説明

フィルタエレメント

【課題】濾過性能を向上することができるとともに、通気抵抗を低減することができるエアクリーナに用いるフィルタエレメントを提供する。
【解決手段】平板状濾材18の片面に第1半筒部19a及び第2半筒部19bを交互に波状に連続するように形成した波形状濾材19の前記第1半筒部19aの頂部を接着部21により接合して、エレメント素材20を形成する。このエレメント素材20を渦巻き状に巻回してフィルタエレメント13を形成する。前記波形状濾材19の第2半筒部19bの頂部のうち導出孔26側の端部のみを接着部22によって該第2半筒部19bと対向する平板状濾材18の片面に接合する。該接着部22から離隔した第2半筒部19bの頂部と平板状濾材18との間に隙間Gを設け、接着面積を低減し、その分、濾過面積を広くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両用エンジン等においてエアクリーナに用いられるフィルタエレメントに係り、特に濾過性能を向上することができるフィルタエレメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のフィルタエレメントとして、特許文献1に開示されたものが提案されている。このエレメントは、平板状濾材(特許文献1ではライナー)に横断面がV字状の半筒部を波状に連続成形した波形状濾材(フルート)を接着して構成されている。
【0003】
又、特許文献2には、平板状濾材に波形状濾材を接着したエレメント素材を渦巻き状に巻回して、全体として円筒状に形成したフィルタエレメントが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003‐135577号公報
【特許文献2】特開2003−13724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの従来構成においては、波形状濾材の各波を構成する半筒部の横断面形状がエアの流路方向において、どの部位も同じ形状及び同じ大きさに形成され、各半筒部の頂部がエアの流路方向の全長にわたり平板状濾材の表面に接着剤によって接着されている。このため、平板状濾材と波形状濾材との接着面積が広くなり、この面積が増える分、平板状濾材及び波形状濾材の有効濾過面積が低減され、濾過性能が低下するという問題があった。又、有効濾過面積が低減されると、その分、波形状濾材及び平板状濾材を透過するエアの通気抵抗が大きくなるため、エアの圧力損失が大きくなり、エンジンの燃焼効率が低下するという問題があった。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、濾過性能を向上することができるフィルタエレメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、第1半筒部及び第2半筒部を交互に波形状に連続成形した波形状濾材の前記第1半筒部の頂部に平板状濾材を接着部により接合してエレメント素材を形成し、該エレメント素材を複数段に積層して、前記平板状濾材と波形状濾材との間に、第1エア通路及び第2エア通路を区画形成したフィルタエレメントにおいて、前記波形状濾材の前記第2半筒部の頂部の一部と、該頂部と対向する平板状濾材とを接着部により部分的に接合し、該接着部以外の前記第2半筒部の頂部と前記平板状濾材との間に隙間を形成したことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記第2半筒部の一部の頂部と平板状濾材との接着部は、該第2半筒部の長手方向の両端部のいずれか一方の端部に設けられていることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記隙間は前記接着部から離隔するほど連続的に大きくなるように形成されていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記接着部と対応する第2半筒部の端部は、半円筒状に形成され、第2半筒部の前記接着部と反対側の端部は、台形筒状に形成されていることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記波形状濾材は、外周面に第1及び第2半筒部を成形する突条及び溝を有する一対の成形用ローラの間に通すことにより成形されたものであることを要旨とする。
【0011】
(作用)
この発明は、波形状濾材の第2半筒部の頂部と平板状濾材の表面との間に形成された隙間により両濾材の有効濾過面積が拡大されて、エアの濾過機能が向上し、濾過性能を向上することができる。又、有効濾過面積の拡大により、両濾材を透過するエアの通気抵抗(圧力損失)を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、濾過性能を向上することができるとともに、通気抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明のフィルタエレメントを備えたエアクリーナの一実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1のフィルタエレメントを示す斜視図。
【図3】フィルタエレメントの部分拡大斜視図。
【図4】(a)はフィルタエレメントのエア導入口側の横断面図、(b)は導出口側の横断面図。
【図5】波形状濾材の製造装置の成形用ローラを示す側面図。
【図6】成形用ローラの部分拡大斜視図。
【図7】この発明の別の実施形態を示すエレメントの導入口側の部分拡大横断面図。
【図8】(a)はこの発明の別の実施形態を示すエレメントのエアの導入口側の部分拡大横断面図、(b)はエアの導出口側の部分拡大横断面図。
