説明

フィラメントをコーティングする方法

【課題】コーティング組成物を、フィラメントに塗布するための方法であって、この方法により、フィラメントがドラムの外周の周りに巻かれる方法を提供すること。
【解決手段】ドラムの外周の周りに巻かれたフィラメントを提供する工程;および、第一コーティング組成物を含む浸漬タンクへ該ドラムの外周の少なくとも一部分を浸し、それにより、該フィラメントの一部分をコーティングする工程を包含する、フィラメントをコーティングする方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2008年9月25日に出願された米国仮特許出願第61/099,957号に対する優先権、およびその利益を主張する。この仮特許出願の全ての内容が、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、フィラメントをコーティングする方法に関しており、より具体的には、縫合糸をコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
フィラメント(例えば、縫合糸)をコーティングする技術は公知である。コーティングは、強度、もしくは、縛りやすくする特性(knot tie−down characteristics)を改善すること、または、縫合糸に色を加えることによって、縫合糸に利点を与え得る。また、コーティングは、薬物キャリアーとして、組織に対して治療に役立つ利点を提供するために配合され得る。
【0004】
一般的に、コーティングは、浸し塗り、はけ塗り(bushing)、塗りつけ(wiping)、吹付け塗り、滴下コーティング(drip coating)、または、コーティングヘッド(coating head)もしくは充填ヘッド(filling head)を使用することにより、塗布される。これらのコーティングプロセスは、縫合糸ラインをコーティング組成物の中へ入れる、または、コーティング組成物の中を通す工程を包含する。従来の縫合糸コーティング技術において、縫合糸は、コーティングの中に縫合糸ラインを通す目的で、巻いていない状態でなければならない。フィラメントコーティングの分野において、改善が所望される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)フィラメントをコーティングする方法であって、該方法は:
ドラムの外周の周りに巻かれたフィラメントを提供する工程;および、
第一コーティング組成物を含む浸漬タンクへ該ドラムの外周の少なくとも一部分を浸し、それにより、該フィラメントの一部分をコーティングする工程、
を包含する、方法。
【0006】
(項目2)前記フィラメントが、前記ドラムの外周により規定される長さを有する、上記項目に記載の方法。
【0007】
(項目3)前記フィラメントが、約0.5:1〜約5000:1の範囲の、長さ対外周の比を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0008】
(項目4)前記フィラメントが、約1:1〜約3000:1の範囲の、長さ対外周の比を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0009】
(項目5)前記フィラメントのコーティングされた部分が、該フィラメントの長さの約25%〜約75%に相当する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0010】
(項目6)前記フィラメントのコーティングされた部分が、該フィラメントの長さの約50%に相当する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0011】
(項目7)前記フィラメントがモノフィラメント縫合糸である、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0012】
(項目8)前記フィラメントがマルチフィラメント縫合糸である、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0013】
(項目9)前記第一コーティング組成物が、前記フィラメントの長手方向部分に沿った色彩模様を提供する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0014】
(項目10)前記第一コーティング組成物が、染料、顔料、着色料、接着剤、生物活性薬物、潤滑剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0015】
