説明

フィラメントワインディング成形における樹脂付着方法と樹脂付着装置

【課題】樹脂付着作業の高速化を図ることができ、しかもメンテナンスの容易化を図ることができる、FW成形における樹脂付着方法および樹脂付着装置を提供する。
【解決手段】本発明においては、液滴噴射方式により繊維1の表面に向けて樹脂8を噴射することにより、該繊維1に樹脂8を付着させる。樹脂付着装置4は、主剤噴射用のノズル29aと硬化剤噴射用のノズル29bとを多数個備える液滴噴射装置10と、これらノズル29a・29bと所定の対向間隔を置いて繊維1を走行させる走行装置11と、主剤12が充填された主剤タンク13を含み液滴噴射装置10に主剤12を供給する第1経路14と、硬化剤15が充填された硬化剤タンク16を含み液滴噴射装置10に硬化剤15を供給する第2経路17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング成形において繊維に樹脂を付着させる、樹脂付着方法と樹脂付着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフィラメントワインディング成形(以下、適宜にFW成形と称する)における樹脂付着装置の構成を図9に示す。この樹脂付着装置は、樹脂101が溜められる樹脂槽102と、該樹脂槽102内の樹脂101に下部が浸かった状態で配置される回転ローラ103と、回転ローラ103の表面に付着した樹脂101の量を調整するためのナイフエッジ104とを備え、回転ローラ103を繊維105の送り速度に応じた速度で回転させることにより、該回転ローラ103の表面に付着した樹脂101を、回転ローラ103の上部に触れつつ送られる繊維105に付着させている。同様の構成は、例えば特許文献1にも見受けられる。
【0003】
【特許文献1】特開2007−185827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のFW成形においては、生産性の向上が解決すべき重要な課題とされており、樹脂付着装置においても、より高速に樹脂の付着処理を進めることが求められる。しかし、図9および特許文献1に示すローラ方式では、繊維105の送り速度を増速させると、回転ローラ103の表面に十分な量の樹脂101が付着せず、結果として繊維105に対して樹脂101を十分に付着させることができない。つまり、ローラ方式では、処理速度を上げると樹脂101上に付着ムラが生じるおそれがあり、処理速度に限界があり、FW成形の生産性の向上の妨げとなっていた。
加えて、ローラ方式では、回転ローラ103の表面で樹脂101が硬化することを避けるため、定期的に清掃する必要があり、メンテナンスに手間が掛かる不利もあった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、樹脂付着作業の高速化を図ることができ、しかもメンテナンスの容易化を図ることができる、FW成形における樹脂付着方法および樹脂付着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液滴噴射方式により繊維表面に向けて樹脂を噴射することにより、該繊維に樹脂を付着させることを特徴とするフィラメントワインディング成形における樹脂付着方法である。
本発明における液滴噴射方式の具体例としては、電圧を加えると変形するピエゾ素子(圧電素子)を用いたピエゾ方式、加熱により圧力室内の樹脂に気泡を発生させて樹脂を噴射するサーマル方式、超音波方式などを挙げることができる。
なお、本発明における「付着」とは、樹脂が繊維の表面に載っている状態のみならず、一部が繊維に含浸された状態をも含む概念である。
【0007】
FW成形に用いられる樹脂としては、光硬化性樹脂或いは熱硬化性樹脂などが考えられるが、特に2液性の熱硬化性樹脂が好ましい。かかる2液性の樹脂を採用した場合には、液滴噴射方式により繊維表面に向けて樹脂の主剤を噴射する主剤噴射工程と、この主剤噴射工程に前後して、液滴噴射方式により繊維表面に向けて硬化剤を噴射する硬化剤噴射工程とを含むものとすることが好ましい。
