説明

フィラー高充填樹脂組成物、錠剤の製造方法およびそれからなる成形品

【課題】溶融成形が可能で、加工時の金型腐食がなく、フィラーの特性を高効率に発揮することを可能とした、成形加工性と物性のバランスに優れたフィラー高充填熱可塑性樹脂組成物およびそれから得られる成形品の提供。
【解決手段】(a)と(b)の合計を100容量%として、(a)25℃における98重量%硫酸中、濃度0.1g/dLの条件で測定した還元粘度が0.6〜2.5dL/gの範囲内にあるポリフェニレンエーテルエーテルケトン5〜50容量%と(b)無機フィラー95〜50容量%を配合してなるフィラー高充填樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形時の金型腐食がなく、成形加工性と物性のバランスに優れ、かつフィラーの特性を高効率に発揮することを可能としたフィラー高充填熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジニアプラスチックは、これまで樹脂化が困難とされていた分野への用途開拓も盛んに試みられ、これらの樹脂に対する要求性能は、益々多様化すると共に厳しくなる傾向にある。
【0003】
近年、デザインの多様化から、成形品の形状の自由度が要求されるようになってきた。しかし、従来使用していた金属では成形品の自由度に限界がある。そこで、金属代替のためにフィラー(充填剤)強化熱可塑性樹脂で検討が行われてきている。例えば、熱伝導性、高強度・高剛性、高温時の寸法精度をはじめとする各用途で必要とされる特性が従来のフィラー強化熱可塑性樹脂では満足されず、更なる特性向上が要求されるようになってきている。特にパソコンのCPUをはじめ、電装制御部品の高出力化、レーザー光の利用時の熱による高温雰囲気下における機械強度の保持性や温度による特性変化の低減等が求められるようになってきた。特に高温雰囲気下であることから、放熱特性を樹脂に持たせる手法が提案されている。
【0004】
ポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂は、優れた耐熱性、耐薬品性、耐湿熱性、難燃性、不純物の非溶出性、耐摩耗性、摺動性、耐放射線性などエンジニアリングプラスチックとして極めて好適な性質を有する樹脂である。特に、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下、PEEK樹脂と略することもある)は、射出成形、押出成形などの溶融成形加工法により各種成形部品、フィルム、シート、繊維等に成形可能であり、非強化およびフィラー強化PEEK樹脂組成物の電気・電子部品や機械部品および自動車部品など高い耐熱性や耐薬品性、低汚染性の要求される分野での需要が拡大しつつあり、さらなる特性向上のため、フィラーを高充填した高機能性PEEK樹脂組成物の創出が望まれている。
【0005】
PEEK樹脂に対するフィラーの高充填という観点からは、特許文献1に低粘度PEEK樹脂に充填剤を30〜70重量%配合してなる高充填PEEK樹脂が開示されている。しかしながら、低粘度PEEKをマトリックス樹脂として用いていることから、フィラーの種類によっては高充填樹脂成形品の機械強度が低くなり、所望の特性を得ることができないという欠点がある。また、低粘度PEEKは末端基の増加により成形加工時のガス成分が多く、金型腐食や電気電子回路の接点不良の原因となるため好ましくない。
【0006】
特許文献2および3にはPEEK樹脂に強化用繊維充填剤と非晶部位の拘束を目的とした不動化用充填剤を、合わせて40〜60容量%含むPEEK樹脂組成物が開示されているものの、不動化用フィラーの高配合により樹脂組成物が高粘度化する傾向にあり、成形加工性が悪いという欠点がある。またフィラー高充填により得られる特性も加熱たわみ温度(HDT)の向上以外には明確になっていなかった。
【0007】
一方、フィラーの高充填樹脂組成物という観点では、特許文献4には環状ポリアリーレンスルフィドを開環重合して得られるポリアリーレンスルフィド樹脂に無機フィラーを50〜95容量%配合してなる高充填樹脂組成物が開示されているが、ポリアリーレンスルフィド以外の樹脂についてなんら記載はなく、その効果についても不明である。
【0008】
ところで最近、芳香族環状化合物はその環状であることから生じる特性に基づく高機能材料や機能材料への応用展開可能性、たとえば包接能を有する化合物としての特性や、開環重合による高分子量直鎖状高分子の合成のための有効なモノマーとしての活用など、その構造に由来する特異性で近年注目を集めている。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンも芳香族環状化合物の範疇に属し、上記同様に注目に値する化合物であり、PEEK高機能化の手法の一つとして有望視されている。
【0009】
例えば、非特許文献1には環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの合成方法および生成物の特性が開示されており、具体的には両末端に水酸基を有する線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーと両末端にフッ素基を有する線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーを反応させる方法と、生成する環状物の融点が記載されているが、本手法により得られる環状ポリエーテルエーテルケトンを開環重合させて得られる線状ポリエーテルエーテルケトンおよびそのフィラー高充填樹脂組成物については全く記載が無く、その性質については全く不明であった。
【0010】
以上のことから、これまで市場の要求を十分に満たしうるフィラー高充填PEEK樹脂組成物はなく、従来技術とは異なる手法による、フィラー高充填化高機能性PEEK樹脂組成物の創出が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2007−506833号公報
【特許文献2】特表平11−507693号公報
【特許文献3】特開2006−291217号公報
【特許文献4】特開2008−231138号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Macromolecules、29巻、5502(1996年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、成形時の金型腐食がなく良流動で、かつ得られた成形品は高強度であり、配合フィラーの特性を高効率に発揮することを可能とした、従来にないフィラー高充填熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)(a)と(b)の合計を100容量%として、(a)98重量%硫酸中、濃度0.1g/dL、25℃の条件で測定した還元粘度が0.6〜2.5dL/gの範囲内にあるポリフェニレンエーテルエーテルケトン5〜50容量%と(b)無機フィラー95〜50容量%を配合してなるフィラー高充填樹脂組成物、
(2)前記ポリフェニレンエーテルエーテルケトンが、下記一般式(I)で表される環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを60重量%以上含有する組成物を開環重合することにより得られることを特徴とする上記(1)に記載のフィラー高充填樹脂組成物、
【0015】
【化1】

【0016】
(mは2〜40の整数であり、mが2〜40のいずれかである化合物の混合物でもよい。)
(3)(b)無機フィラーが累積粒度分布曲線より得られる累積度90%粒度(D90)と累積度10%粒度(D10)の比(D90/D10)が10以上であることを特徴とする上記(1)項または(2)のいずれかに記載のフィラー高充填樹脂組成物、
(4)さらに(c)脂肪酸金属塩、エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステルのいずれか1種以上を前記(a)および前記(b)の合計量100重量部に対して0.5〜10重量部配合してなる上記(1)〜(3)項のいずれかに記載のフィラー高充填樹脂組成物、
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフィラー高充填樹脂組成物を固相状態で圧縮成形して錠剤化することを特徴とするフィラー高充填樹脂組成物からなる錠剤の製造方法、
(6)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフィラー高充填樹脂組成物を固相状態で圧縮成形した錠剤、
(7)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフィラー高充填樹脂組成物または上記(6)に記載の錠剤を射出成形してなる成形品、
(8)(a’)と(b)の合計を100容量%として、(a’)下記一般式(I)で表される環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを60重量%以上含有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物5〜50容量%および(b)無機フィラー95〜50容量%を配合した後、触媒または開始剤の存在下で開環重合することを特徴とするフィラー高充填樹脂組成物の製造方法、
【0017】
【化2】

【0018】
(mは2〜40の整数であり、mが2〜40のいずれかである化合物の混合物でもよい。)
(9)(b)無機フィラーが累積粒度分布曲線より得られる累積度90%粒度(D90)と累積度10%粒度(D10)の比(D90/D10)が10以上であることを特徴とする上記(8)に記載のフィラー高充填樹脂組成物の製造方法、を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、成形加工時の金型腐食がなく、フィラー高充填樹脂組成物でありながら、良流動で、かつ得られた成形品は、高強度で用いるフィラーの特性を高効率に発揮することを可能とした従来得られることができなかったフィラー高充填熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
(1)環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン
本発明における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとは、パラフェニレンケトン、およびパラフェニレンエーテルを繰り返し構造単位に持つ、下記一般式(I)で表される環状化合物である。
【0022】
【化3】

【0023】
式(I)における繰り返し数mの範囲は2〜40であり、2〜20がより好ましく、2〜15がさらに好ましく、2〜10が特に好ましい範囲として例示できる。繰り返し数mが大きくなると環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの融点が高くなる傾向にあるため、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを低温で溶融解させるとの観点から、繰り返し数mを前記範囲にすることが好ましい。
【0024】
また、式(I)で表される環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは異なる繰り返し数mからなる混合物であることが好ましく、少なくとも異なる3つ以上の繰り返し数mからなる環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物であることがさらに好ましく、4つ以上の繰り返し数mからなる混合物であることがより好ましく、5つ以上の繰り返し数mからなる混合物であることが特に好ましい。さらに、これら繰り返し数mが連続するものであることが特に好ましい。単一の繰り返し数mを有する単独化合物と比較して異なる繰り返し数mからなる混合物の融点は低くなる傾向にあり、さらに2種類の異なる繰り返し数mからなる環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物と比較して、3種類以上の繰り返し数mからなる混合物の融点はさらに低くなる傾向にあり、さらに不連続の繰り返し数mからなる混合物よりも連続する繰り返し数mからなる混合物の方がさらに融点が低くなる傾向にある。なおここで、各繰り返し数mを有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは高速液体クロマトグラフィーによる成分分割により分析が可能であり、さらに環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの組成、すなわち環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンに含まれる各繰り返し数mを有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率は、高速液体クロマトグラフフィーにおける各環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンのピーク面積比率より算出することが可能である。
【0025】
さらに、本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は融点が270℃以下であることが好ましい。この場合、対応する線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと比較して大幅に融点が低いという特徴を有する。その融点としては250℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることがさらに好ましく例示できる。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点が低いほど加工温度を下げることが可能であり、さらには環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを開環重合によりポリフェニレンエーテルエーテルケトンに転化せしめる際のプロセス温度を低く設定可能となるため、加工に要するエネルギーを低減し得るとの観点で有利となる。また、プロセス温度を低く設定することにより、分解反応や架橋反応などの好ましくない副反応が抑制され、より高品質のポリフェニレンエーテルエーテルケトン樹脂を得ることが可能となる。なおここで、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点は示差走査型熱量測定装置を用いて吸熱ピーク温度を観測することにより測定することが可能である。