(項目11)前記ドラムが、三角形型、円柱型、角錐型、正方形型、長方形型、八角形型、六角形型、五角形型、および多角形型からなる群から選択される幾何学的形状を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0016】
(項目12)前記ドラムが円柱型である、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0017】
(項目13)前記浸漬タンクが、前記ドラムの中心点に少なくとも等しい高さの前記コーティング組成物を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0018】
(項目14)第二コーティング組成物を前記フィラメントに塗布する工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0019】
(項目15)前記第二コーティング組成物が、染料、顔料、着色料、接着剤、生物活性薬剤、潤滑剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0020】
(項目16)前記第二コーティング組成物が、前記フィラメントのコーティングされていない部分に塗布される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0021】
(項目17)前記フィラメントを前記ドラムから外す工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0022】
(項目18)2色フィラメントを形成する方法であって、該方法が:
ドラムの外周の周りに巻かれたフィラメントを提供する工程;および、
液体着色料を含む浸漬タンクへ該ドラムの外周の少なくとも一部分を浸し、それにより、該フィラメントの一部分上に色彩模様を作り出す工程
を包含する、方法。
【0023】
(項目19)前記色彩模様が、前記フィラメントの長手方向部分に塗布される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0024】
(項目20)フィラメントをコーティングするためのシステムであって:
ドラムの外側部分の周りに巻かれたフィラメント;および
コーティング組成物を含む浸漬タンク
を含み、ここで、該浸漬タンクは、該ドラムの少なくとも中心点まで該浸漬タンク中に該ドラムを入れるように設計され、それにより、該フィラメントの約50%を該コーティング組成物でコーティングする、システム。
【0025】
(摘要)
コーティング組成物を、フィラメントに塗布するための方法であって、この方法により、フィラメントがドラムの外周の周りに巻かれる。フィラメントの巻かれたドラムは、浸漬タンク内に置かれ、この浸漬タンクはコーティング組成物を含み、フィラメントの少なくとも一部分がそれによりコーティングされる。
【0026】
(要旨)
フィラメントをコーティングする方法が本明細書中に開示され、この方法は、ドラムの外周の周りに巻かれたフィラメントを提供する工程;および、上記ドラムの外周の少なくとも一部を、第一コーティング組成物を含む浸漬タンク中に浸し、それによりフィラメントの一部をコーティングする工程、を包含する。上記フィラメントは、ドラムの外周により規定される長さを有し得る。さらに、上記フィラメントは、約0.5:1〜約5000:1の範囲で、長さ対外周の比を有し得、いくつかの実施形態においては、約1:1〜約3000:1の範囲で長さ対外周の比を有し得る。上記フィラメントは、モノフィラメントまたはマルチフィラメントの縫合糸を含み得る。
【0027】
フィラメントのコーティングされる部分は、フィラメントの長さの約25%〜約75%に相当し得、いくつかの実施形態においては、フィラメントの長さの約50%に相当し得る。第一コーティング組成物は、フィラメントの長手方向部分に沿って、色彩模様を提供し得る。いくつかの実施形態において、第一コーティング組成物は、染料、顔料、着色料、接着剤、生物活性薬剤、潤滑剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。さらに、上記方法は、第二コーティング組成物をフィラメントへ塗布する工程を包含し得る。第二コーティング組成物は、染料、顔料、着色料、接着剤、生物活性薬剤、潤滑剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。さらに、第二コーティング組成物は、フィラメントのコーティングされていない部分に塗布され得る。
【0028】
さらに、フィラメントをコーティングする方法は、ドラム周りに巻かれるフィラメントを含む。本開示のドラムは、三角形型、円柱型、角錐型、正方形型、長方形型、八角形型、六角形型、五角形型、および多角形型からなる群から選択される幾何学的形状を有し得る。特定の好ましい実施形態において、ドラムは円柱型である。
