説明

フィラー、その製造方法、および化粧料

【課題】本発明は、曇りガラスのような半透明性のフォギー効果を発現しうるフィラーを提供することを目的とする。
【解決手段】透明性または半透明性の薄片状基質と、前記薄片状基質の表面に形成され、Mg、AlおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属(以下、第1の金属という。)の水和酸化物、炭酸塩またはそれらの焼成物を含有する粒子層または被覆層(以下、第1層という。)と、前記第1層が形成された前記薄片状基質を被覆し、Si水和酸化物またはその焼成物を含有する被覆層(以下、第2層という。)と、前記第2層を被覆し、Ti水和酸化物またはその焼成物を含有する被覆層(以下、第3層という。)とを有することを特徴とするフィラー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の用途に使用されるフィラーに関し、詳しくは化粧用、特にファンデーション用途に好適なフィラーに関する。
【背景技術】
【0002】
メークアップ化粧料のなかで肌に塗布するファンデーションは、心地良さを感じさせる触感の良いもの、肌に対して付着性が良く、化粧持ちの良いもの(材料技術,16(2),64 (1998))が持続的に要望されている。ファンデーションには、伸展性および付着性が良く、心地良さを演出できることから、薄片状のマイカが使用されている(粉体工学会誌,21(9),565 (1984))。しかし、マイカ単独では油と混合した時に不自然な光沢が発現し、好ましくない。本発明者らは、この光沢を低減させるために、マイカ表面に金属酸化物の微細粒子を被覆させ、表面での光散乱性を高めた所謂ソフトフォーカス特性を有するファンデーション用フィラーを提案している。例えば、特公平2−42388号公報(特許文献1)および特開平5−287212号公報(特許文献2)には、マイカ表面に微粒子硫酸バリウムと酸化チタンとを被覆させたフィラーが開示されている。特公平8−13943号公報(特許文献3)には、マイカ表面に微細凝集酸化チタンと微粒子酸化チタンとを被覆させたフィラーが開示され、特開2001−098186号公報(特許文献4)には、マイカに球状微粒子酸化ケイ素と微粒子酸化チタンとを被覆させたフィラーが開示されている。
【0003】
近年、健康的な美しさを演出するために、美しい肌の要因となる透明感を有し、肌の明るさを向上させ、よりナチュラルな感じにメークでき、より皺隠し効果の高いファンデーションが求められてきている(例えば、J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 39(3), 201−208, (2005)(非特許文献1)、皮膚と美容,124(4),4080 (1992)(非特許文献2)、および表面,30(9),703 (1992)(非特許文献3)等を参照のこと)。即ち、ファンデーションの光学作用として、薄い膜で素肌のくすみや皺等を隠すことができること、明るく、ナチュラルな感じに仕上げることができることが求められている。また、肌に塗布することから、当然に使用感の良いものが求められている。
【0004】
現在まで、ファンデーションの機能性を高めるために、ファンデーションに含有させるための種々のフィラーが研究されてきた。特に、干渉色を有するパール虹彩顔料である酸化チタン被覆マイカは、その透過光により肌のくすみや皺を隠蔽することができることから、注目されている。しかし、酸化チタン被覆マイカは肌に対して不自然な光沢を生じるため、その光沢の低減のために、酸化チタン被覆マイカ上に、光散乱させる硫酸バリウムやポリマー微粒子を散在して付着させることが知られている(FRAGRANCE JOURNAL,34(2) 67 (2006)(非特許文献4)、FRAGRANCE JOURNAL,28(5) 13 (2000)(非特許文献5))。しかしながら、これらのフィラーは、単に表面での光散乱を目的とするものであり、透明感がなく、顔にメークしたときに白浮きという問題が生じる。
【0005】
より透明感を有するフィラーとして、マイカ等の薄片状基材に、屈折率が互いに異なる2種以上の無機酸化物を、屈折率の高い物から順次積層させた無機複合粉体(WO99/49834号公報(特許文献5))や、低屈折率を有する金属酸化物と高屈折率を有する金属酸化物との交互層からなるコアシェル構造を有する積層型干渉性球状顔料(特開2003−55573号公報(特許文献6))や、マイカに低屈折率のシリカと高屈折率の酸化チタンとを交互に被覆した紫外線遮蔽複合材料(J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn.40(1) 34 (2006)(非特許文献6))や、マイカ等の薄片状基質に酸化鉄を被覆してからシリカを被覆したフィラー等、表面を半透明層で被覆させたフィラー(FRAGRANCE JOURNAL,34(2) 74 (2006)(非特許文献7))等が提案されている。
【特許文献1】特公平2−42388号公報
【特許文献2】特開平5−287212号公報
【特許文献3】特公平8−13943号公報
【特許文献4】特開2001−098186号公報
【特許文献5】WO99/49834号公報
【特許文献6】特開2003−55573号公報
【非特許文献1】J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 39(3), 201−208, (2005)
【非特許文献2】皮膚と美容,124(4),4080 (1992)
【非特許文献3】表面,30(9),703 (1992)
【非特許文献4】(FRAGRANCE JOURNAL,34(2) 67 (2006)