【図9】(a)はこの発明の別の実施形態を示すエレメントのエアの導入口側の部分拡大横断面図、(b)はエアの導出口側の部分拡大横断面図。
【図10】この発明の別の実施形態を示すエレメントの部分拡大縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、この発明の一実施形態を、図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態のエアクリーナ11は、ケース12と、そのケース12内に嵌め込まれたフィルタエレメント13とから構成されている。ケース12は、端部にエア導入口14を有する円筒状の導入側ケース部材12Aと、端部にエア導出口15を有する導出側ケース部材12Bとから構成されている。図1に示すように、前記エレメント13は、導入側ケース部材12A内に嵌め込まれた状態で、その導入側ケース部材12Aの内側面とエレメント13の外側面との間の間隙をシール16により封止することにより、嵌め込み状態に固定されている。
【0015】
前記エレメント13は、図3に示すように平板状濾材18と、該平板状濾材18に接着された波形状濾材19とからなるエレメント素材20を、図2に示すように渦巻状に巻回して、全体として円筒状のハニカム構造をなすように形成されている。前記波形状濾材19は、図3に示すように平板状の濾材に第1半筒部19aと第2半筒部19bを交互に波形に連続して成形することにより形成されている。図2に示すように、平板状濾材18の一側には、波形状濾材19の多数の第1半筒部19aの頂部(図4において谷部の裏面)が、該半筒部19aの長手方向(図3の長手方向)の全域にわたって例えばホットメルト接着された接着部21によって接合されている。
【0016】
一方、前記波形状濾材19の多数の第2半筒部19bは、その一端部、つまりダーティーエアの入口側は、図3及び図4(a)に示すように台形筒状に形成されている。この第2半筒部19bはエア流の下流側に行くほど、高さh寸法が連続的に高くなるようにしている。図3及び図4(b)に示すように、第2半筒部19bのクリーンエアの出口側は、半円筒状に成形されている。そして、高さhが高い第2半筒部19bの下流側端部の半円筒部の頂部のみを例えばホットメルト接着された接着部22によって平板状濾材18の外周面に部分的に接着している。従って、第2半筒部19bはその上流側端部を除いて対向する平板状濾材18の外周面から離隔されて、エア流の上流側ほど広くなる隙間Gが形成されている。
【0017】
図2に示すように、前記波形状濾材19の上流側端縁と、フィルタエレメント13の半径方向に関して外側に位置する平板状濾材18の上流側端縁との間の開口は、閉塞材23によって閉塞されている。波形状濾材19の上流側端縁と、前記半径方向に関して内側に位置する平板状濾材18の上流側端縁との間の開口は、ダーティーエアの導入孔24となっている。又、前記波形状濾材19の下流側端縁と、前記半径方向に関して内側に位置する平板状濾材18の下流側端縁との開口は、閉塞材25によって閉塞されている。波形状濾材19の下流側端縁と、前記半径方向に関して外側に位置する平板状濾材18の下流側端縁との間の開口は、クリーンエアの導出孔26となっている。前記波形状濾材19の第2半筒部19bの内部は、前記導入孔24から閉塞材25までの間がダーティーエアを通過させる第1エア通路27となっている。前記閉塞材25から前記導入孔24までの波形状濾材19と平板状濾材18の間の空間は、前記各隙間Gによって連通され、この一つの連通された空間がダーティエアを通過させる前記第1エア通路27となっている。前記閉塞材23から前記導出孔26までの波形状濾材19と平板状濾材18の間の空間がクリーンエアを通過させる第2エア通路28となっている。
【0018】
なお、図1は、平板状濾材18と波形状濾材19とが重なり合った部分における断面を示したものである。
次に、前記のような構成のエアクリーナ11の波形状濾材19を製造する装置について説明する。
【0019】
図5に示すように、この製造装置は第1及び第2成形用ローラ31,32を備えている。第1成形用ローラ31の外周面には、前記波形状濾材19の第1及び第2半筒部19a,19bを成形するための突条31a及び溝31bが形成されている。図6に示すように前記突条31aは、一端部が半円柱状に形成され、他端部が台形柱状に形成されている。突条31aの中間部は、半円柱状から台形柱状に緩やかに変化するように形成されている。前記溝31bは第1成形用ローラ31の長手方向全域にわたってほぼ半円筒状に形成されている。一方、前記ローラ32にも前記第1成形用ローラ31の溝31b及び突条31aと所定の均一な隙間をもって噛み合わされる突条32a及び溝32bが形成されている。
【0020】
上記のような装置を用いて波形状濾材19を成形する素材33を、矢印方向に回転される第1及び第2成形用ローラ31,32の間に通して、素材33に第1及び第2半筒部19a,19bを成形する。
【0021】
前記のように構成されたエアクリーナにおいて、図1に矢印で示すように、前記エア導入口14からケース12内に導入されたダーティーエアは、エレメント13の導入孔24から第1エア通路27に導入されて、平板状濾材18又は波形状濾材19を透過する過程で濾過される。その後、濾過されたクリーンエアは、各第2エア通路28を介してエレメント13の導出孔26から導出され、エア導出口15からケース12の外部に送出される。
【0022】
従って、この実施形態においては、以下の効果がある。
(1)前記実施形態では、波形状濾材19の第2半筒部19bの頂部のうち導出孔26側の頂部を部分的に接着部22によって接合し、該接着部22から導入孔24までの第2半筒部19bの頂部と平板状濾材18との間に隙間Gを設けた。このため、第2半筒部19bと平板状濾材18との接着面積が低減され、その分、平板状濾材18及び波形状濾材19の有効濾過面積が拡大され、ダーティーエアの濾過性能を向上することができる。
