説明

フィラメント利用による布の摩耗度の検知技術

【課題】摩耗度を示すフィラメントおよびそのフィラメント製の布の提供。
【解決手段】フィラメントは、コア(12)を取り囲む多層(14,16,18)を備える。それらのコアと多層とは互いに区別可能であり、それにより、布の摩耗度を示す。また、伝導性モノフィラメントによって、布の摩耗度を検知することもできる。さらに、多層のフィラメントは、布の目印となる。そして、伝導性モノフィラメントも対照的な色をもつことから、布の目印を作るのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製紙その他の産業の布の摩耗度を検出し、その目印を作り出すための技術に関する。特には、この発明は、そのような技術で用いる多層かつ伝導性のフィラメントに関する。
【発明の背景】
【0002】
製紙プロセスにおいて、セルロースを含む繊維状のウェブは、製紙機械の成形部分を移動する成形布上に繊維状のスラリー、つまりセルロース繊維の水性分散液を堆積させることによって形作る。スラリーからは成形布を通して多量の水が排水され、成形布の表面に
セルロースを含む繊維状のウェブを残す。
【0003】
新しく作られたセルロースを含む繊維状のウェブは、成形部分からプレス部分へと移る。プレス部分には、連続したプレスニップがある。セルロースを含む繊維状のウェブは、プレス布、あるいは、しばしばはそのようなプレス布の2つの間に支持されたプレスニップを通って行く。プレスニップにおいて、セルロースを含む繊維状のウェブは、圧縮力を受けて水を搾り出し、さらに、ウェブ中のセルロース繊維を互いに付着し、セルロースを含む繊維状のウェブを紙シートに変える。一枚あるいは複数枚のプレス布が水を受け入れ、理想的には、水を紙シートに戻すことがない。
【0004】
紙シートは、最後に乾燥部分に移る。乾燥部分には、少なくとも一連続の回転乾燥ドラムあるいはシリンダがあり、それらのドラムあるいはシリンダの内部はスチームで加熱される。新しく作られた紙シートは、乾燥布によって連続したドラムのそれぞれの周りを順次曲がりくねるようにして進む。乾燥布は、紙シートをドラム表面に密着させるように保持する。加熱ドラムは、蒸発によって紙シートの水分量を低減し、好ましいレベルにする。
【0005】
成形、プレス、乾燥の布は、すべて製紙機械上で無端ループの形態であり、コンベヤのように働くことが分かるであろう。さらに、紙の製造は、かなりの速度で進行する連続的なプロセスであることが理解されるであろう。すなわち、繊維状のスラリーが、成形部分の成形布上に連続的に堆積し、また同時に、新しく作られた紙シートは、乾燥部分から出た後、ロールに連続的に巻き取られる。
【0006】
そのように製紙機械上で無端ループの形態で運転するとき、製紙布、特にその内側表面は、摩耗による損傷を受けやすい。この摩耗の多くは、製紙機械の不動の構成部分との接触によって生じる。最後には、そのような作動に伴う接触による摩耗が布の厚さを薄くし、少なくともある場所においては、強度が弱くなり、製紙機械での適用に必要な質あるいは特性を失うに至る。そのように至ったとき、多くの布を製紙機械から取り外さなければならない。
【0007】
通常、摩耗については、測厚器(シックネスゲージ)を用いて監視する。しかし、製紙機械布の端から1あるいは2フィート(つまり、30cmあるいは60cm)より内側の厚さをそのようなゲージで測定することは困難である。特に、布が製紙機械の上を動いているときには難しい。
【0008】
製紙機械布の摩耗を監視する技術、特には、布の内側および外側の表面のどの位置でも、しかも、製紙機械が運転中においても監視する技術は、製紙産業における人々に非常に有用である。この発明は、そのような技術を提供する。
【発明の開示】
【発明のサマリー】
【0009】
したがって、この発明の主な目的は、布の摩耗度を監視することができる備え付けの機構をもつ産業布を提供することである。
【0010】
この発明の他の目的は、検出可能な目印をもつ布を提供することである。
【0011】
この発明は、これらの目的およびその他の目的ならびに利点を備える。この点で、この発明は、1または2以上の外側の層が取り囲むコアヤーンを備える多層フィラメントを含む布に関する。コアと周りの層とは、たとえば、対照的な色あるいは反射率によって互いを視覚的に区別することができる。摩耗によってフィラメントの連続する層が次第にすり減り、ついにはコアヤーンを見えるようにするので、この視覚的な違いによって、布の摩耗度を監視することができる。
【0012】
この発明を第2の視点から見ると、布の摩耗側に伝導性のモノフィラメントを織り込み、別のタイプの摩耗検出システムを作り上げている。たとえば、布の横方向の抵抗を測定することによって、摩耗の程度を確認することができる。