【0008】
前記主剤付着工程と硬化剤噴射工程とは、複数回繰り返すことが好ましい。また、前記主剤および/又は硬化剤を所定温度に維持しながら液滴噴射を行うようにすることが好ましい。
【0009】
また本発明は、フィラメントワインディング成形において、繊維に樹脂を付着させる樹脂付着装置を対象とする。この樹脂付着装置は、主剤噴射用のノズルと硬化剤噴射用のノズルとを多数個備える液滴噴射装置と、これらノズルと所定の対向間隔を置いて繊維を走行させる走行装置と、主剤が充填された主剤タンクを含み前記液滴噴射装置に主剤を供給する第1経路と、硬化剤が充填された硬化剤タンクを含み前記液滴噴射装置に硬化剤を供給する第2経路とを備えるものとする。
本発明における液滴噴射装置の液滴噴射方式は、先に述べたものと同様であり、電圧を加えると変形するピエゾ素子(圧電素子)を用いたピエゾ方式、加熱により圧力室内の樹脂に気泡を発生させて樹脂を噴射するサーマル方式、超音波方式などを挙げることができる。
【0010】
液滴噴射装置は、主剤噴射用のノズル群を有する第1ヘッドと、硬化剤噴射用のノズル群を有する第2ヘッドとを備えるものとすることができる。この場合には、複数個の第1ヘッドと第2ヘッドとを、繊維の走行方向に沿って交互に配した形態を採ることができる。
【0011】
液滴噴射装置が、主剤噴射用のノズルと硬化剤噴射用のノズルの二種のノズルが特定のパターンに配置されたヘッドを備えている形態であってもよい。ここでいう特定のパターンの具体例としては、主剤噴射用のノズルからなるノズル群と、硬化剤噴射用のノズルからなるノズル群とが、繊維の走行方向に沿って交互に配置された形態を挙げることができる。
【0012】
前記主剤および/又は硬化剤を所定温度に維持する恒温手段を備えるものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明における樹脂付着方法および樹脂付着装置においては、液滴噴射方式により繊維表面に向けて樹脂を噴射することにより、該繊維に樹脂を付着させるようにしたので、最適量の樹脂を確実に繊維に付着させることができる。つまり、従来のローラ方式では、樹脂槽内の樹脂に対する回転ローラの含浸具合や回転ローラの回転速度(繊維の走行速度)等によって、単位長さ当たりの樹脂の付着量が左右されやすく、当該付着量を厳密に規定することが困難であり、付着ムラが生じやすい。これに対して本発明によれば、液滴噴射方式により繊維表面に向けて直接的に樹脂を噴射するので、最適量の樹脂を繊維に付着させることができる。
【0014】
液滴噴射方式においては、単位時間当たりの樹脂の噴射量を大小に調整して、該噴射量を厳密に規定することが容易であり、処理速度(繊維の走行速度)に応じた最適量の樹脂を繊維に供給することができる。具体的には、例えばピエゾ素子に対する供給電圧等を変更することで、噴射量を大小に調整することができる。ローラ方式のように、処理速度(繊維の走行速度)を上げたときに回転ローラ表面における樹脂の付着量が不足し、結果として繊維に対する樹脂の付着ムラが生じるおそれがなく、樹脂付着工程における処理速度を向上することができる。これにより、FW成形の高速化に貢献できる。
【0015】
さらに、定期的或いは任意に空噴射を行うだけで、ノズルの詰まりを防ぐことができる。したがって、回転ローラの洗浄のような煩わしいメンテナンスは不要である点でも優れている。
【0016】
2液硬化タイプの樹脂を選択した場合には、液滴噴射方式により繊維表面に向けて樹脂の主剤を噴射する主剤噴射工程と、この主剤噴射工程に前後して、液滴噴射方式により繊維表面に向けて硬化剤を噴射する硬化剤噴射工程とを含むものとすることが好ましい。これによれば、繊維の表面において主剤と硬化剤とを混合させることができるので、従来のローラ方式のように回転ローラの表面や樹脂槽内において樹脂の硬化が始まって、樹脂が回転ローラ等に付着することがなく、したがって回転ローラ等の洗浄などのメンテナンスが不要となる。
【0017】
