説明

フィラメントワインディング装置

【課題】第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92よりも広い幅の繊維束Fをライナー1の外周面1Sに巻き付けることができ、ライナー1の部位に応じて繊維束Fの幅Wfを変えて巻き付けることができるフィラメントワインディング装置100を提供することである。
【解決手段】ライナー1の回転軸Raに対して略垂直方向に伸縮する複数の第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92を放射状に設けた第1ヘリカルヘッド43及び第2ヘリカルヘッド44を備え、ライナー1を回転させながら第1ヘリカルヘッド43及び第2ヘリカルヘッド44を通過させることで第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92の供給口から供給される繊維束Fをライナー1の外周面1Sに巻き付けていくフィラメントワインディング装置100において、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92は、供給口の幅を変更可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂を含浸させた繊維束をライナーの外周面に巻き付けていくフィラメントワインディング装置が知られている。フィラメントワインディング装置は、放射状に複数の繊維束ガイドを設けたヘリカルヘッドを備え、回転するライナーの外周面に複数本の繊維束を同時に巻き付けることを可能としている。例えば特許文献1の如くである。
【0003】
このようなフィラメントワインディング装置においては、巻き乱れを防止するためにライナーの外径に応じた最適な位置に繊維束ガイドを移動させる必要がある。従って、該繊維束ガイドをライナーの回転軸に近接する方向に移動させた場合であっても、隣り合う繊維束ガイド同士が干渉しないように、繊維束ガイドの供給口の開口幅が制限される。
【0004】
ところで、ライナーの外周面を繊維束で効率的に覆うには、繊維束の幅は広いほうがよい。特にライナーの筒状部での円周長は、ドーム部での円周長より長いため、筒状部に巻き付ける繊維束の幅は広いほうがよい。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、繊維束ガイドの供給口の開口幅が制限されている。ライナーの外周面に巻き付ける繊維束の幅は、繊維束ガイドの供給口の開口幅で決定される。繊維束ガイドを通過する前には繊維束ガイドの幅よりも広い幅の繊維束であっても、繊維束ガイドを通過する際には繊維束ガイドの供給口の開口幅に狭められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−36461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、ライナーの部位に応じて繊維束の幅を変えて巻き付けることができるフィラメントワインディング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、第1の発明は、ライナーの回転軸に対して略垂直方向に伸縮する複数の繊維束ガイドを放射状に設けたヘリカルヘッドを備え、前記ライナーを回転させながら前記ヘリカルヘッドを通過させることで前記繊維束ガイドの供給口から供給される繊維束を前記ライナーの外周面に巻き付けていくフィラメントワインディング装置において、前記繊維束ガイドは、前記供給口の幅を変更可能に構成されるものである。
【0010】
第2の発明は、前記繊維束ガイドは、開口幅の異なる第1供給口と第2供給口とを少なくとも備え、前記第1供給口と前記第2供給口を選択的に切り替えて繊維束を前記ライナーに供給するものである。
【0011】
第3の発明は、前記繊維束ガイドは、少なくとも前記第1供給口を備える第1供給ガイドと、前記第2供給口を備える第2供給ガイドとから構成されるものである。
【0012】
第4の発明は、前記繊維束ガイドは、前記第1供給口を備える前記第1供給ガイドと、前記第1供給口よりも開口幅の広い前記第2供給口を備える第2供給ガイドを同軸上に備え、前記第1供給口が前記第2供給口よりも前記ライナーの回転軸に対して接近した状態と、前記第1供給口が前記第2供給口よりも前記ライナーの回転軸に対して離間した状態とに切り替え自在構成されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
第1の発明によれば、繊維束ガイドの供給口の幅を広くすることができる。これにより、繊維束の幅が広がった状態でライナーの外周面に巻き付けることができる。また、ライナーの部位に応じて繊維束の幅を変えて巻き付けることができる。
【0015】
