説明

フィブロネクチン:増殖因子キメラ

IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGFなどの増殖因子と、フィブロネクチンまたは少なくとも、増殖因子受容体およびフィブロネクチンのインテグリン受容体結合ドメインの双方と結合してそれらを活性化することができるフィブロネクチンのドメインとを含む、単離されたタンパク質複合体が提供される。これらのタンパク質複合体は、増殖因子とフィブロネクチン配列がリンカー配列によって連結されている合成タンパク質を含む。また、創傷治癒、組織工学、皮膚置換や皮膚補充などの美容および治療処置、ならびに火傷の処置などの治療処置において、細胞の遊走および/または増殖を刺激または誘導するための、これらのタンパク質複合体の使用が提供される。他の実施形態において、本発明は、特に乳癌に関して、癌細胞転移の阻害を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖因子受容体およびフィブロネクチンのインテグリン受容体の双方と結合してそれらを活性化することができる各ドメインを有するタンパク質複合体に関する。特定の実施形態において、本発明は、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)、上皮細胞増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)またはケラチノサイト増殖因子(KGF)受容体結合ドメインなどの増殖因子と、フィブロネクチン(FN)のインテグリン受容体結合ドメインとを含むキメラタンパク質に関する。より詳しくは、本発明は、細胞遊走を刺激するタンパク質複合体、ならびに細胞の遊走および/または増殖を促進または誘導する組成物および方法に関する。これらの組成物および方法は、上皮細胞の遊走ならびに/または増殖が必要とされる、創傷治癒、組織工学、皮膚置換や皮膚補充などの美容および治療処置、ならびに火傷の処置において用途を有する。他の実施形態において、本発明は、特に乳癌に関して、癌細胞転移の防止または阻害に関する本発明により提供される処置を提供する。
【背景技術】
【0002】
過形成、DNA合成、分化、細胞周期の進行、およびアポトーシスの阻害を含む広範な細胞プロセスに関与する多くのペプチド増殖因子が知られており、これにはインスリン様増殖因子(IGF、例えば、IGF−IおよびIGF−II)(非特許文献1;非特許文献2)、EGF(非特許文献3)、bFGF(非特許文献4)、およびKGF(非特許文献5)が含まれる。これらの効果は、それらの同族チロシンキナーゼ連結型細胞表面受容体、すなわち、それぞれI型IGF受容体(IGF−IR)、EGF受容体、bFGF受容体およびKGF受容体との結合により媒介される。IGFはまた、IGFBPと呼ばれる特異的結合タンパク質ファミリー(その主要な役割は遊離型のIGFと結合し、それにより、それらの半減期、特異性および活性を適度に保つことである)によって厳格に調節される(非特許文献6)。
【0003】
フィブロネクチンは、全ての脊椎動物に見られる高分子量の接着性糖タンパク質である。フィブロネクチンは、細胞接着、細胞形態および表面構造に役割を果たす。その主要な機能は、発生、組織修復および創傷治癒、細胞増殖の調節ならびに分化の際の細胞遊走への関与であると思われる(非特許文献7〜9)。フィブロネクチン多型は、単一のフィブロネクチン一次転写物中の3つの領域(ED−A、ED−BおよびIIICS)における選択的スプライシングパターンによるものである(非特許文献10〜12)。フィブロネクチンの厳密な組成は、組織種および/または細胞の状態によって異なる。ヒトでは、おそらく20の異なる形態のフィブロネクチンが存在し、ほとんどがある特定の3つのモジュールの選択的スプライシングから生じる(非特許文献13)。フィブロネクチンスプライシング変異体の発現は、発生段階に応じて調節され、かつ、組織特異的であることが明らかである。
【0004】
フィブロネクチンは、ヘパリン、コラーゲンおよびヒアルロン酸を含む複数の細胞外分子と結合する能力を有する。フィブロネクチンは、細胞外マトリックスの種々の成分と、また、細胞表面の膜結合型フィブロネクチン受容(インテグリン)と結合することによって、細胞と細胞の相互作用、および細胞の細胞外マトリックスとの相互作用を組織化する。
【0005】
しかしながら、細胞の遊走および/または増殖などの生物学的応答の刺激に関する、増殖因子とフィブロネクチン、およびタンパク質複合体に存在するそれらの個々のドメインの相対寄与はまだ捕らえどころがない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JonesおよびClemmons, 1995, Endocrine Rev. 16 3
【非特許文献2】WoodおよびYee, 2000, J. Mammary Gland Biology and Neoplasia 5 1
【非特許文献3】Heldinら, 1981, Science 4 1122
【非特許文献4】Tarabolettiら, 1997, Cell Growth. Differ. 8 471
【非特許文献5】Marcheseら, 1990, J. Cell Physiol. 144 326
【非特許文献6】Clemmons, 1998, Mol. Cell. Endocrinol. 140 19
【非特許文献7】AlitaloおよびVaheri, 1982, Adv. Cancer Res. 37 111
【非特許文献8】Yamada, 1983, Annu. Rev. Biochem. 62 761
【非特許文献9】Hynes, 1985, Annu. Rev. Cell Biol. 1 67
【非特許文献10】Petersenら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80 137
【非特許文献11】Schwarzbauerら, 1983, Cell 35 421
【非特許文献12】Komblihttら, 1984, Nucleic Acids Res. 12 5853
【非特許文献13】PottsおよびCampbell, 1994, Curr. Opin. Cell Biol. 6 648
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGFなどの増殖因子とFNとを含む合成キメラの形態にあるタンパク質複合体が、同族増殖因子受容体およびFN結合インテグリン受容体と結合してそれらを相乗的に同時に活性化することにより、細胞の遊走および/または増殖を刺激することを発見した。
【0008】
よって、本発明は、広義には、増殖因子ドメインの受容体結合ドメインと、少なくとも、インテグリン受容体と結合することができるフィブロネクチンのドメインとを含む単離されたタンパク質複合体を対象とし、この単離されたタンパク質複合体は、増殖因子とインテグリン受容体を同時に活性化し、それにより生物学的応答を惹起することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明は、
(i)増殖因子または少なくとも、同族増殖因子受容体と結合することができる増殖因子のドメイン;および
(ii)フィブロネクチン、または少なくともフィブロネクチンのインテグリン結合ドメインを含むフィブロネクチンの断片
のアミノ酸配列を含む合成キメラタンパク質の形態にある、単離されたタンパク質複合体を提供する。
【0010】
好ましくは、上記態様によれば、増殖因子はIGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGFである。
好ましくは、インテグリン受容体はαまたはαインテグリンである。
【0011】
本発明のこの態様はまた、合成キメラタンパク質中の、フィブロネクチンの1つ以上の付加的断片のアミノ酸配列も意図する。
本発明のこの態様はまた、その範囲内に、上記(i)および(ii)に相当するアミノ酸配列の、ならびにフィブロネクチンの1つ以上の付加的断片に相当するアミノ酸配列の、アミノ酸欠失、付加、置換および/または突然変異も含む。
【0012】
第2の態様において、本発明は、第1の態様の単離されたタンパク質複合体をコードする単離された核酸を提供する。
第3の態様において、本発明は、発現ベクターにおいて1つ以上の調節配列に作動可能に連結された第2の態様の単離された核酸を含む、遺伝子構築物を提供する。
【0013】
好ましくは、遺伝子構築物は発現構築物である。
第4の態様において、本発明は、第3の態様の遺伝子構築物を含む宿主細胞を提供する。
【0014】
第5の態様において、本発明は、第1の態様の単離されたタンパク質複合体と、薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
本発明のこの態様はまた、合成タンパク質を発現する第4の態様の宿主細胞を含む医薬組成物も意図する。
【0015】
第6の態様において、本発明は、第1の態様の合成タンパク質に特異的な抗体を提供する。
第7の態様において、本発明は、合成タンパク質を用いて、増殖因子受容体とインテグリン受容体の双方に結合させるステップを含む、細胞遊走を促進する方法を提供する。
【0016】
好ましくは、増殖因子受容体はIGF−IR、EGF受容体、bFGF受容体、またはKGF受容体である。
好ましくは、インテグリン受容体はαまたはαインテグリンである。
【0017】
好ましい実施形態では、本発明のこの態様は、上皮/ケラチノサイト/線維芽細胞の遊走および/または増殖の促進または誘導による、哺乳類、好ましくはヒトにおける創傷治癒の助長に関する。
【0018】
好ましくは、合成タンパク質は本発明の第1の態様によるものである。
第8の態様において、本発明は、増殖因子とフィブロネクチンとを含む複合体によって、増殖因子受容体とインテグリン受容体の双方の結合を防止、阻害、または他の方法で低減するステップを含む、細胞の遊走および/または増殖を防止する方法を提供する。
【0019】
好ましくは、増殖因子受容体はIGF−IR、EGF受容体、bFGF受容体またはKGF受容体である。
好ましくは、前記インテグリン受容体はαまたはαインテグリンである。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明のこの態様は、哺乳類、好ましくはヒトにおける転移性癌細胞の遊走および/または増殖の防止または阻害に関する。
本発明のこの態様により意図される特定の例は、乳癌転移の防止または阻害である。
【0021】
