説明

フィラメントランプ

【課題】発光管内に配置され、それぞれ独立に給電される複数のフィラメントを備えたフィラメントランプにおいて、前記フィラメントとリード線とを絶縁する絶縁管を配置しても、フィラメントからの放射光の減衰が少なくて透過効率が良好であり、かつ前記リード線の配線構造が簡単であり、絶縁管の強度を損なうことがないような構造を提供しようとするものである。
【解決手段】前記発光管内に、リード線が隣接して配置されているフィラメントを収容して隣接リード線と電気的に絶縁する絶縁管が配設され、該絶縁管にはフランジが設けられ、該フランジの外周に開口を形成して、前記リード線を該開口内に挿入係合させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィラメントランプに関するものであり、特に、発光管の内部に複数のフィラメントを備え、各フィラメントがそれぞれ独立して給電されるフィラメントランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの加熱や太陽電池製造過程での加熱、又は液晶の加熱処理などにフィラメントランプが用いられており、被処理物の温度分布を均一にするために、特開2008−300077号公報(特許文献1)には、1本の発光管内に独立に給電可能な複数のフィラメントを具備したフィラメントランプが提案されている。
このフィラメントランプでは、フィラメントごとに入力する電力を変えることができるので、全体として高均一な温度分布になるように調整することができるという利点がある。
【0003】
特許文献1の技術を図6(A)(B)を参照して説明する。なお(A)はランプを部分的に示す斜視説明図であり、(B)はそのQ−Q断面図である。
通常、石英ガラス管よりなる発光管90の内部には、例えば3本のフィラメント91、92、93が各々の軸が同一直線上に並ぶように並んで配置されている。
これらのフィラメント91、92、93にはそれぞれリード線91a、91b、92a、92b、93a、93bが接続され、発光管90の両端のシール部(不図示)に導かれており、同様に図示しない給電装置に個別に接続されていて、各フィラメント91、92、93は、互いに独立して個別に給電される。
【0004】
そして、前記フィラメントと、これに隣接して配置されるリード線との間での放電を防止するために、発光管90内には石英ガラス管からなる絶縁管94が配置されていて、前記フィラメント91、92、93は、該絶縁管94の内部に収容されている。
そして、該絶縁管94の外周には、管軸方向と平行に延びる溝95a、95b、95cが形成されている。
また、各フィラメント91、92、93の長さ方向における端部の領域に対応して、各溝95a、95b、95c内に開口する貫通穴96a、96b、96cが形成されており、各フィラメント91、92、93の端部に接続されたリード線91a、91b、92a、92b、93a、93bが、この貫通孔96a、96b、96cから絶縁管94の外部に導出され、各溝95a、95b、95c内に延在するように配置され、フィラメントに対して絶縁を図る構造となっている。
例えば、フィラメント91のリード線91bが貫通孔96aから絶縁管94の外部に導出されて、溝95a内を軸方向に延びるように配置されている。
【0005】
このようにすることで、フィラメントとリード線との絶縁が図れるとともに、リード線が熱で膨張したときも、絶縁管と発光管の間で溝内において周方向及び半径方向の移動が規制されるようになり、リード線の移動を最小限に留め、リード線の変形が生じにくい、フィラメントランプとすることができるというものである。
【0006】
しかしながら、当該従来技術においては、フィラメント91、92、93を覆う絶縁管94の外周面に溝95a、95b、95cを形成するという構造であるため、該絶縁管94は、本来の絶縁機能を担保するという観点から、溝95a、95b、95cの分だけ肉厚にする必要がある。このように絶縁管94を肉厚にすると、フィラメント91、92、93からの放射光がこれを通過する間に減衰する度合いが増加してしまい、透過効率が悪くなるという問題が生じてきている。
そして、絶縁管94に貫通孔96a、96b、96cを形成してリード線を絶縁管の外部に導出する構造であるので、そのリード線の配線作業が極めて煩雑となっている。
