説明

フィラメントランプ

【課題】 隣り合うフィラメント3との間隔をより狭くして、加熱エリアに近接して配置できるフィラメントランプ1を提供すること。
【解決手段】 中空長尺状の本体部21と該本体部21の表面から外方に伸びる側管22とを備える発光管2と、発光管2の本体部21の内部に管軸方向に伸びるように順次並んで配置されて各々独立して給電される複数のフィラメント3と、前記フィラメント3の両端に接続された内部リード4とを備え、少なくとも隣にフィラメント3が配置される一端から導出される内部リード4は、前記側管22に挿通されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハの加熱や、太陽電池の製造時または液晶基板の製造時の加熱処理に用いられるフィラメントランプに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程における光照射式加熱装置は、成膜、拡散、アニール等、広範囲に渡って利用されており、いずれの処理も板状の被処理物等の半導体ウェハを急速に加熱することができ、1000℃以上にまで数秒間〜数十秒間で昇温させるものである。近年は更に高速で昇温させることが要求されてきており、ランプに投入される電力が大電力化してきている。これはスパイクアニールと呼ばれており、200℃/秒を超える高速で昇温させ、目的温度に達したら直ちに冷却することが行われる。このスパイクアニールにより非常に薄い拡散層(シャロージャンクション)を形成させることができ、半導体素子の性能を向上させることができる。
【0003】
また、加熱時、半導体ウェハの温度分布が不均一になると、半導体ウェハにスリップと呼ばれる現象、即ち、結晶転移の欠陥が発生し、不良品となるおそれがある。そこで光照射式加熱装置を用いて半導体ウェハを加熱処理する場合には、半導体ウェハの温度分布が均一になるように、加熱・高温保持・冷却する必要がある。温度分布を均一にする提案として、特開平11−268111号公報には加熱エリアを縦横数ブロックに分け、それぞれのエリアにフィラメントランプが配置された加熱装置が記載されている。フィラメントランプの長手方向にも複数のランプを並べて、フィラメントランプの長手方向においても温度制御を可能にし、シートを的確に加熱できるようにしている。
【0004】
フィラメントランプは、直管状の発光管の内部にコイル状のフィラメントが管軸方向に伸びるように配置されている。発光管の両端はL字状に曲げられ、フィラメントへの給電線が金属箔を介して気密に封止されている。給電線が曲げられて外部に導出されるようになっているため、フィラメントランプの長手方向に複数のランプを並べても、非発光部となる封止部が加熱エリアに配置されないように隙間なく並べることができる。
【特許文献1】特開平11−268111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、両端をL字状に曲げて隙間なくフィラメントランプを並べても、隣り合うフィラメントとの間には、一方のフィラメントランプを構成する発光管のガラス壁と、他方のフィラメントランプを構成する発光管のガラス壁とを配置しなければ構成できないため、ある程度の間隔を必要とする。また、個々のフィラメントの端部は曲げられているため、加熱エリアまでの距離が一定ではなく、フィラメントの端部は加熱源として有効に利用できない。そのため、発光管の径がφ10mmとした場合に、有効に利用できるエリアにある隣り合うフィラメントとの間隔は50mm以上となり、フィラメントが配置されていない隙間で温度低下して加熱温度を均一にすることが難しい。
【0006】
加熱エリアにフィラメント間の温度低下の影響が現れないようにするためには、それぞれのフィラメントから放射される熱の拡散により、フィラメントの隙間の低下を補って均一化しなければならない。熱拡散を期待するため、フィラメントランプを加熱エリアからある程度離間して配置しなければならない。フィラメントランプと加熱エリアとの間隔を大きくとれば、加熱エリアに達するまでの熱の減衰が大きくなり、目標温度に加熱するために必要とする熱量が増え、出力が大きいフィラメントランプを必要とする。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、隣り合うフィラメントとの間隔をより狭くして、加熱エリアに近接して配置できるフィラメントランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願第1の発明は、中空長尺状の本体部と該本体部の表面から外方に伸びる側管とを備える発光管と、発光管の本体部の内部に管軸方向に伸びるように順次並んで配置されて各々独立して給電される複数のフィラメントと、前記フィラメントの両端に接続された内部リードとを備え、少なくとも隣にフィラメントが配置される一端から導出される内部リードは、前記側管に挿通されていることを特徴とする。
また、本願第2の発明は、本願第1の発明において、前記側管は2本の管が並んで配置されており、隣接して配置されるフィラメントそれぞれに接続する内部リードが前記2本の管に1本ずつ挿通されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願第1の発明に係るフィラメントランプによれば、独立して給電できるフィラメントが管軸方向に複数配置されているので、長手方向においても温度制御を可能にし、シートを的確に加熱できるようにしている。さらに、隣り合うフィラメントの間には内部リードが配置されるだけで、他の部材を必要としないので、隣り合うフィラメントの間隔を小さくすることができる。そのため、フィラメント間の非発光部の領域が狭いので、非発光部による温度低下の影響も小さくなり、フィラメントランプを加熱エリアに近接して配置することにより熱の拡散効果が抑えられても、加熱エリアの温度を均一にすることができる。
