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フィラグリン産生促進剤
説明

フィラグリン産生促進剤

【課題】 フィラグリン産生促進作用とエモリエント作用を併せ持つフィラグリン産生促進剤を提供すること。
【解決手段】γ−オリザノールを0.5〜3質量%含有する米糠油を有効成分として含有するフィラグリン産生促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラグリン産生促進剤に関し、より詳細には、エモリエント作用を有するとともに、フィラグリン遺伝子の発現を増強し角層中のフィラグリン産生量を増加させることによって、優れた保湿効果が得られ、肌荒れや乾燥肌を有効に改善し得るフィラグリン産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は大きく分けて、表皮、真皮、皮下組織の3層よりなる。表皮の最外層には角層が形成され、角層保湿機能によって体内の水分の蒸発を防止し角層水分量が維持されている。しかし、紫外線照射や刺激物質の侵入などの外部刺激を受けた場合や、加齢や内分泌、遺伝的な素因などの内的要因によって保湿機能が低下し、角層中のアミノ酸、ピロリドンカルボン酸、尿素などの天然保湿因子(NMF)が減少すると、乾燥肌、肌荒れなどを引き起こす。
【0003】
このため、皮膚外用剤には種々の保湿剤が配合されており、例えば、天然保湿因子(NMF)を補充するため、アミノ酸、尿素などのヒューメクタントが用いられている。また、ワックスやラノリンなどの油性物質がエモリエントとして配合され、米糠油などの植物性油分も用いられている(特許文献1〜3参照)。エモリエントは、その閉塞性により皮膚からの水分蒸散を防止してうるおいを保持し、皮膚を柔軟にする作用を有するものである。
【0004】
一方、近年、皮膚の保湿機能に関与する物質としてフィラグリンが注目されている。フィラグリンは、表皮の顆粒細胞に存在するケラヒトアリン顆粒の成分で分子量約40kDaの塩基性蛋白質であり、角質細胞が下層から上層へと移行する過程でアミノ酸にまで分解され、これが天然保湿因子として機能する。またフィラグリンは種々の皮膚疾患に関与しており、アトピー性皮膚炎や尋常性魚鱗癬では、フィラグリンの遺伝子異常が認められることが報告されている(非特許文献1)。このため、フィラグリンの産生を促進する成分についても検討が行われており、例えば、マタタビ、ノニ、檸条、油茶などの植物の水性溶媒抽出物がフィラグリンの産生を促進することが報告されている(特許文献4〜6参照)。しかし、フィラグリン産生促進作用とヒューメクタントあるいはエモリエントの両者の作用を併せ持つ成分はこれまでほとんど知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−335463号公報
【特許文献2】特開2002−29962号公報
【特許文献3】特開2003−2822号公報
【特許文献4】特開2010−120876号公報
【特許文献5】特開2010−90093号公報
【特許文献6】特開2010−83786号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】今山修平:"スキンケアを科学する", 南山堂,pp. 145-146 (2008-5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、エモリエント作用を兼ね備えたフィラグリン産生促進剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、従来公知の米糠油はエモリエント効果を有するのみであるが、特定の脂質組成を有する米糠油は、さらにフィラグリンの産生を促進する効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、γ−オリザノールを0.5〜3質量%含有する米糠油を有効成分として含有するフィラグリン産生促進剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフィラグリン産生促進剤は、フィラグリン遺伝子の発現を増強し、フィラグリン量を増加させることによって、角層中に十分な天然保湿成分を維持するとともに、角層の表面を閉塞して水分の蒸散を防ぐことにより、優れた保湿効果が得られ、乾燥肌や肌荒れを改善することができる。また、アトピー性皮膚炎や尋常性魚鱗癬の症状を改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1において、各試料の所定濃度添加によるフィラグリン遺伝子のmRNA発現量を示す図である。
【図2】実施例2において、製造例1の米糠油の所定濃度添加によるフィラグリンタンパク産生量を示す図である。
【図3】実施例2において、製造例1の米糠油の所定濃度添加によるスポット画像である。
【図4】実施例3においてヘアレスマウス背部のフィラグリンを蛍光免疫染色した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のフィラグリン産生促進剤は、米糠から抽出された米糠油を有効成分とするものであるが、従来公知の米糠油はγ−オリザノールの含有量が0.01〜0.2質量%(以下、単に「%」で示す)程度であるのに対し、本発明では、γ−オリザノール含有量が0.5〜3%、好ましくは1〜2%の範囲であるγ−オリザノール高含有米糠油を用いる。また従来公知の米糠油は、植物ステロール含有量が0.1〜0.9%程度であるが、本発明では植物ステロールを1〜5%、好ましくは1.5〜2.5%含有するものを用いることが好適である。植物ステロールとしては、β−シトステロール、スティグマステロール、カンペステロールなどが含まれる。その他、ビタミンEを0.02〜0.1%、トコトリエノールを0.02〜0.1%含有することが好ましい。
