説明

フィラメントランプ

【課題】 ランプ自体の寸法を大きくすることなく、複数の独立的な給電経路を有するフィラメントランプを提供すること。
【解決手段】この発光部10の両端にフィラメントFの数に対応した金属箔30が並ぶように埋設された封止部20とから構成されるとともに、各フィラメントFには独立的に給電ができる。そして、封止部20は、端部から突出する外部リード40と、この外部リード40を覆うとともに、先端が当該封止部20と一体的にシールされたガラスパイプ60を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフィラメントランプに関する。特に、被処理体を加熱するためのフィラメントランプに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の製造工程には、P型半導体を拡散させる熱拡散工程や、電極材となる銀ペーストを焼成させる焼成工程がある。両工程とも熱拡散炉や焼成炉を使って、半導体ウエハやガラス基板を、例えば800℃〜900℃という高温まで加熱処理させる。
【0003】
一方、このような加熱処理装置では、場所によって温度差を生じさせないために、被処理体を均一に加熱しなければならない。このため、光源であるフィラメントランプも、発光管の内部に複数の給電経路を持ち、各経路に対して、独立的に所望の給電ができる構造が提案されている(特許文献1)。
また、この種のフィラメントランプは、発光管内部に複数の給電経路を有する関係上、ランプの封止部にも、当該給電経路の数に対応した数の端子を用意しなければならない。
【0004】
しかしながら、上記した太陽電池の製造工程では、被処理体に対する加熱温度がより高温化しており、ランプへの供給電力もより高度化している。その一方で、ランプの寸法自体は大きくすることができず、むしろ小型化の要請が強い。
すなわち、多数の独立した給電構造のフィラメントランプであって、寸法を大型化させることなく、かつ、高入力化に応えられるだけの構造が求められる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−279008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ランプ自体の寸法を大きくすることなく、高入力化に応えられるだけの複数の独立的な給電経路を有するフィラメントランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るフィラメントランプは、軸方向に分割された複数のフィラメントを有する長尺状の発光部と、この発光部の両端にフィラメントの数に対応した金属箔が並ぶように埋設された封止部とから構成されるとともに、各フィラメントには独立的に給電ができる。そして、前記封止部は、端部から突出する外部リードと、この外部リードを覆うとともに、先端が当該封止部と一体的にシールされたガラスパイプを有することを特徴とする。
【0008】
また、発光部には少なくとも3つ以上のフィラメントを有し、一方の端部に配置されたフィラメントF2に対する2つの外部リードは、ともに、当該フィラメントF2に近い封止部に形成されており、他方の端部に配置されたフィラメントF3に対する2つの外部リードは、ともに、当該フィラメントF3に近い封止部に形成されていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明に係るフィラメントランプの全体構成を示す。
ランプLは長尺状の発光部10と、その両端に形成された封止部20(20a,20b)より構成され、全体として管型形状をなしている。発光部10の内部は気密空間が形成されており、発光部10の軸方向に伸びる複数のフィラメントF(F1,F2,F3)を有しており、フィラメントF1、フィラメントF2、フィラメントF3が、それぞれ電気的に完全に分離されている。具体的には、発光部10の中央には、フィラメントF1が配置しており、発光部10の一端(封止部20aに近い端部)にはフィラメントF2が配置しており、発光部10の他端(封止部20bに近い端部)にはフィラメントF3が配置している。フィラメントF1、フィラメントF2、フィラメントF3は、発光部10の中心軸に平行に、かつ一直線に並んで配置している。
【0010】
