説明

フィルタと同フィルタを備えた空気調和機

【課題】 押圧力及び引張力に対しても強度を有しながら、通風抵抗を増加させることのないフィルタと、同フィルタを備えた空気調和機を提供することを目的とする。
【解決手段】 網体52を構成する横糸522は、糸径bで形成されている一方、縦糸521は、横糸522より2倍程度大きい糸径aで形成され、押圧力に対する強度とともに、引張力に対する充分な強度を有している。これにより、網体52は充分な開口面積を確保することができ、フィルタ5の通風抵抗が増加することを防止して、前方下部熱交換器6b、前方上部熱交換器6a及び後方上部熱交換器6cに、充分な空気量を供給することができるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に使用されるフィルタの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機内に装着される従来のフィルタは、例えば図6に示すフィルタ40のように、複数の縦リブ42を備えた枠体41と、同枠体41内に張設された網体44とからなっている。網体44は、糸径が同一な縦糸と横糸とを交互に織り込んで形成され、また、縦糸のピッチと横糸のピッチとは同一となるように枠体41内に張設されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、フィルタ40の清掃作業等の際、誤って網体44を引っ掛けたり、清掃具で擦ったりすると、網体44に、同網体44が破損することによる孔が発生する虞がある。孔が発生した場合、縦糸と横糸とが同一の糸径であると、孔が同心円状に拡大し易くなり、孔径が大きくなってしまうという問題がある。また、フィルタ40を空気調和機から着脱する際、着脱方向に引張力が加わると網体44に変形あるいは破損が生じる虞がある。これを防ぐため、糸径を太くすると、網体44の開口面積が減少してしまう。網体44の開口面積が減少してしまうとフィルタ44の通風抵抗が増すこととなり、空気調和機の送風効率に影響を与える虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−116089号(4頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、フィルタの網体に発生した孔の拡大を防ぎ、また、フィルタに加わる引張力に対して強度を有しながら通風抵抗の増加を抑制できるフィルタと、同フィルタを備えた空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、枠体と、同枠体内に縦糸と横糸とを織り込んで張設される網体とからなるフィルタにおいて、例えば、一方の糸径が他方の糸径より太くなるようするなどして縦糸と横糸の糸径を異ならせた構成となっている。
【0007】
また、枠体と、同枠体内に縦糸と横糸とを織り込んで張設される網体とからなるフィルタにおいて、前記縦糸を、前記横糸と同じ糸径の第一縦糸と、前記横糸より糸径の大きい第二縦糸により構成してなる。
【0008】
また、上記のフィルタを備えたことを特徴とする空気調和機となっている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、縦糸と横糸の糸径を異ならせることにより、網体に孔が発生しても、同心円状に広がり孔径が拡大してしまう不具合を防止できるようになっている。
【0010】
請求項2の発明によれば、網体を構成する縦糸を、横糸と同じ糸径の第一縦糸と、前記横糸より糸径の大きい糸径の第二縦糸により構成することにより、フィルタの着脱作業の際、縦糸と平行な上下方向に過度な引張力が掛かったとしても、網体に変形あるいは破損が発生する等の不具合を防止することができるようになっている。また、網体は充分な開口面積を確保することができることにより、通風抵抗の増加を防止できるようになっている。
【0011】
請求項3の発明によれば、充分な網体強度を有し、通風抵抗の増加を抑制できるフィルタを備えた空気調和機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるフィルタが使用される空気調和機の断面図である。
【図2】本発明によるフィルタの第一実施例の外観斜視図である。
【図3】本発明によるフィルタの第一実施例及び第二実施例の構成を示す説明図である。
【図4】本発明によるフィルタの第三実施例の構成を示す説明図である。
【図5】本発明によるフィルタの第三実施例を説明する説明図である。
