説明

フィラメントワインディング装置のボビン解舒装置

【課題】繊維束の挙動を安定させて、該繊維束の転覆を防止する技術を提供する。
【解決手段】帯状の繊維束Fが巻かれたボビンBを回転自在に支持するボビン支持軸33と、前記ボビンBから解舒された繊維束Fの進行方向を変更する固定ガイド35と、前記ボビンBと前記固定ガイド35との間に配置される補助ローラ34と、を備えたボビン解舒装置32A(32B)であって、前記固定ガイド35は、該固定ガイド35の軸心が前記ボビン支持軸33の軸心に対して略直交となるように配置され、前記補助ローラ34は、該補助ローラ34の軸心が前記ボビン支持軸33の軸心に対して平行又は略平行に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング装置のボビン解舒装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ライナーの外周面に帯状の繊維束を巻き付けていくフィラメントワインディング装置が知られている。フィラメントワインディング装置には、繊維束が巻かれたボビンを複数個配置したクリールスタンドが備えられている(例えば特許文献1参照)。フィラメントワインディング装置は、クリールスタンドに配置された各ボビンから繊維束を転がし取り方式で解舒し、該繊維束をライナーの外周面に巻き付ける。
【0003】
このようなフィラメントワインディング装置、特に多給糸タイプのフィラメントワインディング装置においては、多数のボビンから引き出した繊維束を案内して同時にライナーに巻き付ける必要があるため、クリールスタンドが大型化する傾向にあった。そのため、ボビンから解舒された繊維束の走行距離が長くなるとともに、ボビンから解舒された繊維束の進行方向を曲げながら案内する必要が生じる。従って、帯状の繊維束がボビンから解舒された際の解舒方向と異なる方向に曲げられて案内される場合においては、繊維束に捩り作用が生じて繊維束が裏返る、即ち、繊維束が転覆する恐れがあった。
【0004】
具体的に説明すると、図5に示すように、ボビンBから解舒された繊維束Fは、ボビンBから固定ガイド45の間で捩られる。繊維束Fの捩れ角は、該繊維束Fの綾振に応じて変動する。ボビンBから解舒された位置の繊維束Fの幅方向一側をa1、幅方向他側をa2と定義し、固定ガイド45に掛けられた位置の繊維束Fの幅方向一側をb1、幅方向他側をb2と定義した場合、a1からb1までの距離とa2からb2までの距離の差は、繊維束Fの綾振によってトラバース折返し位置TL・TR付近で最も大きくなる。その結果、繊維束Fの挙動が不安定になる場合があり、該繊維束Fが転覆する可能性が高まるという問題を有していた。その結果、捩られたままの状態でライナーに巻き付けられる恐れがあり、製品の品質低下、強度低下の要因となることがあった。
【0005】
更に、繊維束Fに掛かる張力は、該繊維束Fの綾振に応じて変動する。ボビンBから固定ガイド45までの区間距離は、繊維束Fの綾振によって変化するため、該繊維束Fに掛かる張力が変動するのである。その結果、繊維束Fの挙動が不安定になる場合があり、該繊維束Fが転覆する可能性が高まるという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−23481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであり、繊維束の挙動を安定させて、該繊維束の転覆を防止する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、第一の発明は、
帯状の繊維束が巻かれたボビンを回転自在に支持するボビン支持軸と、
前記ボビンから解舒された繊維束の進行方向を変更する固定ガイドと、
前記ボビンと前記固定ガイドとの間に配置される補助ローラと、を備えたボビン解舒装置であって、
前記固定ガイドは、該固定ガイドの軸心が前記ボビン支持軸の軸心に対して略直交となるように配置され、
前記補助ローラは、該補助ローラの軸心が前記ボビン支持軸の軸心に対して略平行に配置される、とした。
【0010】
第二の発明は、第一の発明に係るボビン解舒装置において、
前記補助ローラは、前記ボビンの軸心方向の長さと略同一の長さである、とした。
【0011】
第三の発明は、第一又は第二の発明に係るボビン解舒装置において、
前記固定ガイドは、ボビンから繊維束が解舒される際の繊維束のトラバース幅の中央位置からずれた位置に配置される、とした。
【0012】
第四の発明は、第一から第三のいずれかの発明に係るボビン解舒装置において、