第2の発明によれば、繊維束ガイドの供給口の幅を広くすることができる。これにより、繊維束の幅を各供給口の幅に応じて広げた後にライナーの外周面に巻き付けることができる。また、ライナーの部位に応じて繊維束の幅を変えて巻き付けることができる。
【0016】
第3の発明によれば、繊維束を供給する供給ガイドを切り替えることで繊維束ガイドの供給口の幅を広くすることができる。これにより、繊維束の幅を各供給口の幅に応じて広げた後にライナーの外周面に巻き付けることができる。また、ライナーの部位に応じて繊維束の幅を変えて巻き付けることができる。
【0017】
第4の発明によれば、ライナーの外径に合わせて伸縮する繊維束ガイドの伸縮位置に応じて供給口の幅を変更することができる。これにより、繊維束の幅を各供給口の幅に応じて広げた後にライナーの外周面に巻き付けることができる。また、ライナーの部位に応じて繊維束の幅を変えて巻き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るフィラメントワインディング装置を示す図。
【図2】ヘリカル巻き装置を構成する第1ヘリカルヘッドならびに第2ヘリカルヘッドを示す図。
【図3】第1ヘリカルヘッドならびに第2ヘリカルヘッドを構成するガイド支持装置を示す図。
【図4】第1繊維束ガイド及び第2繊維束ガイドを通過した繊維束Fが第1供給ガイド及び第2供給ガイドに接触した状態を示す斜視図。
【図5】第1繊維束ガイド及び第2繊維束ガイドがライナーの回転軸に近接する方向に移動した状態を示す図。
【図6】第1繊維束ガイド及び第2繊維束ガイドがライナーの回転軸から離間する方向に移動した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係るフィラメントワインディング装置(以降「FW装置」)100の全体構成について説明する。
【0020】
図1に示す矢印Aは、ライナー1の移送方向を示している。また、ライナー1の移送方向と平行な方向をFW装置100の前後方向とし、ライナー1が移送される一方向を前側(本図左側)、他方向を後側(本図右側)と定義する。なお、FW装置100は、ライナー1を矢印Aの方向、及び矢印Aの反対方向に往復動させるため、該ライナー1の移送方向に応じて前側及び後側が定まる。
【0021】
FW装置100は、ライナー1の外周面1Sに繊維束Fを巻き付けていく装置である。FW装置100は、主に主基台10と、ライナー移送装置20と、フープ巻き装置30と、ヘリカル巻き装置40と、で構成される。
【0022】
ライナー1は、例えば高強度アルミニウム材やポリアミド系樹脂等によって形成された略円筒形状の中空容器である。ライナー1は、該ライナー1の外周面1Sに繊維束Fが巻き付けられることによって耐圧特性の向上が図られる。つまり、ライナー1は、耐圧容器を構成する基材とされる。
【0023】
主基台10は、FW装置100の基礎を構成する主たる構造体である。主基台10の上部には、ライナー移送装置用レール11が設けられている。ライナー移送装置用レール11には、ライナー移送装置20が載置されている。また、主基台10の上部には、ライナー移送装置用レール11に対して平行にフープ巻き装置用レール12が設けられている。フープ巻き装置用レール12には、フープ巻き装置30が載置されている。
【0024】
このような構成により、主基台10は、FW装置100の基礎を構成するとともに、FW装置100の前後方向にライナー移送装置20ならびにフープ巻き装置30を移動させることを可能としている。
【0025】
ライナー移送装置20は、ライナー1を回転させながら移送する装置である。詳細には、ライナー移送装置20は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送する装置である。ライナー移送装置20は、主に基台21と、ライナー支持部22と、で構成される。
【0026】
基台21には、上部に一対のライナー支持部22が設けられている。ライナー支持部22は、ライナー支持フレーム23と回転軸24で構成され、ライナー1を回転させる。
【0027】
具体的に説明すると、ライナー支持部22は、基台21から上方に向けて延設されたライナー支持フレーム23と、該ライナー支持フレーム23から前後方向に向けて延設された回転軸24と、で構成される。そして、回転軸24に取り付けられたライナー1は、図示しない動力機構によって一方向に回転されるのである。
【0028】
このような構成により、ライナー移送装置20は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送することを可能としている。
【0029】