【図6】従来のフィルタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明によるフィルタを備えた空気調和機1は、図1の断面図で示すように、前面に前面吸込口2を設けるとともに、前面上部に上面吸込口3を設け、前面下部に吹出口4を設けている。また、同吹出口4の側方には、図示はしていないが、複数のLED等からなる表示部と、リモートコントローラからの信号を受信する受信部が設けられ、また、吹出口4には回動自在に軸支された上下風向板9が設けられており、上下風向板9は運転停止時には、吹出口4を遮蔽するようになっている。
【0015】
前面吸込口2及び上面吸込口3と吹出口4とを結ぶ通風路には、吸込まれた空気に含有される塵埃を除去する後述するフィルタ5と、平行に並べられたフィンと同フィンに直交するように配設された伝熱管とからなる前方下部熱交換器6bと前方上部熱交換器6aと後方上部熱交換器6cとで構成された逆V字状の熱交換器6と、同熱交換器6で冷媒と熱交換された空気を前記吹出口4から室内に送出する送風ファン7とが設けられている。
【0016】
また、前方下部熱交換器6bの下方には、同前方下部熱交換器6bと前方上部熱交換器6aとから滴下する凝縮水を受ける前部露受皿10が設けられ、後方上部熱交換器6cの下方には、同後方上部熱交換器6cから滴下する凝縮水を受ける後部露受皿11が設けられている。また、送風ファン7と吹出口4とを結ぶ吹出通路には、送出される吹出風を左右方向に偏向させる複数の左右風向板8が設けられ、吹出口4には上記したように、回動自在に軸支された上下風向板9が設けられている。
【0017】
フィルタ5は、図2(A)に示すように、樹脂材からなり矩形状に形成された枠体51と、同枠体51内に張設される網体52とからなっている。枠体51は、フィルタ5の着脱方向に沿って配置される2本の縦リブ511と、縦リブ511に交差して配置される2本の横リブ512を格子状に備え、縦リブ511と横リブ512により網体52は複数に区画されるようになっている。網体52は、図2(B)に示すように、縦糸521及び横糸522とを交互に織り込んで形成されている。
【0018】
フィルタ5の射出成型時、金型内に網体52をセットし、閉じた金型に流入した溶融樹脂が固化することにより網体52は、所謂、インサート成型によって、図2(A)に示すように、枠体51に接合されるようになっている。枠体51は、例えばPP(ポリプロピレン)からなる柔軟性を有する樹脂材から成型され、網体52も、例えばPP(ポリプロピレン)からなる糸から構成されている。
【0019】
横糸522は、図3(A)に示すように、糸径bで枠体51の左辺から右辺まで連続して設けられているが、縦糸521は、糸径bより糸径が2倍程度大きい糸径aで形成されている。縦糸521が、横糸522より大きい糸径aで形成され、また、縦糸521は、枠体51の上辺から下辺まで上下方向に連続して設けられていることにより、フィルタ5の着脱の際、着脱方向における引張強度が向上し、フィルタ5に過度な引張力が掛かったとしても、網体52の変形あるいは破損を防止できるようになっている。
【0020】
また、縦糸521は、ピッチAの間隔で張設され、横糸522も、縦糸521と同様のピッチAの間隔で張設されているが、縦糸521を糸径が大きい糸径aで形成しても、横糸522がこれより小さい糸径bで形成されることにより、網体52は充分な開口面積を確保することができ、通風抵抗が増加することを抑制して、前方下部熱交換器6b、前方上部熱交換器6a及び後方上部熱交換器6cに、充分な空気量を供給することができるようになっている。
【0021】
上記したように、縦糸521が糸径aの大きい糸径で形成され、上下方向に充分な強度を有していることにより、網体52に孔が発生しても、その拡大を防ぐとともに、フィルタ5の着脱作業の際、過度な引張力が掛かったとしても、網体52に変形あるいは破損が発生する等の不具合を防止することができるようになっている。尚、本実施例では、縦糸521が大きい糸径の糸径aで形成された例について説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、横糸522を大きい糸径の糸径aで形成し、縦糸521を糸径が小さい糸径bで形成して、フィルタ5の横方向に対する引張強度が向上するようにしてもよい。このようにすることで、フィルタ5の着脱方向が左右方向となる機器に備えられた場合において、フィルタ5に過度な引張力が掛かったとしても、網体52の変形あるいは破損を防止できるようになっている。
【実施例2】
【0022】