前記補助ローラは、該補助ローラの軸心方向中央部から軸心方向端部へ向かうに従って外径が徐々に小さくなる外周面を構成する、とした。
【0013】
第五の発明は、第一から第四のいずれかの発明に係るボビン解舒装置において、
前記補助ローラは、該補助ローラと繊維束との接触長さが該繊維束の幅寸法の二倍以上となる位置に配置される、とした。
【0014】
第六の発明は、第一から第四のいずれかの発明に係るボビン解舒装置において、
前記補助ローラは、前記ボビンから該補助ローラに導かれる繊維束の軌道と該補助ローラから前記固定ガイドに導かれる繊維束の軌道とのなす角度が90度よりも小さくなる位置に配置される、とした。
【0015】
第七の発明は、第一から第六のいずれかの発明に係るボビン解舒装置において、
前記固定ガイドは、前記補助ローラから該固定ガイドに導かれる繊維束の軌道と該固定ガイドから送られる繊維束の軌道とのなす角度が90度よりも大きくなる位置に配置される、とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
第一の発明によれば、繊維束がボビンから補助ローラの間では捩れず、補助ローラから固定ガイドの間で捩れるため、繊維束と補助ローラのグリップ力が維持される。これにより、繊維束の挙動を安定させることができ、該繊維束の転覆を防止することが可能となる。
【0018】
第二の発明によれば、トラバース折返し位置付近においても、繊維束がボビンから補助ローラの間では捩れず、補助ローラから固定ガイドの間で捩れるため、繊維束と補助ローラのグリップ力が維持される。これにより、繊維束の挙動を安定させることができ、該繊維束の転覆を防止することが可能となる。
【0019】
第三の発明によれば、一方のトラバース折返し位置において繊維束の転覆を抑制できるため、該繊維束の転覆の可能性を低減できる。これにより、繊維束の挙動を安定させることができ、該繊維束の転覆を防止することが可能となる。
【0020】
第四の発明によれば、トラバース折返し位置付近においても、繊維束の幅による距離差が減少するため、該繊維束が捩れることを抑制できる。これにより、繊維束の挙動を安定させることができ、該繊維束の転覆を防止することが可能となる。
【0021】
第五の発明によれば、ボビンから解舒された繊維束が固定ガイドに導かれる途中で補助ローラに長く接するため、繊維束と補助ローラのグリップ力が増大する。これにより、繊維束の挙動を安定させることができ、該繊維束の転覆を防止することが可能となる。
【0022】
第六の発明によれば、ボビンから解舒された繊維束が固定ガイドに導かれる途中で補助ローラに長く接するため、繊維束と補助ローラのグリップ力が増大する。これにより、繊維束の挙動を安定させることができ、該繊維束の転覆を防止することが可能となる。
【0023】
第七の発明によれば、一方のトラバース折返し位置付近における繊維束の転覆を抑制できるため、該繊維束の転覆の可能性を低減できる。これにより、繊維束の挙動を安定させることができ、該繊維束の転覆を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】フィラメントワインディング装置100の全体構成を示す図。
【図2】本発明の第一実施形態に係るボビン解舒装置32Aの構成を示す図。
【図3】本発明の第二実施形態に係るボビン解舒装置32Bの構成を示す図。
【図4】(4A)繊維束Fが解舒されている状態を示す正面図。(4B)繊維束Fが解舒されている状態を示す側面図。
【図5】従来の実施形態に係るボビン解舒装置42の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態に係るボビン解舒装置32A(32B)は、フィラメントワインディング装置100を構成する。従って、最初にフィラメントワインディング装置100(以降「FW装置100」)の全体構成について簡単に説明する。
【0026】
図1は、FW装置100の全体構成を示す図である。図中に示す矢印Dは、ライナー1の移送方向を示している。また、ライナー1の移送方向と平行な方向をFW装置100の前後方向とし、ライナー1が移送される一方向を前側、他方向を後側と定義する。なお、FW装置100は、ライナー1を前後方向に往復動させるため、該ライナー1の移送方向に応じて前側及び後側が定まる。
【0027】
FW装置100は、ライナー1の外周面に繊維束Fを巻き付けていく装置である。FW装置100は、主にライナー移送部10と、ヘリカル巻き部20と、クリールスタンド30と、で構成される。
【0028】