また、第7および第8の態様の方法は、予防的処置法および治療的処置法を包含し得ることが理解されるであろう。
第9の態様において、本発明は、
(i)増殖因子とフィブロネクチンを含むタンパク質複合体のアゴニストであるか;または
(ii)増殖因子とフィブロネクチンを含むタンパク質複合体のアンタゴニストである
分子を生成するための、第1の態様の単離されたタンパク質複合体の使用を提供する。
【0022】
一実施形態において、本発明は、
(i)IGF−I:FN、IGF−II:FN、EGF:FN、bFGF:FN、KGF:FN、もしくはIGF−I:IGFBP:FNタンパク質複合体のアゴニストであるか;または
(ii)IGF−I:FN、IGF−II:FN、EGF:FN、bFGF:FN、GF:FN、もしくはIGF−I:IGFBP:FNタンパク質複合体のアンタゴニストである
分子を生成するための、第1の態様の合成タンパク質の使用を提供する。
【0023】
本発明のこの態様に従って生成されたアゴニストおよび/またはアンタゴニストは、創傷治癒、組織工学、皮膚再生の促進、および/または癌細胞転移もしくは皮膚の過増殖性障害(例えば、瘢痕形成および乾癬)の防止に著しい効果を奏し得る。
【0024】
第10の態様において、本発明は、第1の態様の単離されたタンパク質複合体を含む生体材料を提供する。
特定の実施形態では、生体材料は、本発明の単離されたタンパク質複合体を、好適には含浸、または被覆、あるいは他の方法により含ませた外科用インプラント、人工補綴物、スキャフォールド、創傷用または火傷用包帯などであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】ヒトフィブロネクチン(配列番号1)のアミノ酸配列。
【図1B】成熟IGF−I(配列番号2)のアミノ酸配列。
【図1C】成熟IGF−II(配列番号3)のアミノ酸配列。
【図1D】成熟EGF(配列番号4)のアミノ酸配列。
【図1E】成熟bFGF(配列番号5)のアミノ酸配列。
【図1F】成熟KGF(配列番号6)のアミノ酸配列。
【図1G】好ましいリンカー配列(配列番号7〜12)のアミノ酸配列。
【図2】IGF−I、IGFBPおよびFNタンパク質複合体は乳癌細胞遊走を刺激する。IGFBP−3または−5の存在下、予め結合させたFN(1μgmL)および漸増濃度のIGF−Iで被覆したトランスウェル(Transwell)(登録商標)に、MCF−10A細胞を播種した。これらの細胞を5時間遊走させた。その後、各処理に応答して膜を通り抜ける細胞の数を、FN単独(SFM)で遊走した細胞に対するパーセンテージとして表した。3回の実験(各反復実験において4ウェルで処理を試験した)からMCF−10データをプールする。エラーバーはSEMを示す。SFM=無血清培地。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGFなどの増殖因子とFNとを含む合成キメラが、応答性細胞により発現されるそれらの同族増殖因子受容体およびFN結合インテグリン受容体と結合し、これらを介して細胞遊走に対して生物学的効果を発揮するという発見から生まれたものである。より詳しくは、この二重の結合事象は細胞の遊走および増殖を相乗的に刺激する。これらの安定で生物学的に活性の一本鎖キメラ分子は、少なくとも、その同族受容体と結合することができる増殖因子の最小のドメインまたは領域を、FNのインテグリン結合ドメインを少なくとも含む、FNの1つ以上のIII型ドメインと組み合わせて含む。
【0027】
この発見により、本発明者らは、少なくとも、IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGFの、例えば、それらの同族受容体と結合することができる最小のドメインまたは領域を、FNのインテグリン結合ドメインと組み合わせて含む単離されたタンパク質複合体を提供するに至った。さらにより詳しくは、これらのドメインを含む単一の連続するタンパク質が作製され得る。
【0028】
単一の合成タンパク質の形態にあるこのようなタンパク質複合体は、それらの同族受容体およびFN結合インテグリン受容体と配位結合または共結合し、従って、細胞の遊走および/または増殖ならびに創傷治癒の促進に有用な薬剤である。同様に、同族受容体およびFN結合インテグリン受容体の共結合の防止は、癌細胞転移を防止するために使用可能である。
【0029】
本明細書を通じ、特に断りのない限り、「含む」は、排除ではなく包含を意図して用いられ、従って、示された整数または整数群は1つ以上の示されていない整数または整数群を含み得る。
【0030】
特に増殖因子受容体結合ドメインおよびインテグリン結合ドメインに関して、このようなドメインは、そのドメインのアミノ酸配列を、所望であれば他の付加的アミノ酸とともに含む。
【0031】
このようなドメインは、10個以下、好ましくは5個以下、またはより好ましくは4個以下、3個以下、2個以下もしくは1個の付加的アミノ酸を伴って、そのドメインのアミノ酸配列から「本質的になる」場合があることも理解されるであろう。
【0032】
また、このようなドメインは、付加的アミノ酸を伴わずに、そのドメインのアミノ酸配列から「本質的になる」場合があることも理解されるであろう。
本発明の目的では、「単離された」とは、その天然状態から取り出された、またはそうでなければ、人間の操作を施された材料を意味する。単離された材料は、その天然状態において通常付随する成分を実質的もしくは本質的に含まないものであり得るか、またはその天然状態において通常付随する成分を伴っているが、操作されて人為的状態となったものであり得る。単離された材料は、天然型、化学合成型または組換え型であり得る。
【0033】
本明細書において「合成」とは、天然には存在せず、人間の技術介入によって作出されたことを意味する。合成タンパク質および核酸に関して、これは、当技術分野で十分に理解されているような組換え、化学合成またはコンビナトリアル技術によって生成された分子を包含する。
【0034】
「タンパク質」とは、アミノ酸ポリマーを意味する。アミノ酸は、当技術分野で十分に理解されているような天然または非天然アミノ酸、D−またはL−アミノ酸であり得る。「タンパク質」とはまた、当技術分野で慣用されるような「糖タンパク質」および「リポタンパク質」などの用語も含み、包含する。
【0035】
「ペプチド」とは、50個未満のアミノ酸を有するタンパク質である。
「ポリペプチド」とは、50個以上のアミノ酸を有するタンパク質である。
以上に記載されるように、本発明は、1つの特定の態様において、
(i)増殖因子、または少なくとも、同族増殖因子受容体と結合することができる増殖因子のドメイン;および
(ii)フィブロネクチン、または少なくともフィブロネクチンのインテグリン結合ドメインを含むフィブロネクチンの断片
のアミノ酸配列を含む合成キメラタンパク質の形態にある、単離されたタンパク質複合体を提供する。
【0036】
本明細書において「キメラタンパク質」とは、連続するアミノ酸配列、すなわち、フィブロネクチンのインテグリン受容体結合ドメイン、任意でフィブロネクチンの付加的ドメイン、および増殖因子または少なくとも増殖因子の受容体結合ドメインに由来するアミノ酸を含む。
【0037】
本明細書において「増殖因子」とは、in vitroおよび/またはin vivoにおいて細胞の増殖、分化、生存および/または遊走を調節し得る生物学的に活性のタンパク質である。
増殖因子の例としては、限定するものではないが、IGF(JonesおよびClemmons, 1995, Endocrine Rev. 16 3; WoodおよびYee, 2000, J. Mammary Gland Biology and Neoplasia 5 1; Keissら, 1994, Hormone Research 41 66)(例えば、IGF−I(UniProtKB/Swiss-Prot: #P05019、成熟タンパク質は全長配列のアミノ酸残基49〜118を含む)およびIGF−II(UniProtKB/Swiss-Prot: #P01344、成熟タンパク質は全長配列のアミノ酸残基25〜91を含む))、VEGF(Neufeldら, 1999, FASEB J. 13 9-22)、PDGF(Heldin, 1992, EMBO J. 11 4251-4259)、EGF(Heldinら, 1981, Science 4 1122-1123; UniProtKB/Swiss-Prot: #P01133、成熟タンパク質は全長配列のアミノ酸残基971〜1023を含む)、線維芽細胞増殖因子(FGF; Nurcombeら, 2000, J. Biol. Chem. 275 30009-30018)、bFGF(Tarabolettiら, 1997, Cell Growth. Differ. 8 471-479; UniProtKB/Swiss-Prot: #P09038、成熟タンパク質は全長配列のアミノ酸残基143〜288を含む)、オステオポンチン(Namら, 2000, Endocrinol. 141 1100)、トロンボスポンジン−1(Namら, 2000, 前掲)、テネイシン−C(Araiら, 1996, J. Biol. Chem. 271 6099)、PAI−1(Namら, 1997, Endocrinol. 138 2972)、プラスミノーゲン(Campbellら, 1998, Am. J. Physiol. 275 E321)、フィブリノーゲン(Campbellら, 1999, J. Biol. Chem 274 30215)、フィブリン(Campbellら, 1999,前掲)、トランスフェリン(Weinzimerら, 2001, J. Clin. Endocrinol. Metab. 86 1806)、およびKGF(Marcheseら, 1990, J. Cell Physiol. 144 326-32; UniProtKB/Swiss-Prot: #P21781、成熟タンパク質は全長配列のアミノ酸残基32〜194を含む)が挙げられる。
【0038】
本発明の合成キメラタンパク質の形態にある単離されたタンパク質複合体は、増殖因子、または少なくとも、同族増殖因子受容体と結合することができる増殖因子のドメインを含む。
【0039】
ここで「ドメイン」とは、少なくとも、同族増殖因子受容体と結合することができる増殖因子の部分または領域を意味する。限定するものではないが、一般に、同族増殖因子受容体は細胞により発現され、少なくとも増殖因子のドメインによる同族増殖因子受容体の結合または連結は、細胞の増殖、分化、生存および/または遊走などの細胞応答を惹起する。
【0040】