【0029】
いくつかの実施形態において、浸漬タンクは、少なくともドラムの中心点に等しい高さ(level)のコーティング組成物を含む。
【0030】
開示される方法はまた、フィラメントをドラムから外す工程を包含し得る。
【0031】
2色フィラメントを形成する方法もまた開示され、この方法は、ドラムの外周の周りに巻かれたフィラメントを提供する工程;および、少なくともドラムの外周部分を、液体着色料を含む浸漬タンクの中に浸し、それによりフィラメントの一部分に色彩模様を作り出す工程、を包含する。色彩模様は、フィラメントの長手方向部分に塗布され得る。
【0032】
フィラメントをコーティングするシステムもまた、本明細書中で開示され、このシステムはドラムの外側部分の周りに巻かれたフィラメント;および、コーティング組成物を含む浸漬タンクを含み、ここで、上記浸漬タンクは、少なくとも上記ドラムの中心点までドラムを浸漬タンクの中に入れるために設計され、それによってフィラメントの約50%をコーティング組成物でコーティングする。
【発明の効果】
【0033】
ドラムの外周の周りに巻かれたフィラメントを提供する工程;および、第一コーティング組成物を含む浸漬タンクへ該ドラムの外周の少なくとも一部分を浸し、それにより、該フィラメントの一部分をコーティングする工程を包含する、フィラメントをコーティングする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本明細書中に記載される例示的実施形態は、添付される図面に対する言及がなされる、以下の記載からより容易に明らかになる。添付される図面において、それぞれ以下の通りである。
【図1A】図1Aは、本開示に従う浸漬システムの斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1の浸漬システムに含まれるドラムの斜視図である。
【図2A】図2Aは、本開示の浸漬方法に従うドラムの第二実施形態の平面図である。
【図2B】図2Bは、本開示の浸漬方法に従うドラムの代替の実施形態の平面図である。
【図3A】図3Aは、本開示の浸漬方法に従うドラムのさらに別の実施形態の斜視図である。
【図3B】図3Bは、図3Aのドラムに従って作られるコーティングされた縫合糸を示す。
【図4】図4は、本開示の浸漬方法に従うマスクをさらに含むドラムの別の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(実施形態の詳細な説明)
本開示は、フィラメントをコーティングする方法に関する。少なくとも1本のフィラメントがドラムの周りに巻かれ、上記ドラムが、続いて、コーティング組成物で満たされた浸漬タンク中に浸される。フィラメントをコーティングする方法は、医療用デバイス(限定はされないが、縫合糸、テープ、およびメッシュが含まれる)をコーティングするために使用され得る。用語「フィラメント」は、本明細書中に記載される場合、細長い本体部分を有する連続的ストランド(continuous strand)を意味する。いくつかの実施形態において、数本のフィラメントが、1つに編まれ得、織られ得、融合され得、または、組まれ(braid)得、そして、マルチフィラメントまたは「ファイバー」を作り出し得る。
【0036】
図1は、ドラム6の周りに巻かれたフィラメント4をコーティングするための浸漬システム2を例示する。浸漬システム2は、コーティング組成物10で満たされた浸漬タンク8を含む。ドラム6の周りに巻かれたフィラメント4を沈めること、または、接触させることが可能な、コーティング組成物10(コーティング溶液)の容量を保持するのに適合した任意のリザーバまたはタンクが、利用され得る。タンク8は、様々な形状(例えば、長方形型、または円柱型)を有し得、または、タンク8は、ドラム6の形状に合わせて(compliment)形作られ得る。タンク8は、コーティング組成物10を含むことが可能である、または、一般的にコーティング組成物10とは非反応性である、任意の適切な材料から作られ得る。
【0037】
ドラム6は、ドラム6の周りに巻かれる、所望される長さのフィラメントを有し得る。いくつかの実施形態において、フィラメント4は、ドラム6の外周12によって規定される長さを有する。外周12はドラムの一端を例示しており、外周は円柱型ドラム6の端から端まで一定であることが理解される。用語「長さ対外周の比」は、本明細書中で使用され、フィラメント4の長さ対ドラム6の外周12の比を規定する。いくつかの実施形態において、フィラメント4は、約0.5:1〜約5000:1の範囲で長さ対外周の比を有し、より具体的には、約1:1〜約3000:1の範囲で長さ対外周の比を有する。例えば、長さ対外周の比が1:1である場合、フィラメント4の長さは、ドラム6の外周12の長さと同じ長さである。円柱型ドラムについて、外周の長さは、円周の長さに等しい。別の例において、2:1の長さ対外周の比を有する円柱型ドラム6は、一本のフィラメントが円柱型ドラムの周りに2回巻かれる。フィラメントの長さは、ドラムの円周(外周)の長さの2倍である。