フープ巻き装置30は、ライナー1の外周面1Sに繊維束Fを巻き付ける装置である。詳細には、フープ巻き装置30は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して略垂直となる、いわゆるフープ巻きを行なう装置である。フープ巻き装置30は、主に基台31と、動力機構32と、フープ巻き掛け装置33と、で構成される。
【0030】
基台31には、動力機構32によって回転されるフープ巻き掛け装置33が設けられている。フープ巻き掛け装置33は、巻き掛けテーブル34とボビン35で構成され、ライナー1の外周面1Sにフープ巻きを行なう。
【0031】
具体的に説明すると、フープ巻き掛け装置33は、主にフープ巻きを行なう巻き掛けテーブル34と、該巻き掛けテーブル34に繊維束Fを供給するボビン35と、で構成される。そして、巻き掛けテーブル34に設けられた繊維束ガイドによってライナー1の外周面1Sに繊維束Fが導かれ、巻き掛けテーブル34が回転することでフープ巻きが行なわれる。
【0032】
このような構成により、フープ巻き装置30は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して略垂直となるフープ巻きを行なうことを可能としている。なお、本FW装置100は、フープ巻き装置30の移動速度や巻き掛けテーブル34の回転速度を調節することによって、繊維束Fの巻き付け態様を自在に変更可能としている。
【0033】
ヘリカル巻き装置40は、ライナー1の外周面1Sに繊維束Fを巻き付ける装置である。詳細には、ヘリカル巻き装置40は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値となる、いわゆるヘリカル巻きを行なう装置である。ヘリカル巻き装置40は、主に基台41と、ヘリカル巻き掛け装置42と、で構成される。
【0034】
基台41には、ヘリカル巻き掛け装置42が設けられている。ヘリカル巻き掛け装置42は、第1ヘリカルヘッド43と第2ヘリカルヘッド44で構成され、ライナー1の外周面1Sにヘリカル巻きを行なう。なお、本FW装置100のヘリカル巻き装置40には、第1ヘリカルヘッド43と第2ヘリカルヘッド44の二つが備えられているが、それ以上のヘリカルヘッドを備えるとしても良い。
【0035】
具体的に説明すると、ヘリカル巻き掛け装置42は、主にヘリカル巻きを行なう第1ヘリカルヘッド43と、同じくヘリカル巻きを行なう第2ヘリカルヘッド44と、で構成される。そして、第1ヘリカルヘッド43に設けられた第1繊維束ガイド91、第2ヘリカルヘッド44に設けられた第2繊維束ガイド92によってライナー1の外周面1Sに繊維束Fが導かれ(図2参照)、ライナー1が回転しながら通過することでヘリカル巻きが行なわれる。なお、第1ヘリカルヘッド43ならびに第2ヘリカルヘッド44には、図示しないボビンから繊維束Fが供給される。
【0036】
このような構成により、ヘリカル巻き装置40は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値となるヘリカル巻きを行なうことを可能としている。なお、本FW装置100は、ライナー1の移送速度や回転速度を調節することによって、繊維束Fの巻き付け態様を自在に変更可能としている。
【0037】
次に、図2を用いて、ヘリカル巻き装置40を構成する第1ヘリカルヘッド43ならびに第2ヘリカルヘッド44について説明する。
【0038】
図2に示す矢印Aは、ライナー1の移送方向を示している。また、図中に示す矢印Bは、ライナー1の回転方向を示している。
【0039】
上述したように、ヘリカル巻き装置40は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値となるヘリカル巻きを行なう装置である。
【0040】
図2に示すように、ヘリカル巻き装置40を構成する第1ヘリカルヘッド43ならびに第2ヘリカルヘッド44は、ライナー1の移送方向に互いに隣接するように配置されている。また、第2ヘリカルヘッド44は、該第2ヘリカルヘッド44に設けられた後述の第2繊維束ガイド92が第1ヘリカルヘッド43に設けられた後述の第1繊維束ガイド91の間に位置するように位相差PAを設けて配置されている(図5(A)、図6(A)参照)。
【0041】
第1ヘリカルヘッド43は、ガイド支持装置45と、第1繊維束ガイド91とを具備する。第1ヘリカルヘッド43は、フレーム49に第1繊維束ガイド91を支持するガイド支持装置45が複数配置されて構成される。
第2ヘリカルヘッド44は、ガイド支持装置45と、第2繊維束ガイド92とを具備する。第2ヘリカルヘッド44は、フレーム49に第2繊維束ガイド92を支持するガイド支持装置45が複数配置されて構成される。
【0042】