【0013】
この発明を第3の視点から見ると、多層のフィラメントを用いることによって、布上、横方向および/または縦方向の視覚的な目印を作り上げる。それらの目印は、高圧シャワーあるいは化学的洗浄によっては除去されず、ベルトのアライメントあるいは速度測定を行うことができ、または、電子ガイドシステム用のトリガーとして用いることができる。
【0014】
この発明を第4の視点から見ると、対照的な色をもつ伝導性フィラメントが布の不変的な目印を作り出す。フィラメントの色のコントラストあるいは電子特性を利用し、稼働中の速度測定用のトリガーあるいは電子ガイドシステム用のトリガーに活用することができる。
【好ましい実施例】
【0015】
この発明の好ましい実施例について、フィラメントおよびそれらフィラメントから織った製紙用の布との関係において説明する。しかし、この発明は、製紙以外の他の産業で用いる布であり、摩耗の検出およびガイドが重要となるものに適用することができることに留意されたい。
【0016】
布の構成としては、織ったもの、スパイラル状に巻いたもの、編んだもの、押出し成形したメッシュ、スパイラル状コイル、およびその他の不織の布がある。これらの布には、また、モノフィラメント、パイルをもつモノフィラメント、マルチフィラメント、あるいはパイルをもつマルチフィラメントの糸を用いることができ、単層、多層あるいは積層にすることができる。布がスパイラル状コイル布の場合、フィラメントはコイル、それらのコイルを連結する糸、あるいはコイル内側の空の部分に位置するインサート(詰め糸)になる。糸は、通常、工業布の分野の当業者が用いる、たとえばポリアミド、ポリエステルなどの樹脂材料の一つから押出し成形する。
【0017】
この発明による多層のフィラメント10の一例を図1(断面図)に示す。フィラメント10は、たとえば、複数の外側の層14,16,18が取り囲むコアヤーン(芯糸)12で構成される。有利にするために、コアヤーン(芯糸)12と外側を取り囲む層14,16,18とを互いに視覚的に区別可能にする。たとえば、それらの対照的な色、あるいは反射率によって違いを出すことができる。摩耗によってフィラメント10の連続する層14,16,18が次第にすり減り、ついにはコアヤーン12を見えるようにするので、この視覚的な違いによって、そのようなフィラメント10を備える布の摩耗度を監視することができる。そのような摩耗を示す多層フィラメント10の一例について、図2(断面図および平面図)が明らかにしている。
【0018】
別の実施例(図示しない)として、コアヤーン(芯糸)12と外側を取り囲む層14,16,18とを、染料あるいは外観を変えるような他の物質で処理することができる。その場合、染料については、外部のエネルギー源、たとえば光(たとえば、レーザ、あるいは紫外線)または超音波を当てることによって、検出することができる。
【0019】
さらに他の実施例において、フィラメント10は、光吸収/伝導コア12、および異なる屈折率n1,n2,n3をもつ数個の光透過性の層14,16,18で構成される。この多層の光学的なフィラメント10について、図3が示す。この場合、フィラメント10からの伝達/反射光は、層14,16,18の摩耗度に応じて色が変わる。
【0020】
図4は、未使用の布20(摩耗側)の平面図であって、この発明による多層のフィラメント10を少なくともいくつかを備えている。布20は、横方向(CD)にある糸10と縦方向(MD)方向にある糸22とから織った構成である。しかし、この発明の考え方は、織り構造だけに限らず、不織の構造にも及ぶ。図4において、CD糸10は、図1、2および3のいろいろな多層フィラメントであるが、それらのCD糸10は平織構成にMD糸22と織られている。図に示す例において、布20の表面のナックル部分24が最も摩耗しやすい。なぜなら、それらのナックル部分は、布20の一方向の糸がもう一方の糸の上を通り、つまり横切り、それにより、布20の表面上、高いところに位置するからである。
【0021】
布20をある期間使い続けた後、その布20の同じ平面図を図5に示している。CD多層フィラメント10の外側の層16,18の少なくとも1あるいは2以上のものがすり減り、内側の層14あるいはコア12が露出するまでになっている。たとえば、外側の層16,18と色あるいは反射率が異なることにより、内側の層14あるいはコア12は、布20が摩耗していることを示す。
【0022】
別の例では、CD糸10は、布20の摩耗側に織り込んだ伝導性モノフィラメントであり、摩耗の検出を別の方法で行うことができる。そこで、ある期間を越えて使用した布20のCD方向の伝導性を測定することにより、対応する布の摩耗度を知ることができる。すなわち、伝導性モノフィラメントの断面積が小さければ小さいほど、布20のCD方向の伝導性が小さくなる。