【0038】
フィラメントは、コーティング組成物に接触する前にドラムの周りに巻かれる。当業者は、ドラムの周りにフィラメントを巻く数個の方法を想像し得る。図1Aおよび図1Bは、ドラム6の周りに巻かれた数本のフィラメント4を伴うドラム6を例示する。ドラム6は、幾何学的に円柱型であり、滑らかな円周表面を有する。いくつかの実施形態において、上記ドラムは、ステンレス鋼、または、シリコーンゴムの膜で覆われたステンレス鋼から作られ得る。他の実施形態において、上記ドラムは、鋼製端板を伴う高密度ポリエチレンから構成される。高密度ポリエチレンは、特定の薬剤でフィラメントをコーティングする場合、好まれ得る。例えば、シアノアクリレートは高密度ポリエチレンに付着せず、それにより、過剰なコーティング(シアノアクリレート)が、ドラムから流れ落ち、浸漬タンクへ戻ることが可能となる。ドラム6は、システム2において利用されるフィラメント4およびコーティング組成物10と融和性のある、任意の適した材料から構築され得ることは、注目されるべきである。ドラム6は、中身の詰まった、または中空の構造であり得る。けれども、他の実施形態において、ドラム30は、穴が開けられ得る(図2A)。打ち抜き穴30aによって、コーティングが、ドラムの中心に対して最も近くにあるフィラメントをコーティングすることが可能となる。打ち抜き穴30aは、任意のサイズおよび形状であり得、ドラム30の長手部分または任意の部分に沿って広がり得る。あるいは、図2Bは、ドラム40の外周に沿った隆起またはうね42を含み、コーティングプロセス中にフィラメント44を別々に保つ、ドラム40を例示する。
【0039】
フィラメント4がドラム6の周りに巻かれると、ドラム6はコーティング溶液10と接触する。このドラム6(フィラメントを含む)は、第一コーティング組成物10を含む浸漬タンク8の中に置かれ、ドラムの外周の少なくとも一部分が、上記コーティング組成物中に浸され、それによって、フィラメントの一部をコーティングする。いくつかの実施形態において、ドラム6は、当業者の理解し得る範囲内の手動の技術または様々な機械的デバイスを用いて、浸漬タンク8の中に置かれ得る。さらに、浸漬タンク8は、いくつかの実施形態においては、ドラム6の中心点14に少なくとも等しい高さの、コーティング組成物10を含む。ドラム6の中心点14は、ドラム6の中心線A−Aに沿った、最も中央の点14に取られる点である。示されるように、長さ対外周の比は、約1:1であり、コーティング組成物は、浸漬タンク8中で高さXである。フィラメントが巻かれたドラム6は、コーティング組成物を含む浸漬タンク8中に、特定の時間置かれる。いくつかの実施形態において、ドラム6は、フィラメントの材料およびコーティングの組成上の性質(compositional make−up)に依存して、コーティング組成物10と、約30秒〜約2時間、またはそれより長く接触し得る。必要に応じて、フィラメント4の第一の部分がコーティングされると、ドラム6は、回転し、(必要に応じて、異なるコーティングを含む)浸漬タンク8の中へ2回目として下ろされ、フィラメント4の第二の部分をコーティングする。コーティングプロセスは、所望されるコーティングレベル、およびコーティング材料がフィラメント4に塗布されるまで、繰り返され得る。
【0040】
図1に例示されるように、フィラメント4は、円柱型ドラム6の周りに巻かれる。ドラムは、多角形の形状を含む他の幾何学的形状(例えば、三角形型、角錐型、長方形型、六角形型、八角形型、および五角形型)を有し得る。様々な形状を有するドラムの周りにフィラメントを巻く工程は、1つより多くコーティングが塗布される場合、または、コーティングが様々な長さに塗布される場合に、有用であり得る。例えば、角錐型ドラム(例えば、図4)が縫合糸をコーティングするために使用される場合、縫合糸の3つの異なる部分が、3つの異なるコーティングでコーティングされ得る。さらに具体的には、縫合糸の第一の部分はシアノアクリレートでコーティングされ得、縫合糸の第一の部分へ剛性を提供し得る(例えば、針へつなげるため)。第二コーティングは、縫合糸の中央部分に塗布され得、滑らかさを増加させ得、結び目を滑りやすくし得る(knot rundown)。第三コーティングは、縫合糸の第三の部分に塗布され得、好ましい取扱適性が得られ得る。別の例の場合、長方形型ドラムが(図3Aに示されるように)使用され得、図3Bに示される色彩模様の付いたフィラメントが得られ得る。