ガイド支持装置45は、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92を回転自在及び伸縮自在に支持するものである。ガイド支持装置45は、ライナー1の回転軸Raを中心として放射状に第1ヘリカルヘッド43及び第2ヘリカルヘッド44のフレーム49に複数配置される。(図5(A)、図6(A)参照)。ガイド支持装置45は、ガイド支持部材46と、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92を回転及び伸縮させる動力を伝達する伸縮駆動軸47及び回転駆動軸48と、を具備する。
【0043】
第1繊維束ガイド91は、繊維束Fをライナー1に案内するものである。第1繊維束ガイド91は、第1供給ガイド93と、第2供給ガイド94とから構成される。第2供給ガイド94は、各ガイド支持装置45のガイド支持部材46に回転自在に支持される。第1供給ガイド93は、第2供給ガイド94によってライナー1の回転軸Raに略垂直な方向に伸縮自在に支持される。
【0044】
第2繊維束ガイド92は、繊維束Fをライナー1に案内するものである。第2繊維束ガイド92は、第1供給ガイド95と、第2供給ガイド96とから構成される。第2供給ガイド96は、各ガイド支持装置45のガイド支持部材46に回転自在に支持される。第1供給ガイド95は、第2供給ガイド96によってライナー1の回転軸Raに略垂直な方向に伸縮自在に支持される。以上より、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92は、回転自在及び伸縮自在に構成される。
【0045】
これにより、第1ヘリカルヘッド43及び第2ヘリカルヘッド44は、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92によって複数本の繊維束Fをライナー1の外周面1Sに同時に案内することができるのである。なお、本FW装置100の第1ヘリカルヘッド43及び第2ヘリカルヘッド44には、それぞれ繊維束ガイドが90本設けられているため、90本の繊維束Fをそれぞれ同時に案内することを可能としている。
【0046】
上述の通り、第1ヘリカルヘッド43ならびに第2ヘリカルヘッド44は、ライナー1の外周面1Sに複数本の繊維束F(本FW装置100においては180本の繊維束F)を同時に導き、ヘリカル巻きを行なうことを可能としている。
【0047】
本FW装置100には、ライナー1の回転軸Ra方向(前後方向)に第2ヘリカルヘッド44を駆動する間隔調節手段が設けられている。換言すると、本FW装置100には、該FW装置100の前後方向に第2ヘリカルヘッド44を駆動する間隔調節手段が設けられている。
【0048】
間隔調節手段である駆動装置50は、電動モータ51によって回転されるウォームギヤ52と、第2ヘリカルヘッド44に固設されたラックギヤ53と、で構成される。駆動装置50は、電動モータ51の回転動力によって第2ヘリカルヘッド44を駆動する。
【0049】
また、本FW装置100には、ライナー1の周方向に第2ヘリカルヘッド44を駆動する位相調節手段が設けられている。換言すると、本FW装置100には、ライナー1の回転軸Raを中心として第2ヘリカルヘッド44を駆動する位相調節手段が設けられている。
【0050】
位相調節手段である駆動装置60は、電動モータ61によって回転されるウォームギヤ62と、第2ヘリカルヘッド44に固設されたラックギヤ63と、で構成される。駆動装置60は、電動モータ61の回転動力によって第2ヘリカルヘッド44を駆動する。
【0051】
次に、図3及び図4を用いて、第1ヘリカルヘッド43ならびに第2ヘリカルヘッド44を構成するガイド支持装置45、第1繊維束ガイド91、及び第2繊維束ガイド92について詳しく説明する。なお、第2ヘリカルヘッド44に取り付けられたガイド支持装置45を図示して説明し、第1ヘリカルヘッド43に取り付けられたガイド支持装置45及び第1繊維束ガイド91の説明は省略する。
【0052】
図3中に示す白抜きの矢印は、移動機構70を構成する各部材の動作方向を示している。また、図3中に示す黒塗りの矢印は、回転機構80を構成する各部材の動作方向を示している。図4中に示す白抜きの矢印は、繊維束Fの供給方向を示している。また、図4(A)中に示す黒塗りの矢印は、第2繊維束ガイド92を構成する各部材の動作方向及びライナー1の回転軸Raに近接する方向を示している。図4(B)中に示す黒塗りの矢印は、第2繊維束ガイド92を構成する各部材の動作方向及びライナー1の回転軸Raから離間する方向を示している。
【0053】
図3に示すように、ガイド支持装置45は、第2ヘリカルヘッド44のフレーム49に取り付けられ、第2繊維束ガイド92の第1供給ガイド95を移動自在、かつ第1供給ガイド95及び第2供給ガイド96を回転可能に支持する装置である。ガイド支持装置45は、第2ヘリカルヘッド44の移動機構70と、回転機構80とに連動連結される。
【0054】