【0023】
図6および図7に示すように、この発明の別の形態では、多層フィラメント10を用いることによって、布上CDおよび/またはMD方向に視覚的な目印30を作っている。この目印30を用いることによって、ベルトのアライメントあるいは稼働中の速度測定を行うことができ、または、電子ガイドシステム用のトリガーとして用いることができる。有利なことに、この目印30は、高圧シャワーあるいは化学的洗浄によっては除去されない。さらに、別の形態では、 対照的な色をもつ伝導性フィラメントが布の目印を作り出す。その場合、モノフィラメントの色のコントラストあるいは電子特性を利用し、稼働中の速度測定用のトリガーあるいは電子ガイドシステム用のトリガーに活用することができる。すべての場合において、フィラメントとして、断面が丸あるいは非円のいずれのものをも用いることができる。糸がマルチフィラメントであるとき、つまり、糸が2以上のフィラメントをもつとき、各フィラメントをこの発明のフィラメントにすることもできるし、少なくとも一つのフィラメントにこの発明の特性(たとえば、伝導性)をもたせることができる。しかし、以上に述べたすべての形態について、マルチフィラメント糸のたくさんのフィラメントにこの発明の特性をもたせ、必要とする結果を得るようにすることができる。
【0024】
以上のように、この発明の目的および利点が得られる。ここでは、好ましい実施例を示し、詳しく説明したが、この発明の範囲および目的は、それによって限定されるわけではない。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって定まる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明による多層フィラメントの一例の断面図である。
【図2】図1の多層フィラメントの側面および上面を示す図であり、摩耗を示しこの発明の教えを組み込んでいる。
【図3】この発明の別の形態であり、多層のオプチカルフィラメントの一例の断面図である。
【図4】図1、2および3の多層フィラメントを備える布の一例を示す上面図である。
【図5】図4の布の上面図であり、摩耗を示している。
【図6】CD(横方向)およびMD(縦方向)の目印をもつ布の例であり、この発明の教えを組み込んでいる。
【図7】CD(横方向)およびMD(縦方向)の目印をもつ布の別の例であり、この発明の教えを組み込んでいる。
【符号の説明】
【0026】
10 フィラメント(CD糸)
12 コア
14,16,18 外側の層
20 布
22 MD糸
30 目印(ガイドライン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の別々の層で取り囲まれたコアをもつフィラメントであって、そのフィラメントから構成される布の摩耗度を示すフィラメント。
【請求項2】
前記コアおよび前記複数の別々の層が、それらがもつ異なる特性によって互いに区別される、請求項1のフィラメント。
【請求項3】
前記布が示す摩耗度が、前記別々の層の摩耗度と関連する、請求項1のフィラメント。
【請求項4】
前記異なる特性の一つが色である、請求項2のフィラメント。
【請求項5】
前記異なる特性の一つが反射率である、請求項2のフィラメント。
【請求項6】
前記コアおよび前記複数の別々の層が、視覚的に互いに区別される、請求項1のフィラメント。
【請求項7】
光を吸収するコアと、異なる屈折率をもつ光透過性の複数の層とを備える、請求項1のフィラメント。
【請求項8】
前記コアによって反射する光が、前記光透過性の複数の層の摩耗度に応じて色を変化させる、請求項7のフィラメント。
【請求項9】
光伝導性のコアと、異なる屈折率をもつ光透過性の複数の層とを備える、請求項1のフィラメント。
【請求項10】
前記コアから伝えられる光が、前記光透過性の複数の層の摩耗度に応じて色を変化させる、請求項9のフィラメント。
【請求項11】
前記コアおよび前記別々の層の1または2以上のものが染料で処理されている、請求項1のフィラメント。
【請求項12】
前記染料は、外部のエネルギー源から刺激を受けるとき、センサーで検知することができる、請求項11のフィラメント。
【請求項13】
前記フィラメントが丸あるいは非円の形状である、請求項1のフィラメント。
【請求項14】
前記フィラメントは、いくつかのマルチフィラメント糸を備えるか、あるいはすべてがマルチフィラメント糸から構成される、請求項1のフィラメント。
【請求項15】
1または2以上のフィラメントを備える布であって、前記の各フィラメントが、複数の別々の層で取り囲まれたコアをもち、布の摩耗度を示すことができる布。
【請求項16】
前記コアおよび前記複数の別々の層が、それらがもつ異なる特性によって互いに区別される、請求項15の布。