【0010】
また、フィラメントランプを加熱エリアに近接して配置できるので、フィラメントから加熱エリアまでの距離も短くなり、照射光が加熱エリアに達するまでに減衰する熱量も小さくなる。フィラメントランプからの出力が変わらなくても、加熱エリアにおける熱量が増加するので、目標温度に加熱するために必要とするフィラメントランプの出力が抑えられる。したがって、従来に比べて、出力が小さいフィラメントランプで目標温度まで加熱することができる。
【0011】
本願第2の発明にかかるフィラメントランプによれば、並んで配置される2本の内部リードをそれぞれ別々の管に挿通することにより、近接して配置しても互いに絶縁をとることができる。また、2本の内部リードが、完全な並行ではなく若干傾いて配置されたとしても、各々の絶縁が保たれているため、短絡することがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態のフィラメントランプを示す説明用断面図
【図2】図1に示すフィラメントランプのフィラメント間を拡大して示す一部拡大断面図
【図3】フィラメントランプの製造方法を説明するための概略図
【図4】第2の実施形態のフィラメントランプを示す説明用断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態のフィラメントランプ1を示す説明用断面図である。
フィラメントランプ1は、直管状の発光管2の本体部21の内部に複数のコイル状のフィラメント3が、管軸方向に伸びるように順次並んで配置されて構成されている。各フィラメント3の両端には、それぞれ内部リード4が管軸に対して垂直に伸びるように連結され、外部に導出されている。
【0014】
発光管2には、隣り合うフィラメント3の隙間に対応する位置に、筒状の本体部21の外周面から外方に伸びる側管22が取り付けられている。内部リード4は側管22の内部を通って外部に導かれ、発光管2の中央に配置されるフィラメント3に独立して給電できるようにしている。側管22は少なくとも隣り合うフィラメント3の隙間に対応して複数配置されるが、それぞれの側管22が伸びる方向はほぼ一致している。側管22の伸びる向きを揃えることによって、フィラメントランプ1に対して一方向に給電装置等を配置することができ、被処理物に対してフィラメントランプ1から放射する光を遮らないように設計できる。
【0015】
側管22の末端には封止部23が形成され、外部リード6が導出されている。フィラメント3に給電する内部リード4と、フィラメントランプ1の外部に位置する電源に接続する外部リード6とは、封止部23に配置された金属箔5を介して電気的に接続される。封止部23は、例えば、側管22をピンチシールすることによって形成され、発光管2の内部をハロゲンガスが封入された気密空間としている。
【0016】
図2は、図1に示すフィラメントランプ1の隣り合うフィラメント31、32の隙間を拡大して示す一部拡大断面図である。
内部リード41、42は先端がL字状に曲げられたタングステン(W)よりなる金属棒であり、各々のフィラメント31、32に接続するように2本並んで配置される。一方の内部リード41の先端には、一のフィラメント31がスポット溶接により接続され、他方の内部リード42の先端には、他のフィラメント32がスポット溶接により接続されている。
【0017】
発光管2から外方に伸びる側管22は、隣り合うフィラメント31、32の隙間に2本配置される内部リード41、42を1本ずつ挿通できるように、2本の管が並んで配置されたツインチューブとなっている。並んで配置される2本の内部リード41、42をそれぞれ別々の管に挿通することにより、近接して配置しても互いに絶縁をとることができる。また、2本の内部リード41、42が、完全な並行ではなく若干傾いて配置されたとしても、各々の絶縁が保たれているため、短絡することがない。
【0018】
発光管2は石英ガラスにより形成されるが、フィラメント3から放射される光による熱的影響を直接受ける直管状の本体部21はガラス厚が厚くなっており、熱的影響が小さい側管22はガラス厚が薄くなっている。そのため、側管22として2本の管が並んで配置されたツインチューブを用いても、コンパクトに形成することができ、管軸方向についても僅かなスペースに配置することができる。
【0019】
隣り合うフィラメント31、32の間には、それぞれに給電するための内部リード41、42が配置されるだけで、発光管2のガラス壁など他の部材を配置する必要がないので、従来のようなフィラメントごとに発光管で覆っていたフィラメントランプに比べて、隣り合うフィラメント31、32の間隔を小さくすることができる。また、内部リード41、42を挿通する側管22には、厚みが薄いガラスを用いることができるので、管軸方向に短い範囲に形成することができるので、側管22の形成領域を確保しても隣り合うフィラメント31、32の間隔を狭いままにすることができる。
【0020】
本発明のフィラメントランプ1は、独立して給電できるフィラメント3が管軸方向に複数配置されているので、長手方向においても温度制御を可能にし、シートを的確に加熱できるようにしている。さらに、隣り合うフィラメント3の間には内部リード4が配置されるだけで、他の部材を必要としないので、隣り合うフィラメント3の間隔を小さくすることができる。そのため、フィラメント3の間の非発光部の領域が狭いので、非発光部による温度低下の影響も小さくなり、フィラメントランプ1を加熱エリアに近接して配置することにより熱の拡散効果が抑えられても、加熱エリアの温度を均一にすることができる。
