説明

フィルタおよびこれを組み込んだ圧力調整弁

【課題】本発明は、簡単な構成で且つ容易に形成することができると共に、フィルタ地震から異物が発生することがないフィルタを提供することを課題としている。
【解決手段】流体の流路内に設けると共に、流体の異物除去に用いるフィルタであって、多数の開口部を有するシート状のフィルタエレメント131と、フィルタエレメント131の周縁部を保持する樹脂製のエレメントホルダ132と、を備え、フィルタエレメント131がエレメントホルダ132の表面に熱溶着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流路内に設けると共に、流体の異物除去に用いるフィルタおよびこれを組み込んだ圧力調整弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフィルタ(フィルタユニット)として、多孔質で且つ円形シート状のフィルタエレメント(フィルタ素子)と、フィルタエレメントを挟み込むようにして周縁部で支持する一対のハウジング部片と、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。このフィルタは、一対のハウジング部片を互いに組み合わせた状態で、一対のハウジング部片の略外周部において、熱可塑性材である密封部材を射出成形することにより、一体のフィルタとして形成されている。なお、このフィルタは、一方のハウジング部片に形成された流入口および他方のハウジング部片に形成された流出口により、流体がハウジング部片内を通液するよう構成されている。
【特許文献1】特開2001−137626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなフィルタでは、フィルタエレメントを介在させた状態で熱可塑性材の射出成形により一対のハウジング部片を接合するため、フィルタの成形が煩雑であり、また、射出成形に用いる金型が複雑な形状になってしまうという問題があった。さらに、フィルタエレメントと一対のハウジング部片とから成る構成であるため、部品点数が多く、複雑な構成となってしまうという問題があった。またさらに、このフィルタの形成方法を、流体の流路内に設けるフィルタに適用すると、成形に伴うバリ等の異物が混入してしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、簡単な構成で且つ容易に形成することができると共に、フィルタ自身から異物が発生することがないフィルタおよびこれを組み込んだ圧力調整弁を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフィルタは、多数のフィルタ孔を有するシート状のフィルタエレメントと、フィルタエレメントの周縁部を保持する樹脂製の保持枠と、を備え、フィルタエレメントが保持枠の表面に熱溶着されていることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、フィルタエレメントと1つの保持枠とから成る構成であるため、部品点数が少なく、フィルタを簡単な構成とすることができる。また、樹脂製の保持枠にフィルタエレメントを溶着して、フィルタを形成する構成であるため、フィルタを容易に形成することができる。さらに、フィルタ自身からバリ等が発生することがなく、異物の発生を抑えることができる。
【0007】
この場合、保持枠は、ポリアセタールで構成されていることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、保持枠の材質に、強度および耐溶剤性にすぐれたポリアセタールを用いることで、保持枠の破損を抑えることができる。ひいては、保持枠の破損による異物の発生を防止することができるため、フィルタ自身からの異物の発生をさらに抑えることができる。また、熱可塑性の高い材質を用いることで、フィルタをより容易に形成することができる。
【0009】
この場合、フィルタエレメントが、金属材料で構成されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、フィルタエレメントの材質に、強度に優れた金属材料を用いることで、フィルタエレメントの破損を抑えることができる。ひいては、フィルタエレメントの破損による異物の発生を防止することができるため、フィルタ自身からの異物の発生をさらに抑えることができる。
【0011】
この場合、熱溶着が、超音波溶着であることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、フィルタエレメントの熱溶着処理を、超音波溶着で実施することにより、強度の高い熱溶着処理を施すことができると共に、熱溶着処理を高速で実施することができる。
【0013】
