説明

フィルタの再生システム及び再生方法、防塵装置

【課題】集塵能力を維持できるフィルタの再生システムを提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係るフィルタの再生システム2は、防塵装置1に用いられるフィルタの再生システムであって、ダクト11の両側に配置されるローラ22と、ローラ22に渡され、ローラ22に倣って移動する帯状のフィルタ21と、フィルタ21に付着した塵埃をフィルタ21に接着させる接着部24と、接着部24よりフィルタ21の移動方向側に配置され、塵埃が接着されたフィルタ21に通気孔21aを形成する孔形成部25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタの再生システム及び再生方法、防塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塵埃を嫌う施設の換気口に防塵装置が設けられることが多い。このような防塵装置は、フィルタ能力(集塵能力)が低下しないように、フィルタの目詰まりを防ぐことが重要であり、例えば特許文献1及び2の技術が存在する。
【0003】
特許文献1の技術は、ダクトに対してフィルタを循環させる構成であって、フィルタを循環させる際に、付着した塵埃をエアーで飛ばし、当該フィルタを洗浄し、乾燥させる工程を繰り返すことで、フィルタの目詰まりを防いでいる。
【0004】
特許文献2の技術は、ダクトに対してフィルタを循環させる構成であって、フィルタを循環させる際に、付着した塵埃を燃焼させることで、フィルタの目詰まりを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−129332号公報
【特許文献2】特開2002−310425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2の技術は、フィルタに付着した塵埃を除去しきれない場合があり、そのような場合に集塵能力が低下する可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題を解決するフィルタの再生システム及び再生方法、防塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係るフィルタの再生システムは、防塵装置に用いられるフィルタの再生システムであって、ダクトの両側に配置されるローラと、前記ローラに渡され、前記ローラに倣って移動する帯状のフィルタと、前記フィルタに付着した塵埃を前記フィルタに接着させる接着部と、前記接着部より前記フィルタの移動方向側に配置され、塵埃が接着された前記フィルタに通気孔を形成する孔形成部と、を備える。
本発明の一形態に係る防塵装置は、上述のフィルタの再生システムを備える。
【0009】
本発明の一形態に係るフィルタの再生方法は、防塵装置に用いられるフィルタの再生方法であって、ダクトを挟んで両側のローラに渡された帯状のフィルタを移動させる工程と、前記フィルタに付着した塵埃を前記フィルタに接着させる工程と、塵埃が接着された前記フィルタに通気孔を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、集塵能力を維持できるフィルタの再生システム及び再生方法、防塵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る防塵装置を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る防塵装置を概略的に示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るフィルタの再生システムにおける、孔形成部を概略的に示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るフィルタの再生システムにおける、孔形成部を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係るフィルタの再生システム及び再生方法、防塵装置について説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0013】
図1及び図2に示す防塵装置1は、例えば図示を省略したクリーンルームや原子力使用施設等の塵埃を嫌う施設において好適に用いられ、フィルタの再生システム(以下、単に再生システムと省略する場合がある。)2を備える。本実施の形態の再生システム2は、防塵装置1のダクト11に対してフィルタ21が矢印A方向に循環する構成とされており、フィルタ21におけるダクト11の開口部11a内に配置された領域を、塵埃が付着した状態で圧縮し、フィルタ21に塵埃を接着させて乾燥した後に、通気孔を形成してフィルタとして再生させる構成である。