【非特許文献5】FRAGRANCE JOURNAL,28(5) 13 (2000)
【非特許文献6】J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn.40(1) 34 (2006)
【非特許文献7】FRAGRANCE JOURNAL,34(2) 74 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の化粧用フィラーには、肌上のくすみ、痣、シミ、皺や毛穴等を充分に隠蔽するカバー力、健康的にみえる透明感、明るさの付与および良好な使用感を同時にかつバランス良く満足するものはなかった。特に、透明感を有しながら、適度な光の拡散性を有し、充分なカバー力を有する材料、即ち、曇りガラスの様な、透過光に対する適度の拡散性に優れた所謂フォギー効果を出せるフィラーは見出されていない。
【0007】
本発明は、曇りガラスのような半透明性のフォギー効果を発現しうるフィラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の事項に関する。
1. 透明性または半透明性の薄片状基質と、
前記薄片状基質の表面に形成され、Mg、AlおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属(以下、第1の金属という。)の水和酸化物、炭酸塩またはそれらの焼成物を含有する粒子層または被覆層(以下、第1層という。)と、
前記第1層が形成された前記薄片状基質を被覆し、Si水和酸化物またはその焼成物を含有する被覆層(以下、第2層という。)と、
前記第2層を被覆し、Ti水和酸化物またはその焼成物を含有する被覆層(以下、第3層という。)と
を有することを特徴とするフィラー。
2. 前記薄片状基質は、平均粒子径/平均厚さで表されるアスペクト比が10〜100、平均粒子径が5〜20μmの形状であることを特徴とする上記1記載のフィラー。
3. 前記薄片状基質は、天然雲母、合成雲母、薄片状アルミナ、ガラスフレーク、タルク、カオリンおよび薄片状シリカからなる群より選ばれることを特徴とする上記1記載のフィラー。
4. 前記第2層と第3層の界面が、1μm長の範囲に基質表面から最も高い高さと最も低い高さの差が、30nm以上200nm以下の範囲で第2層の凹凸を有していることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のフィラー。
5. 表面に、Ti水和酸化物またはその焼成物の結晶の70nm〜500nmの凝集塊を有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のフィラー。
6. フィラー全体に対する各層の重量割合が、
前記第1層が、第1の金属の金属酸化物換算で1〜7重量%であり、
前記第2層が、二酸化ケイ素換算で10〜40重量%であり、
前記第3層が、二酸化チタン換算で、20〜50重量%である
ことを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のフィラー。
7. 前記フィラーを20重量%含む膜厚7.0〜15μmの範囲にある乾燥塗膜が、ISO 13468−1(JIS K7361)による全光線透過率(τt)が70%以上、および平行光線透過率が20%以上、ISO 14782(JIS K7136)によるヘイズが40〜70を示すことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のフィラー。
8. 吸油量が80〜150ml/100gの範囲であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のフィラー。
9. KES摩擦試験機による摩擦係数(MIU値)が0.75以下であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のフィラー。
10. 透明性または半透明性の薄片状基質を水に懸濁させ、この懸濁液に、Mg、AlおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属(以下、第1の金属という。)塩水溶液と、アルカリ水溶液または炭酸塩水溶液とを中性もしくは塩基性下にて徐々に添加し、前記薄片状基質表面に、前記第1の金属の水和酸化物および/または炭酸塩を粒子状または層状に付着させる第1層形成工程と、
次いで、中性もしくは塩基性下にて、ケイ酸アルカリ水溶液と希鉱酸とを同時に徐々に添加し、前記第1層が形成された前記薄片状基質をSi水和酸化物で被覆する第2層形成工程と、
次いで、酸性下にて、Ti塩水溶液とアルカリ水溶液とを同時に徐々に添加し、前記第2層が形成された前記薄片状基質をTi水和酸化物で被覆する第3層形成工程と
を有することを特徴とするフィラーの製造方法。
11. 前記第3層が形成された後の前記薄片状基質を焼成する工程を有することを特徴とする上記10記載の製造方法。
12. 上記1〜9のいずれかに記載のフィラーの、化粧料、塗料、樹脂、インキ、印刷インキおよびコーティング材料における使用。
13. 上記1〜9のいずれかに記載のフィラーを、化粧料の組成全体の1〜50重量%含有する化粧料。
【発明の効果】
【0009】
本発明者は、硝子の透明度等を測定する方法のヘイズ(曇り度)に着目し、ヘイズ値50程度の半透明性を与える(フォギー効果)フィラーの開発を進めた結果、基質の上に特定の3層を被覆した構造により、これら目的が達成されることを見いだし、本発明を完成した。即ち、本発明によれば、曇りガラスのような半透明性のフォギー効果を発現しうるフィラーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の製造方法と共に、本発明のフィラーを説明する。