【0026】
また、本発明における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを60重量%以上含む環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物であり、65重量%以上含む組成物であることがより好ましく、70重量%以上含むことがさらに好ましく、75重量%以上含む組成物であることがよりいっそう好ましい。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における不純物成分、即ち環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分としては線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを主に挙げることができる。この線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは融点が高いため、線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率が高くなると環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点が高くなる傾向にある。従って、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率が上記範囲にあることで、融点の低い環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物となる傾向にあり、さらに環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物をポリフェニレンエーテルエーテルケトンプレポリマーとして用いた際に、十分に高重合度化が進行したポリフェニレンエーテルエーテルケトンが得られるという観点からも環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率が上記範囲にあることが好ましい。
【0027】
上記のような特徴を有する本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の還元粘度(η)としては、0.1dL/g以下であることが好ましく例示でき、0.09dL/g以下であることがより好ましく、0.08dL/g以下であることがさらに好ましく例示できる。なお、本発明における還元粘度とは特に断りのない限り、濃度0.1g/dL(環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物、または線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量/98重量%濃硫酸の容量)の濃硫酸溶液について、スルホン化の影響を最小にするために溶解完了直後に、25℃においてオストワルド型粘度計を用いて測定した値である。また、還元粘度の計算は下記式により行った。
η={(t/t)−1}/C
(ここでのtはサンプル溶液の通過秒数、tは溶媒(98重量%濃硫酸)の通過秒数、Cは溶液の濃度を表す。)。
【0028】
本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造方法としては、上記した特徴を有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造できれば如何なる方法でも問題ないが、好ましい方法として(a)少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、及び有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させることによる製造方法、(b)少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、ジヒドロキシ芳香族化合物、及び有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させることによる製造方法を用いることが可能である。
【0029】
ここで、ジハロゲン化芳香族ケトン化合物の具体例としては、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジブロモベンゾフェノン、4,4’−ジヨードベンゾフェノン、4−フルオロ−4’−クロロベンゾフェノン、4−フルオロ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−フルオロ−4’−ヨードベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ヨードベンゾフェノン、4−ブロモ−4’−ヨードベンゾフェノン、1,4−ビス(4−フルオロベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼンなどが挙げられ、これらの中でも4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、1,4−ビス(4−フルオロベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼンが好ましく、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノンがさらに好ましく、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンがより好ましい具体例として挙げることができる。
【0030】
塩基としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウムなどのアルカリ金属の重炭酸塩、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウムなどのアルカリ土類金属の重炭酸塩、または水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物を挙げることができ、なかでも経済性・反応性の観点から炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩、および炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの重炭酸塩が好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムがさらに好ましく用いられる。これらは単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても問題ない。また、アルカリは無水物の形で用いることが好ましいが、水和物または水性混合物として用いることも可能である。なお、ここでの水性混合物とは水溶液、もしくは水溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固体成分の混合物のことを指す。
【0031】
また、本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造において用いられる有機極性溶媒としては、反応の阻害や生成した環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの分解などの好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はない。このような有機極性溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、ジフェニルエーテルなどのジアリールエーテル類、ベンゾフェノン、アセトフェノンなどのケトン類、およびこれらの混合物などが挙げられる。これらはいずれも反応の安定性が高いため好ましく使用されるが、なかでもN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドが好ましく、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましく用いられる。これら有機極性溶媒は高温領域での安定性に優れ、さらに入手性の観点からも好ましい有機極性溶媒であると言える。
【0032】
本発明で用いられるジヒドロキシ芳香族化合物としては、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,4−ビス(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンを好ましい具体例として挙げることができ、ヒドロキノンまたは4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンであることがさらに好ましく、特にヒドロキノンが好ましい。これらジヒドロキシ芳香族化合物は単独で用いても良いし、2種類以上の混合物として用いても良い。
【0033】
上記製造方法(a)もしくは(b)による方法により環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する際の混合物中の有機極性溶媒の量は、好ましくは混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対して1.15リットル以上、より好ましくは1.30リットル以上、さらに好ましくは1.50リットル以上、特に好ましくは2.0リットル以上である。また、混合物中の有機極性溶媒量の上限に特に制限はないが、混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対して100リットル以下であることが好ましく、50リットル以下がより好ましく、20リットル以下がさらに好ましく、10リットル以下が特に好ましい。有機極性溶媒の使用量を多くすると、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン生成の選択率が向上する傾向となるが、多すぎる場合、反応容器の単位体積当たりの環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成量が低下する傾向にあり、さらに反応に要する時間が長時間化する傾向にある。従って、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成選択率と生産性を両立するとの観点から、前記した有機極性溶媒の使用範囲とすることが好ましい。なお、ここでの有機極性溶媒の量は、常温常圧下での溶媒の体積を基準とし、反応混合物における有機極性溶媒の使用量とは、反応系内に導入した有機極性溶媒量から脱水操作中などに反応系外に除外された有機極性溶媒量を差し引いた量である。また、ここでの混合物中のベンゼン環成分とは、反応により環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン構成成分となり得る原料に含まれるベンゼン環成分であり、これら原料におけるベンゼン環成分の「モル数」とは「化合物を構成するベンゼン環の数」を表す。例えば、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンはベンゼン環成分2モル、ヒドロキノン1モルはベンゼン環成分1モル、さらに4,4’−ジフルオロベンゾフェノン1モルとヒドロキノン1モルを含む混合物はベンゼン環成分3モルを含む混合物と計算する。なお、トルエンなど反応により環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン構成成分と成り得ない成分はベンゼン環成分0モルとみなす。
【0034】
少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、及び有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させることによる環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造方法(a)における塩基の使用量は、ジハロゲン化芳香族ケトン化合物に対して化学量論的比率より大きい比率であればよく、塩基の具体的な使用量は、例えば炭酸ナトリウムや炭酸カリウムのような2価の塩基の使用量をAモル、炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムのような1価の塩基の使用量をBモルとした場合、製造方法(a)により環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する際に用いたジハロゲン化芳香族ケトン化合物1.0モルに対して(A+2B)が1.00モルから1.25モルの範囲にあることが好ましく、1.00モルから1.15モルの範囲にあることがより好ましく、1.00モルから1.10モルの範囲にあることがさらに好ましく例示できる。
【0035】
