説明

フィリングバルブの調整装置

【課題】一人のオペレータによって、簡単かつ容易に、リキッドシールの高さを調整できる調整装置を提供する。
【解決手段】調整装置50は、フィリングバルブのハウジングを保持する基台51と、基台に保持されたフィリングバルブのベントチューブをばねの付勢力に抗して上昇位置に保持する保持手段58と、フィリングバルブに取り付けられ、上昇位置に保持されたベントチューブの適正な基準高さhを示す指示手段66,68を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラーボウル(タンク)に収容されている液体(例えばビール)を個々の容器(例えば缶)に充填するフィリングバルブの調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、フィラーボウルの一部とそれに装着したフィリングバルブを示す。図示するように、フィラーボウル10は、底蓋11と、天蓋12と、それらの周囲を連結する周壁13を有し、これらの部材によって形成された内部の液体収容室14には充填液(図示せず)が収容されている。また、充填液の液面上の空間には所定圧力(例えば2kg/cm)の炭酸ガス(図示せず)が充填されている。
【0003】
フィリングバルブ15は、上下方向に向けて配置される中空円筒形のハウジング16を有する。ハウジング16は、下部ハウジング17と上部ハウジング18を有する。下部ハウジング17は、中空円筒形の下部ハウジング本体19と、該下部ハウジング本体19に一体に形成されてその周囲から外側に突出する矩形の固定部20を有する。上部ハウジング18は、下部ハウジング17の下部ハウジング本体19よりも小径の中空円筒体からなる上部ハウジング本体21を有し、該上部ハウジング本体21の下端部を上部ハウジング本体21の上部に挿入して同軸的に固定されている。上部ハウジング本体21の上端はプレッシャキャップ22が装着されており、このプレッシャキャップ22は上部ハウジング本体21の外周に配置されたばね23によって図示する上昇位置に付勢された状態で規制されている。
【0004】
下部ハウジング本体19と上部ハウジング本体21の中心には中空円筒形のベントチューブ24が同時的に配置されている。ベントチューブ24は、その上端外周に環状のリキッドシール25を備えている。リキッドシール25は、該リキッドシール25の中央に形成された雌ねじ(図示せず)にベントチューブ24の上端外周に形成された雄ねじ(図示せず)を螺合して、ベントチューブ24に対する高さが調整できるようにしてある。ベントチューブ24には、ベントチューブ24に対して高さ調整されたリキッドシール25を固定するために、締め付けナット26が設けてある。他方、ベントチューブ24は、その下端の内部にボール27からなる弁を備えており、ボール27の下降・上昇に応じて、ベントチューブ24の内部通路(ガス通路)が開放・閉鎖されるようになっている。
【0005】
ベントチューブ24は、下部ハウジング17の上端近傍に配置されてベントチューブ24の外周に固定された環状規制部材28を備えている。他方、下部ハウジング本体19の上部には、フィリングバルブ15の中心軸方向に環状規制部材28を所定距離だけ移動可能に収容する案内空間29が形成されている。したがって、ベントチューブ24は環状規制部材28とともに、ハウジング16に対して上記所定距離だけ(図4の上昇位置と図5の下降位置の間を)昇降可能である。ベントチューブ24はまた、上部ハウジング本体21の内側に、該ベントチューブ24に固定されたストッパ30を備えている。ストッパ30の上方では、スペーサリング31が中心軸方向に移動可能にベントチューブ24に外装されている。上部ハウジング本体21とベントチューブ24との間の空間には、上部ハウジング本体21の上端とスペーサリング31との間に上部スプリング32が配置され、スペーサリング31とストッパ30との間に下部スプリング34が配置されている。そして、これら上部と下部のスプリング33,34の付勢力により、自由状態で、ベントチューブ24は図5に示す下降位置に保持される。
【0006】
下部ハウジング本体19とそこに収容されたベントチューブ下部の間には、中空円筒形のバルブインサート34がベントチューブ24に同時的に外装されている。バルブインサート34は、フィリングバルブ15の中心軸方向に移動可能であり、図4に示す上昇位置と図5に示す下降位置の間を昇降でき、ベントチューブ24が図4に示す上昇位置にあるときは上昇位置にあり、ベントチューブ24が図4の上昇位置から図5の下降位置に移動すると、自重によって上昇位置から図5の下降位置に移動するようにしてある。また、バルブインサート34の外側にはリキッドコーン35が配置されており、下部ハウジング本体19の下端に固定されている。