本発明の圧力調整弁は、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドと機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクと、を接続する機能液流路に介設した圧力調整弁であって、流入ポートに上記のフィルタを組み込んだことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、圧力調整弁の流入ポートに、簡単な構成で且つ異物が発生することがないフィルタを用いることにより、圧力調整弁内に異物が入り込むことを防止することができる。これにより、リーク不良を起こすことがなく、圧力調整を安定させることができる。また、圧力調整弁を簡単な構成にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して、本発明のフィルタを有する圧力調整弁を搭載した液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。
【0016】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース2上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在して、ワークWをX軸方向(主走査方向)に移動させるX軸テーブル3と、複数本の支柱4を介してX軸テーブル3を跨ぐように架け渡された1対(2つ)のY軸支持ベース5上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル6と、インクジェット方式の複数の機能液滴吐出ヘッド7(図2参照)が搭載された10個のキャリッジユニット8と、から成り、10個のキャリッジユニット8は、Y軸テーブル6に移動自在に吊設されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ11と、チャンバ11を貫通して、チャンバ11の外部から内部の機能液滴吐出ヘッド7に機能液を供給する3組の機能液供給装置21を有した機能液供給ユニット12と、を備えている。X軸テーブル3およびY軸テーブル6の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド7を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット12から供給されたR・G・B3色の機能液滴を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。
【0017】
次に、図1および図2を参照して機能液供給ユニット12について説明する。機能液供給ユニット12は、R・G・B3色の機能液を供給する3組の機能液供給装置21を備えている。3組の機能液供給装置21は、それぞれR・G・B3色に対応した機能液滴吐出ヘッド7に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド7には対応する色の機能液が供給される。
【0018】
図2に示すように、各色の機能液供給装置21は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク36,36を有するタンクユニット22と、各キャリッジユニット8に対応して設けた10個のサブタンク(機能液タンク)23と、タンクユニット22と10個のサブタンク23を接続する上流側機能液流路24と、各サブタンク23と各機能液滴吐出ヘッド7とを接続する10組の下流側機能液流路25と、を備えている。なお、各タンクユニット22は、チャンバ11の側壁の一部に設けられたタンクキャビネット26内に収容されており、各サブタンク23は、対応する各キャリッジユニット8に搭載されたタンクケース27に収容されている(図1参照)。
【0019】
各メインタンク36,36内の機能液は、これに接続した窒素ガス供給設備31からの圧縮窒素ガスにより加圧され、上流側機能液流路24を介して10個のサブタンク23に選択的に供給される。その際、各種開閉弁に接続した圧縮エアー供給設備32の圧縮エアーにより、各種開閉弁が開閉制御される。また同時に、各サブタンク23は、これに接続したガス排気設備33を介して大気開放され、必要量の機能液を受容する。各サブタンク23の機能液は、これに連なる機能液滴吐出ヘッド7の駆動により、下流側機能液流路25を介して機能液滴吐出ヘッド7に供給される。
【0020】
タンクユニット22は、機能液の供給源となる一対のメインタンク36,36と、一対のメインタンク36,36の重量をそれぞれ測定する一対の重量測定装置37,37と、一対のメインタンク36,36に接続されると共に、上流側機能液流路24に接続した切換え機構38と、を備えている。各メインタンク36には、窒素ガス供給設備31に接続されており、機能液を圧送する際に加圧制御可能に構成されている。
【0021】
上流側機能液流路24は、上流側から、上流側をタンクユニット22に接続したタンク側主流路41と、分岐部42を介してタンク側主流路41から10方に分流し、下流側をサブタンク23に接続した10本の枝流路43と、を備えている。タンクユニット22から供給された機能液は、分岐部42により10方に分流して各サブタンク23に供給される。
【0022】
また、タンク側主流路41には、上流側から気泡除去ユニット51、第1開閉弁52、エアー抜きユニット53、第2開閉弁54がそれぞれ介設されている。さらに、各枝流路43には、各サブタンク23の近傍に位置して第3開閉弁55がそれぞれ介設されている。
【0023】