一方で、少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、ジヒドロキシ芳香族化合物、及び有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させることによる環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造方法(b)における塩基の使用量は、ジヒドロキシ芳香族化合物に対して化学量論的比率より大きい比率であればよく、塩基の具体的な使用量はジヒドロキシ芳香族化合物に対して(A+2B)が1.00から1.10モルの範囲にあることが好ましく、1.00モルから1.05モルの範囲にあることがより好ましく、1.00から1.03モルの範囲にあることがさらに好ましく例示できる。また、製造方法(b)による方法で、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する際に、別途調製したジヒドロキシ芳香族化合物の金属塩を用いる場合には、塩基を追加して、過剰量の塩基を供給することができる。この供給する塩基の過剰量は、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造するために用いたジヒドロキシ芳香族化合物1.0モルに対して(A+2B)が0〜0.10モルの範囲にあることが好ましく、0〜0.05モルの範囲にあることが好ましく、0〜0.03モルの範囲にあることがさらに好ましく例示できる。製造方法(b)において環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する際の塩基の使用量がこれら好適な範囲にあることにより、ジヒドロキシ芳香族化合物の金属塩を十分に生成させることが可能であり、さらに大過剰の塩基による生成した環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの分解反応といった好ましくない反応の進行を抑制することもできるため好ましい。
【0036】
少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、および有機極性溶媒を含む混合物、もしくは少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、ジヒドロキシ芳香族化合物、および有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させる反応温度は、反応に用いるジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、及び有機極性溶媒さらにはジヒドロキシ芳香族化合物の種類、量によって多様化するため一意的に決めることはできないが、通常120〜350℃、好ましくは130〜320℃、より好ましくは140〜300℃の範囲が例示できる。この好ましい温度範囲ではより高い反応速度が得られる傾向にある。また、反応は一定の温度で行う1段階反応、段階的に温度を上げていく多段反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでも構わない。
【0037】
反応時間は、使用した原料の種類や量あるいは反応温度に依存するので一概に規定することはできないが、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましい。この好ましい時間以上とすることで、未反応の原料成分を十分に減少できる傾向にある。一方、反応時間に特に上限はないが、40時間以内でも十分に反応が進行し、好ましくは10時間以内、より好ましくは6時間以内も採用できる。
【0038】
少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、及び有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させる際、もしくは少なくともジハロゲン化芳香族ケトン化合物、塩基、ジヒドロキシ芳香族化合物、及び有機極性溶媒を含む混合物を加熱して反応させる際、混合物には前記必須成分以外に反応を著しく阻害しない成分や、反応を加速する効果を有する成分を加えることも可能である。また、反応を行う方法に特に制限はないが、撹拌条件下に行うことが好ましい。さらに、本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する方法においては、バッチ式および連続式などの公知の各種重合方式、反応方式を採用することができる。また、製造における雰囲気は非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素、ヘリウム、およびアルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことが好ましく、経済性および取り扱いの容易さから窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0039】
また、上記反応は反応系内に水が多量に存在すると、反応速度の低下や環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの分離が困難な副反応生成物が生成するといった悪影響が顕在化する傾向にある。従って、塩基として水和物や水性混合物を用いた場合の水や、反応により副生する水を反応系外に除外することが重要である。反応中に系内に存在する水分量としては2.0重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以下であることがさらに好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることが特に好ましく、この好ましい範囲以下となるように必要に応じて脱水操作を行うことが重要となる。なお、ここでの系内に存在する水分量は反応混合物総重量に対する重量分率であり、水分量はカールフィッシャー法により測定することができる。脱水操作を行う時期に特に制限はないが、(ア)製造方法(a)もしくは(b)における必須成分を混合した後、または(イ)ジハロゲン化芳香族ケトン化合物以外の必須成分を混合した後であることが好ましい。ここで、(イ)による方法で脱水操作を行った場合、脱水操作後にジハロゲン化芳香族ケトン化合物、もしくはジハロゲン化芳香族ケトン化合物および有機極性溶媒を加えることにより環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造を行う。水の除去方法としては、反応系外に水を取り除くことができれば如何なる方法でも良く、例えば高温加熱による脱水や共沸溶媒を用いた共沸蒸留による方法が挙げられ、なかでも脱水効率の観点から共沸蒸留による方法が好ましい方法として挙げられる。ここで、共沸蒸留に用いられる共沸溶媒としては、水との共沸混合物を形成し得る有機化合物であり、且つ共沸混合物の沸点が反応に用いる有機極性溶媒の沸点よりも低いものであれば問題なく、具体的にはヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの不活性塩素化芳香族化合物などが挙げられ、なかでもトルエン、キシレンを好ましい共沸溶媒として挙げることができる。また、共沸溶媒の量は系内に存在する水の量や溶媒の種類により水との共沸混合物を形成するための必要量が異なるため一概に規定することはできないが、反応系内の水を共沸混合物として除去するのに必要な量よりも過剰量の溶媒を用いるのが好ましく、具体的には混合物中のジハロゲン化芳香族ケトン化合物1.0モルに対して0.2リットル以上が好ましく、0.5リットル以上がより好ましく、1.0リットル以上がさらに好ましい。さらに共沸溶媒量の上限に特に制限はないが、混合物中のジハロゲン化芳香族ケトン化合物1.0モルに対して20.0リットル以下であることが好ましく、10.0リットル以下であることがさらに好ましく、5.0リットル以下であることがより好ましい。共沸溶媒の使用量が多すぎる場合、混合物の極性が低下するため、塩基とジハロゲン化芳香族ケトン化合物の反応、もしくは塩基とジヒドロキシ芳香族化合物の反応の効率が低下する傾向にある。なお、ここでの共沸溶媒の量は、常温常圧下での溶媒の体積を基準とする。また、ディーン・スターク装置の原理を用いて水の共沸蒸留を行う場合、反応系内の共沸溶媒量を常に一定に保つことができるため、用いる共沸溶媒量をさらに少なくすることも可能である。反応系外に水を取り除く際の温度は、共沸溶媒の種類により水との共沸混合物の沸点が異なるため一意的に決めることはできないが、水との共沸混合物の沸点以上であり反応に用いる有機極性溶媒の沸点以下であることが好ましく、具体的には60〜170℃の範囲が例示でき、好ましくは80〜170℃、より好ましくは100〜170℃、さらに好ましくは120〜170℃の範囲が例示できる。なお、水の除去は好ましい温度範囲内における一定温度で行う方法、段階的に温度を上げていく方法、もしくは連続的に温度を変化させていく形式の方法のいずれでも構わない。さらに、上記共沸蒸留を減圧下で行うことも好ましい方法であり、減圧下で行うことにより、より効率よく水の除去を行える傾向にある。
【0040】
上記の共沸溶媒は、共沸蒸留後に系内から除外することが好ましい。共沸溶媒を系内から除外する時期は水の共沸蒸留の終了後であることが好ましく、さらに上記(イ)による方法で脱水操作を行った場合、共沸溶媒の除去はジハロゲン化芳香族ケトン化合物、もしくはジハロゲン化芳香族ケトン化合物および有機極性溶媒を加える前の段階で行うことが好ましい。共沸溶媒が系内に多量に残存すると、反応系の極性が下がり、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン生成反応速度が低下する傾向にあるため、共沸溶媒の除去操作は必要となる。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン生成反応中に系内に存在する共沸溶媒量としては、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン生成反応に用いている有機極性溶媒に対して20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、8%以下であることがさらに好ましく、6%以下であることが特に好ましい。この好ましい範囲以下となるように共沸溶媒の除去を行うことが重要である。共沸溶媒の除去方法としては蒸留による方法が好ましく、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスをキャリアーガスとして用いても良い。また、減圧下で蒸留を行うことも好ましい方法であり、より効率よく共沸溶媒の除去が可能となる傾向にある。また、共沸溶媒の除去を行う温度は、共沸溶媒を反応系から除外できれば如何なる温度でも良いが、具体的には60〜170℃の範囲が例示でき、好ましくは100〜170℃、より好ましくは120〜170℃、さらに好ましくは140〜170℃の範囲が例示できる。なお、共沸溶媒の除去は好ましい温度範囲における一定温度で行う方法、段階的に温度を上げていく方法、あるいは連続的に温度を変化させていく形式のいずれでも構わない。
【0041】
本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は、前述した製造方法により得られた反応混合物から分離回収することにより得ることが可能である。上記製造方法により得られた反応混合物には少なくとも環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン、線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び有機極性溶媒が含まれ、その他成分として未反応原料や副生塩、水、共沸溶媒などが含まれる場合もある。この様な反応混合物から環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを回収する方法に特に制限はなく、例えば必要に応じて有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留などの操作により除去した後に、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和し、副生塩に対して溶解性を有する溶剤と必要に応じて加熱下で接触させて、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合固体として回収する方法が例示できる。このような特性を有する溶剤は一般に比較的極性の高い溶剤であり、用いた有機極性溶媒や副生塩の種類により好ましい溶剤は異なるので限定はできないが、例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノールに代表されるアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンに代表されるケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどに代表される酢酸エステル類が例示でき、入手性、経済性の観点から水、メタノール及びアセトンが好ましく、水が特に好ましい。
【0042】
このような溶剤による処理を行うことにより、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合固体に含有される有機極性溶媒や副生塩の量を低減することが可能である。この処理により環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは共に固体成分として析出するので、公知の固液分離法により環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの混合物を回収することが可能である。固液分離方法としては、例えば濾過による分離、遠心分離、デカンテーションなどを例示できる。なお、これら一連の処理は必要に応じて数回繰り返すことも可能であり、これにより環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合固体に含有される有機極性溶媒や副生塩の量がさらに低減される傾向にある。
【0043】