【0014】
具体的に云うと、再生システム2は、図1に示すように、ローラ22の他に、ダクト11に対してフィルタ21の循環(移動)方向(矢印A方向)から順に、圧縮部23、接着部24、孔形成部25を備えている。
【0015】
ローラ22は、図1に示すように、ダクト11の両側に間隔を開けて配置されている。両側のローラ22には、平面から見て環状のフィルタ21が渡されている。ローラ22の高さH1は、図2に示すように、フィルタ21の幅寸法(高さ)より高く設定されている。ローラ22の直径Rは、フィルタ21の裏面から良好に上述した各処理を行うために、例えば圧縮部23の構成要素であるローラ23aをフィルタ21内に配置することができるように設定されている。
【0016】
ローラ22の上下端部は、例えば防塵装置1の筐体(図示を省略)に回転可能に連結される。これらのローラ22の少なくとも一方のローラ22は、モータ等の駆動装置(図示を省略)によって、回転駆動力が与えられる構成とされている。
【0017】
フィルタ21は、通気孔を有する帯状部材の端部同士が接合された環状の無端体である。フィルタ21は、例えば一般的にフィルタとして用いられる、通気孔を有する繊維部材で構成することができる。但し、フィルタ21は、通気孔を有し、且つローラ22の外周形状に追従可能な柔軟性を有する部材であれば特に限定しない。
【0018】
フィルタ21は、間隔を開けて配置されたローラ22に、張った状態で渡されている。そして、フィルタ21は、例えば駆動装置によって回転駆動力が与えられたローラ22との摩擦力によって、当該回転駆動力が伝達され、矢印A方向に循環する。なお、フィルタ21の循環動作は、間欠的でも、連続的でも良い。ローラ22の外周に歯車を形成し、フィルタ21に当該歯車の歯が嵌合される嵌合孔を形成し、駆動装置の回転駆動力がローラ22からフィルタ21に確実に伝達することができる構成としても良い。
【0019】
防塵装置1のダクト11は、図1に示すように、フィルタ21を挟んで、塵埃を含んだ空気3が侵入する側と、塵埃が除去された空気4が排出される側とに配置される。そして、ダクト11の開口部11aは、図2に示すように、フィルタ21が配置されている領域内に配置される。これにより、ダクト11から侵入する空気3はフィルタ21を通過し、空気3中の塵埃がフィルタ21に付着する。そのため、施設内には、塵埃が除去された空気4が排出される。
【0020】
圧縮部23は、図1に示すように、ダクト11に対してフィルタ21の循環方向側であって、且つフィルタ21におけるダクト11の開口部11a内に配置された領域が、上述した処理のうち最初に圧縮処理が行われるように配置されている。圧縮部23は、例えば一組のローラ23aを備えている。一組のローラ23aは、フィルタ21を挟み込むように配置されている。ローラ23aの高さH2は、図2に示すように、フィルタ21の幅寸法(高さ)より高く設定されている。ローラ23aの間隔は、フィルタ21に付着した塵埃を所定の厚さに圧縮することができるように設定されている。ローラ23aの上下の端部は、例えば防塵装置1の筐体に回転可能に連結される。これにより、フィルタ21に付着した塵埃は、確実にフィルタ21に付着する。
【0021】
接着部24は、塗布部(付着部)26、硬化部27を備えている。塗布部26は、図1に示すように、圧縮部23よりフィルタ21の循環方向側に配置されている。塗布部26は、塵埃をフィルタ21に接着する接着剤を、圧縮処理済みのフィルタ21に塗布する(吹き付ける(付着させる))。接着剤としては、例えば熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等のアクリル樹脂を用いることができる。但し、接着剤は、塵埃をフィルタ21に良好に接着することができる材質のものであれば良い。
【0022】
塗布部26は、上下方向に間隔を開け、フィルタ21の幅寸法の全領域に接着剤を吹き付けることができるように、スプレーノズル群26aを備えている。このスプレーノズル群26aは、フィルタ21を挟み込むように少なくとも一組配置されている。スプレーノズルには、接着剤が充填されたタンクからポンプ等の圧送装置によって当該接着剤が供給される(図示を省略)。接着剤は、スプレーノズルから間欠的に、又は連続的にフィルタ21に吹き付けられる。すなわち、フィルタ21が連続的に循環する場合は、塗布部26は接着剤を連続的にフィルタ21に吹き付ける。一方、フィルタ21が間欠的に循環する場合は、塗布部26は当該フィルタ21の間欠移動に対応するように接着剤を間欠的にフィルタ21に吹き付ける。どちらにしても、フィルタ21が移動している最中は、塗布部26はフィルタ21に接着剤を吹き付けるので、フィルタ21の移動領域(例えば、フィルタ21における圧縮処理が済んだ領域)に対しては良好に接着剤が吹き付けられる。吹き付けられた接着剤は、塵埃及びフィルタ21に浸透する。
