanδ60の値は、同じCTAB表面積および24M4−DBP吸収量を有するASTMカーボンブラックの値よりも常に低いファーネスカーボンブラック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された反転(inversion)カーボンブラックならびにその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックは、タイヤ工業において使用されるゴムコンパウンド中で、補強材カーボンブラックとして幅広く使用されている。これに関連してカーボンブラックの性質は、使用されるゴムコンパウンドの性質とともに、完成したタイヤの性能に影響を及ぼす。
【0003】
必要とされる性質は、高い耐摩耗性、低いころがり抵抗および湿った路面状態の場合の良好な密着性である。ころがり抵抗および密着性は、実質的に、トレッドコンパウンドの粘弾性挙動の影響を受ける。周期的な変形の場合には、粘弾性挙動は機械的損失係数tanδにより表すことができ、伸びまたは圧縮の場合には、粘弾性挙動は動的伸び弾性率|E*|により表すことができる。これらの値の大きさは双方とも、強く温度に依存する。これに関連して、湿った路面への密着性は、約0℃での損失係数tanδ0と直接に相関関係にあり、かつころがり抵抗は、約60℃での損失係数tanδ60と相関関係にある。低い温度で、損失係数が高くなればなるほど、通常、湿った路面へのタイヤ組成物の密着性がより良好になる。それに対して、ころがり抵抗を減少させるために、高い温度でできるだけ小さい損失係数が要求される。
【0004】
トレッドコンパウンドの耐摩耗性および粘弾性、ひいては損失係数は、実質的に、使用される補強材カーボンブラックの性質により決定される。ここで、実質的なパラメータは、比表面積、特に、カーボンブラックのゴム活性な表面部分の基準であるCTAB表面積である。CTAB表面積が増大するにつれて、耐摩耗性およびtanδは増大する。
【0005】
他の重要なカーボンブラックのパラメータは、カーボンブラックに機械的応力をかけた後に依然として残留する残留構造に関連する出発構造の測定された数としてのDBP吸収量および24M4−DBP吸収量、ならびにDIN66132により測定されるカーボンブラックの比表面積(BET表面積)である。
【0006】
同定されるカーボンブラックのパラメータは、カーボンブラックの粒子の形に依存する。カーボンブラックの製造過程中に、最初に、10〜500nmの直径を有するいわゆる一次粒子が形成され、その後、固い三次元凝集体に成長する。測定すべきパラメータとして空隙構造および粒度分布は、沈降の際に示される。
【0007】
トレッドコンパウンドのために適したカーボンブラックは、CTAB表面積20〜190m2/gおよび24M4−DBP吸収量値40〜140ml/100gで表される。
【0008】
カーボンブラック凝集体の平均粒径は、ASTM D−1765によるカーボンブラックの分類に使用される。この分類は、4桁の英数字表記からなり、その際、最初の文字(NまたはS)は、加硫の性質に関連する情報を提供し、引続く3桁の数の最初の数は、平均粒径に関連する情報を提供する。しかしながら、このASTM分類は、極めて大まかである。従って、1つのASTM分類範囲内で、トレッドコンパウンドの相当に偏った粘弾性が起こりうる。
【0009】
ドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書には、低いころがり抵抗および改善された密着性の必要条件を幅広い範囲まで満足させる反転カーボンブラックが記載されている。これらは、SSBR/BRゴムコンパウンドへ配合する間に、tanδ0/tanδ60の比が、関係式
tanδ0/tanδ60 > 2.76−6.7×10-3×CTAB
を満たし、かつtanδ60の値は、同一のCTAB表面積および24M4−DBP吸収量を有するASTMカーボンブラックの相応する値よりも常に低いカーボンブラックである。
【0010】
ドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書によるカーボンブラックは、今日、タイヤ工業において使用されるカーボンブラックの圧倒的大多数を製造するのに使用されるファーネスカーボンブラック法により製造される。この方法は、反転カーボンブラックの製造のために特別に変更された。
【0011】
ファーネスカーボンブラック法は、原則として酸化的熱分解に基づいており;すなわち、高度に防火性の材料で被覆された反応器中でのカーボンブラック原材料の不完全燃焼である。カーボンブラック原材料として、いわゆるカーボンブラックオイルが使用されるが、しかしガス状炭化水素も単独で、またはカーボンブラックオイルと同時に使用されることができる。反応器の特別な構造設計とは独立して、カーボンブラック製造の様々な段階に相当する3つの帯域は、カーボンブラック反応器中で区別されることができる。これらの帯域は、反応器の軸線に沿って連続的に存在し、かつ反応媒体は、連続的にこれらの帯域を貫流する。
【0012】
第一の帯域、いわゆる燃焼帯域は、実質的に、反応器の燃焼室を含む。ここで、熱い燃焼室排気ガスは、燃料、たいてい炭化水素燃料と過剰の予熱燃焼空気または他の酸素含有ガスを燃やすことにより発生する。天然ガスは、今日、燃料として圧倒的に使用されているが、しかし液状炭化水素、例えば暖房用油を使用することも可能である。燃料の燃焼は、通常、過剰の酸素を有する条件下で行われる。書籍"Carbon Black"第二版,Marcel Dekker, Inc., New York, 1993, 第20頁によれば、エネルギーの最適使用を得るためには、燃料の二酸化炭素および水への変換が燃焼室中でできるだけ完全に行われることが極めて重要である。本方法において、過剰の空気は、燃料の完全な変換を促進する。燃料は、通常、1つまたはそれ以上の燃焼ランスを用いて燃焼室に導入される。
【0013】
Kファクターは、過剰の空気を特徴付ける指数としてしばしば使用される。Kファクターは、燃料の化学量論的燃焼に必要とされる空気の量と、実際に燃焼に供給される空気の量との比である。従ってKファクター1は、燃焼が化学量論的であることを意味している。空気が過剰にある場合には、Kファクターは1未満である。通常Kファクター0.3〜0.9が使用される。
