説明

フィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法及びそれを用いたフィラー含有接着フィルム

【課題】 濾過流量の増加、フィルタ交換頻度の低減を達成するフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法とそれを用いたフィラー含有接着フィルムを提供する。
【解決手段】 フィラーおよび溶剤を混合した混合物を、粘度計による粘度、またはレーザー式粒度分布計で測定した粒度分布の平均径、又は、中位径が一定となるまで分散処理をする分散工程で得られ第1の混合物に、さらに、接着性成分を混合するフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法。接着性成分を混合後、更に分散処理をする再分散工程を有すると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法及びそれを用いたフィラー含有接着フィルムに関し、さらに詳しくは、フィラーを含有する接着フィルム用ワニスへのフィラーの分散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル関連機器は多機能と軽量小型の両立が求められている。そのため、半導体素子を積層するスタックドマルチチップパッケージ(以下「スタックドMCP」)のニーズは高く、その開発が広く実施されている。
【0003】
スタックドMCPの技術開発は、パッケージの小型化と多段積載という相反する目標の両立にある。そのため、特に半導体素子に使用されるシリコンウェハの厚さは薄膜化が急速に進み、ウェハ厚さ100μm以下のものが積極的に使用、検討されている。また多段積載は、パッケージ作製工程の複雑化を引き起こすため、パッケージ作製工程の簡素化及び、多段積載によるワイヤーボンディングの熱履歴回数の増加に対応した作製プロセス、材料の提案が求められている。
【0004】
このような状況の中、スタックドMCPの接着部材としては従来からペースト材料が用いられてきた。しかし、ペースト材料では、半導体素子の接着プロセスにおいて樹脂のはみ出しが生じたり、膜厚精度が低かったりするといった問題がある。これらの問題は、ワイヤーボンディング時の不具合発生やペースト剤のボイド発生などの原因となるため、ペースト材料を用いた場合では、上述の要求に対処しきれなくなってきている。
【0005】
こうした問題を改善するために、近年、ペースト材料に代えてフィルム状の接着剤(以下、接着フィルム)が使用される傾向にある。接着フィルムはペースト材料と比較して、半導体素子の接着プロセスにおけるはみ出し量を少なく制御することが可能であり、且つ、フィルムの膜厚精度を高めて、膜厚のばらつきを小さくすることが可能であることから、特にスタックドMCPへの適用が積極的に検討されている。
【0006】
この接着フィルムは、通常、接着剤層が剥離基材上に形成された構成を有しており、その代表的な使用方法の一つにウェハ裏面貼付け方式がある。ウェハ裏面貼り付け方式とは、半導体素子の作製に用いられるシリコンウェハの裏面に接着フィルムを直接貼付ける方法である。この方法では、半導体ウェハに対する接着フィルムの貼付けを行った後、剥離基材を除去し、接着剤層上にダイシングテープを貼り付ける。その後、ウェハリングに装着させて所望の半導体素子寸法にウェハを接着剤層ごと切削加工する。ダイシング後の半導体素子は裏面に同じ寸法に切り出された接着剤層を有する構造となっており、この接着剤層付きの半導体素子をピックアップして搭載されるべき基板に熱圧着等の方法で貼り付ける。
【0007】
上記のようなフィルム状接着剤を構成する接着剤層については、種々検討されており、例えば、接着性の樹脂成分に加えてフィラーを含んで構成されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−45557号公報
【特許文献2】特開2003−60127号公報
【特許文献3】特開2000−229355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したようなシリコンウェハの薄膜化に伴い、フィルム状接着剤の薄膜化に対する要求も大きくなってきている。しかし、接着性成分に加えてフィラーを含むフィルム状接着剤の薄膜化においては、フィラーの分散不良に起因して、フィルム表面に無機充填材による欠陥が発生することがある。このようなフィルム表面の欠陥は、薄膜化したシリコンウェハに接着する際に、シリコンウェハの割れの原因となる場合がある。
【0010】
上記課題を解決するため、フィルム用接着剤スラリーの濾過精度を向上させ、フィラーの分散不良分(以下、フィラー凝集体)を除去する方法があるが、濾過精度向上に伴う濾過流量の減少、フィルタ交換頻度の増加が発生し、生産性を阻害したり、コストを上昇させる要因となることがある。