各下流側機能液流路25は、上流側から、上流側を各サブタンク23に接続したヘッド側主流路61と、上流側をヘッド側主流路61に接続した4分岐流路62と、上流側を4分岐流路62に接続した複数のヘッド側枝流路63と、により構成されている。これにより、機能液が各サブタンク23から4方に分岐して、それぞれの機能液滴吐出ヘッド7に接続されている。すなわち、上流側機能液流路24の10分岐と、下流側機能液流路25の4分岐により、10×4個の機能液滴吐出ヘッド7に機能液が供給される。加えて、機能液供給ユニット12は、R・G・Bで3組の機能液供給装置21を有しているため、10×12個の機能液滴吐出ヘッド7に機能液が供給される。更に、ヘッド側主流路61には、第4開閉弁66と、機能液滴吐出ヘッド7への圧力調整を行う圧力調整弁67と、が介設されている。
【0024】
サブタンク23は、各4個の機能液滴吐出ヘッド7に供給する機能液を貯留するものである。サブタンク23は貯留された機能液の液位を検出する液位検出機構を有し、機能液の液位を一定の高さに維持しつつ供給を行う。機能液滴吐出ヘッド7の吐出駆動により、機能液の液位が下限液位まで下降すると(減液状態)、第3開閉弁55を開放してメインタンク36から機能液を供給し、メインタンク36からの供給により機能液の液位が上限液位まで上昇すると、第3開閉弁55を閉弁してメインタンク36からの供給を停止する。
【0025】
次に、図3ないし図8を参照して、圧力調整弁67廻りについて説明する。図3に示すように、圧力調整弁67は、ヘッド側主流路61に介設されており、流入側の継手を構成すると共に、流入ポート91に連なる流入コネクタ71(ユニオン継手)と、流出側の継手を構成すると共に、流出ポート110に連なる流出コネクタ72(ユニオン継手)と、を有している。
【0026】
図3および図4に示すように、圧力調整弁67は、本体ケーシング81と、本体ケーシング81と共に内部に1次室82を形成する蓋ケーシング83と、本体ケーシング81と共に内部に2次室84を形成し本体ケーシング81にダイヤフラム85を固定するリングプレート86との3部材でバルブケーシングが構成されており、いずれもステンレス等の耐食性材料で形成されている。また、本体ケーシング81には、その中心位置に1次室82および2次室84を連通する連通流路87が形成されている。
【0027】
蓋ケーシング83およびリングプレート86は、本体ケーシング81に対し、前後からリングプレート86および蓋ケーシング83を重ね、複数本の段付平行ピン(図示省略)でそれぞれ位置決めした後、ねじ止めして組み立てられており、いずれも円形のダイヤフラム85の中心を通る軸線と同心円となる円形あるいは多角形(8角形)の外観を有している。そして、蓋ケーシング83および本体ケーシング81は、パッキン89を介して相互に気密に突合せ接合され、本体ケーシング81およびリングプレート86は、ダイヤフラム85の縁部およびパッキン89を挟込み込んで相互に気密に突合せ接合されている。
【0028】
本体ケーシング81と蓋ケーシング83とで形成された1次室82は、ダイヤフラム85と同心となる略円柱形状に形成されており、その開放端を蓋ケーシング83により閉蓋されている。また、本体ケーシング81の1次室82側背面上部に形成した上部ボス部の左部には1次室82から径方向斜めに延びる流入ポート91が形成されている。流入ポート91には上記の流入コネクタ71が接続されている。
【0029】
図4に示すように、流入ポート91は、本体ケーシング81の外周面に開口した流入口92と、フィルタ93を収容するフィルタ収容部94と、フィルタ収容部94と1次室82の内周面とを連通する流入経路95とから成り、流入口92に対し流入経路95は、1次室82側に偏心して形成されている。流入口92には、流入コネクタ71が螺合(テーパネジ)される。なお、詳細は後述するが、フィルタ収容部94にはフィルタ93が収容され、フィルタ93と、螺合した流入コネクタ71との間にはフィルタ93の押えばね96が収容される。
【0030】
流入コネクタ71の内部に形成された流路は、下流端で拡開形成されており、流路に段部が生じないように且つ機能液の流速に大きな変化が生じないようになっている。同様に、流入経路95の上流端は、テーパ形状を為している。
【0031】
図4および図5に示すように、2次室84は、ダイヤフラム85と、本体ケーシング81に形成した内面壁101とによって、全体としてダイヤフラム85を底面とする円錐台形状に形成されている。ダイヤフラム85は、鉛直姿勢を為して配設され、2次室84の1つの面を構成している。また、内面壁101は、2次室84のダイヤフラム85の面(1つの面)を除いた各面を構成している。
【0032】
また、内面壁101のうち円錐台形状の頂面となる端壁101aには、ダイヤフラム85と同心となる2次室側開口部102が開口し、内面壁101のうち円錐台形状のテーパ面となる周壁101bの下側斜面における上下中間部には、後述する流出流路103の流出開口部104が形成されている。この場合、2次室側開口部102は、後述する受圧板付勢ばね105を収容するばね室を兼ねており、連通流路87の主流路106より太径に形成されている。
【0033】