【0011】
フィラーに用いられる薄片状基質としては、透明性または半透明性の物であれば何れのものも使用される。化粧料用途への使用には、特に低光沢のものが好ましい。具体的には白雲母およびセリサイト(絹雲母)等の天然雲母、合成雲母、薄片状アルミナ、ガラスフレーク、タルク、カオリン、および薄片状シリカ等が好ましい。この中で、好ましくは安価で、供給安定性の高い白雲母、セリサイト等の雲母類が推奨される。
【0012】
薄片状基質の粒子の大きさは、平均粒径で5〜20μmが好ましい。平均粒径が小さ過ぎると凝集により、目的とする半透明性が得られにくくなる。また、平均粒径が大きくなり過ぎると、肌への良好な感触が得られにくい。また、薄片状基質のアスペクト比(平均粒径/平均厚み)は、10〜100、好ましくは20〜50である。アスペクト比が小さくなり過ぎると(厚みが大きくなり過ぎると)、隠蔽性が高く(透明性が小さく)なり好ましくない。反対にアスペクト比が大きくなりすぎると透明性が高すぎ、さらには粒子自体の機械的強度が保てないという問題が生じる。尚、粒子の大きさに関する平均は、体積平均を意味し、例えばMalvern Instruments Ltd.製のMastersizer−2000で測定される。
【0013】
第1層形成工程では、薄片状基質粒子表面に、Mg、AlおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属(第1の金属)の水和酸化物および/または炭酸塩を付着させる。具体的には、薄片状基質粒子を水に懸濁させ、通常は撹拌しながら、この懸濁液に第1の金属の塩の水溶液を、例えば滴下により、徐々に添加し、同時にアルカリ水溶液または炭酸塩水溶液を、例えば滴下により、徐々に添加し、水和酸化物および/または炭酸塩として基質表面に付着させる。ここで、徐々に添加するとは、第1の金属の水和酸化物および/または炭酸塩が、仕込み量のほぼ全量が薄片状基質に付着できる程度にゆっくりと添加することを意味する。以下の第2層および第3層の形成においても同じである。
【0014】
第1の金属の塩は水溶性のものであればよく、Mg塩として、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等が挙げられ、Al塩としては塩化アルミニウム、硫酸アルミ二ウム、硝酸アルミ二ウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等が挙げられ、Ca塩としては塩化カルシウム、硝酸カルシウム等が挙げられる。これらの塩類は混合して用いてもよく、同じ金属の異なる塩を用いてもよいし、異なる金属の塩を用いてもよい。異なる金属の塩を用いることにより、複数の金属を含有する乃至は複合金属の水和酸化物および/または炭酸塩が被覆される。第1の金属として、特にAlが好ましく、従ってAl塩が好ましく使用される。
【0015】
第1の金属塩の水溶液の添加と同時に、薄片状基質粒子の懸濁液に、アルカリ水溶液または炭酸塩水溶液を添加することで、第1金属の水和酸化物または炭酸塩を基質表面に付着させることができる。水和酸化物とするにはアルカリ化合物が使用され、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。炭酸塩とする場合は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が使用される。通常、それらは水溶液として使用される。
【0016】
第1の金属塩の水溶液、およびアルカリ水溶液または炭酸塩水溶液の添加に関し、意図される目的が達成されるように、懸濁液中のpH、温度および添加時間等の条件が設定されることが好ましい。通常、懸濁液を、中性もしくは塩基性、特に弱塩基性、例えばpH5〜10の範囲、特に6〜9の範囲に保つことが好ましい。また、温度は、適宜設定することができるが、例えば室温〜100℃、好ましくは40〜90℃の範囲である。条件を適切に選択して、仕込みの第1の金属の全量を基質表面に付着させることができる。
【0017】
本発明において、第1の金属の水和酸化物および/または炭酸塩が付着した第1層は、その金属酸化物換算重量で、フィラー全体の重量(基質重量と第1層〜第3層のすべてをその金属酸化物で換算した重量の合計を意味する、以下同じ。)に対して、1〜7重量%であることが好ましい。用いる薄片状基質の表面積の大きい場合(平均粒子径が小さい場合)は、その使用量が多くなり、粒子径が大きい場合はその使用量が少なくなる。
【0018】
第1層の付着量は、本発明のフィラーの性能に大きな影響を与える。後述するように、Si水和酸化物の第2層の表面が、凹凸を有することが好ましいが、第1層の付着量は、第2層の表面の凹凸に影響を与える。第1層が存在しない場合、または付着量が少なすぎると、薄片状基質上にSi水和酸化物の被覆層を形成できない。また反対に、第1層の量が大きすぎると、被覆層の厚みが大きなりその結果Si水和酸化物被覆層が平滑になって、凹凸状になり難い。
【0019】
従って、第1層の付着量は、特に好ましくは2〜7重量%、最も好ましくは2.5〜6重量%である。第1層は、薄片状基質の表面に、粒子状または層状に付着している。第1層が層状に付着していたとしても、上記の範囲である場合は、Si水和酸化物の第2層の表面が凹凸状に形成される。本出願において、「粒子状または層状」の用語は、「粒子状」および「連続した層状」に加えて、その中間のすべての状態も意味するものとして定義される。
【0020】