次に、第二実施例について説明する。網体53を構成する横糸533は、図3(B)に示すように、糸径bで形成され、また、ピッチAの間隔で張設されている。これに対し、網体53の縦糸は、糸径の異なる第一縦糸531と第二縦糸532とを交互に配置し、また、これら第一縦糸531と第二縦糸532とはピッチAの間隔で等間隔に設けられている。第一縦糸531は横糸533と同じ糸径bで形成される一方、第二縦糸532は、第一縦糸531及び横糸533の糸径bより2倍程度大きい糸径aで形成されている。
【0023】
縦糸が、糸径bで形成された第一縦糸531と、これより2倍程度大きい糸径aで形成された第二縦糸532とを交互に配置させて構成することにより、網体53の充分な開口面積を確保しながら、上下方向の引張強度を確保できるようになっている。尚、本発明では、第一縦糸531と第二縦糸532を交互に組み合わせた例について説明しているが、これに限定されるものでなく、数本の第一縦糸531と、数本の第二縦糸532とを交互に配置してもよく、また、第一縦糸531と第二縦糸532の本数の比率を任意に設定してもよい。
【実施例3】
【0024】
次に、第三実施例について説明する。図4(A)に示すように、第三実施例におけるフィルタ15は、樹脂材からなり矩形状に形成された枠体151と、同枠体151内に張設される網体152とからなっている。枠体151は、2本の縦リブ1511と、1本の横リブ1512とにより格子状に形成されている。
【0025】
網体152は、所謂、ハニカム織り、あるいは枠織りと称される手法で織り込まれている。所謂、平織りは交差する全ての糸が互いに織り込まれて網体の表面が平坦となる。これに対し、ハニカム織り、あるいは枠織りは、交差する縦糸と横糸とが必ずしも織合わさっておらず糸がたわむようになっているため、網体の表面は波打つように形成される。平織りの場合、縦糸と横糸がズレると、そのズレが目立つため、縦糸と横糸とを溶着する場合があるが、ハニカム織りあるいは枠織りは糸のズレが目立ちにくいため縦糸と横糸とを溶着する必要がなく、平織りに比べてコストダウンを行うことができる。
【0026】
網体152は、図4(B)のA部詳細図で示すように、縦方向に複数の第一縦糸群1521aと、複数の第二縦糸群1521bと、複数の縦糸1521cとを備え、横方向に複数の第一横糸群1522aと、複数の第二横糸群1522bと、複数の横糸1522cとを備えている。
【0027】
第一縦糸群1521aは、図4(B)のB部詳細図で示すように、2本の縦糸1521a−2と縦糸1521a−2より糸径の大きい1本の縦糸1521a−1とを近接させて構成され、第二縦糸群1521bは縦糸1521a−2と同径の縦糸1521cを3本近接させて構成されている。同様に、第一横糸群1522aは、2本の横糸1522a−2と横糸1522a−2より糸径の大きい1本の横糸1522a−1とを近接させて構成され、第二横糸群1522bは横糸1522a−2と同径の横糸1522cを3本近接させて構成されている
【0028】
次に、第一縦糸群1521a、第二縦糸群1521b及び縦糸1521cと、第一横糸群1522a、第二横糸群1522b及び横糸1522cとの織り込み方の一例について説明する。図5(A)は、図4(B)のC−C断面の一部を示し、図5(B)は、図4(B)のD−D断面の一部を示し、図5(C)は、図4(B)のE−E断面の一部を示している。
【0029】
図5(A)で示すように、横糸1522a−1は、第一縦糸群1521aを構成する2本の縦糸1521a−2と1本の縦糸1521a−1との間を挿通するとともに、次に位置する第一縦糸群1521aの2本の縦糸1521a−2と1本の縦糸1521a−1との間を挿通して、これらと絡み合うようになっている。また、第一縦糸群1521a間では、横糸1522a−1の下部に第二縦糸群1521bと複数の縦糸1521cが位置するよう織られている。
【0030】
次に、図5(B)で示すように、横糸1522cは、2本の縦糸1521a−2と1本の縦糸1521a−1とからなる第一縦糸群1521aの下部を通過するとともに、次に位置する第一縦糸群1521aの下部を通過するようになっている。また、第一縦糸群1521a間では、横糸1522cの上部には2本の縦糸1521cが配置され、下部には第二縦糸群1521bと4本の縦糸1521cが位置するよう織られている。
【0031】