長方形型ドラム100は、そのドラムの周りに巻かれた数本のフィラメント120を含み、ここで、長さ対外周の比は約1:1である。ドラム100は、浸漬タンクに浸され得る4つの面(100a、100b、100c、100d)を含む。フィラメントの部分120aおよび部分120cは、面100aおよび面100cと接触する。ドラムの面100aおよび面100cは、着色コーティング組成物と接触し(ドラムはコーティング塗布の間に回転し得る)、フィラメント120の部分120aおよび部分120cを着色する。フィラメント120がドラム100から外されるとき、フィラメント120の部分120aおよび部分120cは、一様の色彩模様(図4B)を含む。
【0041】
さらに、フィラメントは、図1に例示されるような単層のフィラメントを含めて、様々なパターンで、ドラムの周りに巻かれ得る。フィラメント4はまた、横方向パターン(示されていない)または逆に、ドラムの周りに巻かれ得る。フィラメントは、フィラメントがそれぞれの上部に積み重ねられる(示されていない)ように、ドラムの周りに巻かれ得る。フィラメントは、所望される表面領域への暴露、または、コーティング組成物に接触させる工程に対して所望されるフィラメントの長さおよび/もしくはコーティング時間に応じて、任意の配置でドラムの周りに巻かれ得る。
【0042】
様々なコーティングパターンがフィラメントの表面に適用され得る。本明細書中で規定されるコーティングパターンは、コーティングがフィラメント上の特定の領域に存在するような任意のコーティングパターン、一様、チェック、ストライプ、ランダム(random)、または他のものを含み得る。コーティングは、フィラメントの長手方向部分に塗布され得、コーティングパターンを作り出し得る。また、パターンのあるコーティングは、図4に示されるように、コーティング組成物をフィラメントの覆い隠していない部分に塗布することが可能となるように、フィラメントの特定の部分を覆い隠すまたは覆うことによって、作り出され得る。フィラメント220の一部分を覆うマスク200が示され、このフィラメント220は、ドラム210の周りに巻かれる。マスク200は、コーティング組成物で満たされた浸漬タンク中に置かれるとき、コーティング組成物をフィラメント220と接触可能にし、覆い隠されていないまたは晒されているフィラメント部分をコーティング可能にする、打ち抜き穴または穴200aを含む。マスクは、フィラメント表面に沿って様々なコーティングパターン(一様なパターンを含む)を可能にし得ること、および、マスクパターンは本明細書に例示されるものに限定されないことが理解されるべきである。一般に、一本のフィラメントのコーティングされる部分は、フィラメントの長さの約25%〜約75%に相当する。
【0043】
コーティングがフィラメントに塗布されると、フィラメントが巻かれたドラムは、コ−ティング組成物から離される。ドラムは、浸漬タンクから外され得るか、または、逆にコーティング組成物が浸漬タンクから排出され得るかのいずれかである。必要に応じて、第一コーティング組成物が浸漬タンクから排出されると、第二コーティング組成物が、第二コーティングのために、浸漬タンクを満たし得、ドラムは、第二コーティング組成物の中へ降ろされ得る。いくつかの実施形態において、ドラムは、コーティングの塗布の間に回転され得る一方で、他の実施形態においては、ドラムは、コーティングの間に回転され得ない。フィラメントが乾燥すると、それらは切断され、ドラムから外される。フィラメントが様々な長さに切断され得ることは注目されるべきである。当業者は、フィラメントをドラムから外す様々な方法(例えば、熱エネルギーまたはレーザー)を想像し得る。
【0044】
コーティング組成物は、任意のフィラメント(例えば、縫合糸、ヤーン、テープ、またはメッシュ)に塗布され得る。コーティング組成物は、溶液、分散液、乳濁液、または任意の他の均一もしく不均一な混合物、の形態であり得る。
【0045】
1つの実施形態において、コーティング組成物は、着色添加物、染料、または顔料を含み得る。フィラメントは、着色添加物、例えば、食品医薬品局(FDA)により、様々な非生体吸収性縫合糸および生体吸収性縫合糸に対して承認されたもの(限定はされないが、クロム−コバルト−アルミニウム酸化物、クエン酸アンモニウム第二鉄、ピロガロール、ロッグウッド抽出物、D&C Blue No.9、D&C Green No.5、[フタロシアニナート(2−)銅]、FD&C Blue No.2、D&C Blue No.6、D&C Green No.6、D&C Red No.17、およびD&C Violet No.2を含む)を含むコーティング組成物でコーティングされ得る。
【0046】