【0023】
硬化部27は、図1に示すように、塗布部26よりフィルタ21の循環方向側に配置されている。硬化部27は、移動するフィルタ21に吹き付けられた接着剤を硬化させる。すなわち、硬化部27は、接着剤として熱硬化性樹脂を用いている場合は、例えば上下方向に間隔を開けて、フィルタ21の幅寸法の全領域に、当該熱硬化性樹脂を硬化させるのに十分な熱を供給することができるように、熱源群(例えば、ヒータ等)27aを備える。一方、硬化部27は、接着剤として光硬化性樹脂を用いている場合は、例えば上下方向に間隔を開けて、フィルタ21の幅寸法の全領域に、当該光硬化性樹脂を硬化させるのに十分な紫外線を供給することができるように、図示を省略した光源群(例えば、UVランプ等)を備える。このような熱源群27a又は光源群は、フィルタ21を挟み込むように少なくとも一組配置されている。これにより、接着部24は、圧縮された塵埃をフィルタ21に接着することができる。つまり、図3に示すように、フィルタ21には、接着された塵埃からなる塵埃層5が形成される。
【0024】
孔形成部25は、図1に示すように、硬化部27よりフィルタ21の循環方向側に配置されている。孔形成部25は、移動する、塵埃が接着されたフィルタ21に対して通気孔を形成する。詳細には、孔形成部25は、図3及び図4に示すように、円柱部材25aにおける外周の略全領域に複数の突出部25bが形成されたローラ25cを備えている。ローラ25cは、図3に示すように、フィルタ21を挟んで両側に配置されている。そして、これらのローラ25cは、相互にフィルタ21の延在方向にずらして配置されている。
【0025】
円柱部材25aの高さH3は、図4に示すように、フィルタ21の幅寸法(高さ)より高く設定されている。円柱部材25aの上下の端部は、例えば防塵装置1の筐体に回転可能に連結される。なお、円柱部材25aは、図示を省略した駆動装置によって回転駆動する構成でも、突出部25bがフィルタ21に差し込まれることで当該フィルタ21の移動に倣うように回転する構成でも、どちらでも良い。
【0026】
突出部25bは、塵埃が接着されたフィルタ21に差し込まれる。突出部25bは、円柱部材25aの外周に規則的に又は不規則に設けられている。突出部25bは、先端が尖った形状とされており、本実施の形態では円錐形状(但し、多角錐でも良い。)とされている。このとき、突出部25bの形状は、形成した通気孔21aから塵埃が通過しないように設定される。
【0027】
突出部25bの長さ(高さ)は、塵埃が接着されたフィルタ21を略貫通するように設定されている。但し、突出部25bの長さは、塵埃層5及びフィルタ21の厚さを考慮して、好適に設定される。
【0028】
突出部25bは、塵埃が接着されたフィルタ21に差し込まれたときに、損傷しない強度を有する。突出部25bは、例えば金属製、樹脂製である。突出部25bを樹脂製とする場合は、円柱部材25aと一体的に成形することができる。
要するに、突出部25bは、通気孔21aが形成されて再生されたフィルタ21が良好にフィルタとして機能することができるように、配置、形状、材質、個数等が設定される。
【0029】
このような構成の再生システム2を用いて、例えば以下のようにフィルタの再生方法は実現される。
先ず、駆動装置によってローラ22を回転駆動させてフィルタ21を矢印A方向に循環させる。これにより、圧縮部23のローラ23aは、フィルタ21におけるダクト11の開口部11a内に配置されていた領域、即ちフィルタ21における塵埃が付着した領域を順次、圧縮しつつ、接着部24に送り出す。
【0030】
接着部24の塗布部26は、順次送り込まれる、フィルタ21における塵埃が付着した領域に接着剤を塗布する。フィルタ21における接着剤が塗布された領域は、順次、接着部24の硬化部27に送り出される。硬化部27は、順次送り込まれる、フィルタ21における接着剤が塗布された領域に熱又は光を与え、接着剤を硬化させる。これにより、フィルタ21に圧縮された塵埃が接着され、フィルタ21に塵埃層5が形成される。フィルタ21における塵埃が接着された領域は、順次、孔形成部25に送り出される。
【0031】
孔形成部25は、順次送り込まれる、フィルタ21における塵埃が接着された領域に、通気孔21aを形成して送り出す。これにより、フィルタ21における通気孔21aが形成された領域は、再びフィルタとして機能するように再生されることになる。
上述の工程を例えば所定の時間毎に繰り返すことで、フィルタ21における通気孔21aが形成された領域、即ちフィルタ21の再生された領域は、順次ダクト11の開口部11a内に配置される。