特にIGF−Iに関して、該ドメインは好適には、ロイシン残基でないアミノ酸残基24を含む。
一般に、該残基はチロシンである。
【0041】
特にIGF−IIに関して、該ドメインは好適には、ロイシン残基でないアミノ酸残基27を含む。
一般に、該残基はチロシンである。
【0042】
特にIGF−Iに関して、一実施形態では、該ドメインはIGF−Iの残基1〜70からなる。
別の実施形態では、該ドメインはIGF−Iの残基4〜70からなる。
【0043】
また、本発明の単離されたタンパク質複合体の別の成分は、フィブロネクチンの少なくともインテグリン結合ドメインであることも理解されるであろう。
好ましくは、インテグリン受容体はαまたはαインテグリンである。
【0044】
特定の理論に束縛されるものではないが、合成キメラタンパク質は、増殖因子の同族受容体およびフィブロネクチンのインテグリン受容体と共結合し、それらを共に活性化させ、それにより、細胞遊走を刺激し、誘導し、増大させ、または他の態様で促進することができる、ということが提示される。
【0045】
本発明のキメラタンパク質の利点は、化学合成または組換え手段によって容易に生成されること、また、非共有結合で結合されたオリゴ−タンパク質複合体に必要とされるタンパク質−タンパク質相互作用の維持に頼らないので、in vivoにおいてより安定であると予測されることにある。
【0046】
これに関して、IGF−Iの受容体結合ドメインを含む単離されたタンパク質複合体にはIGFBPも含まれるが、上記の作用様式によれば、IGFBPは好ましくはIGF−I/FN合成キメラ中に存在しない、ということが提示される。
【0047】
他の実施形態において、本発明は、IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGFと、FNまたは少なくともFNのインテグリン結合ドメインを含むFNの断片とを含む合成キメラタンパク質の形態にあるものなどの単離されたタンパク質複合体を提供する。
【0048】
好ましくは、インテグリン受容体はαまたはαインテグリン受容体である。
ここで、「断片」とは、フィブロネクチンのドメイン、部分配列または部分を意味する。断片は好ましくは、成熟フィブロネクチン配列の500個未満、400個未満、300個未満またはより好ましくは、約80〜280個の連続するアミノ酸を構成する。フィブロネクチンの複数の断片も意図される。
【0049】
フィブロネクチンのインテグリン結合ドメインは、好適には、RGD配列を含む。RGD配列は、フィブロネクチンIII型ドメイン8〜10(フィブロネクチン配列のアミノ酸1266〜1536)に位置する。より具体的には、RGD配列は、フィブロネクチン配列のアミノ酸1447〜1536で定義されるフィブロネクチンIII型ドメイン10に存在するが、第2のインテグリン結合部位はより大きな8〜10ドメイン領域にわたって存在し得る。
【0050】
よって、1つの特定の実施形態では、合成キメラは、RGD配列を含むフィブロネクチン断片を含み、ここで、該断片はフィブロネクチンアミノ酸配列のアミノ酸1447〜1536のうち少なくとも6個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、もしくは全てからなるか、またはそれを含む。
【0051】
別の特定の実施形態では、合成キメラは、RGD配列を含むフィブロネクチン断片を含み、該断片は、フィブロネクチンアミノ酸配列のアミノ酸1266〜1536のうち少なくとも6個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも260個、もしくは全てのアミノ酸配列からなるか、またはそれを含む。
【0052】
さらに別の特定の実施形態では、合成キメラは、上記実施形態によるRGD配列を含むフィブロネクチン断片を含み、ここで、該合成キメラは、フィブロネクチンアミノ酸配列の少なくとも10個、20個、50個、100個、200個、300個、500個、800個または1000個のアミノ酸、例えば、残基1266のN末端および/または残基1536のC末端をさらに含む。よって、該合成キメラは、フィブロネクチンI型および/またはII型ドメイン、例えば、フィブロネクチンアミノ酸配列のアミノ酸50〜273のうち少なくとも6個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、もしくは全てからなるか、またはそれを含むフィブロネクチン断片を含み得る。
【0053】
さらに別の実施形態では、合成キメラは、フィブロネクチンアミノ酸配列のアミノ酸1173〜1536のうち少なくとも6個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも350個、または全てのアミノ酸配列からなるか、またはそれを含むフィブロネクチン断片を含む。
【0054】
以上のフィブロネクチン配列のナンバリングは図1に示されているフィブロネクチン配列を参照して付されることが理解されるであろう。このフィブロネクチン配列は、UniProtKBタンパク質データベースから、タンパク質受託番号P02751として得られる。フィブロネクチンドメインおよび領域は表Iに示されている。
【0055】
好ましくは、フィブロネクチンまたはインテグリン結合ドメインを含む断片を含む合成キメラは、IGFBPアミノ酸配列を含まない。
好ましくは、上記のような合成キメラタンパク質は、増殖因子配列とフィブロネクチンアミノ酸配列の間に連続して位置する「リンカー配列」をさらに含む。
【0056】
一実施形態では、リンカー配列は1つ以上のグリシン残基と1つ以上のセリン残基を含む。
リンカー配列の特定の例は、Gly Ser(配列番号7);Gly Ser(配列番号8);(Gly Ser)(配列番号9);および(Gly Ser)(配列番号10)から選択され得るが、これらに限定されない。
【0057】
別の実施形態では、リンカー配列は、プラスミン切断認識部位(Sakiyama-Elbert ら, 2001, FASEB 15 1300)、例えば、配列:
Leu Ile Lys Met Lys Pro(配列番号11)
に従うものを含む。
【0058】
さらに別の実施形態では、リンカー配列は、コラゲナーゼ−3切断認識部位(KimおよびHealy, 2003, Biomacromolecules 4 1214)、例えば、配列:
Gln Pro Gln Gly Leu Ala Lys(配列番号12)
に従うものを含む。
【0059】
本発明はまた、本発明の合成キメラタンパク質の生物学的に活性の断片の使用および/または本明細書で例示される特定の増殖因子受容体結合ドメインとインテグリン結合ドメインの生物学的に活性の断片の使用に及ぶ。
【0060】
一実施形態では、「生物学的に活性の断片」は、それが由来するタンパク質の生物活性の10%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上を有する。
【0061】
別の実施形態では、「生物学的に活性の断片」は、それが由来するタンパク質の連続するアミノ酸配列の10%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上を有する。
【0062】
また、本発明の変異型タンパク質複合体も意図される。
典型的には、タンパク質に関して、「変異型」タンパク質は、1つ以上のアミノ酸が異なるアミノ酸で置換されたものである。当技術分野では、いくつかのアミノ酸を、そのタンパク質の活性の性質を変化させることなく、幅広い類似の特性を有する他のアミノ酸に変化させ得ることが十分に理解されている(保存的置換)。
【0063】
参照配列、例えば、増殖因子、増殖因子の受容体結合ドメイン、フィブロネクチンのインテグリン結合ドメイン、IGFBP、または合成キメラタンパク質に存在する1つ以上の対応する残基の1つ以上のアミノ酸残基が、本発明の単離されたタンパク質複合体の生物活性を実質的に変化させることなく、改変もしくは欠失、または付加的配列を付加され得ることが理解されるであろう。
【0064】
一実施形態では、タンパク質変異体は、参照アミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%または85%、より好ましくは少なくとも90%、95%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0065】
好ましくは、配列同一性は、参照配列の少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、またはより好ましくは少なくとも95%、98%、または実質的に全長にわたって評価される。
【0066】
配列同一性%を求めるために、アミノ酸および/またはヌクレオチド配列の最適なアライメントを、コンピュータによるアルゴリズム(IntelligeneticsによるGeneworksプログラム;Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, WI, USA のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)の実行によって、または目視検査と選択された種々の方法のいずれかにより作成された最良の(すなわち、比較ウィンドウにおいて最高の相同性%となる)アライメントによって行ってもよい。また、例えばAltschulら, 1997, Nucl. Acids Res. 25 3389により開示されているものなどのBLAST系プログラムも挙げられる。
【0067】
別の例において、「配列同一性」は、DNASIS(登録商標)コンピュータプログラム(ウィンドウズ(登録商標)版バージョン2.5;日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社、米国カリフォルニア州サンフランシスコから入手可能)により計算される「一致パーセンテージ」を意味すると理解され得る。
【0068】
配列解析の詳細な記述は、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Ausubelら編(John Wiley & Sons Inc NY, 1995-1999)のユニット19.3に見出すことができる。
本発明はまた、増殖因子の受容体結合ドメイン、フィブロネクチンのインテグリン結合ドメインまたはそれを含む単離されたタンパク質複合体の誘導体も意図する。
【0069】
本明細書において本発明の「誘導体」タンパク質は、例えば、他の化学部分の付加、他の化学部分との抱合もしくは複合体形成によって、または当技術分野で十分に理解されている翻訳後修飾法によって変更されている。