【0014】
カーボンブラック反応器の反応帯域と呼ばれる第二の帯域において、カーボンブラック形成が行われる。この目的のためには、カーボンブラック原材料は、注入され、熱い廃ガス流中に混合される。燃焼帯域内で完全に反応しない酸素量に関連して、反応帯域内へ導入される過剰の炭化水素量で存在する。従って、通常の条件下では、カーボンブラック形成はここで開始する。
【0015】
カーボンブラックオイルは、様々な方法で反応器中へ注入されることができる。例えば、軸方向のオイル注入ランス、または流動方向に関連して垂直である平面上に反応器の周面上に配置されている1つまたはそれ以上の半径方向のオイルランスが適している。反応器は、流動方向に沿って、半径方向のオイルランスを有する複数の平面を有していてもよい。オイルランスの先端に、噴霧ノズルまたは噴射ノズルが備えられ、これを用いてカーボンブラックオイルが廃ガス流中へ混合される。
【0016】
カーボンブラックオイルおよびガス状炭化水素、例えばメタンの同時使用の場合に、カーボンブラック原材料として、ガス状炭化水素は、カーボンブラックオイルとは別個に、ガスランスの特別なセットを通して熱い廃ガス流中へ注入されることができる。
【0017】
カーボンブラック反応器の停止帯域(急冷帯域)と呼ばれる第三の帯域において、カーボンブラック形成は、カーボンブラック含有処理ガスの急速冷却により停止される。この工程は、望ましくない任意の副反応を回避させる。このような副反応は、多孔性カーボンブラックをもたらしうる。反応は、通常、適当な噴霧ノズルを用いて水を噴霧することにより停止される。通常、カーボンブラック反応器に沿って、水噴霧のため、例えば「急冷」のための幾つかの箇所があるので、反応帯域内のカーボンブラックの滞留時間は変化させることができる。直列熱交換器中で、処理ガスの残留熱は、燃焼空気を予熱するために使用される。
【0018】
多数の様々な反応器の形が公知である。様々な変法は、全て3つの反応帯域に関連するものであるが、しかし殊に、多数の実施態様の変法は、反応帯域およびカーボンブラック原材料の注入ランスの配置のためにある。最新の反応器は、通常、反応器の周面の周りに、ならびに反応器の軸線に沿って分布された幾つかのオイル注入ランスを有する。幾つかの個々の流れに亘って分布されたカーボンブラックオイル量は、燃焼室から流出する熱い燃焼廃ガスの流れ中に、より十分に混合されることができる。流れ方向に空間的に分布された導入箇所を用いて、オイル注入を時間的に互い違いに配置することも可能である。
【0019】
一次粒子径、ひいては通常の容易に測定可能なカーボンブラックの比表面積は、熱い廃ガス中に注入されるカーボンブラックオイルの量により制御されることができる。燃焼室中で発生する廃ガスの量および温度が一定に保たれる場合には、カーボンブラックオイル単独の量がカーボンブラック比表面積に関連する一次粒子径の要因となる。より大量のカーボンブラックオイルは、より少量のカーボンブラックオイルよりもより少ない比表面積を有する粗大なカーボンブラックをまねく。同時に、カーボンブラックオイルの量の変化に伴い、反応温度の変化があり;噴霧したカーボンブラックオイルは、反応器中で温度を低下させるので、より大量のカーボンブラックオイルはより低い温度を意味し、より低い温度はより大量のカーボンブラックオイルを意味する。これから、書籍"Carbon Black"上記参照、第34頁に記載されている一次粒子径に関連して、カーボンブラック形成温度およびカーボンブラック比表面積の間の関係を誘導することが可能である。
【0020】
ついで、カーボンブラックオイルが反応器の軸線に沿って別個に位置している2つの異なる注入箇所から分配される場合には、最初の上流の位置で、燃焼室廃ガス中に依然として含有されている残留酸素の量は、噴霧されたカーボンブラックに関連して依然として過剰である。従って、カーボンブラック形成は、その後のカーボンブラック注入箇所に比較してより高温の箇所で行われ、すなわち最初の注入箇所で、形成されたカーボンブラックは、より微細な粒子を有し、かつその後の注入箇所でよりも、より高い比表面積で存在する。カーボンブラックオイルのそれぞれ付加的な注入は、付加的な温度低下およびより大きな一次粒子を有するカーボンブラックをまねく。従って、この方法で製造されたカーボンブラックは、幅広い粒度分布曲線で存在し、ゴム中に配合後、これらは極めて狭いモノモジュラ(monomodular)の粒度範囲を有するカーボンブラックとはむしろ異なる挙動で存在する。幅広い粒度分布曲線は、ゴムコンパウンドのより低い損失係数、すなわち低ヒステリシスをまねき、従って低ヒステリシス(lh)カーボンブラックという表現が使用される。この種類のカーボンブラックまたはその製造法は、欧州特許第0315442号明細書および同第0519988号明細書に記載されている。
【0021】
従って、常法は、反応器の軸線に沿って一定の間隔に配置されたカーボンブラックオイルのための噴霧装置を用いて、ゴムコンパウンドに配合される場合にゴムコンパウンドに、より低いころがり抵抗を付与するより幅広い粒度分布曲線を有するカーボンブラックを製造することができる。
【0022】
反転カーボンブラックの製造のためには、ファーネスカーボンブラック法は、別の方法で変更されることができる。但し、常用のファーネスカーボンブラック法は、燃焼室中で、殊に燃焼帯域内で、燃料のできるだけ完全な燃焼を得るために向けられているのに対し、ドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書による反転カーボンブラックの製造のための方法は、燃焼帯域内での燃料の不完全な燃焼の結果としての炭化水素核の形成に基づいている。ついで、核は熱い廃ガス流とともに反応帯域へ輸送され、その際、核形成の誘導されたカーボンブラック形成は、添加されたカーボンブラック原材料で開始される。しかし、目的とする燃料の不完全な燃焼は、燃料が酸素の理論量未満の量で燃やされることを意味していない。むしろ、本発明による方法は、燃焼室中で過剰の空気または酸素含有ガスで開始する。常用のカーボンブラックとして、0.3〜0.9のKファクターは、本方法において使用されることができる。
【0023】