また、上記の溶剤による処理方法としては、溶剤と反応混合物を混合する方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。溶剤による処理を行う際の温度に特に制限はないが、20〜220℃の範囲が好ましく、50〜200℃の範囲がさらに好ましい。このような範囲では例えば副生塩の除去が容易となり、また比較的低圧の状態で処理を行うことが可能であるため好ましい。ここで、溶剤として水を用いる場合、水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましいが、必要に応じてギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、アクリル酸、クロトン酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などの有機酸性化合物及びそのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、また、硫酸やリン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物およびアンモニウムイオンなどを含む水溶液を用いることも可能である。この処理後に得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合固体が、処理に用いた溶剤を含有する場合には必要に応じて乾燥などを行い、溶剤を除去することも可能である。
【0044】
上記した回収方法では、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合物として回収され、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が得られる。この組成物の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの含有量をさらに上げるために、この混合物から環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを分離回収する方法としては、例えば環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶解性の差を利用した分離方法、より具体的には、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンに対する溶解性が高く、且つ線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンに対する溶解性に乏しい溶剤を、必要に応じて加熱下で上記環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合物と接触させて、溶剤可溶成分として環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得る方法が例示できる。一般に線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは結晶性が高く、溶剤への溶解性が非常に低いという特徴を有することが知られており、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶剤への溶解性の違いが大きいため、上記の溶解性の差を利用した分離方法により効率よく環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得ることが可能である。
【0045】
ここで用いる溶剤としては環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを溶解可能な溶剤であれば特に制限はないが、溶解を行う環境において環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは溶解するが、線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは溶解しにくい溶剤が好ましく、線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは溶解しない溶剤がより好ましい。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合物を前記溶剤と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する反応器の部材が安価であるという利点がある。このような観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。用いる溶剤としてはポリフェニレンエーテルエーテルケトン成分の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、上記混合物を溶剤と接触させる操作を、例えば常圧還流条件下で行う場合に好ましい溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの極性溶媒を例示できるが、なかでもベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンが好ましく、トルエン、キシレン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフランがより好ましく例示できる。
【0046】
環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物を溶剤と接触させる際の雰囲気に特に制限はないが、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましく、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、この中でも特に経済性および取り扱いの容易さの観点から窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0047】
上記、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物を溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、一般に温度が高いほど環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶剤への溶解は促進される傾向にある。前記した通り、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物の溶剤との接触は常圧下で行うことが好適であるため、上限温度は使用する溶剤の大気圧下での還流温度にすることが好ましく、前記した好ましい溶剤を用いる場合には例えば20〜150℃を具体的な温度範囲として例示できる。
【0048】
環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物を溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤の種類や温度などによって異なるため一意的には限定できないが、例えば1分〜50時間が例示でき、このような範囲では環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶剤への溶解が十分になる傾向にある。
【0049】
上記混合物を溶剤と接触させる方法は、公知の一般的な手法を用いれば良く、特に限定はないが、例えば環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物と溶剤を混合し、必要に応じて撹拌した後に溶液部分を回収する方法、各種フィルター上の上記混合物に溶剤をシャワーすると同時に環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを溶剤に溶解させる方法、ソックスレー抽出法原理による方法などいかなる方法も用いることができる。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物と溶剤を接触させる際の溶剤の使用量に特に制限はないが、例えば混合物重量に対する浴比で0.5〜100の範囲が例示できる。浴比がこの様な範囲の場合、上記混合物と溶剤を均一に混合し易く、また環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンが溶剤に十分に溶解し易くなる傾向にある。一般に浴比が大きい方が環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶剤への溶解には有利であるが、大きすぎてもそれ以上の効果は望めず、逆に溶剤使用量増大による経済的不益が生じることがある。なお、混合物と溶剤の接触を繰り返し行う場合は、小さい浴比でも十分な効果が得られる場合が多く、ソックスレー抽出法は、その原理上、類似の効果が得られるのでこの場合も小さい浴比で十分な効果が得られる場合が多い。
【0050】
環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの混合物を溶剤と接触させた後に、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを溶解した溶液が固形状の線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含む固液スラリー状で得られた場合、公知の固液分離法を用いて溶液部を回収することが好ましい。固液分離方法としては、例えば濾過による分離、遠心分離、デカンテーションなどを例示できる。このようにして分離した溶液から溶剤の除去を行うことにより環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの回収が可能となる。一方、固体成分については環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンがまだ残存している場合、再度溶剤との接触及び溶液の回収を繰り返し行うことでより収率よく環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得ることも可能である。
【0051】
前述のようにして得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含む溶液から溶剤の除去を行い、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを固形成分として得ることが可能である。ここで溶剤の除去は、例えば加熱し、常圧下で処理する方法や、膜を利用した溶剤除去を例示できるが、より収率良く、また効率よく環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得るとの観点では常圧以下で加熱して溶剤を除去する方法が好ましい。なお、前述のようにして得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含む溶液は温度によっては固形物を含む場合もあるが、この場合の固形物も環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンに属する物であるので、溶剤の除去時に溶剤に可溶の成分とともに回収することが好ましく、これにより収率よく環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得られるようになる。ここで溶剤の除去は、少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、よりいっそう好ましくは95重量%以上の溶剤を除去することが好ましい。加熱による溶剤の除去を行う際の温度は用いる溶剤の種類に依存するため一意的には限定できないが、通常、20〜150℃、好ましくは40〜120℃の範囲が選択できる。また、溶剤の除去を行う圧力は常圧以下が好ましく、これにより溶剤の除去をより低温でおこなうことが可能となる。
【0052】
(2)ポリフェニレンエーテルエーテルケトン
本発明のポリフェニレンエーテルエーテルケトンとは、パラフェニレンケトン、およびパラフェニレンエーテルを繰り返し構造単位に持つ、下記一般式(II)で表される線状化合物である。
【0053】
【化4】

【0054】
本発明のポリフェニレンエーテルエーテルケトンは、還元粘度(η)が0.6〜2.5dL/gであることを特徴とする。好ましくは0.6〜2.0dL/g、さらに好ましくは0.6〜1.8dL/gを例示できる。0.6より小さい場合は成形加工時のガスが多く金型腐食を引き起こしたり、得られる成形品の物性が低下する傾向にあるため好ましくない。また、2.5dL/gより大きいと、射出成形などの成形加工が困難となるため好ましくない。ここで、還元粘度は環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの項で述べた測定方法で測定した値である。
【0055】
本発明におけるポリフェニレンエーテルエーテルケトンは、前記環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を加熱開環重合することにより製造することができる。
【0056】