次の第2層形成工程では、第1層が形成された薄片状基質をSi水和酸化物で被覆する。Si水和酸化物層を形成するためのケイ酸アルカリ化合物としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が選ばれ、好ましくは水溶液にして使用される。同時に添加される(好ましくは滴下される)鉱酸類としては、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられ、好ましくはそれぞれ、水で希釈して使用される。
【0021】
懸濁液中のpH、温度および添加時間等の条件は、目的が達成されるように適宜設定されるが、懸濁液を、中性もしくは塩基性、特に弱塩基性、例えばpH5〜10の範囲、特に6〜9の範囲に保つことが好ましい。また、通常は撹拌しながら、温度は、適宜設定することができるが、例えば室温〜100℃、好ましくは40〜90℃の範囲である。条件を適切に選択して、仕込みのSi成分の全量を、第1層形成後の基質表面に析出・付着させることができる。
【0022】
本発明において薄片状基質として白雲母、セリサイト等の雲母類を用いた場合には、前述の第1層で被覆することにより、その上層としてのSi水和酸化物層の被覆を容易に形成することができる。
【0023】
第2層を構成するSi水和酸化物の量は、二酸化ケイ素換算で、フィラー全体の重量に対して、10〜40重量%が好ましい。これより少なくなると、後述する第3層(Ti水和酸化物層)が、第1層に直接付着する確率が高くなり、本発明の半透明性が得られ難くなる。また、多すぎても、透明性が大きくなり好ましくない。
【0024】
第2層を形成した後の薄片状基質の表面は、好ましくは凹凸を有しており、フィラー焼成後に、フィラーの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察することで、第2層と第3層の界面として確認できる。即ち、断面SEM像において、基質の平面方向の1μm長の範囲に、基質表面から最高の高さと最低の高さの差が、30nm以上200nm以下の範囲の凹凸を有していることが好ましい。通常、最低の高さは、10〜100nmであり、最高の高さは40〜300nmである。さらに、このような凹凸が、基質の平面方向の0.5μm長の範囲にも存在していることが好ましい。
【0025】
第2層表面の凹凸は、第1層の形成、特に被覆重量を前述のように適切に設定することで達成することができる。第2層表面の凹凸は、それ自体、透明性と適度の光拡散性に寄与していると考えられるが、さらに後述する第3層の結晶の凝集(結晶の凝集塊)の形成にも影響を与えていると考えられる。
【0026】
次の第3層形成工程では、第2層が形成された薄片状基質を、さらにTi水和酸化物で被覆する。
【0027】
Ti水和酸化物層を形成するためのTi塩としては、四塩化チタンや硫酸チタニルの塩類が挙げられ、好ましくは水溶液にして使用される。Ti水和酸化物を析出させるため、酸性下で同時に徐々に添加される(好ましくは滴下される)アルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用され、好ましくは水溶液にして使用される。
【0028】
懸濁液中のpH、温度および添加時間等の条件は、目的が達成されるように適宜設定されるが、懸濁液を、酸性、例えばpH1〜3の範囲、特に1.5〜2.5の範囲に保つことが好ましい。また、添加は通常は撹拌しながら行われ、温度は、適宜設定することができるが、例えば室温〜100℃、好ましくは40〜90℃の範囲である。条件を適切に選択して、仕込みのTi成分の全量を、第2層形成後の基質表面に析出・付着させることができる。
【0029】
また、Ti塩(水溶液)の添加開始前に懸濁液を酸性とするが、その際に、先に被覆した第1層から第1の金属水和酸化物および/または炭酸塩が微量溶出することが考えられる。第1金属の溶出金属イオンは、第3層を形成した後、最終的には懸濁液のpHを中性域とするため、第3層に再析出・付着すると考えられる。従って、第3層は、Ti水和酸化物を主成分とするが、微量の第1の金属を含む場合も含む。
【0030】
第3層、即ちTi水和酸化物の量は、二酸化チタン換算で、フィラー全体の重量に対して、20〜50重量%が好ましい。少なすぎると透明性が高くなりすぎて好ましくなく、多すぎても青みが増し、好ましくない。
【0031】
第3層を形成した後の薄片状基質の表面には、Ti水和酸化物の結晶(1次粒子)が存在し、それらがさらに集まって凝集塊(2次粒子)を形成しており、フィラー焼成後に表面のSEM観察により確認することができる。本発明では、SEM像による、Ti水和酸化物の結晶(1次粒子)は、例えば10nm〜70nmの粒子径であり、これらが集まって、70nm〜500nmの凝集塊を形成していることが好ましい。凝集塊は、フラワー状、顆粒状等として存在し、好ましくは100nm〜450nm、より好ましくは150nm〜400nmの大きさである。Ti水和酸化物の当該凝集塊は、光の過度の散乱反射を防ぎ、適度な散乱効果を付与し、また透過率の向上に寄与し、青みの無い適度な透明性(半透明性)を付与しているものと考えられる。
【0032】
次いで、以下に後処理工程を示す。中性域とした懸濁液より固形分を洗浄・ろ別し、105℃〜150℃で乾燥後、所望により500℃から850℃の温度で焼成する。焼成後、凝集物等は篩等により除去する。
【0033】