過剰の空気にも関わらず、カーボンブラック核を発生させるために、様々な経路がドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書により、保証されうる。この方法の好ましい変法において、液状炭化水素は、出発燃料として使用され、ついで、反応器の燃焼室中の天然ガスの代わりに過剰の空気または酸素含有ガスで燃やされる。液状炭化水素は、ガス状炭化水素よりもゆっくりと燃える、というのも、これらは最初に、ガス状の形に変換されなければならず、すなわち蒸発されなければならないからである。従って過剰の酸素にも関わらず、液状炭化水素は、燃えるだけではなく、−十分な時間が使用可能であり、温度が十分に高い場合に−燃える炭化水素核の形成に使用されることができるか、または急速な冷却が適用される場合に成長してより大きなカーボンブラック粒子を形成することができる。核形成の誘導されたカーボンブラック形成は、過剰の酸素との液状炭化水素の燃焼中に形成される核が、直ちにカーボンブラックオイルと接触され、ひいては核成長が開始されるという事実に基づく。
【0024】
ドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書による方法の付加的な変法では、燃料として天然ガスが使用される。核形成は、燃焼空気の熱流中の天然ガスの不十分な混合物が故意に達成されるように極めて低い燃焼ランスからのガスの流出速度を選択することにより達成される。不十分に混合した火炎の場合のカーボンブラック核の形および用語の輝炎は、形成される粒子の着火のために使用されることは公知である。この手順において、液状炭化水素の燃焼として、形成された核を、それらが形成すると直ちに、カーボンブラックオイルと接触させることが重要である。燃焼帯域中に過剰に存在する酸素と核の変換を達成するために、より大きな燃焼室または燃焼帯域を使用する場合には、それにより、カーボンブラック反応器の燃焼帯域中の完全な変換を可能にし、ひいては核形成の誘導されたカーボンブラック形成が行われない。
【0025】
双方の記載された変法は、組み合わせることもできる。その場合に、液状炭化水素および天然ガス、または他のガス状成分は、燃焼帯域へ適当な比で同時に供給される。オイル、例えばカーボンブラックオイル自体を液状炭化水素として使用するのが好ましい。
【0026】
従って、ドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書による方法は、使用される酸素が炭化水素に関連して過剰に存在する燃焼帯域内で燃料として液状および/またはガス状炭化水素を用いることにある。このことは、カーボンブラック核が、例えば、液状炭化水素の不十分な滞留時間のため、またはガス状炭化水素と燃焼空気の不十分な混合のために形成されることを保証している。ついで、このカーボンブラック核は、反応帯域内で、その形成後に直ちに、酸素の量に関連して過剰で使用されるカーボンブラック原材料と接触される。生じたカーボンブラック反応ガス混合物の冷却後に、水のノズルを通して停止帯域への導入および常法でこうして形成されたカーボンブラックの別の処理が続く。
【0027】
ドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書によれば、燃料は、カーボンブラック形成において重要な役割を果たし;以下の第一のカーボンブラック原材料として挙げられる。従って、反応帯域内で混合されなければならないカーボンブラック原材料は、第二のカーボンブラック原材料として挙げられ、かつ量に関連して、形成されるカーボンブラックの大多数を占めている。
【0028】
ドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書による反転カーボンブラックは、常用のカーボンブラックと比較して、減少したころがり抵抗および湿った条件下で比較しうる密着性をカーボンブラック混合物に付与する。さらに、AFM(原子間力顕微鏡法)試験は、反転カーボンブラックが、相当する標準のASTMカーボンブラックよりかなり粗い表面を表し、これはカーボンブラック粒子へのゴムポリマーの改善された結合をもたらす(W. Gronski他, "NMR Relaxation, A Method Relevant for Technical Properties of Carbon Black-Filled Rubbers, International rubber conference 1997, Nuremberg, 第107頁)。ゴムポリマーの改善された結合は、ころがり抵抗の減少をもたらす。
【0029】
反転カーボンブラックを用いるゴムコンパウンドの摩耗に関連する試験は、このカーボンブラックがゴムコンパウンドに、負荷へのより低い暴露とともに改善された耐摩耗性を付与することを示している。高い負荷の場合に、例えば、トラックタイヤにおいて、これらのゴムコンパウンドは、増大した摩耗性を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書
【特許文献2】欧州特許第0315442号明細書
【特許文献3】欧州特許第0519988号明細書
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】"Carbon Black"第二版,Marcel Dekker, Inc., New York, 1993, 第20頁, 第34頁
【非特許文献2】W. Gronski他, "NMR Relaxation, A Method Relevant for Technical Properties of Carbon Black-Filled Rubbers, International rubber conference 1997, Nuremberg, 第107頁
【非特許文献3】Lothar Sachs: Statistical Evaluation Methods, (in German) Springer-Verlag, Berlin, 第3版, 第81〜83頁
【非特許文献4】K.A.Grosch, the 131th ACS Rubber Div. Meeting, No.7 (1987)
【非特許文献5】K.A. Grosch他, Kautsch. Gummi Kunstst. 50, 841 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