環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を加熱開環重合することによりポリフェニレンエーテルエーテルケトンへと転化する際の加熱温度は、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が溶融解する温度以上であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限はない。加熱温度が環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶融解温度未満では加熱開環重合によりポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得るのに長時間が必要になる、もしくは加熱開環重合が進行せずにポリフェニレンエーテルエーテルケトンが得られなくなる傾向にある。なお、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が溶融解する温度は、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの組成や分子量、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物に含まれる環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率、さらには加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えば環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を示差走査型熱量計で分析することにより溶融解温度を把握することが可能である。加熱温度の下限としては、150℃以上が例示でき、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは220℃以上である。この温度範囲では、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が溶融解し、短時間でポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得ることができる傾向にある。一方、加熱開環重合の温度が高すぎると環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン間、加熱により生成したポリフェニレンエーテルエーテルケトン間、およびポリフェニレンエーテルエーテルケトンと環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるポリフェニレンエーテルエーテルケトンの特性が低下する場合があるため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。加熱温度の上限としては、500℃以下が例示でき、好ましくは400℃以下、より好ましくは360℃以下、さらに好ましくは335℃以下、よりいっそう好ましくは300℃以下である。この温度範囲以下では、好ましくない副反応による得られるポリフェニレンエーテルエーテルケトンの特性への悪影響を抑制できる傾向にある。公知の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを用いた場合、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの融点が高いため、上記の好適な温度範囲では加熱開環重合に長時間を要する、もしくは加熱開環重合が進行せずポリフェニレンエーテルエーテルケトンが得られない傾向になるのに対し、本発明の融点が270℃以下という特徴を有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は上記好適な温度範囲において、効率よく加熱開環重合が進行し、ポリフェニレンエーテルエーテルケトンが得られる。本発明のポリフェニレンエーテルエーテルケトンの製造方法では、得られるポリフェニレンエーテルエーテルケトンの融点以下の温度で、加熱開環重合をすることも可能である。
【0057】
反応時間は、使用する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率や組成比、加熱温度や加熱開環重合方法などの条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した架橋反応などの好ましくない副反応が起こらないように設定することが好ましく、0.01〜100時間の範囲が例示でき、0.05〜20時間が好ましく、0.05〜10時間がより好ましい。これら好ましい反応時間とすることにより、架橋反応などの好ましくない副反応の進行による得られるポリフェニレンエーテルエーテルケトンの特性への悪影響を抑制できる傾向にある。
【0058】
本発明の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の加熱開環重合によるポリフェニレンエーテルエーテルケトンの製造方法においては、触媒の非存在化または触媒の存在下に行うことができる。ここでの触媒とは、本発明における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の加熱開環重合反応を加速させる効果のある化合物であれば特に制限はなく、光重合開始剤、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤、遷移金属触媒など公知の触媒を用いることができるが、なかでもアニオン重合開始剤が好ましい。アニオン重合開始剤としては、無機アルカリ金属塩または有機アルカリ金属塩を例示することができ、無機アルカリ金属塩としてはフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、塩化リチウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物を例示でき、また有機アルカリ金属塩としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドまたは、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド、ナトリウム4−フェノキシフェノキシド、カリウム4−フェノキシフェノキシド、ナトリウム4−フェニルフェノキシド、カリウム4−フェニルフェノキシド、ナトリウム4−ベンゾイルフェノキシド、カリウム4−ベンゾイルフェノキシドなどのアルカリ金属フェノキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム酢酸カリウムなどのアルカリ金属酢酸塩を例示することができる。また、これらアニオン重合開始剤は、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を求核攻撃することにより触媒作用を発現していると推測している。従って、これらアニオン重合開始剤と同等の求核攻撃能を有する化合物を触媒として用いることも可能であり、このような求核攻撃能を有する化合物としては、アニオン重合性末端を有するポリマーを挙げることができる。これらアニオン重合開始剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の加熱開環重合をこれら好ましい触媒の存在下に行うことにより、ポリフェニレンエーテルエーテルケトンが短時間で得られる傾向にあり、具体的には加熱開環重合の加熱時間として、2時間以下、さらには1時間以下、0.5時間以下が例示できる。
【0059】
使用する触媒の量は、目的とするポリフェニレンエーテルエーテルケトンの分子量ならびに触媒の種類により異なるが、通常、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの主要構成単位である、−O−Ph−O−Ph−CO−Ph−(ここで、Phはパラフェニレン単位を、Oは酸素原子を、COはカルボニル単位を表す)で表される繰り返し単位1モルに対して、0.001〜20モル%、好ましくは0.005〜15モル%、さらに好ましくは0.01〜10モル%である。この好ましい範囲の触媒量を添加することにより環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の加熱開環重合が短時間で進行する傾向にある。
【0060】
これら触媒の添加に関しては、そのまま添加しても構わないが、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物に触媒を添加した後、均一に分散させることが好ましい。均一に分散させる方法として、例えば機械的に分散させる方法、溶媒を用いて分散させる方法などが挙げられる。機械的に分散させる方法として、具体的には粉砕機、撹拌機、混合機、振とう機、乳鉢を用いる方法などが例示できる。溶媒を用いて分散させる方法として、具体的には環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を適当な溶媒に溶解または分散し、これに触媒を加えた後、溶媒を除去する方法などが例示できる。また、触媒の分散に際して、触媒が固体である場合、より均一な分散が可能となるため重合触媒の平均粒径は1mm以下であることが好ましい。
【0061】
環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の加熱開環重合は、溶媒中または実質的に溶媒を含まない条件下のいずれでも行うことが可能であるが、短時間での昇温が可能であり、反応速度が速く、短時間でポリフェニレンエーテルエーテルケトンが得やすい傾向にあるため、実質的に溶媒を含まない条件下で行うことが好ましい。ここでの実質的に溶媒を含まない条件とは、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中の溶媒が20重量%以下であることを指し、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0062】
また、加熱方法としては、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行っても良いし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限なく行うことが可能であり、バッチ式、連続式など公知の方法が採用できる。
【0063】
環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の加熱開環重合の際の雰囲気は、特に制限はないが、非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これにより環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン間、加熱開環重合により生成したポリフェニレンエーテルエーテルケトン間、およびポリフェニレンエーテルエーテルケトンと環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン間などでの架橋反応や分解反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、すなわち窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性および取り扱いの容易さの観点からは窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下がさらに好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。減圧条件が好ましい下限以上では、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物に含まれる分子量の低い環状化合物が揮散しにくく、一方好ましい上限以下では、架橋反応など好ましくない副反応が起こりにくい傾向にある。
【0064】
(3)無機フィラー
本発明で用いる(b)無機フィラーとしては、繊維状もしくは、非繊維状(板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など)のフィラーが挙げられ、具体的には例えば、繊維状フィラーとしてガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、チタン酸バリウムストロンチウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー等が挙げられ、ガラス繊維あるいは炭素繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記フィラーはエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、シラン化合物、チタネート系化合物、アルミ系化合物で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0065】
非繊維状フィラーとして酸化亜鉛ウィスカー、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物(アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン等)、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、ナノカーボンチューブなどが挙げられる。また、金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。
【0066】
非繊維状フィラーについても可能なものは、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、シラン化合物、チタネート系化合物、アルミ系化合物などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
【0067】
また、例えば、高い放熱性が必要な用途には、高熱伝導性フィラーが好ましく用いられ、具体的には、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維、金属酸化物(アルミナ、酸化亜鉛等)、カーボン粉末、黒鉛、PAN系あるいはピッチ系炭素繊維、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、カーボンナノチューブ、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化珪素、炭化珪素などが挙げられる。
【0068】