【0070】
アミノ酸の「付加」は、ポリペプチドまたは変異体と他のポリペプチドまたはタンパク質との融合を含み得る。他のタンパク質は、例えばタンパク質の精製を助けるものであり得る。例えば、これらには、ポリヒスチジンタグ、マルトース結合タンパク質、緑色蛍光タンパク質(GFP:green fluorescent protein)、プロテインA、またはグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST:glutathione S-transferase)が含まれる。
【0071】
本発明により意図されるその他の誘導体としては、限定するものではないが、側鎖の修飾、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質合成の際の非天然アミノ酸および/またはそれらの誘導体の組み込み、ならびに本発明のポリペプチド、断片および変異体にコンフォメーション拘束をかける架橋剤および他の方法の使用が挙げられる。本発明により意図される側鎖修飾の例としては、無水酢酸によるアシル化、無水コハク酸および無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化、メチルアセトイミデートによるアミド化、シアネートによるアミノ基のカルバモイル化、ピリドキサール−5−リン酸によるリシンのピリドキシル化とその後のNaBHによる還元、アルデヒドとの反応による還元的アルキル化とその後のNaBHによる還元、および2、4、6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS:2,4,6-trinitrobenzene sulphonic acid)によるアミノ基のトリニトロベンジル化によるものなどのアミノ基の修飾が挙げられる。
【0072】
カルボキシル基は、O−アシルイソ尿素形成によるカルボジイミドの活性化とその後の、例えば対応するアミドへの誘導体化によって修飾され得る。
アルギニン残基のグアニジン基は、2,3−ブタンジオン、フェニルグリオキサールおよびグリオキサールなどの試薬で複素環式縮合生成物を形成することによって修飾され得る。
【0073】
スルフヒドリル基は、システイン酸への過ギ酸酸化、4−クロロマーキュリフェニルスルホン酸、4−クロロマーキュリベンゾエート、2−クロロマーキュリ−4−ニトロフェノール、塩化フェニル水銀および他の水銀剤を用いた水銀誘導体の形成、他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成、マレイミド、無水マレイン酸または他の置換マレイミドとの反応、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化、およびアルカリ性pHでのシアネートによるカルバモイル化などの方法によって修飾され得る。
【0074】
トリプトファン残基は、例えば、臭化2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルもしくはハロゲン化スルホニルによるインドール環のアルキル化、またはN−ブロモスクシンイミドによる酸化によって修飾され得る。
【0075】
チロシン残基は、テトラニトロメタンを用いたニトロ化による3−ニトロチロシン誘導体の形成によって修飾され得る。
ヒスチジン残基のイミダゾール環は、ジエチルピロカーボネートによるN−カルボエトキシル化によって、またはヨード酢酸誘導体によるアルキル化によって修飾され得る。
【0076】
ペプチド合成の際に非天然アミノ酸および誘導体を組み込む例としては、限定するものではないが、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、t−ブチルグリシン、ノルロイシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、2−チエニルアラニン、および/またはアミノ酸のD−異性体の使用が挙げられる。
【0077】
タンパク質の化学誘導体化に好適な方法の例は、CURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE, Coliganら編, John Wiley & Sons NY(1995-2001)の第15章に示されている。
単離されたタンパク質複合体、およびその個々のタンパク質成分(断片、変異体、誘導体およびホモログを含む)は、当業者に公知の任意の好適な手順によって作製され得る。
【0078】
一実施形態では、本発明のタンパク質は化学合成によって生成される。化学合成技術は当技術分野で周知であるが、好適な方法論の例として、当業者はCURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE, Coliganら編, John Wiley & Sons NY(1995-2001)の第18章を参照してもよい。
【0079】
別の実施形態では、タンパク質は組換えタンパク質として作製され得る。
組換えタンパク質の生成は当技術分野で周知であるが、当業者は、例えばSambrookら, MOLECULAR CLONING. A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press, 1989)の特に第16章および第17章;CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Ausubelら編(John Wiley & Sons, Inc. 1995-1999)の特に第10章および第16章;ならびにCURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE, Coliganら編(John Wiley & Sons, Inc. 1995-1999)の特に第1章、第5章および第6章に記載されているような標準的プロトコールを参照してもよい。
【0080】
一実施形態では、組換えタンパク質は、
(i)発現ベクターにおいて1つ以上の調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結された当該タンパク質をコードする核酸を含む発現構築物を作製するステップ;
(ii)宿主細胞をその発現構築物でトランスフェクションまたは形質転換するステップ;および
(iii)宿主細胞内で組換えタンパク質を発現させるステップ
を含む方法によって産生される。
【0081】
「発現ベクター」は、プラスミドなどの自己複製する染色体外ベクター、または宿主ゲノムに組み込まれるベクターのいずれかであり得る。
「作動可能に連結された」または「作動可能に接続された」とは、調節ヌクレオチド配列(複数可)が、その核酸の転写、またはその核酸によりコードされているタンパク質の翻訳を開始、調節、または他の方法で制御するように、本発明の組換え核酸に対して配置されていることを意味する。
【0082】
調節ヌクレオチド配列は一般に、発現に用いる宿主細胞に適当なものである。当技術分野では様々な宿主細胞に対して多種の適当な発現ベクターおよび好適な調節配列が知られている。
【0083】
典型的には、1つ以上の調節ヌクレオチド配列としては、限定するものではないが、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボゾーム結合部位、転写開始および終結配列、翻訳開始および終結配列、スプライシング供与/受容配列、およびエンハンサーまたはアクチベーター配列が挙げられる。
【0084】
構成プロモーター(CMV、RSV、アデノウイルス、SV40、およびヒト延長因子プロモーターなど)および誘導/抑制プロモーター(tet−抑制プロモーターおよびIPTG誘導プロモーター、メタロチオネイン誘導プロモーターまたはエクジソン誘導プロモーターなど)が当技術分野で周知であり、本発明により意図される。また、プロモーターは2つ以上のプロモーターの要素を併せ持つハイブリッドプロモーターであってもよいことが理解されるだろう。
【0085】
また、発現構築物は融合相手(一般に、発現ベクターにより提供される)を含んでもよく、これにより、本発明の組換えタンパク質は融合相手との融合ポリペプチドとして発現される。融合相手の主要な利点は、それらが融合タンパク質の同定および/または精製を助けるということである。
【0086】
融合相手の周知の例としては、限定するものではないが、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヒトIgGのFc部分、マルトース結合タンパク質(MBP:maltose binding protein)、およびヘキサヒスチジン(HIS)が挙げられ、これらはアフィニティークロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティークロマトグラフィーによる融合タンパク質の精製のためには、アフィニティークロマトグラフィーの適切なマトリックスはそれぞれグルタチオン結合樹脂、アミロース結合樹脂、およびニッケル結合樹脂またはコバルト結合樹脂である。このようなマトリックスの多くは、QIAexpress(商標)システム(Qiagen)((HIS)融合相手を用いる場合に有用)およびPharmacia GST精製システムなどの「キット」の形態で入手可能である。
【0087】
いくつかの場合では、融合相手は、因子Xまたはトロンビンなどのプロテアーゼ切断部位も持ち、適切なプロテアーゼに本発明の融合タンパク質を部分的に消化させ、それにより、そこから本発明の組換えポリペプチドを遊離させることができる。その後、遊離したタンパク質を、これに続くクロマトグラフィー分離によって融合相手から単離することができる。
【0088】
本発明による融合相手はまた、その範囲内に「エピトープタグ」も含み、これは通常、特異的抗体が入手可能な短いペプチド配列である。特異的モノクローナル抗体が容易に入手可能なエピトープタグの周知の例としては、c−myc、赤血球凝集素およびFLAGタグが挙げられる。
【0089】
発現に好適な宿主細胞は、例えば、大腸菌(Escherichia coli)(例えばDH5)、酵母細胞、バキュロウイルス発現系とともに用いられるSf9細胞、CHO細胞、COS、CV−1、NIH 3T3、および293細胞などの原核細胞または真核細胞であり得るが、これらに限定されない。
【0090】