本発明は、上記の濾過精度向上に伴う問題に対応し、濾過流量の増加、フィルタ交換頻度の低減を達成するフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法とそれを用いたフィラー含有接着フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためにフィラー凝集体を分散処理にて効果的に減少させ、濾過流量の増加、フィルタ交換頻度の低減を図るものであり、分散処理を接着性成分の混合前に実施することで、少量での分散処理によるフィラーの分散装置滞留時間が長くなり、低粘度での分散処理となることから流体の摩擦抵抗の低減が発生し、分散性の効率が向上し、フィラー凝集体を効果的に減少させることができる。
【0012】
また、フィラー凝集体の量は粘度計による粘度、又はレーザー回折式粒度分布計による粒度分布の平均径又は中位径より判断し、粘度又は粒度分布のいずれか、又は両測定結果が一定となったら分散処理が終点に達したとした。
【0013】
本発明者らは、フィラー凝集体を効果的に減少させることにより、濾過流量が増加し、フィルタ交換頻度が低減することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、[1]フィラーおよび溶剤を混合した混合物を、粘度計による粘度、またはレーザー式粒度分布計で測定した粒度分布の平均径、又は、中位径が一定となるまで分散処理をする分散工程で得られた第1の混合物に、さらに、接着性成分を混合することを特徴とするフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法である。
また、本発明は、[2]接着性成分を混合後、更に分散処理をする再分散工程を有することを特徴とする上記[1]に記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法である。
また、本発明は、[3]更に、1〜20μmの濾過精度の濾過工程を含むことを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法である。
また、本発明は、[4]フィラーが、シリカであり、フィラー量が5〜30質量%である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法である。
また、本発明は、[5]溶剤が、ケトン系溶剤である上記[1]〜[4]のいずれかに記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法である。
また、本発明は、[6]分散処理が、ビーズミルを用いて行うことを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法である。
また、本発明は、[7]濾過工程における濾過圧力が、0.01〜0.2MPaである上記[3]〜[6]のいずれかに記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法である。
また、本発明は、[8]ビーズミルに用いるビーズが、アルミナビーズ又はジルコニアビーズであり、ビーズの粒径が、0.1〜0.5mmである上記[6]又は[7]に記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法である。
さらに、本発明は、[9]上記[1]〜[8]のいずれかに記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法で得られるワニスを基材上に膜状に形成し、溶剤を除去して得られるフィラー含有接着フィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、分散工程におけるフィラー凝集体の減少が効果的に図れ、濾過工程における濾過流量の増加、フィルタ交換頻度の低減が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1のフィラー含有接着フィルム用ワニスを直径90mmSUS5μmフィルタで濾過圧0.2MPaにおいて濾過することにより得られた濾過流量と濾過質量の関係を示した図。
【図2】実施例1の第1の混合物(フィラーと溶剤)の分散工程における分散時間による粘度の関係を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明でいうフィラー含有接着フィルム用ワニスとは、無機充填材(フィラー)が含まれるフィルム型接着剤の塗液(ワニス)を示す。
【0018】
本発明のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法は、フィラーおよび溶剤を混合して第1の混合物を得る第1の混合工程と、第1の混合物に粘度計による粘度、あるいはレーザー式粒度分布計で測定した粒度分布の平均径、又は、中位径が一定となるまで分散処理を実施する分散工程と、分散処理した第1の混合物に接着性成分を混合して第2の混合物を得る第2の混合工程と、好ましくは、第2の混合物を濾過処理して濾過物を得る濾過工程から成る。