ガイド支持装置45は、第2繊維束ガイド92を回転自在及び伸縮自在に支持するものである。ガイド支持装置45は、ガイド支持部材46と、伸縮駆動軸47と、回転駆動軸48とを具備する。
【0055】
ガイド支持部材46は、第2繊維束ガイド92を支持するものである。ガイド支持部材46は、伸縮駆動軸47及び回転駆動軸48に支持される。ガイド支持部材46は、第2繊維束ガイド92の第1供給ガイド95を回転自在に支持する。
【0056】
伸縮駆動軸47は、第2繊維束ガイド92が伸縮するための動力を伝達するものである。伸縮駆動軸47は、軸心をライナー1の回転軸Raに略垂直な方向として第2ヘリカルヘッド44のフレーム49に回転自在に支持される。伸縮駆動軸47の一側端部には、動力を伝達するためのギヤが形成され後述の中間軸72に歯合される。伸縮駆動軸47の他側には、後述の駆動プーリー73が固定される。
【0057】
回転駆動軸48は、第2繊維束ガイド92が回転するための動力を伝達するものである。回転駆動軸48は、軸心をライナー1の回転軸Raに略垂直な方向として第2ヘリカルヘッド44のフレーム49に伸縮駆動軸47と隣接して回転自在に支持される。回転駆動軸48の一側端部には、動力を伝達するためのギヤが形成され後述の中間軸82に歯合される。回転駆動軸48の他側には、後述の伝達ギヤ83が固定される。
【0058】
移動機構70は、ライナー1の回転軸Raに対して略垂直方向に第1供給ガイド95を移動させる機構である。移動機構70は、主に回転筒71と、中間軸72と、駆動プーリー73と、伝動ベルト74とで構成される。
【0059】
移動機構70は、図示しない電動モータの回転動力を回転筒71及び中間軸72を介して、中間軸72に歯合されている伸縮駆動軸47に伝達可能に構成される。さらに、駆動プーリー73が伸縮駆動軸47に固定され、伝達ベルト74によって伸縮駆動軸47と第1供給ガイド95とが連動連結されている。よって、移動機構70は、電動モータによって回転筒71を回転させることで中間軸72を介して伸縮駆動軸47に回転動力を伝達する。そして、伸縮駆動軸47に伝達された回転動力は、駆動プーリー73及び伝達ベルト74を介して第1供給ガイド95に伝達される。
【0060】
回転機構80は、第2供給ガイド96の軸心を中心軸として該第2供給ガイド96を回転させる機構である。回転機構80は、主に回転筒81と、中間軸82と、伝達ギヤ83と、で構成される。
【0061】
回転機構80は、図示しない電動モータの回転動力を回転筒81及び中間軸82を介して、中間軸82に歯合されている回転駆動軸48に伝達可能に構成される。さらに、伝達ギヤ83が回転駆動軸48に固定され、第2供給ガイド96に歯合されている。よって、回転機構80は、電動モータによって回転筒81を回転させることで中間軸82を介して回転駆動軸48に回転動力を伝達する。そして、回転駆動軸48に伝達された回転動力は、伝達ギヤ83を介して第2供給ガイド96に伝達される。
【0062】
第2繊維束ガイド92は、繊維束Fをライナー1に案内するものである。第2繊維束ガイド92は、前述のとおり、第1供給ガイド95と、第2供給ガイド96と、で構成される。
【0063】
第2供給ガイド96は、中空の棒状部材から形成される。第2供給ガイド96は、ガイド支持装置45のガイド支持部材46に軸心を回転中心として回転自在に支持され、ライナー1の回転軸Raを中心として放射状に配置される(図5(A)、図6(A)参照)。第2供給ガイド96は、一側端部にギヤ96aが形成され、他側端部には繊維束Fを供給する供給口96bが形成される。ギヤ96aは、回転機構80の伝達ギヤ83と歯合される。すなわち、第2供給ガイド96は、回転機構80からの回転動力によって回転自在に構成される。
【0064】
図4(B)に示すように、第2供給ガイド96の供給口96bは、軸方向の断面視で長辺部分の一方が開放された略矩形状に形成される。また、供給口96bは、開口幅(長辺部分の長さ)がWg2となるように形成される。第2供給ガイド96は、中空部分を通過して供給口96bに到達した繊維束Fが供給口96bの長辺部分の縁に接触することで、繊維束Fの幅Wfが広がるように構成される。
【0065】
図3に示すように、第1供給ガイド95は、中空のねじ部材から形成される。第1供給ガイド95は、第2供給ガイド96に軸方向にのみ摺動自在に支持され、第1供給ガイド95と第2供給ガイド96との軸心が一致するように配置される。第1供給ガイド95は、途中部に送りねじ機構95aを具備し、他側端部には繊維束Fを供給する供給口95bが形成される。
【0066】