また、フィラメント数が増えた場合には絶縁管に軸方向に長い多数の溝を形成しなければならないため、その加工作業が一層煩雑となり生産性が乏しくなり、かつ、絶縁管の強度も減少するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−300077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、発光管内に配置された複数のフィラメントと、該フィラメントの各々両端に接続されると共に、各フィラメントが管軸に沿って並ぶようにフィラメントを支持するリード線とを備え、前記フィラメントは独立して給電されるフィラメントランプにおいて、前記フィラメントとリード線を絶縁する絶縁管を配置しても、フィラメントからの放射光の減衰が少なくて透過効率が良好であり、かつ前記リード線の配線構造が簡単であり、絶縁管の強度を損なうことがないような構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明では、前記発光管内に、リード線が隣接して配置されているフィラメントに、該フィラメントを収容する絶縁管を配設し、前記リード線を発光管と絶縁管の間に配置して、フィラメントと隣接リード線とを電気的に絶縁し、該絶縁管にはフランジを設けて、該フランジの外周に開口を形成し、前記リード線を該開口内に挿入して係合させたことを特徴とする。
また、前記絶縁管は、隣接する他の絶縁管とは間隔を持って配置されており、該間隔内でフィラメントからのリード線が、前記隣接する他の絶縁管のフランジの開口を経て該他の絶縁管の外周に導かれていることを特徴とする。
また、前記フランジが、前記絶縁管の両端部に設けられていることを特徴とする。
また、前記開口が、前記フランジの円周上で複数形成されていることを特徴とする。
更に、前記フランジの開口は、その円周上の位置が、他の絶縁管のフランジの開口と同一直線上に並ぶように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リード線が隣接して配置されたフィラメント毎に絶縁管を被覆し、該絶縁管にフランジを設けて、該フランジの外周に開口を形成し、前記リード線を該開口に挿入係合するようにしたので、絶縁管の取り付けが簡単であると共に、絶縁管にリード線配設用の溝を形成することもないので、絶縁管の厚さを小さくできて放射光の減衰を極力小さく抑えることができるという効果を奏する。
また、絶縁管内のフィラメントからのリード線は、絶縁管間の間隔から導出して、他の絶縁管の外周に配置されるので、絶縁管にリード線導出用の貫通孔を設ける必要もなく、それだけ絶縁管の構造が簡単になり、かつリード線の配置作業の簡略化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るフィラメントランプの断面図。
【図2】図1の部分斜視図。
【図3】本発明の絶縁管の製造方法の説明図。
【図4】本発明の絶縁管の他の製造方法の説明図。
【図5】本発明の他の実施例のフィラメントランプの断面図
【図6】従来技術の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1(A)は、本発明のフィラメントランプの断面図であり、図1(B)はそのP−P断面図である。
図において、石英ガラスよりなる発光管10の内部には、軸方向に並ぶ第1、2、3のフィラメント11、12、13が配置されている。これら第1〜3のフィラメント11、12、13における両端には、それぞれリード線11a、11b、リード線12a、12b及びリード線13a、13bが接続されている。
この実施例においては、これらの第1〜3のフィラメント11、12、13のリード線1a、11b、12a、12b、13a、13bはそれぞれ発光管10の両端のシール部10a及びシール部10b方向に延びている。そして該シール部においてそれぞれ金属箔151、152、153を介してシールされていて、外部リード線を介して第1、2、3の給電装置31、32、33にそれぞれ接続されている。
すなわち、各フィラメント11、12、13には、それぞれ別の給電装置31、32、33によって個別に制御された電力が投入される。
【0013】
上記第1〜3のフィラメント11、12、13の周囲には、これらを個別に収容するように、それぞれ第1〜3の絶縁管21、22、23がそれぞれ間隔をもって配設されている。該絶縁管21、22、23は光透過性の絶縁材料、例えば石英ガラスからなる。
そして、各フィラメントに隣接して配置されるリード線は、当該フィラメントを収容する絶縁管の外周に配置されている。
すなわち、例えば、第1のフィラメント11を収容する第1の絶縁管21では、該フィラメント11に隣接して配置される第2のフィラメント12のリード線12aと、第3のフィラメント13のリード線13aがその外周に配置されていて、内部の第1のフィラメント11と、これらリード線12a、13aとを電気的に絶縁している。
他の第2の絶縁管22と第3の絶縁管23についても同様である。
【0014】
そして、図1(B)および図2も参照して、第1の絶縁管21には、その両端部にフランジ211、212が設けられていて、該フランジ211、212の外周には開口211a、211b、212a、212bが形成されている。