【0019】
分散工程を第2の混合物でなく、第1の混合物で実施することにより、少量での分散処理によるフィラーの分散装置滞留時間を長くし(分散装置滞留時間の増加)、低粘度での分散処理による流体の摩擦抵抗の低減が発生し、より効率的に分散工程が実施できる。これにより濾過工程における濾過流量の増加、フィルタ交換頻度の低減が可能となり、フィラー含有接着フィルム用ワニスの生産性が向上する。
【0020】
(第1の混合工程)
第1の混合工程においては、フィラーと溶剤を混合する。混合処理の条件は、混合方法に応じて適宜選択できる。例えば、混合時間としては1〜20時間とすることができ、1〜12時間であることが好ましい。混合温度としては0〜40℃とすることができ、10〜30℃であることが好ましい。
また混合を攪拌で行う場合には、碇型、プロペラ型等の攪拌羽根を用いて、攪拌速度20〜120rpm(回転/分)とすることができる。
【0021】
(フィラー)
フィラー含有接着フィルム用ワニスは、フィラーを少なくとも1種を含む。フィラーを含むことで、形成される接着剤層の取り扱い性や熱伝導性が向上する。また溶融粘度の調整およびチキソトロピック性付与なども可能になる。
フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウイスカー、窒化ホウ素、シリカ等が挙げられ、分散処理による再凝集が少なく、絶縁性、低吸水性、熱膨張が比較的低く、入手の容易さ等からシリカを用いることが好ましく、フィラー量が5〜30質量%であることが好ましい。
【0022】
(溶剤)
フィラー含有接着フィルム用ワニスは、溶剤を少なくとも1種を含む。溶剤としては特に制限はなく、例えば、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール系溶剤;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられ、分散処理による再凝集が少ない点でケトン系溶剤を用いるのが好ましい。
【0023】
(分散工程)
分散工程においては、前記第1の混合工程で得られた第1の混合物を分散処理する。分散処理を行うことでフィラー中の凝集物が解砕され微細化し、均一に溶剤中に分散される。
【0024】
分散処理の方法としては、特に制限されず、通常用いられる分散処理方法を適宜選択して用いることができる。具体的には例えば、らいかい機、3本ロール、ボールミル、およびビーズミル等を用いて分散処理を行うことができる。中でも、分散効率の観点から、ビーズミルを用いて分散処理を行うことが好ましい。
【0025】
ビーズミルに用いるビーズとしては、特に制限されず、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ等を挙げることができ、金属コンタミを考慮するとジルコニアビーズが好ましい。また、ビーズの粒径としては、例えば、0.1〜3mmとすることができ、粒径が大きいことによるビーズ-フィラー衝突エネルギーの増加でフィラー表面が活性化し、再凝集してしまう危険性があるので実施例で用いた0.1〜0.5mmであることが好ましい。
【0026】
分散処理の条件は、分散処理方法に応じて適宜選択される。例えば、ビーズミルを用いる場合、周速1〜10m/秒、速度0.5〜3L/分で、10〜30時間とすることができる。また、分散処理においては液温の上昇を抑制するため、40℃以下に冷却して行なうことが好ましい。
【0027】
分散処理の終点は、粘度計による粘度、あるいはレーザー式粒度分布計で測定した粒度分布の平均径、又は、中位径が一定となることで確認できる。
ここで一定とは、その測定値と前の測定値との変化がせいぜい+/−10%、好ましくは+/−5%以内であることを意味する。
【0028】
(粘度計による粘度測定)
粘度計による粘度測定方法としては、特に制限されないが、再現性を得るために粘度計に入れる第1の混合物量を一定とし、恒温槽を用いて測定温度を一定とすることが好ましい。温度により粘度は変化するので、常に一定の、例えば、25℃で測定するようにする。粘度計としては、細管式粘度計、落球式粘度計、回転式粘度計が挙げられ、簡便に測定できることから回転式粘度計が好ましく、回転式粘度計として、共軸二重円筒型、単一円筒型回転式粘度計(B型)、コーンプレート型(E型)等があり、この中でも、特にE型粘度計が好ましく用いられる。
【0029】
(レーザー式粒度分布計での粒度分布測定)
レーザー式粒度分布計での粒度分布測定方法としては特に制限されないが、再現性を得るためにフィラーと屈折率が大きく異なる分散媒を用いることが好ましい。
レーザー式粒度分布計で測定した粒度分布の平均径は、体積平均径(MV)のことであり、体積で重み付けられた平均径、すなわち平均体積をもつ粒子の直径を示す。