第1供給ガイド95の送りねじ機構95aは、第1供給ガイド95の本体部分(ねじ部材部分)を軸方向に移動させるものである。送りねじ機構95aは、第2供給ガイド96に支持されるとともに、送りねじ機構95aに回転自在に構成されるナット部が第1供給ガイド95の本体部分を支持している。また、送りねじ機構95aの前記ナット部は、移動機構70の駆動プーリー73と伝達ベルト74を介して連動連結される。この構成により、第1供給ガイド95は、移動機構70からの回転動力によって前記ナット部が回転されることで、送り作用により第1供給ガイド95の本体部分が軸方向に送られる。
【0067】
一方、第1供給ガイド95は、第2供給ガイド96に対して相対回転不能に構成される。すなわち、第1供給ガイド95は、回転機構80からの回転動力によってその軸心を回転中心として第2供給ガイド96と一体的に回転自在に構成される。
【0068】
図4(A)に示すように、第1供給ガイド95の供給口95bは、軸方向の断面視で長辺部分の一方が開放された略矩形状に形成される。また、供給口95bは、開口幅(長辺部分の長さ)が第2供給ガイド96の供給口96bの開口幅Wg2よりも狭い開口幅Wg1となるように形成される。こうして、第1供給ガイド95は、第2供給ガイド96の内部に摺動自在に支持される。
【0069】
このような構成により、第2繊維束ガイド92は、移動機構70によって第1供給ガイド95をライナー1の回転軸Raから離間する方向及び近接する方向に移動自在に構成される。具体的には、第2繊維束ガイド92は、第1供給ガイド95の供給口95bを第2供給ガイド96の供給口96bよりもライナー1の回転軸Raから離間した位置、すなわち繊維束Fが第2供給ガイド96の供給口96bの縁に接触可能なように構成される。また、第2繊維束ガイド92は、第1供給ガイド95の供給口95bを第2供給ガイド96の供給口96bよりもライナー1の回転軸Raに近接した位置、すなわち繊維束Fが第2供給ガイド96の供給口96bの縁に接触不能なように構成される。
【0070】
なお、本実施形態において、第2繊維束ガイド92の第1供給ガイド95は、送りねじ機構95aによって移動自在に構成されるがこれに限定されず、第1供給ガイド95が移動可能な構成であればよい。また、第2繊維束ガイド92は、第1供給ガイド95及び第2供給ガイド96から構成されるがこれに限定されず、複数の供給ガイドを具備する構成や、供給口を選択的に切り替え可能な構成であればよい。
【0071】
以上のような構成のFW装置100において、図4、図5及び図6を用いて、第1供給ガイド95及び第2供給ガイド96の動作態様について説明する。
【0072】
まず、図4及び図5を用いて、ライナー1の外径が小さい部分に繊維束Fを巻き付ける場合、すなわち第1ヘリカルヘッド43の第1繊維束ガイド91及び第2ヘリカルヘッド44の第2繊維束ガイド92がライナー1の回転軸Raに近接する方向に移動した場合を説明する。
【0073】
図4(A)は、第1供給ガイド93・95の供給口93b・95bが第2供給ガイド94・96の供給口94b・96bよりもライナー1の回転軸Raに近接した場合における繊維束Fの状態を示している。図5(A)、図5(B)は、第1供給ガイド93・95がライナー1の回転軸Raに近接する方向に移動した状態を示している。図5(A)と図5(B)は、そのときの正面図と側面図である。図5中に示す矢印Cは、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92の移動方向を示している。また、図5中に示す矢印Dは、第2ヘリカルヘッド44の移動方向を示している。
【0074】
図4(A)に示すように、第1供給ガイド93・95を介して供給される繊維束Fは、第1供給ガイド93・95の供給口93b・95bの幅Wg1が繊維束Fの幅よりも狭い場合、幅Wf1に狭められた状態でライナー1に案内される。
【0075】
図5(A)、図5(B)に示すように、ライナー1の外径が小さい部分に繊維束Fを巻き付ける場合、第1供給ガイド93・95の供給口93b・95bは、移動機構70によってライナー1の回転軸Raに近接する方向に移動される(矢印C参照)。
【0076】
第1供給ガイド93・95は、ライナー1の回転軸Raに近接するに従って互いの間隔が徐々に小さくなっていく。この結果、第1供給ガイド93・95から供給される複数の繊維束Fは、互いに近接した状態でライナー1の外周面1Sに巻き付けられる。従って、繊維束Fによってライナー1の外周面1Sを容易に覆うことができる。
【0077】
図4(A)に示すように、第1供給ガイド93・95の供給口93b・95bが、第2供給ガイド94・96の供給口94b・96bよりもライナー1の回転軸Raに近接している場合、供給口94b・96bの縁に繊維束Fが接触しないので、繊維束Fは、供給口94b・96bによって広げられることなく幅Wfの状態でライナー1の外周面1Sに案内される。
【0078】
次に、ライナー1の外径が大きい部分に繊維束Fを巻き付ける場合、すなわち第1ヘリカルヘッド43の第1繊維束ガイド91及び第2ヘリカルヘッド44の第2繊維束ガイド92がライナー1の回転軸Raから離間する方向に移動した場合を説明する。