【0023】
又、上記のように、濾過性能を向上することができるので、エレメント全体を小型化でき、結果として、平板状濾材18及び波形状濾材19の使用材料を低減することができ、材料コストを低減することができるとともに、軽量化を達成することができる。
【0024】
(2)前記実施形態では、平板状濾材18及び波形状濾材19の有効濾過面積が拡大されるので、両濾材18,19を透過するエアの通気抵抗も低減され、エンジンの燃焼効率を向上することができる。
【0025】
(3)前記実施形態では、平板状濾材18と第2半筒部19bの形状を導出孔26側において半円筒状に形成し、中間部において半楕円筒状に形成し、導入孔24側において、台形筒状に緩やかに変形するようした。このため、前記第1及び第2成形用ローラ31,32の突条31a,32a、溝31b,32bの形状を変更するのみで、従来の製造方向と同様な製造方法により波形状濾材19を容易に製造することができる。
【0026】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・図7に示すように、前記波形状濾材19の第1半筒部19a及び第2半筒部19bをどの部位もそれぞれ同じ大きさの半円筒状に形成する。そして、図示しないが第2半筒部19bの頂部の一部と平板状濾材18を前記接着部22により部分的に接合(図2参照)し、第2半筒部19bの大半の頂部と対応する平板状濾材18に対し、溝状の屈曲部18aを設けることによって、前記隙間Gを形成するようにしてもよい。
【0027】
・図8(a)に示すように、波形状濾材19の第2半筒部19bの導入孔24側の横断面形状を、台形筒状に形成するとともに、図8(b)に示すように、導出孔26側の横断面形状を三角筒状に成形するようにしてもよい。
【0028】
・図9に示すように、平板状のエレメント素材20を、平面状態に複数層に積層したフィルタエレメントに具体化してもよい。この場合に、図9(a)に示すように、導入孔24側の第2半筒部19bの頂部と平板状濾材18の間に前記隙間Gを形成し、図9(b)に示すように、導出孔26側の第2半筒部19bの頂部と平板状濾材18とを接着部22により部分的に接着する。
【0029】
・図10に示すように、導入孔24と導出孔26の中間部に前記接着部22を部分的に形成し、該接着部22を起点に前記隙間Gを二箇所に形成し、閉塞材25と対向するよう閉塞材23を第2半筒部19bの上流側の開口に配設し、両閉塞材23,25の間に中間エア通路34を設けてもよい。この実施形態では、エアが図10の矢印で示すように第1エア通路27から中間エア通路34を通して第2エア通路28へ流れる。
【0030】
・図1〜図9に示す各実施形態において、前記平板状濾材18と第2半筒部19bの接着部22を導入孔24側のみに部分的に形成してもよい。
・図2において、前記閉塞材23を導入孔24側に移動し、閉塞材25を導出孔26側へ移動し、第1エア通路27と第2エア通路28を逆にしてもよい。
【0031】
・前述した各実施形態のエアクリーナ11において、ダーティー側をクリーン側とし、クリーン側をダーティー側とした構成に具体化してもよい。
・前記実施形態においてはフィルタエレメント13を円筒状に形成したが、楕円筒状等、筒状をなす他の形状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
G…隙間、h…高さ、13…フィルタエレメント、18…平板状濾材、19…波形状濾材、19a…第1半筒部、19b…第2半筒部、20…エレメント素材、21,22…接着部、27…第1エア通路、28…第2エア通路、31a,32a…突条、31b,32b…溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半筒部及び第2半筒部を交互に波形状に連続成形した波形状濾材の前記第1半筒部の頂部に平板状濾材を接着部により接合してエレメント素材を形成し、該エレメント素材を複数段に積層して、前記平板状濾材と波形状濾材との間に、第1エア通路及び第2エア通路を区画形成したフィルタエレメントにおいて、
前記波形状濾材の前記第2半筒部の頂部の一部と、該頂部と対向する平板状濾材とを接着部により部分的に接合し、該接着部以外の前記第2半筒部の頂部と前記平板状濾材との間に隙間を形成したことを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項2】
請求項1において、前記第2半筒部の一部の頂部と平板状濾材との接着部は、該第2半筒部の長手方向の両端部のいずれか一方の端部に設けられていることを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項3】
請求項2において、前記隙間は前記接着部から離隔するほど連続的に大きくなるように形成されていることを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項4】
請求項3において、前記接着部と対応する第2半筒部の端部は、半円筒状に形成され、第2半筒部の前記接着部と反対側の端部は、台形筒状に形成されていることを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記波形状濾材は、外周面に第1及び第2半筒部を成形する突条及び溝を有する一対の成形用ローラの間に通すことにより成形されたものであることを特徴とするフィルタエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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