従って、本発明の課題は、高負荷下での減少した摩耗性により特に特徴付けられる改善された反転カーボンブラックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の上記課題および他の課題は、CTAB値20〜190m2/gおよび24M4−DBP吸収量40〜140ml/100gを有し、SSBR/BRゴムコンパウンドへの配合中に関係式
tanδ0/tanδ60 > 2.76−6.7×10-3×CTAB
を満足するtanδ0/tanδ60の比を有し、その際、tanδ60の値は、同じCTAB表面積および24M4−DBP吸収量を有するASTMカーボンブラックの値よりも常に低いファーネスカーボンブラックにより達成される。このカーボンブラックは、カーボンブラック凝集体の粒度分布曲線が400000nm3未満の絶対勾配を有することにより特徴付けられる。
【0034】
本発明の別の特徴は、本明細書において以下に記載されているような、上記ファーネスカーボンブラックの製造法に属する。
【0035】
本発明は、図面に関連して、さらに理解されうる。
【0036】
本発明によるカーボンブラックは、比tanδ0/tanδ60に関する限り、上記のような反転カーボンブラックの同じ必要条件を満足し、従ってゴムコンパウンド中へ配合される場合に、これらは生じたタイヤに減少されたころがり抵抗を付与する。しかしながら、公知の反転カーボンブラックと比較して、これらはより狭い粒度分布により特徴付けられる。粒度分布の記載のために、統計学において使用される「絶対勾配(absolute slope)」の基準は、本明細書で使用される(参照:Lothar Sachs: Statistical Evaluation Methods, (in German) Springer-Verlag, Berlin, 第3版, 第81〜83頁)。これは、当該の問題に適している記載を表し、その際、最大値および最小値により制限される粒度の範囲として粒度分布の形状を記載している。
【0037】
「絶対勾配」は、対称的な粒度分布からの偏差として定義される。傾斜した分布曲線は、分布曲線の2つの下っている枝の一方が伸びる場合に存在する。左曲線部分が伸びる場合には、これは負の勾配として参照され、すなわち、絶対勾配の測定は、0未満の値を測定する。右曲線区間が伸びる場合には、勾配は正であり、0を上回る値を有する。公知のASTMカーボンブラックならびに反転カーボンブラックおよび本発明によるカーボンブラックは、様々な程度の正の勾配で存在する。
【0038】
意外なことに、技術の現状において補強材カーボンブラックのより幅広い粒度分布がゴムコンパウンドに低下したころがり抵抗を付与するという容認された概念は、一般に有効ではないことが見出された。反転カーボンブラックを有するゴムコンパウンドのころがり抵抗の改善は、明らかに、粒度分布の幅に依存するだけではなく、その代わりに反転カーボンブラックのより大きな表面の粗度およびカーボンブラック表面へのゴムポリマーの付随するより良好な結合により実質的に測定される。
【0039】
相対的に幅広い粒度分布を有する公知の反転カーボンブラックと比較して、粒度分布の幅を制限することにより本発明によるカーボンブラックの耐摩耗性を改善することが今、可能になった。殊に、大きな粒径を有するカーボンブラックの割合は、カーボンブラックが改善された耐摩耗性を、同時に減少したころがり抵抗とともにゴムコンパウンドに付与すべき場合に、減少させなければならない。これは、粒度分布の絶対勾配が400000nm3より小さく、有利に200000nm3より小さい場合である。ドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書から公知の反転カーボンブラックの絶対勾配は、400000nm3より高いのに対して、標準のASTMカーボンブラックの絶対勾配は100000nm3未満である。
【0040】
カーボンブラックの粒度分布の絶対勾配は、分離板型遠心分離器および測定された値の相当する評価を用いて決定されることができる。試験すべきカーボンブラック試料は、本方法において、水溶液中に懸濁させ、粒径に応じて分離板型遠心分離器中で分離され;粒子がより大きくなるにつれて、かつその重量が大きくなるにつれて、カーボンブラック粒子は遠心力の結果として水溶液中で外側に向かってより速く移動する。本方法において、カーボンブラック粒子は光の遮断層を通過し、これを用いて吸光が時間の関数として記録される。これらのデータから、粒度分布、すなわち粒径の関数としての頻度が計算される。ついで、絶対勾配ASは、次のようにして決定されることができる:

【0041】
本発明による反転カーボンブラックは、米国特許出願明細書08/665632に相応するドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書に記載されている一般的な方法に従って製造されることができ、これらは双方に基づき、参考文献により本明細書に組み込まれる。本方法によれば、反転カーボンブラックは、反応器の軸線に沿って、燃焼帯域、反応帯域および停止帯域を有するカーボンブラック反応器中で製造される。燃焼帯域において、熱い廃ガス流は、酸素含有ガス中の第一のカーボンブラック原材料の燃焼により発生する。この熱ガス流は、燃焼帯域から反応帯域を通り停止帯域へと導入される。反応帯域において、第二のカーボンブラック原材料は、熱い廃ガスと混合される。カーボンブラック形成は、停止帯域内で水で噴霧することにより停止される。本方法において、オイル、オイル/天然ガス混合物または天然ガス単独が、カーボンブラック原材料として使用される。燃焼帯域中の第一のカーボンブラック原材料の燃焼は、第二のカーボンブラック原料が直ちに接触されるカーボンブラック核を形成するようにして操作される。
【0042】
本発明によるカーボンブラックを得るために、本方法は、形成しているカーボンブラックが400000nm3未満の絶対勾配を有する粒度分布を有するようにして実施しなければならない。これは、例えば、燃焼空気、第一および第二のカーボンブラック原材料の添加を増大させることにより達成されることができる。
【0043】