ライナー移送部10は、ライナー1を回転させながら移送する。詳細には、ライナー移送部10は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送する。ライナー移送部10は、主に基台11と、ライナー支持フレーム12と、回転軸13と、で構成される。
【0029】
基台11は、FW装置100の前後方向に延設されたレール上に載置されている。基台11には、一対のライナー支持フレーム12と回転軸13が設けられている。そして、回転軸13に取り付けられたライナー1は、図示しない動力機構によって一方向に回転される。
【0030】
このような構成により、ライナー移送部10は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送することを可能としている。
【0031】
ヘリカル巻き部20は、ライナー1の外周面に繊維束Fを巻き付ける。詳細には、ヘリカル巻き部20は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値となる、いわゆるヘリカル巻きを行なう。ヘリカル巻き部20は、主に基台21と、ヘリカルヘッド22と、で構成される。
【0032】
基台21には、ヘリカルヘッド22が設けられている。ヘリカルヘッド22には、繊維束Fを案内する複数のノズル23が設けられている。そして、各ノズル23によって案内された繊維束Fは、回転しながら通過するライナー1の外周面に巻き付けられる。
【0033】
このような構成により、ヘリカル巻き部20は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値となる、いわゆるヘリカル巻きを行なうことを可能としている。
【0034】
クリールスタンド30は、ヘリカル巻き部20に繊維束Fを供給する。詳細には、クリールスタンド30は、ヘリカル巻き部20を構成するヘリカルヘッド22の各ノズル23に対して繊維束Fを供給する。クリールスタンド30は、主にラック31と、ボビン解舒装置32A(32B)と、で構成される。なお、ボビン解舒装置32A(32B)は、主にボビン支持軸33や補助ローラ34、固定ガイド35(図2参照)で構成される。
【0035】
ラック31には、複数のボビン支持軸33と補助ローラ34が互いに平行に取り付けられている。また、ラック31には、ボビン支持軸33の軸心方向に対して垂直に固定ガイド35が取り付けられている(図2参照)。ボビン支持軸33によって支持されるボビンBは、繊維束Fが引っ張られることによって回転し、該繊維束Fを解舒する(転がし取り方式)。そして、ボビンBから解舒された繊維束Fは、補助ローラ34によって固定ガイド35へ導かれ、図示しない複数の案内部材を介して対応するノズル23に送られる。
【0036】
このような構成により、クリールスタンド30は、ヘリカル巻き部20を構成するヘリカルヘッド22の各ノズル23に対して繊維束Fを供給することを可能としている。
【0037】
次に、本発明の第一実施形態に係るボビン解舒装置32Aについて詳しく説明する。
【0038】
図2は、本実施形態に係るボビン解舒装置32Aの構成を示す図である。なお、図中に示す矢印Xは、繊維束Fの送り方向を示している。図中に示す矢印Tは、ボビンBから繊維束Fが解舒される際の該繊維束Fの綾振を示している。
【0039】
ボビン支持軸33は、ボビンBを回転自在に支持する支持部材である。ボビン支持軸33は、略円筒形状に形成されており、該ボビン支持軸33にボビンBが外嵌される。なお、ボビン支持軸33によって支持されるボビンBは、上述したように繊維束Fが引っ張られることによって回転し、該繊維束Fを解舒する(転がし取り方式)。そして、ボビンBから解舒された繊維束Fは、補助ローラ34へ導かれる。
【0040】
補助ローラ34は、繊維束Fを所定の方向へ案内する回転部材である。補助ローラ34は、略円筒形状に形成されており、ボビンBから解舒された繊維束Fが掛けられる。補助ローラ34は、該補助ローラ34に接触した状態で送られる繊維束Fによって従動回転し、該繊維束Fを所定の方向へ案内する。そして、補助ローラ34によって案内された繊維束Fは、固定ガイド35へ導かれる。なお、補助ローラ34は、該補助ローラ34の軸心34aがボビン支持軸33の軸心33aに対して平行となるように取り付けられているため、繊維束FはボビンBと補助ローラ34の間で捩られることはない。
【0041】
また、繊維束Fは、ボビンBから解舒される際に綾振するため(図2中矢印T参照)、該繊維束Fの補助ローラ34に掛かる位置は綾振に応じて変化することとなる。このため、補助ローラ34は、ボビンBの軸心方向の長さと略同一の長さとなっている(図4B参照)。