尚、本発明において、第1層は、第1の金属の水和酸化物、炭酸塩またはそれらの焼成物から構成されること(実質的に構成されること)が好ましく、第2層は、Si水和酸化物またはその焼成物から構成されること(実質的に構成されること)が好ましく、第3層は、Ti水和酸化物またはその焼成物から構成されること(実質的に構成されること)が好ましい。本発明において、「水和酸化物」の表記は、水酸化物状態、酸化物状態、および、それらの中間状態である水和酸化物(酸化水和物)を代表して表す。例えば焼成工程を採用した場合、その温度が高くなる程、酸化物となる傾向が高い。乾燥のみであれば水酸化物、水和酸化物(酸化水和物)で存在する傾向が大きい。また、第1の金属の「炭酸塩」は、炭酸塩が主成分として存在していることを意味し、その水和物、水和酸化物等を含有していてもよい。焼成等の高温工程を経た場合には、通常その一部または全部が酸化物となる。従って、本発明のフィラーにおいて、第1層〜第3層を構成する物質は、析出した状態から、焼成により完全に酸化物になった状態まで、どの段階の状態であってもよいことを意味する。
【0034】
本発明のフィラーは、上記のような方法で製造され、下記方法による測定でISO 13468−1(JIS K7361)による全光線透過率(Perfect Luminous transmittance (τt))が70%以上、および平行光線透過率が20%以上であり、またISO 14782(JIS K7136)によるヘイズ(曇り度(Cloudiness Value))が40〜70となるものである。
【0035】
全光線透過率は、より好ましくは75%以上である。また、通常95%以下であり、典型的な例では、90%以下である。また、ヘイズ値は、より好ましくは45〜70であり、平行光線透過率は、より好ましくは25%以上である。
【0036】
尚、本発明において、全光線透過率(Perfect Luminous transmittance (τt))、平行光線透過率、およびヘイズ(曇り度(Cloudiness Value))は、以下に示す測定用試料を作成し、(株)村上色彩技術研究所社製の「ヘーズ・透過率計HM−150」により、測定した。測定用試料は、本発明により得られた0.5gのフィラーを、9.5gの固形分20重量%の塩化ビニル系メジウム(例えば、大日精化(株)の「VSメジウム」)に加え、撹拌混合し、その分散液をバーコーターNo.20で、厚さ×横×縦が0.15×5×5cmの石英ガラス板に塗布し、作成した。即ち、本発明のフィラーは、このような方法で作成された試料が、所定の光学的特性を有することにより特徴づけられる。この試料作成方法により、乾燥直前の膜厚は、40〜50μmとなる。従って、フィラーを約20重量%含む乾燥後の塗膜の厚さは7.0〜15μmの範囲にある。このような乾燥塗膜が、上記の所定の光学的特性を有していればよい。
【0037】
本発明において、フォギー効果とは、上述による測定条件下で全光線透過率(Perfect Luminous transmittance (τt))が70%以上、および平行光線透過率が20%以上であり、またISO 14782(JIS K7136)によるヘイズ(曇り度(Cloudiness Value))が40〜70であるものを言う。
【0038】
本発明のフィラーは、吸油量が80〜150ml/100gの範囲が好ましく、前述のように製造され、前述の所定の光学的特性を満たすものは、一般的にこの吸油量の範囲を満たす。吸油量がこの範囲のものは、化粧用、特にファンデーションへの使用に適している。
【0039】
さらに、本発明のフィラーは、KES摩擦試験機(カトーテック社のKES−SE−DC試験機)による摩擦係数(MIU値)が0.75以下が好ましく、前述のように製造され、前述の所定の光学的特性を満たすものは、一般的にこの範囲を満たし、肌への感触性が良好である。また、一般には0.5以上である。尚、この摩擦係数はスライドグラスに両面テープを貼り、その上に試験試料(フィラー)を付着させ、KES−SE−DC試験機によりシリコンセンサーをその上で20mm滑らせ、測定することができる。
【0040】
〔フィラーの用途〕
本発明のフィラーは、ファンデーションおよびその他の化粧料に使用することができる。即ち、本発明の化粧料としては、メーキャップ化粧料、毛髪用化粧料、制汗剤等が挙げられる。具体的には、例えばジェル、口紅、ファンデーション(乳化タイプ、リキッドタイプ、油性タイプ等)、コンパクトケーキ、クリーム、リップスティック、ほお紅、マスカラ、ネイルエナメル、まゆずみ、アイシャドー、アイライナー、毛髪剤、制汗パウダー、制汗スプレー等を挙げることができる。本発明のフィラーの配合量は、目的にあわせて適宜設定することができるが、例えば化粧品中1〜50重量%である。例えば、ファンデーションでは1〜25wt%、アイシャドーでは1〜40wt%、口紅では1〜20wt%、ネイルエナメルでは、0.1〜10wt%等が例示される。
【0041】
これら化粧品は、本発明のフィラーを必須として含み、その他の有効成分として、皮膚保護剤、着色剤および他の体質顔料、日焼け止め剤、制汗剤、保湿剤、抗菌剤・殺菌剤、感触向上剤、油剤、および泡安定剤から選択される一種以上を含有する。
【0042】
皮膚保護剤としては、皮膚の肌荒れを防止する目的で配合するもので、例えばパラフィン、エステル、高級アルコール、グリセライドなどの液体油脂類、アクリル系、スチレン系、エーテル系、エステル系、シリコーン系の高分子エマルジョンまたはサスペンジョンが挙げられる。
【0043】