図5に示すように流出ポート110は、本体ケーシング81の下部に位置する傾斜ボス部111に形成されており、傾斜ボス部111の下部に開口した流出口112と、2次室84の流出開口部104と、これらを連通する流出流路103とで構成されている。流出流路103は、内面壁101の周壁101bから斜めに延びて下向きの流出口112に連通している。流出口112には、流出流路103の軸線方向から流出コネクタ72が螺合している。流出コネクタ72の内部に形成された流路は、上流端で拡開形成されており、流路に段部が生じないように且つ機能液の流速に大きな変化が生じないようになっている。2次室84から流出する機能液は、流出開口部104から流出流路103の勾配に従って斜めに流下し、機能液滴吐出ヘッド7側に流出する。
【0034】
図4および図5に示すように、本体ケーシング81には、1次室82と2次室84とを連通する連通流路87が形成されている。連通流路87は、主流路106と、これに連なる2次室側開口部102とで構成されている。これら1次室82、2次室84および連通流路87は、いずれもダイヤフラム85と同心の円形断面を有している。ただし、主流路106は、後述する弁体113の軸部114がスライド自在に収容される円形断面の軸遊挿部115と、軸遊挿部115から径方向四方に延びる十字状断面の流路部116とで構成されている(図3(b)参照)。
【0035】
ダイヤフラム85は、樹脂フィルムで構成したダイヤフラム本体121と、ダイヤフラム本体121の内側に貼着した樹脂製の受圧板122とで構成されている。受圧板122は、ダイヤフラム本体121と同心の円板状に、且つダイヤフラム本体121に対し十分に小さい径に形成されており、その中央に後述する弁体113の軸部114が当接する。ダイヤフラム本体121は、耐熱PP(ポリプロピレン)と特殊PPとシリカを蒸着したPET(ポリエチレンテレフタレート)とを積層して構成されており、本体ケーシング81の前面と同径の円形に形成されている。
【0036】
弁体113は、円板状の弁体本体124と、弁体本体124の中心から断面横「T」字状を為すように一方向に延びる軸部114と、軸部114の基端部側(弁体本体124側)に設けた(取り付けた)環状のOリング125とで構成されている。弁体本体124および軸部114は、ステンレス等の耐食材料で一体に形成されている。Oリング125は、例えば軟質のシリコンゴムで環状に形成されている。このため、弁体113の閉弁時には、弁座となる連通流路87の開口縁にOリング125が強く当接して、連通流路87が1次室82側から液密に閉塞される。
【0037】
軸部114は、連通流路87(の主流路106)にスライド自在に遊嵌され、閉弁状態でその先端(前端)が中立位置にあるダイヤフラム85の受圧板122に当接する。すなわち、ダイヤフラム85が外部に向かって膨出するプラス変形の状態では、軸部114の前端と受圧板122との間には所定の間隙が生じており、この状態からダイヤフラム85がマイナス側に変形してゆくと、中立状態で軸部114の前端と受圧板122が当接し、さらにダイヤフラム85のマイナス変形がすすむと、受圧板122が軸部114を介して弁体本体124を押し開弁させることになる。したがって、2次室84の容積のうち、ダイヤフラム85がプラス変形から中立状態となる容積分は、1次室82側の圧力を一切受けることなく、機能液の供給が為される。
【0038】
弁体113の背面と1次室82の壁体126との間には、弁体113を2次室84側、すなわち閉弁方向に付勢する弁体付勢ばね127が介設されている。同様に、受圧板122と内面壁101の間には、受圧板122を介してダイヤフラム本体121を外部に向かって付勢する受圧板付勢ばね105が介設されている。この場合、弁体付勢ばね127は、弁体113の背面に加わるサブタンク23の水頭を補完するものであり、サブタンク23の水頭とこの弁体付勢ばね127のばね力により、弁体113が閉塞方向に押圧される。一方、受圧板付勢ばね105は、ダイヤフラム85のプラス変形を補完するものであり、大気圧に対し2次室84が負圧になるように作用する。
【0039】
圧力調整弁67は、大気圧と機能液滴吐出ヘッド7に連なる2次室84との圧力バランスによりダイヤフラム85(およびこれが当接する弁体113)が変形(進退)することで開閉し、2次室84側を所定の圧力まで減圧するようにしている。その際、弁体付勢ばね127および受圧板付勢ばね105に力が分散して作用し、且つ軟質シリコンゴムのOリング125(の弾性力)により、弁体113は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体113の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッド7の吐出駆動に影響を与えないようになっている。もちろん、サブタンク23側(1次室82側)で発生する脈動等も、弁体113で縁切りされるため、これを吸収する(ダンパー機能)ことができる。
【0040】
次に、図6を参照して流入ポート91廻りについて説明する。上記したように、流入ポート91は、流入口92、フィルタ収容部94および流入経路95により構成されている。流入口92の内周面に形成されたネジ部に、ユニオン継手である流入コネクタ71を螺合して接続することにより、サブタンク23からの流路が接続される。フィルタ収容部94には、上流側からの機能液に混入した異物を除去(濾過)するフィルタ93が収容されており、フィルタ93と流入コネクタ71との間には、フィルタ93を押える押えばね96が収容されている。