同様に、第2の絶縁管22にはフランジ221、222が設けられ、その外周に開口221a、221b、222a、222bが形成され、第3の絶縁管23にはランジ231、232が設けられ、その外周に開口231a、231b、232a、232bが形成されている。
そして、同一のリード線を係合する開口は、当然にフランジの円周方向の位置が一致していて、軸方向で同一直線上に位置していて、前記リード線はこれらのフランジの開口を利用して絶縁管の外周に配置されている。
【0015】
例えば、図2で示されるように、第2の絶縁管22のフランジ221、222の開口221a、222aと、第3の絶縁管23のフランジ231、232の開口231a、232aとは、軸方向の位置が一致していて、第1のフィラメント11のリード線11bが挿入係合され案内されている。
また、図1(B)および図2で示されるように、第2のフィラメント12の一方のリード線12aは、第1の絶縁管11のフランジ211の開口211aとフランジ212の開口212aとに挿入係合されるとともに、他方のリード線12bは、第3の絶縁管23のフランジ231の開口231bとフランジ232の開口232bとに挿入係合されている。
同様に、第3のフィラメント13のリード線13aは、第1の絶縁管11のフランジ211の開口211bとフランジ212の開口212b、及び第2の絶縁管12のフランジ221の開口221bとフランジ222の開口222b、とに挿入係合されているものである。
【0016】
そして、特に図3で示されるように、各リード線は絶縁管間の間隔を利用して、隣接する他の絶縁管の内部もしくは外周に導かれているものである。
例えば、第1のフィラメント11のリード線11bは、第1の絶縁管21とこれに隣接する第2の絶縁管22との間隔を利用して第1の絶縁管21の内部から導出され、前記第2の絶縁管22の外周に導かれて、そのフランジ221の開口221aに係合している。
一方、第2のフィラメント12のリード線12aは、第1の絶縁管21の外周から、隣接する第2の絶縁管22との間の間隔を利用して、該第2の絶縁管22の内部に導かれて、第2のフィラメント12に接続されている。
他のリード線についても同様である。
【0017】
次に、絶縁管にフランジを形成する方法について図3および図4に基づいて説明する。
(第1の方法)
図3において、2つの径が異なるガラス管61、62をそれぞれチャックC1,C2で保持し、小径のガラス管61を、大径のガラス管62に嵌めあわせて固定すると共に、嵌合部周囲をバーナーで加熱する(イ)。
ガラス管61、62を溶着して接合し、一体のガラス管61’を製作する(ロ)。
このガラス管61’のフランジを形成する箇所において切断し、薄肉のフランジ部611を具備したガラス管61’を製作する(ハ)。
続いて、フランジ611の一部を切削し、開口611a、611bを形成するものである(ニ)。
【0018】
(第2の方法)
図4に示すように、ガラス管71をチャックC1、C2で固定し、回転させながらフランジを形成する部分をバーナー加熱する。この部分が溶融状態になった後、チャックC1、C2を相対的に近づけて外周面上に、しわ状にフランジ711を形成して溶着する(イ)(ロ)。
これを繰り返してフランジ711、712を複数形成し、その後、フランジ711がガラス管71の端部に位置するように不要な部分を切断する(ハ)。
次いで、フランジ711の一部を切削し、開口711a、711bを形成するものである(ニ)。
【0019】
なお、上記においては、フランジを、それぞれ1か所及び2か所に形成するものを示したが、個数についてこれらに限られず、また、絶縁管の両端部に形成したものを示したが、その位置も任意である。更には、両端部に加えて更に中央部に形成するようにしてもよい。
【0020】
図5は本発明の他の実施形態の説明図である。ここでは上述した第2の方法によって作製された絶縁管を用いたランプの構成を説明しており、また、第1の実施形態とはリード線の配線方向が異なる。
【0021】
図において、第1のフィラメント11の両端に接続されたリード線11a、11bは、いずれも一方のピンチシール部10A側に導出されたものである。すなわち、フィラメント11の発光管10の中央側に接続された他方のリード線11bは、略コの字状に折り曲げられて、発光管10と第1の絶縁管21の間を通過して、一方のリード線11aとともにピンチシール部10Aに埋設されている。
【0022】
第2のフィラメント12に接続されたリード線12a、12bは、それぞれ半径方向外側に屈曲して形成されており、第1および第3の絶縁管21、23と発光管10の間を通過して、それぞれ両端のピンチシール部10A、10Bに埋設されている。
【0023】