【0042】
固定ガイド35は、繊維束Fを所定の方向へ案内する回転部材である。固定ガイド35は、略円筒形状に形成されており、補助ローラ34によって案内された繊維束Fが掛けられる。固定ガイド35は、該固定ガイド35に接触した状態で送られる繊維束Fによって従動回転し、該繊維束Fを所定の方向へ案内する。そして、固定ガイド35によって案内された繊維束Fは、対応するノズル23に導かれる。なお、補助ローラ34によって案内された繊維束Fは、固定ガイド35に掛けられることで一定の軌道に拘束される。このとき、固定ガイド35は、該固定ガイド35の軸心35aがボビン支持軸33の軸心33aに対して垂直となるように取り付けられているため、繊維束Fは補助ローラ34と固定ガイド35の間で捩られることとなる。
【0043】
このような構成により、本ボビン解舒装置32Aにおいては、トラバース折返し位置TL・TR付近においても、繊維束FがボビンBから補助ローラ34の間では捩れず、補助ローラ34から固定ガイド35の間で捩れるため、補助ローラ34のグリップ力が維持される。これにより、繊維束Fの挙動を安定させることができ、該繊維束Fの転覆を防止することが可能となる。
【0044】
次に、本発明の第二実施形態に係るボビン解舒装置32Bについて詳しく説明する。
【0045】
図3は、本実施形態に係るボビン解舒装置32Bの構成を示す図である。なお、図中に示す矢印Xは、繊維束Fの送り方向を示している。図中に示す矢印Tは、ボビンBから繊維束Fが解舒される際の該繊維束Fの綾振を示している。
【0046】
本実施形態に係るボビン解舒装置32Bは、上述した第一実施形態に係るボビン解舒装置32Aとほぼ同様の構成である。従って、第一実施形態に係るボビン解舒装置32Aと異なる部分を中心に説明する。
【0047】
図3に示すように、本ボビン解舒装置32Bを構成する補助ローラ34は、略紡錘形状に形成されている。補助ローラ34は、該補助ローラ34の軸心方向中央部から軸心方向端部へ向かうに従って外径が徐々に小さくなる外周面を構成し、補助ローラ34の軸心方向における断面の母線は、軸側から凸状の曲線となっている。本ボビン解舒装置32Bは、このような形状の補助ローラ34を用いることで、補助ローラ34と固定ガイド35の間における繊維束Fの捩れの発生を抑制し、該繊維束Fの転覆を防止している。
【0048】
具体的に説明すると、ボビンBから解舒された位置の繊維束Fの幅方向一側をa1、幅方向他側をa2と定義し、固定ガイド35に掛けられた位置の繊維束Fの幅方向一側をb1、幅方向他側をb2と定義する。すると、トラバース折返し位置TL・TRにおけるa1からb1までの距離とa2からb2までの距離の差は、補助ガイド33が略円筒形状の場合(図2参照)よりも小さくなる。従って、補助ローラ34と固定ガイド35の間における繊維束Fの捩れの発生を抑制することができ、該繊維束Fの転覆を防止することが可能となるのである。
【0049】
このような構成により、本ボビン解舒装置32Bにおいては、トラバース折返し位置TL・TR付近においても、繊維束Fの幅による距離差が減少するため、繊維束Fが捩れることを抑制できる。これにより、繊維束Fの挙動を安定させることができ、該繊維束Fの転覆を防止することが可能となる。
【0050】
また、図4A及び図4Bに示すように、ボビン解舒装置32A(32B)を構成する補助ローラ34は、該補助ローラ34と繊維束Fとの接触長さが該繊維束Fの幅寸法の二倍以上となる位置に配置されることを特徴としている。つまり、補助ローラ34と繊維束Fの接触長さをL、繊維束Fの幅寸法をWと定義すると、下記の数式が成立する。
数式:L>2W
【0051】
このような構成により、本ボビン解舒装置32A(32B)においては、ボビンBから解舒された繊維束Fが固定ガイド35に導かれる途中で補助ローラ34に長く接するため、繊維束Fと補助ローラ34のグリップ力が増大する。これにより、繊維束Fの挙動を安定させることができ、該繊維束Fの転覆を防止することが可能となる。
【0052】
なお、図4Aに示すように、ボビン解舒装置32A(32B)を構成する補助ローラ34は、ボビンBから補助ローラ34に導かれる繊維束Fの軌道と補助ローラ34から固定ガイド35に導かれる繊維束Fの軌道とのなす角度が90度よりも小さくなる位置に配置されるとしても良い。つまり、ボビンBから補助ローラ34に導かれる繊維束Fの軌道と補助ローラ34から固定ガイド35に導かれる繊維束Fの軌道とのなす角度をR1と定義すると、下記の数式が成立するように構成するのである。
数式:R1<90度
【0053】