封止部20(20a,20b)には、フィラメントFの数に対応した金属箔30(31a,32a,33a,31b,32b,33b)が埋設される。具体的には、封止部20aには、フィラメントF1に対応した金属箔31a、フィラメントF2に対応した金属箔32a、フィラメントF2に対応した金属箔33aが埋設しており、また、封止部20bには、フィラメントF1に対応した金属箔31b、フィラメントF3に対応した金属箔32b、フィラメントF3に対応した金属箔33bが埋設している。
【0011】
金属箔30には、ランプの外方に向けて伸びる外部リード40(41a,42a,43a,41b,42b,43b)と、発光部10の内部に向けて伸びる内部リード50(51a,52a,53a,51b,52b,53b)がそれぞれ接続されている。具体的には、金属箔31aには外部リード41aと内部リード51aが接続されており、金属箔32aには外部リード42aと内部リード52aが接続されており、金属箔33aには外部リード43aと内部リード53aが接続されている。また、金属箔31bには外部リード41bと内部リード51bが接続されており、金属箔32bには外部リード42bと内部リード52bが接続されており、金属箔33bには外部リード43bと内部リード53bが接続されている。
【0012】
従って、外部リード41a、金属箔31a、内部リード51a、フィラメントF1、内部リード51b、金属箔31b、外部リード41bにより一つの独立した通電経路が形成されており、外部リード41aと外部リード41bに所定の電力を供給することでフィラメントF1が発光する。同様に、外部リード42a、金属箔32a、内部リード52a、フィラメントF2、内部リード53a、金属箔33a、外部リード43aにより一つの独立した通電経路が形成されており、外部リード42aと外部リード43bに所定の電力を供給することでフィラメントF2が発光する。さらに、外部リード42b、金属箔32b、内部リード52b、フィラメントF3、内部リード53b、金属箔33b、外部リード43bにより一つの独立した通電経路が形成されており、外部リード42bと外部リード43bに所定の電力を供給することでフィラメントF3が発光する。
このように、本実施例に係るフィラメントランプは、一方の端部に配置されたフィラメントF2に対する外部リード42aと外部リード43aは、ともに、当該フィラメントF2に近い封止部20aから突出するように形成されており、また、他方の端部に配置されたフィラメントF3に対する2つの外部リードは42bと外部リード43bは、ともに、フィラメントF3に近い封止部20bから突出するように形成されている。
【0013】
上記フィラメントランプについて、一例をあげると、中央に配置されたフィラメントF1は、例えば3KWの給電が行われ、端部に配置されたフィラメントF2とフィラメントF3には、例えば600Wの給電が行われる。なお、フィラメントF1、フィラメントF2、フィラメントF3は同時に点灯させる場合もあれば、いずれかのフィラメントは点灯させるものの他のフィラメントは消灯させるという使い方も存在する。
【0014】
フィラメントFは、例えば、タングステン素線を密に巻回してコイル形状にしたものである。また、発光部10には臭素(Br)や塩素(Cl)などのハロゲンとともに、アルゴン(Ar)や窒素(N2)などの不活性ガスが封入されている。なお、図示略ではあるが、フィラメントFや内部リード50を支持するアンカーを設けてもよく、また、内部リード50に対して絶縁部材を被覆させてもよい。本発明に係るフィラメントランプの構造については、本出願人の先願である特願2008−82458号が参照される。
【0015】
図2は封止部20bの拡大図を示し、図1と同一方向から眺めた状態を示す。外部リード40にはそれぞれガラスパイプ60(61b,62b,63b)が取り付けられる。ガラスパイプ60は、外部リード40の外表面と接触することなく、かつ、外部リード40を覆うように形成されているので、隣り合う外部リード40同士の沿面距離は長くなる。具体的に言えば、外部リード41bと外部リード42bの沿面距離は、図示のように、外部リード41bのガラスパイプ61bの内部における長手方向の距離L1(接触していない部分の距離)の2倍と、外部リード42bのガラスパイプ62bの内部における距離L2(接触していない部分の距離)の2倍と、さらに、外部リード41bと外部リード42bの各外部リードの伸びる方向に直交する方向の離間距離W1の総和にほぼ等しくなる。同様に、外部リード42bと外部リード43bの沿面距離は、外部リード42bのガラスパイプ62bの内部における長手方向の距離L2(接触していない部分の距離)の2倍と、外部リード43bのガラスパイプ63bの内部における距離L3(接触していない部分の距離)の2倍と、さらに、外部リード42bと外部リード43bの各外部リードの伸びる方向に直交する方向の離間距離W2の総和にほぼ等しくなる。従って、例えば、前記したように3KWという高入力の給電を行う場合であっても、外部リード同士の沿面距離が長くなるので、沿面放電を良好に防止できる。