また、第3のフィラメント13に接続されたリード線13a、13bは、上記第1のフィラメント11と同様であり、発光管10の長さ方向中央側に位置された一方のリード線13aがコの字状に折り返されて、他方のリード線13bと共に他方のピンチシール部10Bに埋設されている。
【0024】
そして、前記絶縁管21、23には、3つのフランジ211、212、213、231、232、233が、それぞれほぼ等間隔に形成されており、更にフランジの各々に開口211a、211b・・・が形成されている。フィラメントに隣接して配設されるリード線は全て、絶縁管21、23と発光管10の間の空間を通過することで絶縁が確保されており、フランジ部に形成された開口に係合することで、半径方向及び周方向の移動が規制されたものとなっている。
【0025】
そして、この実施形態においては、第2のフィラメント12には、隣接してリード線が配置されることがないので、絶縁管が設けられていない。
なお、図5における他の符号が示すものは、図1における同一の符号が示す構造と同一である。
また、図1および図5に示す実施例では、フィラメントは3つの場合を示したが、これに限られるものではない。
【0026】
以上のように、本発明によれば、発光管内に配置した複数のフィラメントにリード線が隣接して配置されている場合、当該フィラメントに絶縁管を嵌挿してリード線との電気的絶縁を図り、しかも、絶縁管にフランジを設けて該フランジに形成した開口にリード線を挿入係合する構造であるので、絶縁管にリード線係合用の溝を形成することもなく、絶縁管の肉厚を小さなものに抑えることができて、フィラメントからの放射光の減衰を小さくすることができるという効果を奏する。
また、フィラメント毎に絶縁管を被嵌させたので、リード線は、隣接する絶縁管の間の間隔を利用して該絶縁管の内部または外周に導出できて、その作業が簡略化される。
しかも、絶縁管にリード線導出用の貫通孔を形成することもないので、加工作業が簡略となる。
【符号の説明】
【0027】
10 発光管
10A、10B シール部
11 第1のフィラメント
11a 第1のフィラメントのリード線
11b 第1のフィラメントのリード線
12 第2のフィラメント
12a 第2のフィラメントのリード線
12b 第2のフィラメントのリード線
13 第3のフィラメント
13a 第3のフィラメントのリード線
13b 第3のフィラメントのリード線
21 第1の絶縁管
211、212 フランジ
211a、211b 開口
22 第2の絶縁管
221、222 フランジ
221a、221b 開口
23 第3の絶縁管
231、232 フランジ
231a、231b 開口




【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管と、該発光管内に配置された複数のフィラメントと、前記フィラメントの各々両端に接続されると共に、各フィラメントが管軸に沿って並ぶようにフィラメントを支持するリード線とを備え、前記フィラメントは独立して給電されてなるフィラメントランプにおいて、
前記発光管内に、リード線が隣接して配置されているフィラメントを収容する絶縁管を配設し、隣接配置されたリード線を該絶縁管と発光管の間に配置してフィラメントと隣接リード線とを電気的に絶縁し、該絶縁管にはフランジを設けて、該フランジの外周に開口を形成し、前記リード線を該開口内に挿入して係合させたことを特徴とするフィラメントランプ。
【請求項2】
前記絶縁管は、隣接する他の絶縁管とは間隔を持って配置されており、該間隔内でフィラメントからのリード線が、前記隣接する他の絶縁管のフランジの開口を経て該他の絶縁管の外周に導かれていることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントランプ。
【請求項3】
前記フランジが、前記絶縁管の両端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントランプ。
【請求項4】
前記開口が、前記フランジの円周上で複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントランプ。
【請求項5】
前記フランジの開口は、その円周上の位置が、他の絶縁管のフランジの開口と同一直線上に並ぶように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントランプ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−129284(P2011−129284A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284632(P2009−284632)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)