記載されている方法は、一定の反応器形状に制限されない。むしろ、様々な反応器の形式および反応器の大きさに適合されうる。燃焼帯域内の所望の核形成は、当業者により様々な方法を用いて調節されることができる。燃料としてオイルを使用する場合の核形成の最適化のための可能なパラメータは、燃焼空気/オイルの重量比、燃料に使用される噴霧器の種類および噴霧されたオイルの液滴の大きさである。燃焼噴霧器として純粋な圧力噴霧器(単一物質噴霧器)または内部または外部混合を有する二物質流噴霧器を使用することも可能であり、その際、加圧された空気、蒸気、水素、不活性ガスまたは炭化水素ガスが噴霧化媒体として使用されることができる。従って、液体燃料およびガス状燃料の上記の組合せは、例えば、液体燃料の噴霧化媒体としてガス状燃料を使用することにより実施されることができる。
【0044】
液体燃料の噴霧のためには二物質流噴霧器を使用するのが好ましい。一段階の物質噴霧器において、流速の変化は、液滴の大きさの変化をもたらすのに対して、二物質流噴霧器の場合には、粒径は、流速から大きく独立して影響を受けうる。
【0045】
噴霧された液滴の大きさは、カーボンブラックオイルの注入位置で十分な数のカーボンブラック核が依然として入手可能であるようにして調節されなければならない。最適な液滴の大きさは、選択される反応器の形状に依存する。例において使用される反応器中で、平均液滴径50〜100μmが有効であることが証明されている。この値は水の噴霧を用いて測定された。しかし、噴霧器の最適な調節は、火炎の出現の観察により反応器で経験的に、最良に実施される。液状燃料の過度に微細な噴霧化は、核形成せずに液滴の完全な燃焼をもたらす。過剰に大きい液滴は、チョーキングおよび不安定な炎をもたらす。僅かにすすっぽい炎は、良好な核形成をもたらす。
【0046】
いわゆるカーボンブラックオイル;すなわち、高芳香族性および/または長鎖の油は、単独で、または炭化水素含有ガス、殊に天然ガスとの組合せで、カーボンブラック原材料として使用されることができる。適しているカーボンブラックオイルは、石油化学油(水蒸気分解油、接触分解油)、石炭化学油(硬質炭油)および130を上回るBMCインデックスを有する熱分解油である。これらのオイルは、液体燃料の場合のように、噴霧され、その際、有利に二物質流噴霧器を用いる。
【0047】
本発明による方法により、工業用ファーネスカーボンブラックの全範囲を製造することができる。当業者は、本方法に必要な措置、例えば反応帯域内での滞留時間の調節およびカーボンブラック構造に影響を及ぼす添加剤の添加を認識している。本発明による方法により製造されるカーボンブラックは、カーボンブラック分析の特徴の同じものを用いた常用のカーボンブラックとは相当に異なることが見出された。SSBR/BRゴムコンパウンドへの配合において、これらのカーボンブラックは、生じたゴムコンパウンドに、常用のカーボンブラックで得られるよりも大きいtanδ0/tanδ60比を付与する一方で、同時に、同じCTAB表面積および24M4−DBP吸収量を有するASTMカーボンブラックの相応する値よりも少ないtanδ60の値を有する。この観察は、CTAB値20〜190m2/gを有するカーボンブラック、殊にCTAB値60〜140m2/gおよび24M4−DBP吸収量値40〜140ml/100gを有するカーボンブラックに適用される。その上、これらのカーボンブラックで、処理法の適当な制御は、粒度分布曲線が大きな粒径を有する特に大きな割合を含有するのを防止するのに使用されることができる。
【0048】
本発明によるカーボンブラックは、SSBR/BRゴムコンパウンドに、温度へのtanδのより強い依存性を付与する。ドイツ連邦共和国特許第19521565号明細書中での反転と呼ばれているこの効果の他に、本発明によるカーボンブラックは、常用の反転カーボンブラックに比較して狭まった粒度分布で存在する。本発明によるカーボンブラックを有するSSBR/BRゴムコンパウンドの動的伸び弾性率|E*|は、0℃で、標準のASTMカーボンブラックの使用に付随する伸び弾性率よりも一般的に低い。
【0049】
核誘導されたカーボンブラック形成は、公知の反転カーボンブラックの場合のように、カーボンブラック粒子の表面構造化構成に影響を及ぼす。原子間力顕微鏡法(AFM)による実験は、本発明によるカーボンブラックが標準のASTMカーボンブラックよりも粗い表面で存在することを示している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明によるカーボンブラックの製造に使用される反応器の略示縦断面図。
【図2】比tanδ0/tanδ60と、本発明による様々なカーボンブラックおよび常用の比較カーボンブラックに関するCTAB表面積との関係を示す線図。
【図3】標準のASTMカーボンブラックN220の粒度分布曲線図。
【図4】例E1の常用の反転カーボンブラックの粒度分布曲線図。
【図5】例B2の本発明による反転カーボンブラックの粒度分布曲線図。
【図6】参考のゴムコンパウンドと比較した、例E1によるカーボンブラックを用いたゴムコンパウンドの摩耗挙動を示す3次元図。
【図7】参考のゴムコンパウンドと比較した、例B2によるカーボンブラックを用いたゴムコンパウンドの摩耗挙動を示す3次元図。
【図8】ナノ構造カーボンブラック(本発明によるカーボンブラック)および相当する常用のカーボンブラックのtanδ60の評価図。
【図9】摩耗試験の評点およびkm/hの値の対数の相応する値およびW(エネルギー)値の対数をプロットした様々な運転の過酷さの下でのトレッド摩耗試験の結果を説明する図。
【図10】摩耗試験の評点およびkm/hの値の対数の相応する値およびW(エネルギー)値の対数をプロットした様々な運転の過酷さの下でのトレッド摩耗試験の結果を説明する図。
【0051】
ところで、本発明は、次の例に関連して更に説明されている。
【実施例】
【0052】
例E1および例B2
図1で表されるカーボンブラック反応器中で、常用の反転カーボンブラック(例E1)および本発明による反転カーボンブラック(例B2)を製造した。
【0053】
カーボンブラック反応器1は、空気からの酸素を添加しながら第一のカーボンブラック原材料を燃焼させることによるカーボンブラックオイルの熱分解のために熱い廃ガスを発生させる燃焼室2を有する。第一のカーボンブラック原材料は、軸方向のバーナーランス3を通して燃焼室2へ導入される。核誘導されたカーボンブラック形成を最適化するために、バーナーランス3の軸の方向を変えてもよい。