発現構築物はまた、形質転換宿主細胞に選択薬剤に対する耐性を付与する1つ以上の選択マーカーヌクレオチド配列も含み得る。形質転換細菌の選択のために有用な選択マーカーとしてはbla、kanRおよびtetRが含まれ、一方、形質転換真核細胞は、ハイグロマイシン、G418およびピューロマイシンなどのマーカーによって選択され得るが、これらに限定されない。
【0091】
宿主細胞への遺伝物質の導入に関して「形質転換する」および「トランスフェクションする」とは、一般に、宿主細胞への遺伝物質の導入を表すために用いられる。宿主細胞に外来の遺伝物質を導入するためには、限定するものではないが、リン酸カルシウム沈殿法、エレクトロポレーション、リポフェクタミン、リポフェクチンおよび他の親油性薬剤による送達、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE−デキストラントランスフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、ならびにプロトプラスト融合を含む多くの周知の方法がある。
【0092】
本発明は、本発明の合成キメラタンパク質(その変異体およびホモログを含む)をコードする単離された核酸を提供する。
本明細書において「核酸」とは、一本鎖または二本鎖mRNA、RNA、cRNA、RNAiならびにDNA(cDNAおよびゲノムDNAおよびDNA−RNAハイブリッドを含む)を表す。
【0093】
「ポリヌクレオチド」は80個以上の連続するヌクレオチドを有する核酸であり、「オリゴヌクレオチド」は80個未満の連続するヌクレオチドを有する。
「プローブ」は、例えばノーザンブロット法またはサザンブロット法で相補配列を検出するために適宜標識された一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであり得る。
【0094】
「プライマー」は通常、相補核酸「鋳型」とアニーリングすることができ、Taqポリメラーゼ、RNA依存性DNAポリメラーゼまたはSequenase(商標)などのDNAポリメラーゼの作用により鋳型依存的様式で延長され得る一本鎖オリゴヌクレオチド(好ましくは、15〜50個の連続するヌクレオチドを有する)である。
【0095】
本発明の合成核酸は、当技術分野で公知のように、化学合成アプローチによって、または核酸配列増幅技術を利用する組換え法によって、またはこれらの組合せによって生成してもよい。
【0096】
化学的に合成されたプライマーおよびオリゴヌクレオチド、本発明に従って有用な合成装置および関連技術は、典型的にはほとんどの研究室で入手可能であるか、または市販で購入することができる。
【0097】
好適な核酸増幅技術は当業者に周知であり、例えばAusubelら、前掲の第15章に記載されているようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびリガーゼ連鎖反応(LCR:ligase chain reaction);例えば米国特許第5,422,252号に記載されているような鎖置換増幅法(SDA:strand displacement amplification);例えばLiuら, 1996, J. Am. Chem. Soc. 118 1587、国際公開第WO92/01813号および国際公開第WO97/19193号に記載されているようなローリングサークル複製(RCR:rolling circle replication);例えばSooknananら, 1994, Biotechniques 17 1077に記載されているような核酸配列に基づく増幅(NASBA:nucleic acid sequence-based amplification);および例えばTyagiら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93 5395に記載されているようなQ−βレプリカーゼ増幅が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
好ましい核酸配列増幅技術はPCRである。
本明細書において「増幅産物」とは、核酸増幅技術によって作製された核酸産物を指す。
【0099】
本発明の核酸の生成および発現においてはまた、コドン配列の冗長性が利用可能であり、これにより、本明細書に例示された核酸は、それによってコードされているアミノ酸配列を変化させることなく容易に改変され得ることが理解されるであろう。
【0100】
特定の実施形態では、核酸は、当技術分野で周知のように、組換え発現に用いる宿主細胞の好ましい「コドン使用頻度」に従って至適化することができる。これは、優先的なコドン使用頻度がタンパク質発現に影響を及ぼす特定の生物またはその細胞において、最適な発現のために核酸を効果的に「仕立てる(tailor)」ことができる。
【0101】
従って、本発明は、本明細書に例示される核酸と相同な合成核酸を含む。
一実施形態では、核酸ホモログは、本明細書に記載される合成キメラタンパク質構築物のいずれか1つをコードする核酸と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0102】
好ましくは、配列同一性は、本発明のコード核酸の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、95%または有利には実質的に全長にわたって評価される。
【0103】
別の実施形態では、核酸ホモログは、本明細書に記載される合成キメラタンパク質構築物のいずれか1つをコードする核酸と高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。
【0104】
「ハイブリダイズ」および「ハイブリダイゼーション」は、本明細書において、DNA−DNA、RNA−RNAまたはDNA−RNA二重鎖を作り出す、少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列の対合を表すために用いられる。ハイブリダイズ配列は、当技術分野で周知のように、相補的プリンとピリミジンの間の塩基対合を介して生じる。
【0105】
これに関して、修飾されたプリン(例えば、イノシン、メチルイノシンおよびメチルアデノシン)および修飾されたピリミジン(チオウリジンおよびメチルシトシン)も塩基対合に関わり得ることが理解されるであろう。
【0106】
本明細書において「ストリンジェンシー」とは、ハイブリダイゼーション中の温度およびイオン強度条件、ならびにある特定の有機溶媒および/または界面活性剤の有無を指す。ストリンジェンシーが高いほど、ハイブリダイズするヌクレオチド配列間に必要とされる相補性程度が高くなる。
【0107】
「ストリンジェント条件」は、高頻度の相補塩基を有する核酸のみがハイブリダイズする条件を表す。
本明細書において高ストリンジェンシーという場合には、
(i)42℃でのハイブリダイゼーションには、少なくとも約31%v/v〜少なくとも約50%v/vのホルムアミドおよび少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩、42℃での洗浄には、少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩;
(ii)65℃でのハイブリダイゼーションには、1%BSA、1mM EDTA、0.5M NaHPO(pH7.2)、7%SDS、65℃を超える温度での約1時間の洗浄には、(a)0.1×SSC、0.1%SDS;または(b)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO(pH7.2)、1%SDS;ならびに
(iii)68℃またはそれ以上での約20分の洗浄には、0.2×SSC、0.1%SDS
を含み、包含する。
【0108】
一般に、洗浄は、T=69.3+0.41(G+C)%−12℃で行われる。一般に、二重鎖DNAのTは、不一致塩基の数が1%増すごとに1℃低下する。
上記のことにもかかわらず、Ausubelら、前掲の第2.9章および第2.10章の、特に2.9.1〜2.9.20頁に記載されているようなストリンジェント条件が当技術分野で周知である。
【0109】
本発明はまた、本発明の合成キメラタンパク質(キメラタンパク質、またはその断片、変異体および/もしくは誘導体を含む)に対する抗体も意図する。本発明の抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであり得る。抗体の産生、精製および使用に適用可能な周知のプロトコールは、例えば、Coligan ら, CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY(John Wiley & Sons NY, 1991-1994)の第2章ならびにHarlow, E.およびLane, D. Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988に見出せる。
【0110】
一般に、本発明の抗体は、本発明のポリペプチド、断片、変異体または誘導体と結合またはコンジュゲートする。例えば、これらの抗体はポリクローナル抗体を含み得る。このような抗体は、例えば、本発明のポリペプチド、断片、変異体または誘導体を産生種(マウスまたはウサギを含み得る)に注射してポリクローナル抗血清を得ることによって作製され得る。ポリクローナル抗体を産生する方法は当業者に周知である。使用可能なプロトコールの例は、例えば、Coliganら, CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, 前掲、ならびにHarlowおよびLane, 1988, 前掲に記載されている。
【0111】
産生種で得られるポリクローナル抗血清の代わりに、例えばKohlerおよびMilstein(1975, Nature 256, 495)により記載されているような標準法を用いて、または例えばColiganら, CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, 前掲に記載されているような、最近のその改変法によって、本発明の1つ以上のポリペプチド、断片、変異体または誘導体を接種した産生種に由来する脾細胞またはその他の抗体産生細胞を不死化することにより、モノクローナル抗体を産生してもよい。
【0112】
本発明はまた、上記に言及したポリクローナルまたはモノクローナル抗体のFc断片またはFab断片を含む抗体も、その範囲内に含む。あるいは、抗体は、本発明のタンパク質に対する一本鎖Fv抗体(scFv)を含み得る。このようなscFvは、例えば、米国特許第5,091,513号、欧州特許第239,400号またはWinterおよびMilstein(1991, Nature 349 293)による論文にそれぞれ記載されている方法に従って作製され得る。