【0007】
バルブインサート34の下端部とリキッドコーン35の下端部は、下部ハウジング本体19とベントチューブ24との間に形成された環状流路36を外部空間37に対して開閉するバルブ38を構成しており、バルブインサート34が図4に示す上昇位置にあるときにバルブ38は閉鎖し、バルブインサート34が図5に示す下降位置にあるときにバルブ38は開放している。
【0008】
下部ハウジング本体19の外周には、中空円筒形のセンタリングチューブ39が外装されている。センタリングチューブ39は、図4に示す上昇位置と、図5に示す下降位置との間を中心軸方向に移動可能である。
【0009】
下部ハウジング本体19には、中心軸と平行に伸びるガス流路40が形成されており、このガス流路40の下端はセンタリングチューブ39の内側で開放され、ガス流路40の上端はスニフトバルブ41に接続されている。
【0010】
以上の構成を備えたフィリングバルブ15は、図4に示すように、フィラーボウル10に着脱可能に装着される。ここで、図4は、液体充填前のフィリングバルブ15の状態を示しており、この状態で、ベントチューブ24は上昇位置にあり、リキッドシール25、特にその上端環状シール部がフィラーボウル天蓋12に密着している。この密着状態は、フィラーボウル10の液体収容室14にあるガスの圧力によって保たれている。
【0011】
液体充填時、センタリングチューブ39が図4に示す上昇位置から図5に示す下降位置に下降し、センタリングチューブ39の下端が容器(ここでは、缶。ただし、図示せず。)の上端に当接して密封する。次に、スニフトバルブ41を開き、この状態で、図4に示すように天蓋12に設けたガス流路42からベントチューブ24を介して容器内に炭酸ガスを供給する。これにより、容器内の空気はガス流路40からスニフトバルブ41を介して排出され、容器内の空間が炭酸ガスで置換される。所定時間後、スニフトバルブ41を閉鎖する。これにより、ベントチューブ24の内圧が上昇し、その内圧がフィラーボウル10内のガス圧と同圧又はそれ以上になると、ベントチューブ24は上部ばね32の力によって図5に示す下降位置に下降する。これにより、バルブインサート34が自重で下降してバルブ38が開放され、フィラーボウル10の内部空間(ガス空間)が下部ハウジング本体19とベントチューブ24との間の環状流路36を介して容器の内部に連通する。その結果、フィラーボウル10に収容されている液体が環状流路36からバルブ38を介して容器内に充填される。液体の充填とともに、容器内に充填されていた炭酸ガスはベントチューブ24を介してフィラーボウル10の液体収容室(ガス空間)に排出される。そして、容器内の液面が容器上端近くまで上昇すると、ボール27が上昇し、ベントチューブ24の下端を封鎖する。これにより、液体の供給も停止する。
【0012】
以上のごとく動作するフィリングバルブ15では、ハウジング16に対するリキッドシール25の高さ、例えば、ハウジング固定部20からリキッドシール25天端までの距離H(図5参照)、を正確に調整することが必要である。その理由は、リキッドシール25が適正位置よりも低いと該リキッドシール25とフィラーボウル天蓋12との間が十分に封止されず、逆にリキッドシール25が適正位置よりも高すぎると、リキッドシール25を構成するゴムの弾性回復力も加わり、ベントチューブ24の内圧がフィラーボウル10の内圧と等しくなったときに離反する速度が著しく早くなり、そのためにベントチューブ24がハウジング16に与える衝撃又ベントチューブ24がハウジング16から受ける衝撃が大きくなり、両者の当接面が損傷するおそれがあるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そのため、従来、所定長さのスケール又は基準棒をフィリングバルブ15の横に立て、一人のオペレータがベントチューブ24を上昇位置に保持した状態で、別のオペレータがリキッドシールの高さをスケール又は基準棒の目標位置に調整することが行われていた。