説明

フィラメントランプ

【課題】複数のフィラメントが発光管の管軸方向に順次に並んで配設されたフィラメントランプにおける封止部の小型化を図ったフィラメントランプを提供すること。
【解決手段】 封止部2a、2bにおける複数の金属箔24a、24b、25a、25b、26a、26bのうちの一部の金属箔26a、26bを、他の金属箔24a、24b、25a、25bとは管軸方向にずらせて配置すると共に、管軸に対して直交する方向にもずらせて配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフィラメントランプに関するものであり、特に、被処理体を加熱するために用いられるフィラメントランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程における、例えば成膜、酸化、不純物拡散、窒化、膜安定化、シリサイド化、結晶化、イオン注入活性化などの様々なプロセスを行う急速熱処理(以下、「RTP:Rapid Thermal Processing」ともいう。)に用いられる加熱処理装置としては、例えば光透過性材料からなる発光管の内部にフィラメントが配設されてなる白熱ランプなどの光源からの光照射によって、被処理体に接触することなくこれを加熱することのできる光照射式の加熱処理装置が広く利用されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
このような光照射式の加熱処理装置を用いて例えば半導体ウエハのRTPを行う場合においては、半導体ウエハの全面への放射照度が均一となるように光照射を行なうが、半導体ウエハの周辺部においては、周辺雰囲気との熱交換が発生することによって中央部よりも温度低下する傾向があり、半導体ウエハの側面等から熱が放射されるため、半導体ウエハの周辺部の温度が低くなって半導体ウエハには温度分布の不均一が生じる。
【0004】
このような問題を解決するために、半導体ウエハの周辺部の表面における放射照度を半導体ウエハの中央部の表面における放射照度よりも大きくなるように光照射することによって、半導体ウエハの側面等からの熱放射による温度低下を補償して半導体ウエハにおける温度分布を均一にすることが行われている。
【0005】
しかしながら、従来の加熱処理装置においては、被処理体における、白熱ランプの発光長に比して極めて小さい狭小な特定領域については、ランプ管軸方向において分割制御することができなかった。そのため、当該特定領域の特性に対応した光強度で光照射を行っても、特定領域以外の領域にも同じ条件で光照射されてしまうことから、特定領域とその他の領域とが適切な温度状態となるように温度調整すること、すなわち、被処理物の温度状態が均一になるよう、狭小な特定領域に対する放射照度のみを制御することはできない。
【0006】
また、このような特定領域においては、他の領域と同一の放射照度となるように光照射した場合であっても、温度上昇速度に差異が生じることがあり、特定領域の温度とその他の領域の温度とは必ずしも一致せず、被処理体の処理温度に不所望な温度分布が生じることになる結果、被処理体に所望の物理特性を付与することが困難になる、という問題が生じる。
【0007】
以上のような事情に鑑みて、本発明者らは、次のような構成を有する、光照射式加熱処理装置の光源として用いられるフィラメントランプを提案している(特許文献3参照)。
【0008】
このフィラメントランプを、図5を参照して説明すると、両端が端部封止部2a、2bで気密に封止された直管状の発光管1内には、コイル状のフィラメント4、5、6が発光管1の管軸方向に伸びるよう順次に並んで配置され、各フィラメント4、5、6の両端には、それぞれ給電用の内部リード4a、4b、5a、5b、6a、6bが連結されている。
【0009】
上記の各フィラメントの内部リードは、それぞれ両端封止部に延びて、個別に金属箔を介して外部リードに電気的に接続されている。
即ち、各フィラメント4、5、6の一端側の内部リード4a、5a、6aはそれぞれ一端側封止部2aの金属箔7a、8a、9aを介して、一端側の外部リード10a、11a、12aに電気的に接続されている。
同様に、他端側の内部リード4b、5b、6bはそれぞれ他端側封止部2bの金属箔7b、8b、9bを介して、他端側の外部リード10b、11b、12bに電気的に接続されている。
【0010】
そして、各フィラメント4、5、6は、これら各外部リード10a、10b、11a、11b、12a、12bを介してそれぞれ別個の給電装置13、14、15に接続されていることにより、個別に給電可能とされている。
なお、16、17、18はそれぞれ各フィラメント4、5、6の内部リード4b、5a、5b、6aに被嵌された絶縁管で、それぞれ他のフィラメント4、5、6に対向する部位に設けられている。
また、19、20、21は、発光管1の内壁と絶縁管16、17、18との間の位置において、発光管Hの管軸方向に並設された環状のアンカーであって、各フィラメント4、5、6は、それぞれ、例えば2個のアンカーによって発光管1と接触しないよう支持されている。
【0011】
このような構成のフィラメントランプを用いた光照射式加熱処理装置によれば、複数のフィラメントに対して個別に給電できて各フィラメントの発光等の制御を個別に行うことができることから、例えば熱処理される被処理体上における場所的な温度変化の度合いの分布が被処理体の形状に対して非対称である場合であっても、当該被処理体の特性に応じた所望の放射照度分布で光照射することができる結果、被処理体を均一に加熱することができ、従って、被処理体における被照射面の全体にわたって、均一な温度分布を実現することができるという利点を有する。
【0012】
【特許文献1】特開平7−37833号公報
【特許文献2】特開2002−203804号公報
【特許文献3】特開2006−279008号公報
【0013】
上記従来技術においては、両端封止部での金属箔が並列配置される構造であり、隣接する各々の金属箔7a、8a、9aに対して個別に給電されるため、各々の金属箔の間には放電防止の為の所定の間隙が必要であり、その結果、封止部2a、2bの発光管の軸方向に対して直交する方向(幅方向)の寸法Wが大きくなり、フィラメントランプを多数本並列配置する加熱装置にあっては、装置全体が大型化するという不具合がある。また、フィラメントランプを複数並列配置する際に、ランプ間の寸法が封止部の幅寸法によって制限を受けて、ランプを高密度で配置できないという不都合もあった。
【0014】