ここで、上記金属粉、金属フレークおよび金属リボンの金属種の具体例としては、銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロムおよび錫などを例示することができる。
【0069】
上記金属酸化物の具体例としては、SnO(アンチモンドープ)、In(アンチモンドープ)およびZnO(アルミニウムドープ)などを例示することができ、これらはチタネート系、アルミ系およびシラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
【0070】
上記カーボン粉末は、その原料および製造法から、アセチレンブラック、ガスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラックおよびディスクブラックなどに分類される。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、その原料および製造法については特に限定されないが、なかでもアセチレンブラックおよびファーネスブラックが特に好適に用いられる。また、カーボン粉末としては、その粒子径、表面積、DBP(ジブチルフタレート)吸油量および灰分などの特性の異なる種々のカーボン粉末が製造され、市販されている。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、これら特性については特に制限はないが、強度および電気伝導度のバランスの点から、一次粒径の平均粒径が500nm以下、特に5〜100nm、さらには10〜70nmの範囲にあることが好ましい。また、表面積(BET法)が10m/g以上、さらには30m/g以上の範囲にあることが好ましい。さらに、DBP給油量が50mL/100g以上、特に100mL/100g以上の範囲にあることが好ましい。さらにまた、灰分が0.5%以下、特に0.3%以下の範囲にあることが好ましい。
【0071】
かかるカーボン粉末は、チタネート系、アルミ系およびシラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。また、樹脂との溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
【0072】
本発明においては強度と流動性の高位でのバランスのため、繊維状と非繊維状を2種以上併用することが好ましい。具体的には、(イ)黒鉛と炭素繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーおよび酸化亜鉛ウィスカーから選択される一種以上の組み合わせ、あるいは(ロ)アルミナと炭素繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカーおよび窒化ケイ素ウィスカーから選択される一種以上の組み合わせ、あるいは(ハ)黒鉛と炭素繊維と、酸化亜鉛ウィスカーおよび/または非繊維状フィラーから選択される一種以上の組み合わせが挙げられる。
【0073】
本発明において(a)ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと(b)フィラーとの比率は、用いるフィラーの特性を発揮し、かつ溶融加工性とのバランスの点から、配合される(a)ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと(b)無機フィラーの合計量100容量%に対して(a)ポリフェニレンエーテルエーテルケトン5〜50容量%、(b)無機フィラー95〜50容量%であり、好ましくは(a)ポリフェニレンエーテルエーテルケトン8〜45容量%、(b)無機フィラー92〜55容量%、より好ましくは、(a)ポリフェニレンエーテルエーテルケトン10〜40容量%、(b)無機フィラー90〜60容量が好ましい。
【0074】
また、繊維状フィラーと非繊維状フィラーを併用する場合は、成形流動性、機械強度のバランスの点から、繊維状フィラーに対して非繊維状フィラーの方が多いことが好ましく、具体的には、2重量%以上多いことが好ましく、5重量%以上多いことがより好ましい。
【0075】
本発明の特徴として用いる(b)無機フィラーにおいてフィラー間の空隙率を低下させ、より密に充填することで流動性と機械強度を向上させるために、粒径が広い範囲に亘って分布していることが好ましく、レーザー光回折法によって測定された累積粒度分布曲線より得られる累積度90%粒度(D90)と累積度10%粒度(D10)の比(D90/D10)が10以上であることが好ましく、より好ましくは11以上、さらに好ましくは13以上である。上限としては特に限定しないが、生産性等を考慮すると1000以下である。
【0076】
また、さらに個々のフィラー特性を最大限に発揮させるため、レーザー光回折法によって得られた(b)無機フィラーの平均粒子径(D50)が1〜100μmであることが好ましく、3〜80μmがより好ましく、4〜50μmがさらに好ましい。
【0077】
なお、レーザー光回折法による測定は、水または溶剤等の分散可能な液体を分散媒として濃度100ppmでレーザ回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所社製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3100)を用いて測定する。
【0078】
また、本発明は、フィラー高充填であるため、無機フィラー間の潤滑性が重要であり、そのための粒度分布としては、広い粒径範囲で均一な分布、いわゆる台形型の分布を有することが理想的であるが、二つの山型分布を有する2峰性、3峰性などの多峰性の粒度分布を持たせたものであっても好ましい。さらには、強度向上の点から、多峰性の場合、粗粒子側の峰の方が高い方が好ましい。
【0079】
本発明で用いるフィラーを上記のような粒度分布にするには、例えば平均粒径や粒径分布の異なるフィラーを2種以上併用したり、篩い分け等により粒度毎に分画したものを、所望の粒度分布になるよう混合する方法、粒径分布の異なるフィラーを2種以上併用する方法などが採用できる。
【0080】
なお、上記粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定される各粒子径区間における粒子量(%)をプロットした曲線により示されるものであり、累積粒度分布曲線は、その粒子径以下の粒子量(%)を累積した曲線であり、特定の粒子径以下の粒子量が全体の何%であるかを表わすものである。
【0081】
また、本発明には、フィラー界面の接合性および加工時の流動改良性付与の観点から、以下の(c)脂肪酸金属塩、エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、およびリン酸エステルから選ばれる少なくとも1種を添加することが好ましい。このような添加剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸バリウム、モンタン酸アルミニウムなどの脂肪酸金属塩、およびその誘導体、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ステアレートなどの、ステアリン酸エステル、ミリスチン酸ミリスチルなどのミリスチン酸エステル、モンタン酸エステル、メタクリル酸ベヘニルなどのメタクリル酸エステル、ペンタエリスリトールモノステアレート、2−エチルヘキサン酸セチル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソトリデシル、カプリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、オレイン酸メチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸オレイル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチドデシル、オレイン酸イソブチルなどの脂肪酸の一価アルコールエステルおよびその誘導体、フタル酸ジステアリル、トリメリット酸ジステアリル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジオレイル、アジピン酸エステル、フタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルグリコール、フタル酸2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリイソデシルなどの多塩基酸の脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド、パルミチン酸・ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノ・ジグリセライド、ステアリン酸・オレイン酸・モノ・ジグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライドなどのグリセリンの脂肪酸エステルおよびそれらの誘導体、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリプロピレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセキスオレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノパルミネート、ポリオキシメチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシメチレンソルビタンテトラオレート、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAラウリン酸エステル、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸エステル、およびそれらの誘導体、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、ステアリルエルカミドなどのアミド基含有化合物、ノボラックフェニール型、ビスフェノール型単官能および多官能エポキシ系化合物、トリフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステルなどのリン酸エステルが挙げられる。
【0082】
特にリン酸エステルについては、リン酸のモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルから選ばれ、好ましくは、下記式(III)で表されるものが挙げられる。
【0083】
【化5】

【0084】
まず前記式(III)で表されるリン酸エステルの構造について説明する。前記式(III)の式中nは0以上の整数であり、好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である。上限は分散性の点から40以下が好ましい。
【0085】
またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0086】
また前記式(III)の式中、R〜R10は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
【0087】
またAr、Ar、Ar、Arは同一または相異なる芳香族基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換された芳香族基を表す。かかる芳香族基としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、インデン骨格、アントラセン骨格を有する芳香族基が挙げられ、なかでもベンゼン骨格、あるいはナフタレン骨格を有するものが好ましい。これらはハロゲンを含有しない有機残基(好ましくは炭素数1〜8の有機残基)で置換されていてもよく、置換基の数にも特に制限はないが、1〜3個であることが好ましい。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などの芳香族基が挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
【0088】
またYは直接結合、O、S、SO、C(CH、CH、CH(Ph)を表し、Phはフェニル基を表す。
【0089】
このようなリン酸エステルの具体例としては、大八化学社製PX−200、PX−201、PX−130、CR−733S、TPP、CR−741、CR−747、TCP、TXP、CDPから選ばれる1種または2種以上が使用することができ、中でも好ましくはPX−200、TPP、CR−733S、CR−741、CR−747から選ばれる1種または2種以上、特に好ましくはPX−200、CR−733S、CR−741を使用することができるが、最も好ましくはPX−200である。
【0090】
本発明においてリン酸エステルのいずれか1種、または2種以上の混合物であってもよい。このような添加剤の添加量は、(a)熱可塑性樹脂と(b)無機フィラーの合計量100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜8重量部、より好ましくは0.3〜6重量部の範囲が選択される。
【0091】
(c)脂肪酸金属塩、エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステルの添加量を上記範囲とすることで、が本発明の範囲より多すぎる場合、得られた成形品表面にブリードアウトすることもなく、(a)ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと(b)フィラー界面の剥離による機械物性の低下が起きることがないので好ましい。
【0092】
本発明におけるフィラー高充填樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
【0093】
(4)フィラー高充填樹脂組成物の製造方法