また、シアノアクリレートは、コーティング組成物として使用され得る。適したシアノアクリレートとしては、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレート、イソブチルシアノアクリレート、およびメトキシプロピルシアノアクリレート、ならびにこれらの組み合わせなどから誘導される物質が挙げられる。
【0047】
よって、生物活性薬剤(例えば、抗菌薬、抗ウィルス薬、抗真菌薬など)は、コーティング組成物中に組み込まれ得る。本明細書中で使用される場合、抗菌剤は、それ自体により、または、体(免疫系)を助けることを通して、体が、(疾患を引き起こす)病原であり得る微生物を抹殺する、または微生物に抵抗するのを助ける薬剤により規定される。用語「抗菌剤」は、抗生物質、集団感知遮断薬、界面活性剤、金属イオン、抗菌タンパク質および抗菌ペプチド、抗菌多糖、防腐剤、消毒薬、抗ウィルス薬、抗真菌薬、集団感知遮断薬、ならびに、これらの組み合わせを含む。
【0048】
使用され得る他の適した生物活性薬剤は、放射線不透過性マーカー、保存料、タンパク質製剤およびペプチド製剤、タンパク質療法剤、多糖、例えば、ヒアルロン酸、レクチン、脂質、プロバイオティクス、脈管形成薬(angiogenic agent)、抗血栓薬、抗凝血薬(anti−clotting agent)、凝血薬、鎮痛薬、麻酔薬、創傷修復薬(wound repair agent)、化学療法薬、生物学的製剤(biologics)、抗炎症薬、増殖抑制薬、診断薬、解熱薬、消炎および鎮痛薬、血管拡張薬、抗高血圧および抗不整脈薬、低血圧薬、鎮咳薬、抗腫瘍薬、局所麻酔薬、ホルモン製剤、ぜん息治療および抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、抗凝固薬、鎮痙薬、脳循環および代謝改善薬、抗うつ薬、抗不安薬、ビタミンD製剤、低血糖薬、抗潰瘍薬、睡眠薬、抗生物質、抗真菌薬、潤滑剤、鎮静薬、気管支拡張薬、抗ウィルス薬、排尿障害薬(dysuric agent)、臭素化フラノンまたはハロゲン化フラノンなどが挙げられる。実施形態において、ポリマー薬物、すなわち、例えば、ポリマー抗生物質、ポリマー防腐剤、ポリマー化学療法薬、ポリマー増殖抑制薬、ポリマー防腐剤、ポリマー抗ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)などの化合物のポリマー形態、およびこれらの組み合わせが利用され得る。
【0049】
特定の実施形態において、本開示のコーティング組成物は、適した医薬用薬物(例えば、ウィルス、および細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、アナログ、ムテイン、およびその活性フラグメント、例えば、免疫グロブリン、(モノクローナルおよびポリクローナル)抗体、サイトカイン(例えば、リンフォカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(β−IFN、α−IFN、およびγ−IFN)、エリトロポイエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍薬および腫瘍抑制剤、血液タンパク質、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(腫瘍性抗原、細菌性抗原、ウィルス性抗原)、ソマトスタチン、抗原、血液凝固因子、成長因子、タンパク質インヒビター、タンパク質アンタゴニスト、およびタンパク質アゴニスト、核酸(例えば、アンチセンス分子、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、およびリボザイム)、ならびにこれらの組み合わせ)を含み得る。
【0050】
コーティング組成物は、混合する工程、撹拌する工程、相分離などを含めて、当業者の理解し得る範囲内で作られ得る。さらに、コーティング組成物はまた、極性および非極性溶媒を含み得る。適した溶媒は、当業者の理解し得る範囲内である。
【0051】
本開示のフィラメントは、非吸収性であっても吸収性であってもよい。フィラメントおよびマルチフィラメントの組み合わせは、異なる物質(例えば、天然および合成、または生体吸収性および非生体吸収性物質)から作られ得ることは理解されるべきである。
【0052】