【0054】
燃焼ガスの添加は、燃焼室2の前面壁の開口部4を通して行われる。燃焼室は、狭窄部5に沿って円錐状に狭くなっている。反応ガス混合物は狭窄部を通過した後、反応室6中に広がる。
【0055】
A、BおよびCは、オイルランス7を用いて、カーボンブラックオイルを熱処理ガスへ注入するための種々の位置を示している。オイルランスは、その先端に、適当な噴霧ノズルを有する。4個の噴射器がそれぞれの注入箇所で反応器の周面上に分布している。
【0056】
本発明による方法に重要な、燃焼帯域、反応帯域および停止帯域は、図1でそれぞれI〜IIIのローマ数字を用いて同定される。これらの帯域は相互に厳密に区別することはできない。これらの軸方向の延長は、バーナーランス、オイルランスおよび急冷する水ランス8の与えられる位置調整に依存する。
【0057】
使用される反応器の寸法は、次のリストから得ることができる:
燃焼室の最大直径:900mm
狭窄部までの燃焼室の長さ:1390mm
燃焼室の円錐部の長さ:1160mm
狭窄部の直径:140mm
狭窄部の長さ:230mm
反応室の直径:250mm
オイルランスの位置1) A: 110mm
B:−150mm
C:−320mm
急冷する水ランスの位置1):約1000+5500mm
1) 入口から狭窄部へと測定した(+:入口の後; −:入口の前)。
【0058】
記載された反応器中で製造された2つのカーボンブラックを、常法を用いてペレット化した後、これらを特性決定し、かつゴムコンパウンド中に配合する。
【0059】
カーボンブラックの製造のために、カーボンブラックオイルが、BMCインデックス160を有する第一および第二のカーボンブラック原材料として使用され、性質は第1表にまとめられている。
【0060】
第1表 カーボンブラックオイルの性質
【表1】

【0061】
カーボンブラックの製造のための反応器パラメータは、第2表にまとめられている。
【0062】
第2表 例E1(比較カーボンブラック)および例B2のカーボンブラックの製造のための反応器パラメータ
【表2】

【0063】
カーボンブラック分析の特性決定:
本発明によるカーボンブラックにおいて、および複数の市販の比較カーボンブラックにおいて、カーボンブラック分析のための標準の特性決定は、次の標準規格に従って測定した:
CTAB表面積: ASTM D−3765
ヨウ素吸着量: ASTM D−1510
DBP吸収量: ASTM D−2414
24M4−DBP吸収量: ASTM D−3493
BET表面積: DIN 66132。
【0064】
粘弾性の測定:
これらのカーボンブラックで補強されたゴムコンパウンドの粘弾性の測定は、DIN53513に従って実施された。殊に、0℃および60℃での損失係数tanδならびに0℃での動的伸び弾性率|E*|を測定した。ゴムコンパウンドに使用された試験配合物は、第3表にまとめられている。
【0065】
第3表 SSBR/BR試験配合物
【表3】

【0066】
SSBRゴム成分は、溶液重合され、スチレン含有量25重量%およびブタジエン含有量75重量%を有するSBRコポリマーである。ブタジエンのビニル含有量は67%である。コポリマーは、オイル37.5phrを含有し、バイエル社(Bayer AG)製のブナ(Buna)VSL5025−1の商品名で市販されている。ムーニー粘度(ML1+4/100℃)は、約50であった。
【0067】
BRゴム成分は、シス−1,4含有量97重量%、トランス−1,4含有量2重量%、1,2−含有量1重量%を有し、ムーニー粘度38〜48を有するシス−1,4−ポリブタジエン(ネオジム(Neogym)型)である。これらの成分は、バイエル社(Bayer AG)製のブナ(Buna)CB24の商品名で市販されている。
【0068】
芳香油として、ケメタル(Chemetall)社製のナフトレン(Naftolen)ZDを使用した。試験配合物のPPD部分はバルカノクス(Valkanox)4020であり、CBS部分はバルカシト(Valkacit)CZであり、双方ともバイエル社(Bayer AG)製である。ワックスとして、HB-Fuller GmbH社製のプロテクター(Protector)G35として公知の製品が使用される。
【0069】
ゴムコンパウンド中へのカーボンブラックの配合は、表の形の次のリストに従って3段階で実施した:
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
その後の粘弾性測定は、そのつど、上記ゴムコンパウンドから製造された5個の試験体で、次の条件下で実施した:
第4表 DIN53513による粘弾性測定
【表7】

【0073】
そのつど、5個の試験体に関して実施された測定の平均が使用される。粘弾性試験の結果は、第5表にまとめられ、図2にグラフで表されている。全体的に、第5表中でC1〜C14で示された14個の市販の比較カーボンブラックおよび例E1およびB2のカーボンブラックが試験された。
【0074】
第5表には、公知の範囲で、比較カーボンブラックのASTM分類が含まれている。
【0075】
第5表において、カーボンブラックは増大するCTAB表面積により配列されている。図2において、比tanδ0/tanδ60は、これらのカーボンブラックの上記のCTAB表面積から提供される。同一のCTAB表面積を有する2つの反転カーボンブラックは、明らかにより大きなtanδ0の比、すなわち、損失係数のより急勾配の温度プロフィールを有する。このことは、特に、欧州特許第0315442号明細書によるカーボンブラックである、第5表における2つの低ヒステリシスカーボンブラック(C3およびC6)と比較して当てはまる。lhカーボンブラックとともに、損失係数のより急勾配の温度プロフィールは観察されなかった。
【0076】
第5表の補遺は、前図に述べられているような別の例を含む第5表の続きである。従って、双方の図における例は、本明細書において同じ目的のために提供される。第5表の補遺における化合物は、第5表におけるようにして製造されたが、但し時間が異なる。ゴム混合物に関連する絶対数は、相互に時間で異なり、これらの例は、別個の図で提供されている。
【0077】