【0079】
図4(B)は、第1供給ガイド93・95の供給口93b・95bが第2供給ガイド94・96の供給口94b・96bよりもライナー1の回転軸Raから離間した場合における繊維束Fの状態を示している。図6(A)、図6(B)は、第1供給ガイド93・95がライナー1の回転軸Raから離間する方向に移動した状態を示している。図6(A)と図6(B)は、そのときの正面図と側面図である。図6中に示す矢印Cは、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92の移動方向を示している。また、図6中に示す矢印Dは、第2ヘリカルヘッド44の移動方向を示している。
【0080】
図4(B)に示すように、第1供給ガイド93・95の供給口93b・95bの幅Wg1が繊維束Fの幅よりも狭い場合、幅Wf1に狭められる。
【0081】
図6(A)、図6(B)に示すように、ライナー1の外径が大きい部分に繊維束Fを巻き付ける場合、第1供給ガイド93・95の供給口93b・95bは、移動機構70によってライナー1の回転軸Raから離間する方向に移動される(矢印C参照)。
【0082】
第1供給ガイド93・95は、ライナー1の回転軸Raから離間するに従って互いの間隔が徐々に大きくなっていく。この結果、第1供給ガイド93・95から供給される複数の繊維束Fは、隣り合う繊維束Fとの間隔が徐々に大きくなりながらライナー1の外周面1Sに巻き付けられる。従って、隣り合う繊維束Fとの間隔が大きくなるにつれて、繊維束Fによってライナー1の外周面1Sを覆うことが容易ではなくなる。
【0083】
図4(B)に示すように、第1供給ガイド93・95の供給口93b・95bが、第2供給ガイド94・96の供給口94b・96bよりもライナー1の回転軸Raから離間している場合、供給口93b・95bの開口幅Wg1よりもひろい開口幅Wg2に形成される供給口94b・96bの縁に繊維束Fが接触するので、繊維束Fの幅Wf1は、供給口94b・96bによって幅Wf2に広げられた後にライナー1の外周面1Sに案内される。
【0084】
繊維束Fは、第2供給ガイド94・96の供給口94b・96bに接触して幅Wf2に広げられている。従って、ライナー1の外周面1Sに巻き付けられる繊維束Fの巻き付け角度が変化しても繊維束Fを安定して供給口94b・96bに接触させることができる。また、第1供給ガイド93・95及び第2供給ガイド94・96は、回転機構80からの回転動力によって一体的に回転自在に構成されるので、ライナー1の移送方向が切り替わった場合やライナー1の外周面1Sに巻き付けられる繊維束Fの巻き付け角度が変化した場合でも繊維束Fを安定して供給口94b・96bに接触させることができる。
【0085】
上述の構成により、本FW装置100は、第1繊維束ガイド91の第1供給ガイド93及び第2繊維束ガイド92の第1供給ガイド95の伸縮動作によって、選択的に供給口の開口幅を開口幅Wg1と開口幅Wg2とに切り替えることができる。すなわち、本FW装置100は、第1供給ガイド93・95がライナー1の回転軸Raから離間する方向に移動した場合に、繊維束Fを第2供給ガイド96の供給口94b・96bに接触させて繊維束Fを幅Wf2に押し広げ、第1供給ガイド93・95がライナー1の回転軸Raに近接する方向に移動した場合に、繊維束Fを幅Wf1のままで、繊維束Fをライナー1の外周面1Sに巻きつけることができる。
【0086】
以上のごとく、ライナー1の回転軸Raに対して略垂直方向に伸縮する複数の第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92を放射状に設けた第1ヘリカルヘッド43及び第2ヘリカルヘッド44を備え、ライナー1を回転させながら第1ヘリカルヘッド43及び第2ヘリカルヘッド44を通過させることで第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92の供給口から供給される繊維束Fをライナー1の外周面1Sに巻き付けていく本FW装置100において、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92は、供給口の幅を変更可能に構成されるものである。
このように構成することにより、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92の供給口の幅を広くすることができる。これにより、繊維束Fの幅Wfが広がった状態でライナー1の外周面1Sに巻き付けることができる。また、ライナー1の部位に応じて繊維束Fの幅Wfを変えて巻き付けることができる。
【0087】