フィラメントは、ポリマー、例えば、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、バレロラクトン、カルボネート(例えば、トリメチレンカルボネート、テトラメチレンカルボネートなど)、ジオキサノン(例えば、1,4−ジオキサノン)、δ−バレロラクトン、1−ジオキセパノン(例えば、1,4−ジオキセパン−2−オン、および1,5−ジオキセパン−2−オン)、エチレングリコール、エチレンオキシド、エステルアミド、γ−ヒドロキシバレレート(valerate)、β−ヒドロキシプロピオネート、α−ヒドロキシ酸、ヒドロキシブテレート(buterate)、オルトエステル、ヒドロキシアルカノエート、チロシンカルボネート、ポリイミドカルボネート、ポリイミノカルボネート(例えば、ポリ(ビスフェノールA−イミノカルボネート)およびポリ(ヒドロキノン−イミノカルボネート))、ならびに、ポリマー薬物(例えば、ポリジフルニソル(polydiflunisol)、ポリアスピリン、およびタンパク質治療薬)、ならびにコポリマー、ならびにこれらの組み合わせから作られるものを含む、合成吸収性物質を含み得る。適した天然吸収性ポリマーとしては、コラーゲン、セルロース、および腸線が挙げられる。実施形態において、ラクチドおよびグリコリドのコポリマーを含む、ポリエステルを基とするグリコリドおよびラクチドが使用され得る。
【0053】
フィラメントを形成するために使用され得る、適した非吸収性物質としては、非吸収性天然物質(例えば、綿、絹、およびゴム)が挙げられる。適した非吸収性合成物質としては、例えば、ナイロン、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレン)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリアミド、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアリールエーテルケトン、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、アクリル、ポリアミド、アラミド、フルロポリマー(fluropolymer)、ポリブテステル(polybutester)、シリコーン、および、ポリマー混合物、これらのコポリマー、および分解性ポリマーとの組み合わせ、といった物質から誘導されるモノマーおよびポリマーが挙げられる。実施形態において、ポリプロピレンは、縫合糸を形成するために利用され得る。ポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン、または、アイソタクチックポリプロピレンとシンジオタクチックポリプロピレンもしくはアタクチックポリプロピレンとの混合物であり得る。さらに、非吸収性合成および天然のポリマーおよびモノマーは、互いに組み合わされ得、また、様々な吸収性ポリマーおよびモノマーと組み合わされ得、ファイバーを作り出す。
【0054】
いくつかの実施形態において、フィラメントは形状記憶ポリマーを含み得る。形状記憶ポリマーの硬質セグメントおよび軟質セグメントを調製するために使用される適したポリマーとしては、ポリカプロラクトン、ジオキサノン、ラクチド、グリコリド、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、ポリウレタン/ウレア、ポリエーテルエステル、およびウレタン/ブタジエンコポリマー、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。これらの適した生体吸収性物質および非生体吸収性物質から、記載されるフィラメントを作るための方法(例えば、押し出しおよび成形)は、当業者の理解し得る範囲内である。
【0055】
フィラメントが組み合わされ得、マルチフィラメント医療用デバイスを作り出し得ることは注目されるべきである。いくつかの実施形態において、フィラメントは、コーティングの塗布、またはコーティング工程の前に組み合わされ得、別の実施形態においては、フィラメントは、コーティングの塗布後に組み合わされ得る。数本のフィラメントは、本開示中で使用するためのいずれの様式においても組み合わされ得る。多数のフィラメントが、当業者の理解し得る範囲内の任意の技術(例えば、混合する(commingle)、撚り合わせる、組む、織る、絡ませる(entangle)、および編む技術)を用いて組み合わされ得る。例えば、多数のフィラメントが、単に組み合わされ得、ヤーンを形成し得る。別の例として、多数のフィラメントが組まれ得る。さらに別の例として、多数のフィラメントが、組み合わされ得、ヤーンを形成し得、次いで、それらのマルチフィラメントヤーンが組まれ得る。この開示を読む当業者は、フィラメントが組み合わされ得る他の方法を想像する。フィラメントはまた、組み合わされ得、不織マルチフィラメントファイバーを産生し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントをコーティングする方法であって、該方法は:
ドラムの外周の周りに巻かれたフィラメントを提供する工程;および、