また、レーザー式粒度分布計で測定した粒度分布の中位径は、測定した粒子の全体積を100%として算出した累積カーブが50%となる点の粒子径を示す。
平均径と中位径が等しくなるのは、分布がガウス分布の時であり、2山ある粒度分布、左右対称でない粒度分布などではこの2つの値には差が生じる。
【0030】
(第2の混合工程)
第2の混合工程においては、前記第1の混合物を分散処理して得られる分散物と接着性成分とを混合する。混合処理の条件は、第1の混合工程と同様に混合方法に応じて適宜選択できる。例えば、混合時間としては5〜20時間とすることができ、5〜12時間であることが好ましい。混合温度としては0〜40℃とすることができ、10〜30℃であることが好ましい。
また混合を攪拌で行う場合には、碇型、プロペラ型等の攪拌羽根を用いて、攪拌速度20〜120rpmとすることができる。
第2の混合工程で得られる第2の混合物は、分散装置又は分散装置への配管中に残存する第1の混合物をフィラー含有接着フィルム用ワニス中に混合するため、再度分散処理をすることが好ましい。
【0031】
(第2の混合物の再分散処理−再分散工程)
第2の混合物の再度分散処理においては、分散装置又は分散装置への配管中に残存する前記第1の混合物をフィラー含有接着フィルム用ワニス中に混合する。
【0032】
再分散処理の方法は第1の混合物を分散した分散装置及び配管で実施する。第1の混合物を第2の混合物中に十分混合させるために、少なくとも1パスは再分散処理を実施することが好ましい。
【0033】
再分散処理の条件は、分散処理方法に応じて適宜選択される。例えば、ビーズミルを用いる場合、周速1〜10m/秒、速度0.5〜3L/分で、5〜30時間とすることができる。また、再分散処理においては液温の上昇を抑制するため、40℃以下に冷却して行なうことが好ましい。
【0034】
(接着性成分)
本発明において用いる接着性成分としては、例えば、熱硬化性接着成分、光硬化性接着成分、熱可塑性接着成分、及び、酸素反応性接着成分等を挙げることができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができるが、接着剤として半導体素子の固定に使用されることを考慮すると、接着性成分は熱硬化性接着成分により構成されていることが好ましい。
【0035】
熱硬化性接着成分としては、熱により硬化するものであれば特に制限はなく、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソシアヌレート基、アミノ基、アミド基等の官能基を持つ熱重合性成分を含む化合物が挙げられる。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができるが、接着フィルムとしての耐熱性及び熱硬化による接着力を考慮すると、熱によって硬化し接着作用を及ぼす熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。
【0036】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられ、特に、耐熱性、作業性、信頼性に優れる接着フィルムが得られる点でエポキシ樹脂を使用することが最も好ましい。
【0037】
上記エポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものを使用することができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
上記エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコートシリーズ(エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009)、ダウケミカル社製のDER−330、DER−301、DER−361、及び、東都化成株式会社製のYD8125、YDF8170等が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート152、エピコート154、日本化薬株式会社製のEPPN−201、ダウケミカル社製のDEN−438等が挙げられる。更に、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製のEOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1012、EOCN−1025、EOCN−1027、東都化成株式会社製のYDCN701、YDCN702、YDCN703、YDCN704等が挙げられる。
【0039】
多官能エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のEpon 1031S、BASFジャパン社製のアラルダイト0163、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−411、EX−321等が挙げられる。