しかしながら、このような従来の方法は少なくとも二人のオペレータを要する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明は、一人のオペレータによって簡単にリキッドシールの高さを調整できる装置を提供することを目的としてなされたもので、その調整装置は、フィリンググバルブのハウジングを保持する基台と、基台に保持されたフィリングバルブのベントチューブをばねの付勢力に抗して上昇位置に保持する保持手段と、フィリングバルブに取り付けられ、上昇位置に保持されたベントチューブの適正な基準高さを示す指示手段を有する。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明の調整装置によれば、保持手段によってベントチューブを上昇位置に保持した状態で、基台に設けた指示手段を用いてリキッドシールを適正位置に設定できるので、フィリングバルブのハウジングに対してリキッドシールを適正位置に設定できる。また、調整作業は一人のオペレータで効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例を説明する。図1〜3において、本発明に係るフィリングバルブの調整装置50は基台51を有する。基台51は、左右対称に配置された4本の脚52と、これらの脚52に支持された上部テーブル53と下部テーブル54を有する。
【0017】
特に、図3参照すると、上部テーブル53は、水平方向に所定の間隔をあけて平行に配置された一対の規制部55を有する。規制部55は、横断面が略L型を有し、L型内面を対向させた状態で左右対称に配置されており、対向するL型内面の間の収容空間56にフィリングバルブ15の矩形固定部20が挿入できるようにしてある。規制部55の間にあるテーブル部分は切除されており、規制部55の一端側から反対側に向かって伸びる開口57が形成されている。なお、収容空間56の幅は、固定部20の対応する幅とほぼ同じに設定されている。そのため、規制部55間の収容空間56に挿入された固定部20及びフィリングバルブ15は、基台51に対して正確に位置決めされる。
【0018】
好ましくは、下部テーブル54の高さ(上部テーブル53との間隔)は、図1(a)、1(b)に示すように、上部テーブル53にフィリングバルブ15を装着した状態で、該フィリングバルブ15の底部に装着した保護カバー43(図4に一点鎖線で示す。)を下部テーブル54が支持するようにする。
【0019】
図1(a)に示すように、上部テーブル53の上面片側(図の右側)には、基台51に装着されたフィリングバルブ15の固定部20を基台51に固定する固定機構57が設けてある。実施形態では、ばねを利用したスナップハンドル型の固定機構が使用されているが、単なるボルトとナットの組み合わせであってもよい。
【0020】
上部テーブル53の上面反対側(図の左側)には、上部テーブル53に固定されたフィリングバルブ15のベントチューブ24を上昇位置に保持する保持機構(保持手段)58が設けてある。実施形態の保持機構58は、上部テーブル53に固定された支持台59と、ベントチューブ24に係合させるカム板60と、支持台59にカム板60を固定するボルト61を有する。支持台59は、ボルト61が螺合するねじ孔62を有する。カム板60は、略長方形の板からなり、一端側にはボルト61が挿通可能な長孔63が形成され、他端側には2つの平行な突起部からなるフォーク部64を有する。
【0021】
図3に示すように、フィリングバルブ15の固定部20には孔65が形成されており、そこにリキッドシール25の高さ調整棒66が挿入されて固定されるようにしてある。高さ調整棒66は、上端近傍に、横方向に突出する突起(適正な基準高を指示する手段)67を備えている。突起67の高さ、具体的には、高さ調整棒66を固定部20に固定した状態において固定部20の上面から突起上端面(基準面)68までの距離hが、図4に示すように、リキッドシール25が天蓋12に接触している状態における固定部上面からリキッドシール下端面までの高さH’と等しくなるように設定されている。
【0022】