【0013】
上記のような組成を有する米糠油は、米糠から、脱ガム処理、脱ロウ処理、蒸留脱酸処理、脱色処理、脱臭処理を経て製造される。従来公知の製造方法では、通常アルカリ脱酸処理を行うが、本発明に用いる米糠油の製造にあたってはこの処理を行わないことを特徴とする。アルカリ脱酸処理を行わないことにより、上記のようにγ−オリザノールや植物ステロール含有量の高いものが得られる。
【0014】
より具体的には、まず原料の米糠から油性成分を抽出し、極性の高い脂質成分のガム質を除去する。次いで脱ガム処理後の油性成分に溶剤を加え均一に溶解し、低温で濾過し融点の低いエステル油であるロウ物質を凝固物として除去する。次いで蒸留することにより油性成分中の遊離脂肪酸を除去した後、ろ過剤を用いて脱色し、さらに脱臭処理を行うことによって、本発明に用いる米糠油を製造することができる。
【0015】
本発明のフィラグリン産生促進剤は、かくして得られた米糠油を有効成分とするものであるが、皮膚外用剤として使用する場合、製剤安定性の観点から米糠油を0.1〜100%、好ましくは1〜10%配合すればよい。
【0016】
本発明のフィラグリン産生促進剤には、通常化粧料や医薬品、医薬部外品に用いられるその他の成分を配合することができる。このような任意成分としては、ビタミン類、色素類、無機塩類、油性基剤、界面活性剤、防腐剤、香料等が挙げられる。ビタミン類としては、レチノール、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、シアノコバラミン、アスコルビン酸、コレカルシフェロール、カルニチン、オロット酸などがある。色素類としては、赤色106号、青色1号、だいだい色205号、黄色202号の(1)、黄色203号、緑色3号などがある。無機塩類としては、硫酸ナトリウム、炭素水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、塩化カリウム、ミョウバンなどがある。油性基剤としては、液状ラノリン、ホホバ油、米胚芽油、オリーブ油、マカデミアンナッツ油、スクワラン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、ワセリン、流動パラフィンなどがある。界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレングリコールモノステアレートなどが挙げられる。アトピー性皮膚炎または尋常性魚鱗癬の予防・治療剤とする場合の適用量は、対象者の年齢、性別、症状、疾患の程度等に応じて適宜選定されるが、通常、1日当たり0.01〜10g程度適用すればよい。
【0017】
また本発明の皮膚外用剤は、例えば化粧料、外用医薬品または医薬部外品等として利用することができ、またその形態としては、特に限定されるものではないがローション、スプレー、エアゾールスプレー、クリーム、清拭剤、上がり湯用組成物、入浴剤などが例示できる。
【実施例】
【0018】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0019】
製 造 例 1
米糠油の調製:
原料の米糠の抽出油にスチーム混和し、遠心分離によって水相に含まれるガム質を除去した。次いで脱ガム処理後の米糠にn−ヘキサンを加え均一に溶解し、0℃以下の低温で冷却濾過しロウ物質を凝固物として除去した。次いでn−ヘキサンを留去し、真空蒸留することにより脱酸処理した後、活性白土のろ布濾過によって脱色し、さらに真空加熱をして脱臭処理を行って米糠油を得た。得られた米糠油の脂質の組成について、液体クロマトグラフィーにより分析した。結果を表1に示す。市販品(コメヌカ油;築野食品工業株式会社)の組成も表1に併せて示す。
【0020】
【表1】

【0021】
実 施 例 1
フィラグリン遺伝子の発現強度の評価(リアルタイムPCR法):
製造例1で得られた米糠油によるフィラグリン遺伝子の発現強度への影響を評価した。ヒト表皮角化細胞を1×104個/wellの細胞密度にて、角化細胞増殖培地(TOYOBO)を用いて96 well plateに播種した。24時間培養後、所定の濃度の試料を含む角化細胞基礎培地に交換し48時間培養した(試料は100%エタノールに所定の濃度となるように溶解し、これを角化細胞基礎培地で100倍希釈して調整した)。細胞は、CellAmp Direct RNA Prep kit(TAKARA Bio)を用いてtotal RNAを抽出し、Primescript RT Master mixを用いてcDNAを合成した。Filaggrin (HA127836, TAKARA Bio)およびGAPDH(HA067812,TAKARA Bio)のプライマーを用いて、LightCycler 480 Realtime System(Roche社)によりmRNA発現量を求めた。同様にして、市販品の米糠油(コメヌカ油;築野食品工業株式会社)、イソプロピルパルミテート、トリカプリル・カプリン酸グリセリド、スクワランについても評価した。結果を図1に示す。
【0022】
米糠油のフィラグリン遺伝子の発現強度は、市販品の米糠油と比較すると明らかに高い値を示しフィラグリンの遺伝子量は有意に増加している。また、化粧品などに使用される一般的な油性物質において、フィラグリン遺伝子の発現は、認められなかった。
【0023】
実 施 例 2
フィラグリンタンパク産生量の評価(Dot-blot法):