次に、図5(C)で示すように、横糸1522cは、2本の縦糸1521a−2と1本の縦糸1521a−1とからなる第一縦糸群1521aの下部を通過するとともに、次に位置する第一縦糸群1521aの下部を通過するようになっている。また、第一縦糸群1521a間では、3本の縦糸からなる第二縦糸群1521bの内、中央の1本は横糸1522cの下に、左右の2本は横糸1522cの上に配置されるよう横糸1522cは挿通するようになっており、また、横糸1522cの上部には4本の縦糸1521cが配置され、下部には2本の縦糸1521cが配置されるようになっている。以上、図5(A)、図5(B)、図5(C)を用いてハニカム織りにおける縦糸に対する横糸の配置について一例を説明したが、横糸に対する縦糸の配置も上記のような配置としても良い。
【0032】
上記した構成は網体152の全てではないが、このように、縦糸と横糸とが交互に絡みあう構成により、網体152は充分な開口面積を確保して通風抵抗を抑制することができ且つ第一縦糸群1521aに1本の大きい径の縦糸1521a−1を設けるとともに、第一横糸群1522aに、1本の大きい径の横糸1522a−1を設けることにより、網体152の上下及び左右方向の引張強度が向上するようになっている。
【0033】
以上、説明した第三実施例では、第一縦糸群1521aは、2本の小さい径の縦糸1521a−2と1本の大きい径の縦糸1521a−1から構成され、第一横糸群1522aは2本の小さい径の横糸1522a−2と1本の大きい径の横糸1522a−1から構成されているが、これに代えて、図5(D)に示すように、網体162は、1本のより大きい径の縦糸1621aと、1本のより大きい径の横糸1622aに変更してもよい。
【0034】
そして、網体162は縦糸1621aとともに、3本の小さい径の縦糸からなる複数の第二縦糸群1621bと、小さい径の複数の縦糸1621cとを備え、横方向に3本の小さい径の横糸からなる複数の第二横糸群1622bと、小さい径の複数の横糸1622cとを備えている。
【0035】
網体162に、複数の大きい径の縦糸1621aと複数の大きい径の横糸1622aとを配置することにより、開口面積を確保しながら、充分な強度を確保することができるようになっている。
【0036】
また、空気調和機1において、上記したハニカム織りあるいは枠織りによるフィルタ15を使用することにより、充分な網体強度を有し、通風抵抗の増加を抑制できるとともに、縦糸と横糸とを溶着する必要がなく、平織りに比べてコストダウンを行うことができるフィルタを備えた空気調和機とすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 空気調和機
2 前面吸込口
3 上面吸込口
4 吹出口
5 フィルタ
51 枠体
511 縦リブ
512 横リブ
52 網体
521 縦糸
522 横糸
53 網体
531 第一縦糸
532 第二縦糸
533 横糸
6 熱交換器
6a 前方上部熱交換器
6b 前方下部熱交換器
6c 後方上部熱交換器
7 送風ファン
8 左右風向板
9 上下風向板
10 前部露受皿
11 後部露受皿
15 フィルタ
151 枠体
1511 縦リブ
1512 横リブ
152 網体
1521a 第一縦糸群
1521a−1 縦糸
1521a−2 縦糸
1521b 第二縦糸群
1521c 縦糸
1522a 第一横糸群
1522a−1 横糸
1522a−2 横糸
1522b 第二横糸群
1522c 横糸
1621a 縦糸
1621b 第二縦糸群
1621c 縦糸
1622a 横糸
1622b 第二横糸群
1622c 横糸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、同枠体内に縦糸と横糸とを織り込んで張設される網体とからなるフィルタにおいて、
前記縦糸と前記横糸の糸径を異ならせたことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
枠体と、同枠体内に縦糸と横糸とを織り込んで張設される網体とからなるフィルタにおいて、
前記縦糸を、前記横糸と同じ糸径の第一縦糸と、前記横糸の糸径より大きい糸径の第二縦糸とにより構成してなることを特徴とするフィルタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフィルタを備えたことを特徴とする空気調和機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−71294(P2012−71294A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257384(P2010−257384)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】