着色剤および他の顔料としては、水不溶性の顔料、油溶性染料、建染染料、レーキ染料などが挙げられ、詳しくは以下のものが例示される。即ち二酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、酸化クロム、亜鉛華、硫化亜鉛、亜鉛粉末、金属粉顔料、鉄黒、黄色酸化鉄、べんがら、黄鉛、カーボンブラック、モリブデートオレンジ、紺青、群青、カドミウム系顔料、蛍光顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合型アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、複合酸化物系顔料、グラファイト、雲母(たとえば、白雲母、金雲母、合成雲母、弗素四珪素雲母等)、金属酸化物被覆雲母類(たとえば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄および酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等)、金属酸化物被覆グラファイト(たとえば、二酸化チタン被覆グラファイト等)、薄片状アルミナ、金属酸化物被覆薄片状アルミナ類(たとえば、二酸化チタン被覆薄片状アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、三酸化二鉄被覆薄片状アルミナ、四酸化三鉄被覆薄片状アルミナ、干渉色性金属酸化物被覆薄片状アルミナ等)、MIO、セリサイト、炭酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、酸化クロム、チタン酸コバルト、ガラスビーズ、ナイロンビーズ、シリコーンビーズ、等が挙げられる。有機顔料としては、赤色2、3、102、104、105、106、201、202、203、204、205、206、207、208、213、214、215、218、219、220、221、223、225、226、227、228、230の(1)、230の(2)、231、232、405の各号、黄色4、5、201、202の1、202の2、203、204、205、401、402、403、404、405、406、407、緑色3、201、202、204、205、401、402の各号、青色1、2、201、202、203、204、205、403、404の各号、橙201、203、204、205、206、207、401、402、403の各号、褐色201号、紫色201、401の各号、黒色401号等が例示される。天然色素としては、サロールイエロー、カーサミン、β―カロチン、ハイビスカス色素、カプサインチン、カルミン酸、ラッカイ酸、グルクミン、リボフラビン、シコニン等が挙げられる。
【0044】
日焼け止め剤としては、例えばベンゾフェノン化合物、ジベンゾイルメタン誘導体、シンナメート誘導体などの有機系化合物や、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機系化合物が挙げられる。
【0045】
制汗剤としては、アルミニウムヒドロキシクロリド、タンニン酸、硫酸亜鉛が挙げられる。
【0046】
保湿剤としては、グリセリン、グリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール類が挙げられる。
【0047】
抗菌剤・殺菌剤としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、フェノール、オルトフェニルフェノールなどのフェノール類、ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒドなどのアルデヒド類、安息香酸(Na)、10−ウンデシレン酸亜鉛、オクタン酸(塩)などのカルボン酸類、他には各種チアゾール系、各種過酸化物系、各種4級アミン活性剤系などが挙げられる。
【0048】
感触向上剤としては、他の体質顔料や合成高分子粒子や天然高分子系粒子などの粉体も使用する事ができる。例えば、タルク、カオリン、セリサイト、炭酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸塩などの無機化合物が挙げられ、合成高分子粒子ではナイロン粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、テトロン粉末、エポキシ樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末などが挙げられ、天然高分子系粒子としては、キトサン粒子、澱粉粒子、セルロース粒子、シルク粉末、結晶セルロース粉末などが挙げられる。
【0049】
油剤としては、揮発性・不揮発性の何れも使用され、例えば炭化水素油(例えばミネラルオイルなど)、エステル油(例えばミリスチン酸イソプロピル、カプリル酸トリグリセライドなど)、植物油、低粘度シリコーン油、揮発性シリコーン油等の液状油や、固形パラフィンやワセリン、セラミド、エチレングリコールジ脂肪酸エステル、ジアルキルエーテル等、メチルポリシロキサン、メチルフェニルシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシラノール骨格を有する化合物、更に、シリコーン樹脂、シリコーンビーズ等が挙げられる。
【0050】
泡安定剤としては、泡膜を安定させる活性剤であり、水溶性高分子や親水性固体が挙げられる。水溶性高分子としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの非イオン性高分子、キサンタンガムやポリアクリル酸などのソーダ塩、カルボキシメチルセルロースのソーダ塩などのアニオン性高分子、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド化グアーガム、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド化澱粉などのカチオン性高分子が挙げられる。
【0051】
本発明の化粧料においては、適宜香料も用いられる。また、任意に各種ソーダ、カリ石鹸、各種金属(亜鉛、カルシウム、マグネシウム)石鹸、各種ソルビタン脂肪酸エステルなどの界面活性剤なども用いられる。
【0052】