製造例1で得られた米糠油によるフィラグリンタンパクの産生量への影響を評価した。表皮細胞を1.0×10cells/wellの細胞密度にてKG2培地(クラボウ)を用いて96穴培養プレートに播種した。24時間培養後、所定の濃度の試料を含むウシ脳下垂体抽出物未含有KG2培地に交換し、72時間培養した(試料は100%エタノールに所定の濃度となるように溶解し、これをウシ脳下垂体抽出物未含有KG2培地に100倍希釈して調製した)。細胞はPBS(-)にて洗浄したのち、0.5%TritonX-100(2mMPMSF含有)を加え、超音波処理を行って細胞を破砕した。細胞破砕液をニトロセルロース膜に一定量プロッティングし、一晩乾燥した。乾燥後の転写膜を1%BSAinPBSに浸漬し、室温にて1時間ブロッキングを行った。その後、PBS(-)にて洗浄し、抗ヒトfilaggrin抗体(Anti-Filaggrin(ARGENE))を1:4000の希釈濃度で転写膜上に添加した。室温で1時間反応させた後、PBSにて洗浄した。その後、ヒストファインシンプルステインMAX-PO(M)(ニチレイ)を1:100の希釈濃度で転写膜上に添加し、室温で1時間反応させた。PBS(-)にて洗浄後、Lumi-Light Western Blotting Substrate(Roche)を転写膜上に添加し、1分後にライトキャプチャー(ATTO株式会社)を用いてスポット画像を得た。得られたスポット画像の各スポットの輝度をCS Analyzer Version2.0(ATTO株式会社)を用いて定量した。Filaggrin産生量の変化は、filaggrin由来の発光輝度の定量値を同時に定量したタンパク量にて除することにより補正し、試料未処理細胞(コントロール)の補正値を100とした百分率、Index(%)で表した。それぞれのfilaggrin産生量変化は、Student t検定をもちいて有意差検定を行い、コントロールとの差を評価した。結果を図2に示す。またスポット画像を図3に示す。
【0024】
製造例1の米糠油において、フィラグリンの遺伝子レベルでの発現を確認できたため、発現するタンパク産生量を測定した結果、米糠油の添加濃度に対して依存的にタンパク産生量の増加を確認できた。この米糠油は、フィラグリンタンパクの産生促進作用を有することが示唆される。
【0025】
実 施 例 3
ヘアレスマウスを用いたフィラグリン産生の蛍光免疫染色:
8週齢のHos:HR-1マウスを用いて、背部皮膚に製造例1で得られた米糠油150μLを1日1回、2週間反復塗布した。試験終了時に皮膚を採取し、速やかに凍結させ、4%CMC包埋し、凍結切片をFilaggrin polyclonal antibody(Covance Research Products)で蛍光免疫染色を施した。結果を図4に示す。
【0026】
製造例1の米糠油を反復塗布したヘアレスマウス表皮の有棘層から顆粒層付近において、蛍光色を呈することが確認された。この米糠油は、フィラグリン産生促進作用を有することが確認された。
【0027】
実 施 例 4
皮膚外用ローションの調製:
下記処方の皮膚外用ローションを下記製法により製造した。
(処方)
製造例1の米糠油 0.8%
POE(15)セチルエーテル 5%
濃グリセリン 5%
フェノキシエタノール 0.3%
ジプロピレングリコール 1%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01%
精製水 残部
(製法)
精製水以外の成分を加熱混合し、均一溶解後、精製水を溶解原料へゆっくりと撹拌しながら投入し、皮膚外用ローションを得る。
【0028】
実 施 例 5
入浴剤の調製:
下記処方の入浴剤を下記製法により製造した。
(処方)
製造例1の米糠油 30%
モノステアリン酸ソルビタン 4%
POE(20)オレイルエーテル 3%
香料 0.9%
1,3−ブチレングリコール 5%
フェノキシエタノール 0.3%
メチルパラベン 0.3%
ブチルパラベン 0.1%
精製水 残部
(製法)
精製水以外の成分を加熱混合し、均一溶解後、加熱された精製水を溶解原料へゆっ
くりと撹拌しながら投入し、乳化物が得られたら冷却をし、入浴剤を得る。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のフィラグリン産生促進剤は、フィラグリン遺伝子の発現を増強し、表皮細胞中のフィラグリン産生量を有意に増加させるとともに、角層表面を閉塞して水分蒸散を抑制するエモリエント作用によって、優れた保湿効果が得られるものである。したがって、入浴剤や化粧料等の皮膚外用剤として有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−オリザノールを0.5〜3質量%含有する米糠油を有効成分として含有するフィラグリン産生促進剤。
【請求項2】
米糠油が植物ステロールを1〜5質量%含有するものである請求項1記載のフィラグリン産生促進剤。
【請求項3】
皮膚外用剤である請求項1または2に記載のフィラグリン産生促進剤。
【請求項4】
入浴剤である請求項3記載のフィラグリン産生促進剤。
【請求項5】
請求項1または2に記載のフィラグリン産生促進剤を有効成分として含有するアトピー性皮膚炎の予防・治療剤。
【請求項6】
請求項1または2に記載のフィラグリン産生促進剤を有効成分として含有する尋常性魚鱗癬の予防・治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−40113(P2013−40113A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176494(P2011−176494)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(308040638)株式会社バスクリン (12)
【Fターム(参考)】