本発明のフィラー高充填樹脂組成物は、フィラーを多量に配合する(添加量が(a)ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと(b)無機フィラーの合計量100容量%に対して、(b)無機フィラーが95〜50容量%)ため、通常の溶融混練による方法で製造することは困難である。50容量%を越える無機フィラーを添加するフィラー高充填樹脂組成物を得る方法として、例えば、特開平8−1663号公報の如く、押出機のヘッド部分をはずして押し出し、粗粉砕、均一ブレンド化する方法、あるいは、原料を圧縮成形して錠剤化する方法が挙げられる。特に原料を圧縮成形して錠剤化する方法が、得られた組成物の品質安定性の点から好ましい。
【0094】
本発明において錠剤は、粉末状の原料を含む原料を固相状態で押し固めた粒状物をいうが、かかる錠剤は、粉末状の原料を含む原料を固相状態で圧縮成形することにより得ることができる。なお、上記において固相状態とは、原料に含まれるポリフェニレンエーテルエーテルケトン成分が溶融していない状態であることを意味する。圧縮成形には、打錠機(ロータリー、単発式、2連式、3連式)あるいはブリケットマシンなどの圧縮ロールを有する成形機を用いることが好ましい。
【0095】
錠剤化の具体的な手法としては、たとえば熱可塑性の樹脂粉末および無機フィラーをバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸もしくは二軸の押出機などを用い、固相状態で均一ブレンドし、打錠機あるいは圧縮ロールを有する成形機により錠剤(タブレット)化することにより得ることができる。また、ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと無機フィラーとをバンバリーミキサー、ニーダー、ロールを用いて予めドライブレンドし、もしくはドライブレンドしないで、単軸もしくは二軸の押出機などを用い、一度溶融混練し、冷却粉砕して粉末状としたのち、打錠機あるいは圧縮ロールを有する成形機により錠剤(タブレット)化することも可能である。この場合、溶融混練に供する熱可塑性の樹脂成分としては、溶融混練が可能であれば、粉末状でもペレット状でも特に制限はないが、無機フィラーの分散不良による特性のバラツキを低減する点から粉末状あるいは粉砕品であることが好ましい。また、単軸もしくは2軸押出機を用いて、予め溶融混練した組成物を粉末状とする場合、無機フィラーの使用量が多いと、流動性が悪化するため、ダイからの押出ができずペレット化が困難になる場合があるが、その場合には、特開平8−1663号公報に記載の如く、押出機のヘッド部を開放した状態で混練・押出すことも可能である。無機フィラーが多量である場合、フレーク状の組成物が得られることもある。本発明においてはこれらの方法で予め溶融混練して得られたペレットもしくはフレーク状の組成物を必要により、冷却粉砕して粉末状とした後、錠剤化する。また、これらの方法を組み合わせて錠剤化することも可能である。すなわち、下記(イ)〜(ニ)から選択される原料を所望の含有量となるよう調整し、錠剤化することも可能である。
(イ)ポリフェニレンエーテルエーテルケトン
(ロ)無機フィラー
(ハ)(c)脂肪酸金属塩、エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステルのいずれか1種以上
(ニ)(a)〜(c)成分から選択される2種以上であって、(a)または(b)成分を必須とする成分を溶融混練してなる組成物、好ましくはその塊状物および粉体
上記方法のうち、工程が簡素である点で、上記(イ)、(ロ)の原料および必要に応じて(ハ)の原料を固相状態で均一ブレンドした混合物を打錠機あるいは圧縮ロールを有する成形機により錠剤(タブレット)化する方法が好ましい。
【0096】
上記(a)、(c)成分の粉末としては、ポリフェニレンエーテルエーテルケトンなど粉末状で入手できるものはそれを使用してもよい。また、ペレットを常温あるいは冷凍粉砕することによっても得ることができる。冷凍粉砕は、ドライアイスあるいは液体窒素等で凍結させた後、一般的に知られている通常のハンマータイプ粉砕機、カッタータイプ粉砕機あるいは石臼型の粉砕機により行うことができる。本発明において用いるポリフェニレンエーテルエーテルケトンの粉末としては、得られる錠剤間の組成の均一化および得られた錠剤のハンドリング性を良好にする点から、レーザー回折式粒度分布測定法に基づき測定した場合の粒子の最大長径の数平均粒子径が1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。かかる粒径を有する粉末を得るには、粉砕などにより得られた粉体を適宜所望の大きさの篩を用いてふるい分けすればよい。
【0097】
本発明のフィラー高充填樹脂組成物の錠剤形状としては、輸送時の形状保持性と成形時の易圧壊性を考慮した場合、例えば、円柱状、楕円柱状、円錐台形状、球状、楕円球状、鶏卵型形状、マセック型、円盤状、キュービック状、角柱状のものが挙げられる。なかでも加工時の計量安定性の点から円柱状、楕円柱状、円錐台形状、球状、楕円球状、鶏卵型形状、マセック型が好ましい。
【0098】
また、錠剤の錠剤サイズとしては、底面15mm直径以下×長さ20mm以下が好ましく、なかでも底面の直径または長さ(高さ)の最大値が15mm未満であることが好ましく、最小値が1mm以上であることが好ましい。なお、底面が円状でないものに関して、最大径、最小径の規定方法としては、外接円の最大直径で特定する場合、その最大直径が15mm未満、1mm以上であることが好ましく、更に好ましくは12mm以下、1.5mm以上であるのがよい。
【0099】
また、輸送時等の形状を安定に保つために、錠剤における打錠面の側面もしくは圧縮ロールでの圧縮面に対し、垂直に圧力をかけた時の圧縮破壊強度値(圧壊強度値)が、好ましくは5〜100N、より好ましくは15〜80Nである。好ましい圧壊強度値を得るための方法としては、例えば、原料組成によるところが最も大きく、(c)成分を添加することにより、あるいは錠剤化工程において、原料供給ポケットに均一に原料を供給する方法、圧縮ロールの回転数を下げ圧縮ロール上での材料への加圧時間を延ばす方法、ホッパー内にフィードスクリューを用い、そのスクリューによりロール圧縮前において効果的な脱気と予備圧縮する方法などにより、高い錠剤密度が得られ、高い圧壊強度が得られる。なお、圧壊強度値の測定は、ロードセルなどの歪ゲージの上に錠剤を置き、その上から圧子を低速(好ましくは0.1〜2.0mm/sec)で降下させ、錠剤の圧縮破壊時に歪ゲージが示す圧力を測定する方法を用い行うことができる。
【0100】
また、前記した(a’)環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物のポリフェニレンエーテルエーテルケトンへの転化を前述の(b)無機フィラーおよび必要に応じて(c)成分の存在下で行うことにより、フィラー高充填樹脂組成物を製造することも可能である。環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の低融点特性により、前述の成形温度範囲において、無機フィラーの如き固体物質と環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が良好なぬれを形成した後、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物がポリフェニレンエーテルエーテルケトンに転化することにより、良好なぬれを形成したフィラー高充填樹脂組成物を得ることが可能である。
【0101】
かかる方法を用いることにより、従来、成し得なかったフィラーを高充填した樹脂材料を得ることが可能となる。
【0102】
本発明のフィラー高充填樹脂組成物を成形するにあたっての成形方法は、通常の成形方法(射出成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)やガスインジェクション成形、ミューセル成形法など手法により、三次元成形品、シート、ケース(筐体)などに加工することができるが、生産性を考慮した場合、射出成形あるいはインジェクションプレス成形等が好ましく採用される。また、溶着部を有する場合は、熱板、振動、超音波、レーザーなどの一般的な溶着方法を用いることが可能である。
【0103】
かくして得られる成形品は、用いる無機フィラーの特徴を極限まで生かしつつ、かつ溶融成形可能であることを生かし、例えば、高放熱用途、金属代替用途、セラミック代替用途、電磁波シールド用途、高精度部品(低寸法変化)、高導電用途等に有用であり、具体的には、各種ケース、ギヤーケース、LEDランプ関連部品、コネクター、リレーケース、スイッチ、バリコンケース、光ピックアップレンズホルダー、光ピックアップスライドベース、各種端子板、変成器、プリント配線板、液晶パネル枠、パワーモジュールおよびそのハウジング、プラスチック磁石、半導体、液晶ディスプレー部品、投影機等のランプカバー、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、アクチュエーター、シャーシ等のHDD部品、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク・デジタルビデオディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、印字ヘッドまわりおよび転写ロール等のプリンター・複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンショメーターベース、モーターコア封止材、インシュレーター用部材、パワーシートギアハウジング、エアコン用サーモスタットベース、エアコンパネルスィッチ基板、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ランプハウジング、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品、パソコンハウジング、携帯電話ハウジング、その他情報通信分野における筐体用途等幅広い分野、その他、高寸法精度、電磁波シールド性、気体・液体等のバリアー性を必要とする隔壁板、熱および電気伝導性を必要とする用途、屋外設置用機器あるいは建築部材で有用に用いられ、特に軽量化、形状の自由度が要求され、金属代替が熱望されている自動車部品用途、電気・電子部品用途、熱機器部品用途等に有用である。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0105】
[参考例1]環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物(A−1)の製造
攪拌機を具備したオートクレーブに4,4’−ジフルオロベンゾフェノン1.1kg(5mol)、ヒドロキノン0.55kg(5mol)、無水炭酸カリウム0.69kg(5mol)、N−メチル−2−ピロリドン50Lを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は3.33リットルである。
【0106】
反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密閉した後、室温から140℃まで昇温し140℃で1時間保持、その後180℃にまで昇温し180℃で3時間保持、その後250℃にまで昇温し250℃で2時間保持し反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
【0107】
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約4.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜8の連続する7種類の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、絶対検量線法により算出した環状ポリフェニレンエーテルケトンのヒドロキノンに対する収率は18.0%であった。また、繰り返し数m=2〜8の環状ポリフェニレンエーテルケトンの総重量に対するm=2の環状ポリフェニレンエーテルケトンの重量分率は32%、m=3の重量分率は34%、m=4の重量分率は21%であった。
【0108】
このようにして得られた反応混合物50kgに1重量%酢酸水溶液150kgを加え、撹拌してスラリー状にした後、70℃に加熱して30分間撹拌を継続した。スラリーをフィルターで濾過して固形分を得た。得られた固形分を脱イオン水50kgに分散させ70℃で30分間保持して濾過して固形分を得る操作を3回繰り返した。得られた固形分を70℃で一晩真空乾燥に処し、乾燥固体約1.3kgを得た。
【0109】
さらに、上記で得られた乾燥固体1.3kgをクロロホルム30kgを用いて、80℃で5時間抽出操作を行った。得られた抽出液からクロロホルムを留去して固形分を得た。この固形分にクロロホルム2.5kgを加えた後、メタノール40kgに滴下した。これにより生じた析出成分を濾別後、70℃で3時間真空乾燥に処し、白色固体0.19kgを得た。
【0110】
この白色粉末は赤外分光分析における吸収スペクトルよりフェニレンエーテルケトン単位からなる化合物であることを確認、また高速液体クロマトグラフィーにより成分分割したマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、さらにMALDI−TOF−MSによる分子量情報により、この白色粉末は繰り返し数mが2〜8の連続する7種類の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物を主要成分とする環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物であることが分かった。
【0111】
また、得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の分析を行った結果、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は88%であり、160℃の融点を有することが分かった。また、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の還元粘度は0.02dL/g未満であることも分かった。