本発明のフィラーは、化粧料以外の用途においても好適に使用することができる。例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる樹脂類、油脂やアルコール類からなる油類と混合して、樹脂組成物、ボトルや玩具などの樹脂成型物に使用できる。この場合は、直接樹脂に、または予めペレットとして組み込んでからそれを更に樹脂に混合し、押し出し成形や、カレンダーリング、ブロウイング等により各種成形体とすることができる。樹脂成分としてはポリオレフィン類、エポキシ類、ポリエステル類、ポリアミド(ナイロン)類、ポリカーボネート類、ポリアクリレート類等の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の何れにも用いることができる。
【0053】
更に、印刷インキに混合して、印刷適正を向上させたインキとすることができる。または塗料中に混合して、塗装・塗膜適正を向上させた塗料とすることができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
【0055】
<実施例1>
粒子径1〜15μmの白雲母113gを水1750m1に懸濁した。この懸濁液を攪拌下、80℃まで加温した。それに塩化アルミニウム6水和物70gを水400mlに溶解させた水溶液470gと32wt%の水酸化ナトリウム水溶液とをpHを9.5に保ちながら同時に滴下した。
【0056】
塩化アルミニウム水溶液を滴下終了後、ケイ酸ナトリウム水溶液(7wt%−SiO)1600gと希塩酸とを用いてpHを9.2に保ちながら同時に滴下した。次いで希塩酸を用いて懸濁液のpHを1.3と酸性にし、四塩化チタン水溶液(454g/l)1000mlと32wt%の水酸化ナトリウム水溶液とをpHを1.6に保ちながら同時に滴下した。
【0057】
四塩化チタン水溶液を滴下終了後、32wt%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、懸濁液のpHを5.0とした。生成物をろ過し、水洗した後、110℃の温度で乾燥後、700℃で焼成して、目的のフィラーを製造した。
【0058】
使用した原料から、フィラー全体に対する基質および各層の重量割合は、白雲母が26.2%、Alが3.4%、SiOが26.0%、TiOが44.4%となる。
【0059】
フィラーの断面SEM像を図1に示す。シリカ層の表面が、凹凸状になっているのが観察される。また、図2Aにフィラー表面のSEM像を示す。図2Bは、図2Aと同じ像であり、二酸化チタンの結晶の二次凝集塊の大きさを示した。
【0060】
フィラーの光学的特性の測定結果を表1に示す。また亜麻仁油を用いた吸油量は、110ml/100g、皮膚感触性である伸展性、滑り性、付着性としての平均摩擦係数(MIU値)が0.66であった。
【0061】
<実施例2>
粒子径1〜15μmの白雲母110gを水1700m1に懸濁させた。この懸濁液を攪拌下、80℃まで加温した。それに塩化アルミニウム6水和物70gを水400mlに溶解させた水溶液470gと32wt%の水酸化ナトリウム水溶液とをpHを9.5に保ちながら同時に滴下した。
【0062】
塩化アルミニウム水溶液を滴下終了後、ケイ酸ナトリウム水溶液(5wt%−SiO)800gと希塩酸とを用いてpHを9.2に保ちながら同時に滴下する。次いで希塩酸を用いて懸濁液のpHを1.3と酸性にし、四塩化チタン水溶液(385g/l)825mlと32wt%の水酸化ナトリウム水溶液とをpHを1.6に保ちながら同時に滴下した。
【0063】
四塩化チタン水溶液を滴下終了後、32wt%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、懸濁液のpHを5.0とした。生成物をろ過し、水洗した後、110℃の温度で乾燥後、700℃で焼成し、目的のフィラーを製造した。実施例1同様に、シリカ層の表面は凹凸状であり、表面には酸化チタンの結晶の2次凝集塊が存在していた。
【0064】
使用した原料から、フィラー全体に対する基質および各層の重量割合は、白雲母が36.8%、Alが5.0%、SiOが13.4%、TiOが44.8%となる。
【0065】
フィラーの光学的特性の測定結果を表1に示す。また、亜麻仁油を用いた吸油量は135ml/100g、MIU値が0.68であった。
【0066】
<比較例1>
実施例1の条件下で、第1の金属に相当するAlの金属塩を使用せずに、調製を試みた。
Si水和酸化物層の被覆層は認められなかった。
【0067】
<比較例2>
従来のフィラーとして、Extender−W(メルク社製商品、50重量%酸化チタン被覆雲母、特許2121498に基づく)を用意した。フィラーの光学的特性の測定結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
<ファンデーションへの処方例>
次の配合によりファンデーションを調製した。
タルク 38重量部
実施例1のフィラー 10重量部
雲母 (8μm) 10重量部
ステアリン酸マグネシウム 3重量部
ナイロンパウダー12 8重量部
黄色酸化鉄 1.9重量部
赤色酸化鉄 0.8重量部
酸化チタン 1.0重量部
ミネラルオイル 適量
(カプリル酸、カプリン酸)トリグリセリド 3.3重量部
ブチルパラベン 0.1重量部
【0070】
<コンパクトパウダーへの処方例>
次の配合によりコンパクトパウダーを調製した。
タルク 50重量部
実施例1のフィラー 10重量部
着色顔料 5重量部
ミリスチン酸イソプロピル 適量
ステアリン酸マグネシウム 2重量部