【0040】
エポキシ樹脂を使用する際は、エポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としては、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができ、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ジシアンジアミド、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂などが挙げられる。特に吸湿時の耐電食性に優れる点で、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂が好ましい。なお、本発明においてエポキシ樹脂硬化剤とは、エポキシ基に触媒的に作用し架橋を促進するような、いわゆる硬化促進剤と呼ばれるものも含む。
上記フェノール樹脂硬化剤の中で好ましいものとしては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2149、フェノライトVH−4150、フェノライトVH4170、明和化成株式会社製、商品名:H−1、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:エピキュアMP402FPY、エピキュアYL6065、エピキュアYLH129B65、及び、三井化学株式会社製、商品名:ミレックスXL、ミレックスXLC、ミレックスRN、ミレックスRS、ミレックスVR等が挙げられる。
【0041】
(濾過工程)
濾過工程においては、第2の混合物を濾過処理する。濾過処理は、例えば、第2の混合物に圧力をかけて濾過フィルタを通過させることで行うことができる。
本発明においては、分散工程を第2の混合物でなく、第1の混合物で実施することにより、少量での分散処理によるフィラーの分散装置滞留時間の増加、低粘度での分散処理による流体の摩擦抵抗の低減が発生し、より効率的に分散工程が実施できることから、濾過流量の増加、フィルタ交換頻度の低減が可能となり、フィラー含有接着フィルム用ワニスの生産性が向上する。
【0042】
前記濾過フィルタの材質は特に制限されず、市販の濾過フィルタから適宜選択して用いることができる。例えば、住友スリーエム株式会社製のマイクロスクリーン等を用いることができる。
前記濾過フィルタの濾過精度は特に制限されず、例えば、1μm〜20μmとすることができ、近年の薄膜化に対する要求から1μm〜5μmであることが好ましい。濾過精度は、フィルタを通すことにより除去できる粒子の大きさを示す。
また濾過処理における濾過圧力は特に制限されないが、フィルタの目開きを防止するために0.01〜0.2MPaであることが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0044】
<実施例1>
混合釜として攪拌装置を備えた300Lタンクを用い、シクロヘキサノン128kgに、シリカフィラー(R972 平均一次粒子径20nm、日本アエロジル株式会社製)20kgを加えて、常圧下攪拌速度70rpmで1時間攪拌混合し、さらに減圧下(1kPa)、攪拌速度70rpmで1時間、攪拌混合して第1の混合物を得た(第1の混合工程)
【0045】
得られた第1の混合物を、ビーズミル(ジルコニアビーズ、ビーズ粒径0.5mm、ビーズミル周速5m/秒、第1の混合物の流量0.72kg/分)を用いて、20時間分散処理を行うことで分散物を調製した(分散工程)。尚、分散物は分散時間5時間毎にサンプリングし、粘度、粒度分布測定を実施した。
【0046】
得られた分散物に、XLC−LL(三井化学株式会社製商品名、フェノール樹脂) 28kg、YDCN−700−10(東都化成株式会社製商品名、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)34kgを加えて、常圧下、攪拌速度60rpmで5時間、攪拌混合して第2の混合物を得た(第2の混合工程)。
【0047】
得られた第2の混合物を、ビーズミル(ジルコニアビーズ、ビーズ粒径0.5mm、ビーズミル周速5m/秒、第2の混合物の流量0.72kg/分)を用いて、10時間再分散処理を行うことでフィラー含有接着フィルム用ワニス(濾過前)を調製した(再分散工程)。
【0048】
得られたフィラー含有接着フィルム用ワニス(濾過前)を、20inch デプス10μmフィルタ(住友スリーエム株式会社製、カートリッジタイプ)、20inch SUS5μmフィルタ(住友スリーエム株式会社製、カートリッジタイプ)にて連続で濾過することでフィラー含有接着フィルム用ワニスを調整した。
【0049】
<評価>
(濾過流量)