【0112】
[参考例2]環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物(A−2)の製造
攪拌機を具備したオートクレーブに、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン2.25kg(10mol)、ヒドロキノン1.10g(10mol)、無水炭酸カリウム1.38kg(10mol)、およびN−メチル−2−ピロリドン5Lを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は0.16リットルである。
【0113】
反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密閉した後、室温から140℃まで昇温し140℃で1時間保持、その後180℃にまで昇温し180℃で3時間保持、次いで250℃にまで昇温し250℃で5時間保持し反応を行ったが、反応初期の段階で撹拌不良が起こり、十分な撹拌が困難な状態であった。これは、反応初期の段階のポリマー析出に依るものと推測している。
【0114】
また、実施例1記載の方法により上記反応混合物からクロロホルム可溶成分の回収を行った結果、ヒドロキノンに対し収率約0.8%でクロロホルム可溶成分を得た。得られたクロロホルム可溶成分の分析を行った結果、クロロホルム可溶成分中における環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は53%であり、210℃の融点を有することが分かった。また、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の還元粘度は0.12dL/gであった。
【0115】
<環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点>
パーキンエルマー製DSC7を用いて測定した。下記測定条件を用い、結晶化温度Tcは1st Runの値を、融点Tmは2nd Runの値を用いた。
First Run
・50℃×1分 ホールド
・50℃から320℃へ昇温,昇温速度20℃/分
・320℃×1分 ホールド
320℃から100℃へ降温,降温速度20℃/分
Second Run
・100℃×1分 ホールド
100℃から320℃へ昇温,昇温速度20℃/分(この時の融解ピーク温度をTmとする)。
【0116】
【表1】

【0117】
[参考例3]ポリフェニレンエーテルエーテルケトン(B−1)の製造
参考例1で得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物およびポリフェニレンエーテルエーテルケトンの繰り返し単位に対して5mol%のカリウム4−フェニルフェノキシドを、攪拌機を取り付けた1Lのオートクレーブ中に仕込み、窒素で置換した。オートクレーブを1時間で360℃に昇温した。昇温途中で環状PPS化合物が溶融したら、攪拌機の回転を開始し、回転数10rpmで攪拌下、30分間溶融加熱した。その後、窒素圧によりポリマーを吐出口よりガット状で取り出し、ガットをペレタイズした。得られた生成物の赤外スペクトル測定を行った結果、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン構造を有していることが分かった。また、このポリフェニレンエーテルエーテルケトンの還元粘度は0.71dL/gであった。
【0118】
[参考例4]ポリフェニレンエーテルエーテルケトン(B−2)の製造
参考例2で得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物およびポリフェニレンエーテルエーテルケトンの繰り返し単位に対して5mol%のカリウム4−フェニルフェノキシドを攪拌機を取り付けた1Lのオートクレーブ中に仕込み、窒素で置換した。オートクレーブを1時間で360℃に昇温した。昇温途中で環状PPS化合物が溶融したら、攪拌機の回転を開始し、回転数10rpmで攪拌下、30分間溶融加熱した。その後、窒素圧によりポリマーを吐出口よりガット状で取り出し、ガットをペレタイズした。得られた生成物の赤外スペクトル測定を行った結果、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン構造を有していることが分かった。また、このポリフェニレンエーテルエーテルケトン(B−2)の還元粘度は0.38dL/gであった。
【0119】
[参考例5]無機フィラー
炭素繊維(CF):MLD300(繊維状フィラー、繊維径7μm、東レ社製)平均繊維長150μm。
グラファイト(CFW−1):CFW50A(中越黒鉛社製)平均粒径48μm。
グラファイト(CFW−2):CFW18A(中越黒鉛社製)平均粒径18μm。
アルミナ(AL−1):EA−10(住友化学社製)平均粒径17μm。
アルミナ(AL−2):Al−32B(住友化学社製)平均粒径2.9μm。
【0120】
[参考例6] 添加剤(篩にて42メッシュパスしたものを使用)
HWE:モンタン酸エステルワックス“リコワックス”E(クラリアントジャパン社製)
PX:PX−200(大八化学工業社製粉末状芳香族縮合リン酸エステル、CAS No. 139189-30-3)融点95℃(篩にて42メッシュパスしたものを使用)。
【0121】
[実施例1〜4、比較例1]
参考例3〜4のポリフェニレンエーテルエーテルケトン、参考例5に示した無機フィラーおよび参考例6の添加剤をヘンシェルミキサーで表2に示す量でブレンドし、自動原料供給フィーダーを備えた月島機械製ロータリー打錠機を用いて常温タブレット化により、6mm直径×3mm長の円柱状のタブレット(錠剤型樹脂組成物)(最大値6mm、最小値3mm)を得た。ついで140℃の熱風乾燥機で3時間乾燥した後、以下に示す評価を行った。
【0122】
[実施例5]
参考例1で得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物およびポリフェニレンエーテルエーテルケトンの繰り返し単位に対して5mol%のカリウム4−フェニルフェノキシドを、攪拌機を取り付けた1Lのオートクレーブ中に実施例3と同様の組成(ポリフェニレンエーテルエーテルケトン:39容量%、アルミナ:61容量%)となるように仕込み、窒素で置換した。オートクレーブを1時間で360℃に昇温した。昇温途中で環状ポリフェニレンエーテルケトン化合物が溶融したら、攪拌機の回転を開始し、回転数10rpmで攪拌下、30分間溶融加熱した。その後、窒素圧によりポリマーを塊状で取り出し、粉砕し、3mmφのメッシュを通過する塊状物を得た。得られた生成物の赤外スペクトル測定を行った結果、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン構造を有していることが分かった。得られた組成物B−3を用いて以下に示す評価を行った。なお、同条件で参考例1で得られた環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物のみを開環重合させ得られたポリフェニレンエーテルエーテルケトンの還元粘度は0.78dL/gであった。
【0123】
<流動性>
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表2に示す樹脂温度、金型温度の温度条件で、100×100×1mm厚(フィルムゲート)の角形成形品を充填可能な最低圧力を測定した。
【0124】
<曲げ強度>
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表2に示す樹脂温度、金型温度の温度条件で、100×100×3mm厚(フィルムゲート)の角形成形品を最低圧力+5MPaで成形し、幅12.7mmに流れ方向に中心から2枚切削し、ASTM D790に準拠し、曲げ強度の測定を行った。
【0125】
<金型腐食性>
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表1に示す樹脂温度、金型温度の温度条件で、金型可動側に析出硬化鋼(NAK80;大同特殊鋼社製)でできた80×80×2mm厚(フィルムゲート)の角形成形品が得られる金属入れ子を挿入し、3000ショット成形した際のガスによる表面くもり性を観察した。なお、評価は、変化なし;○、腐食して表面白化;×とした。
【0126】
<フィラーの粒度分布>
参考例6の無機フィラーを実施例および比較例と同様の組成でヘンシャルミキサーでブレンドし、得られた無機フィラーを約0.05gを水50ccにいれて撹拌し、さらにスポイトで、予め水100ccに“マイペット”(花王社製)を2〜3滴混合した界面活性剤希薄溶液を数滴(泡が立たない程度)いれ、超音波洗浄機で分散させた後、島津製作所社製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3100を用いて各粒子径区間における粒子量(%)をプロットし、その累積した分布曲線より、D10(総粒径分布の10%の部分:小径)、D50(平均粒径)、D90(総粒径分布の90%部分:大粒径)を測定した。
【0127】
【表2】

【0128】
表2の結果から明らかなように本発明のフィラー高充填樹脂組成物は、還元粘度が0.6〜2.5dL/gの、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを60重量%以上含有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を開環重合して得られるポリフェニレンエーテルエーテルケトンを用いることで成形加工性と物性のバランスに優れたフィラー高充填物組成物を得ることが可能となる。これは、開環重合により得られるポリフェニレンエーテルエーテルケトンが従来製造方法により得られるものと比較してより均質であることに起因していると推察される。また特に、従来得られなかった熱可塑性樹脂で用いるフィラー特性に近似した特性が得られ、かつ、フィラー高充填の課題である強度が改善されることがわかる。さらに、連続生産時に課題であった金型の腐食性も改善できることから、軽量化目的として金属代替が熱望されている自動車部品用途、電気・電子部品用途、熱機器部品用途等への展開を図ることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)と(b)の合計を100容量%として、(a)98重量%硫酸中、濃度0.1g/dL、25℃の条件で測定した還元粘度が0.6〜2.5dL/gの範囲内にあるポリフェニレンエーテルエーテルケトン5〜50容量%と(b)無機フィラー95〜50容量%を配合してなるフィラー高充填樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリフェニレンエーテルエーテルケトンが、下記一般式(I)で表される環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを60重量%以上含有する組成物を開環重合することにより得られることを特徴とする請求項1に記載のフィラー高充填樹脂組成物。
【化1】

(mは2〜40の整数であり、mが2〜40のいずれかである化合物の混合物でもよい。)
【請求項3】
(b)無機フィラーが累積粒度分布曲線より得られる累積度90%粒度(D90)と累積度10%粒度(D10)の比(D90/D10)が10以上であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のフィラー高充填樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(c)脂肪酸金属塩、エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステルのいずれか1種以上を前記(a)および前記(b)の合計量100重量部に対して0.5〜10重量部配合してなる請求項1〜3のいずれか記載のフィラー高充填樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載のフィラー高充填樹脂組成物を固相状態で圧縮成形して錠剤化することを特徴とするフィラー高充填樹脂組成物からなる錠剤の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のフィラー高充填樹脂組成物を固相状態で圧縮成形した錠剤。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか記載のフィラー高充填樹脂組成物または請求項6に記載の錠剤を射出成形してなる成形品。
【請求項8】
(a’)と(b)の合計を100容量%として、(a’)下記一般式(I)で表される環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを60重量%以上含有する環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物5〜50容量%および(b)無機フィラー95〜50容量%を配合した後、触媒または開始剤の存在下で開環重合することを特徴とするフィラー高充填樹脂組成物の製造方法。
【化2】

(mは2〜40の整数であり、mが2〜40のいずれかである化合物の混合物でもよい。)
【請求項9】
(b)無機フィラーが累積粒度分布曲線より得られる累積度90%粒度(D90)と累積度10%粒度(D10)の比(D90/D10)が10以上であることを特徴とする請求項8に記載のフィラー高充填樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−6987(P2013−6987A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141510(P2011−141510)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】