また、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92は、開口幅Wg1と開口幅Wg2とが異なる第1供給口である供給口93b・95bと第2供給口である供給口94b・96bとを少なくとも備え、供給口93b・95bと供給口94b・96bとを選択的に切り替えて繊維束Fをライナー1に供給するものである。
このように構成することにより、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92の供給口の幅を広くすることができる。これにより、繊維束Fの幅Wfを各供給口の幅に応じて広げた後にライナー1の外周面1Sに巻き付けることができる。また、ライナー1の部位に応じて繊維束Fの幅Wfを変えて巻き付けることができる。
【0088】
また、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92は、少なくとも供給口93b・95bを備える第1供給ガイド93・95と、供給口94b・96bを備える第2供給ガイド94・96とから構成されるものである。
このように構成することにより、繊維束Fを供給する第1供給ガイド93・95と第2供給ガイド94・96とを切り替えることで第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92の供給口の幅を広くすることができる。これにより、繊維束Fの幅Wfを各供給口の幅に応じて広げた後にライナー1の外周面1Sに巻き付けることができる。また、ライナー1の部位に応じて繊維束Fの幅Wfを変えて巻き付けることができる。
【0089】
また、第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92は、供給口93b・95bを備える第1供給ガイド93・95と、供給口93b・95bよりも開口幅の広い供給口94b・96bを備える第2供給ガイド94・96を同軸上に備え、供給口93b・95bが供給口94b・96bよりもライナー1の回転軸Raに対して接近した状態と、供給口93b・95bが供給口94b・96bよりもライナー1の回転軸Raに対して離間した状態とに切り替え自在構成されるものである。
このように構成することにより、ライナー1の外径に合わせて伸縮する第1繊維束ガイド91及び第2繊維束ガイド92の伸縮位置に応じて供給口の幅を変更することができる。これにより、繊維束Fの幅Wfを各供給口の幅に応じて広げた後にライナー1の外周面1Sに巻き付けることができる。また、ライナー1の部位に応じて繊維束Fの幅Wfを変えて巻き付けることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 ライナー
1S 外周面
43 第1ヘリカルヘッド
44 第2ヘリカルヘッド
91 第1繊維束ガイド
92 第2繊維束ガイド
100 フィラメントワインディング装置
F 繊維束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナーの回転軸に対して略垂直方向に伸縮する複数の繊維束ガイドを放射状に設けたヘリカルヘッドを備え、
前記ライナーを回転させながら前記ヘリカルヘッドを通過させることで前記繊維束ガイドの供給口から供給される繊維束を前記ライナーの外周面に巻き付けていくフィラメントワインディング装置において、
前記繊維束ガイドは、前記供給口の幅を変更可能に構成されるフィラメントワインディング装置。
【請求項2】
前記繊維束ガイドは、
開口幅の異なる第1供給口と第2供給口とを少なくとも備え、前記第1供給口と前記第2供給口とを選択的に切り替えて繊維束を前記ライナーに供給する請求項1に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項3】
前記繊維束ガイドは、
少なくとも前記第1供給口を備える第1供給ガイドと、前記第2供給口を備える第2供給ガイドとから構成される請求項2に記載のフィラメントワインディング装置。
【請求項4】
前記繊維束ガイドは、
前記第1供給口を備える前記第1供給ガイドと、前記第1供給口よりも開口幅の広い前記第2供給口を備える第2供給ガイドとを同軸上に備え、
前記第1供給口が前記第2供給口よりも前記ライナーの回転軸に対して接近した状態と、前記第1供給口が前記第2供給口よりも前記ライナーの回転軸に対して離間した状態とに切り替え自在構成される請求項3に記載のフィラメントワインディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−63592(P2013−63592A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203659(P2011−203659)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】