上記で得られたフィラー含有接着フィルム用ワニス(濾過前)を直径90mm SUS5μmフィルタ(住友スリーエム株式会社製、ディスクタイプ)で濾過圧0.2MPaにおいて濾過することにより、濾過流量と濾過質量の関係式を求め、関係式の切片を濾過流量とした(図1、表1)。
(フィルタ交換頻度)
上記濾過流量の評価方法と同じ実験をし、濾過流量と濾過質量の関係式を求め、濾過流量が0g/秒の濾過質量となった時をフィルタライフとし、フィルタライフでフィルタ交換頻度を評価した(図1、表1)。
(粘度、粒度分布)
上記で得られた分散体の粘度、粒度分布を室温(25℃)で分散時間5時間毎に測定し、分散時間と粘度、粒度分布(平均径、中位径)の関係を求めた(図2、表2)。
【0050】
<実施例2>
実施例1において、すべての材料の質量を半分とし、分散時間を10時間、再分散時間を5時間とした以外は実施例1と同様にしてフィラー含有接着フィルム用ワニスを製造した。また上記と同様にして評価を行なった。評価結果を表1に示した。
【0051】
<比較例1>
実施例1において、第2の混合工程を分散工程より先に実施し、すなわち、シクロヘキサノン、シリカフィラー、XLC−LL、YDCN−700−10を300Lタンクで混合し、ビーズミルで、さらに分散した。分散工程の分散時間を30時間とし、再分散工程を実施しないこと以外は実施例1と同様にしてフィラー含有接着フィルム用ワニスを製造した。また上記と同様にして評価を行なった。評価結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表1より、実施例1と実施例2の濾過流量、フィルタライフはほぼ一致した。作製スケールが異なる場合は作製量に合わせて分散時間を変更することで同等の分散体を得ることができると分かった。また、実施例1の濾過流量、フィルタライフは比較例1よりも大きかった。よって本発明により、濾過流量の増加とフィルタ交換頻度の低減が見込める。
【0055】
図2に第1の混合物の分散工程における分散時間と粘度の関係を示した。図2より分散時間20時間以上で粘度一定となることが分かった。また、表2に示した第1の混合物の分散工程における分散時間と粒度分布の関係より、分散時間10時間以上で粒度分布一定となることが分かった。よって実施例1の作製条件において、第1の混合物の分散工程は、分散時間20時間で終点に達することを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーおよび溶剤を混合した混合物を、粘度計による粘度、又はレーザー式粒度分布計で測定した粒度分布の平均径又は中位径が一定となるまで分散処理をする分散工程で得られた第1の混合物に、さらに、接着性成分を混合することを特徴とするフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法。
【請求項2】
接着性成分を混合後、更に分散処理をする再分散工程を有することを特徴とする請求項1に記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法。
【請求項3】
更に、1〜20μmの濾過精度の濾過工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法。
【請求項4】
フィラーが、シリカであり、フィラー量が5〜30質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法。
【請求項5】
溶剤が、ケトン系溶剤である請求項1〜4のいずれかに記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法。
【請求項6】
分散処理が、ビーズミルを用いて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法。
【請求項7】
濾過工程における濾過圧力が、0.01〜0.2MPaである請求項3〜6のいずれかに記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法。
【請求項8】
ビーズミルに用いるビーズが、アルミナビーズ又はジルコニアビーズであり、ビーズの粒径が、0.1〜0.5mmである請求項6又は請求項7に記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のフィラー含有接着フィルム用ワニスの製造方法で得られるワニスを基材上に膜状に形成し、溶剤を除去して得られるフィラー含有接着フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−162690(P2012−162690A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25975(P2011−25975)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】