説明

フアクシミリ用モデム

【目的】自動等化器を内蔵したファクシミリ用モデムにおいて、通信中に回線の接続経路が変わった場合でも、自動等化器の発散を極力抑えるファクシミリ用モデムを提供する。
【構成】第1の自動等化器を内蔵したファクシミリ用モデムにおいて、前記の自動等化器とは特性の異なる複数の第2の自動等化器を設け、前記第1の自動等化器を介した通信中の回線歪量を算出する算出手段と、前記算出手段による算出回線歪量を監視する監視手段と、前記監視手段により、回線歪量が所定の基準値を越えた場合は、前記複数の第2の自動等化器のうち回線歪量が最小となる自動等化器を前記第1の自動等化器に代えて選定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ファクシミリ用モデムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、一般に、G3ファクシミリ通信では、画像信号の前に等化器用トレーニング信号が付加され、自動等化器が画像信号受信前に立ち上がるようにしている。
【0003】図2は、G3ファクシミリ通信における画信号の前に送信されるトレーニング信号を示した図である。まず、受信側は、2相交番信号を用いて送信側の送出タイミングを抽出し、送信側に追従させる。次に、等化器調整パターンとして2相ランダム信号を用いて回線上の歪を補償する自動等化器が立ち上げられる。
【0004】図3は、移動端末と固定端末を接続する通信網図である。移動端末34と固定端末39と通信の場合は、自動車電話無線基地局33、無線回線制御局32、自動車電話交換局31を介して、総括局35−1の一般の固定通信網に接続される。さらに、基幹回線30−0により固定端末が接続されている総括局35−2に接続され、中心局36−2、集中局37−2、端局38−2を介して最終的に、移動端末34は固定端末39に接続される。あるいは、斜回線30−1〜30−3により、それぞれ総括局35−1から中心局36−2、集中局37−2、端局38−2に接続された後、固定端末39に接続される。なお、斜回線は一部の例でありすべてを示してはいない。
【0005】このようにして接続された移動端末34と固定端末39間の通信回線は、複数の局、すなわち中継局を介することとなり、中継局を通過するごとに周波数の異なる伝搬遅延及び減衰による歪を発生することとなる。
【0006】図4は、移動端末のゾーン切換時の交換接続の例を示した図である。図4において、ゾーンZ1の点AからゾーンZ2の点Cにかけて通信を継続して行う場合、点Bを通過するとゾーンZ2に入るため、移動端末34の接続は自動車電話無線基地局42から自動車電話無線基地局43に切り替わる。このとき点Bが総括局の局界にあると、点Aと点Cでは接続される総括局が異なり、新たに接続される点C側の総括局の回線状態で基幹回線接続か、斜回線接続のいずれかとなるため、ゾーンZ1内での接続経路と異なることがあり、このとき、回線上の歪の性質が著しく異なる場合がある。
【0007】図5は自動等化器により受信波形の補償の様子を示した図である。従来の自動等化器を内蔵したファクシミリ装置において、トレーニング信号を用いて立ち上がった自動等化器は、図5(a)に示すように、受信波形は補償される。しかし、上記のように、回線歪が極端に変化した場合には、図5(b)に示したように受信波形がさらに歪んでしまう。すなわち、自動等化器は、歪量を算出し、歪量を自動等化器にフィードバックすることにより、随時回線歪を補償するよう動作するが、極端な回線歪の変化が生じたときは、フィードバック量は歪量に対して不正確となるため、自動等化器は発散してしまう。このため、受信誤りが生ずることとなる。特に、自動車電話通信網においては、ゾーン切換により回線接続経路が変わるため、極端な回線歪の変化が生じ易く、自動等化器は発散し易い傾向にある。
【0008】このように、従来のファクシミリ装置では、回線の接続経路が変わった場合、自動等化器が発散してしまうため、通信誤りを起こすという問題点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述したように、従来の自動等化器を内蔵したファクシミリ装置では、回線の接続経路が極端に変わった場合、自動等化器が発散してしまうため、通信誤りを起こすという問題点があった。
【0010】そこで、本発明は、この問題点を除去し、通信中に回線の接続経路が変わった場合でも、自動等化器の発散を極力抑えるファクシミリ用モデムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、第1の自動等化器を内蔵したファクシミリ用モデムにおいて、前記自動等化器とは特性の異なる複数の第2の自動等化器を設け、前記第1の自動等化器を介した通信中の回線歪量を算出する算出手段と、前記算出手段による算出回線歪量を監視する監視手段と、前記監視手段により、回線歪量が所定の基準値を越えた場合は、前記複数の第2の自動等化器のうち回線歪量が最小となる自動等化器を前記第1の自動等化器に代えて選定する手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