第一コーティング組成物を含む浸漬タンクへ該ドラムの外周の少なくとも一部分を浸し、それにより、該フィラメントの一部分をコーティングする工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記フィラメントが、前記ドラムの外周により規定される長さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィラメントが、約0.5:1〜約5000:1の範囲の、長さ対外周の比を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィラメントが、約1:1〜約3000:1の範囲の、長さ対外周の比を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記フィラメントのコーティングされた部分が、該フィラメントの長さの約25%〜約75%に相当する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フィラメントのコーティングされた部分が、該フィラメントの長さの約50%に相当する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フィラメントがモノフィラメント縫合糸である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フィラメントがマルチフィラメント縫合糸である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第一コーティング組成物が、前記フィラメントの長手方向部分に沿った色彩模様を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一コーティング組成物が、染料、顔料、着色料、接着剤、生物活性薬物、潤滑剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ドラムが、三角形型、円柱型、角錐型、正方形型、長方形型、八角形型、六角形型、五角形型、および多角形型からなる群から選択される幾何学的形状を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ドラムが円柱型である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記浸漬タンクが、前記ドラムの中心点に少なくとも等しい高さの前記コーティング組成物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第二コーティング組成物を前記フィラメントに塗布する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第二コーティング組成物が、染料、顔料、着色料、接着剤、生物活性薬剤、潤滑剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第二コーティング組成物が、前記フィラメントのコーティングされていない部分に塗布される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記フィラメントを前記ドラムから外す工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
2色フィラメントを形成する方法であって、該方法が:
ドラムの外周の周りに巻かれたフィラメントを提供する工程;および、
液体着色料を含む浸漬タンクへ該ドラムの外周の少なくとも一部分を浸し、それにより、該フィラメントの一部分上に色彩模様を作り出す工程
を包含する、方法。
【請求項19】
前記色彩模様が、前記フィラメントの長手方向部分に塗布される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
フィラメントをコーティングするためのシステムであって:
ドラムの外側部分の周りに巻かれたフィラメント;および
コーティング組成物を含む浸漬タンク
を含み、ここで、該浸漬タンクは、該ドラムの少なくとも中心点まで該浸漬タンク中に該ドラムを入れるように設計され、それにより、該フィラメントの約50%を該コーティング組成物でコーティングする、システム。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−75922(P2010−75922A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203220(P2009−203220)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】