【0113】
この抗体または抗体フラグメントに標識が結合されていてもよい。
標識は色素原、触媒、酵素、蛍光団、化学発光分子、ユウロピウム(Eu34)などのランタニドイオン、放射性同位元素、および直接的可視標識(direct visual label)を含む群から選択し得る。直接的可視標識の場合、コロイド金属粒子もしくは非金属粒子、色素粒子、酵素もしくは基質、有機ポリマー、ラテックス粒子、リポソーム、またはシグナル生成分子を含有するその他の小胞などを使用し得る。
【0114】
多数の有用な酵素が米国特許第4,366,241号、同第4,843,000号および同第4,849,338号に開示されている。本発明で有用な酵素標識としては、アルカリ性ホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、b−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼなどが挙げられる。酵素標識は単独で、または第2の酵素と組み合わせて液相で使用し得る。
【0115】
例として、蛍光団は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITL)、アロフィコシアニン(APC)およびR−フィコエリトリン(RPE)であり得るが、これらに限定されない。
【0116】
本発明はまた、本発明の単離されたタンパク質複合体(その変異体および誘導体を含む)を含む医薬組成物も提供する。
このような単離されたタンパク質複合体は、本発明の合成キメラタンパク質を含むいずれの形態であってもよいが、これに限定されない。
【0117】
本発明の医薬組成物は、細胞遊走、組織再生および創傷治癒を促進するか、またはそうでなければ助長するために使用してもよい。あるいは、医薬組成物は、第2の部位への腫瘍細胞遊走を防止または阻害することにより腫瘍転移を防ぐために投与してもよい。
【0118】
該組成物は必要に応じて治療的処置または予防的処置で使用することができる。例えば、医薬組成物は、皮膚修復、創傷治癒、火傷治癒およびその他の皮膚科処置に治療製剤または美容製剤の形態で適用することができる。
【0119】
これに関して、医薬組成物は生体材料、生体高分子、ヒドロキシアパタイトもしくはその誘導体などの無機材料、外科用インプラント、人工補綴物、創傷用もしくは火傷用包帯、圧迫、包帯などと会合させて、またはそれらの成分として(医薬組成物を、好適には、含浸、被覆、または他の方法で含ませて)投与することができる。
【0120】
好適には、医薬組成物は適当な薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む。
好ましくは、薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤は、哺乳類、より好ましくはヒトへの投与に好適なものである。
【0121】
「薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤」とは、全身投与において安全に使用可能な固体または液体の増量剤、希釈剤または封入物質を意味する。特定の投与経路に応じて、当技術分野で周知の様々な担体を使用することができる。これらの担体は、糖類、デンプン、セルロースおよびその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝溶液、乳化剤、等張生理食塩水、ならびに塩酸塩、臭化物および硫酸塩を含む無機酸塩、そして酢酸塩、プロピオン酸塩およびマロン酸塩などの有機酸塩といった塩類、ならびにパイロジェンフリー水を含む群から選択され得る。
【0122】
薬学上許容される担体、希釈剤および賦形剤を記載している有用な参照文献は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co. N.J. USA, 1991)である。
本発明の組成物を患者に提供するには、安全な投与経路であればいずれを用いてもよい。例えば、経口、直腸、非経口、舌下、口内、静脈内、関節内、筋肉内、皮内、皮下、吸入、眼内、腹腔内、脳室内および経皮などが使用可能である。
【0123】
投与形には、錠剤、分散液、懸濁液、注射液、溶液、シロップ剤、トローチ剤、カプセル剤、坐剤、エアゾールおよび経皮パッチなどが含まれる。これらの投与形にはまた、そのために特に設計された徐放性デバイスの注入もしくは移植、またはこの様式で付加的に働くように改変された他の形態のインプラントも含まれる。治療薬の徐放性は、治療薬を例えばアクリル樹脂、ワックス、高級脂肪族アルコール、ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ならびにある種のセルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)を含む疎水性ポリマーで被覆することによって達成することができる。さらに、徐放性は他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはマイクロスフェアを用いることによって達成することもできる。
【0124】
上記組成物は投与剤形に適合した様式で、薬学上有効な量で投与することができる。本発明において、患者に投与される用量は、適当な期間にわたって患者において有益な応答を達成するに十分なものでなければならない。投与される薬剤の量は処置される対象(その年齢、性別、体重および健康状態を含む)、医師の判断による要因によって異なる。
【0125】
創傷治癒用の医薬組成物に関しては、特に、米国特許第5,936,064号および国際公開第99/62536号が参照される。
本発明の医薬組成物はまた、ウイルスベクター(ワクシニアなど)などの発現ベクターおよび遺伝子療法において有用なウイルスベクターを含み得る。後者には、Braun-Falcoら(1999, Gene Ther. 6 432)に記載されているようなアデノウイルスおよびアデノウイルス随伴ウイルス(AAV)、Buchshacherら(2000, Blood 95 2499)に記載されているものなどのレトロウイルスおよびレンチウイルスベクター、ならびに単純ヘルペスウイルスおよびサイトメガロウイルスに由来するベクターが含まれる。内分泌遺伝子療法に有用なウイルスベクターの概論はStoneら(2000, J. Endocrinol. 164 103)に示されている。
【0126】
本発明ではまた、米国特許第5,958,764号に記載されているものなど、遺伝子発現を表皮細胞に標的化する特定の発現ベクター、また、米国特許第5,962,427号に記載されているものなど、in vivo創傷治癒用の特定の発現ベクターも使用可能である。
【0127】
本発明は、本発明の単離されたタンパク質複合体(合成キメラタンパク質を含む)を用いた処置方法を提供する。これらの方法は、哺乳類、より詳しくはヒトの治療的処置および/または予防的処置を特に目的とする。
【0128】
しかしながら、本発明による治療的使用はまた、ペット動物および伴侶動物、労役動物(ウマ、ラクダおよびグレーハウンドなど)家畜、実験動物ならびに異種移植用の細胞、器官および組織の供給源として用いられる動物といった哺乳類にも適用可能である。
【0129】
本発明はまた、本発明の単離されたタンパク質複合体(合成キメラタンパク質を含む)が皮膚の質または皮膚の外観を改善するまたは向上させるために投与される、美容的処置の方法も意図する。
【0130】
このような処置は、異常な皮膚細胞増殖から起こる乾癬および肥厚性瘢痕形成などの皮膚障害の予防または改善を含み得る。
あるいは、二次的な部位への腫瘍細胞遊走を遮断することにより腫瘍転移が防止または阻害される処置方法も意図される。さらに、細胞増殖を遮断することにより癌を処置する方法も意図される。
【0131】
特定の実施形態では、治療的処置および/または予防的処置は、本発明の単離されたタンパク質複合体(合成キメラタンパク質を含む)を、生体材料、生体高分子、ヒドロキシアパタイトなどの無機材料、外科用インプラント、人工補綴物、創傷用もしくは火傷用包帯、圧迫、包帯などと会合させて、またはそれらの成分として(単離されたタンパク質複合体を、好適には、含浸、または被覆、あるいは他の方法で含ませて)用い得る。
【0132】
このような方法は、以上に定義した医薬組成物の投与を含み、米国特許第6,090,790号に記載されているものなどの特定の組織部位へのマイクロニードル注射、米国特許第6,054,122号に記載されているものなどの創傷、火傷もしくは潰瘍に適用される局所用クリーム、ローションもしくは密封包帯、または国際公開第99/47070号に記載されているものなどの、組成物を放出するインプラントの方式によってもよい。
【0133】
これに関しては、例えば米国特許第5,929,040号および同第5,962,427号に示されている方法に従って、遺伝子療法を適用することもできる。
また、例えば所望の増殖因子発現を遺伝的に操作することにより、皮膚代用を作製するために皮膚細胞を遺伝的に改変し得る方法も存在する(Suppら, 2000, J. Invest. Dermatol. 114 5)。この分野の総説の一例がBevanら(Biotechnol. Gent. Eng.Rev. 16 231)に示されている。
【0134】
また、国際公開第99/11789号に示されているものなど、レシピエントにトランスフェクションまたは形質転換された細胞を「接種する」ことも意図される。
これらの方法は細胞遊走を刺激し、それにより、創傷および火傷の治癒、潰瘍などの皮膚損傷部の修復、例えば自己皮膚のin vitro培養による組織置換および移植、腎臓および肺などの内部器官の再上皮化、ならびに損傷した神経組織の修復を助長する、または進行させるために使用可能である。
【0135】
皮膚置換療法は当技術分野では周知のものとなっており、例えばKeheら(1999, Arch. Dermatol. Res. 291 600)に記載されているような上皮細胞/ケラチノサイト系の同時培養物の使用、または初代(通常、自己の)表皮細胞、皮膚細胞および/またはケラチノサイトのin vitro培養を採用してもよい。これらの技術ではまた、操作された生体材料および合成ポリマー「スキャフォールド」を用いてもよい。
【0136】
この分野の総説の例が、TerskikhおよびVasiliev(1999, Int. Rev. Cytol. 188 41)ならびにEaglesteinおよびFalanga(1998, Cutis 62 1)に示されている。