【作用】本発明は、第1の自動等化器を内蔵したファクシミリ用モデムにおいて、前記自動等化器とは特性の異なる複数の第2の自動等化器を設け、前記第1の自動等化器を介した通信中の回線歪量を算出する算出手段と、前記算出手段による算出回線歪量を監視する監視手段と、前記監視手段により、回線歪量が所定の基準値を越えた場合は、前記複数の第2の自動等化器のうち回線歪量が最小となる自動等化器を前記第1の自動等化器に代えて選定するようにしているため、等化時の補償不良を最小限にし、自動等化器の発散を極力抑えることができる。
【0013】
【実施例】図1は、本発明の一実施例であるファクシミリ用モデムの構成ブロック図である。
【0014】図1において、復調器11に入力されたアナログ受信信号はベースバンド信号に復調された後、トランスバーサル型フィルタである自動等化器12−0により歪が補償される。さらに、位相制御器13−0により位相歪を補正し、信号点判定部14−0において、ベースバンド信号の信号点を判定する。信号点判定部14−0の結果は、エラー算出部18−0において、エラー算出を行い自動等化器12−0及び位相制御部13−0にフィードバックされる。自動等化器12−0により受信信号は順次、補償され、信号点判定部14−0で判定された結果は、そのまま切換部15を通過し、複号器16により復号される。
【0015】しかし、復調されたベースバンド信号が、回線の接続経路の変化等により急激に回線歪量が変化した場合、自動等化器12−0は、先行信号との関連が途切れ、発散してしまい、受信波形は補償されない。
【0016】このため、エラー監視部19でエラー量を監視し、所定の基準値以上のエラー量が発生しているかどうかを監視する。エラー監視部19が、所定の基準値以上のエラー量が発生していると判定した場合、自動等化器12−1〜12−n、位相制御部13−1〜13−n、信号点判定部14−1〜14−n、エラー算出部18−1〜18−nを一定時間動作させる。ここで、自動等化器12−1〜12−nは、回線の接続経路によって異なる特徴的な固有歪に適応した固有のタップを有している。
【0017】最適タップ判定部17は、各エラー量算出部18−1〜18−nの算出結果のうちで、最もエラー量の少ない自動等化器を判定し、該自動等化器を含む位相制御部、信号点判定部、エラー算出部からなる補償回路の出力結果を、復号器16に出力させるべく、制御線20により切換部15を切り換える。
【0018】通信終了後は、次の通信開始時は、上記と同様に自動等化器12−0による補償から開始される。
【0019】このようにして、回線の接続経路に適応する自動等化器を選定し、自動等化器の発散を極力抑えることができる。
【0020】
【発明の効果】上述したように、本発明は、第1の自動等化器を内蔵したファクシミリ用モデムにおいて、前記自動等化器とは特性の異なる複数の第2の自動等化器を設け、前記第1の自動等化器を介した通信中の回線歪量を算出する算出手段と、前記算出手段による算出回線歪量を監視する監視手段と、前記監視手段により、回線歪量が所定の基準値を越えた場合は、前記複数の第2の自動等化器のうち回線歪量が最小となる自動等化器を前記第1の自動等化器に代えて選定するようにし、等化時の補償不良を最小限にし、自動等化器の発散を極力抑えることができるため、判定誤りを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による一実施例であるファクシミリ用モデムの構成ブロック図。
【図2】G3ファクシミリ通信における画信号の前に送信されるトレーニング信号を示した図。
【図3】移動端末と固定端末を接続する通信網図。
【図4】自動車電話端末のゾーン切換時の交換接続の例を示した図。
【図5】自動等化器により受信波形の補償の様子を示した図。
【符号の説明】
11 復調器
12−0〜12ーn 自動等化器
13−0〜13−n 位相制御部
14−0〜14−n 信号点判定部
15 切換部
16 復号器
17 最適タップ判定部
18−0〜18−n エラー量算出部
19 エラー量監視部
30−0 基幹回線
30−1〜30−3 斜回線
31 自動車電話交換局
32 無線回線制御局
33 自動車無線基地局
34 移動端末
35−1,35−2 総括局
36−1,36−2 中心局
37−1,37−2 集中局
38−1,38−2 端局
39 固定端末
Z1,Z2 通信可能ゾーン
42,43 自動車無線基地局
A、B,C 移動地点
45,46 無線回線制御局

【特許請求の範囲】
【請求項1】第1の自動等化器を内蔵したファクシミリ用モデムにおいて、前記自動等化器とは特性の異なる複数の第2の自動等化器を設け、前記第1の自動等化器を介した通信中の回線歪量を算出する算出手段と、前記算出手段による算出回線歪量を監視する監視手段と、前記監視手段により、回線歪量が所定の基準値を越えた場合は、前記複数の第2の自動等化器のうち回線歪量が最小となる自動等化器を前記第1の自動等化器に代えて選定する手段とを具備することを特徴とするファクシミリ用モデム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平5−110800
【公開日】平成5年(1993)4月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−264016
【出願日】平成3年(1991)10月11日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)