前記主剤付着工程と硬化剤噴射工程とは、複数回繰り返すことが好ましい。これにより、繊維上において、主剤と硬化剤とを確実に混合させることできるので、両剤の混合不良に起因するFW成形品からの繊維の剥がれを防いで、FW成形品の品質向上に貢献できる。具体的には、主剤噴射用のノズル群を有する第1ヘッドと、硬化剤噴射用のノズル群を有する第2ヘッドとを、繊維の走行方向に沿って交互に配置して、両剤を繊維上に重ね塗ることで、両剤を混合させることができる。一つのヘッド内に、主剤噴射用のノズルと硬化剤噴射用のノズルの二種のノズルが、上述のような特定のパターンに配置された形態としてもよく、要は、主剤と硬化剤とが均一的に樹脂上に噴射されるようにすればよい。なお、本発明者等は、液滴噴射方式においてノズルから噴射される樹脂(主剤および硬化剤)の液量は、ピコリットルオーダーの微量液量とすることを考えている。このため、両剤を樹脂上に重ね塗り、或いは交互に塗布すれば、両剤を確実に混合できると考える。
【0018】
樹脂装置に主剤および/又は硬化剤を所定温度に維持する恒温手段を付与して、主剤および/又は硬化剤を所定温度に維持しながら液滴噴射を行うようにしていると、両剤の良好な粘度を確保して、ノズルの詰まりを確実に防ぐことができる。なお、2液硬化タイプのエポキシ樹脂では、両者を混合した状態で概ね80℃程度に加熱すると硬化が始まるおそれがあるため、ローラ方式では樹脂槽内の樹脂を当該温度以上に加熱することはできない。これに対して本発明のように、両剤を別々に樹脂に向けて液滴噴射するようにしていると、液滴噴射時において両剤を別々に80℃以上に加熱しても何らの不具合は無く、したがって両剤の良好な粘度を確保して、ノズルの詰まりを確実に防ぐことができる。また、この種の液滴噴射方式では、主剤や硬化剤の粘度が高いと、液滴の形状或いは噴射量を一定とすることが難しい。これに対して本願発明のように、主剤や硬化剤を所定温度に加熱しながら液滴噴射を行うようにしていると、これらの粘度を下げて、液滴の形状或いは噴射量を安定化することができる。このことは、繊維に対する樹脂の付着量を安定化できることを意味し、結果として、FW成形品の品質向上に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施例) 図1ないし図6に、本発明に係る樹脂付着方法および樹脂付着装置を、マンドレルに対して繊維を巻き付けるフィラメントワインディング装置(以下、FW装置と記す)に適用した第1実施形態を示す。図2に示すように、このFW装置は、ボビンBからのカーボン繊維(以下、単に繊維と記す)1の解舒を担う解舒装置2、繊維1に所定のテンションを付与するテンション装置3、繊維1に対して樹脂8を付着する樹脂付着装置4、繊維1をトラバースさせるトラバース装置5などを備え、樹脂付着装置4により樹脂8が付着された繊維1をトラバース装置5によりトラバースしながら、マンドレル7に巻き付ける。繊維1は上下にフラット面を有するテープ状を呈しており、図1および図3に示すごとく、樹脂付着装置4は繊維1の上面に樹脂8を付着させる。
【0020】
図1ないし図3に示すように、樹脂付着装置4は、液滴噴射方式により繊維1の表面に向けて樹脂8を噴射する液滴噴射装置10と、液滴噴射装置10の下方で所定の対向間隔を置いて繊維1を走行させる走行装置11と、主剤12が充填された主剤タンク13を含み液滴噴射装置10に主剤12を供給する第1経路14と、硬化剤15が充填された硬化剤タンク16を含み液滴噴射装置10に硬化剤15を供給する第2経路17とを備える。本実施形態においては、図2に示すように、液滴噴射装置10を挟むように、繊維1の走行方向の上流側と下流側とに配された一対の駆動ローラ11a・11bで走行装置11を構成した。
【0021】
図1および図4に示すように、液滴噴射装置10は、主剤噴射用のノズル群を備える第1ヘッド20と、硬化剤噴射用のノズル群を備える第2ヘッド21とで構成され、各3つのヘッド20・21が、繊維1の走行方向に沿って交互に配置されている。第1経路14は、主剤タンク13から伸びる送給流路22と、該送給流路から分岐されて第1ヘッド20に至る分岐流路23とで構成される。同様に第2経路17は、硬化剤タンク16から伸びる送給流路24と、該送給流路24から分岐されて第2ヘッド21に至る分岐流路25とで構成される。これら流路22・23・24・25は、金属又は樹脂製の管や、ホースなどからなる。なお、これら第1および第2経路14・17には、流量をコントロールするための電磁弁やポンプなどを設けることができる。