【請求項17】
前記布が示す摩耗度が、前記別々の層の摩耗度と関連する、請求項15の布。
【請求項18】
前記異なる特性の一つが色である、請求項16の布。
【請求項19】
前記異なる特性の一つが反射率である、請求項16の布。
【請求項20】
前記コアおよび前記複数の別々の層が、視覚的に互いに区別される、請求項15の布。
【請求項21】
前記の各フィラメントが、光を吸収するコアと、異なる屈折率をもつ光透過性の複数の層とを備える、請求項15の布。
【請求項22】
前記コアによって反射する光が、前記光透過性の複数の層の摩耗度に応じて色を変化させる、請求項21の布。
【請求項23】
前記の各フィラメントが、光伝導性のコアと、異なる屈折率をもつ光透過性の複数の層とを備える、請求項15の布。
【請求項24】
前記コアから伝えられる光が、前記光透過性の複数の層の摩耗度に応じて色を変化させる、請求項23の布。
【請求項25】
前記コアおよび前記別々の層の1または2以上のものが染料で処理されている、請求項15の布。
【請求項26】
前記染料は、外部のエネルギー源から刺激を受けるとき、センサーで検知することができる、請求項25の布。
【請求項27】
前記フィラメントが丸あるいは非円の形状である、請求項15の布。
【請求項28】
前記フィラメントは、いくつかのマルチフィラメント糸を備えるか、あるいはすべてがマルチフィラメント糸から構成される、請求項15の布。
【請求項29】
布の摩耗度を示すフィラメントであって、1または2以上の伝導性モノフィラメントを備えるフィラメント。
【請求項30】
前記布が示す摩耗度が、前記伝導性モノフィラメントの摩耗度と関連する、請求項29のフィラメント。
【請求項31】
前記フィラメントが丸あるいは非円の形状である、請求項29のフィラメント。
【請求項32】
1または2以上の伝導性モノフィラメントを備える布であって、前記伝導性モノフィラメントが布の摩耗度を示す布。
【請求項33】
前記布が示す摩耗度が、前記伝導性モノフィラメントの摩耗度と関連する、請求項32の布。
【請求項34】
前記伝導性モノフィラメントのいくつかあるいはすべてが丸あるいは非円の形状である、請求項32の布。
【請求項35】
前記伝導性モノフィラメントのいくつかあるいはすべてがマルチフィラメント糸から構成される、請求項32の布。
【請求項36】
複数の層に取り囲まれたコアを含むフィラメントであって、そのフィラメントで構成する布の視覚的な目印を作るフィラメント。
【請求項37】
前記布が製紙機械に用いられ、前記目印が布のアライメント、稼働中の速度測定、あるいはガイドシステムのトリガーの一つに用いられる、請求項36のフィラメント。
【請求項38】
前記目印が横方向に走る、請求項37のフィラメント。
【請求項39】
前記目印が縦方向に走る、請求項37のフィラメント。
【請求項40】
前記目印は、高圧シャワーあるいは化学的洗浄で除去されない耐性がある、請求項36のフィラメント。
【請求項41】
前記フィラメントが丸あるいは非円の形状である、請求項36のフィラメント。
【請求項42】
前記フィラメントは、いくつかのマルチフィラメント糸を備えるか、あるいはすべてがマルチフィラメント糸から構成される、請求項36のフィラメント。
【請求項43】
対照的な色をもつ伝導性モノフィラメントであって、そのモノフィラメントで構成する布の目印として用いるモノフィラメント。
【請求項44】
前記フィラメントが丸あるいは非円の形状である、請求項43のフィラメント。
【請求項45】
前記フィラメントは、いくつかのマルチフィラメント糸を備えるか、あるいはすべてがマルチフィラメント糸から構成される、請求項43のフィラメント。
【請求項46】
対照的な色をもつ伝導性モノフィラメントで構成される目印を備える布。
【請求項47】
前記布が製紙機械に用いられ、前記モノフィラメントの色および伝導性の少なくとも一方が、稼働中の速度測定、あるいはガイドシステムのトリガーの一つに用いられる、請求項46の布。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−520641(P2007−520641A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517253(P2006−517253)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/018841
【国際公開番号】WO2005/005719
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(597098947)オルバニー インターナショナル コーポレイション (31)
【Fターム(参考)】