説明

フィルタと、同フィルタを備えた空気調和機

【課題】 樹脂成型の際、インサート成型によって網体と枠体とを接合しても、強い圧力が掛かる金型の網体押圧部に位置する網体に対し強度が低下しないようにしたフィルタを提供することを目的とする。
【解決手段】 強い圧力で網体52が挟み込まれる樹脂成型金型の網体押圧部に対応して、繊維径が太く強度を有する縦糸521aと、横糸522aとを配置していることにより、縦糸521aと横糸522bには、強い圧力に起因する潰れや損傷が発生しても、網体52は強度を維持することができるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に使用されるフィルタの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機内に装着される従来のフィルタは、例えば図4(A)に示すフィルタ40のように、複数の縦リブ411を備え矩形状に形成された枠体41と、同枠体41内に張設された網体42とからなっており、網体42は、縦糸と横糸とを交互に織り込んで形成されている。
【0003】
フィルタ40は樹脂成型を行う金型によって成型され、所謂インサート成型によって金型内に網体42をセットし、閉じた金型に流入した溶融樹脂が固化して枠体41が形成される過程で網体42は、上部枠41a、下部枠41b、左側枠41c、右側枠41d及び複数の縦リブ411とからなる枠体41に接合されるようになっている。
【0004】
フィルタ40を樹脂成型する金型50は、例えば、図4(B)の断面図で示すように構成されている。金型50は上下に分割された上型50aと下型50bとから構成され、溶融樹脂流入孔50eを備えた枠体成型部50cと、網体42を収納する収納部50dと、網体42を押圧しながら枠体成型部50cと収納部50dとの間を閉鎖して、収納部50dへの溶融樹脂の流入を防ぐ網体押圧部50fとを設けている。尚、図4(B)は、下型50bに網体42をセットし、上型50aを閉じて溶融樹脂流入孔50eから溶融樹脂を流入させた状態のフィルタ40の上下方向の断面図を示している。
【0005】
網体42は、上型50aと下型50bが開いた状態で、両端部が枠体成型部50cに位置されるように収納部50dにセットされ、その後、上型50aと下型50bが閉じられる。この際、網体押圧部50fに挟持される網体42の、図4(B)のAで示す範囲は強い圧力を受けるようになっている。
【0006】
高温の樹脂が、溶融樹脂流入孔50eを介して枠体成型部50cに流入し、冷却されて固化すると、上部枠41aと下部枠41bとが形成されるとともに、これら上部枠41aと下部枠41bが固化する過程で網体42の両端部が上部枠41aと下部枠41bとに接合されるようになっている。尚、左側枠41c、右側枠41d及び複数の縦リブ411でも同様の過程で、網体42が接合されるようになっている。
【0007】
しかしながら、樹脂成型の際、網体押圧部50fに挟持される網体42の部位は、強い圧力で押圧されることにより、網体42を構成する縦糸あるいは横糸が潰されたり、損傷が発生する虞があり、これらが発生すると、網体42に垂直な方向に掛かる押圧力に対する強度、あるいはフィルタ40を空気調和機から抜き取る際に掛かる引張力に対して強度が低下してしまうという問題があり対策が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−116089号(4頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、樹脂成型の際、所謂インサート成型によって網体と枠体とを接合しても、網体押圧部に挟持される網体の部位において強度を維持することができるフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、枠体と、同枠体内に糸を織り込んで張設される網体とからなるフィルタにおいて、前記糸は、糸径の大きい糸と糸径の小さい糸とからなり、前記枠体の内側端縁から所定範囲において、前記枠体と平行な前記糸には、糸径の大きい糸が用いられ、前記所定範囲外には、糸径の小さい糸が用いられてなる構成となっている。
【0011】
また、前記枠体内には、少なくとも一本のリブが設けられ、同リブの両側端縁から所定範囲において、前記リブと平行な糸には、前記糸径の大きい糸が用いられてなる構成となっている。
【0012】
また、上記したフィルタを備えた空気調和機となっている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、フィルタの樹脂成型の際、金型内で強い圧力で網体が挟み込まれる部位に、太い糸径で充分な強度を有する縦糸と横糸とを配置していることにより、圧力に起因する潰れや損傷が発生しても、フィルタは、押圧力や引張力に対して強度を維持することができるようになっている。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、フィルタの枠体内に設けられるリブの両側端縁から所定範囲において、リブと平行な糸には、糸径の大きい糸が用いられることにより、リブを形成する金型の部位で、強い圧力で網体が挟み込まれても、フィルタの強度を維持することができるようになっている。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、網体に垂直に掛かる押圧力や、上下方向に掛かる引張力に対して強度を維持することのできるフィルタを備えた空気調和機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるフィルタが備えられた空気調和機を示す断面図である。
【図2】本発明によるフィルタの外観斜視図である。
【図3】本発明によるフィルタの構成を示す説明図である。