【0041】
フィルタ収容部94は、本体ケーシング81に形成したザグリ穴状のものであり、円筒状のフィルタ93が係合するように円筒状に形成されている。すなわち、円筒状のフィルタ93の外周面が、フィルタ収容部94の内周面に係合すると共に、円筒状のフィルタ93の一端の周縁部が当接するよう、流入経路95に対し段部となる周縁当接部94aが形成されている。詳細は後述するが、押えばね96の押圧によって、フィルタ93が周縁当接部94aに当接され、押圧固定される。
【0042】
押えばね96は、コイルばねで構成されており、一端が、流入コネクタ71の内部に形成した流路において本体ケーシング81側に拡開した拡開部71aに当接し、他端がフィルタ93の一端面に当接する。流入コネクタ71をねじ接合すると、押えばね96を介して、フィルタ93が周縁当接部94aに押圧され、セットされる。
【0043】
図7に示すように、フィルタ93は、円形シート状のフィルタエレメント131と、フィルタエレメント131を周縁部で保持するリング状のエレメントホルダ(保持枠)132と、を備えている。
【0044】
フィルタエレメント131は、多数の開口部(フィルム孔)が形成されたステンレス製の金属シートで構成されている。フィルタエレメント131は、厚さ15μm程度である。各開口部は、円形もしくは方形に形成されており、30μm以上の異物が補足可能なよう、その外接円の直径が30μm以下となるように形成されている。
【0045】
エレメントホルダ132は、ポリアセタールで形成された樹脂製のリングで構成されている。エレメントホルダ132の一端面には、フィルタエレメント131が熱溶着されており、他端面は、所定の平面度で形成されている。フィルタ93は、当該他端面をフィルタ収容部94の周縁当接部94aに当接した状態で、フィルタ収容部94に収容される(図6参照)。なお、液密性の問題で、所定の平面度で形成された上記他端面を、周縁当接部94a側として、フィルタ93を収容しているが、逆の端面(フィルタエレメント131側)を周縁当接部94a側として、フィルタ93を収容しても良い。
【0046】
ここで、図6を参照して、流入コネクタ71とフィルタ93の取付け方法および取外し方法について説明する。流入コネクタ71とフィルタ93の取付けでは、まず、フィルタ93をフィルタ収容部94に投入し、次に、押えばね96をフィルタ収容部94に投入する(押えばね96は、フィルタ収容部94から流入口92にかけて収容される)。その後、流入コネクタ71を流入口92に螺合して接続する。流入コネクタ71の螺合により、流入コネクタ71とフィルタ93とに接触した押えばね96が、フィルタ93を周縁当接部94aに押圧してフィルタ93を固定する。すなわち、流入コネクタ71が押えばね96を介して、フィルタ93を押圧固定する。このように、フィルタ93は、流入コネクタ71の締付けを利用して取り付けられているため、流入コネクタ71を取り外すことで、フィルタ93も一緒に取り外すことができる。
【0047】
次に図8を参照して、フィルタ93の作成方法について説明する。図8に示すように、このフィルタ93の作成方法は、超音波溶着装置141を用い、フィルタエレメント131をエレメントホルダ132に超音波溶着(熱溶着)することで、フィルタ93を作成するものである。超音波溶着装置141は、フィルタエレメント131およびエレメントホルダ132をセットするセットステージ142と、セットしたフィルタエレメント131およびエレメントホルダ132の直上に配設された溶着ヘッド143と、溶着ヘッド143を昇降自在に支持する昇降機構144と、を備えている。
【0048】
セットステージ142は、エレメントホルダ132上にフィルタエレメント131を重ね合わせた状態で、これらをセットしており、フィルタエレメント131は、エレメントホルダ132上で位置決めされている。溶着前のエレメントホルダ132の上面(表面)には、その溶着部に倣ってリング状に突設する溶着山132a(エネルギーダイレクター)が形成されており、この溶着山132a上により、フィルタエレメント131を下から支持する形となる。
【0049】
溶着ヘッド143は、直上からフィルタエレメント131に接触する溶着ホーン145と、溶着ホーン145を超音波振動するヘッド本体146と、を備えている。溶着ホーン145は、先端が、フィルタエレメント131とエレメントホルダ132との溶着部に倣うリング状に形成されている。昇降機構144は、溶着ヘッド143を昇降させて、溶着ホーン145をフィルタエレメント131に当接させると共に、フィルタエレメント131をエレメントホルダ132に押圧する。
【0050】
図8に示すように、フィルタ93の作成をする際には、昇降機構144を降下させて、溶着ホーン145をフィルタエレメント131に当接する(図8(b)参照)。その後、昇降機構144により、溶着ホーン145を介して、フィルタエレメント131をエレメントホルダ132に押圧すると共に、ヘッド本体146を駆動して、溶着ホーン145を超音波振動させる。かかる際、異物が生じない程度に、超音波振動のエネルギー(溶着時間、圧力、振幅)を調節する。これにより、溶着山132aが溶融し、フィルタエレメント131がエレメントホルダ132に溶着される(図8(c)参照)。これによって、フィルタ93が作成される。
