説明

フィラメントの不織布包帯

弾性を有する不織布を製造するために、好ましくは(しかし本質的に、ではない)糸の形式でない酢酸セルロースや溶媒紡糸レーヨンのようなセルロース物質からなる紡糸フィラメント(1)が、スタッファーボックス(6)におけるように、オーバーフィード工程において波形をつけられ又はクリンプされ、安定化された3次元バットとなる。伸張した状態の、或る割合の、改質ポリエステルのような熱記憶物質のフィラメント(3)が含まれている。得られたバットはそれから制御された水流交絡及び制御された熱処理を受け、伸張したフィラメントの収縮により弾性を有する3次元不織布を生じる。超音波処理により収縮するよう活性化されるエラストマー記憶材料を熱記憶材料の代わりに使用しても良い。弾性は最終用途の要件に合うように調整することが可能であり、用途は医療及び衛生分野において見込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元エラストマー不織布の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
フィラメントから形成される全てのセルロース不織布の分野において、多くの先行技術が存在する。これは、非特許文献1においてよく説明されている。
【非特許文献1】1999年11月にサンディエゴのInsight Conference においてC.R. Woodingsにより発表された論文"Advanced Cellulosic Nonwovens"
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フィラメント結合レーヨン(filament bonded rayons)の生産に関し幅広い多様な工程があるにもかかわらず、柔らかく、3次元的で、水分許容性の(wet resilient)、制御された弾性を示す構造を生み出した者はいない。溶媒、例えばトリアセチンを使用して、結合した酢酸セルロース不織布を生産しようという試みは、タバコのフィルターに現在使用されている堅固な構造をもたらした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、好ましくは(本質的にではないが)酢酸セルロースや溶剤紡糸レーヨンのようなセルロース系材料の、糸の形式(yarn formats)でないものから構成された紡糸されたフィラメントを、制御された条件下で波形をつけ又はクリンプして(これらの言葉はここでは同義に使用される)安定化した3次元バット(batt)にする。或る割合で、伸張した状態の熱記憶材料のフィラメントが含まれる。これらのバットはそれから注意深く制御された水流交絡法及び制御された熱処理を受けて、伸張したフィラメントの収縮により弾性を有する3次元不織布を与える。これらの弾性は最終用途の要件に合うように調節することが可能である。主に医療及び衛生分野における用途が見込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
今、柔軟で、水分許容性で、弾性のあるフィラメント不織布は、酢酸セルロース又は溶剤紡糸レーヨンフィラメントと、熱収縮性フィラメントを使用し3段階の工程により生産することが可能であると判断されている。
【0006】
典型的な実施の態様として、酢酸セルロースを用いると、第1段階は多数の従来のようにして紡糸された酢酸セルロースフィラメントを集成し、かかる集成物全体にわたって、均一に収縮可能なエラストマーフィラメントが伸張した状態で挿入される。これらエラストマーフィラメントは制御された条件下で縮小し、任意の所定幅の弾性結合として残りの及び隣接するフラグメント全てを一緒に引き寄せる。フラグメントの集成物をそれからスタッファーボックスや強制通風・蒸気処置のようなオーバーフィード処理によりクリンプし圧縮して、波形をつけられたフィラメントの束ができる。この束は、「x」「y」「z」全ての軸で波型が現れている。かかる工程により生じた、これらのフィラメントの波型及び小程度のフィラメントの絡み合いは、第2段階に先立ち機械的取り扱い(及びもし望むならばパッケージング)に耐えるに充分な強度及び結着性を持つバットを与える。
【0007】
更に第2段階に先立っての機械的取り扱い又はパッケージングにおいて、斯かるバットの結着性と嵩を確保するために、例えば超音波又は点結合熱法による非常に簡単な軽度の結合技術或いは水流交絡法による専門的なタッキングを、この段階で行うことができる。
【0008】
第2段階は、バットを水流交絡及び乾燥して、断熱保護に加え、すばらしい制御された結着性、柔軟性、厚さ、濡れ強度及び糸くず無発生性を示す100%フィラメント不織構造にすることに関わる。第2段階終了時において、これらは不可欠の性質である。
【0009】