【0016】
図3は封止部20の部分拡大図を示し、図2に示すA方向から眺めた状態を示す。封止部20の端部から突出する外部リード40に対応してガラスパイプ60が設けられる。なお、図3においては、紙面の上下方向に金属箔30、外部リード40およびガラスパイプ60が3つ並ぶことになる。ガラスパイプ60は、内面において外部リード40と接触することなく離れている。
【0017】
ここで、長尺状の発光部を有するいわゆる‘両端封止型フィラメントランプ’の場合(例えば、特開2001−210280号など)、一般には、一つの封止部からは一つの外部リードしか突出していないため、隣り合う外部リード同士で沿面放電を生じるという問題はそもそも発生しえない。また、封止部を一つしか有していない、いわゆる‘一端封止型フィラメントランプ’の場合(例えば、実開平1−161548号の図5)は、一つの封止部から2つの外部リードが突出しているが、このような構造はそもそも同一の給電経路を構成する外部リード同士にすぎず、また、電位差も小さいことから沿面放電という問題が生じていなかった。一方、本願発明に係るフィラメントランプは、独立した給電経路を構成する端子(外部リード)が、一つの封止部の中に少なくとも3つ以上並んで形成されるものであるから、隣り合う外部リード同士の沿面放電は顕著な問題となる。従って、本願発明は、一つの封止部に少なくとも3つ以上の外部リードを形成しており、また、複数の独立した給電経路を構成するものに特に適用される。
【0018】
さらに、本発明に係るフィラメントランプは、前記したように、ガラスパイプ60の封止部側先端が、封止部20を構成する材料と一体的にピンチシール(封止)しているので、ガラスパイプ60を構成する石英ガラスと、封止部20を構成する石英ガラスが溶融して事実上一体物になっている。すなわち、封止部に凹部を設けて、単に、パイプ状のガラスを当該凹部に差し込むような構造ならば、当該パイプと凹部の間に生ずる隙間から沿面放電を生じる可能性があるが、本願発明はこのような隙間が全く存在しないので、隙間を介在した沿面放電を完全に防止できる。
【0019】
前記フィラメントランプについて、数値例をあげると、封止部の幅方向の長さは13mm〜18mmの範囲から選択される数値であって、例えば18mmであり、外部リード同士の離間距離Wは5mm〜7mmの範囲から選択される数値であって、例えば6mmである。また、外部リードのガラスパイプの内部における長手方向の距離L(接触していない部分の距離)は5mm〜15mmの範囲から選択される数値であって、例えば10mmであり、ガラスパイプの外径はφ13mm、内径はφ10.5mmである。従って、沿面距離は、例えば26mmとなる。
【0020】
図4は本発明に係るフィラメントランプの他の実施例を示す。図1に示すフィラメントランプは独立給電可能なフィラメントを3つ有していたのに対し、図4に示すフィラメントランプは4つ有する点で相違する。発光部10の中央には、フィラメントF11とフィラメントF12が配置しており、発光部10の一端(封止部20aに近い端部)にはフィラメントF2が配置しており、発光部10の他端(封止部20bに近い端部)にはフィラメントF3が配置している。フィラメントF11、フィラメントF12、フィラメントF2、フィラメントF3は、発光部10の中心軸に平行に並んで配置している。このような構造のフィラメントランプであっても、封止部から突出する外部リードには、図2及び図3に示した構造のガラスパイプが形成されている。なお、フィラメント数が4本の場合のランプ構造についても、本出願人の先願である特願2008−82458号の図4が参照される。
【0021】