より詳しくは、頭蓋顔面手術に有用な代用口腔粘膜の作製が、Izumiら(2000, J. Dent. Res. 79 798)に記載されている。胎児ケラチノサイトおよび皮膚線維芽細胞は、Fauzaら(J. Pediatr. Surg. 33 357)に記載されているものなど、皮膚損傷部を処置する目的で、移植用の皮膚を作製するためにin vitroで増殖させることができるが、in vitroにおいてヒアルロン酸由来生体材料上で培養された皮膚および表皮要素からの皮膚置換は火傷の処置に有用である可能性があることが示されている(Zacchiら, 1998, J. Biomed. Mater. Res. 40 187)。
【0137】
また、例えばSheridanら(2000, J. Control Release 14 91)およびFauzaら(1998, 前掲)に記載されているように、代用皮膚の操作を助けるためのポリマースキャフォールドも意図され、それは創傷および火傷に皮膚細胞を送達するための薬剤としてのマイクロスフェアである(LaFranceおよびArmstrong, 1999, Tissue Eng. 5 153)。
【0138】
本発明は、IGF−I:FN、IGF−II:FN、EGF:FN、bFGF:FN、KGF:FN、またはIGF−I:IGFBP:FN複合体などの増殖因子とフィブロネクチンとを含む複合体のアゴニストまたはアンタゴニストを同定、スクリーニング、設計またはそうでなければ作出するための、本発明の単離されたタンパク質複合体(合成キメラタンパク質を含む)の使用を意図する。このような薬剤は「ミメティック(mimetic)」であり得る。「ミメティック」とは、本明細書において、タンパク質またはペプチドの特定の機能的領域を模倣するように設計された分子を指して用いられ、その範囲内に、当技術分野で十分に理解されている「アゴニスト」、「類似体」および「アンタゴニスト」という用語を含む。
【0139】
一実施形態では、IGF−I:FN、IGF−II:FN、EGF:FN、bFGF:FN、KGF:FN、またはIGF−I:IGFBP:FN複合体により、同族増殖因子受容体およびFN受容体の結合を模倣するアゴニストが作出される。このような分子は、創傷治癒および皮膚再生などに必要とされるような細胞遊走の刺激剤としての有用性を持ち得る。
【0140】
別の実施形態では、IGF−I:FN、IGF−II:FN、EGF:FN、bFGF:FN、KGF:FN、またはIGFII:IGFBP:FN複合体により、同族増殖因子受容体およびインテグリン受容体の結合を防止または阻害するアンタゴニストが作出される。このような分子は細胞遊走および/または細胞増殖の阻害剤として(それにより有用な抗腫瘍薬となる)、また、異常な細胞増殖から起こる乾癬および肥厚性瘢痕形成などの皮膚障害の処置において有用性を持ち得る。
【0141】
上記ミメティック、アゴニスト、アンタゴニスト、および類似体は、所望の生物活性および半減期を備えたペプチド、ポリペプチドまたはその他の有機分子、好ましくは、小有機分子であり得る。
【0142】
コンピュータによる構造データベース検索は、ミメティックを同定するための手順としての利用が増えてきている。原則としてミメティックを同定するのに好適といえるデータベース検索法は、国際公開第94/18232号(HIV抗原ミメティックの作出を対象とする)、米国特許第5,752,019号および同第97/41526号(EPOミメティックの同定を対象とする)に見出せる。
【0143】
他の方法には、分子の相互作用を同定する様々な生物物理学的技術が含まれる。これらは、例えばIGF−I:FN、IGF−II:FN、EGF:FN、bFGF:FN、KGF:FN、またはIGF−IGFBP−FN複合体の形成に影響を及ぼすかどうかに従って候補分子をスクリーニングすることを考慮したものである。競合的放射性リガンド結合アッセイ(関連の方法としてはUptonら, 1999, 前掲を参照)、分析的超遠心分離、微量熱量測定、表面プラズモン共鳴、および光学バイオセンサーに基づく方法などの有用であり得る技術に適用可能な方法が、CURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE, Coliganら編(John Wiley & Sons, 1997)の第20章に示されている。
【0144】
当業者は以下の非限定例を参照すれば、本発明をより容易に理解し、実施することができる。
(実施例)
実施例1
IGF−I、IGFBPおよびFNは細胞遊走を刺激する
IGFBP−3または−5の存在下、予め結合させたFN(1μg/mL)および漸増濃度のIGF−Iで被覆したトランスウェル(Transwell)(登録商標)にMCF−10A細胞を播種した。これらの細胞を5時間遊走させた。その後、各処理に応答して膜を通り抜ける細胞の数を、FN単独(SFM)で遊走した細胞に対するパーセンテージとして表した。3回の実験(各反復実験において4ウェルで処理を試験した)からMCF−10データをプールし、図2に示す。エラーバーはSEMを示す。SFM=無血清培地。IGF−I:FN、IGF−I:IGFBP−3:FNおよびIGF−I:IGFBP−5:FNは、FN単独の対照ウェルよりも有意に高い遊走を刺激することができた(応答はFN対照ウェルの、それぞれ153.7+/−7.3%、192.5+/−6.8%および187.5+/−6.5%)(p<0.05)。また、IGF−I:IGFBP−3:FNおよびIGF−I:IGFBP−5:FN処置に対するMCF7−10A細胞の応答は、FNとIGFBPまたはIGF−Iのいずれか一方とのみを含む場合に得られた応答よりも有意に高かった(p<0.05)。このデータは、トリマーIGF−I:IGFBP−3/5:FN複合体が存在する場合に最大応答が生じることを示す。このことは、FNと結合したIGF−Iを含むキメラがFN結合インテグリンおよび同族増殖因子受容体を活性化することを示唆する。
実施例2
合成キメラフィブロネクチン:増殖因子タンパク質
ここでは、FN:増殖因子(例えば、IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFおよびKGF)キメラの形態の本発明の合成キメラタンパク質の例を示す。
【0145】
合成キメラタンパク質は、増殖因子と融合したあらゆる全長または末端切断型FN(アミノ酸残基の修飾を含むまたは含まない)を含む。さらに、FNおよび増殖因子は種々のペプチドリンカーと融合されていてもされていなくてもよい。
【0146】
種々の長さのFNタンパク質が、全長成熟型IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFもしくはKGFタンパク質、または少なくとも、同族増殖因子受容体と結合することができるIGF−I、IGF−II、EGF、bFGFもしくはKGFタンパク質のドメインと結合している一連のキメラ発現構築物を設計する。各場合において、FNセグメントは好ましくは、例えばGly Ser(配列番号7)リンカー、Gly Ser(配列番号8)リンカー、(Gly Ser)(配列番号9)リンカー、または(Gly Ser)(配列番号10)リンカーなどのリンカーを介して、IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF配列に連結される。
【0147】
合成キメラタンパク質の例としては、限定するものではないが:
A)FN III型ドメイン8[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
B)FN III型ドメイン8〜9[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
C)FN III型ドメイン8〜10[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
D)FN III型ドメイン9[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
E)FN III型ドメイン9〜10[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
F)FN III型ドメイン10[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはGF);
G)FN I型ドメイン1〜5[リンカー]FN III型ドメイン8[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
H)FN I型ドメイン1〜5[リンカー]FN III型ドメイン8〜9[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
I)FN I型ドメイン1〜5[リンカー]FN III型ドメイン8〜10[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
J)FN I型ドメイン1〜5[リンカー]FN III型ドメイン9[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
K)FN I型ドメイン1〜5[リンカー]FN III型ドメイン9〜10[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
L)FN I型ドメイン1〜5[リンカー]FN III型ドメイン10[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
M)FN I型ドメイン4〜5[リンカー]FN III型ドメイン8[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
N)FN I型ドメイン4〜5[リンカー]FN III型ドメイン8〜9[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
O)FN I型ドメイン4〜5[リンカー]FN III型ドメイン8〜10[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
P)FN I型ドメイン4〜5[リンカー]FN III型ドメイン9[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
Q)FN I型ドメイン4〜5[リンカー]FN III型ドメイン9〜10[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF);