第3段階は、均一に若しくは適切なパターン又は配列で適用することでゴム状包帯(elastomeric bandage)タイプの最終生産物を与える最終加熱処理に関する。これは、存在する伸張したフィラメントの熱の縮小によるものである。適用される加熱のパターンに応じて、全体が均一な弾性を有する若しくは1又は両軸においてパターン状になった弾性を有する生産物ができる。さらに、「ネッキング」の欠落も達成することが可能である。例えば、伝統的な織編された伸縮包帯製品にみられるようなものによく似た不織材料ができあがるが、編み糸が存在しない。
【0010】
随意的には、完成した不織材料は適当な結合技術により、最終的な圧密化作業を施して引張強さを増進し又は他の物理的性質を強化することが出来る。好ましい圧密化処置としては、不織材料を圧縮することなく結合の点又は領域を与える隆起/エンボスゾーンを生成する熱又は超音波結合技術が挙げられる。
【0011】
斯かる3段階操作におけるプロセス変量は、得られる不織布を最終用途に最も適するべく制御された弾性、柔軟性、吸収度及び強度で設計できるようなものである。クリンプ工程をより大きな又はより小さな3次元性を生じるために変更することができ、また水流交絡処置の性質を、異なる物理的性質を与えるために調節しても良い。
【0012】
使用される材料における変量は、本発明に従って生産される生産物に特定の性質を与える為に使用される。水流交絡の第2段階に先立ち、2つのクリンプ工程を並列に置くことができる。1のクリンプ段階はもう一方の段階よりも粗いフィラメントに対し実施するように利用することが可能であり、こうして他方よりもより大きな表面抵抗を示す側を有するフィラメント不織材を生じる。他のクリンプ段階の組み合わせ(工程は3段階に限定されない)は、例えば、水流交絡工程に入る最終的なバットにおいて細いフィラメントがより粗いフィラメントにより囲まれている「サンドイッチ」型の素材を生じることが可能である。
【0013】
本発明には、固有の熱メモリーによる熱誘発収縮を起こして弾性を生じる改質ポリエステルフィラメントが好ましい。斯かるフィラメントはTreviraやEMS-Gryleneの企業から市販されている。当業者に公知の他のポリマーシステムも使用可能である。さらに、収縮は専門の超音波技術によるような、他の技術から生じさせることが可能である。
【0014】
斯かる3段階工程において、他のタイプのセルロースを単独又は組み合わせで使用して100%バインダーフリーの3次元的なフィラメント不織材を生成することが可能である。例えば、溶剤紡糸セルロース(又は「リヨセル」)は単一層として又は酢酸セルロースとの組み合わせで利用することができ、又は酢酸セルロースの完全な代替品として使用することができる。溶媒紡糸レーヨンのクリンプは、これらのフィラメントが酢酸セルロースよりもクリンプし難いのでスタッファーボックス技術が使用されるならば、熱及び湿気により容易になる。
【0015】
クリンプされる層として非加熱収縮可能なポリオレフィン、ポリアミド又はポリエステルのような合成フィラメントを組み込むことを含む、さらなる変更は、当業者にとって自明であろう。
【0016】
完成した不織材料を完成した様々なタイプの包帯製品に変換することが可能である。これら製品はそれ自身、さらなる加工や追加無しに、完成品の包帯を構成する。
【0017】
医療及び技術的に関係する衛生製品において本発明で説明したように作られた不織材にとってさらなる材料やさらなる用途が可能である。材料に関しては、酢酸セルロースや他のセルロースへの他のフィラメント形成ポリマーが考えられる。これらとしては、限定されないが、グリコール酸(PGA)、乳酸(PLA)、酪酸(PHB)、吉草酸(PHV)及びカプロラクトン(PCL)のようなモノマーの工業的重合に主に基づく人工生分解性脂肪族ポリエステルが挙げられる。これらの材料は本発明において、酢酸セルロースや他のセルロース材料の代わり又はそれと共に、説明したように(フィラメント状の)弾性ポリマーとの組み合わせで使用しても良い。これらの材料及びそのコポリマーは、植込剤、吸収性縫合糸、制御された剥離性包装並びに分解性フィルム及びモールディングにおいて用途を既に見出されており、同じ製品/最終用途が、本発明の製造工程を使用して供給可能である。
【0018】
アルギニン酸系フィラメントもまた、他のフィラメント成分に比例して、又は専門タイプの創傷治癒包帯において最適の創傷管理を与えるための個別のフィラメント層として、本発明に組み込むことが可能である。
【0019】
図1において、紡糸により生成されたような酢酸セルロースの所定幅のマルチフィラメントトウ(multifilament tow)(1)を圧縮されたベール(2)から引き出し、一方弾性記憶ポリエステル材料の伸張しておいたフィラメントを同様に別個のベール(3)から引き出す。共に、これらフィラメントは延伸ロール(4)(5)の間で縦横に伸張され、複数のフィラメントを有する強化されたオープンシートを形成する。それからこのシートは図示したようなスタッファーボックスであっても良い圧密化部(6)に、そこから出るときよりもより大きな線速度で入る。不織材の幅は、圧密化部(6)に適用される設定により管理する。得られたバット(7)はクリンプされ互いに絡み合った、丁重な扱いに耐える充分な結合力を有するフィラメントからなる。この場合、それからバット(7)は事前湿潤(8)とそれに続く水流交絡(9)の行われる、工程の第2段階を通る。最終段階として、通風乾燥(10)、専門の加熱システム(12)を使用してエラストマーフィラメントを収縮するパターン化加熱、及び巻き取り(13)が行われる。