【0022】
図3および図4に示すように、第1ヘッド20は分岐流路23から送り込まれた主剤12を受ける一つの接続室26と、該接続室26に連設されて主剤13が溜められる一つの貯留室27と、該貯留室27から分岐された複数個の圧力室28とを備える。各圧力室28には、主剤12の噴出し口となるノズル29aが開設されている。第1ヘッド20は、電圧により伸縮するピエゾ素子30を圧力室28に対する圧力発生源とするものであり、各圧力室28の隔壁(上壁)には、該ピエゾ素子30により振動される振動板31が設置されている。ピエゾ素子30の伸縮を受けて、図3に仮想線で示すごとく振動板31が下方に膨らむ凸状に姿勢変位すると、圧力室28内の体積が減少し、これにて第1ヘッド20の下面に開口するノズル29aから、ピコリットルオーダーの所定量の液滴からなる主剤12が繊維1の上面に向けて噴射される。この状態から図3に実線で示すごとく振動板31がフラットに戻ると、圧力室28内の体積が増加し、これにて貯留室27から圧力室28へ主剤12が供給される。
【0023】
接続室26には、主剤12を加熱して、これを所定温度(40〜100℃の一定温度)に維持するための熱線(恒温手段)33と、接続室26内の温度を検知するための温度センサ(不図示)とが配されている。温度センサによる検出結果を予め設定されているしきい値と比較し、この比較結果に基づいて熱線33をオン・オフ制御することで、主剤12を所定温度(例えば80℃以上)に保つ。
第2ヘッド21の構成も第1ヘッド20の構成と同等であり、図3において、同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。なお、符号29bは、硬化剤吐出用のノズルを示す。
【0024】
図5および図6に、樹脂付着装置4による繊維に対する樹脂の付着形態(吐出形態)を模式的に示す。図5(a)・(b)に示す形態では、主剤12と硬化剤15とからなる第1〜第3の付着層35・36・37を繊維1上に三層設けており、図5(a)では、これら付着層35・36・37の繊維1上における主剤12の塗布領域と硬化剤15の塗布領域とが一致するようにした。図5(b)では、第1および第3の付着層35・37に対して、第2の付着層36における主剤12と硬化剤15の塗布領域がずれるようにした。
【0025】
図6(a)〜(c)に、各層35・36・37の主剤12および硬化剤15の塗布領域を示す。図6(a)では、主剤12および硬化剤15の塗布領域の境界が、繊維1の幅方向に走るようにした。図6(b)では、主剤12および硬化剤15の塗布領域の境界が、繊維1の幅方向に対して斜めに走るようにした。図6(c)では、主剤12および硬化剤15の塗布領域の境界が、繊維1の走行方向に凹凸状となるようにした。このように、液滴噴射方式では、繊維1に対する塗布パターンを様々に態様に変更することが可能である。
【0026】
本実施形態に係る樹脂付着装置4によれば、液滴噴射方式により繊維1表面に向けて直接的に樹脂8(主剤12と硬化剤15)を噴射することにより、該繊維1に樹脂8を付着させるようにしたので、常に所定量の樹脂8を確実に繊維1に付着させることができる。簡単且つ確実に単位時間当たりの樹脂8の噴射量を増減することが可能であり、樹脂8の付着量を容易に増減できる利点もある。したがって、処理速度の向上を図ることを目的として繊維1の走行速度を増した場合には、液滴噴射装置10からの単位時間当たりの樹脂8の噴射量を増やせば、所定量の樹脂8を過不足無く繊維1に付着させることができる。したがって、FW成形の処理速度の向上にも容易に対応でき、樹脂付着工程がFW成形の律速段階となることもない。さらに、従来のローラ方式のように付着ムラが生じることがなく、繊維1表面の全面に渡って均一的に、過不足無く所定量の樹脂8を付着させることができる点でも優れている。