R)FN I型ドメイン4〜5[リンカー]FN III型ドメイン10[リンカー]増殖因子(IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFまたはKGF)
が挙げられる。
【0148】
ヒトFN、IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFおよびKGF遺伝子DNA配列(それぞれ配列番号1〜6)は、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)での発現のためにコドンを至適化することができる。次に、そのコード配列を、キメラの精製を助けるためにポリヒスチジン親和性タグを組み込んだ発現ベクター(例えば、pIB/V5−His発現ベクター(Invitrogen))にクローニングすることができる。上述のようなアミノ酸リンカーをコードするヌクレオチド配列を、部位特異的突然変異誘発PCRによって挿入することができる。リンカー配列のC末端へのAsnの付加を用いれば、Asn−Glyモチーフ(ここで、Glyは増殖因子タンパク質の最初のアミノ酸である)を作出することができる。このモチーフは、ヒドロキシルアミンにより誘導される、これらのキメラからの増殖因子タンパク質の切断を可能とする。
【0149】
得られる構築物は、リンカーによって全長成熟型IGF−I、IGF−II、EGF、bFGFもしくはKGFタンパク質、または少なくとも、同族増殖因子受容体と結合することができるIGF−I、IGF−II、EGF、bFGFもしくはKGFタンパク質のドメインに連結された種々の長さのFNタンパク質をコードする。全ての構築物のDNA配列を確認して、目的DNA配列の忠実度が維持されていることを確かめることができる。
【0150】
このpIB/V5−Hisベクター中のクローンを用いてSf9昆虫細胞をトランスフェクションすることができ、免疫ブロット法により評価すると、馴化培地中に一時的に発現された分泌タンパク質が検出される。簡単に述べると、サンプルを還元条件下、SDS−PAGEで分析し、セミドライ転写法を用いてタンパク質をニトロセルロース膜に転写する。この膜をポリクローナル抗FN抗体で調べた後、増強化学発光を用いて標的タンパク質種を可視化する。
【0151】
キメラタンパク質の精製は、製造者の説明書に従って行うNi−NTAスーパーフローアガロース(QIAGEN、オーストラリア)アフィニティークロマトグラフィーに基づく。精製プロセス中、SDS−PAGE、およびポリクローナル抗FN抗体(Calbiochem)を用いたウエスタンブロット解析によってキメラタンパク質をモニタリングする。
【0152】
細胞の遊走および/または増殖に対する合成キメラタンパク質の効果を調べるためには、MCF−10A細胞、MCF−7細胞、ならびに単離されたヒト上皮細胞、ケラチノサイトおよび線維芽細胞などの細胞を使用することができる。例えば、細胞遊走はトランスウェル(Transwell)(登録商標)遊走アッセイを用いて評価することができ、細胞増殖は当業者に周知の細胞増殖アッセイを用いて測定することができる。
【0153】
本明細書を通じ、その目的は、いずれか1つの実施形態または特定の特徴の集合体に本発明を限定することなく、本発明の好ましい実施形態を示すことであった。よって、当業者には、本開示に鑑みて、本発明の範囲から逸脱することなく、例示された特定の実施形態に種々の改変および変更を行うことができることが理解されるであろう。
【0154】
本明細書に参照されているコンピュータプログラム、アルゴリズム、特許および科学文献は全て、参照により本明細書に組み入れる。
【0155】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成キメラタンパク質の形態にある、単離されたタンパク質複合体であって、
(i)増殖因子、または少なくとも同族増殖因子受容体と結合することができる前記増殖因子のドメイン、および
(ii)少なくともフィブロネクチン(FN)のインテグリン結合ドメインを含むFNの1つ以上のIII型ドメイン
のアミノ酸配列を含む単離されたタンパク質複合体。
【請求項2】
前記増殖因子がインスリン様増殖因子−I(IGF−I)、インスリン様増殖因子−II(IGF−II)、上皮細胞増殖因子(EGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)およびケラチノサイト増殖因子(KGF)から選択される、請求項1に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項3】
前記インテグリン結合ドメインがαインテグリン結合ドメインまたはαインテグリン結合ドメインである、請求項1または2に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項4】
前記FNの1つ以上のIII型ドメインがFN配列(配列番号1)のアミノ酸1266〜1536を含む、請求項1または2に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項5】
前記FNの1つ以上のIII型ドメインがFN配列(配列番号1)のアミノ酸1447〜1536を含む、請求項1または2に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項6】
前記FNの1つ以上のIII型ドメインがFN配列(配列番号1)のアミノ酸1173〜1536を含む、請求項1または2に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項7】
IGFBPアミノ酸配列を含まない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項8】
FNの付加的断片をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項9】
前記FNの付加的断片がFN配列(配列番号1)のアミノ酸50〜273を含む、請求項8に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項10】
前記FNの付加的断片がFN配列(配列番号1)のアミノ酸184〜273を含む、請求項8に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項11】
少なくとも1つのリンカー配列をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項12】
前記リンカー配列がプロテアーゼ切断部位を含む、請求項11に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項13】
前記リンカー配列が
(i)Gly Ser(配列番号7)、
(ii)Gly Ser(配列番号8)、
(iii)(Gly Ser)(配列番号9)、
(iv)(Gly Ser)(配列番号10)、
(v)Leu Ile Lys Met Lys Pro(配列番号11)、および
(vi)Gln Pro Gln Gly Leu Ala Lys(配列番号12)
からなる群から選択される、請求項11に記載の単離されたタンパク質複合体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質複合体をコードする、単離された核酸。
【請求項15】
ベクターにおいて1つ以上の調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結された請求項14に記載の単離された核酸を含む、遺伝子構築物。
【請求項16】
前記単離された核酸がプロモーターに作動可能に連結されている発現構築物である、請求項15に記載の遺伝子構築物。
【請求項17】
請求項15に記載の遺伝子構築物を含む、宿主細胞。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質複合体と、薬学上許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項19】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質複合体を、含浸、または被覆、あるいは他の方法で含ませた外科用インプラント、スキャフォールドまたは人工補綴物。
【請求項20】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質複合体を含む、創傷用または火傷用包帯。
【請求項21】
細胞の遊走および増殖のうち少なくともいずれか一方を促進する方法であって、請求項1〜13のいずれか一項に記載の単離されたタンパク質複合体を、細胞により発現された増殖因子受容体およびインテグリン受容体の双方と結合させることにより、前記細胞の遊走および増殖のうち少なくともいずれか一方を誘導し、増大させ、または他の態様で促進するステップを含む方法。
【請求項22】
前記単離されたタンパク質複合体がin situで細胞の遊走および増殖のうち少なくともいずれか一方を促進するために動物に投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
予防的にまたは治療的に、上皮細胞の遊走および増殖のうち少なくともいずれか一方を誘導し、増大させ、または他の態様で促進し、それにより、in situでの創傷治癒を助長するための、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記動物がヒトである、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記単離されたタンパク質複合体がin vitroで1つ以上の細胞または組織に投与される、請求項21に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−511960(P2013−511960A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540231(P2012−540231)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001613
【国際公開番号】WO2011/063477
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(592253275)クイーンズランド ユニバーシティ オブ テクノロジー (13)
【Fターム(参考)】