図5は本発明に係るフィラメントランプの他の実施例を示す。図1や図4に示すフィラメントランプでは、一方の封止部の近傍に配置されたフィラメントに対する外部リードは、当該封止部から外方に突出する構造であったが、本実施例の構造では、一方の封止部に形成された複数の外部リードは、全て異なるフィラメントに対するものとなっている。具体的には、封止部20aに埋設された3枚の金属箔は、それぞれフィラメントF1、フィラメントF2、フィラメントF3に対するものであり、また、封止部20bに埋設された3枚の金属箔も、それぞれフィラメントF1、フィラメントF2、フィラメントF3に対するものである。従って、フィラメントから見ると、全てのフィラメントは、一方の端子が封止部20aから突出しており、他方の端子が封止部20bから突出する構造となる。このような構造のフィラメントランプであっても、封止部から突出する外部リードには、図2及び図3に示した構造のガラスパイプが形成されている。なお、この構造の場合、フィラメントは2つであってもかまわない。
【0022】
図6は本発明に係るフィラメントランプが使われる加熱処理装置の概略構成を示す。
処理装置(チャンバ)の内部には被処理体が配置しており、被処理体の表面に対向してフィラメントランプL1(ランプL11,ランプL12、ランプL13、ランプL14、ランプL15)が配置しており、また、被処理体の裏面に対向してフィラメントランプL2(ランプL21,ランプL22、ランプL23、ランプL24、ランプL25)が配置している。処理装置には真空ポンプが接続しており、内部空間を減圧雰囲気に維持している。被処理体は支持体により保持されている。
このように減圧雰囲気内において、ランプが配置される場合、外部リードには絶縁剤などを被覆することはできないので、本発明に係るガラスパイプを採用することは特に有用である。また、一般に、減圧雰囲気においては、パッシュンの法則により、特定の圧力雰囲気において沿面放電が生じやすい状態になる。本発明のようなフィラメントランプの場合は、例えば3Pa〜2000Pa気圧において、沿面放電が生じやすく、このため本願発明に係るガラスパイプは有用である。
【0023】
本発明において「フィラメントの数に対応した金属箔」とは、必ずしも、フィラメントの数と同数の金属箔を設けるという意味ではなく、例えば、図1におけるフィラメントF1を長手方向に分割させて複数のフィラメントとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るフィラメントランプの全体構成を示す。
【図2】本発明に係るフィラメントランプの封止部の構成を示す。
【図3】本発明に係るフィラメントランプの封止部の構成を示す。
【図4】本発明に係るフィラメントランプの他の実施例を示す。
【図5】本発明に係るフィラメントランプの他の実施例を示す。
【図6】本発明に係るフィラメントランプを使った処理装置を示す。
【符号の説明】
【0025】
10 発光部
20,20a,20b 封止部
3,31a,32a,33a,31b,32b,33b 金属箔
4,41a、42a,43a,41b,42b,43b 外部リード
5,51a,52a,53a,51b,52b,53b 内部リード
F1,F2,F3 フィラメント
6,61a,62a,63a,61b,62b,63b ガラスパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に分割された複数のフィラメントを有する長尺状の発光部と、この発光部の両端にフィラメントの数に対応した金属箔が並ぶように埋設された封止部とから構成されるとともに、各フィラメントに独立的に給電ができるフィラメントランプにおいて、
前記封止部は、
端部から突出する外部リードと、
この外部リードを覆うとともに、先端が当該封止部と一体的にシールされたガラスパイプを有することを特徴とするフィラメントランプ。
【請求項2】
前記発光部には少なくとも3つ以上のフィラメントを有し、
一方の端部に配置されたフィラメントF2に対する2つの外部リードは、ともに、当該フィラメントF2に近い封止部に形成されており、
他方の端部に配置されたフィラメントF3に対する2つの外部リードは、ともに、当該フィラメントF3に近い封止部に形成されていることを特徴とする請求項1のフィラメントランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−33798(P2010−33798A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193234(P2008−193234)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】