【0051】
以上のような構成によれば、フィルタ93が、フィルタエレメント131と1つのエレメントホルダ132とから成る構成であるため、部品点数が少なく、フィルタ93を簡単な構成とすることができる。また、樹脂製のエレメントホルダ132にフィルタエレメント131を溶着して、フィルタ93を形成する構成であるため、フィルタ93を容易に形成することができる。さらに、フィルタ93自身からバリ等が発生することがなく、異物の発生を抑えることができる。
【0052】
また、エレメントホルダ132の材質に、強度および耐溶剤性にすぐれたポリアセタールを用いることにより、エレメントホルダ132の破損を抑えることができる。ひいては、エレメントホルダ132の破損による異物の発生を防止することができるため、フィルタ93自身からの異物の発生をさらに抑えることができる。また、熱可塑性の高い材質を用いることで、フィルタ93をより容易に形成することができる。なお、ポリアセタールに代えて、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylenesulfide)を用いても良い。
【0053】
さらに、フィルタエレメント131の材質に、強度に優れた金属材料を用いることで、フィルタエレメント131の破損を抑えることができる。ひいては、フィルタエレメント131の破損による異物の発生を防止することができるため、フィルタ93自身からの異物の発生をさらに抑えることができる。なお、フィルタエレメント131は、ステンレスの金属繊維を編み込んだものでも良いし、耐薬液性の樹脂製のものであってもよい。
【0054】
またさらに、フィルタエレメント131の熱溶着処理を、超音波溶着で実施することにより、強度の高い熱溶着処理を施すことができると共に、熱溶着処理を高速で実施することができる。なお、当該効果は得られないが、超音波溶着以外の熱溶着(例えば、ヒータやレーザを用いた溶着処理等)を用いても良い。
【0055】
また、圧力調整弁67の流入ポート91に上記フィルタ93を設けることにより、圧力調整弁67の主機能を奏するOリング125と連通流路87の開口縁との当接部分(接触部分)に異物が咬み込むことを防止することができる。これにより、圧力調整弁67を安定動作させることができ、ひいては、機能液滴吐出ヘッド7における液滴吐出量の精度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】機能液供給装置の配管系統図である。
【図3】圧力調整弁の背面図(a)、および正面図(b)である。
【図4】圧力調整弁を流入ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図5】圧力調整弁を流出ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図6】流入ポート廻りについて示した断面図である。
【図7】フィルタの断面図である。
【図8】フィルタの作成方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0057】
7:機能液滴吐出ヘッド、 23:サブタンク、 67:圧力調整弁、 91:流入ポート、 93:フィルタ、 131:フィルタエレメント、 132:エレメントホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のフィルタ孔を有するシート状のフィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントの周縁部を保持する樹脂製の保持枠と、を備え、
前記フィルタエレメントが前記保持枠の表面に熱溶着されていることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記保持枠は、ポリアセタールで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記フィルタエレメントが、金属材料で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記熱溶着が、超音波溶着であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項5】
インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドと前記機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクと、を接続する機能液流路に介設した圧力調整弁であって、
流入ポートに請求項1ないし4のいずれかに記載のフィルタを組み込んだことを特徴とする圧力調整弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−142748(P2010−142748A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323877(P2008−323877)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】