ASTMの呼称は、試験カーボンブラックC17に適用されていないが、しかしこのカーボンブラックを常法で製造した。tanδ0/tanδ60のファクターを図2におけるCTAB数で置き換える場合には、市販のカーボンブラックが表された線の下にあり、「B」で示されるカーボンブラックが表された線の上にあることが認められる。
【0078】
反転カーボンブラックの範囲は、常用のカーボンブラックから明瞭に限界を定めることができる。この反転カーボンブラックの範囲は、図2において表されている限界直線の上にあり、これは関係式
tanδ0/tanδ60 = 2.76−6.7×10-3×CTAB
から得られる。
【0079】
さらに、反転カーボンブラックは、同一のCTAB表面積および類似の24M4−DBP吸収量を有する標準のASTMカーボンブラックと比較して、得られた損失係数tanδ60がより低く、かつ一般に得られたゴムコンパウンドの動的伸び弾性率がより低いことが特徴的である。
【0080】
第5表からは、tanδ60は0.40未満であることがわかる。tanδ60が0.3またはそれ未満、有利に0.25またはそれ未満であるものが好ましい。
【0081】
【表8】

【0082】
【表9】

【0083】
粒度分布曲線:
粒度分布曲線の測定のためには、ブルックハーベン(Brookhaven)社製の赤色灯ダイオードを有する分離板型遠心分離器BI−DCPが使用された。この装置は、吸光度測定から微細な粒状固体の粒度分布曲線を測定するために特別に開発され、自動測定装置および粒度分布の決定のための評定プログラムを備えていた。
【0084】
測定を実施するために、エタノール200ml、アンモニア溶液5滴およびトリトン(Triton)X−100 0.5gを含有し、脱塩水を用いて容量1000mlにした分散溶液を最初に製造した。さらに、トリトン(Triton)X−100 0.5g、アンモニア溶液5滴を含有し、容量を脱塩水で1000mlにした回転溶液を製造した。
【0085】
引続き、カーボンブラック20mgを、分散溶液20mlと混合し、冷却浴中で、100−W超音波出力(80%パルス)で4.5分間溶液中に懸濁させた。
【0086】
測定を開始する前に、遠心分離器を11000分-1の毎分回転数で30分間運転した。エタノール1mlを回転円板へ注入し、ついで底部層を回転溶液15mlで注意深く適用した。約1分後、カーボンブラック懸濁液250μlを注入し、装置の測定プログラムを開始させ;ついでドデカン50μlを遠心分離器中の回転溶液の上に被覆した。2つの測定は、測定されたそれぞれの試料で測定された。
【0087】
生データ曲線の評価を、散乱光の補正を考慮に入れた装置の計算プログラムおよび自動ベースラインフィッティングで実施した。
【0088】
図3〜5は、得られた粒度分布曲線を示しており、これから上記のように、分布曲線の絶対勾配を計算することが可能である。
【0089】
図3は、第5表中の比較カーボンブラックC9の分布曲線であり、図4は、例E1の反転カーボンブラックの分布曲線であり、図5は本発明による例B2の反転カーボンブラックの分布曲線を表す。例E1の公知の反転カーボンブラックは、分布曲線において強い非対称性を示し、このことは特に、約100nmを上回る粒度の割合がより大きいことに起因している。カーボンブラック粒子のこの割合は、本発明による反転カーボンブラックでは相当に減少し、このことは、本明細書において相当により低い絶対勾配で現れている。
【0090】
このような分布曲線から決定される絶対勾配の値は、第6表において複数の標準ASTMカーボンブラックおよび2つの反転カーボンブラックでまとめられている。標準のASTMカーボンブラックがきわめて低い絶対勾配で存在し、すなわちこの粒度分布曲線は、相対的に対称的であることがわかる。例E1の公知の反転カーボンブラックは、それとは対照的に、400000nm3よりも極めて大きい絶対勾配を示す。本発明による例B2の反転カーボンブラックで、絶対勾配は、標準のカーボンブラックよりも依然としてより大きいが、しかし公知の反転カーボンブラックで得られた絶対勾配の約1/3だけ低い。
【0091】
第6表の補遺には、第6表の上記で述べたように同じ形式で付加的なカーボンブラックをまとめられている。公知の反転カーボンブラック(E3およびE5)は、特許の保護が請求された反転カーボンブラック(B4(EB171)およびB6(EB167))に比較して400000nm3を上回る絶対勾配を有する。新規の反転カーボンブラックは、このマークの下にある。特許の保護が請求された例B7の反転カーボンブラック(EB169)は、同様に、400000nm3未満である絶対勾配を有する。常法で製造される参考のカーボンブラックC17(EB169に対する参考)は、正規のASTMカーボンブラックと比較可能である絶対勾配で示される。
【0092】
第6表の補遺における付加的な例は、それ自体、第6表に関連するものと同じ特性を示す。また、品質は、典型的なこの種類のカーボンブラック、すなわち、より低いtanδ60、狭い凝集体の粒度分布、ならびにより低い絶対勾配であることが認められ、これらはCTAB数と同様に表面から独立し、かつ関連するカーボンブラックの構造(DBP数)から独立している。従って、本発明の列挙された利点、例えば減少した摩擦および改善された摩耗は、請求の範囲で請求した本発明により任意のカーボンブラックの種類に与えられることができる普遍的な品質である。
【0093】
tanδ60に関連する改善(ころがり抵抗に相関する)は、図8に示されており、第6表は、新規反転カーボンブラックの凝集体の粒度分布がtanδ60値の影響を受けることなく低く保たれることができる。狭い凝集体の粒度分布は、より低い絶対勾配に相当し、これは、前記のものと比較されるものとして新規の反転カーボンブラックにおいて示されている。
【0094】
第6表 複数のカーボンブラックの粒度分布曲線の絶対勾配
【表10】

【0095】
第6表の補遺
【表11】

【0096】
摩耗試験:
2つの反転カーボンブラックおよび標準のカーボンブラックN220を用いて製造されたゴムコンパウンドの摩耗挙動は、特別な摩耗試験を用いて試験された。この摩耗試験は、様々な路面および速度の参考のゴムコンパウンドに関連するゴムコンパウンドの摩耗を評価する。
【0097】
使用される摩耗試験は、次の刊行物に詳細に記載されている:
K.A.Grosch, the 131th ACS Rubber Div. Meeting, No.7 (1987)および
K.A. Grosch他, Kautsch. Gummi Kunstst. 50, 841 (1997)。
【0098】
相当する試験装置は、商業的に入手可能である。従って、この装置で実施される摩耗試験の詳細に関連して上記刊行物が参照される。
【0099】
摩耗試験に使用されるゴムコンパウンドは、粘弾性試験のゴムコンパウンドと同一であった。参考のゴムコンパウンドとして、標準のカーボンブラックN220(C9)を有するゴムコンパウンドを使用した。
【0100】
図6および7は、得られた結果を、これらの図の三次元グラフで示したものであり、摩耗の評価は、速度の対数および試験体の負荷適用の結果として記録されるエネルギーWの対数の関数として、参考のゴムコンパウンドに対してプロットされている。参考のゴムコンパウンドの摩耗挙動は、100に等しく固定されている。
【0101】
図6は、例E1の反転カーボンブラックを用いたゴムコンパウンドの摩耗挙動を示している。公知の反転カーボンブラックを有するゴムコンパウンドは、小さな負荷適用および低速度の場合に、参考のゴムコンパウンドと比較して相当に減少した摩耗を有する。しかしながら、適用された負荷が高い場合には、摩耗は、参考のゴムコンパウンドと比較して増大する。
【0102】
図7は、参考のゴムコンパウンドと比較して、本発明による例B2の反転カーボンブラックを用いたゴムコンパウンドの摩耗挙動を示している。本発明による反転カーボンブラックを有するゴムコンパウンドは、公知の反転カーボンブラックよりもより均衡のとれた摩耗挙動を示す。まさに、高い速度および高い負荷でこのゴムコンパウンドは、依然として10%改善された摩耗挙動を示す。従って、本発明によるカーボンブラックは、タイヤキャップ表面および密着性混合物のためのゴムコンパウンドの製造に卓越して適している。
【0103】
図9および10は、狭い凝集体の粒度分布により与えられるトレッド摩耗の正の影響を明瞭に説明している。幅広い凝集体の粒度分布EB145(公知の反転カーボンブラック)が明らかに高く厳しいトレッド摩耗の弱さを示すのに対して、狭い凝集体の粒度分布のナノ構造EB167は、全ての過酷さで卓越した耐摩耗性を与える。全体的に、EB167のトレッド摩耗性能は、それぞれのASTMブラックN356より優れている。
【0104】
tanδおよび|E*|の範囲の値は、参考文献で本明細書中に組み込まれるDIN53513に従って測定した。
【0105】
別の変法および前述の変形は、当業者には明白なものであり、本発明に係属している請求の範囲により包含されうることを意味している。
【0106】
ドイツ連邦共和国特許出願明細書19816025.9は関連するものであり、参考のために本明細書中に組み込まれている。
【符号の説明】
【0107】
1 カーボンブラック反応器、 2 燃焼室、 3 バーナーランス、 4 開口部、 5 狭窄部、 6 反応室、 7 オイルランス、 8 水ランス、 I 燃焼帯域、 II 反応帯域、 III 停止帯域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CTAB値20〜190m2/gおよび24M4−DBP吸収量40〜140ml/100gを有し、かつSSBR/BRゴムコンパウンド中に配合される場合に、関係式
tanδ0/tanδ60 > 2.76−6.7×10-3×CTAB
を満足するtanδ0/tanδ60比を有し、その際、tanδ60の値は同一のCTAB表面積および24M4−DBP吸収量を有するASTMカーボンブラックの値より常に低いファーネスカーボンブラックにおいて、
粒度分布曲線が400000nm3未満の絶対勾配を有し、この絶対勾配ASは、カーボンブラックの測定された凝集体の粒度分布から、次式:

ことを特徴とする、ファーネスカーボンブラック。
【請求項2】
請求項1記載のファーネスカーボンブラックを製造する方法であって、
反応器の軸線に沿って燃焼帯域、反応帯域および停止帯域を有するカーボンブラック反応器中で、請求項1記載のファーネスカーボンブラックを製造する方法において、
燃焼帯域内で、酸素含有ガス中の第一のカーボンブラック原材料を燃焼させることにより、熱い廃ガス流を発生させ、
燃焼帯域から反応帯域を通して停止帯域へ廃ガスを供給し、
反応帯域内で、熱い廃ガス中に第二のカーボンブラック原材料を混入し、かつ
停止帯域内で、水を噴霧することによりカーボンブラック形成を停止させ、その際、第一のカーボンブラック原材料として、オイル、オイル/天然ガス混合物または天然ガス単独を使用し、
第一のカーボンブラック原材料の燃焼を制御して核を形成させ、
前記核を直ちに第二のカーボンブラック原材料と接触させ、
形成するカーボンブラックの粒度分布曲線の生じる絶対勾配が400000nm3未満であるように、燃焼空気、第一の原材料および第二の原材料を増大させることを特徴とする、前記方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法により製造されることを特徴とする、ファーネスカーボンブラック。
【請求項4】
請求項1記載のファーネスカーボンブラックを含有することを特徴とする、タイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−136711(P2012−136711A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−82159(P2012−82159)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願平11−103270の分割
【原出願日】平成11年4月9日(1999.4.9)
【出願人】(511004139)エボニック カーボンブラック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Carbon Black GmbH
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4, D−63457 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】