このように構成された調整装置50の使用を説明する。まず、フィラーボウル10から取り外したフィリングバルブ15を基台51に固定する。このとき、基台51の規制部55の間の収容部56にフィリングバルブ15の固定部20を装入し、固定機構57でフィリングバルブ15を基台51に固定する。次に、カム板60の長孔63にボルト61を挿入した状態で、支持台59のねじ孔62にボルト61を螺合する。この段階ではボルト61は締めず、カム板60が任意の方向に自由に動ける状態にしておく。次に、ばね33(図4参照)の付勢力に抗してリキッドシール25とベントチューブ24を持ち上げ、フィリングバルブ15の下部ハウジング本体19に形成された側部開口部69(図3、4参照)を介してカム板60のフォーク部64を環状規制部材28の下に挿入する(図4にフォーク部64を点線で示す。)。この状態でリキッドシール25とベントチューブ24に加えている力を解放すると、リキッドシール25とベントチューブ24はばね33(図4参照)の力で下降する。また、フォーク部64も図4に示す位置から多少下降する。しかし、フォーク部64は環状規制部材28の下に留まっている。次に、ボルト61を締める。これにより、カム板60の一端側が支持台59の上面に圧接され、カム板60の他端側にあるフォーク部64が環状規制部材28を持ち上げてリキッドシール25とベントチューブ24を上昇位置に位置させる。次に、調整棒66を固定部20に取り付ける。そして、突起67の上端面68の高さを基準にリキッドシール25の高さを調整する。このとき、締め付けナット26を緩め、リキッドシール25をベントチューブ24に対して回転しながら、リキッドシール25の高さを調整し、調整後に締め付けナット26を締めてリキッドシール25を固定する。リキッドシール25の高さ調整が完了すると、上述した手順の逆の手順を行って、フィリングバルブ15を基台51から取り外す。
【0023】
以上のように、本発明に係る調整装置によれば、一人のオペレータによって、簡単かつ容易に、リキッドシールの高さを調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る調整装置の正面図と側面図。
【図2】本発明に係る調整装置の平面図。
【図3】本発明に係る調整装置の分解斜視図。
【図4】フィラーボウルに取り付けたフィリングバルブの断面図。
【図5】フィリングバルブの断面図。
【符号の説明】
【0025】
10:フィラーボウル
11:底蓋
12:天蓋
13:周壁
14:液体収容室
15:フィリングバルブ
16:ハウジング
17:下部ハウジング
18:上部ハウジング
19:下部ハウジング本体
20:固定部
21:上部ハウジング本体
22:プレッシャキャップ
23:ばね
24:ベントチューブ
25:リキッドシール
26:ナット
27: ボール
28:環状規制部材
29:案内空間
30:ストッパ
31:スペーサリング
32:上部ばね
33:下部ばね
34:バルブインサート
35:リキッドコーン
36:環状流路
37:外部空間
38:バルブ
39:センタリングチューブ
40:ガス流路
41:スニフトバルブ
42:ガス流路
43:保護カバー
50:調整装置
51:基台
52:脚
53:上部テーブル
54:下部テーブル
55:規制部
56:収容空間
57:固定機構
58:保持機構
59:支持台
60:カム板
61:ボルト
62:ねじ孔
63:長孔
64:フォーク部
65:孔
66:調整棒
67:突起
68:突起上端面
69:側部開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーボウルに着脱自在に装着されるフィリングバルブの調整装置であって、
上記フィリングバルブは、上下方向に向けて配置される筒状ハウジングと、上昇位置と下降位置との間を昇降可能に上記筒状ハウジング内に配置されたベントチューブと、上記ベントチューブを上記下降位置に向けて付勢するばねと、上記ベントチューブの上端に取り付けられており、上記フィラーボールに装着された状態で上記ベントチューブが上昇位置にあるとき上記フィラーボールの天蓋に接触するリキッドシールを備えており、
上記調整装置は、
フィリンググバルブのハウジングを保持する基台と、
上記基台に保持されたフィリングバルブのベントチューブを上記ばねの付勢力に抗して上記上昇位置に保持する保持手段と、
上記フィリングバルブに取り付けられ、上記上昇位置に保持された上記ベントチューブの適正な基準高さを示す指示手段を備えたことを特徴とするフィリングバルブの調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−95287(P2010−95287A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267462(P2008−267462)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】