【0020】
図2は、工程の圧密化段階の別のバージョンであり、それによって、2つの圧密化部(14)(15)が2つの異なる厚さの酢酸セルロースフィラメントと伸張しておいたポリエステルフィラメントを扱うために使用され、これらフィラメントはその後水流交絡によるさらなる処理のためにバットにおける層として結合される。
【0021】
図3は完成した不織布の実施の一態様におけるフィラメントの重積及び配置を概略的に示し、素材の3次元性及び弾性の理由を説明している。母材フィラメント(16)及び伸張の弛緩したエラストマーフィラメント(17)のループが不織材のZ軸方向に通っているのが見られる。
【0022】
図4は、線図で、本発明にかかる完成した包帯の一例の上方からの全体像を示し、ここで、波形伸張可能領域(18)を図示している。
【0023】
素材に付加的な取扱結合度及び強度を付与する為の随意的な追加の結合がその後に続いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の好ましい実施の態様を生産するのに適したプラントの全体図である。
【図2】本発明のさらなる実施の態様を生産する為のクリンプ工程の全体図である。
【図3】本発明において説明されたような複合構造の線図である。
【図4】説明した工程により完成した包帯を示す図である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する不織布の製造方法であって、
実質的に平行に配列された非エラストマー材料の紡糸フィラメントに、或る割合のエラストマー記憶材料の収縮可能なフィラメントを含める工程と、
得られるフィラメント複合体をオーバーフィード工程によって波形をつけて圧密化し、バットを形成する工程と、
前記バットに水流交絡工程とそれに続く制御された熱又は制御された超音波処理を受けさせ、エラストマー記憶材料のフィラメントを収縮させる工程と、
を有する方法。
【請求項2】
前記圧密化されたバットの形成の後に、超音波若しくは熱点結合技術によって又は低水圧での水流交絡によってその中でフィラメントを軽度に結合するさらなる中間工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バット中のエラストマーフィラメントが収縮した後、バットを熱又は超音波結合技術によってエンボス加工するさらなる工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
水流交絡工程の前に、2以上のバットを層として組み合わせる又はバットを異なる材料の層と組み合わせる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記非エラストマーフィラメントは主にセルロース系である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法に従って製造された布。
【請求項6】
前記非エラストマーフィラメントは酢酸セルロース又は溶剤紡糸レーヨン又はこれらの材料の組み合わせを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法に従って製造された布。
【請求項7】
前記非エラストマーフィラメントは適当なポリエステル、ポリオレフィン又はポリアミドからなる又はこれを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法に従って製造された布。
【請求項8】
前記エラストマーフィラメントは改質ポリエステルフィラメントである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法に従って製造された布。
【請求項9】
前記非エラストマーフィラメントはアルギニン酸系フィラメントを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法に従って製造された布。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−518427(P2006−518427A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502219(P2006−502219)
【出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000382
【国際公開番号】WO2004/072347
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(505305961)フライスナー ゲーエムベーハー (2)
【出願人】(306000533)
【出願人】(306000522)
【Fターム(参考)】