そして、精度の高い照度分布を得るためには、1本のフィラメントランプ内のフィラメント数を増加し、分割制御性を向上させることが必要となるが、その場合、金属箔の数もその分だけ増加することになり、上記の問題点はより深刻なものとなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、フィラメント数、つまり金属箔数が増えても封止部の幅方向の寸法が大きくならないようにしたフィラメントランプを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、端部に封止部が形成された発光管の内部に、複数のコイル状のフィラメントがそれぞれ発光管の管軸方向に順次に並んで配設され、各フィラメントの両端に一対の内部リードが連結され、各内部リードが封止部に埋設された複数の金属箔を介して外部リードにそれぞれ電気的に接続されてなるフィラメントランプにおいて、前記複数の金属箔の内の一部が、他の金属箔に対して、該両金属箔の端部間に間隙が形成される程度に発光管の管軸方向にずらせて配置されるとともに、管軸に直交する方向にもずらせて配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明のフィラメントランプは、封止部に埋設された金属箔を、その内の一部を他の金属箔に対して発光管の管軸方向および管軸に直交する方向にずらして配置したことにより、封止部の発光管の軸方向に対して直交する方向(幅方向)の寸法を小さく抑えられという効果を奏するものである。
そのため、照射装置の大型化が避けられ、フィラメントランプを高密度で配置できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施例を図に基づいて説明する。図5と同一の符号は同一の構成を示している。
図1において、各フィラメントの内部リードに接続される金属箔は、その一部が、他の金属箔に対して発光管の管軸方向においてずらせて配置されるとともに、管軸に直交する方向(幅方向)においてもずらせて配置されている。
即ち、一端の封止部2aにおける、フィラメント4の内部リード4aが接続される金属箔24aとフィラメント5の内部リード5aが接続される金属箔25aとに対して、フィラメント6の内部リード6aが接続される金属箔26aは管軸方向にずらせて配置され、これら金属箔の端部間には間隙Lが形成される。
当然、これらの金属箔24a、25a、26aは管軸に直交する横方向においても互いにずらせて配置されている。つまり、所謂「千鳥状」に配置されている。
【0019】
そして、反対側の封止部2bにおける金属箔24b、25b、26bについても同様に配置されている。
【0020】
このような配置とすることにより、図5で示される従来技術における金属箔7a、8a、9a相互が、管軸の直交方向で所定の間隙を設ける必要があったのに対して、直接隣接する金属箔24a、金属箔26a間、および金属箔26aと金属箔25a間には幅方向に間隙を設ける必要がなくなり、その分だけ、封止部2a、2bの幅方向(管軸に直交する方向)の寸法Wを小さく抑えることができる。
【0021】
図1における実施例では、金属箔24a、25aが封止部2aのランプ端部側に位置し、金属箔26aが発光管1側に位置する態様を示したが、図2に示すように、図1とは逆に金属箔26aがランプ端部側に、金属箔24a、25aが発光管1側に配置してもよい。
【0022】
また、図1、図2の実施例では金属箔が3枚、即ち、フィラメントが3本の例を示したが、これに限られず、フィラメントが4本以上の場合であってもよく、図3には4本、即ち、金属箔が4枚の例が示されている。
この実施例では、2枚の金属箔24a、25aがランプ端部側に位置し、他の2枚の金属箔26a、27aがこれらとは管軸方向にずらされ、かつ、管軸と直交する方向にもずらせて配置されている。所謂、千鳥状に配置された例である。
【0023】
加えて、図1〜3の実施例では、ピンチシールを採用した例を示したが、シュリンクシールを採用した場合にあっても、同様の構成を採用できる。図4にこの場合の例を示す。
なお、マルチフィラメント・ランプにおけるシュリンクシールの詳細な構成については、先の出願、特開2007−157333号に示されている。
この場合の金属箔24a、25a、26aの管軸方向と直交する方向への配置のずれとは、封止部2aの円周方向でのずれということになる。
【0024】
なお、上記図1〜4で示した実施例においては、一端側の封止部2aのみを示したが、他端側の封止部2bにおいても同様な金属箔配置構造をとることは勿論である。
【0025】
本発明の封止部での金属箔配置を採用することによって、封止部の管軸に対する直交方向での寸法Wが小さくてすみ、該ランプを組み込んだ装置全体の大型化が避けられ、また、複数のランプの高密度での並列配置が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明のフィラメントランプの第1実施例を表す。
【図2】この発明のフィラメントランプの第2実施例の部分図。
【図3】この発明のフィラメントランプの第3実施例の部分図。
【図4】この発明のフィラメントランプの第4実施例の部分図。
【図5】従来技術を表す。
【符号の説明】
【0027】
1 発光管
2a、2b 封止部
5、6、7 フィラメント
4a、4b、5a、5b、6a、6b 内部リード
10a、10b、11a、11b、12a、12b 外部リード
24a、24b、25a、25b、26a、26b、27a、27b 金属箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に封止部が形成された発光管の内部に、複数のコイル状のフィラメントがそれぞれ発光管の管軸方向に順次に並んで配設され、各フィラメントの両端に一対の内部リードが連結され、各内部リードが封止部に埋設された複数の金属箔を介して外部リードにそれぞれ電気的に接続されてなるフィラメントランプにおいて、
前記複数の金属箔の内の一部が、他の金属箔に対して、該両金属箔の端部間に間隙が形成される程度に発光管の管軸方向にずらせて配置されているとともに、管軸に直交する方向にもずらせて配置されていることを特徴とするフィラメントランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−245720(P2009−245720A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90174(P2008−90174)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)