【図4】従来のフィルタの斜視図及びフィルタの成型金型を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明によるフィルタを備えた空気調和機1は、図1の断面図で示すように、前面に前面吸込口2を設けるとともに、前面上部に上面吸込口3を設け、前面下部に吹出口4を設けている。また、同吹出口4の側方には、図示はしていないが、複数のLED等からなる表示部と、リモートコントローラからの信号を受信する受信部が設けられ、また、吹出口4には回動自在に軸支された上下風向板9が設けられており、上下風向板9は運転停止時には、吹出口4を遮蔽するようになっている。
【0019】
前面吸込口2及び上面吸込口3と吹出口4とを結ぶ通風路には、吸込まれた空気に含有される塵埃を除去する後述するフィルタ5と、平行に並べられたフィンと同フィンに直交するように配設された伝熱管とからなる前方下部熱交換器6bと前方上部熱交換器6aと後方上部熱交換器6cとで構成された逆V字状の熱交換器6と、同熱交換器6で冷媒と熱交換された空気を前記吹出口4から室内に送出する送風ファン7とが設けられている。
【0020】
また、前方下部熱交換器6bの下方には、同前方下部熱交換器6bと前方上部熱交換器6aとから滴下する凝縮水を受ける前部露受皿10が設けられ、後方上部熱交換器6cの下方には、同後方上部熱交換器6cから滴下する凝縮水を受ける後部露受皿11が設けられている。また、送風ファン7と吹出口4とを結ぶ吹出通路には、送出される吹出風を左右方向に偏向させる複数の左右風向板8が設けられ、吹出口4には上記したように、回動自在に軸支された上下風向板9が設けられている。
【0021】
フィルタ5は、図2(A)に示すように、樹脂材からなり矩形状に形成された枠体51と、同枠体51内に張設される網体52とからなっている。枠体51は、2本の縦リブ511と、2本の横リブ512を格子状に備え、縦リブ511と横リブ512により網体52は複数に区画されるようになっている。網体52は、図2(B)に示すように、縦糸521及び横糸522とを交互に織り込んで形成されている。
【0022】
フィルタ5の樹脂成型時、金型内に網体52をセットし、閉じた金型に流入した溶融樹脂が固化することにより網体52は、所謂、インサート成型によって、図2(A)に示すように、枠体51に接合されるようになっている。枠体51は、例えばPP(ポリプロピレン)からなる柔軟性を有する樹脂材から成型され、網体52も、例えばPP(ポリプロピレン)からなる糸から構成されている。
【0023】
網体52を構成する縦糸及び横糸は、例えば糸径が30μmから70μm程度の縦糸521b及び横糸522bで構成されているが、枠体51の内側、縦リブ511及び横リブ512の両側から所定範囲に配置される縦糸及び横糸は、図3(A)の要部拡大図で示すように形成されている。
【0024】
すなわち、枠体51の内側と、縦リブ511及び横リブ512の両側から所定範囲は、例えば、3〜5mmの範囲で、枠体51、縦リブ511及び横リブ512と平行な縦糸及び横糸には、例えば、糸径が100μm程度の縦糸521aと横糸522aとが張設されている。
【0025】
糸径が大きい縦糸521aと、糸径が大きい横糸522aとが配置された網体52の所定範囲は、フィルタ5が樹脂成型される際、網体52が強い押圧力で挟持される金型の網体押圧部に対応した位置となっている。
【0026】
フィルタ5が樹脂成型される際、網体52が強い圧力で押圧される金型の網体押圧部に対応して、糸径が大きく強度を有する縦糸521aと、糸径が大きく強度を有する横糸522aとを設けていることにより、これらに圧力に起因する潰れが発生しても、縦糸521aと横糸522bは強度を維持することができるようになっている。これにより、樹脂成型で枠体51と網体52とを接合しても、フィルタ5は、網体52に垂直な方向に掛かる押圧力に対する強度、あるいはフィルタ5を空気調和機から抜き取る際に掛かる引張力に対して強度を維持することができるようになっている。
【符号の説明】
【0027】
1 空気調和機
2 前面吸込口
3 上面吸込口
4 吹出口
5 フィルタ
51 枠体
511 縦リブ
512 横リブ
52 網体
521、521a、521b 縦糸
522、522a、522b 横糸
6 熱交換器
6a 前方上部熱交換器
6b 前方下部熱交換器
6c 後方上部熱交換器
7 送風ファン
8 左右風向板
9 上下風向板
10 前部露受皿
11 後部露受皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、同枠体内に糸を織り込んで張設される網体とからなるフィルタにおいて、
前記糸は、糸径の大きい糸と糸径の小さい糸とからなり、前記枠体の内側端縁から所定範囲において、前記枠体と平行な前記糸には、糸径の大きい糸が用いられ、前記所定範囲外には、糸径の小さい糸が用いられてなることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記枠体内には、少なくとも一本のリブが設けられ、同リブの両側端縁から所定範囲において、前記リブと平行な糸には、前記糸径の大きい糸が用いられてなることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフィルタを備えたことを特徴とする空気調和機。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−52672(P2012−52672A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193003(P2010−193003)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】