【0021】
また、フィラメントランプ1を加熱エリアに近接して配置できるので、フィラメント3から加熱エリアまでの距離も短くなり、照射光が加熱エリアに達するまでに減衰する熱量も小さくなる。フィラメントランプ1からの出力が変わらなくても、加熱エリアにおける熱量が増加するので、目標温度に加熱するために必要とするフィラメントランプ1の出力が抑えられる。したがって、従来に比べて、出力が小さいフィラメントランプ1で目標温度まで加熱することができる。
【0022】
続いて、本発明のフィラメントランプ1の製造方法について説明する。
図3はフィラメントランプ1の製造方法を説明するための概略図である。
図3(a)に示すように、まず、フィラメント構造体30と発光管形成ガラス20を用意する。所定の長さのフィラメント3の両端に、先端がL字状に曲げられた内部リード4をスポット溶接により接続する。一対の内部リード4の他端に外部リード6が取り付けられた金属箔5を取り付けてフィラメント構造体30となる。
発光管形成ガラス20は、樋状のガラスを2本用意し、一方の樋状ガラス25の側面に、2本の管を並べて配置したツインチューブを、フィラメント3の長さに合わせた所定の間隔で形成して側管22を設ける。また、他方の樋状ガラス25の側面には、中央に排気管を一つ設ける。側管22や排気管は、取付け位置のガラス表面をバーナー等で加熱することによって、接合させることができる。
【0023】
側管22の数に対応する数のフィラメント構造体30を用意し、フィラメント構造体30の各内部リード4を、発光管形成ガラス20の一方の樋状ガラス25の側管22に挿入する。さらに、内部リード4が挿入された側管22が形成された樋状ガラス25と、排気管が形成された他方の樋状ガラス25を突き合わせ、突合せ面を溶着させて図3(b)に示すような管状の発光管2を形成する。そして、発光管2の両端に円盤状の側壁を溶着させて取り付ける。
【0024】
側管22に挿入された金属箔5に対応する位置をピンチシールすることによって封止部23を形成し、発光管2の内部を気密空間とする。排気管から封入ガスを導入し、排気管の一部を強熱して軟化させて切り離し、ハロゲンガスが封入されたハロゲンランプが完成する。
【0025】
続いて、第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態のフィラメントランプ1´を示す説明用断面図である。
第1の実施形態のフィラメントランプ1では、内部リード4は全て側管22に挿通され、筒状の本体部21の外周面から外方に伸びるように形成されている。しかし、第2の実施形態のフィラメントランプ1´では、両端に配置されるフィラメント33について、隣にフィラメント3が配置されていない一端から導出される内部リード43を、発光管2の本体部21の管軸に沿って延在させている。管軸に沿って延びる内部リード43は、本体部21の両端において金属箔5を介してピンチシールされ、封止部24が形成されている。
【0026】
発光管2の本体部21の中央から導出される内部リード4は、給電するために外方に伸ばして電源と接続する必要があるが、発光管2の本体部21の両端から導出される内部リード43には、従来どおり両端から給電することができる。そのため、発光管2の本体部21の内部の両端に配置されるフィラメント33であって、発光管2の本体部21の末端の、隣にフィラメント3が配置されていない一端から導出される内部リード43は、側管22を用いて外方に伸ばさなくてもよい。したがって、フィラメント3に接続される内部リード4のうち、少なくとも隣にフィラメント3が配置される一端から導出される内部リード4だけが、本体部21から外周面から外方に伸びる側管22に挿通して給電する必要があるといえる。
【0027】
第2の実施形態のフィラメントランプ1´は、第1の実施形態のフィラメントランプ1とほぼ同様に形成されるが、両端に配置されるフィラメント構造体の一方の内部リード4をフィラメント3と同一方向に伸びるように形成する点が異なる。フィラメント3と同一方向に伸びる内部リード4は側管22に挿通させず、発光管2の本体部21の両端において、金属箔5を介してピンチシールをして気密封止する。
【符号の説明】
【0028】
1 フィラメントランプ
2 発光管
21 本体部
22 側管
23 封止部
3 フィラメント
4 内部リード
5 金属箔
6 外部リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空長尺状の本体部と該本体部の表面から外方に伸びる側管とを備える発光管と、
発光管の本体部の内部に管軸方向に伸びるように順次並んで配置されて各々独立して給電される複数のフィラメントと、
前記フィラメントの両端に接続された内部リードとを備え、
少なくとも隣にフィラメントが配置される一端から導出される内部リードは、前記側管に挿通されていることを特徴とするフィラメントランプ。
【請求項2】
前記側管は2本の管が並んで配置されており、隣接して配置されるフィラメントそれぞれに接続する内部リードが前記2本の管に1本ずつ挿通されていることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−9043(P2011−9043A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150791(P2009−150791)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】