【0032】
このようなフィルタの再生システム及び再生方法、防塵装置は、塵埃が付着したフィルタ21に当該塵埃を接着し、塵埃を接着した状態で、通気孔21aを形成するので、再びフィルタとして機能するように再生することができる。そのため、フィルタ21の集塵能力を維持することができる。しかも、フィルタ21を継続的に再生することができるので、フィルタ21の交換が殆ど必要なく、人為的作業(例えば、フィルタ交換等)を軽減したい施設で良好に採用することができる。
また、フィルタ21に塵埃が接着されて全体として厚さが増すので、集塵能力の向上が期待できる。
【0033】
本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施の形態では、塵埃を含んだ空気3が侵入する側のダクト11に対するフィルタ21の循環方向と、塵埃が除去された空気4が排出される側のダクト11に対するフィルタ21の循環方向との両側に、圧縮部23、接着部24、孔形成部25を配置しているが、少なくとも、塵埃を含んだ空気3が侵入する側のダクト11に対してフィルタ21の循環方向に、圧縮部23、接着部24、孔形成部25が配置されていれば良い。
【0034】
例えば、上記実施の形態では、接着剤によって塵埃をフィルタ21に接着しているが、紫外線硬化フィルム等を塵埃が付着したフィルタ21に貼り付け、その後、光源によって紫外線を照射して紫外線硬化フィルムを硬化させることで、塵埃をフィルタ21に接着しても良い。
例えば、上記実施の形態では、圧縮部23、接着部24、孔形成部25を配置したが、圧縮部23を省略しても良い。
例えば、上記実施の形態では、環状のフィルタ21を用いているが、この限りでない。すなわち、両端部を有する帯状のフィルタを用いることもできる。この場合、予め一方側のローラ22にフィルタを巻き付けておき、順次、フィルタを再生する度に、他方側のローラ22にフィルタを巻き付ける。これを両側のローラで繰り返すことで、フィルタを常に再生した状態で用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 防塵装置
2 再生システム
3 塵埃を含んだ空気
4 塵埃が除去された空気
11 ダクト、11a 開口部
21 フィルタ、21a 通気孔
22 ローラ
23 圧縮部、23a ローラ
24 接着部
25 孔形成部、25a 円柱部材、25b 突出部
25c ローラ
26 塗布部、26a スプレーノズル群
27 硬化部、27a 熱源群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防塵装置に用いられるフィルタの再生システムであって、
ダクトの両側に配置されるローラと、
前記ローラに渡され、前記ローラに倣って移動する帯状のフィルタと、
前記フィルタに付着した塵埃を前記フィルタに接着させる接着部と、
前記接着部より前記フィルタの移動方向側に配置され、塵埃が接着された前記フィルタに通気孔を形成する孔形成部と、
を備えるフィルタの再生システム。
【請求項2】
前記ダクトと前記接着部との間に配置され、塵埃が付着した前記フィルタを挟み込んで圧縮する圧縮部を備える請求項1に記載のフィルタの再生システム。
【請求項3】
前記接着部は、
塵埃が付着した前記フィルタに、塵埃を前記フィルタに接着させる接着部材を付着させる付着部と、
前記接着部材を硬化させる硬化部と、
を備える請求項1又は2に記載のフィルタの再生システム。
【請求項4】
前記フィルタは無端フィルタである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフィルタの再生システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフィルタの再生システムを備える防塵装置。
【請求項6】
防塵装置に用いられるフィルタの再生方法であって、
ダクトを挟んで両側のローラに渡された帯状のフィルタを移動させる工程と、
前記フィルタに付着した塵埃を前記フィルタに接着させる工程と、
塵埃が接着された前記フィルタに通気孔を形成する工程と、
を備えるフィルタの再生方法。
【請求項7】
塵埃を前記フィルタに接着させる工程の前に、塵埃が付着した前記フィルタを挟み込んで圧縮する工程を備える請求項6に記載のフィルタの再生方法
【請求項8】
塵埃を前記フィルタに接着させる工程では、塵埃が付着した前記フィルタに、塵埃を前記フィルタに接着させる接着部材を付着させ、前記接着部材を硬化させる請求項6又は7に記載のフィルタの再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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