【0027】
ピコリットルオーダーで主剤12と硬化剤15とを別々に塗布し、両剤12・15を繊維1上で重ね塗りする形態であるから、繊維1上で両剤12・15を確実に混合させることができる。これにより、両剤12・15の混合不良に起因するFW成形品からの繊維1の剥がれを防いで、FW成形品の信頼性の向上、品質向上に貢献できる。
【0028】
接続室26内に熱線33を配して、該熱線33で主剤12および硬化剤15を所定温度に加熱するようにしていると、両剤12・15の粘度を低下させて、ノズル29から噴射される液滴の形状或いは噴射量を安定化することができる。これにより、繊維1に対する主剤12および硬化剤15の付着量を安定化して、FW成形品の品質向上に貢献できる。この種の2液タイプの熱硬化性樹脂では、主剤12と硬化剤15とを混合した状態で、これを80℃以上に加熱すると硬化が始まるおそれがあるが、本実施形態においては、両剤12・15を別々に繊維1に向けて噴射するため、当該温度範囲(80℃)を超えて加熱することが可能であり、両剤12・15の粘度を確実に低下させて、液滴形状や噴射量を安定化させることができる。
【0029】
定期的或いは任意に空噴射を行うだけで、ノズル29の詰まりを防ぐことができる。したがって、従来のローラ方式における回転ローラの洗浄のような煩わしいメンテナンスは不要である。主剤12と硬化剤15とを別々に繊維1に噴射し、繊維1上で両剤12・15を混合させる形態であるから、樹脂付着装置4内において硬化が始まるおそれが全く、この点でもメンテナンスの手間を省くことができる。
【0030】
(第2実施形態) 図7に本発明の樹脂付着方法および樹脂付着装置の第2実施形態を示す。この第2実施形態では、一つのヘッド40に、主剤噴射用のノズル29aと硬化剤噴射用のノズル29bの二種のノズルを設けた点が、先の第1実施形態と相違する。図7(a)のヘッド40では、主剤噴射用のノズル群を繊維1の走行方向の上流側に配置し、硬化剤噴射用のノズル群を下流側に配置している。各ノズル群は、繊維1の幅方向に走る複数個のノズル29a・29bを単位列として、この単位列が繊維1の走行方向に3列配設されている。各単位列の繊維1の幅方向におけるノズル29a・29bの位置は一致している。
【0031】
図7(b)のヘッド40では、主剤噴射用のノズル群と、硬化剤噴射用のノズル群とが、繊維1の走行方向に交互に配設されている。各ノズル群は、繊維1の幅方向に走る複数個のノズル29a・29bを単位列として、この単位列が繊維1の走行方向に2列配設されている。両単位列の繊維1の幅方向におけるノズル位置は不一致とされている。
【0032】
(第3実施形態) 図8に、本発明の樹脂付着方法および樹脂付着装置をFW装置のヘリカル巻装置に適用した実施形態を示す。ヘリカル巻装置は、マンドレル7の外周面にヘリカル巻きで繊維1を巻き付けるものであり、マンドレル7を囲むように配置された円筒状のリング45と、リング45の筒壁を貫通するように装着されて、不図示の解舒装置から供給された繊維1をマンドレル7に向けて案内するガイド筒46とを備える。各ガイド筒46に対応して、リング45の筒壁の内面には液滴噴射装置10が装着されており、ガイド筒46の先端から送り出された繊維1に向けて液滴状態の樹脂8(主剤と硬化剤)を噴射することにより、繊維1の一側面に樹脂8に付着させる。マンドレル7は、不図示の支持台に支持されており、支持台を移動させながらマンドレル7を僅かずつ回転変位させることにより、マンドレル7の外周面にヘリカル巻き層を形成できる。
【0033】
この第3実施形態によれば、繊維1をマンドレル7に巻く直前に樹脂8を付着させることができるので、ガイド筒46や搬送用のローラなどに樹脂8が付着するおそれがなく、したがって、最適量の樹脂8が付着された繊維1を確実にマンドレル7に巻き付けることができる。
【0034】