このような構成により、本ボビン解舒装置32A(32B)においては、ボビンBから解舒された繊維束Fが固定ガイド35に導かれる途中で補助ローラ34に長く接するため、繊維束Fと補助ローラ34のグリップ力が増大する。これにより、繊維束Fの挙動を安定させることができ、該繊維束Fの転覆を防止することが可能となる。
【0054】
更に、図4Bに示すように、ボビン解舒装置32A(32B)を構成する固定ガイド35は、補助ローラ34から固定ガイド35に導かれる繊維束Fの軌道と固定ガイド35から送られる繊維束Fの軌道とのなす角度が90度よりも大きくなる位置に配置される。つまり、補助ローラ34から固定ガイド35に導かれる繊維束Fの軌道と固定ガイド35から送られる繊維束Fの軌道とのなす角度をR2と定義すると、下記の数式が成立する。
数式:R2>90度
【0055】
このような構成により、本ボビン解舒装置32A(32B)においては、一方のトラバース折返し位置TR付近における繊維束Fの転覆を抑制できるため、該繊維束Fの転覆の可能性を低減できる。これにより、繊維束Fの挙動を安定させることができ、該繊維束Fの転覆を防止することが可能となる。
【0056】
詳細に説明すると、一方のトラバース折返し位置TL付近のみにおいて繊維束Fが転覆する可能性が生じる。つまり、繊維束Fが転覆する恐れがある箇所をトラバース折返し位置TL付近に特定できる。従って、繊維束Fが転覆する発生確率を約5割低減することが可能となるのである。
【符号の説明】
【0057】
1 ライナー
10 ライナー移送部
11 基台
12 ライナー支持フレーム
13 回転軸
20 ヘリカル巻き部
21 基台
22 ヘリカルヘッド
23 ノズル
30 クリールスタンド
31 ラック
32A ボビン解舒装置
32B ボビン解舒装置
33 ボビン支持軸
34 補助ローラ
35 固定ガイド
B ボビン
F 繊維束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の繊維束が巻かれたボビンを回転自在に支持するボビン支持軸と、
前記ボビンから解舒された繊維束の進行方向を変更する固定ガイドと、
前記ボビンと前記固定ガイドとの間に配置される補助ローラと、を備えたボビン解舒装置であって、
前記固定ガイドは、該固定ガイドの軸心が前記ボビン支持軸の軸心に対して略直交となるように配置され、
前記補助ローラは、該補助ローラの軸心が前記ボビン支持軸の軸心に対して略平行に配置される、ことを特徴とするボビン解舒装置。
【請求項2】
前記補助ローラは、前記ボビンの軸心方向の長さと略同一の長さである、ことを特徴とする請求項1に記載のボビン解舒装置。
【請求項3】
前記固定ガイドは、ボビンから繊維束が解舒される際の繊維束のトラバース幅の中央位置からずれた位置に配置される、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボビン解舒装置。
【請求項4】
前記補助ローラは、該補助ローラの軸心方向中央部から軸心方向端部へ向かうに従って外径が徐々に小さくなる外周面を構成する、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のボビン解舒装置。
【請求項5】
前記補助ローラは、該補助ローラと繊維束との接触長さが該繊維束の幅寸法の二倍以上となる位置に配置される、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のボビン解舒装置。
【請求項6】
前記補助ローラは、前記ボビンから該補助ローラに導かれる繊維束の軌道と該補助ローラから前記固定ガイドに導かれる繊維束の軌道とのなす角度が90度よりも小さくなる位置に配置される、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のボビン解舒装置。
【請求項7】
前記固定ガイドは、前記補助ローラから該固定ガイドに導かれる繊維束の軌道と該固定ガイドから送られる繊維束の軌道とのなす角度が90度よりも大きくなる位置に配置される、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のボビン解舒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−63822(P2013−63822A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203680(P2011−203680)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】