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のフィラーは、フォギー効果を有し、皮膚上での滑り性が良く、またその付着性が良好で皮膚感触性がよく、かつ適度な吸油量を有するため、化粧料、特にファンデーションの用途に好適に使用することができる。さらに、他の各種用途のフィラーとしても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例1で製造したフィラーの断面SEM像である。尚、第1層に相当する酸化アルミニウム(アルミニウム水和酸化物)は見えていない。
【図2A】実施例1で製造したフィラーの表面のSEM像である。
【図2B】図2AのSEM像において、酸化チタン結晶の凝集塊を示す図である。図中、凝集塊の代表例の周囲を、少し大きめに囲って示した。
【符号の説明】
【0073】
11 基質
12 シリカ層
13 酸化チタン層
20 酸化チタン結晶の凝集塊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性または半透明性の薄片状基質と、
前記薄片状基質の表面に形成され、Mg、AlおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属(以下、第1の金属という。)の水和酸化物、炭酸塩またはそれらの焼成物を含有する粒子層または被覆層(以下、第1層という。)と、
前記第1層が形成された前記薄片状基質を被覆し、Si水和酸化物またはその焼成物を含有する被覆層(以下、第2層という。)と、
前記第2層を被覆し、Ti水和酸化物またはその焼成物を含有する被覆層(以下、第3層という。)と
を有することを特徴とするフィラー。
【請求項2】
前記薄片状基質は、平均粒子径/平均厚さで表されるアスペクト比が10〜100、平均粒子径が5〜20μmの形状であることを特徴とする請求項1記載のフィラー。
【請求項3】
前記薄片状基質は、天然雲母、合成雲母、薄片状アルミナ、ガラスフレーク、タルク、カオリンおよび薄片状シリカからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1記載のフィラー。
【請求項4】
前記第2層と第3層の界面が、1μm長の範囲に基質表面から最も高い高さと最も低い高さの差が、30nm以上200nm以下の範囲で第2層の凹凸を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフィラー。
【請求項5】
表面に、Ti水和酸化物またはその焼成物の結晶の70nm〜500nmの凝集塊を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフィラー。
【請求項6】
フィラー全体に対する各層の重量割合が、
前記第1層が、第1の金属の金属酸化物換算で1〜7重量%であり、
前記第2層が、二酸化ケイ素換算で10〜40重量%であり、
前記第3層が、二酸化チタン換算で、20〜50重量%である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフィラー。
【請求項7】
前記フィラーを20重量%含む膜厚7.0〜15μmの範囲にある乾燥塗膜が、ISO 13468−1(JIS K7361)による全光線透過率(τt)が70%以上、および平行光線透過率が20%以上、ISO 14782(JIS K7136)によるヘイズが40〜70を示すことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフィラー。
【請求項8】
吸油量が80〜150ml/100gの範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のフィラー。
【請求項9】
KES摩擦試験機による摩擦係数(MIU値)が0.75以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のフィラー。
【請求項10】
透明性または半透明性の薄片状基質を水に懸濁させ、この懸濁液に、Mg、AlおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属(以下、第1の金属という。)塩水溶液と、アルカリ水溶液または炭酸塩水溶液とを中性もしくは塩基性下にて徐々に添加し、前記薄片状基質表面に、前記第1の金属の水和酸化物および/または炭酸塩を粒子状または層状に付着させる第1層形成工程と、
次いで、中性もしくは塩基性下にて、ケイ酸アルカリ水溶液と希鉱酸とを同時に徐々に添加し、前記第1層が形成された前記薄片状基質をSi水和酸化物で被覆する第2層形成工程と、
次いで、酸性下にて、Ti塩水溶液とアルカリ水溶液とを同時に徐々に添加し、前記第2層が形成された前記薄片状基質をTi水和酸化物で被覆する第3層形成工程と
を有することを特徴とするフィラーの製造方法。
【請求項11】
前記第3層が形成された後の前記薄片状基質を焼成する工程を有することを特徴とする請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載のフィラーの、化粧料、塗料、樹脂、インキ、印刷インキおよびコーティング材料における使用。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載のフィラーを、化粧料の組成全体の1〜50重量%含有する化粧料。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2008−156439(P2008−156439A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345638(P2006−345638)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】