上記実施形態においては、ピエゾ素子を用いたピエゾ方式の液滴噴射装置を例にして説明したが、本発明はこれに限られず、サーマル方式や超音波方式などの液滴噴射装置であってもよい。ヘッドの個数や、ノズルの配列パターンなどは、上記実施形態に挙げたものに限られない。恒温手段は、熱線33に限られず、加温板などであってよい。恒温手段の配設箇所は接続室26に限られず、タンク13・16などであってもよく、要は第1・第2経路14・17上に設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る樹脂付着装置の構成図である。
【図2】FW成形を説明するための斜視図である。
【図3】樹脂付着装置を構成する液滴噴射装置の構成図である。
【図4】液滴噴射装置の構成を説明するための図である。
【図5】(a)・(b)は、樹脂付着装置による繊維に対する樹脂の付着形態を模式的に示す縦断側面図である。
【図6】(a)・(b)・(c)は、樹脂付着装置による繊維に対する樹脂の付着形態を模式的に示す平面図である。
【図7】(a)・(b)は本発明の第2実施形態に係る樹脂付着装置を示しており、樹脂付着装置のヘッド構成(ノズル配置)を示している。
【図8】本発明の第3実施形態に係る樹脂付着装置を示す図であり、ヘリカル巻装置に樹脂付着装置を与えている。
【図9】従来の樹脂付着装置を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 繊維
4 樹脂付着装置
8 樹脂
10 液滴噴射装置
11 走行装置
12 主剤
13 主剤タンク
14 第1経路
15 硬化剤
16 硬化剤タンク
17 第2経路
20 第1ヘッド
21 第2ヘッド
33 恒温手段(熱線)
40 ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴噴射方式により繊維表面に向けて樹脂を噴射することにより、該繊維に樹脂を付着させることを特徴とするフィラメントワインディング成形における樹脂付着方法。
【請求項2】
液滴噴射方式により繊維表面に向けて樹脂の主剤を噴射する主剤噴射工程と、
前記主剤噴射工程に前後して、液滴噴射方式により繊維表面に向けて硬化剤を噴射する硬化剤噴射工程とを含む請求項1記載のフィラメントワインディング成形における樹脂付着方法。
【請求項3】
前記主剤付着工程と前記硬化剤噴射工程とを複数回繰り返す、請求項2記載のフィラメントワインディング成形における樹脂付着方法。
【請求項4】
前記主剤および/又は硬化剤を所定温度に維持しながら液滴噴射を行う、請求項2又は3記載のフィラメントワインディング成形における樹脂付着方法。
【請求項5】
フィラメントワインディング成形において、繊維に樹脂を付着させる樹脂付着装置であって、
主剤噴射用のノズルと硬化剤噴射用のノズルとを多数個備える液滴噴射装置と、
これらノズルと所定の対向間隔を置いて繊維を走行させる走行装置と、
主剤が充填された主剤タンクを含み前記液滴噴射装置に主剤を供給する第1経路と、
硬化剤が充填された硬化剤タンクを含み前記液滴噴射装置に硬化剤を供給する第2経路とを備えることを特徴とする樹脂付着装置。
【請求項6】
前記液滴噴射装置が、主剤噴射用のノズル群を有する第1ヘッドと、硬化剤噴射用のノズル群を有する第2ヘッドとを備え、
複数個の第1ヘッドと第2ヘッドとが、繊維の走行方向に沿って交互に配置されている請求項5記載の樹脂付着装置。
【請求項7】
前記液滴噴射装置が、主剤噴射用のノズルと硬化剤噴射用のノズルの二種のノズルが特定のパターンに配置されたヘッドを備えている請求項5記載の樹脂付着装置。
【請求項8】
前記主剤および/又は硬化剤を所定温度に維持する恒温手段を備えている請求項5乃至7のいずれかに記載の樹脂付着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−107202(P2009−107202A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281277(P2007−281277)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】